説明

ウェハレベルのアンダーフィルの応用例において高いTg、透明性及び良好な信頼性を有するフィラーを含む溶媒改質樹脂系

溶媒改質樹脂アンダーフィル材料であって、樹脂を官能化コロイダルシリカ及び溶媒のフィラーと組み合わせて含み、それによって透明なBステージ樹脂組成物が形成され、次いでそれを硬化して、低CTE、高Tg熱硬化性樹脂を形成することができる。開示の諸実施形態は、ウェハレベルのフィラー、及び電子チップの封止材としての使用を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化コロイダルシリカと1種以上の溶媒とを充填した熱硬化性樹脂を含み、そのために最終硬化組成物が低い熱膨張係数と高いガラス転移点を有するようになる、透明なアンダーフィル材料に関する。
【背景技術】
【0002】
より小型でより高性能な電子デバイスが求められていることにより、電子産業は、高出入力(I/O)密度をサポートでき、且つ小さなダイ面積で向上した性能を有する改良された集積回路パッケージの改善に向かって引き続き駆り立てられている。この厳しい要件に対応するために、フリップチップ技術が開発されてきたが、フリップチップ構造の弱点は、シリコンダイと基板の熱膨張係数(CTE)が一致していないため、ハンダバンプが熱サイクルの間に著しい機械的ストレスを受けることである。この不一致によって、電子デバイスの機械的及び電子的故障が生ずる。現在、キャピラリアンダーフィルがシリコンチップと基板のギャップを埋め、ハンダバンプの疲労寿命を改善するのに使用されている。しかしながら、キャピラリアンダーフィルを使用する製造方法は、チップ組立工程にさらなる段階を導入することになり、そのため生産性が低下する。
【特許文献1】米国特許第4217438号明細書
【特許文献2】米国特許第6576718号明細書
【特許文献3】米国特許第6555602号明細書
【特許文献4】米国特許第6548189号明細書
【特許文献5】米国特許第6486235号明細書
【非特許文献1】Gross, et al., ”Nanocomposite Underfills for Flip−Chip Applications,” 2003 Electronic Components and Technology Conference, pages 951−956.
【非特許文献2】Gross, et al., ”New Materials for High−Performance No−Flow Underfill.” 2002 International Symposium on Microelectronics, pages 234−238.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
キャピラリアンダーフィルに関連する製造の非効率をなくすためには、アンダーフィル樹脂をウェハ段階で塗布するのが理想的なはずである。しかしながら、低いCTEのために必要とされる溶融シリカフィラーを含む従来型の樹脂を使用すると、溶融シリカフィラーによってウェハダイシングに使用されるガイドマークが見えにくくなり、またハンダリフロー作業中に良好な電気接続の形成が妨げられるので問題である。したがって、幾つかの適用分野では、アンダーフィル材料が塗布されるウェハの効率的なダイシングが可能になるように透明性の改善が必要とされる。
【0004】
したがって、低いCTEと改善された透明性を有する改良されたアンダーフィル材料が望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示は、硬化性樹脂を溶媒及び1種以上の有機アルコキシシランで官能化されたコロイダルシリカのフィラーと組み合わせて含む透明なアンダーフィル組成物を含む透明なアンダーフィル材料に関する。一実施形態では、この硬化性樹脂は芳香族エポキシ樹脂である。好ましくは、フィラーは、二酸化ケイ素が最終硬化樹脂組成物の約15〜約75重量%、より好ましくは約25〜約70重量%、最も好ましくは約30〜約65重量%を占めることができるように、約50〜約95重量%の範囲の二酸化ケイ素を含む。この組成物中で使用される樹脂は、溶剤を除去すると硬い透明なBステージ樹脂を形成し、次いで硬化すると、低CTE、高Tgの熱硬化性樹脂を形成することが好ましい。
【0006】
アンダーフィル材料は、加熱したフィラー懸濁液及び溶媒を、樹脂及び必要に応じて添加剤と混合し、溶剤を除去してBステージ樹脂を形成し、樹脂を再加熱して材料を硬化し、それによって低CTE、高Tgの熱硬化性樹脂を形成する方法によって作成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本開示は、1種以上の溶剤と混合した1種以上の樹脂と、小粒子フィラー分散液とを含むウェハレベルのアンダーフィル材料を提供する。より具体的には、この粒子分散液は、1種以上の官能化シリカを含む。このアンダーフィル材料の組合せは、硬化剤及び/又は触媒を含んでいてもよい。加熱し溶剤を除去すると、この混合物は、透明なBステージ樹脂を形成する。溶剤を除去した後、最終的に加熱することによって、アンダーフィル材料は硬化して低い熱膨張係数(CTE)及び高いガラス転移点(Tg)を有する透明で硬化した硬い樹脂になることが可能である。コロイダルシリカフィラーは、開示の組成物の全体に基本的に均一に分散しており、この分散状態は、室温においてまた溶媒除去の間及びどの硬化段階においても安定に保たれている。得られた樹脂の透明性は、ウェハダイシング操作中にガイドマークを見えるようにするためのアンダーフィル材料、特にウェハレベルのアンダーフィル材料として有用である。幾つかの実施形態において、アンダーフィル材料は、自己溶融能力を有することもできる。
【0008】
本明細書では、「低い熱膨張係数」とは、セ氏温度当たり百万分の1(ppm/℃)で測定して、基材の樹脂のそれよりも小さい熱膨張係数を有する硬化した全組成物を指す。一般的に、硬化した全組成物の熱膨張係数は、約50ppm/℃未満である。本明細書では、「硬化」とは、反応基の約50〜約100%が反応した反応基を有する全組成物を指す。本明細書では、「Bステージ樹脂」とは、一般的に硬くて、通常の溶媒にある程度の溶解性しか有していない第2段階の熱硬化性樹脂を指す。本明細書では、「ガラス転移点」とは、アモルファス材料が固い状態から塑性状態へと変化する温度を指す。「硬化前全組成物の低粘度」とは、通常、組成物が硬化する前、25℃において、約50〜約100,000センチポイズ、望ましくは約1000〜約20,000センチポイズの範囲にあるアンダーフィル材料の粘度を指す。本明細書で使用される「透明性」とは、最大ヘーズ百分率が15、典型的には10、最も典型的には3を指すものとする。
【0009】
アンダーフィル材料として使用するのに適した樹脂には、それだけに限定されないが、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、アクリル酸樹脂、他の有機官能化ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、フルオロカーボン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノールレゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、或いは高度に架橋した熱硬化性材料へと硬化させることのできる、当業者に公知のその他の重合体系が含まれる。(一般的なポリマーに関しては、”Polymer Handbook”第4版, Branduf, J.,; Immergut, E.H; Grulke, Eric A; Wiley Interscience Publication, New York, (1999)及び”Polymer Data Handbook”; Mark, James, Oxford University Press, New York (1999)を参照されたい。)好ましい熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、或いは遊離基重合、原子移動、ラジカル重合、開環重合、複分解開環重合、アニオン重合、カチオン重合又は当業者に公知のその他の方法によって架橋ネットワークを形成できるその他の有機官能化ポリシロキサン樹脂である。適切な硬化性シリコン樹脂には、例えば、”Chemistry and Technology of Silicone” Noll, W Academic Press (1968)に記述されている添加硬化性マトリックス及び縮合硬化性マトリックスが含まれる。
【0010】
本開示に従って使用するためにエポキシ樹脂が選択された場合、エポキシ樹脂はエポキシ官能基を有するどの有機系或いは無機系をも含めることができる。明細書及び特許請求の範囲を通して、芳香族樹脂、脂肪族樹脂及び脂環式樹脂を含む樹脂が記述されている場合、具体的に名前を挙げた樹脂も名前を挙げた樹脂部分を有する分子のどちらも想定されている。有用なエポキシ樹脂には、”Chemistry and Technology of the Epoxy Resins,” B.Ellis (Ed.) Chapman Hall 1993、New York及び”Epoxy Resins Chemistry and Technology,” C. May and Y. Tanaka, Marcell Dekker, New York (1972)に記載されているエポキシ樹脂が含まれる。エポキシ樹脂は、フィラー分散液と混合することができる硬化性モノマー及びオリゴマーである。その分子中に2つ以上のエポキシ基を有している芳香族エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂を含めたエポキシ樹脂は、高いガラス転移点を有する樹脂を形成するためには好ましい。本開示の組成物のエポキシ樹脂は、好ましくは2個以上の、より好ましくは2〜4個の官能基を有している。有用なエポキシ樹脂には、好ましくは例えば水酸化ナトリウムのような金属水酸化物などの塩基性触媒の存在下、ヒドロキシル、カルボキシル又はアミン含有化合物とエピクロロヒドリンとの反応によって生成されるものでもよいエポキシ樹脂も含まれる。また、少なくとも1個の、好ましくは2個以上の炭素−炭素二重結合を含む化合物と、ペルオキシ酸などのペルオキシドとの反応によって生成されるエポキシ樹脂も含まれる。
【0011】
好ましくは2個以上の、さらに好ましくは2〜4個の官能基を有する芳香族エポキシ樹脂を本開示で使用してもよい。それらの材料を加えると、高いガラス転移点(Tg)を有する樹脂組成物が提供される。本開示で有用な芳香族エポキシ樹脂の例には、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4′−ビフェニルエポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、二酸化ジビニルベンゼン、及び2−グリシジルフェニルグリシジルエーテルが含まれる。三官能芳香族エポキシ樹脂の例には、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ、Mitsui Chemical製のVG3101Lなどが含まれ、四官能芳香族エポキシ樹脂の例には、Ciba Geigy製のAraldite MTO163などが含まれる。一実施形態において、本開示に使用する好ましいエポキシ樹脂には、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、及びビスフェノールから誘導されたエポキシ樹脂が含まれる。
【0012】
多官能エポキシモノマーは、本開示の組成物中、全組成物の約1〜約70重量%、好ましくは約5〜35重量%の範囲の量が含まれる。場合によっては、エポキシ樹脂の量は、ノボラック樹脂硬化剤などその他の反応物のモル量に対応するように調整される。
【0013】
脂環式エポキシ樹脂も、本開示の組成物で使用することができる。この樹脂は、当技術分野においてよく知られており、本明細書で説明するように、少なくとも約1個の脂環式基及び少なくとも1個のオキシラン基を含む化合物である。より好ましい脂環式エポキシは、分子当たり約1個の脂環式基及び少なくとも2個のオキシラン環を含む化合物である。特定の例には、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシド、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、exo−exoビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、endo−exoビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リノール酸ダイマー、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス(5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル)エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキシド、ジメチルペンタンジオキシド、ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びジペンテンジオキシド、及びジグリシジルヘキサヒドロフタレートのジグリシジルエーテルが含まれる。一般的に、脂環式エポキシ樹脂は、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシドである。
【0014】
シリコーン−エポキシ樹脂を使用することができ、それは次式で表される。
【0015】
M′D′T′
式中、下付き文字b、d及びfの合計が1以上であることを条件として、下付き文字a、b、c、d、e、f及びgは0又は正の整数であり、
Mは式RSiO1/2であり、M′は式(Z)RSiO1/2であり、Dは式RSiO2/2であり、D′は式(Z)RSiO2/2であり、Tは式RSiO3/2であり、T′は式(Z)SiO3/2であり、Qは式SiO4/2であり、
式中、各R、R、R、R、Rは各々独立に水素原子、C1〜22アルキル、C1〜22アルコキシ、C2〜22アルケニル、C6〜14アリール、C6〜22アルキル置換アリール、及びC6〜22アリールアルキルであり、これらの基はハロゲン化、例えばフッ素化され、例えばC1〜22フルオロアルキルなどのフルオロカーボンを含むようになっていてもよく、或いはアミノ基を含んで例えばアミノプロピルやアミノエチルアミノプロピルなどのアミノアルキルを形成していてよく、或いは式(CHCHRO)k(式中、RはCH又はHで、kは約4〜20の範囲である)のポリエーテル基を含んでいてもよく、Zは各々独立にエポキシ基を表す。本開示の様々な実施形態で使用される「アルキル」という用語は、通常アルキル、分枝アルキルの両方、アラルキル、及びシクロアルキル基を意味する。通常アルキル基及び分枝アルキル基は、約1〜約12個の範囲の炭素原子を含むものが好ましく、例示的で非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが含まれる。シクロアルキル基は、約4〜約12個の範囲の環炭素原子を含むものが好ましい。それらシクロアルキル基の例示的で非限定的な幾つかの例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、及びシクロヘプチルが含まれる。アラルキル基は、約7〜約14個の範囲の炭素原子を含むものが好ましい。それらには、それだけに限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル、及びフェニルエチルが含まれる。本開示の様々な実施形態に使用されるアリール基は、約6〜約14個の範囲の環炭素原子を含むものが好ましい。それらアリール基の例示的で非限定的な幾つかの例には、フェニル、ビフェニル、及びナフチルが含まれる。適切なハロゲン化部分の例示的で非限定的な例は、トリフルオロプロピルである。エポキシのモノマーとオリゴマーの組合せも、本開示に使用することが企図されている。
【0016】
樹脂と共に使用するための適切な溶媒には、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、メトキシプロパノールアセテート、酢酸ブチル、メトキシエチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルアセテート、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、及びブチルカルビトールアセテートなどのセロソルブが含まれる。それら溶媒は、単独でも又は2種以上のメンバーを組み合わせて使用してもよい。
【0017】
一実施形態において、本開示において使用する好ましい溶媒は1−メトキシ−2−プロパノールである。
【0018】
本開示の組成物における改質されたフィラーを作成するのに使用されるフィラーは、水或いはその他の溶媒中にサブミクロンサイズのシリカ(SiO)粒子を分散させたコロイダルシリカであることが好ましい。この分散液は、少なくとも約10〜約85重量%の、一般的には約30〜約60重量%の二酸化ケイ素(SiO)を含む。コロイダルシリカの粒径は、一般的に約1〜約250ナノメートル(nm)の範囲、より典型的には約5nm〜約100nmの範囲で、約5nm〜約50nmの範囲が最も好ましい。このコロイダルシリカは、下記のように有機アルコキシシランで官能化されて、官能化コロイダルシリカを形成する。好ましい一実施形態において、シリカはフェニルトリメトキシシランで官能化される。
【0019】
コロイダルシリカの官能化に使用されるオルガノアルコキシシランとしては、次の式のものが挙げられる。
【0020】
(RSi(OR4−a
式中、Rは各々独立にC1−18一価炭化水素基であり、適宜アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、エポキシド基又はC6−14アリール若しくはアルキル基でさらに官能化されていてもよく、Rは各々独立にC1−18の一価炭化水素基又は水素基であり、「a」は1〜3の整数である。好ましくは、本発明に属するオルガノアルコキシシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。官能基の組合せも可能である。
【0021】
一般的に、有機アルコキシシランは、コロイダルシリカに含まれる二酸化ケイ素に対して、約1〜約60重量%、好ましくは約5〜約30重量%の範囲で存在する。
【0022】
コロイダルシリカの官能化は、官能化試薬を、脂肪族アルコールを加えておいた市販のコロイダルシリカの水性分散液に上記重量比で添加することで行ってよい。得られた組成物は、脂肪族アルコール中に官能化コロイダルシリカ及び官能化試薬を含んでおり、本明細書ではこれをプレ分散液(pre−dispersion)と定義する。脂肪族アルコールは、それだけに限定されないが、イソプロパノール、t−ブタノール、2−ブタノール、及びその組合せから選択することができる。脂肪族アルコールの量は、一般的に水性コロイダルシリカプレ分散液中の二酸化ケイ素の量の約1〜約10倍である。
【0023】
得られた有機官能化コロイダルシリカは、pHを中和するために酸又は塩基で処理することができる。シラノール及びアルコキシシラン基の縮合を促進する酸又は塩基並びにその他の触媒を、官能化プロセスを支援するのにも使用することができる。このような触媒には、チタン酸テトラブチル、チタニウムイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)、ラウリン酸ジブチルスズ、又はその組合せなどの有機チタン酸エステル及び有機スズ化合物が含まれる。場合によっては、4−ヒドロキシ−2、2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(即ち、4−ヒドロキシTEMPO)などの安定剤をこのプレ分散液に加えてもよい。得られたプレ分散液は、一般的に約50〜約100℃の範囲で、約1〜約5時間加熱する。
【0024】
次に冷却した透明なプレ分散液をさらに処理して最終分散液を形成する。適宜硬化性モノマー又はオリゴマーをさらに加えてもよいし、また適宜、それだけに限定されないが、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、及びそれらの組合せから選択される脂肪族溶媒を、もっと加えてもよい。この官能化コロイダルシリカの最終分散液を、酸又は塩基又はイオン交換樹脂で処理して、酸性又は塩基性不純物を除去することができる。
【0025】
最終分散液組成物は、手動で混合することができ、或いはドウミキサー、鎖付きカンミキサー、プラネタリミキサーなどの標準的混合装置で混合することもできる。分散液諸成分の混合は、当業者によって使用されている任意の方法により、回分、連続、又は半連続式で行うことができる。
【0026】
この官能化コロイダルシリカの最終分散液を、次に約0.5〜250Torrの真空中、約20〜約140℃で濃縮すると、溶媒、残留水分及びその組合せなどの低沸点成分が実質上除去された、官能化コロイダルシリカの透明な分散液が得られる。これは、適宜硬化性モノマーを含むことができ、本明細書では最終濃縮分散液(final concentrated dispersion)と呼ぶ。本明細書で、低沸点成分の実質上の除去とは、約15〜約75%のシリカを含む濃縮シリカ分散液が得られるように低沸点成分を除去することであると定義する。
【0027】
硬化は、約75〜約250mmHg、より好ましくは約100〜約200mmHgの真空下、一般的に約50〜約250℃、より典型的には約75〜約100℃の温度範囲で起こる。さらに、硬化は典型的に約30分〜約5時間、より典型的には約45分〜約2.5時間にわたって起こる場合もある。硬化性樹脂は、適宜約100〜約250℃、より典型的には約150〜約200℃の温度範囲で、約45分〜約3時間にわたって後硬化することができる。
【0028】
得られた組成物は、官能化二酸化ケイ素を官能化コロイダルシリカとして含んでいることが好ましい。このような場合、最終組成物中の二酸化ケイ素の量は、最終硬化樹脂組成物の重量に対して、約15〜75重量%、より好ましくは約25〜70重量%、最も好ましくは約30〜65重量%の範囲でよい。コロイド状のシリカフィラーは、開示の組成物の全体に基本的に均一に分散しており、この分布は室温で安定したままである。本明細書で「均一に分散している」とは、目に見えるいかなる沈殿物も存在せず、かかる分散液が透明であることを意味する。
【0029】
場合によっては、官能化コロイダルシリカのプレ分散液又は最終分散液を、さらに官能化してもよい。低沸点成分は、少なくとも部分的に除去されており、その後官能化コロイダルシリカの残留ヒドロキシル官能基と反応する適切なキャピング剤を、プレ分散液又は最終分散液中に存在する二酸化ケイ素の量の約0.05〜約10倍量加える。低沸点成分の部分的除去とは、本明細書で使用される場合、低沸点成分総量の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約50%が除去されることを指す。有効な量の封鎖剤で、官能化コロイダルシリカを封鎖する。本明細書では、封鎖された官能化コロイダルシリカとは、対応する封鎖されていない官能化シリカ中に存在する遊離ヒドロキシル基の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも35%が、封鎖剤との反応によって官能化された、官能化コロイダルシリカであると定義する。場合によっては、官能化されたコロイダルシリカの封鎖により、樹脂組成物の室温安定性を改善することによって、全硬化性樹脂組成物の硬化が効果的に改善される。場合によっては、封鎖された官能化コロイダルシリカを含む組成物は、コロイダルシリカが封鎖されていない類似の組成物よりもはるかに良い室温安定性を示す。
【0030】
典型的な封鎖剤には、シリル化剤などのヒドロキシル反応性材料が含まれる。シリル化剤の例には、それだけに限定されないが、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、テトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン、1−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルクロロシラン、ペンタメチルクロロジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、及びこれらの組合せが含まれる。好ましい実施形態では、ヘキサメチルジシラザンが封鎖剤として使用される。例えば、封鎖によって分散液がさらに官能化されている場合、1種以上の硬化性モノマーを加えて、最終分散液を形成する。分散液は、次に約20〜約140℃で約0.5〜48時間加熱し処理する。得られた混合物を、次にろ過する。硬化性モノマー中の官能化されたコロイダルシリカの混合物は、約0.5〜約250Torrの圧力で濃縮して最終濃縮分散液を形成する。この工程中、溶剤、残留水分、封鎖剤及びヒドロキシル基の副産物、過剰な封鎖剤、それらの組合せなどの低沸点成分は実質上除去されて、約15〜約75%のシリカを含む封鎖された官能化コロイダルシリカ分散液が得られる。
【0031】
適宜、全硬化性エポキシ組成物を形成するために、アミンエポキシ硬化剤、フェノール樹脂、カルボン酸無水物、又はノボラック硬化剤などのエポキシ硬化剤を加えてもよい。
【0032】
典型的なアミンエポキシ硬化剤には、一般的に芳香族アミン、脂肪族アミン、又はそれらの組合せが含まれる。芳香族アミンには、例えば、m−フェニレンジアミン、4,4′−メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、トルエンジアミン、ジアニシジン、及びアミンのブレンドが含まれる。脂肪族アミンには、例えば、エチレンアミン、シクロヘキシルジアミン、アルキル置換ジアミン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、及び芳香族ジアミンの水素化されたものが含まれる。アミンエポキシ硬化剤の組合せも使用することもできる。アミンエポキシ硬化剤の具体例は、”Chemistry and Technology of the Epoxy Resins” B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, 1993にも記載されている。
【0033】
典型的なフェノール樹脂には、一般的に、通常ノボラック又はレゾール樹脂と呼ばれている、フェノール−ホルムアルデヒド縮合生成物が含まれる。これらの樹脂は、異なるフェノールと様々なモル比のホルムアルデヒドとの縮合生成物でよい。フェノール樹脂硬化剤の具体例も”Chemistry and Technology of the Epoxy Resins” B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, 1993.に記載されている。これら材料は、エポキシ組成物の硬化を促進するために使用される添加物の代表ではあるが、当業者にとって、それだけには限らないが、アミノホルムアルデヒド樹脂などのその他の材料が、硬化剤として使用でき、それゆえ本発明の範囲に含まれることは明らかである。
【0034】
典型的な無水硬化剤には、一般的にメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、ピロメリト酸二無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物などが含まれる。少なくとも2種の無水物硬化剤の組合せを使用することもできる。具体例は、”Chemistry and Technology of the Epoxy Resins”; B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, (1993)及び”Epoxy Resins Chemistry and Technology”; C.A. May, Marcel Dekker編, New York, 2nd edition, (1988)に記載されている。
【0035】
適宜、硬化触媒及び/又はヒドロキシル部分を含む有機化合物がエポキシ硬化剤と共に加えられる。
【0036】
エポキシ組成物を形成するために加えることのできる硬化触媒は、それだけに限定されないが、アミン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、ホスフィン、アルミニウムアセチルアセトナート(A1(acac)3)などの金属塩、酸性化合物を有する窒素含有化合物と酸性化合物の塩、及びそれらの組合せを含む典型的なエポキシ硬化触媒から選択することができる。窒素含有化合物には、例えば、アミン化合物、ジアザ化合物、トリアザ化合物、ポリアミン化合物及びそれらの組合せが含まれる。酸性化合物には、フェノール、有機物置換フェノール、カルボン酸、スルホン酸、及びそれらの組合せが含まれる。好ましい触媒は、窒素含有化合物の塩である。窒素含有化合物の塩には、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデカンが含まれる。窒素含有化合物の塩は、例えばAir Products社から、Polycat SA−1及びPolycat SA−102として市販されている。好ましい触媒には、トリフェニルホスフィン(TPP)、N−メチルイミダゾール(NMI)、及びジラウリル酸ジブチルスズ(DiBSn)が含まれる。
【0037】
ヒドロキシル含有モノマーとして利用した有機化合物の例には、ジオール、1以上のヒドロキシル基を含む高沸点アルキルアルコールなどのアルコール、ビスフェノールが含まれる。アルキルアルコールは、線状、枝分れ又は脂環式でよく、2〜12個の炭素原子を含むものでよい。このようなアルコールには、それだけ限定されないが、エチレングリコール;プロピレングリコール即ち、1,2−及び1,3−プロピレングリコール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル、2−メチル、1,3−プロパンジオール;1,3−及び1,5−ペンタンジオール;ジプロピレングリコール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン;1,4−シクロヘキサンジメタノール及び特にそのシス型及びトランス型異性体;トリエチレングリコール;1,10−デカンジオール;及び上記のいかなる組合せも含まれる。ジオールのさらなる例には、ビスフェノールを含む。
【0038】
ビスフェノールの例示的で非限定な例には、米国特許第4217438号において属概念又は種概念として開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が含まれる。ジヒドロキシ置換芳香族化合物の幾つかの好ましい例には、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)−ジフェノール;(一般的にビスフェノールAとして知られている)2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;(一般的にビスフェノールFとして知られている)2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン;ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニルエタン;2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン;2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル、1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(SBI);(一般的にDMBPCとして知られている)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;レゾルシノール:及びC1−13アルキル置換レゾルシノールが含まれる。最も典型的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンが好ましいビスフェノール化合物である。ヒドロキシル部分を含む有機化合物の組合せも、本開示で使用することができる。
【0039】
反応性有機希釈剤も、組成物の粘度を低下させるために全硬化性エポキシ組成物に加えてよい。反応性希釈剤の例には、それだけに限定されないが、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、ドデシルグリシジルエーテル、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシド、ジ(β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)−テトラメチルジシロキサン、及びそれらの組合せが含まれる。反応性有機希釈剤は、単官能性エポキシ及び/又は1以上のエポキシ官能基を含んでいる化合物を含むことができる。このような希釈剤の代表例には、それだけに限定されないが、3−(2−ノニルフェニロキシ)−1,2−エポキシプロパン又は3−(4−ノニルフェニロキシ)−1,2−エポキシプロパンなどのフェノールグリシジルエーテルのアルキル誘導体が含まれる。使用し得るその他の希釈剤には、フェノール自体のグリシジルエーテル及び2−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−ブチルフェノール、4−ブチルフェノール、3−オクチルフェノール、4−オクチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール及び4−(フェニルイソプロピリデン)フェノールなどの置換フェノールが含まれる。
【0040】
トリアルコキシ有機シラン(例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びフマール酸ビス(トリメトキシシリルプロピル)などの定着剤も、全最終分散液に使用することができる。それを使用する場合、定着剤は、一般的に全最終分散液に対して約0.01〜約2重量%である有効量を加える。
【0041】
難燃剤は、全最終分散液に対して約0.5〜約20重量%を、全最終分散液中で適宜使用することができる。難燃剤の例には、ホスホルアミド、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールジホスフェート(RDP)、ビスフェノールAジホスフェート(BPA−DP)、有機ホスフィンオキシド、ハロゲン化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールA)、金属酸化物、金属水酸化物、及びこれらの組合せが含まれる。
【0042】
例えば、脂環式エポキシと芳香族エポキシとの混合物など、2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて使用することもできる。この場合、3個以上の官能基を有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ混合物を使用すると、それによって低いCTE、良好なフラックス性能そして高いガラス転移点を有するアンダーフィル樹脂が形成されるので特に有利である。エポキシ樹脂は、少なくとも二官能基脂環式エポキシと二官能基芳香族エポキシに加えて、三官能基のエポキシ樹脂を含むことができる。
【0043】
本開示の組成物生成方法によって、アンダーフィル材料が改善される。一実施形態にで、本開示の組成物は以下のように調製される。
【0044】
官能化コロイダルシリカを、コロイダルシリカの安定した濃縮分散液として形成する。
【0045】
約15%〜約75%のシリカを含む、官能化コロイダルシリカの濃縮分散液を形成する。
【0046】
エポキシモノマー溶液(及び適宜、硬化剤、触媒などの添加物、又は上記のその他添加物)を、官能化コロイダルシリカ分散液とブレンドする。
【0047】
溶媒を除去して、硬くて、透明なBステージ樹脂フィルムを形成する。
【0048】
Bステージ樹脂フィルムを硬化して、低CTE、高Tgの熱硬化性樹脂を形成する。
【0049】
それ故本開示は、この方法で生成したBステージ樹脂フィルム、及びBステージ樹脂フィルムの後硬化によって形成した低CTE、高Tg熱硬化性樹脂の両方を対象とする。本開示の方法に従って形成したBステージ樹脂フィルムの透明度は、これらフィルムがウェハダイシングに使用するガイドマークを不明瞭にしないので、ウェハレベルのアンダーフィル材料として特に適したものとなる。さらに、Bステージ樹脂フィルムは、ハンダリフロー操作中に良好な電気接続を提供し、硬化後に低CTE、高Tgの熱硬化性樹脂となる。
【0050】
本開示の方法に従って、現在の方法では得られない高水準の官能化コロイダルシリカを有するアンダーフィル材料が得られることが発見されたのは驚くべきことである。
【0051】
本開示で説明したように、アンダーフィル材料は、必須ではなく、ソリッドステートデバイス及び/又はコンピュータ、半導体、などの電子デバイス、或いはアンダーフィル、オーバーモールド又はそれらの組合せが必要などんな装置にでも役に立つ。アンダーフィル材料は、ウェハレベルのアンダーフィルとして及び/又は通常チップ及び基板に接続しているハンダバンプの物理的、機械的、及び電子的性質を強固にする封止材として使用することができる。本開示のアンダーフィルの材料は、向上した性能を示し、低い製造費を有していて有利である。アンダーフィルは、当技術分野で知られているいずれかの方法で実現することができる。好ましい方法は、ウェハレベルのアンダーフィルである。ウェハレベルのアンダーフィル方法には、アンダーフィル材料を、個別のチップへとダイシングする前にウェハ上にディスペンシングし、アンダーフィル材料を、その後フリップチップ式操作を経由して最終構造物に取り付けることが含まれる。本開示の組成物は、約10〜約600ミクロンのギャップを充填する能力がある。
【0052】
当業者が、本開示をより良く実用できるように、以下の実施例を、限定ではなく、例示の目的で提供する。
【実施例】
【0053】
実施例1
官能化コロイダルシリカ(FCS)プレ分散液の調製。官能化コロイダルシリカのプレ分散液を、以下の組合せにより調製した。20nm粒径SiO粒子を34重量%含む水溶性コロイダルシリカ(Nalco 1034A、Nalco Chemical Company製)675gに、イソプロパノール(Aldrich製)935gを、攪拌しながらゆっくりと添加した。次に、イソプロパノール100gに溶解したフェニルトリメトキシシラン(PTS)(Aldrich製)58.5gを、攪拌済み混合物に添加した。次に混合物を80℃で1〜2時間加熱して、透明な分散液を産出した。得られた官能化コロイダルシリカの懸濁液を室温で保管した。様々なSiOレベル(10〜30%)を有する複数の分散液を、実施例2で使用するために調製した。
【0054】
実施例2
エポキシ樹脂中の官能化コロイダルシリカ分散液の調製。2000ml丸底フラスコ中に、実施例1で調製した各プレ分散液540gを充填した。追加のプレ分散液の組成を下記表1に示す。次に、1−メトキシ−2−プロパノール(750g)を各フラスコに添加した。得られた官能化コロイダルシリカの分散液を、60mmHgの真空下、60℃で真空ストリッピングして約1Lの溶媒を除去した。十分に攪拌しながら真空度をゆっくりと下げて、分散液の重量が140gに達するまで溶剤の除去を継続した。フェニル官能化コロイダルシリカの透明な分散液は、50%SiOを含んでおり、沈殿したシリカは無かった。この分散液は、室温で3ヶ月を超えて安定であった。表1の結果により、濃縮された安定なFCS分散液の1−メトキシ−2−プロパノールを調製するためには、あるレベルのフェニル官能基が必要であることが示された(分散液1〜5まで)。メトキシプロパノールアセテート中で透明で安定な分散液が得られるように、官能化レベルを調整することができる。この調整で、官能化レベルの最適化が、他の溶媒中で調製された分散液にも可能であることが示された(分散液6及び7)。
【0055】
【表1】

実施例3
エポキシ樹脂中の封鎖した官能化コロイダルシリカ分散液の調製。1−メトキシ−2−プロパノール3.0g中、エポキシクレゾールノボラック(ECN 195XL−25、Sumitomo Chemical Co.から市販)5.33g、ノボラック硬化剤(Tamanol 758、Arakawa Chemical Industriesから市販)2.6gを混合した溶液を、約50℃に加熱した。この溶液の7.28gを、50℃で攪拌しながらFCS分散液10.0gに滴下した(上記表1のエントリ#3、メトキシプロパノール中の50%SiOを参照されたい)。透明な懸濁液を冷却し、N−メチルイミダゾール触媒溶液のメトキシプロパノールの溶液(50重量%溶液)60マイクロリットルを、攪拌しながら添加した。特性決定又は−10℃で保管するための樹脂フィルム成型には、透明な溶液を直接使用した。以下の表2示すような異なる触媒を様々な量で使用し、エポキシの幾つかの変形についてさらなるフィルムを調製した(表2は、最終樹脂組成物について示す)。
【0056】
フィルムは、エポキシ−シリカ分散液の一部をガラス板上に広げてフィルムを注型し、150mmHgの真空下、85℃に設定したオーブン中で溶媒を除去した。1〜2時間後、ガラス板を取り除くと残ったのは透明で硬いフィルムであった。場合によっては、乾燥したフィルムを220℃で5分間、続いて160℃で60分間硬化した。ガラス転移点の測定値は、Perkin Elmerから市販されているDSCを使用した示差走査熱量測定によって得た。試験した組成物とそれらのTgを以下の表2に示す。
【0057】
【表2】

実施例4
ウェハレベルアンダーフィル(WLU)材料の熱膨張係数の決定。実施例3により調製した材料の10ミクロンフィルムを、テフロン(登録商標)スラブ(寸法約102mm(4インチ)x約102mm(4インチ)x約6.4mm(0.25インチ))上に成型し、40℃、100mmHgで一晩乾燥し、透明で硬いフィルムを得て、これを次に85℃、150mmHgでさらに乾燥した。このフィルムを実施例3の方法に従って硬化し、熱膨張係数(CTE)値を熱機械分析(TMA)によって測定した。サンプルは、外科手術用ブレードを用いて4mm幅に切断し、TMAの薄膜プローブを使用してCTEを測定した。
【0058】
熱機械分析は、TA Instruments製TMA 2950Thermo Mechanical Analyzerで行った。実験パラメータは、力0.05N、静的重量5,000g、窒素パージ100mL/分、及びサンプリング間隔2.0秒/点に設定した。サンプルは、30℃で2分間平衡化し、次に5.00℃/分の温度勾配で250.00℃にし、2分間平衡化した後10.00℃/分の温度勾配で0.00℃にし、2分間平衡化した後5.00℃/分の温度勾配で250.00℃にした。
【0059】
以下の表3は、得られたCTEデータを示す。表3の第2及び第3エントリの結果は、透明なフィルムについて得られたもので、5ミクロンの溶融シリカを使用し同じ組成から生成されたフィルムと対比した。5ミクロン溶融シリカ及び官能化コロイダルシリカの双方とも、同じ50重量%の負荷速度を使用した。さらに、これら材料(表3の第2及び第3エントリ)が、官能化コロイダルシリカを充填していない樹脂(表3のエントリ1)よりCTEが低下していることは、官能化コロイダルシリカが、樹脂のCTEを減少させるのに有効であることを示している。
【0060】
【表3】

実施例5
はんだの濡れ及びリフロー実験。以下の実験は、上記の実施例で調製したウェハレベルアンダーフィルの存在下でのハンダバンプの濡れ作用を実証するために実施した。
【0061】
パートA
バンプの付いたフリップチップダイを、実施例3からの実験用アンダーフィル材料層で被覆した。このアンダーフィル被覆は、かなりの量、即ち約30%の溶媒を含んでいた。この溶媒を取り除くために、被覆したチップを真空オーブン中で、150mmHg真空下、85℃でベークした。この結果、ハンダバンプの先端がむき出しとなり、Bステージ樹脂層がチップの全活性面を被覆した。
【0062】
パートB
ハンダバンプの濡れ能力が、このBステージ樹脂層によって妨げられないことを保証するために、フラックスの薄い皮膜を、Cu被覆FR−4クーポン(MG Chemicalsから市販されているガラスエポキシシートを銅でラミネートしたもの)に塗布した。フラックス(Kester TSF 6522 Tacflux)は、ハンダバンプがCu表面に接触すると考えられる範囲にだけに塗布した。この組立て品を次にZepher対流リフローオーブン(MannCorp製)中でリフローさせた。リフローの後、ダイを手動で切り離して、Cu表面のはんだ濡れ性を検査した。Cu表面を濡らしていたはんだはテストボードに依然として密着しており、粘着性のあるフラックスの存在下、ウェハレベルのアンダーフィル材料のB段階層の存在によって、濡れ能力が妨げられていなかったことが示された。
【0063】
パートC
パートAで述べた手順を使用して、被覆したチップを調製した。これらのチップを、テストボード上で、デイジーチェーン試験パターンに組み立てた。使用した試験ボードは、62ミル厚さのMG Chemicalsから市販のFR−4ボードであった。パッド仕上げメタラジーは、Ni/Auであった。粘着性のあるフラックス(Kester TSF 6522)を、30ゲージニードルチップ及びEFD手動ディスペンサー(EFD,Inc.製)を使用して、テストボード上のむき出しになっているパッドに注入器で分注した。ダイは、MRSI505自動ピックアンドプレース装着機(Newport/MSRI Corp.製)を用いて、ボード上に設置した。この組立て品を、次にZepher式対流オーブン中でリフローさせた。2オームまでの電気抵抗読取値(Flukeマルチメータで測定)によって、はんだはウェハレベルアンダーフィルの存在下、パッドを濡らしたことが示された。Cuパッドに付着したチップ組立て品のX線解析を、対照ダイと本開示の組成物を被覆したダイの両方について、MICROFOCUS X線チューブを有するX線機器を使用して行った。X線解析の結果、Cuパッドのはんだ濡れは、リフロー後に、ハンダバンプが対照樹脂と試験樹脂の双方について類似のハンダボールの形態を有することが示された。
【0064】
以上、本明細書において、好ましい実施形態及びその他の実施形態について説明してきたが、当業者ならば、以下の特許請求の範囲で定義する範囲から逸脱することなく、さらなる実施形態に気づくことができよう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂、ポリイミド樹脂、フルオロカーボン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノールレゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリジメチルシロキサン樹脂からなる群から選択される硬化性樹脂を、溶媒及び1種以上の有機アルコキシシランで官能化されたコロイダルシリカのフィラーと組み合わせて含む透明なアンダーフィル組成物。
【請求項2】
前記溶媒が、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸ブチル、メトキシエチルエーテル、メトキシプロパノールアセテート及びメタノールからなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記コロイダルシリカのフィラーが、さらに二酸化ケイ素を前記組成物の約15重量%〜約75重量%の範囲で含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂を、溶媒及び官能化コロイダルシリカ分散液と組み合わせて含み、前記官能化コロイダルシリカが、さらに二酸化ケイ素を前記官能化コロイダルシリカ分散液の約15重量%〜約75重量%の範囲で含む、透明なアンダーフィル組成物。
【請求項5】
チップと、
基板と、
前記チップと前記基板の間にあり、芳香族エポキシ樹脂を溶媒及び官能化コロイダルシリカ分散液と組み合わせて含む透明なアンダーフィル組成物とを含み、前記官能化コロイダルシリカが1種以上の有機アルコキシシランで官能化されている、ソリッドステートデバイス。
【請求項6】
硬化性樹脂を溶媒及び1種以上の有機アルコキシシランで官能化されたコロイダルシリカのフィラーと組み合わせて含むアンダーフィルを形成するために使用される物質の透明な組成物。
【請求項7】
透明なアンダーフィル組成物を生成する方法であって、
コロイダルシリカの安定な濃縮された分散液が形成されるように、コロイダルシリカを官能化すること、
約15重量%〜約75重量%のシリカを含む官能化コロイダルシリカの濃縮された分散液を形成すること、
エポキシモノマーの溶液を、官能化コロイダルシリカ分散液とブレンドすること、
硬くて透明なBステージ樹脂フィルムを形成するために溶媒を除去すること、及び
低CTE、高Tg熱硬化性樹脂を形成するために透明なBステージ樹脂フィルムを硬化させること
を含む方法。
【請求項8】
官能化コロイダルシリカの濃縮分散液を形成する前記ステップが、官能化コロイダルシリカを、約20℃〜約140℃の範囲の温度で、約0.5Torr〜約250Torrの範囲の真空下に置くことを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
エポキシモノマーの溶液を官能化コロイダルシリカとブレンドする前記ステップが、エポキシモノマーを、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸ブチル、メトキシエチルエーテル、メトキシプロパノールアセテート及びメタノールからなる群から選択される溶媒中に置くことを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
透明なBステージ樹脂フィルムを硬化させる前記ステップが、Bステージ樹脂フィルムを、圧力範囲約75mmHg〜約250mmHgの真空下、約50℃〜約250℃の範囲の温度に置くことを含む、請求項7記載の方法。

【公表番号】特表2007−504321(P2007−504321A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525333(P2006−525333)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/024849
【国際公開番号】WO2005/024939
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】