説明

ウェハレンズアレイ及びその製造方法

【課題】硬化した樹脂成形体(ウェハレンズアレイ)自体が型にひっかからず、型から容易に抜くことができるウェハレンズアレイを提供する。
【解決手段】一次元または二次元に配列される複数のレンズ部7と、該レンズ部7を相互に連結する基板部8と、レンズ部7の内縁を含む面よりも外側から突出しているギャップ部9とを有し、レンズ部7のレンズ面7’は、それぞれ、1つまたは2つ以上の曲面を有し、ギャップ部9の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって拡がっている、ウェハレンズアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハレンズアレイおよびスタック型ウェハレンズアレイに関する。また、ウェハレンズアレイを製造するための型およびウェハレンズアレイの製造装置に関する。さらに、ウェハレンズアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の携帯端末には、小型で薄型な撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子と、固体撮像素子上に被写体像を形成するためのレンズとを備えている。携帯端末の小型化・薄型化に伴って撮像ユニットの小型化・薄型化が要請されている。また、携帯端末のコストの低下を図るため、製造工程の効率化が望まれている。このような小型のレンズを効率よく製造する方法としては、基板に複数のレンズを成形した構成であるウェハレベルレンズを製造し、基板部を切断して複数のレンズをそれぞれ分離させることでレンズモジュールを量産する方法が知られている。また、複数のレンズが形成された基板部と複数の固体撮像素子が形成されたセンサ基板とを一体に組み合わせ、レンズと固体撮像素子をセットとして含むように基板とともにセンサ基板を切断することで撮像ユニットを量産する方法も知られている。
【0003】
従来、ウェハレベルレンズについては、種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、複数のレンズが成形された基板を重ね合わせた多層のウェハレベルレンズの構成が記載されている。特許文献2には、基板上に成形材料を供給し、型によって該基板上にレンズを成形する方法が記載されている。また、複数のレンズを有するものとして、上述のウェハレベルレンズとは別に、基板と一体でない構成を有するマイクロレンズアレイも知られている。例えば、特許文献3には、基板の片面に形成された樹脂層を、孔付き基板に圧着硬化させることで、型を不要としている。また、特許文献4においては、2層構造のマイクロレンズアレイを製造するにあたり、層の光軸を合わせる技術が掲載されている。
【0004】
樹脂材料からなるウェハレンズアレイを作製する際、一般的に光または熱により硬化する樹脂材料を金型内で硬化させてウェハレンズアレイを作製し、さらにレンズ部の形状が異なる複数枚のウェハレンズアレイを適切な距離で貼り合せる必要がある。複数枚のウェハレンズアレイを所望の距離で貼り合せる手法としては適切なギャップ材料(スペーサ等)を挟み込み接着する方法や、接着剤に粒子を分散する方法や、機械的な精度を向上させる手法などが考えられる。しかしながらこのような手法では必要部材の増加によるコスト増加や高精度設備導入の必要が懸念される。
【0005】
そこで、ウェハレンズアレイそのものにギャップ部を形成できることがコスト面から最も望ましい。図1は、従来のギャップ付きウェハレンズアレイの、レンズ面に垂直な断面の概略図を示したものである。レンズ部1と、レンズ部同士を連結する基板部2・2と、基板部2からレンズ部1と反対方向に突出しているギャップ部3・3とを有する。このようなギャップ付きウェハレンズアレイは、例えば、図2に示すような方法によって製造されてきた。図2は、ウェハレンズアレイの製造方法の概略図を示したものであって、(a)はギャップ部形成しない場合のウェハレンズアレイの製造方法であり、(b)はウェハレンズアレイそのものにギャップ部を形成する場合のウェハレンズアレイの製造方法の概略図を示したものである。これらの方法では、ガラスや金属等の型4を押し上げて樹脂5に接触させ、樹脂を硬化させた後、型を下げて、離型する。ここで、ギャップなしのウェハレンズアレイではレンズ部分だけ型4を押し上げる(図2の(a))。これに対し、ギャップ部をウェハレンズアレイそのものに設ける場合、レンズ部分に加え、ギャップ部分も型4を押し上げる(図2の(b))。
【0006】
上述のとおり、ギャップ付きウェハレンズアレイは、ギャップなしのウェハレンズアレイと殆ど変わらない工程で製造ができる。しかしながら、ギャップ付きウェハレンズアレイはギャップなしのウェハレンズアレイに比べて、欠陥製品の頻度が著しく高い。すなわち、ギャップ付きウェハレンズアレイの場合、樹脂を硬化させて型を下げると、樹脂と型との収縮差によって、ウェハレンズアレイが型内の凸部(レンズ部)にひっかかりウェハレンズアレイの割れを引き起こしてしまう。また、割れないようにするためには、型からの取り外しに工夫が必要になる。結果としてウェハレンズアレイの得率や離型工程のタクトタイム上昇となりコスト高となってしまう。
【0007】
ところで、特許文献5には、複数のレンズアレイにおいてレンズアレイに設けたテーパー状の凹凸部を嵌めあうことによって、複数のレンズアレイを接合することを特徴とする、接合レンズアレイが記載されている。しかしながら、特許文献5では、テーパー部で嵌め合う形態であるため、押し込み力によってレンズアレイが破損してしまったり、テーパー部が削れてしまったりするという問題がある。また、レンズアレイの面積が大きい場合、面内でそれぞれのレンズアレイ間距離を調整するのは難しい。すなわち、しっかりと嵌っている部分と嵌っていない部分が出てくる等の問題がある。そのためレンズユニットとしての性能低下を招く。
一方、特許文献6には、円形のレンズ基材において、外形が次第に拡がるテーパー形状であることを特徴とする樹脂成形レンズが開示されている。しかしながら、特許文献6は、1個のレンズを成形する方法であり、レンズが連なったウェハレンズアレイへの適用ついては何ら言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−539276号公報
【特許文献2】国際公開第07/107025号パンフレット
【特許文献3】特開平7−248404号公報
【特許文献4】特開2003−294912号公報
【特許文献5】特開2004−151363号公報
【特許文献6】特開平11−170315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のとおり、2枚または3枚のウェハレンズアレイを貼り合わせ、最終的に個片化して製造するレンズユニットに関して、ウェハレンズアレイ同士を貼り合わせる際には、光学性能を確保するためにレンズ間距離、すなわち、ギャップを形成する必要がある。ここで、ギャップをウェハレンズアレイ自体に形成する手法として、型を図2(b)のように、ギャップ分だけ押し上げる方法は製造効率の観点から極めて望ましい。しかしながら、成形から冷却後までの工程の間に、型および樹脂は収縮し、さらに、型の収縮率と樹脂の収縮率が異なるため、型からの取り外しが困難となる。本発明はかかる問題点を回避することを目的としたものであって、硬化した樹脂成形体(ウェハレンズアレイ)自体が型にひっかからず、型から容易に抜くことができるウェハレンズアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、従来のギャップ付きウェハレンズアレイを作成する場合、型からの抜き方を工夫しても割れを回避することは、相当の困難を伴うことが分かった。そこで、本願発明者は、型からの抜き方ではなく、型の形状を変えることを思いついた。すなわち、従来の型では、図2(b)の丸印で示すように角の部分があった。そこで、この部分を無くすことにより硬化した樹脂を型から抜き易くすることを思いついた。そして、鋭意検討した結果、型におけるギャップ形成部を、レンズ形成部と反対方向に、基板形成部から、該レンズ形成部の外縁よりも外側から突出するように形成することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には以下の手段により達成された。
(1)一次元または二次元に配列される複数のレンズ部と、該レンズ部を相互に連結する基板部と、レンズ部の内縁よりも外側から突出しているギャップ部とを有し、レンズ部のレンズ面は、それぞれ、1つまたは2つ以上の曲面を有し、ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって拡がっている、ウェハレンズアレイ。
(2)前記ウェハレンズアレイの主成分が硬化型樹脂である、(1)に記載のウェハレンズアレイ。
(3)ギャップ部の表面はレンズ部の内縁を含む面と平行である、(1)または(2)に記載のウェハレンズアレイ。
(4)ギャップ部の厚さは一定である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
(5)ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって直線状の形状および/または曲線状の形状で拡がっていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
(6)ギャップ部の内側面は、レンズ部の内縁を含む面に対し、100°以上の傾斜をもつ直線状の形状および/または接線が100°以上となる円弧状の形状を有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイが、ギャップ部の表面を接合面としてウェハレンズアレイに接合されてなる、スタック型ウェハレンズアレイ。
(8)複数枚のウェハレンズアレイのうち、ギャップ部を有さないウェハレンズアレイを含むことを特徴とする(7)に記載のスタック型ウェハレンズアレイ。
(9)(7)または(8)に記載のスタック型ウェハレンズアレイをダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
(10)(9)に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、撮像素子と、前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、前記基板部と前記半導体基板とが、スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。
(11)1つまたは2つ以上の凸部を含むレンズ形成部と、レンズ形成部に連なる基板形成部と、基板形成部からレンズ形成部と反対方向に基板形成部の外縁よりも外側から突出しているギャップ形成部とを有し、ギャップ形成部は基板形成部から、レンズ部と反対方向に向かって拡がっていることを特徴とする型。
(12)前記型が金属である、(11)に記載の型。
(13)(11)または(12)に記載の型であって、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイを製造するための型。
(14)(11)〜(13)のいずれか1項に記載の型を一次元または二次元に複数個配列した構造を有するウェハレンズアレイ製造装置。
(15)(11)〜(13)のいずれか1項に記載の型を用いることを特徴とする、ギャップ付きウェハレンズアレイの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明より、効率よく、ギャップ付きウェハレンズアレイを製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は従来のギャップ付きウェハレンズアレイの形状を示す概略図であって、レンズ部の内縁を含む面に垂直な断面の概略図である。
【図2】図2は従来のウェハレンズアレイの製造方法を示す概略図であって、レンズ部の内縁を含む面に垂直な断面の概略図である。(a)はギャップなしのウェハレンズアレイの製造方法を、(b)はギャップ付きのウェハレンズアレイの製造方法を示している。
【図3】図3は本発明のウェハレンズアレイを示す概略図であって、レンズ面に垂直な断面の概略図である。
【図4】図4は、複数のレンズが配列したウェハレンズアレイの状態を示す概略図である。
【図5】図5は、ウェハレンズアレイのレンズ面の形状のバリエーションを示す概略図であって、レンズ部の内縁を含む面に垂直な断面の概略図である。
【図6】図6は本発明のウェハレンズアレイのバリエーションを示す概略図であって、レンズ部の内縁を含む面に垂直な断面の概略図である。
【図7】図7は従来のウェハレンズアレイおよび本発明のウェハレンズアレイを貼り合わせた形態を示す概略図であって、レンズ部の内縁を含む面に垂直な断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本発明のウェハレンズアレイは、一次元または二次元に配列される複数のレンズ部と、該レンズ部を相互に連結する基板部と、レンズ部の内縁よりも外側から突出しているギャップ部とを有し、レンズ部のレンズ面は、1つまたは2つ以上の曲面を有し、ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって拡がっていることを特徴とする。すなわち、ギャップ部の表面の内縁が、ギャップ部の付け根部分の内縁よりも、さらに、外側に位置する。以下、本発明を図3〜6に従って説明する。図3は、本発明のウェハレンズアレイのレンズ部の内縁を含む面に垂直な面の断面図を示したものであって、7はレンズ部を、7’はレンズ面を、8は基板部を、9はギャップ部を、10はレンズ部の内縁を、10’はレンズ部の外縁を、14はギャップ部の付け根部分の内縁を、15はギャップ部の表面の内縁をそれぞれ示している。図3では、便宜上、1つのレンズのみが示されているが、実際には、一次元または二次元にレンズ部が形成されている。通常、図4のような形状である。図4における、それぞれの「まる」部分がレンズ部7に相当する。すなわち、図4のA−A断面が図3になる。ここで、明細書では特に述べない限り、「内」とは、1つのレンズ部に対応するギャップ部の内側の方向をいい、通常は、レンズ部の凹部側であり、「外」とはその反対側、例えば、レンズの曲面の凸部側をいう。図3におけるレンズでは、矢印の方向が外方向・外側となる。もちろん、本発明におけるレンズにおける、「外」方向が、成形品においても必ずしも外方向であることを意味するものではない。ここでレンズ部の外縁は、外側のレンズ面の曲面の端のうち最も外方向にある部分をいう。レンズ部の内縁は、内側レンズ面の曲面の端のうち最も外方向にある部分をいう。例えば、図3、図5および図6におけるレンズでは、10’・10’部分がレンズ部の外縁部分となり、10・10がレンズ部の内縁部分となる。レンズ部の外縁およびレンズ部の内縁は通常円形である。従って、図5における(B)、(C)および(D)のように、レンズ面は、曲面以外の部分を有していてもよい。
【0016】
ウェハレンズアレイは、1つまたは2つ以上の曲面を有するレンズ面7’を有する。すなわち、レンズ面は、曲面および/または非曲面からなり、変曲点があってもよい内側のレンズ面7’の曲面の開始点は、ギャップ部の付け根の内縁に位置することが好ましい。このような構成とすることにより、成形がより容易となる。さらに、ギャップが設けられている側のレンズ面側に凸部を有するレンズ面が設けられていないことが好ましい。すなわち、図5の(A)、(E)および(F)のような構成が、図5の(B)、(C)および(D)の構成よりも好ましい。ギャップが設けられている側のレンズ面よりも、外側にレンズ部が設けられていない方が、より型からの離型が容易になり、割れにくくなる。
曲面とは、断面が曲線の形状を有する面であることをいう。図5に示すように、レンズ部のレンズ面の一方と他方の形状は異なっていても良い。また、本発明におけるレンズ面において、曲面は1つであっても、2つであっても良い。すなわち、レンズ部の形状は、特に限定されず、図5に示したものの他、用途などによって適宜調整することができる。
【0017】
ウェハレンズアレイは、さらに、レンズ部を相互に連結する基板部8を有する。ウェハレンズアレイは、複数枚が貼り合わされた後、基板部においてダイシングされる。
本発明のウェハレンズアレイは、さらに、基板部8であって、レンズ部の内縁10よりも外側から突出しているギャップ部9を有する。ギャップ部は好ましくは、レンズ面に対し垂直な方向に突出している。図3では、点線斜線で表した部分がギャップ部になるが、ギャップ部位は基板部から突出しており、通常一体的に成形されるため、基板部とギャップ部の明確な界面はない場合もある。本発明では、レンズ部の内縁10、ギャップ部の付け根部分の内縁14、ギャップ部の表面の内縁15の順に外側に位置する。ギャップ部9は複数枚のウェハレンズアレイを貼り合わせる際の光学設計上の距離を制御する部位として機能する。このようにギャップ部を設けることにより、スペーサー等を用いてギャップを作成しなくても、レンズをスタックすることが可能になる。これは、特に、ウェハレンズアレイにおいては、生産精度および生産効率を上げるものである。
【0018】
そして、本発明では、ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって拡がっていることを特徴とする。このような構成とすることにより、成形時の型が抜け易くなり割れを効果的に抑制することができる。さらに、ウェハレンズアレイの材料の主成分を硬化型樹脂とし、型を金属とした場合、ウェハレンズアレイは、硬化型樹脂の硬化時の収縮により、型から自発的に抜けるため、さらに製造工程を簡略化することができる。
図3では、ギャップ部の内側面は、直線状の形状となっているが、他の形状でもよく、例えば、曲線状とすることができる。図6はレンズの内側の形状の例を示したものであって、(a)は、円弧状の場合、(b)角度の異なる2つの直線状の形状からなる場合である。このほかにも、円弧状であって、曲率の異なる2つ以上の曲線状の形状からなってもよい。通常は、角度または曲率の異なる1つまたは2つ以上の直線状および/または曲線状の形状からなる。特に、2つ以上の直線状および/または曲線状とすることにより、型からの抜けがより容易になる。さらに、ギャップ部の内側面は、レンズ部の内縁を含む面に対し、100°以上の傾斜をもつ直線状の形状または、接線が100°以上となる円弧状の形状を有していることが好ましい。これらの傾斜または接線は、150°以上であることがより好ましい。ギャップ部、基板部およびレンズ部の、レンズ部の内縁を含む面に垂直な方向の段差はレンズ面を中心とした同心円状であることが好ましい。
【0019】
ウェハレンズアレイ上のレンズ部、基板部およびギャップ部は、通常、主成分が硬化型樹脂である。ここで、主成分が硬化型樹脂とは、例えば、組成の90重量%以上が硬化型樹脂であることをいい、95重量%以上が硬化型樹脂であることが好ましい。さらに、好ましくは、レンズ部と基板部とギャップ部は、実質的に同等の光学特性を有する硬化型樹脂から構成される。
本発明のウェハレンズアレイは、好ましくは、熱により硬化する樹脂組成物、あるいは活性エネルギー線の照射(例えば紫外線、電子線照射)により硬化する樹脂組成物である。型形状の転写適性等、成形性の観点から硬化前に適度な流動性を有していることが好ましい。具体的には常温で液体であり、粘度が1000〜50000mPa・s程度であるものが好ましい。一方、硬化後にはリフロー工程を通しても熱変形及び着色しない程度の耐熱性を有していることが好ましい。該観点から、硬化物のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。樹脂組成物にこのような高い耐熱性を付与するためには、分子レベルで運動性を束縛することが必要であり、有効な手段としては、(1)単位体積あたりの架橋密度を上げる手段、(2)剛直な環構造を有する樹脂を利用する手段(例えばシクロヘキサン、ノルボルナン、テトラシクロドデカン等の脂環構造、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環構造、9,9−ビフェニルフルオレン等のカルド構造、スピロビインダン等のスピロ構造を有する樹脂、具体的に例えば、特開平9−137043号公報、同10−67970号公報、特開2003−55316号公報、同2007−334018号公報、同2007−238883号公報等に記載の樹脂)、(3)無機微粒子など高いガラス転移温度を有する物質を均一に分散させる手段(例えば特開平5−209027号公報、同10−298265号公報等に記載)等が挙げられる。これらの手段は複数併用してもよく、流動性、収縮率、屈折率特性など他の特性を損なわない範囲で調整することが好ましい。形状転写精度の観点から硬化反応による体積収縮率が小さい樹脂組成物が好ましい。本発明に用いられる樹脂組成物の硬化収縮率としては10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0020】
本発明では、基板部とレンズ部とギャップ部が、実質的に同等の光学特性を有する樹脂からなることが好ましい。実質的に同等の光学特性を有する樹脂からなるとは、基板部とレンズ部とギャップ部のそれぞれの樹脂が硬化したときに、光学特性が実質的に同じになる樹脂の意味である。ここで実質的に同等の光学特性とは、屈折率の差が0.01以下であって、かつ、アッベ数の差が5以下である範囲のものをいう。屈折率の差は0.005以下がより好ましく、0.003以下が更に好ましい。アッベ数の差は、2以下がより好ましく、1以下が更に好ましく、0が最も好ましい。
【0021】
ウェハレベルレンズ上に形成した、レンズ部の最大幅は、すなわち、レンズ面のある端から他方の端までの最大幅は、その用途などによって適宜変形される。通常は、レンズ部の最大幅は、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。またウェハレンズアレイ同士を接合するための接着剤の厚みを考慮した高さとすることが好ましい。
【0022】
本発明のウェハレンズアレイは、ギャップ部の表面はレンズ部の内縁を含む面と平行であることが好ましい。ここで、ギャップの表面とは、ギャップ部のうち基板部から突出した先の平面である。この面が通常、他のウェハレンズアレイと接合する。ギャップ部の表面がレンズ部の内縁を含む面と平行であることにより、正確に複数枚のウェハレンズアレイを接合することができる。また、同様の趣旨からギャップの厚さは一定であることが好ましい。
【0023】
スタック型ウェハレンズアレイ
次に、スタック型ウェハレンズアレイについて説明する。本発明のウェハレンズアレイは、通常、ギャップ部の表面を接合面としてウェハレンズアレイに接合して、スタック型ウェハレンズアレイとして用いられる。
図7は、ウェハレンズアレイを貼り合わせた構成を記載した概略図であって、図7(a)は従来のウェハレンズアレイ同士を貼り合わせた場合を、図7(b)は従来のギャップ部を有さないウェハレンズアレイと、本発明のウェハレンズアレイを貼り合わせた場合をそれぞれ示している。従来のウェハレンズアレイ11・11を貼り合わせる場合(図7(a))、ギャップ12となる部分を別途構成する必要があった。これに対し、本発明のウェハレンズアレイ13を貼り合わせる場合(図7(b))、ギャップが既に設けられているため、レンズ同士のギャップを改めて作成する必要がない。尚、図7(b)では他方のウェハレンズアレイは、従来のウェハレンズアレイ11を用いているが、本発明のウェハレンズアレイを用いてもよい。
【0024】
ウェハレンズアレイ同士は、通常、接着剤で接合する。接着剤としては、光硬化型、熱硬化型、常温硬化型、シート型接着剤など適宜選定することができる。またウェハレンズアレイ間のギャップを更に高精度に制御する目的として粒子分散を行った接着剤を使用することも可能である。また接着剤はカーボン等が分散した黒色で、遮光性を有することがより好ましい。
接合部は1枚のウェハレンズアレイの片側であっても両側に形成されていても良い。また複数枚のウェハレンズアレイを接合する場合は、全てのウェハレンズアレイに形成する必要はなく、2枚接合の場合は1枚の片側に、3枚接合の場合は中間の2枚目ウェハレンズアレイの裏表両面に接合面を形成することが好ましい。また接合面はウェハレベルレンズ同士の接合部位としてだけでなく、フィルタやセンサ、また鏡筒との接合に用いることもできる。
【0025】
複数枚のウェハレンズアレイの光学特性及びレンズ形状は異なっていることが好ましい。特に高−低2種以上のアッベ数の異なるウェハレンズアレイを接合することが好ましい。高アッベ数側のウェハレンズアレイは、アッベ数が50以上であることが好ましく、より好ましくは55以上であり、特に好ましくは60以上である。屈折率は1.52以上であることが好ましく、より好ましくは1.55以上であり、特に好ましくは1.57以上である。低アッベ数側のウェハレンズアレイは、アッベ数が30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり、特に好ましくは20以下である。屈折率は1.60以上であることが好ましく、より好ましくは1.63以上であり、特に好ましくは1.65以上である。
またレンズ形状はこれらの光学特性に応じて適宜変形される。レンズ部は、ウェハレンズアレイの裏表に所定のレンズ面が形成されている。レンズ裏表の形状は同一であっても異なっていても良い。またレンズ形状は凸の球面に限らず、凹の球面や非球面であってもよく、凸若しくは凹の球面、または非球面を種々に組み合わせることができる。
【0026】
本発明のウェハレンズアレイは、スタック型ウェハレンズアレイとした後、ダイシングしてレンズモジュールとすることができる。このようなレンズモジュールは、撮像ユニット等に好ましく用いることができる。例えば、本発明のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、撮像素子と、前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、前記基板部と前記半導体基板とが、スペーサを介して一体に接合されたものを挙げることができる。
【0027】

次に、本発明の型について説明する。本発明の型は、1つまたは2つ以上の凸部を有するレンズ形成部と、レンズ形成部に連なる基板形成部と、基板形成部からレンズ形成部と反対方向に基板部の外縁よりも外側から突出しているギャップ形成部とを有し、ギャップ形成部は基板形成部から、レンズ部と反対方向に向かって拡がっていることを特徴とする。このような構成とすることにより、硬化した樹脂を離型する際に、型によって硬化した樹脂に割れを引き起こしたりすることがない。また、本発明のウェハレンズアレイは、本発明の型によって容易に製造できる。
本発明の型の材料は特に定めるものではないが、通常は、金属やガラスである。
【0028】
本発明は、また、このような型を一次元または二次元に複数個配列した製造装置を開示する。
本発明では、型の間に、成形材料として使用する樹脂を供給する。次に型と型を押圧することでウェハ形状にし、押圧した状態で樹脂に紫外線または熱を照射することで、樹脂を硬化させ、基板部とレンズ部を硬化させる。またこのとき複数枚のウェハレンズアレイを重ねるためのマーキングを同時に形成することが好ましい。特に、本発明の型を用いることにより、基板部とレンズ部とギャップ部を一体に形成できる点で極めて有利である。
【0029】
本発明より、効率よく、ギャップ付きウェハレンズアレイを製造することが可能になった。さらに、本発明の型を用いて硬化型樹脂製のウェハレンズアレイを製造すると、樹脂の硬化時に樹脂(ウェハレンズアレイ)自体が収縮し型から自発的に離れる。そのため、型に離型処理をする必要もなくなるという利点がある。
【符号の説明】
【0030】
1 レンズ部
2 基板部
3 ギャップ部
4 型
5 樹脂
6 プレート
7 レンズ部
7’レンズ面
8 基板部
9 ギャップ部
10 レンズ部の内縁
10’ レンズ部の外縁
11 ウェハレンズアレイ
12 ギャップ
13 ウェハレンズアレイ
14 ギャップ部の付け根部分の内縁
15 ギャップ部の表面の内縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次元または二次元に配列される複数のレンズ部と、該レンズ部を相互に連結する基板部と、レンズ部の内縁よりも外側から突出しているギャップ部とを有し、レンズ部のレンズ面は、それぞれ、1つまたは2つ以上の曲面を有し、ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって拡がっている、ウェハレンズアレイ。
【請求項2】
前記ウェハレンズアレイの主成分が硬化型樹脂である、請求項1に記載のウェハレンズアレイ。
【請求項3】
ギャップ部の表面はレンズ部の内縁を含む面と平行である、請求項1または2に記載のウェハレンズアレイ。
【請求項4】
ギャップ部の厚さは一定である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
【請求項5】
ギャップ部の内側面は、レンズ部に近い側から遠い側に向かって直線状の形状および/または曲線状の形状で拡がっていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
【請求項6】
ギャップ部の内側面は、レンズ部の内縁を含む面に対し、100°以上の傾斜をもつ直線状の形状および/または接線が100°以上となる円弧状の形状を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイが、ギャップ部の表面を接合面としてウェハレンズアレイに接合されてなる、スタック型ウェハレンズアレイ。
【請求項8】
複数枚のウェハレンズアレイのうち、ギャップ部を有さないウェハレンズアレイを含むことを特徴とする請求項7に記載のスタック型ウェハレンズアレイ。
【請求項9】
請求項7または8に記載のスタック型ウェハレンズアレイをダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、撮像素子と、前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、前記基板部と前記半導体基板とが、スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。
【請求項11】
1つまたは2つ以上の凸部を含むレンズ形成部と、レンズ形成部に連なる基板形成部と、基板形成部からレンズ形成部と反対方向に基板形成部の外縁よりも外側から突出しているギャップ形成部とを有し、ギャップ形成部は基板形成部から、レンズ部と反対方向に向かって拡がっていることを特徴とする型。
【請求項12】
前記型が金属である、請求項11に記載の型。
【請求項13】
請求項11または12に記載の型であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載のウェハレンズアレイを製造するための型。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の型を一次元または二次元に複数個配列した構造を有するウェハレンズアレイ製造装置。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の型を用いることを特徴とする、ギャップ付きウェハレンズアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209699(P2011−209699A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39995(P2011−39995)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】