説明

ウェーハ収納容器

【課題】より好適にウェーハを支持することによって、パーティクルの発生を効果的に防ぎ、ウェーハの更なる汚染防止を図ることができるウェーハ収納容器を提供する。
【解決手段】前側に開口3を有すると共に、円盤状のウェーハ2を支持する支持部材25を備える容器本体4と、開口3を塞ぐと共に、ウェーハ2を保持するリテーナ21を備える蓋体5と、からなるウェーハ収納容器1であって、ウェーハ2の外周部のうち、結晶方位に起因してエッジが形成される領域を非接触領域Aとして設定し、リテーナ21及び支持部材25は、非接触領域Aを避けた位置でウェーハ2と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ、化合物ウェーハ等の半導体ウェーハを収納し、輸送、搬送、保管に使用されるウェーハ収納容器、特には、半導体ウェーハの表面において完全結晶層をエピタキシャル成長させたエピタキシャルウェーハと、ウェーハ収納容器の支持部やリテーナ等との接触位置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ収納容器は、前側に開口を有し1又は複数の半導体ウェーハを整列させて収納する容器本体と、前記開口をシール可能に閉鎖し、ウェーハを保持するリテーナを有する蓋体とを備えてなり、半導体ウェーハの保管や工程内搬送あるいは外部への輸送に用いられる。
【0003】
現在、半導体業界で主流となっている容器は、直径300mm、厚さ775μmのシリコンウェーハを収納するウェーハ収納容器である。このようなウェーハ収納容器として、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0004】
特許文献1に記載されるウェーハ収納容器では、複数のウェーハを支持する複数の支持部を容器本体の側壁内面に形成し、支持部の一部に低摩擦抵抗部を設け、この低摩擦抵抗部の作用によって、摩擦によるウェーハの損傷を防止する。
【0005】
ところで、上記半導体ウェーハは、表面にボイド欠陥や転移欠陥がある場合、半導体デバイスの歩留まりを低下させる。このため、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、半導体ウェーハの単結晶の完全性が求められてきた。そこで、鏡面研磨した半導体ウェーハの表面に、異なる導電型(P型とN型)もしくは同じ導電型(P型とP型、あるいはN型とN型)で、異なる抵抗率を有する単結晶の層を設け、この単結晶の層をエピタキシャル成長させて完全結晶層としたエピタキシャルウェーハが使用されるようになった。
【0006】
このエピタキシャル成長では、化学的気相析出の反応により、基板としての鏡面ウェーハを所定の反応温度に加熱し、この加熱した鏡面ウェーハと、ドーパントが添加され超高純度の水素ガスに希釈されたトリクロロシランなどのソースガスとを接触反応させる。これにより、還元されたシリコン原子を基板の表面上に基板の結晶軸に沿って析出させ、エピタキシャル層を得る。
【0007】
エピタキシャル層には、エピタキシャル成長がし易い領域が存在する。この領域では、エピタキシャル層の外縁がウェーハの外周部に達し、エッジ(いわゆるステップエッジ)を形成することがある。このエッジがウェーハ収納容器の支持部等と接触した状態で振動が加わると、パーティクルの発生(発塵)が起き易い。
【0008】
ウェーハ収納容器の更なる品質向上が期待される中、パーティクルを効果的に防ぎ、パーティクルによるウェーハの汚染を防止する技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-111830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載される技術は、ウェーハ収納容器の支持部とウェーハとの摩擦を単に軽減する技術であり、特許文献1では、上記結晶のエッジと支持構成との関係についての開示はない。したがって、ウェーハをより好適に支持し、パーティクルの発生を効果的に防ぐウェーハの収納技術が求められる。
【0011】
そこで、本発明は、ウェーハをより好適に支持してパーティクルの発生を防ぎ、ウェーハの汚染防止を図ることができるウェーハ収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前側に開口を有すると共に、円盤状のウェーハを支持する支持部を備える容器本体と、前記開口を塞ぐと共に、前記ウェーハを保持する保持部を備える蓋体と、からなるウェーハ収納容器において、前記ウェーハは、鏡面ウェーハの上にエピタキシャル層を形成してなるエピタキシャルウェーハであり、前記エピタキシャル層の外周部のうち、結晶方位に起因してエッジが形成される領域を非接触領域として設定し、このような非接触領域を避けた位置で、前記支持部及び前記保持部を前記ウェーハに接触させたことを特徴とする。
【0013】
上記発明では、前記エピタキシャル層の外周部のうち、結晶方位に起因してエッジが形成される領域を非接触領域とし、この非接触領域を避けた位置で、支持部及び保持部をウェーハに接触させた。
【0014】
仮に、ウェーハの結晶方位を配慮せずに支持部等を設計すると、支持部や保持部がエッジと接触し、パーティクルが発生し易くなり、ウェーハを汚染する虞がある。
【0015】
上記発明では、エッジと支持部との位置関係に着目した。すなわち、非接触領域を避けて、容器本体の支持部及び蓋体の保持部をウェーハに接触させたので、支持部や保持部がエッジに接触することが無くなり、パーティクルの発生を防ぐことができる。結果、ウェーハの汚染を効果的に防止できる。
【0016】
上記発明では、ウェーハは、蓋体側の周縁部にノッチを備えており、非接触領域は、ノッチがウェーハの結晶方位の<110>にあるときは、ノッチの位置を基準に45°、135°、225°、315°の角度位置に設定され、ノッチがウェーハの結晶方位の<100>にあるときは、ノッチの位置を基準に0°、90°、180°、270°の角度位置に設定されることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、ノッチがウェーハの結晶方位の<110>にあるときは、ノッチの位置(0°)を基準に45°、135°、225°、315°の角度位置に非接触領域を設定した。一方、ノッチがウェーハの結晶方位の<100>にあるときは、ノッチの位置(0°)を基準に0°、90°、180°、270°の角度位置に非接触領域を設定した。
【0018】
エピタキシャルウェーハにおけるエッジの位置と好適な支持位置との関係を具体的に検討する。
エピタキシャルェーハにおいて、ノッチが結晶方位の<110>にあるときは、ノッチ位置を基準にノッチの位置(0°)を基準に45°、135°、225°、315°の角度位置で、エピタキシャル層の外周部にエッジが発生し易い。一方、ノッチが結晶方位の<100>にあるときは、ノッチの位置(0°)を基準に0°、90°、180°、270°の角度位置で、エピタキシャル層の外周部にエッジが発生し易い。したがって、このような角度位置に、支持部や保持部を配置すると、振動によりパーティクルが発生し易くなる。
【0019】
この点、上記発明では、上記角度位置を避けて、支持部及び保持部をウェーハに接触させたので、エピタキシャルェーハにおいて、支持部や保持部がエッジと接触しなくなり、パーティクルの発生を効果的に防ぐことができる。
【0020】
上記発明では、非接触領域は、各々の角度位置を中心に±5°の範囲に設定されることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、非接触領域を、上記角度位置を中心に±5°の範囲に設定とした。
仮に、角度位置のみを非接触領域とした場合、ウェーハの載置誤差により、支持部や保持部がエッジと干渉してしまうことがある。
【0022】
この点、上記発明では、非接触領域を、上記角度位置を中心に±5°の範囲に設定したので、ウェーハの載置誤差が生じても、支持部や保持部がエッジと干渉する心配が無くなり、より確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0023】
上記発明は、容器本体の側壁の内面のうち、非接触領域と対向する面に、非接触領域との間に空間を形成する凹部、又は、非接触領域の範囲の外側でウェーハの位置を規制する凸部を設けることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、容器本体の側壁の内面に、非接触領域との間に空間を形成する凹部、又は、非接触領域を避けてウェーハの位置を規制する凸部を設けた。
側壁の内面に凹部を設けたので、この凹部の空間にエッジを逃がすことができる。よって、エッジと側壁が干渉することを防ぎ、より確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0025】
また、ウェーハの位置を規制する凸部を容器本体の側壁に形成してもよく、この場合、凸部の高さに相当する隙間にエッジを逃がすことができる。これにより、エッジと側壁が干渉することが無くなり、より確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0026】
上記発明では、支持部には、ウェーハを支持する支承部と、ウェーハの前方への飛び出しを防止する段差部と、が設けられ、容器本体の側壁には、ウェーハの後方位置を規制する位置規制壁が設けられており、支承部、段差部、位置規制壁及び保持部は、非接触領域を避けて配置されることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、非接触領域を避けて、容器本体の支承部、段差部、位置規制壁及び蓋体の保持部を配置した。
ウェーハ収納容器において、ウェーハを支持する箇所、ウェーハを保持する箇所、そしてウェーハの位置を規制する箇所の全ての箇所が、エッジと接触することが無くなる。これにより、ウェーハを安定した姿勢で収納でき、しかもパーティクルの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、パーティクルの発生を防ぎ、効果的にウェーハの汚染防止を図ることができるウェーハ収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るウェーハ収納容器の斜視図である。
【図2】ウェーハの断面図であり、(a)は、鏡面ウェーハの上にエピタキシャル層を積層したエピタキシャルウェーハの断面図、(b)は、(a)において、エピタキシャル層の成長が進んだ形態を説明する図である。
【図3】非接触領域を説明する図である。
【図4】ウェーハの平面図であり、非接触領域を模式的に示す図である。
【図5】ウェーハ収納容器の断面図である。
【図6】側壁及び支持部材の斜視図である。
【図7】図5のB部拡大図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】第2実施形態に係るウェーハ収納容器の断面図であり、図5に相当する図である。
【図10】第3実施形態に係るウェーハ収納容器を説明する断面図であり、図7に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0031】
先ず、本発明に係る第1実施形態を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ウェーハ収納容器1は、半導体ウェーハ2を収納する容器である。このウェーハ収納容器1は、前側に開口3を有するいわゆるフロントオープンボックスタイプの容器本体4と、この容器本体4の前側開口3を閉鎖し得る蓋体5と、を備える。
【0032】
ウェーハ2は、円盤状であり、周縁部に結晶方位を表すノッチ2aを有する。ノッチ2aは、所定の結晶方位に向かって開放したU溝状の切欠きであり、ウェーハの位置を合わせるために使用される。また、ノッチ2aの代わりにオリエンテーション・フラットを設けることもできる。オリエンテーション・フラットは、円弧の1部を弦となるように直線状に切り欠いたものである。
【0033】
容器本体4は、上記フロントオープンボックスタイプに成形すべく、ウェーハ2よりも大きい底壁6と、この底壁6の上方に位置されて底壁6に対向される上壁7と、これら上壁7と底壁6との後部間を上下に連結する背面壁(図5、符号8)と、底壁6と上壁7の左右両側部間を上下に連結する左右一対の側壁9と、を備えるように成形されており、左右一対の側壁9と上壁7と底壁6とは、前側開口3を正面視横長形状に区画する。この容器本体4における左右一対の側壁9の間隔は、前後方向(矢印X)中間位置よりもやや後方位置部分を基準として、後側領域が前側領域よりも短くされており、その両者間領域における各側壁9は、後方に向かうに従って左右の両側壁9の間隔が徐々に狭まるように傾斜する。この側壁9部分は、開口3の後方領域に臨んでウェーハ2等の進入規制壁10を構成する。
【0034】
なお、容器本体4の底壁6には容器本体4を加工装置に位置決めするためのボトムプレート11と位置決め部材が設けられ、容器本体4の上壁7には、搬送用のロボティックフランジ12が取付けられる。
【0035】
蓋体5は、皿状の蓋体本体13と、この蓋体本体13の開口部を閉鎖するように取付けられる表面プレート14と、を有し、その内部には、蓋体5を容器本体4に係止する施錠機構15が備えられる。この施錠機構15は、回転部材16と、この回転部材16の回転によって長手方向に移動がなされる連結バー17と、この連結バー17の先端に設けられる係止部18と、によって構成される。表面プレート14には、回転部材16と対向する部分において操作孔19が形成されており、その操作孔19を介して施錠機構15を操作することができる。また、蓋体本体13の側面全周にはガスケット部材20が備えられており、そのガスケット部材20は、蓋体5が開口3を閉鎖する際、容器本体4の開口3周縁部との間のシール性を確保する。
【0036】
蓋体5の裏面には、ウェーハ2の蓋体側周縁を保持するリテーナ21が設けられる。リテーナ21は、矩形状の枠体22と、この枠体22から短冊状に分岐されてウェーハ2側に張り出す弾性片23とを備えて構成される。弾性片23にはウェーハ2と接触する断面がVあるいはU字状をした保持溝24が形成される。弾性片23は、片持ち状に形成する他、連結して両持ち状に形成したり、中央に別の保持部をさらに追加したりすることもできる。
【0037】
容器本体4の両側壁9の内面には、複数組の左右の支持部材25(図1では片側の支持部材のみを示す)がそれぞれ設けられる。容器本体4の両側壁9の外面には、グリップ26が設けられる。各組の支持部材25は、開口3からやや容器本体4内に入った位置から進入規制壁10までの範囲で、互いに横方向(矢印Y)内方に向けて水平に張り出しつつ、前後方向(矢印X)に延びており、そのような各組における支持部材25は、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される。この所定の間隔としては、例えば直径300mm、厚さ775μmのウェーハの場合は、10mmに設定される。
【0038】
容器本体4や蓋体5は、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂から形成することができる。また、これらの樹脂に、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどの適量を添加して導電性を付与することもできる。
【0039】
次に、ウェーハ2の構成及び本発明に係る非接触領域を図2〜図4に基づいて説明する。
図2(a)に示すように、ウェーハ2は、鏡面ウェーハ2bの上にエピタキシャル層2cを積層したエピタキシャルウェーハである。エピタキシャル層2cでは、エピタキシャル成長がし易い領域が存在する。このような領域では、(b)に示すように、エピタキシャル層2cの外周部が鏡面ウェーハ2bの外周部に達し、エッジ(この例では略直角の角)2dが発生することがある。
【0040】
図3に示すように、エピタキシャルウェーハの場合、ノッチ2aがウェーハ2の結晶方位の<110>にあるとき、ノッチ2aの位置θ1(0°)を基準にθ2(45°)、θ4(135°)、θ6(225°)、θ8(315°)の角度位置において、ウェーハ2の外周部にエッジ(図2、符号2d)が表れ易い。一方、ノッチ2aがウェーハ2の結晶方位の<100>にあるときは、ノッチ2aの位置θ1(0°)を基準にθ1(0°)、θ3(90°)、θ5(180°)、θ7(270°)の角度位置において、ウェーハ2の外周部にエッジが表れ易い。
【0041】
本発明者は、これらの角度位置(θ1〜θ8で示される位置)を特定位置とし、これらの特定位置では、ウェーハ2の外周部とウェーハ収納容器1とを接触させないことが有効であることを見出した。
【0042】
また、これらの特定位置を中心とした±5°の範囲の領域(θ9〜θ16で示される各領域)を、ウェーハ2とウェーハ収納容器1とを接触させない特定領域(以下、単に非接触領域と記載する)とすることが、さらに有効であることを見出した。図4では、8個の非接触領域Aを模式的に斜線で示す。
【0043】
図5は、非接触領域Aを有するウェーハ2をウェーハ収納容器1に収納した状態を示す図である。リテーナ21の保持溝24、24は、非接触領域Aを両側から挟むように配置される。すなわち、保持溝24、24は、非接触領域Aを避けて、非接触領域Aよりも横方向(図1、矢印Y)外方に位置する。
【0044】
次に、容器本体4において、非接触領域Aを避けてウェーハ2を支持する、あるいは、位置規制する構成を図6〜図8に基づいて詳細に説明する。
図6に示すように、複数の支持部材25は、各々、開口から後方に向く方向(図1、矢印X)に延びる板状の棚部25aを備える。
【0045】
各々の棚部25aの上面には、ウェーハ2の外周部の下面を支持する複数(この例では2個)の支承部25bが上に突出して形成される。これらの支承部25bは、棚部25aの長手方向に間隔を隔てて並ぶ。また、棚部25aの前端部には、ウェーハ2の飛び出しを防止する段差部25cが形成される。この段差部25cの上面は、支承部25bに支持されるウェーハ2の動きを阻止できるように、収納されたウェーハ2の上面より高い位置に形成される。
【0046】
図7及び図8に示すように、複数の支承部25bは、非接触領域Aの挟み、且つ、非接触領域Aを避ける位置に形成される。段差部25cは、複数の支承部25bよりも開口(図5、符号3)側に配置される。進入規制壁10は、支承部25bよりも背面壁(図5、符号8)側に配置される。このように配置される段差部25c及び進入規制壁10は、非接触領域Aを避けた位置でウェーハ2と接し、ウェーハ2の出し入れ方向の位置を規制する。なお、進入規制壁10に、傾斜面の途中に変曲点10aを有するV宇状の溝を形成したり、進入規制壁10を単一の傾斜面に形成したりすることができる。
【0047】
さらに、側壁9の内面のうち、非接触領域Aと対向する内面には、凹部9aが形成される。この凹部9aは、側壁9の内面を湾曲状に凹ませた形態である。凹部9aと非接触領域Aとの間には、結晶のエッジ(図2、符号2d)を十分に逃がすことができる空間27が形成される。なお、この凹部9aの形状は、湾曲状に格別に限定されるものではなく、エッジ2dを逃がすことができる形状であれば、任意である。
【0048】
以上に述べた第1実施形態の作用・効果を説明する。
仮に、ウェーハ2の結晶方位を考慮せずに支持部材25や保持溝24などを配置すると、支持部材25や保持溝24が結晶のエッジ2dと接触してしまい、振動が加わると、パーティクルが発生し易い。
【0049】
この点、第1実施形態では、エッジ2dが生成し易い非接触領域Aを避けて、保持溝24、支承部25b、段差部25c、進入規制壁10を配置したので、容器本体4や蓋体5の構成部材がエッジ2dに接触することがない。これにより、ウェーハ2を安定した姿勢で収納しつつ、パーティクルの発生も防ぐことができ、ウェーハ2の汚染を効果的に防止することができる。
【0050】
また、非接触領域Aを、角度位置(図3、符号θ1〜θ8)の各々において±5°の範囲に設定される領域(図3、符号θ9〜θ16)としたので、ウェーハ2の載置誤差が生じても、保持溝24、支承部25b等とエッジ2dとが干渉する心配が無い。結果、より確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0051】
加えて、側壁9に凹部9aを形成したので、エッジ2dを空間27に逃がすことができる。これにより、エッジ2dと側壁9とが干渉しなくなるため、さらに確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0052】
次に、第2実施形態に係るウェーハ収納容器を図9に基づいて説明する。なお、以降の第2、第3実施形態において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を流用して説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、第2実施形態に係るウェーハ収納容器1は、第1実施形態の基本構成において、背面壁8の内面に1組以上の左右のリアサポート28を設けたものである。リアサポート28は、常時又は非常時に、ウェーハ2の外周部を保持する複数の保持溝28aを備える。これら複数の保持溝28aは、上下方向に一定間隔を隔てて形成される。ここで、常時にウェーハ2の外周部を保持するとは、通常の状態でウェーハ2の後部を保持するこという。一方、非常時にウェーハ2の外周部を保持するとは、通常はウェーハ2と非接触の状態にあるが、非常時にはウェーハ2の後部を保持することをいう。
【0054】
非常時にウェーハ2を保持する構成では、ウェーハ収納容器1が落下したときなど、大きな衝撃でウェーハ2が移動すると、リアサポート28にウェーハ2が接触し保持される。すなわち、リアサポート28は、隣接するウェーハ2との接触や、隣接する棚部への侵入を防ぐように、ウェーハ2の動きを制御する。
【0055】
このような役割を果たすリアサポート28は、背面壁8側の角度位置(図3、符号θ5)の非接触領域Aを両側から挟むように配置される。すなわち、リアサポート28の保持溝28a、28aは、非接触領域Aを避け、非接触領域Aよりも横方向(図1、符号Y)外方に位置する。
【0056】
この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果を奏すると共に、パーティクルの発生防止に加え、リアサポート28により、ウェーハ2の動きを制御してウェーハ2の損傷を防止することができる。
【0057】
次に、第3実施形態に係るウェーハ収納容器を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、第3実施形態に係るウェーハ収納容器1は、第1実施形態の基本構成において、非接触領域Aの範囲の外側でウェーハ2の位置を規制する1又は複数個(この例では2個)の凸部9bを側壁9の内面に設けたものである。
【0058】
この第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果に加え、次の効果が得られる。すなわち、この凸部9bは、側壁9とウェーハ2との間に隙間29を形成する。この隙間29により、エッジ(図2、符号2d)を逃がすための空間が増すので、エッジ2dと側壁9との干渉を一層防止することができ、より確実にパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0059】
なお、第2実施形態では、凹部9aと凸部9bを形成したが、本発明において、凹部及び凸部の構成は格別に限定されるものではなく、凹部のみによる構成、凸部のみによる構成など、任意である。
【0060】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0061】
A 非接触領域
θ1〜θ8 角度位置
1 ウェーハ収納容器
2 ウェーハ
2a ノッチ
2b 鏡面ウェーハ
2c エピタキシャル層
2d エッジ
3 開口
4 容器本体
5 蓋体
9 側壁
9a 凹部
9b 凸部
10 進入規制壁(位置規制壁)
21 リテーナ(保持部)
25 支持部材(支持部)
25b 支承部
25c 段差部
27 空間
28 リアサポート(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に開口を有すると共に、円盤状のウェーハを支持する支持部を備える容器本体と、前記開口を塞ぐと共に、前記ウェーハを保持する保持部を備える蓋体と、からなるウェーハ収納容器において、
前記ウェーハは、鏡面ウェーハの上にエピタキシャル層を形成してなるエピタキシャルウェーハであり、
前記エピタキシャル層の外周部のうち、結晶方位に起因してエッジが形成される領域を非接触領域として設定し、
このような非接触領域を避けた位置で、前記支持部及び前記保持部を前記ウェーハに接触させたことを特徴とするウェーハ収納容器。
【請求項2】
前記ウェーハは、前記蓋体側の周縁部にノッチを備えており、
前記非接触領域は、前記ノッチが前記ウェーハの結晶方位の<110>にあるときは、前記ノッチの位置を基準に45°、135°、225°、315°の角度位置に設定され、前記ノッチが前記ウェーハの結晶方位の<100>にあるときは、前記ノッチの位置を基準に0°、90°、180°、270°の角度位置に設定されることを特徴とする請求項1記載のウェーハ収納容器
【請求項3】
前記非接触領域は、各々の前記角度位置を中心に±5°の範囲に設定されることを特徴とする請求項2記載のウェーハ収納容器。
【請求項4】
前記容器本体の側壁の内面のうち、前記非接触領域と対向する面に、前記非接触領域との間に空間を形成する凹部、又は、前記非接触領域の範囲の外側で前記ウェーハの位置を規制する凸部を設けることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のウェーハ収納容器。
【請求項5】
前記支持部には、前記ウェーハを支持する支承部と、前記ウェーハの前方への飛び出しを防止する段差部とが設けられ、
前記容器本体の側壁には、前記ウェーハの後方位置を規制する位置規制壁が設けられており、
前記支承部、前記段差部、前記位置規制壁及び前記保持部は、前記非接触領域を避けて配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のウェーハ収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−243919(P2012−243919A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111889(P2011−111889)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】