説明

ウェブ表示端末および注釈処理モジュール

【課題】電子データ交換において、複数者間における知識共有を促進する。
【解決手段】ウェブ表示端末に関する。この端末は、ウェブページを取得して画面表示させ、ウェブページに注釈データが設定されているときには注釈データを処理するための注釈処理モジュールをメモリにロードする。注釈処理モジュールは、注釈データを設定するための入力を受け付け、注釈管理装置に注釈データとページIDを送信する。このモジュールは、ウェブページを取得するときに、取得対象となるウェブページに設定されている注釈データを注釈管理装置から受信し、ウェブページが画面表示されているときに注釈データを画面表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子文書の表示技術に関し、特に、電子文書を介して複数者間における知識共有を実現するための技術、に関する。
【0002】
近年、コンピュータの普及とネットワーク技術の進展にともない、ネットワークを介した電子情報の交換が盛んになっている。これにより、従来においては紙ベースで行われていた事務処理の多くが、ネットワークベースの処理に置き換えられつつある。デジタル化とネットワーク技術の進展は、情報取得コストを急激に低下させている。このような状況において、大量の情報から得られる知識を複数者間で効果的に共有するための技術が希求されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子会議システムは、クライアントシステムとサーバシステムの2層構成となっている。参加者は、クライアントシステムを介して資料としての電子データを閲覧するとともに、アノテーションデータ(注釈)を手書き感覚のユーザインタフェースにて入力する。サーバシステムは、電子データとアノテーションデータを保持する。ある参加者Aにより入力されたアノテーションデータは、別の参加者Bが電子データを閲覧するときに表示される。このような処理方法により、複数の参加者は、互いにアノテーションデータを交換しつつ電子データを閲覧できる。アノテーションデータという付加的な情報の交換により、参加者間のコンセンサス形成や知識共有が促進される。
【特許文献1】特開2004−206658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この電子会議システムは、会議という特定目的に特化して構築されるシステムのようである。しかし、企業等の組織においては既にほとんどの情報が電子化されつつあり、電子データを介したコミュニケーションの促進が必要とされる分野は、会議のような特定目的に限られるものではない。
本発明者は、特許文献1の電子会議システムのようなクローズドな情報交換システムだけではなく、インターネットのように既に電子データ交換が開始されているオープンな情報交換システムであっても、複数者間における知識共有を促進する必要性を認識した。
【0005】
本発明は、本発明者の上記着目に基づいてなされた発明であり、その主たる目的は、ネットワーク上に電子的に公開されている文書を対象として知識共有を促進するための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の別の態様は、ウェブ表示端末である。
この端末は、ウェブページを取得して画面表示させ、ウェブページに注釈データが設定されているときには注釈データを処理するための注釈処理モジュールを主記憶装置にロードする。
注釈処理モジュールは、注釈データを設定するための入力を受け付け、注釈管理装置に注釈データとページ識別データを送信する。
このモジュールは、ウェブページを取得するときに、取得対象となるウェブページに設定されている注釈データを注釈管理装置から受信し、ウェブページが画面表示されているときに注釈データを画面表示させる。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既に運用されている情報交換システムであっても、複数者間における知識共有を促進する上で効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、注釈管理システム10のハードウェア構成図である。
注釈管理システム10においては、注釈管理装置100、ウェブ表示端末200aやウェブ表示端末200bなどの複数のウェブ表示端末(以下、単に「ウェブ表示端末200」という)、ウェブサーバ300aやウェブサーバ300bなどの複数のウェブサーバ300(以下、単に「ウェブサーバ300」とよぶ)がインターネット12を介して接続されている。
ウェブ表示端末200は、インターネット12を介してウェブサーバ300にアクセスすることにより、所望のウェブページデータを取得する。ウェブサーバ300は、一般的な既知の装置である。
【0010】
注釈管理装置100は、ウェブ表示端末200のユーザ間で注釈データを交換するための仕組みを提供する。注釈データとは、ウェブ表示端末200のユーザがウェブページに設定する注釈を示すデータのことであるが、詳しくは後述する。各ウェブ表示端末200には、注釈データを処理するためのソフトウェアモジュール(後述の「注釈処理モジュール206」および「モジュールロード処理部204」)がインストールされている。注釈管理装置100は、ウェブ表示端末200のユーザのうち、注釈データ交換サービスの対象となるユーザを登録している。注釈管理装置100に登録されているユーザだけが、注釈管理装置100を介して注釈データ交換サービスを受けることができる。注釈管理装置100は、各ユーザを識別するための識別情報(以下、「ユーザID」とよぶ)を、登録されているユーザに割り当てている。注釈管理装置100とウェブ表示端末200は、XML−RPC(Remote Procedure Call)等のプロトコルによって注釈データを送受する。以下、特に断らない限り、「ユーザ」とはウェブ表示端末200のユーザを意味するものとして説明する。
【0011】
図2は、ウェブページ302と注釈304の関係を説明するための模式図である。
ウェブページ302のデータは、いずれかのウェブサーバ300に保持される。ウェブページ302のデータ形式はHTML(HyperText Markup Language)やXHTML(eXtensible HyperText Markup Language)、あるいは、XML(eXtensible Markup Language)等の構造化文書ファイル記述形式であってもよいし、また、いわゆるプレーンテキストの形式であってもよい。本実施例においてはXHTML形式であるとして説明する。
ウェブ表示端末200はURL(Uniform Resource Locator)を指定して、ウェブサーバ300からウェブページ302のデータを取得し、画面表示させる。
【0012】
注釈管理装置100にはユーザA〜Dが登録されているとする。ユーザAは、自分が使用するウェブ表示端末200のユーザインタフェースを介して、ウェブページ302の表示時に注釈304aと注釈304bを設定している。注釈304aや注釈304bは、ユーザAがウェブページ302の内容に対して設定する注釈である。各注釈304の内容を示すデータが注釈データである。
【0013】
注釈データの内容は、ユーザによる2段階の選択により特定される。1つ目の選択は、「どのような観点からの注釈か(以下、「注釈セット」とよぶ)」という判断基準の選択であり、たとえば、内容そのものをどのように評価するかという「評価」という注釈セット、誤字・脱字のチェック、あるいは、内容の正しさに関する「添削」という注釈セットなどがある。2つ目の選択は、「どのような内容の注釈か(以下、「注釈タグ」とよぶ)」という判断結果の選択である。たとえば、注釈セット「評価」が選択されたときには、「極めて重要」、「非常に重要」、「気になる」等の注釈タグの中から、適切な注釈タグが選択される。同様に、注釈セット「添削」であれば、「誤字・脱字」、「主語不明」等の注釈タグの中から、適切な注釈タグが選択される。
【0014】
ユーザBも、ウェブページ302の2箇所に注釈304cおよび注釈304dを設定している。ユーザCは、1箇所に大きな注釈304eを設定している。ユーザDは、ウェブページ302全体に注釈304fを設定している。各ユーザが設定する注釈304は、設定位置も範囲も異なっており、その設定範囲は互いに重なってもよい。注釈304の設定範囲が、注釈の対象となるデータの範囲を示す。注釈304の設定位置や設定範囲等に関する情報も注釈データの一部となる。
このように、単一のウェブページ302に対して、4人のユーザは位置や範囲、注釈タグの内容を自由に指定して各々の注釈304を設定できる。各注釈304の内容や位置等を示す注釈データは、注釈管理装置100によって一元的に管理される。
【0015】
以上からわかる通り、実際にウェブ表示端末200に表示されるデータは、ウェブページ302のようなウェブサーバ300が管理するソースドキュメントと、注釈304のような注釈管理装置100が管理する注釈データに2層化されているといえる。どのウェブページ302にどの注釈データが設定されているかという、ソースドキュメントと注釈データをマッピングするための情報は、注釈管理装置100の注釈リストにより管理される。注釈リストについては、図5や図6に関連して詳述する。ウェブ表示端末200は、ウェブページ302を取得するときに、注釈管理装置100から注釈データも取得することにより、これら2種類の情報を同一画面上にてシームレスに表示させる。
【0016】
更に、自分や他人が設定した注釈304を対象として、追加の注釈304を設定することもできる。このような注釈304は、ウェブページ302を対象とした注釈304(以下、「1次注釈」とよぶ)とは異なり、1次注釈を対象とした注釈304(以下、「2次注釈」とよぶ)である。たとえば、ユーザBは、ユーザAが設定した注釈304aに対して更に注釈304を設定してもよい。2次注釈データも注釈管理装置100によって管理される。更に、2次注釈に対する3次注釈、3次注釈に対する4次注釈のように、注釈データは無限に連鎖してもよい。
したがって、注釈管理システム10においては、ソースドキュメントグループ、1次注釈グループ、2次注釈グループ、・・・のように、ウェブ表示端末200に表示されるデータが階層化されて管理されることになる。
【0017】
図3は、注釈管理装置100の機能ブロック図である。
ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。次の図4に示すウェブ表示端末200の機能ブロック図についても同様である。
図3および図4では、注釈管理装置100やウェブ表示端末200に含まれる各ブロックの機能について説明し、それらの相互作用については図5以降、特に、図8以降にて詳述する。
【0018】
注釈管理装置100は、ユーザインタフェース処理部102、通信部104、データ処理部106およびデータ保持部108を含む。
ユーザインタフェース処理部102は、注釈管理装置100の運用者であるユーザからの入力処理やユーザに対する情報表示のようなユーザインタフェース全般に関する処理を担当する。通信部104は、ウェブ表示端末200やウェブサーバ300との通信処理を担当する。データ処理部106は、ユーザインタフェース処理部102や通信部104から取得されたデータを元にして各種のデータ処理を実行する。データ処理部106は、ユーザインタフェース処理部102、通信部104およびデータ保持部108の間のインタフェースの役割も果たす。
データ保持部108は、あらかじめ用意された設定データや、データ処理部106から受け取った注釈データなど、さまざまなデータを格納する。
【0019】
まず、データ保持部108は、注釈リスト保持部150、注釈セットデータ保持部152、通知リスト保持部154および登録ユーザデータ保持部156を含む。
注釈リスト保持部150は、ウェブページと注釈データを対応づけた注釈リストを保持する。注釈セットデータ保持部152は、注釈セットと、各注釈セットに含まれる注釈タグの関係を定義したデータを注釈セットデータとして保持する。通知リスト保持部154は、ウェブ表示端末200において注釈データが設定されたときに、その設定を通知すべきユーザを特定するためのリストである通知リストを保持する。通知リストのデータ構造については、図7に関連して詳述する。登録ユーザデータ保持部156は、注釈データ交換サービスの対象となるユーザに関する情報を保持する。具体的には、ユーザIDとユーザを特定するための通信アドレス、たとえば、電子メールアドレス等を対応づけて管理する。
【0020】
通信部104は、注釈通信部110、検索通信部112、注釈統計送信部130、注釈セット送信部132およびページ取得部134を含む。
注釈通信部110は、ウェブ表示端末200との間で注釈データを送受するブロックである。注釈通信部110は、注釈受信部114、注釈送信部116、注釈設定通知部118およびページID取得部120を含む。
注釈データが設定されると、ウェブ表示端末200は注釈データを注釈管理装置100に送信する。注釈受信部114は、ウェブ表示端末200から注釈データを受信する。一方、ウェブ表示端末200がウェブページを表示させるとき、注釈送信部116は、そのウェブページに設定されている注釈データを送信する。注釈設定通知部118は、いずれかのウェブ表示端末200において注釈データが入力され、注釈受信部114がその注釈データを受信したときに、他のウェブ表示端末200に対して注釈データが設定された旨を通知する(以下、このような通知のことを「注釈設定通知」とよぶ)。通知方法は、RSS(Really Simple Syndication)フィードや電子メールなどの既知の方法を応用すればよい。注釈設定通知の対象となるユーザは、通知リスト保持部154の通知リストにより、注釈データの内容に応じて特定されることになる。ページID取得部120は、ウェブ表示端末200がウェブサーバ300にウェブページを取得要求するときに、その取得要求対象となるウェブページのURLを取得する。ウェブページを一意に識別するために、本実施例においては「ページID」という識別情報を使用するが、URL自体がページIDとして使用されてもよい。
【0021】
ウェブ表示端末200は、ウェブページ検索を実行することがある。検索通信部112は、ウェブページ検索を支援するためにさまざまな検索に関する情報をウェブサーバ300やウェブ表示端末200との間で送受する。検索通信部112は、検索要求受信部122、検索結果送信部124、ページリスト受信部126および注釈状態送信部128を含む。
【0022】
本実施例に置いて、ウェブ表示端末200によるウェブページ検索は、主として2種類に分けることができる。
1.注釈データを検索キーとして、注釈管理装置100がウェブページ検索を実行する場合(以下、「注釈検索」とよぶ)。
2.ウェブページ本文に含まれる用語を検索キーとして、検索サーバ(ここでは、ウェブサーバ300の一種であるとして説明する)がウェブページ検索を実行する場合(以下「本文検索」とよぶ)。
もちろん、注釈キー検索と本文検索を組み合わせてウェブページ検索することも可能である。
【0023】
検索要求受信部122は、注釈検索の実行要求(以下、「注釈検索要求データ」とよぶ)をウェブ表示端末200から受信する。注釈管理装置100は、検索キーとして指定された注釈データが設定されているウェブページを注釈リストから検出し、該当のページIDをウェブ表示端末200に通知する。検索結果送信部124は、検索結果を注釈検索結果データとしてウェブ表示端末200に送信する。
【0024】
ウェブ表示端末200から、本文検索の実行要求(以下、「本文検索要求データ」とよぶ)がウェブサーバ300に送信されるとき、ページリスト受信部126はウェブサーバ300からその検索結果(以下、「該当ページリスト」とよぶ)を受信する。検索通信部112は、ウェブ表示端末200から本文検索要求データが送信されたことを検出すると、ウェブサーバ300にその検索結果を注釈管理装置100にも送信するよう要求する。注釈管理装置100は、該当ページリストに載っている各ウェブページについての注釈データの設定状態を、注釈リストを参照して検出する。注釈状態送信部128は、その検出結果を注釈状態データとして送信する。
【0025】
注釈統計送信部130は、データ処理部106に含まれる注釈統計生成部136とあわせて、注釈統計部146を形成する。注釈統計部146は、統計処理対象のウェブページに設定されている注釈データの数を計数することにより、ウェブページに対する各ユーザの注目度を定量化する。注釈統計部146としての機能は、注釈管理装置100ではなくウェブ表示端末200にて実現されてもよい。
注釈統計生成部136は、統計処理対象となるウェブページに設定されている注釈データの数を計数する。注釈統計送信部130は、この注釈データの設定数を注釈統計データとしてウェブ表示端末200に送信する。注釈統計については、図8に関連して詳述する。
【0026】
注釈セット送信部132とページ取得部134は、データ処理部106に含まれる単語抽出部138および注釈セット選択部142とあわせて、コンテキスト判定部148を形成する。
ウェブ表示端末200のユーザは、注釈データを設定するときには、まず、注釈セットを選択した後に、注釈タグを選択する。しかし、注釈対象となるウェブページの種類によっては、選ばれるべき注釈セットがある程度予測できる。たとえば、ショッピングサイトのウェブページであれば「推薦」という注釈セットが選択されやすいかもしれない。会社の財務状況を開示するウェブページであれば、「評価」という注釈セットが選択されやすいかもしれない。
【0027】
コンテキスト判定部148は、ウェブページの内容に応じて注釈セットを自動的に選択するための処理を実行する。コンテキスト判定部148としての機能は、注釈管理装置100ではなくウェブ表示端末200にて実現されてもよい。
まず、ページ取得部134は、閲覧対象となるウェブページのデータをウェブサーバ300から取得する。単語抽出部138は、ウェブページに含まれる単語を抽出する。たとえば、注釈セット「評価」には、{財務、営業、・・・、プロジェクト}等の評価対象となるべきコンテンツに関連性の高い用語があらかじめ設定されている。また、注釈セット「推薦」には、{商品、価格、品質、・・・、書籍}等の推薦対象となるべきコンテンツに関連性の高い用語があらかじめ設定されている。注釈セット選択部142は、単語抽出部138によってウェブページから抽出された単語に基づいて、どの注釈セットについての用語がもっとも頻出しているかにより、注釈セットを選択する。注釈セット送信部132は、注釈セット選択部142により選択された注釈セットをウェブ表示端末200に通知する。
【0028】
データ処理部106には、先述した注釈統計生成部136、単語抽出部138、注釈セット選択部142のほかに、検索部144が含まれる。検索部144は、検索要求受信部122から注釈検索要求データが受信されたときに、注釈リストを参照して、該当するウェブページを検索する。また、ページリスト受信部126が該当ページリストを受信したときにも、検索部144は該当ページリストに載っているウェブページのうち、注釈データが設定されているウェブページを注釈リストから検索する。
【0029】
図4は、ウェブ表示端末200の機能ブロック図である。
ウェブ表示端末200は、ページ処理部202、モジュールロード処理部204および注釈処理モジュール206を含む。
ここで、ページ処理部202は、一般的なウェブブラウザが備える機能である。ページ処理部202は、ユーザインタフェース処理部208と通信部210を含む。ユーザインタフェース処理部208は、ウェブ表示端末200のユーザからの入力処理やユーザに対するウェブページ表示のように、ユーザインタフェース全般に関する処理を担当する。通信部210は、ウェブサーバ300との通信処理を担当する。通信部210は、ページ要求部214とページ取得部216を含む。ページ要求部214は、ウェブサーバ300に対してウェブページの取得要求を送信する。ページ取得部216は、ウェブサーバ300からウェブページのデータを受信する。ユーザインタフェース処理部208のページ表示部212は、ページ取得部216によって取得されたウェブページを画面表示させる。
【0030】
モジュールロード処理部204は、注釈処理モジュール206をメモリにロードする。ウェブ表示端末200がウェブページを表示するだけであれば、通常、注釈管理装置100による注釈データ交換サービスは必要ない。実際、数十億ともいわれる膨大な数のウェブページのうち、注釈データが設定されるウェブページはその一部である。ページ要求部214は、ウェブページの取得を要求するとき、そのURLを注釈管理装置100にも通知する。注釈管理装置100のページID取得部120は、このURL通知を受信し、検索部144はそのウェブページに注釈データが設定されているかを判定する。注釈データが設定されていれば、注釈送信部116は該当注釈データをウェブ表示端末200に送信することになる。
【0031】
モジュールロード処理部204は、注釈データが受信されたとき、注釈データを処理するための注釈処理モジュール206をメモリにロードする。言い換えれば、注釈データが設定されていないウェブページを閲覧している限り、注釈処理モジュール206はメモリにロードされない。このような処理方法により、メモリやプロセッサ等の計算資源を節約できる。一旦、注釈処理モジュール206がメモリにロードされた後でも、注釈データが設定されていないウェブページを閲覧する場合、または、注釈データが設定されていないウェブページだけを所定時間継続して閲覧する場合、モジュールロード処理部204は自動的に注釈処理モジュール206を終了させてもよい。
モジュールロード処理部204は、ページ処理部202が実行を開始するときからメモリにロードされ、注釈データの受信を検出するために常駐してもよい。
【0032】
このほか、モジュールロード処理部204は、あらかじめ設定されたロード条件が成立したときに、注釈処理モジュール206をロードするとしてもよい。同様に、あらかじめ定められた終了条件が成立したときに、注釈処理モジュール206の処理を終了させてもよい。ロード条件の具体例として、注釈セット「評価」に関する注釈データが設定されているときに限って注釈処理モジュール206をロードするとしてもよい。あるいは、あるユーザAにより注釈データが設定されているウェブページであれば、注釈処理モジュール206をロードするとしてもよい。
もちろん、ウェブ表示端末200のユーザは、メニューコマンド等により、注釈処理モジュール206のロードを指示できる。
【0033】
本実施例における注釈処理モジュール206は、たとえば、DLL(Dynamic Link Library)として提供される。注釈処理モジュール206は、ユーザインタフェース処理部218、通信部220、注釈データ処理部222および注釈セットデータ保持部224を含む。
ユーザインタフェース処理部218は、注釈データの処理に関して、ウェブ表示端末200のユーザからの入力処理やユーザに対する注釈データ表示等、ユーザインタフェース全般に関する処理を担当する。通信部220は、注釈管理装置100やウェブサーバ300との通信処理を担当する。注釈データ処理部222は、ユーザインタフェース処理部218、通信部220、および注釈セットデータ保持部224の間のインタフェースの役割も果たす。
注釈セットデータ保持部224は、注釈管理装置100の注釈セットデータ保持部152と同様に、注釈セットと注釈タグを構造化して保持する。
【0034】
注釈データ処理部222は、コンテキスト判定部238と注釈統計生成部246を含む。
コンテキスト判定部238は、注釈管理装置100のコンテキスト判定部148に相当する機能を発揮し、注釈統計生成部246は、注釈管理装置100の注釈統計部146に対応する機能を発揮する。注釈管理装置100がコンテキスト判定部148を備えるときには、コンテキスト判定部238は必須機能ではない。また、注釈管理装置100が注釈統計部146を備えるときには、注釈統計生成部246は必須機能ではない。
【0035】
コンテキスト判定部238は、単語抽出部240と注釈セット選択部244を含む。単語抽出部240は、注釈管理装置100の単語抽出部138と同等の機能を備える。注釈セット選択部244は、注釈管理装置100の注釈セット選択部142と同等の機能を備える。
同様に、注釈統計生成部246は、注釈管理装置100の注釈統計生成部136と同等の機能を備える。
【0036】
ユーザインタフェース処理部218は、注釈表示部226と注釈入力部228を含む。注釈表示部226は、注釈データを表示する。注釈入力部228は、注釈データの入力を受け付ける。
【0037】
通信部220は、注釈送信部230、注釈受信部232、注釈セット受信部234、注釈統計受信部236、検索要求送信部248および検索結果受信部250を含む。
注釈送信部230は、注釈入力部228を介して入力された注釈データを注釈管理装置100に送信する。注釈受信部232は、ウェブページに設定されている注釈データを注釈管理装置100から受信する。注釈セット受信部234は、注釈管理装置100の注釈セット送信部132から注釈セットの指定を受け付ける。ただし、注釈管理装置100のコンテキスト判定部148ではなく、注釈セット選択部244が注釈セットを特定するときには、注釈セット受信部234は注釈セットを受信する必要はない。注釈統計受信部236は、注釈管理装置100の注釈統計送信部130から注釈統計データを受信する。ただし、注釈管理装置100の注釈統計部146ではなく、注釈統計生成部246が注釈統計データを生成するときには、注釈統計受信部236は注釈統計データを受信する必要はない。
【0038】
検索要求送信部248は、注釈管理装置100の検索要求受信部122に対して注釈検索要求データを送信する。検索結果受信部250は、注釈管理装置100の検索結果送信部124から注釈検索結果データを受信する。
注釈処理モジュール206は、ジャバアプレット(JavaAplet)のように注釈管理装置100から提供されるソフトウェアモジュールであってもよい。
【0039】
図5は、注釈リスト保持部150に保存される注釈リストのデータ構造のうち、1次注釈に関するデータ構造図である。
1次注釈に関する注釈データには、以下のデータが含まれている。
1.注釈セットの種類
2.注釈タグの種類
3.コメントデータ
ユーザは、注釈タグを設定するときに、その注釈に関して自由記述形式にてコメントを入力することもできる。注釈データにはテキスト形式のコメントデータが含まれることがある。
4.注釈の対象となるウェブページのページID
ページIDは、ウェブページのURLそのもので代用してもよいし、専用のIDとして割り当てられてもよい。
5.注釈データを注釈設定者以外のユーザに対しても公開するか否かを指定する公開指定データ
6.ウェブページにおける注釈対象となるデータの位置および範囲を示す位置指定データ
7.注釈データを設定したユーザを特定するためのユーザID
注釈管理装置100の注釈リスト保持部150は、ウェブ表示端末200から注釈データを受信すると、同図に示す注釈リストに注釈データを登録する。
【0040】
ユーザID欄306は、注釈を設定したユーザのユーザIDを示す。ページID欄308は、注釈データの設定対象となるページIDを示す。このページIDは、ウェブページを一意に特定するために注釈管理装置100によって割り当てられるIDであるが、URLそのものがページIDとして利用されてもよい。注釈ID欄310は、注釈IDを示す。ウェブ表示端末200から注釈データが受信されると、注釈管理装置100は、注釈データを一意に識別するためのIDとして注釈IDを割り当てる。注釈セット欄312は注釈セットを示し、注釈タグ欄314は注釈タグを示す。
【0041】
注釈位置欄316は位置指定データを示す。注釈位置は、選択文字列の対象文書における原点からのテキスト位置である。ここで、原点は構造化文書の場合はルート要素であり、プレーンテキストの場合には先頭になる。たとえば、注釈ID「02」の注釈データは、第5行第20列から第10行第30列までのテキストデータを対象として設定される注釈データである。この他にも、単純に先頭からの文字数によって注釈対象範囲を指定してもよい。たとえば、「ABCDEFGHIJK」という11文字のアルファベットが記載されたウェブページにおいて、「CDEF」を注釈対象とするときには、位置指定データを(3,6)と指定してもよい。これは、先頭から数えて3文字目から6文字目までを注釈対象とすることを意味する。これらのテキストデータの間に、タグが含まれている場合、タグ自体は文字列のカウントには影響しない。たとえば、上記文字列が実際には「<xhtml><body><p>ABC<h1>DE</h1>FG</p>HIJK</body></xhtml>」のように構造化されていたとしても、「CDEF」を注釈対象とするときの位置指定データは相変わらず(3,6)のままである。更に変形例として、ウェブページ全体に座標系を設定し、注釈対象となるデータ範囲の左上座標と右下座標によって位置指定データを設定してもよい。そのほか、ウェブページのタグを利用して、注釈対象となるデータを指定してもよい。たとえば、<car>・・・</car>というタグで囲まれたデータを注釈対象とするときには、位置指定データを該当<car>タグのXpath表現により指定してもよい。文字、タグ、座標などのいずれの形式にせよ、位置指定データは「対象となるウェブページにおいて注釈対象となるデータの範囲を指定するためのデータ」であればよい。コメント欄318はコメントデータを示す。コメントデータの入力は必須ではないが、コメントデータにより、注釈を設定したユーザの視点がより詳細化される効果がある。
【0042】
公開性欄320は注釈データの公開可否を示す。公開可否設定により、注釈データが他のユーザにも閲覧可能か否かをコントロールできる。「非公開」指定すると、注釈データは、その注釈データを設定したユーザ以外には公開されない。変形例として、所定ユーザにだけ公開する「限定公開」が可能であってもよい。たとえば、会社であれば「開発部にだけ公開」、「事業部にだけ公開」、「日本法人だけに公開」といった限定公開方法が考えられる。あるいは、注釈データを設定するユーザが、公開対象となるユーザを指定できてもよい。
【0043】
同図によれば、ユーザID「001」のユーザは、ページID「101」のウェブページに対して、注釈ID「02」、「06」、「08」および「11」の4つの注釈データを設定している。このうち、注釈ID「11」の注釈データは、注釈セット「評価」の注釈タグ「気になる」という設定になっている。また、この注釈データには、コメントデータが含まれている。また、公開設定となっているのでユーザID「001」以外のユーザも、この注釈データを自己のウェブ表示端末200にて閲覧することができる。一方、注釈ID「02」の注釈データは、非公開設定となっている。そのため、この注釈データはユーザID「101」のユーザしか、閲覧することができない私的な注釈データであるといえる。
【0044】
図6は、注釈リスト保持部150に保存される注釈リストのデータ構造のうち、2次注釈に関するデータ構造図である。
図2に関連して説明したように、注釈データに対して、更に、2次的な注釈データの設定も可能である。
2次注釈に関する注釈データには、以下のデータが含まれている。
1.注釈セットの種類
2.注釈タグの種類
3.コメントデータ
4.注釈の対象となる1次注釈の注釈ID
5.公開指定データ
6.注釈データを設定したユーザを特定するためのユーザID
注釈管理装置100の注釈リスト保持部150は、ウェブ表示端末200から2次注釈に関する注釈データを受信すると、同図に示す注釈リストに注釈データを登録する。
【0045】
ユーザID欄322は、2次注釈を設定したユーザのユーザIDを示す。対象ユーザID欄324は、2次注釈の設定対象となるページIDを示す。このページIDは、注釈対象となる1次注釈と同じページIDとならなければならない。対象注釈ID欄328は、2次注釈が設定される対象である1次注釈の注釈IDを示す。対象ページID欄326は、注釈対象となるページのページIDを示す。注釈ID欄330は、2次注釈についての注釈IDを示す。注釈セット欄332は注釈セットを示し、注釈タグ欄334は注釈タグを示す。コメント欄336はコメントデータを示し、公開性欄338は公開可否を示す。
【0046】
同図によれば、ユーザID「002」のユーザが設定した注釈ID「10−1」の2次注釈データは、注釈ID「22」の1次注釈データに対して設定される注釈である。この注釈ID「22」の1次注釈データは、図5によると、もともとはユーザID「001」のユーザがページID「102」のウェブページに設定した注釈データである。この注釈ID「22」の1次注釈データには、更に、注釈ID「06−1」の注釈データも設定されている。
こうして、図5に示した1次注釈群に対して、2次注釈群としてのデータ集合が形成されている。同様に、3次注釈群、4次注釈群としてのデータ集合が連鎖的に形成される。
【0047】
図7は、通知リスト保持部154に保存される通知リストのデータ構造図である。
注釈データが設定されると、注釈管理装置100の注釈設定通知部118は、他のユーザに注釈設定通知を送信する。同図に示す通知リストは、注釈データの内容に応じて、注釈設定通知を送信すべきユーザを定義するためのテーブルである。注釈受信部114がウェブ表示端末200において設定された注釈データを受信すると、注釈設定通知部118は通知リストを参照し、注釈データの内容に応じた通知先を特定する。
【0048】
注釈セット欄340は注釈セットを示し、注釈タグ欄342は注釈タグを示す。通知先ユーザ欄344は、通知先となるユーザを示す。同図によれば、注釈セット「評価」において注釈タグ「極めて重要」が設定されたときには、登録されているすべてのユーザに対して注釈設定通知が送信される。一方、注釈タグ「非常に重要」が設定されたときには、その注釈データを設定したユーザが所属する事業部を対象として注釈設定通知が送信される。また、注釈タグ「気になる」が設定されたときには、あらかじめ通知先ユーザ欄344にユーザIDが登録されているユーザに対してのみ注釈設定通知が送信される。
ただし、設定された注釈データが非公開設定の場合には、注釈設定通知は送信されない。
【0049】
注釈データが設定されると、注釈設定通知によってその旨が他のユーザに知らされるので、注釈データにともなうウェブページ評価プロセスが促進される。しかし、ユーザが注釈データを設定すると登録されているユーザのすべてに注釈設定通知が送信されるとすれば、各ユーザは過度に注釈設定通知を受信することになり利便性が低下しかねない。ウェブ表示端末200は、受け取るべき注釈設定通知と破棄すべき注釈設定通知を選別する機能を備えてもよいが、その場合にも注釈設定通知の送信量自体は抑制されない。そこで、本実施例の注釈管理装置100は、通知リストによって、注釈データの内容に応じて通知範囲を限定している。すなわち、注釈タグ「極めて重要」のように、周知徹底が必要な場合には全員に設定通知がなされ、「気になる」程度の注釈タグの場合には、注釈設定通知対象を絞り込んでいる。
【0050】
また、注釈タグだけでなく、注釈セットに応じて通知先を設定してもよい。たとえば、「開発レビュー」という注釈セットが定義されている場合、このような注釈セットに対する通知先は開発部に属するユーザとしてもよい。注釈セットに応じて注釈設定通知対象を指定することによっても、通知先を合理的に選定することができる。
【0051】
このほか、ユーザに応じて通知先を設定してもよい。たとえば、社長が「極めて重要」と指定した場合には、全員に通知されるが、それ以外のユーザが「極めて重要」と指定した場合には、所属部課内だけを通知対象とするとしてもよい。また、ウェブサーバ300に応じて、通知先を設定してもよい。たとえば、会社内でのみ公開されるウェブページに対して注釈データが設定されたときには通知先ユーザ欄344を参照して注釈設定通知するが、社外のウェブページに対して注釈データが設定されたときには、注釈設定通知をしないとしてもよい。更には、注釈データを設定するときに、注釈設定通知の対象となるユーザをあわせて指定してもよい。
【0052】
図8は、ウェブ表示端末200におけるウェブ閲覧画面350を示す。
ウェブ閲覧画面350は、ウェブ表示端末200のページ表示部212により表示される。表示されているウェブページに注釈データが設定されているときには、モジュールロード処理部204は注釈処理モジュール206を自動的にメモリにロードする。注釈処理ツールバー352は、注釈処理モジュール206の機能に対応するツールバーである。注釈処理モジュール206のユーザインタフェース処理部218が、この注釈処理ツールバー352によるユーザインタフェースを提供する。
ウェブページに注釈データが設定されていないときでも、ユーザはメニュー368にて所定コマンドを指定することにより、モジュールロード処理部204に注釈処理モジュール206をロードさせることができる。このときにも、注釈処理ツールバー352が表示されることになる。
【0053】
ユーザは、注釈処理ツールバー352を介して注釈データを設定する。注釈データを設定するためには、ユーザは、まず、ウェブページにおいて注釈対象となる領域をマウスドラッグにより選択する。次に、注釈セット入力領域354から注釈セットを選択し、注釈タグ入力領域356から注釈タグを選択する。なお、先述したように、注釈セット入力領域354においては、注釈管理装置100の注釈セット選択部142かウェブ表示端末200の注釈セット選択部244のいずれかによって選択された注釈セットが初期設定される。
【0054】
コメント入力ボタン358をクリックすれば、コメントデータを入力するためのダイアログボックス(図示せず)が表示される。ユーザはこのダイアログボックスを介してコメントデータを入力できる。また、このほかにも、公開可否を指定するための入力を図示しないチェックボックスにて入力できる。登録ボタン360がクリックされると注釈データの設定が完了する。注釈処理モジュール206の注釈送信部230は、設定された注釈データを注釈管理装置100に送信する。統計ボタン362については後述する。
【0055】
ユーザは、注釈データ設定領域364の注釈データを指定して同様のユーザインタフェースにより更に2次注釈を設定してもよい。このとき、注釈データそのものを対象として設定してもよいし、注釈データに含まれるコメントデータ、または、その一部を対象として2次注釈を設定してもよい。また、所定の権限が与えられることを条件として、他人が設定した注釈データを除去できてもよい。たとえば、ユーザAが「やや重要」という注釈タグを設定しているとき、ユーザBはこの注釈タグを除去して、「非常に重要」という注釈タグを新たに設定できてもよい。このような処理方法によれば、ユーザAがウェブページの1次チェックを行い、ユーザBが最終チェックを行うという多段階評価を実現できる。
【0056】
同図に示すウェブページの場合、注釈データ設定領域364に既に注釈データが設定されていたとする。そのため、ウェブページ取得時に注釈管理装置100から注釈データ設定領域364に相当する領域に注釈データが設定されている旨を通知される。注釈データの設定範囲が視認可能となるように、注釈表示部226は注釈データ設定領域364を通常とは異なる背景色にて表示させる。たとえば、背景色を反転させてもよいし、赤や黒などの所定色に背景色を設定してもよい。
ウェブ表示端末200の注釈表示部226は、ウェブページのXHMLファイルに含まれる色彩情報を変更することにより、このような表示処理を行ってもよい。あるいは、ページ表示部212がウェブページを表示させた後に、注釈表示部226が注釈データ設定領域364に所定色を上塗り表示させてもよい。色彩変更のほか、アイコンの貼り付けやフォント変更等により注釈データが設定されている旨を通知してもよい。
【0057】
ユーザが注釈データ設定領域364の上にマウスカーソルを合わせるとコメント表示領域366がツールチップ表示される。コメント表示領域366にはコメントデータが表示される。1次注釈に対して、更に、2次注釈や3次注釈が連鎖する場合には、注釈データ設定領域364の表示色の濃度や色相等を変化させてもよい。たとえば、注釈が連鎖するほど、濃い色彩に変化させてもよい。また、設定されている注釈セットや注釈タグの種類に応じて、注釈データ設定領域364の色彩やフォント等を変化させてもよい。注釈データが連鎖するときには、コメント表示領域366には、複数のコメントデータが羅列表示される。
【0058】
統計ボタン362がクリックされると注釈統計データに応じて、ウェブページの表示態様が変化する。注釈統計データ自体は、ウェブ表示端末200の注釈統計生成部246で生成されてもよいし、注釈管理装置100の注釈統計生成部136で生成されてもよいが、まずは、ウェブ表示端末200の注釈統計生成部246で生成される場合について説明する。
【0059】
1.ウェブ表示端末200にて注釈統計データを生成する場合:
ウェブページが表示されるとき、注釈受信部232はそのウェブページを対象として設定されている注釈データをまとめて受信する。注釈統計生成部246は、注釈データの設定数を計数する。
注釈統計データは、次の4種類のデータを含む。
a.ウェブページに対する注釈データの総設定数
b.ウェブページに対する注釈データの連鎖数
c.ウェブページ内における所定データに対する注釈データの総設定数
d.ウェブページ内における所定データに対する注釈データの連鎖数
注釈表示部226は、これら4種類のデータに応じて、ウェブページの表示態様を変化させる。
ウェブページに対する注釈データの総設定数(a)は、第1統計グラフ376においてグラフ表示される。ウェブページに対する注釈データの連鎖数(b)は、第2統計グラフ378においてグラフ表示される。注釈データ設定領域364における注釈データの総設定数(c)は、注釈データ設定領域364の下に表示される統計結果指示下線380の色彩によって表現される。注釈データ設定領域364における注釈データの連鎖数(d)は、統計結果指示下線380の太さによって表現される。
たとえば、注釈データ設定領域364における注釈データの総設定数(c)が所定個数、たとえば、10個以上設定されているときには、所定色、たとえば、緑色に変更し、5個以上10個未満の設定であるときには、別の色、たとえば、黄色に変更される。
このように、注釈データの設定個数に応じて、ウェブ閲覧画面350の表示態様を変化させることにより、ユーザは閲覧対象のウェブページやコンテンツに対する他のユーザの注目度を視覚的に認識できる。
その他、注釈セットや注釈タグの種類に応じて点数を設定し、上記(a)〜(d)に関するユーザの注目度を定量化してもよい。
【0060】
2.注釈管理装置100にて注釈統計データを生成する場合:
注釈管理装置100の注釈統計生成部136は、ウェブ表示端末200にてウェブページが表示されるとき、そのウェブページを対象として設定されている注釈データを検出し、その設定数を計数する。この場合にも、上記した(a)〜(d)に関する設定数が注釈統計データとなる。注釈統計送信部130は、生成された注釈統計データをウェブ表示端末200に送信し、ウェブ表示端末200の注釈統計受信部236はこれを受信する。
注釈表示部226は、注釈統計データに含まれるこれら4種類のデータに応じて、ウェブページの表示態様を変化させる。
【0061】
図9は、注釈データの設定と表示の処理過程を示すシーケンス図である。
ここでは、ウェブ表示端末200aにおいて注釈データが設定されたとして説明する。まず、ウェブ表示端末200aのページ要求部214は、ウェブサーバ300にウェブページの取得要求を送信する(S10)。注釈管理装置100のページID取得部120は、取得要求対象となるウェブページのURLを受信する(S12)。
【0062】
注釈管理装置100の検索部144は、注釈リストを参照して、受信されたURLのウェブページに対して注釈データが設定されているか判定する(S14)。このウェブページには注釈データが設定されていたとする。ウェブサーバ300は、取得要求されたウェブページのデータをウェブ表示端末200aに送信する(S16)。ウェブ表示端末200aのページ取得部216は、ウェブサーバ300からこのウェブページデータを受信する。また、注釈管理装置100は、このウェブページに対して設定されている注釈データをウェブ表示端末200aに送信する(S18)。ウェブ表示端末200aの注釈受信部232は、注釈管理装置100から注釈データを受信する。S18において送信される注釈データは、「ウェブ表示端末200aのユーザが自分で指定した注釈データ」か「公開指定されている注釈データ」の少なくともいずれかである。
【0063】
モジュールロード処理部204は、ウェブページ取得に際して注釈データが受信されたので、注釈処理モジュール206をメモリにロードする(S20)。ページ表示部212は、S16にて受信したウェブページを画面表示させる(S22)。注釈処理モジュール206は、ウェブ閲覧画面350において注釈処理ツールバー352を表示させる。また、注釈処理モジュール206の注釈表示部226は、S18にて受信した注釈データに応じて、ウェブページの表示態様を変化させる(S24)。ユーザは、注釈対象を指定した上で、注釈入力部228を介して新たに注釈データを入力できる(S26)。入力後、登録ボタン360がクリックされると、注釈送信部230は新たに設定された注釈データを注釈管理装置100に送信する(S28)。
【0064】
注釈管理装置100の注釈受信部114は、ウェブ表示端末200aから送信された注釈データを受信する。データ処理部106は、受信された注釈データを注釈リスト保持部150の注釈リストに追加登録する(S30)。注釈設定通知部118は、通知リスト保持部154の通知リストを参照して、該当ユーザに注釈設定通知を送信する(S32)。同図では、ウェブ表示端末200bのユーザが通知先として指定されていた場合を示している。
【0065】
次に、ウェブ表示端末200bは、S10において要求されたウェブページとは別のウェブページを要求したとする(S34)。このときも注釈管理装置100は、要求対象となっているウェブページのURLを取得する(S36)。注釈管理装置100の検索部144は、該当ウェブページに注釈データが設定されているかを注釈リストを参照して判定する(S38)。ここでは、注釈データが設定されていなかったとする。ウェブサーバ300はウェブ表示端末200bから要求されたウェブページデータを送信する(S40)。ウェブ表示端末200bは、ウェブページデータは取得するが、注釈管理装置100から注釈データを受け取らなかったので、注釈処理モジュール206はロードされず、通常のウェブブラウザと同様にウェブページだけを表示させる(S42)。
【0066】
注釈管理装置100が注釈統計部146を備える場合には、S14において注釈統計生成部136が注釈統計データを生成し、S18において注釈統計送信部130が注釈統計データをウェブ表示端末200aに送信する。ウェブ表示端末200aにてウェブページが表示された後、ユーザが統計ボタン362をクリックすると、注釈統計データに応じてウェブページの表示態様が変化する。
一方、注釈管理装置100ではなく、ウェブ表示端末200aが注釈統計生成部246を備える場合には、S24の段階で、注釈統計生成部246が注釈統計データを生成する。そして、統計ボタン362がクリックされると、この注釈統計データに基づいて、ウェブページの表示態様が変化することになる。
【0067】
注釈管理装置100がコンテキスト判定部148を備える場合には、S14においてページ取得部134がウェブサーバ300からウェブページデータそのものを取得する。そして、単語抽出部138はこのウェブページデータから単語を抽出する。注釈セット選択部142は、抽出された単語群と、各注釈セットに対応づけられている単語群を比較して、ウェブページの内容に応じた注釈セットを選択する。そして、注釈セット送信部132は、選択された注釈セットをウェブ表示端末200aに通知する。ウェブ表示端末200aがウェブページを表示させるときには、注釈処理ツールバー352の注釈セット入力領域354には、通知された注釈セットが初期設定される。
一方、注釈管理装置100ではなく、ウェブ表示端末200aがコンテキスト判定部238を備える場合には、S24の段階で、コンテキスト判定部238の単語抽出部240が、S16において取得されたウェブページからの単語抽出を実行する。注釈セット選択部244は、抽出された単語群と、各注釈セットに対応づけられている単語群を比較して、注釈セットを選択する。注釈表示部226は、注釈処理ツールバー352の注釈セット入力領域354に、選択された注釈セットを初期設定する。
【0068】
いずれにしても、ウェブページの内容に応じて、注釈セットが自動的に選択されることになる。そのため、注釈セット入力領域354における選択入力に関してユーザの入力の手間を軽減できる。もちろん、ユーザは、初期設定された注釈セットではなく、任意の注釈セットに変更してもよい。ウェブ表示端末200のコンテキスト判定部238においては、ユーザは注釈セットを選択するための条件を設定しておいてもよい。たとえば、社内プロジェクトに関するウェブページの場合であれば、注釈セット「評価」が初期設定されるとして注釈セット選択のための条件を設定してもよい。
【0069】
S32においては、注釈設定通知が送信されているが、変形例として、ウェブページ自体が更新されたときにもユーザに通知がなされてもよい。たとえば、ウェブサーバ300はあるウェブページの内容が更新されたときには、注釈管理装置100に更新を通知する。注釈管理装置100は、更新箇所に注釈データが設定されていたかを判定し、設定されていれば、そのような注釈データを注釈リストから削除する。また、削除対象となった注釈データを設定していたユーザに対しては、注釈データが削除された旨を通知してもよい。このような処理によれば、注釈リストから不要な注釈データを適宜排除できるので、注釈リストのサイズが過度に大きくなるのを抑制することができる。また、関係者だけに注釈データの削除を通知することにより、更新対象となったウェブページに対する興味が高いユーザにタイムリーにその更新を通知できる。応用例として、ユーザは、他者のウェブログや株価情報を示すウェブページに注釈データを設定しておけば、該当データが更新されたときに自動的に通知を受けることができる。
【0070】
図10は、注釈管理システム10の運用モデルを説明するための模式図である。
注釈管理システム10は、注釈管理装置100に登録されたユーザに注釈データ交換サービスを提供するためのシステムである。注釈管理システム10を効果的に運用するためには、注釈セットや注釈タグをどのように定義するか、また、注釈セットや注釈タグをどのような基準に基づいて選択すべきかをある程度明確化しておくことが望ましい。このようなガイドラインは、企業や部署、学校などの組織において定義は変化するかもしれない。たとえば、カスタマサポートを担当する部署においては、自社のサービスに対する顧客の苦情は「非常に重要」かもしれないが、生産現場にとっては「やや重要」かもしれない。また、重要な製品Aに対する苦情は「非常に重要」かもしれないが、そうでもない製品Bに対する苦情は「やや重要」かもしれない。
ここではある企業Aの営業部に関して、注釈管理システム10を運用するモデルについて考えてみる。
【0071】
まず、この企業内において使用する注釈セットと注釈タグを決定する。決定された注釈セットや注釈タグは、注釈管理装置100においては注釈セットデータ保持部152に注釈セットデータとして格納され、ウェブ表示端末200においても注釈セットデータ保持部224に注釈セットデータとして格納される。また、上記したような注釈セットや注釈タグを選択基準となるガイドラインは、たとえば、「全員が知るべき情報でなければ「極めて重要」という注釈タグを設定してはならない」のようにマニュアルとして定められる。ガイドライン自体もウェブページとして社内公開される。注釈セットと注釈タグの定義およびガイドラインの作成が運用のための「準備フェーズ」となる。
【0072】
準備フェーズにおいて、注釈セットと注釈タグの定義およびガイドラインの作成がなされると、「運用フェーズ」に移る。各ユーザがガイドラインにしたがって注釈データの設定・閲覧を行う。本実施例の注釈管理システム10の場合、注釈データが設定されると、他のユーザに注釈設定通知がなされる。そのため、注釈データの設定がガイドラインに沿ったものであるかは、多くのユーザによって適時的に確認される。一方、それほど重要ではないデータでありながら「極めて重要」という注釈タグを設定すると、多くのユーザに注釈設定通知がなされてしまう。このため、注釈データを設定するときに、むやみに「極めて重要」という注釈タグが設定されないように心理的抑止力が働くことになる。このような心理作用は、ガイドラインの実効性を高める上でも効果がある。
【0073】
また、運用フェーズにおいては、ユーザは注釈データにあわせてさまざまなコメントデータを記入することになる。注釈管理装置100の運用者はこれらのコメントデータに含まれる単語を収集し、注釈セットや注釈タグの再定義や拡張を行ってもよい。たとえば、コメントデータに含まれる用語のうちの頻出用語は、新たな注釈セットや注釈タグ定義のヒントになるかもしれない。
このように、準備フェーズと運用フェーズを循環させつつ注釈管理システム10を運用することにより、企業文化や組織文化を反映した注釈セットや注釈タグ、ガイドライン等が固まってゆく。いわば、運用に際して組織内で醸成されるコンセンサスを準備フェーズに反映させることができるため、組織の実態に即したコミュニケーションを促進することができる。
【0074】
以上は、注釈データの設定と閲覧に関する運用例を中心として説明したが、注釈管理システム10は「検索システム」としての側面も備える。以下、注釈データを使った検索を中心として説明する。
【0075】
図11は、注釈検索におけるウェブページ検索処理過程を示すシーケンス図である。
先述したように、ウェブページ検索は、注釈データを検索キーとする注釈検索と、ウェブページの本文に含まれるデータを検索キーとする本文検索に大別される。図11は、このうち、注釈検索に関する処理過程を示している。
ウェブ表示端末200の検索要求送信部248は、注釈セットや注釈タグなどを検索キーとして注釈検索要求データを注釈管理装置100に送信する(S50)。ここでは、注釈セットの「評価」において「非常に重要」以上の注釈タグが設定されているウェブページの検索を注釈検索要求データにより注釈管理装置100に依頼したとする。
【0076】
注釈管理装置100の検索要求受信部122は、注釈検索要求データを受信する。検索部144は注釈リストを参照し、該当するウェブページのページIDを特定する(S52)。検索結果送信部124は、検索にマッチしたウェブページのページIDのリスト、ここでは、URLのリストを注釈検索結果データとしてウェブ表示端末200に送信する(S54)。ウェブ表示端末200の検索結果受信部250は、注釈検索結果データを受信する。
次に、ウェブ表示端末200のページ要求部214は、注釈検索結果データに示されたURLを参照して、該当ウェブページのいずれかの取得をウェブサーバ300に要求したとする(S56)。ウェブ表示端末200は、URLを注釈管理装置100に通知する(S57)。そして、ページ取得部216は、ウェブサーバ300からウェブページデータを受信する(S58)。また、注釈管理装置100は、注釈データを送信する(S60)。以降の処理は、図9のS20以降に示した内容と同様である。
【0077】
このような処理方法によれば、注釈管理装置100が介在することによって注釈データを検索キーとしたウェブページ検索が実現される。ウェブ表示端末200のユーザは、たとえば、「Aさんが重要視しているページ」や「注釈タグが50個以上設定されている注目度の高いページ」、「コメントデータに「IR」という用語が含まれているページ」のように検索条件を設定することも可能である。また、検索条件が自然言語入力されると、ウェブ表示端末200は、自動的に該当する注釈タグや注釈セットを抽出し、これを検索キーとして注釈検索を実行依頼してもよい。たとえば、「Aさんが重要視しているページ」という検索文が入力されたときには、「ユーザA」が「極めて重要」、「非常に重要」、「重要」、「やや重要」のうちのいずれかの注釈タグを設定しているウェブページを検索対象としてもよい。
【0078】
注釈検索によれば、ウェブページに含まれるコンテンツそのものを対象とするのではなく、ウェブページに対する各ユーザの認知内容に応じてウェブページ検索を実行できる。もちろん、従来のようにウェブページの内容に関する検索条件が指定されてもよい。たとえば、「本文に「教育支援」という用語を含み、かつ、「経済効果が高い」という注釈タグを100人以上から設定されている特許文献」を対象とした検索方法も考えられる。
【0079】
図12は、本文検索におけるウェブページ検索処理過程を示すシーケンス図である。
まず、ウェブ表示端末200のページ要求部214は、ユーザによって指定された用語を検索キーとして、ウェブ検索サーバとしてのウェブサーバ300に検索要求を送信する(S70)。ウェブサーバ300は、指定された用語を含むウェブページを検索する(S71)。ウェブサーバ300は、該当するウェブページのページIDのリストである該当ページリストをウェブ表示端末200と注釈管理装置100の両方に通知する(S72およびS74)。このとき、ウェブサーバ300は、検索要求をしたユーザのユーザIDを注釈管理装置100に通知する。
【0080】
注釈管理装置100のページリスト受信部126は、S72において該当ページリストを受信する。検索部144は、注釈リストを参照し、該当ページリストに載っている各ウェブページに注釈データが設定されているかを検索する(S76)。注釈状態送信部128は、ウェブ表示端末200に対して、該当ウェブリストに載っている各ウェブページについての注釈データの設定状態を示す注釈状態データを送信する(S78)。
【0081】
ウェブ表示端末200の注釈受信部232は、注釈管理装置100から注釈状態データを受信する。モジュールロード処理部204は、注釈状態データの受信を契機として、注釈処理モジュール206をメモリにロードする(S80)。ページ表示部212は、S74にて受信した該当ページリストを画面表示させる(S82)。注釈表示部226は、S78にて受信された注釈状態データに応じて画面の表示態様を変更する(S84)。このときの表示態様については次の図13に関連して説明する。
【0082】
図13は、ウェブ表示端末200にて該当ページリストを閲覧するときの検索結果表示画面370の画面図である。
同図においては、ユーザは「アノテーション」という用語を本文に含むウェブページの検索を検索サーバとして機能するウェブサーバ300に依頼し、ウェブサーバ300が該当ページリストをウェブ表示端末200に送信したとする。そのため、検索ページ表示領域372aや検索ページ表示領域372bにおいては、本文に「アノテーション」という用語を含むウェブページのURLが表示されている。注釈表示領域374aと注釈表示領域374bは、検索されたウェブページに設定されている注釈データの設定状況を示している。注釈表示部226は、注釈状態データを参照して、注釈表示領域374aや注釈表示領域374bにて注釈データの設定状態を表示させる。
【0083】
検索ページ表示領域372aのウェブページには、注釈タグ「重要」と注釈タグ「気になる」が設定されている旨が示されている。また、注釈タグの設定数は、棒グラフによって示されている。同図の場合、注釈タグ「重要」は注釈タグ「気になる」よりも多く設定されていることがわかる。一方、検索ページ表示領域372bのウェブページには、注釈タグが設定されていない旨が示されている。ユーザは、検索結果表示画面370を閲覧したときに、本文検索の対象としてヒットした各ウェブページの注釈データ設定状況を視覚的に確認できる。
【0084】
以上、実施例に基づいて本発明を説明した。
本実施例に示した注釈管理システム10によれば、既に電子公開されているウェブページなどの電子文書に対して、ウェブ表示端末200のユーザは注釈データを簡易に設定・閲覧できる。事実上、既に運用されているシステムに対してウェブ表示端末200を追加し、ウェブ表示端末200に注釈処理モジュール206を追加インストールするだけで注釈管理システム10の基本機能を発揮させることができるので、既存のシステムとの親和性が高く、適用範囲を簡単に広げることができる。
【0085】
ユーザは、注釈対象を指定して、注釈セットや注釈タグを選択するだけなので、直感的な入力が可能である。注釈セットや注釈タグの定義およびその設定のためのガイドラインについて組織内でコンセンサスを取ることにより、注釈データの情報としての信頼性・再利用性を高めることができる。更に、自由記述形式のコメントデータを付記することにより、注釈に関するメモや解説等、より詳細な情報を注釈データの一部とすることもできる。自分で設定した注釈だけでなく他人が設定した注釈を閲覧できるので、他者視点からの情報解釈がしやすくなる。また、注釈データを非公開指定しておけば、自分だけのメモ書きとして注釈データを利用することも可能となる。
【0086】
注釈データは、図2に関連して説明したように、ウェブページの全部または一部を対象として設定されてもよいし、単語、文、段落、埋め込み画像等を単位として設定されてもよい。あるいは、HTMLやXMLなど、ウェブページのデータを構造化するタグを対象として設定されてもよい。
【0087】
また、注釈統計機能によれば、ウェブページの全部または一部についてそのウェブページの注目度や他者の評価傾向を視覚的・直感的に確認しやすくなる。換言すれば、ウェブページの内容以外に、多数のユーザからみて注目度が高いウェブページやコンテンツを視覚的に特定できる。
注釈管理装置100では、1次注釈データに対する2次注釈データの設定が可能であるため、ウェブページのコンテンツを叩き台として複数のユーザが注釈データを連鎖させながら議論するようなコミュニケーションも可能となる。
【0088】
注釈管理装置100またはウェブ表示端末200は、ウェブページの内容に応じて注釈セットを自動選択する機能を備えている。このような機能により、ウェブ表示端末200のユーザが注釈セットを選択する手間を軽減できる。この注釈セットの選択条件は注釈管理装置100やウェブ表示端末200のユーザが自由に設定できてもよい。たとえば、ショッピングサイトであれば、常に注釈タグ「推薦」が初期設定として選択されてもよい。
【0089】
注釈管理装置100からの注釈設定通知により、各ユーザは他のユーザによる注釈データの設定をリアルタイムに認識できる。特に、重要な注釈データが設定されたときには多くのユーザに対して注釈設定を周知させることができる。
図10に関連して説明したように、準備フェーズと運用フェーズを繰り返すことにより、注釈データに対する運用指針が定まってくると考えられる。注釈管理装置100は、注釈データの内容に応じて通知先を変更する。そのため、注釈データの設定は、他のユーザへの同報通知となるため、その影響範囲を考慮して、過度に「極めて重要」のような注釈タグが設定されるのを心理的に抑止する効果がある。
【0090】
ウェブ表示端末200は、通常は、既存のウェブブラウザとして機能し、注釈データが検出されたときには、モジュールロード処理部204が注釈処理モジュール206をメモリにロードする。そのため、ウェブ表示端末200において注釈処理モジュール206によってメモリが不必要に占有されるのを極力防ぐことができる。また、既存のウェブ表示端末200にモジュールロード処理部204と注釈処理モジュール206を追加するだけでよいので、ウェブ表示端末200のユーザサイドにおいても注釈管理システム10に参加するための手間が軽減される。
【0091】
更に、図11以降に関連して説明したように、注釈管理装置100は、注釈データを検索キーとしたウェブページ検索を実現する。これにより、ユーザからの注目度や評価傾向という要素を加味したウェブページ検索が実現される。いわば、ウェブページとして提供される1次的な情報だけでなく、ウェブページに対して付加された2次的な情報を検索キーとしたウェブページ検索が可能となる。
【0092】
注釈データを検索キーとするときには、注釈セットや注釈タグだけでなく、コメントデータに含まれる単語を検索キーとして検索を実行してもよい。また、図12や図13に関連して説明したように、ウェブページのコンテンツそのものを検索キーとする一般的なウェブ検索においても、各ウェブページに対する注釈設定状況を検索結果表示画面370にて一覧表示できる。ウェブページに張られているリンク数などからウェブページの認知度を表示する検索サービスは存在するが、本実施例の注釈管理システム10はウェブページの実際の注目度や評価傾向により対応したデータを表示できるため、ウェブページの注目度をいっそう合理的に算出できる。該当ページリストにおいては、注目度が高いウェブページほど上位に表示させてもよい。
【0093】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0094】
請求項に記載のページ識別データは、本実施例においてはページID、または、URLとして表現されている。
これら請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、本実施例において示された各機能ブロックの単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】注釈管理システムのハードウェア構成図である。
【図2】ウェブページと注釈の関係を説明するための模式図である。
【図3】注釈管理装置の機能ブロック図である。
【図4】ウェブ表示端末の機能ブロック図である。
【図5】注釈リスト保持部に保存される注釈リストのデータ構造のうち、1次注釈に関するデータ構造図である。
【図6】注釈リスト保持部に保存される注釈リストのデータ構造のうち、2次注釈に関するデータ構造図である。
【図7】通知リスト保持部に保存される通知リストのデータ構造図である。
【図8】ウェブ表示端末におけるウェブ閲覧画面を示す。
【図9】注釈データの設定と表示の処理過程を示すシーケンス図である。
【図10】注釈管理システムの運用モデルを説明するための模式図である。
【図11】注釈検索におけるウェブページ検索処理過程を示すシーケンス図である。
【図12】本文検索におけるウェブページ検索処理過程を示すシーケンス図である。
【図13】ウェブ表示端末にて該当ページリストを閲覧するときの検索結果表示画面の画面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 注釈管理システム、100 注釈管理装置、102 ユーザインタフェース処理部、104 通信部、106 データ処理部、108 データ保持部、110 注釈通信部、112 検索通信部、114 注釈受信部、116 注釈送信部、118 注釈設定通知部、120 ページID取得部、122 検索要求受信部、124 検索結果送信部、126 ページリスト受信部、128 注釈状態送信部、130 注釈統計送信部、132 注釈セット送信部、134 ページ取得部、136 注釈統計生成部、138 単語抽出部、142 注釈セット選択部、144 検索部、146 注釈統計部、148 コンテキスト判定部、150 注釈リスト保持部、152 注釈セットデータ保持部、154 通知リスト保持部、156 登録ユーザデータ保持部、200 ウェブ表示端末、202 ページ処理部、204 モジュールロード処理部、206 注釈処理モジュール、208 ユーザインタフェース処理部、210 通信部、212 ページ表示部、214 ページ要求部、216 ページ取得部、218 ユーザインタフェース処理部、220 通信部、222 注釈データ処理部、224 注釈セットデータ保持部、226 注釈表示部、228 注釈入力部、230 注釈送信部、232 注釈受信部、234 注釈セット受信部、236 注釈統計受信部、238 コンテキスト判定部、240 単語抽出部、244 注釈セット選択部、246 注釈統計生成部、248 検索要求送信部、250 検索結果受信部、300 ウェブサーバ、350 ウェブ閲覧画面、352 注釈処理ツールバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してウェブページを取得するページ取得部と、
ウェブページを画面表示させるページ表示部と、
ウェブページに対する注釈データを処理するための注釈処理モジュールと、
前記注釈処理モジュールの主記憶装置へのロードまたは主記憶装置からの退避を制御するロード処理部と、を備え、
前記注釈処理モジュールは、
画面表示されているウェブページに注釈データを設定するための入力を受け付ける注釈データ入力部と、
注釈データを管理する外部の注釈管理装置に対して、注釈データと共に注釈データを設定されたウェブページを識別するためのページ識別データを送信する注釈データ送信部と、
ウェブページを取得するときに、前記注釈管理装置に対して取得対象となるウェブページのページ識別データを通知し、そのウェブページに対して設定されている注釈データを前記注釈管理装置から受信する注釈データ受信部と、
ウェブページが画面表示されているときに、ウェブページに対して設定されている注釈データを画面表示させる注釈データ表示部と、を含み、
前記ロード処理部は、ウェブページの取得に際して、そのウェブページに設定されている注釈データが前記注釈管理装置から受信されると、前記注釈処理モジュールをメモリにロードすることを特徴とするウェブ表示端末。
【請求項2】
ウェブ表示端末にインストールされるソフトウェアモジュールであって、
画面表示されているウェブページに注釈データを設定するための入力を受け付ける注釈データ入力部と、
注釈データを管理する外部の注釈管理装置に対して、注釈データと共に注釈データを設定されたウェブページを識別するためのページ識別データを送信する注釈データ送信部と、
前記ウェブ表示端末がウェブページを取得するときに、前記注釈管理装置に対して取得対象となるウェブページのページ識別データを通知し、そのウェブページに対して設定されている注釈データを前記注釈管理装置から受信する注釈データ受信部と、
ウェブページが画面表示されているときに、ウェブページに対して設定されている注釈データを画面表示させる注釈データ表示部と、
を備えることを特徴とする注釈処理モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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