説明

ウェットパルプ用抗菌組成物および抗菌方法

【課題】 ウェットパルプ製造工程のパルプスラリーに添加する内添型抗菌剤として高い歩留を示し、細菌や真菌等による微生物障害から長期間にわたって保護するウェットパルプ用抗菌組成物および抗菌方法を提供する。
【解決手段】 20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、カチオン化ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤(ただし第4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤を除く)濃度が1質量%以下であることを特徴とする工業用抗菌組成物および抗菌方法により上記の課題を解決する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌や真菌等による微生物障害からウェットパルプを保護する抗菌組成物に関するものであり、詳しくは20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、カチオン化ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤濃度が1質量%以下であることを特徴とするウェットパルプ用抗菌組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェットパルプは生産調整や外販のために製造後に貯蔵される場合が多く、この間に細菌や真菌等による微生物障害が発生し製品価値が低下する危険性がある。このため抗菌剤を添加する方法が一般的に行われている。
【0003】
この抗菌剤の添加方法は作業効率の観点から、パルプスラリーに抗菌剤を添加し脱水ろ過時に抗菌剤を歩留まらせる内添法が一般的に採られている。この内添型抗菌剤としては、より歩留率を高くするために、水に対する溶解度が低い抗菌剤を使用し粒子径を2〜5μmに調整することが重要であるいうことが非特許文献1に開示されており、使用できる抗菌剤は2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、2−(チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、ビス−(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛などに限定されている。この懸濁製剤ではノニオン型もしくはアニオン型界面活性剤を用いて分散させる方法が一般的に採られており、粒子径を調整してもパルプシートに対する歩留は充分満足できるものではなかった。
【0004】
また抗菌剤をよりパルプシート中に歩留らせるために、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を併用添加する方法およびその組成物が特許文献1に開示されているが、やはりパルプシートに対する歩留は充分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開2003−55117号公報
【非特許文献1】「防菌・防黴剤の開発と展望」シーエムシー出版 2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、細菌や真菌等の微生物による障害からウェットパルプを長期間にわたって保護することが可能であり、かつ内添型抗菌剤として高い歩留を示す工業用抗菌組成物および上記組成物を用いる抗菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意種々の研究を行った結果、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤濃度が1質量%以下とすることにより高い歩留を示すことを見出し、本発明を完成させたものである。つまり、従来では必ずしも高い歩留を示すことが困難であったウェットパルプ用の抗菌剤において、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させることにより高い歩留を発揮させる技術を見出したものである。
すなわち、本発明は、(1)20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤濃度が1質量%以下であることを特徴とするウェットパルプ用抗菌組成物に関する。
また、本発明は、(2)水に対する溶解度が1mg/ml以下の抗菌剤が、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4−ジフルオロ−6−メトキシイソフタロニトリル、N−(1,1−ジメチルエチル)−N´−エチル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、N−シクロプロピル−N´−(1,1−ジメチルエチル)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールであることを特徴とする上記(1)のウェットパルプ用抗菌組成物に関する。
また、本発明は、(3)水溶性高分子化合物がカチオン性を示す化合物であることを特徴とする上記(1)〜(2)いずれかのウェットパルプ用抗菌組成物に関する。
また、本発明は、(4)カチオン性を示す水溶性高分子化合物がカチオン化ポリビニルアルコール、または/およびカチオン化セルロース誘導体、または/およびカチオン化グアーガム誘導体であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれかのウェットパルプ用抗菌組成物に関する。
また、本発明は、(5)上記(1)〜(4)に記載のウェットパルプ用抗菌組成物をパルプ製造工程のパルプスラリーに添加することを特徴とするウェットパルプの抗菌方法に関する。
【0007】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本発明のウェットパルプ用抗菌組成物は、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させたものであり、さらに、主な溶媒としての水の他、組成物の良好な安定性を有するように脂肪族や芳香族等の溶媒、pH調整剤、キレート化剤、粘度調整剤、消泡剤、防錆剤、安定剤、防腐剤などの添加剤等を添加しても良い。
【0008】
本発明の組成物に配合する水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコールやアセトアセチル化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等のカチオン化セルロース誘導体、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等によるカチオン化グアーガム誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸または/およびその塩、ポリアクリルアミドなど、またアラビアガム、アルギン酸またはその塩、ゼラチン、シェラックなどの天然高分子を使用することができるが、ウェットパルプに対する抗菌組成物の歩留の点から、カチオン化ポリビニルアルコール、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化グアーガム誘導体が好ましい。
【0009】
本発明の組成物には、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤や、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルスルホネート、アルキルアリルスルホネート、脂肪酸アミドスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート等のアニオン界面活性剤や、アルキルアミン塩等のカチオン界面活性剤(ただし第4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤を除く)や、グリシン型、ベタイン型、イミダゾリン型等の両性界面活性剤を1質量%以下で配合することもできるが、ウェットパルプに対する抗菌組成物の歩留の点から、配合しないほうが好ましい。
【0010】
本発明の組成物に配合できる脂肪族や芳香族等の溶媒としては、例えばエタノール、イソプロパノール等の一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤およびその誘導体、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン系溶剤およびその誘導体等、アルキルベンゼン、1−フェニル−1−キシリルエタン、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレンなどを使用することができる。これらの溶媒は、具体例の中から単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0011】
<ウェットパルプ用抗菌剤組成物における各材料の配合組成>
以上の材料からなる好ましいウェットパルプ用抗菌組成物の配合組成としては、ウェットパルプ用抗菌組成物100質量%に対して、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を1〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%、水溶性高分子化合物が、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である抗菌剤1部に対して0.01〜0.5部、より好ましくは0.03〜0.15部である。
【0012】
<ウェットパルプ用抗菌組成物の製造方法>
本発明のウェットパルプ用抗菌組成物は、溶解製剤や懸濁製剤、粉剤、水和剤などとして提供することが可能であるが、使用方法を考慮した場合、懸濁製剤として提供することが実用的である。この懸濁製剤として製造する方法としては、水溶性高分子化合物を水に溶解させた後、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を混合し、パールミルなどの粉砕分散機で分散させ、必要に応じてpH調整剤、キレート剤、粘度調整剤などの添加剤を撹拌混合する方法が利用できる。
【0013】
<使用方法>
以上の材料と製造方法から得られた本発明のウェットパルプ用抗菌組成物は、ウェットパルプ製造時にパルプスラリーに対して直接もしくは水等の適当な溶媒等により希釈して添加することができる。通常は、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤が、絶乾パルプあたり概ね0.002〜0.05質量%程度の割合で添加される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウェットパルプ用抗菌組成物は、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤濃度が1質量%以下であることを特徴とするウェットパルプ用抗菌組成物であり、ウェットパルプに対して高い歩留を示すことから抗菌組成物の無駄が少ないというコストメリットが得られ、細菌や真菌等による微生物障害を長期間にわたって確実に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は「質量%」を表す。
【実施例1】
【0016】
ゴーセファイマーK−210(日本合成化学工業社製、カチオン化ポリビニルアルコール)2%をイオン交換水58%に溶解させた後、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール(水に対する溶解度0.008mg/ml)20%とノプコNXZ(サンノプコ社製、鉱油系消泡剤)0.1%を混合してパールミルで10分間粉砕した。これにJAGUAR C−14S(三晶社製、カチオン化グアーガム)0.3%を19.6%のイオン交換水に溶解させたものを混合して実施例1とした。
【実施例2】
【0017】
実施例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール(水に対する溶解度0.003mg/ml)10%と1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン(水に対する溶解度0.1mg/ml)10%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを実施例2とした。
【実施例3】
【0018】
2%のゴーセファイマーK−210と0.5%のポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルをイオン交換水57.5%に溶解させた後、10%の2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾールと7.5%の1−フェニル−1−キシリルエタンに溶解させた2.5%の4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(水に対する溶解度0.006mg/ml)と0.1%のノプコNXZを混合してパールミルで10分間粉砕した。これに0.3%のJAGUAR C−14Sを19.6%のイオン交換水に溶解させたものを混合して実施例3とした。
【実施例4】
【0019】
実施例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール10%とビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛(水に対する溶解度0.015mg/ml)10%に変更し、実施例1におけるJAGUAR C−14Sをメチルセルロースに変更した以外は同一組成と方法で調製したものを実施例4とした。
【実施例5】
【0020】
実施例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール5%と2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(水に対する溶解度0.006mg/ml)15%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを実施例5とした。
【実施例6】
【0021】
実施例1におけるゴーセファイマーK−210を、ゴーセノールGL−05(日本合成化学工業社製、ポリビニルアルコール)に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを実施例6とした。
【0022】
(比較例1)
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル5%をイオン交換水55%に溶解させた後、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%とノプコNXZ(サンノプコ社製、鉱油系消泡剤)0.1%を混合してパールミルで10分間粉砕した。これにキサンタンガム0.3%を19.6%のイオン交換水に溶解させたものを混合して比較例1とした。
【0023】
(比較例2)
比較例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール10%と1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン10%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを比較例2とした。
【0024】
(比較例3)
比較例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール10%と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン2.5%とフェニルキシリルエタン7.5%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを比較例3とした。
【0025】
(比較例4)
比較例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール10%とビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛10%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを比較例4とした。
【0026】
(比較例5)
比較例1における2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール5%と2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル15%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを比較例5とした。
【0027】
(比較例6)
比較例1におけるポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル5%とイオン交換水55%を、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド50%溶液10%とイオン交換水50%に変更し、キサンタンガム0.3%をヒドロキシエチルセルロース0.3%に変更した以外は同一配合と方法で調製したものを比較例6とした。
【0028】
(比較例7)
実施例1における−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール20%を5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(水に対する溶解度100mg/ml以上)15%と2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(水に対する溶解度500mg/ml以上)5%に変更した以外は同一組成と方法で調製したものを実施例7とした。
【0029】
(比較例8)
実施例1におけるゴーセファイマーK−210を溶解するイオン交換水58%を56%に減量し、その代わりにポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルを2%配合した以外は同一組成と方法で調製したものを比較例8とした。
【0030】
<ウェットパルプに対する歩留率の確認>
1%のパルプスラリーに対して実施例1〜6および比較例1〜8の抗菌組成物を絶乾パルプあたり0.1%となるように添加し、マグネチックスターラーを用いて3分間撹拌した後、24メッシュの金網で濾過してプレスすることによりパルプ分40%のウェットパルプシートを調製し、このウェットパルプに含まれる抗菌剤濃度を高速液体クロマトグラフにより定量した。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
<ウェットパルプに対する抗菌効果の確認>
1%のパルプスラリーに対して実施例1〜6および比較例1〜8の抗菌組成物を絶乾パルプあたり0.03%および0.06%となるように添加し、マグネチックスターラーを用いて3分間撹拌した後、24メッシュの金網で濾過してプレスすることによりパルプ分40%のウェットパルプシートを調製し、このパルプシートをJIS Z2911に準じて無機塩寒天培地(硝酸アンモニウム3.0g、リン酸二水素カリウム1.0g、硫酸マグネシウム七水和物0.5g、塩化カリウム0.25g、硫酸鉄(二)七水和物0.002g、寒天25g、蒸留水1000ml)上に載せ、この上から5種類のカビ(Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Chaetomium globosum、Cladosporium cladosporioides、Rhizopus oryzae)の混合胞子懸濁液を振り掛け28℃で培養し、経時的なカビの生育を観察した。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

0:試料又は試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。
1:試料又は試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超えない。
2:試料又は試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超える。
【0034】
20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させた実施例1〜6のウェットパルプ用抗菌組成物は、いずれも、ウェットパルプに対して高い歩留率と良好な抗菌効果が認められるものであった。しかしながら水溶性高分子化合物ではなくノニオン性界面活性剤を用いて分散させた比較例1〜5、カチオン性界面活性剤を用いて分散させた比較例6、水溶性高分子化合物を用いても20℃の水に対する溶解度が1mg/lよりも大きい抗菌剤を用いた比較例7、組成物中の界面活性剤濃度が1%を超える比較例8の各抗菌組成物については、ウェットパルプに対する歩留率は必ずしも十分ではなく、かつ抗菌効果も不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のウェットパルプ用抗菌組成物は、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤濃度が1%以下であり、ウェットパルプ製造時における内添型抗菌剤として高い歩留と良好な抗菌効果を付与することが可能であることから、ウェットパルプにおける細菌や真菌等による微生物障害から回避するために好適に用いることができるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以下である1種以上の抗菌剤を、水溶性高分子化合物を用いて分散させ、界面活性剤を含まないかあるいは組成物中の界面活性剤(ただし第4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤を除く)濃度が1質量%以下であることを特徴とするウェットパルプ用抗菌組成物。
【請求項2】
水に対する溶解度が1mg/ml以下の抗菌剤が、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4−ジフルオロ−6−メトキシイソフタロニトリル、N−(1,1−ジメチルエチル)−N´−エチル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、N−シクロプロピル−N´−(1,1−ジメチルエチル)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールであることを特徴とする請求項1に記載のウェットパルプ用抗菌組成物。
【請求項3】
水溶性高分子化合物がカチオン性を示す水溶性高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜2に記載のウェットパルプ用抗菌組成物。
【請求項4】
カチオン性を示す水溶性高分子化合物がカチオン化ポリビニルアルコール、または/およびカチオン化セルロース誘導体、または/およびカチオン化グアーガム誘導体であることを特徴とする請求項1〜3に記載のウェットパルプ用抗菌組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のウェットパルプ用抗菌組成物をパルプ製造工程のパルプスラリーに添加することを特徴とするウェットパルプの抗菌方法。


【公開番号】特開2007−45715(P2007−45715A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228963(P2005−228963)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(397070417)シントーファイン株式会社 (31)
【Fターム(参考)】