説明

ウェーハ収納容器

【課題】部品点数が増加せず、かつウェーハを傷つけることなく簡易にウェーハを収納する。
【解決手段】ウェーハ31の外周縁より外側にある外周部12と、外周部12の最上面よりも低い位置からウェーハ31の径方向内側に延出し、ウェーハ31を外周部12の最上面よりも低い位置で載置する載置部14と、を備えるウェーハ収納容器10であって、載置部14は、ウェーハ31の径方向内側に向かって下降すると共に、ウェーハ31を載置した際にウェーハ31の外周縁とのみ接触可能な第1の傾斜面27a,28aと、その第1の傾斜面27a,28aの裏側にあって、ウェーハ31の径方向内側に向かって上昇すると共に、ウェーハ収納容器10を複数重ねた際に、下方のウェーハ31の外周縁とのみ接触可能な第2の傾斜面27b,28bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを収納し、運搬または保管等するためのウェーハ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのウェーハ収納容器として、ウェーハの口径に対応する凹状の収容凹部にウェーハを収容し、該ウェーハ収納容器を複数個積み重ねるものが知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−77512号公報(図2〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているウェーハ収納容器は、ウェーハを収容凹部に単に載置する構成であるため、ウェーハとウェーハ収納容器とが面接触してしまう。このようにウェーハが面接触すると、ウェーハに傷が付いてしまうという問題がある。また、特許文献1に開示されているウェーハ収納容器では、ウェーハに傷がつくのを防止するために、ウェーハと収容凹部との間にクッションシートを配置する方法も提案されている。しかし、このような構成を採用すると、部品点数および作業工程が増加してしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数が増加せず、かつウェーハに傷をつけることなく簡易に収納できるウェーハ収納容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ウェーハの外周縁より外側にある外周部と、外周部の最上面よりも低い位置からウェーハの径方向内側に延出し、ウェーハを外周部の最上面よりも低い位置で載置する載置部と、を備えるウェーハ収納容器であって、載置部は、ウェーハの径方向内側に向かって下降すると共に、ウェーハを載置する際にウェーハの外周縁とのみ接触可能な第1の傾斜面と、その第1の傾斜面の裏側にあって、ウェーハの径方向内側に向かって上昇すると共に、ウェーハ収納容器を複数重ねた際に、下方のウェーハの外周縁とのみ接触可能な第2の傾斜面とを備えているものである。
【0007】
このように構成した場合には、ウェーハを載置部に載置した状態では、ウェーハの外周縁のみが第1の傾斜面と接触する。すなわち、ウェーハの外周縁が第1の傾斜面と線接触した状態となる。したがって、ウェーハの裏面は載置部と面接触することがなくなり、ウェーハの裏面と載置部との間には隙間が形成される。その結果、ウェーハの裏面に傷がつくのを防止できる。また、ウェーハが収納されたウェーハ収納容器を上下方向に積み重ねた場合、ウェーハは、その外周縁において該ウェーハの上側に積み重ねられたウェーハ収納容器の第2の傾斜面と接触する。そのため、ウェーハの表面も上方に積み重ねられたウェーハ収納容器の載置部と線接触する。したがって、ウェーハの表面は載置部と面接触することがなくなり、ウェーハの表面と載置部との間には隙間が形成される。その結果、ウェーハの表面に傷がつくのを防止できる。
【0008】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、外周部は、その上面に、所定の間隔で配置され、上方に突出する凸部を複数備え、第1の傾斜面は、その凸部と、凸部同士の間にある凹部の両方から連接し、ウェーハを載置した際に同じ高さで水平にウェーハを保持可能である。
【0009】
このように構成した場合には、ウェーハが収納されたウェーハ収納容器を上下方向に積み重ねた場合、積み重ねられたウェーハ収納容器の凸部同士および凹部同士が重なり合う。したがって、ウェーハ収納容器を積み重ねた状態において、ウェーハ収納容器同士がずれたり、ガタつくのを防止できる。また、ウェーハは、第1の傾斜面によって同じ高さで水平に保持されているため、ウェーハ収納容器を積み重ねた場合でも、ウェーハを安定した状態でウェーハ収納容器に収納することができる。また、ウェーハが収納されたウェーハ収納容器を順次積み重ねるといった容易な作業で、複数のウェーハを収納することが可能となる。
【0010】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、ウェーハ収納容器は、中央が貫通したリング状の形態を有するものである。このように構成した場合には、ウェーハ収納容器に収納されたウェーハが自重によって撓んだ場合、ウェーハが載置部と接触するのを防止できる。また、貫通孔を設けた部分の容積だけウェーハ収納容器の軽量化を図ることが可能となる。
【0011】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、載置部には、周方向に沿って切り欠かれた複数の切欠溝が設けられているものである。このように構成した場合には、切欠溝に挿入される突起を有する治具を用いて、ウェーハをウェーハ収納容器から取り出すことが可能となる。具体的には、治具の突起をウェーハ収納容器に設けられた切欠溝に挿入させて、ウェーハのみを突起の上に載置させ、かつウェーハ収納容器を切欠溝を介して治具の下方に落とし込むことでウェーハをウェーハ収納容器から取り出すことができる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、ウェーハ収納容器には、ウェーハの方向性を表すための印が設けられているものである。このように構成した場合には、ウェーハを一定の方向性を持たせてウェーハ収納容器に収納することが可能となる。
【0013】
したがって、ウェーハをウェーハ収納容器から取り出す際も、容易に方向性を持たせて取り出すことが可能となる。そのため、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、部品点数が増加せず、かつウェーハに傷をつけることなく簡易にウェーハを収納できる。また、ウェーハ収納容器同士を任意の数量積み重ねることが可能となり、保管スペースも少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るウェーハ収納容器10について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、ウェーハ収納容器10の斜視図である。図2は、ウェーハ収納容器10の平面図である。図3は、図2中おけるウェーハ収納容器10を矢示A方向から見た正面図である。図4は、図2中におけるウェーハ収納容器10を矢示B方向から見た正面図である。なお、以下の説明において、図1、図3、図4、図6〜図8に示す矢示Z1方向を上方および矢示Z2方向を下方とそれぞれ規定する。
【0017】
図1および図2に示すように、ウェーハ収納容器10は、平面において略リング状の形態を有している。また、ウェーハ収納容器10は、その外周側に設けられるリング状の円周部12と、円周部12の内側に設けられている載置部14とを有している。ウェーハ収納容器10の素材としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)若しくはポリエーテルイミド(PEI)等のエンジニアリングプラスチックが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの樹脂にガラスファイバーを添加したり、カーボンファイバーや導電樹脂等による導電性を付与したものでも良い。例えば、ウェーハの外径を450mmとすると、ウェーハ収納容器10の径方向の外寸は、500〜550mmの範囲が好適であるが、ウェーハ収納容器10に載置されるウェーハの外径に対応して適宜変更することができる。また、ウェーハ収納容器10は、射出成形によって製造するのが好ましいが、この製造方法に限定されるものではない。
【0018】
円周部12は、リング状の平板を周方向に沿って凹凸が交互に4回ずつ繰り返すような形態を有している。具体的には、円周部12は、上方側に突出する略円弧状の凸部22と、凸部22同士を接続すると共に、凸部22より下方側にある下板部18とから構成されている。凸部22の円周方向両端は、下板部18に連接するテーパ部20,20となっている。以下、凸部22におけるテーパ部20,20を除いた平板状の部分を上板部16といい、下板部18とその両端にあるテーパ部20,20をまとめて指す際には、凹部24という。円周部12の径方向の長さは、20〜30mmの範囲であるのが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0019】
図3および図4に示すように、上板部16の高さ方向の位置と下板部18の高さ方向の位置との間には、載置部14が設けられている。図1および図2に示すように、載置部14は、主に各凸部22の径方向内側に設けられており、その両側の端部14a,14aは、凸部22の両側に隣接する凹部24まで至る。載置部14は、上方から見て略円弧状の形態を有する。載置部14は、各凸部22の内側に設けられており、周方向に向かって隣接する載置部14の間には、略円弧状に切り欠かれた切欠溝23を有する。載置部14の中央部における外周部14bと上板部16の内周部16aとの間には、載置部14と上板部16とを連接するテーパ状の上方傾斜部25が設けられている。上述したように、載置部14は上板部16の高さ方向の位置と下板部18の高さ方向の位置との間に設けられているため、上方傾斜部25は、外周部14bから内周部16aに向かって斜め上方に傾斜している。また、載置部14の端部14a,14aにおける外周部14c,14cと凸部22の両側に位置する下板部18の内周部18a,18aとの間には、載置部14と下板部18とを連接するテーパ状の下方傾斜部26,26が設けられている。下方傾斜部26,26は、外周部14c,14cから内周部18a,18aに向かって斜め下方に傾斜している。以下、載置部14において上方傾斜部25の内側に相当する部分を下方載置部27といい、載置部14において下方傾斜部26の内側に相当する部分を上方載置部28という。
【0020】
ウェーハ収納容器10において、切欠溝23が設けられている区間には、下板部18の内周からウェーハ収納容器10の中心方向であり、かつ斜め上方に向かってテーパ状の延出部29が延出している。テーパ部20と載置部14との間の部分であり、かつ上方傾斜部25と下方傾斜部26との間の部分には、ウェーハ収納容器10を連通するような連通孔30が形成されている。上板部16、下板部18、テーパ部20、上方傾斜部25、下方傾斜部26および延出部29の厚みは、それぞれ2〜4mmであるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
図5は、ウェーハ収納容器10にウェーハ31を収納し、上下方向に積み重ねる工程を説明するための図である。
【0022】
図5に示すように、ウェーハ31は、ウェーハ収納容器10の載置部14に載置される。ウェーハ31は、直径300〜450mm程度の円盤状の形態を有している。ウェーハ収納容器10は、運搬時若しくは保管時には、それぞれウェーハ31を収納した状態で複数個積み重ね、使用される。ウェーハ収納容器10は、凸部22同士および凹部24同士が、それぞれ両端に設けられるテーパ部20によって位置あわせされて、他のウェーハ収納容器10の上に積み重ねられる。ウェーハ収納容器10が積み重ねられた状態では、各ウェーハ収納容器10の凸部22同士および凹部24同士がそれぞれ合わさるため、ウェーハ収納容器10同士がずれたり、ガタつくことはない。
【0023】
図6は、図5におけるC−C線で切断した断面図である。図7は、図6における断面図の一部を拡大した図であり、(a)は、図6において一点鎖線で囲った部分Dの拡大図であり、(b)は、図6において一点鎖線で囲った部分Eの拡大図である。図8は、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を積み重ねた状態におけるウェーハ31の状態を説明するための図であり、(a)は、下方載置部27に載置されたウェーハ31の状態を説明するための図であり、(b)は、上方載置部28に載置されたウェーハ31の状態を説明するための図である。
【0024】
図6および図7に示すように、ウェーハ収納容器10にそれぞれウェーハ31を収納し複数個積み重ねた状態では、ウェーハ31の外周部31aは、載置部14によって狭持されている。図7(a),(b)に示すように、載置部14の断面形状は、ウェーハ収納容器10における外側から内側に向かって徐々に先細りになるような形状を有している。
【0025】
図7(a)に示すように、ウェーハ31において下方載置部27に載置された部分は、該ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10の下方載置部27とその上方に積み重ねられたウェーハ収納容器10の下方載置部27とによって狭持されている。上述したように、載置部14の断面は、外側から内側に向かって徐々に先細りとなる形状を有している。そのため、図8(a)に示すように、下方載置部27は、その表側の面でありウェーハ31の径方向内側に向かって下方に傾斜する第1の傾斜面27aと、その裏側の面でありウェーハ31の径方向内側に向かって上方に傾斜する第2の傾斜面27bとを有する。一方、ウェーハ31の外周の断面形状は略円弧状となっている。したがって、ウェーハ31が下方載置部27によって狭持された状態では、ウェーハ31の外周部31aの下側の接点部31bのみが、収納されているウェーハ収納容器10における下方載置部27の第1の傾斜面27aと接触する。また、ウェーハ31の外周部31aの上側の接点部31cのみが、上方に積み重ねられているウェーハ収納容器10における下方載置部27の第2の傾斜面27bと接触している。すなわち、ウェーハ31と下方載置部27との間には隙間Gを有する状態となっている。したがって、ウェーハ31の上面31dおよび下面31eは下方載置部27と面接触しない。また、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を積み重ねた状態では、ウェーハ31は、積み重ねられたウェーハ収納容器10の自重によって下方に向かって押圧されている。しかし、ウェーハ31は接点部31bおよび接点部31cにおいて第1の傾斜面27aおよび第2の傾斜面27bとそれぞれ線接触している。その結果、ウェーハ31がウェーハ収納容器10に対してガタつくことがない。なお、上方傾斜部25が下方載置部27の延出方向に対して形成する角度αは、35〜55度の範囲が好ましいが、ウェーハ収納容器10の外形寸法に応じて適宜変更することができる。また、具体的には、図8(a)に示すように、ウェーハ収納容器10が積み重ねられた状態では、上に積み重ねられたウェーハ収納容器10における上方傾斜部25の外側面25bと、その下のウェーハ収納容器10における上方傾斜部10の内側面25aとが密着して接触する。そのため、ウェーハ収納容器10同士のガタつきを防止できる。
【0026】
一方、図7(b)に示すように、ウェーハ31において上方載置部28に載置された部分は、該ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10の上方載置部28とその上方に積み重ねられたウェーハ収納容器10の上方載置部28とによって狭持されている。図8(b)に示すように、上方載置部28は、その表側の面でありウェーハ31の径方向内側に向かって下方に傾斜する第1の傾斜面28aと、その裏側の面でありウェーハ31の径方向内側に向かって上方に傾斜する第2の傾斜面28bとを有する。一方、ウェーハ31の外周の断面形状は略円弧状となっている。したがって、ウェーハ31が上方載置部28によって狭持された状態では、ウェーハ31の外周部31aの下側の接点部31bのみが、収納されているウェーハ収納容器10における上方載置部28の第1の傾斜面28aと接触する。また、ウェーハ31の外周部31aの上側の接点部31cのみが、上方に積み重ねられているウェーハ収納容器10における上方載置部28の第2の傾斜面28bと接触している。すなわち、ウェーハ31と上方載置部28との間には隙間Hを有する状態となっている。したがって、ウェーハ31の上面31dおよび下面31eは上方載置部28と面接触しない。また、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を積み重ねた状態では、ウェーハ31は積み重ねられたウェーハ収納容器10の自重によって下方に向かって押圧される。しかし、ウェーハ31は接点部31bおよび31cにおいて第1の傾斜面28aおよび第2の傾斜面28bとそれぞれ線接触している。その結果、ウェーハ31がウェーハ収納容器10に対してガタつくことがない。なお、下方傾斜部26が上方載置部28の延出方向に対して形成する角度βは、35〜55度の範囲が好ましいが、ウェーハ収納容器10の外形寸法に応じて適宜変更することができる。また、具体的には、図8(b)に示すように、ウェーハ収納容器10が積み重ねられた状態では、上に積み重ねられたウェーハ収納容器10における下方傾斜部26の外側面26bと、その下のウェーハ収納容器10における下方傾斜部10の内側面26aとが密着して接触する。そのため、ウェーハ収納容器10同士のガタつきを防止できる。
【0027】
図9は、ウェーハ収納容器10の構成を示す斜視図であり、(a)は、ウェーハ収納容器10にタブ32を設けた場合の構成を示す斜視図であり、(b)は、ウェーハ収納容器10にノッチ33を設けた場合の構成を示す斜視図である。
【0028】
ウェーハ31には、一般的にウェーハ31の結晶の方向性を示すためのノッチやオリエンテーションフラットが設けられている。そのため、図9に示すように、ウェーハ収納容器10における上板部16の表面には、ウェーハ31を一定の方向性を持たせて載置するための目印となるタブ32、ノッチ33あるいは貫通孔(不図示)を設けることができる。また、ウェーハ収納容器10の内部にウェーハ31の情報が内蔵されたICチップを組み込んだり、ウェーハ収納容器10の表面にウェーハ31の情報が記載されたバーコードを印刷したりすることで、ウェーハ収納容器10からその内部に収納されているウェーハ31の情報を読み取れるようにしても良い。
【0029】
図10は、ウェーハ31をウェーハ収納容器10から取り出す方法を説明するための図であり、(a)は、ウェーハ31をウェーハ収納容器10から取り出す際に用いられる治具40の構成を示す斜視図であり、(b)は、ウェーハ収納容器10からウェーハ31を取り出す工程を説明するための図であり、(c)は、治具40により、ウェーハ31がウェーハ収納容器10から取り出された状態を示す図である。
【0030】
積み重ねられたウェーハ収納容器10は、輸送用のケースに納められた後、目的地に輸送される。ウェーハ収納容器10が目的地に輸送されると、該ウェーハ収納容器10からウェーハ31が取り出される。一般的に、ウェーハ収納容器10からウェーハ31を取り出すためには、機械や治具等が用いられる。本実施の形態では、ウェーハ31の取り出しの際、図10(a)に示す治具40が用いられる。図10(a)に示すように、治具40は、円盤状の底板部42と、該円板部42の外縁から上方に立設される4つの突起部44とを有する。突起部44は、円板部42の外縁において周方向に向かって90度おきに設けられている。突起部44を水平に切断した際の断面形状は、略円弧形状である。また、突起部44は、ウェーハ収納容器10に設けられる切欠溝23の位置および形状と対応するように設けられている。治具40は、地面や基台の上に据え置きにするようにしても良いし、ロボットアーム等の機器の上に取り付けるようにしても良い。
【0031】
積み重ねられたウェーハ収納容器10からウェーハ収納容器10が1つずつ取り出され、該ウェーハ収納容器10からウェーハ31が取り出される。図10(b)に示すように、取り出されたウェーハ収納容器10は、所定の位置に取り付けられた治具40の上方に配置される(配置工程)。その際、ウェーハ収納容器10に設けられた切欠溝23の位置が突起部44の位置と対応するように配置させる。そして、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を治具40に向けて降下させていく。すると、突起部44が切欠溝23に挿入される。切欠溝23に挿入された突起部44は、ウェーハ収納容器10に収納されたウェーハ31に当接し、ウェーハ31のみが突起部44の上方に残り、ウェーハ収納容器10は、切欠溝23を介して治具40の底板部42に向けて落ちる(降下工程)。以上のようにしてウェーハ31を突起部44の上面に載置させた(ウェーハ収納容器10から取り出した)後(図10(c)参照)、突起部44上からウェーハ31を所望の場所に移動させる(移動工程)。ウェーハ31が突起部44の上面に載置された状態では、ウェーハ31をロボット等によって下方から容易にすくい上げることが可能となる。また、ロボットアーム等を突起部44の外側から該ウェーハ31の外縁部下方に配置させ、該ロボットアームを上昇させることによって、ウェーハ31を突起部44上から移動させることも可能である。上述の配置工程、降下工程および移動工程はロボット等の機械によって行うのが好ましいが、特に限定されることはなく、人が行うようにしても差しつかえない。ロボット等が配置工程および降下工程を行う場合、ロボット等によって、ウェーハ収納容器10の凸部22の表面を吸着させて、ウェーハ収納容器10を移動させるのが好ましい。しかし、この方法に特に限定されるものではない。
【0032】
以上のように構成されたウェーハ収納容器10を積み重ねた状態では、ウェーハ31の接点部31bは、第1の傾斜面27aおよび第1の傾斜面28aの双方と線接触している。そのため、ウェーハ31の下面31eが下方載置部27および上方載置部28のそれぞれと面接触しない。さらに、ウェーハ31の接点部31cは、第2の傾斜面27bおよび第2の傾斜面28bの双方と線接触している。そのため、ウェーハ31の上面31dが下方載置部27および上方載置部28のそれぞれと面接触しない。すなわち、ウェーハ31の上面31dと下方載置部27および上方載置部28のそれぞれとの間には、隙間Gが形成されると共に、下面31eと下方載置部27および上方載置部28のそれぞれとの間には、隙間Hが形成される。その結果、ウェーハ31の表面に傷がつくのを防止できる。
【0033】
また、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を積み重ねた状態では、ウェーハ31は、下方載置部27,27および上方載置部28,28との間にそれぞれ隙間Gおよび隙間Hを有した状態で、載置部14によって狭持される。すなわち、ウェーハ31の接点部31bおよび接点部31cのそれぞれは、下方載置部27および上方載置部28のそれぞれと線接触した状態となる。したがって、ウェーハ収納容器10を積み重ねることによって、ウェーハ31をウェーハ収納容器10の内部にてガタつくことなく収納することが可能となる。また、ウェーハ31が収納されたウェーハ収納容器10を順次積み重ねるといった容易な作業で、複数のウェーハ10を収納することが可能となるため、収納作業の効率を向上させることが可能となる。
【0034】
また、ウェーハ収納容器10は、凸部22および凹部24のそれぞれが合わさるように他のウェーハ収納容器10の上に積み重ねられる。したがって、ウェーハ収納容器10が積み重ねられた状態では、各ウェーハ収納容器10の凸部22同士および凹部24同士がそれぞれ嵌まり合っている。したがって、ウェーハ収納容器10を積み重ねた状態において、ウェーハ収納容器10同士がずれたり、ガタつくのを防止できる。
【0035】
また、ウェーハ収納容器10は、中央に貫通孔を有するリング状の形態を有している。そのため、ウェーハ31が自重によって撓んだ場合、ウェーハ31が載置部14と接触するのを防止できる。また、中央が開口しているため、その開口部の容積だけウェーハ収納容器10の軽量化を図ることが可能となる。
【0036】
また、ウェーハ収納容器10には、切欠溝23が設けられている。そのため、治具40の突起部44を切欠溝23に挿入することで、ウェーハ収納容器10を切欠溝23を介して治具40の下方に落とし込み、ウェーハ31のみを突起の上に残すことができる。その結果、ウェーハ31をウェーハ収納容器10から容易に取り出すことが可能となる。
【0037】
また、ウェーハ収納容器10には、ウェーハ31の方向性を表すための目印となるタブ32、ノッチ33あるいは貫通孔(不図示)を設けることができる。そのため、ウェーハの収納容器10に方向性を持たせたり、ウェーハ31を一定の方向性を持たせてウェーハ収納容器10に収納することが可能となる。また、タブ32やノッチ33をそれぞれ複数個設けてウェーハ収納容器10を位置決めする際に使用することもできる。したがって、装置等によってウェーハ31をウェーハ収納容器10から取り出す際も、容易にウェーハ31に方向性を持たせることが可能となる。そのため、作業効率を向上させることが可能となる。
【0038】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0039】
上述の実施の形態では、ウェーハ収納容器10は、中央に貫通孔を有する円形のリング状の形態を有しているが、これに限定されるものではなく、中央に開口部を有しない形態としても良い。また、ウェーハ収納容器10の外形は、円形のリング形状に限定されるものではなく、六角形、八角形または楕円形等の他の形態を有するリング形状としても良い。
【0040】
また、上述の実施の形態では、凸部22および凹部24はそれぞれ4つずつ設けられているが、これに限定されることはなく、凸部22および凹部24の個数をそれぞれ3つ以下としても良いし、5つ以上としても良い。
【0041】
また、上述の実施の形態では、治具40には、4個の突起部44が設けられているが、これに限定されることなく、3つ以下としても良いし、5つ以上としても良い。この場合、切欠溝23の形態を突起部44の個数と対応させることが必要となる。
【0042】
また、上述の実施の形態では、テーパ部20と載置部14との間の部分であり、かつ上方傾斜部25と下方傾斜部26との間の部分には、連通孔30が設けられているが、連通孔30を設けないようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ウェーハを輸送するための収納容器を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係るウェーハ収納容器の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るウェーハ収納容器の平面図である。
【図3】図2中おけるウェーハ収納容器を矢示A方向から見た正面図である。
【図4】図2中におけるウェーハ収納容器を矢示B方向から見た正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るウェーハ収納容器にウェーハを収容し、上下方向に積み重ねる工程を説明するための図である。
【図6】図5におけるC−C線で切断した断面図である。
【図7】図6における断面図の一部を拡大した図であり、(a)は、図6において一点鎖線で囲った部分Dの拡大図であり、(b)は、図6において一点鎖線で囲った部分Eの拡大図である。
【図8】ウェーハが収納されたウェーハ収納容器を積み重ねた状態におけるウェーハの状態を説明するための図であり、(a)は、下方載置部に載置されたウェーハの状態を説明するための図であり、(b)は、上方載置部に載置されたウェーハの状態を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るウェーハ収納容器の構成を示す斜視図であり、(a)は、ウェーハ収納容器にタブを設けた場合の構成を示す斜視図であり、(b)は、ウェーハ収納容器にノッチを設けた場合の構成を示す斜視図である。
【図10】ウェーハをウェーハ収納容器から取り出す方法を説明するための図であり、(a)は、ウェーハをウェーハ収納容器から取り出す際に用いられる治具の構成を示す斜視図であり、(b)は、ウェーハ収納容器からウェーハを取り出す工程を説明するための図であり、(c)は、治具によりウェーハがウェーハ収納容器から取り出された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10…ウェーハ収納容器
12…円周部(外周部に相当)
14…載置部
22…凸部
23…切欠溝
24…凹部
25…上方傾斜部
26…下方傾斜部
27a…第1の傾斜面
27b…第2の傾斜面
28a…第1の傾斜面
28b…第2の傾斜面
31…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの外周縁より外側にある外周部と、
上記外周部の最上面よりも低い位置からウェーハの径方向内側に延出し、ウェーハを上記外周部の最上面よりも低い位置で載置する載置部と、
を備えるウェーハ収納容器であって、
上記載置部は、ウェーハの径方向内側に向かって下降すると共に、ウェーハを載置した際にウェーハの外周縁とのみ接触可能な第1の傾斜面と、その第1の傾斜面の裏側にあって、ウェーハの径方向内側に向かって上昇すると共に、ウェーハ収納容器を複数重ねた際に、下方のウェーハの外周縁とのみ接触可能な第2の傾斜面とを備えることを特徴とするウェーハ収納容器。
【請求項2】
前記外周部は、その上面に、所定の間隔で配置され、上方に突出する凸部を複数備え、前記第1の傾斜面は、その凸部と、凸部同士の間にある凹部の両方から連接し、ウェーハを載置した際に同じ高さで水平にウェーハを保持可能であることを特徴とする請求項1記載のウェーハ収納容器。
【請求項3】
前記ウェーハ収納容器は、中央が貫通したリング状の形態を有することを特徴とする請求項1または2記載のウェーハ収納容器。
【請求項4】
前記載置部には、周方向に沿って切り欠かれた複数の切欠溝が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のウェーハ収納容器。
【請求項5】
前記ウェーハ収納容器には、前記ウェーハの方向性を表すための印が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のウェーハ収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−329238(P2007−329238A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158372(P2006−158372)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】