説明

ウェーハ搬送ロボット及びこれを用いたウェーハ搬送装置

【課題】ウェーハ搬送ロボット内部の配線作業が困難である配線箇所にてノイズ影響に強く、かつ配線作業効率を向上させることができるウェーハ搬送ロボット及びそれを用いたウェーハ搬送装置を提供する。
【解決手段】ウェーハを把持するアームと、そのアームを支持し内部にアームを旋回駆動させる旋回駆動モータ及びアームを伸縮駆動させる伸縮駆動モータを有するロボット本体部と、そのロボット本体部を移動させるための走行手段とを備えたウェーハ搬送ロボットにおいて、ロボット本体部の内部において旋回駆動モータの周囲を通って配線され、アームの駆動に用いられる信号を伝達するための旋回配線部は、シールド処理が施されたフレキシブルプリント基板を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置等とウェーハ容器等間のウェーハの搬出、収納を繰り返し行うウェーハ搬送ロボット及びそれを用いたウェーハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ搬送装置は、ウェーハ搬送ロボットを備え、半導体検査装置に半導体試料である半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)をウェーハ搬送ロボットによって搬送する装置である。ウェーハ搬送装置は、洗浄の高いクリーンボックスと上位装置(半導体製造装置や半導体検査装置)を含んで構成され、クリーンボックス内に、ウェーハ搬送ロボットが配置される。ウェーハは、極めて高い洗浄環境が要求されていることから、例えば、ウェーハを収納する容器であるFOUP(Front Opening Unified Pod)に梱入されている。ウェーハ搬送ロボットは、ウェーハを把持し伸縮可能かつ旋回可能なアームを備え、そのアームの駆動によりFOUPからウェーハを取り出して、上位装置へウェーハを搬送する。
【0003】
ウェーハ搬送ロボットを駆動させるための駆動モータには、安全上の点から搬送ロボットの駆動限界を検知するためのセンサが設けられている。ウェーハ搬送ロボットの内部では、アーム駆動用のセンサ信号をウェーハ搬送装置に組み込まれている制御コントローラボックス内のロボット制御基板まで信号伝達する信号線が配線され、また、駆動モータの信号をウェーハ搬送装置に組み込まれたモータ制御ドライバまで伝達する動力線が配線される。
【0004】
ウェーハ搬送ロボットは内部の部品実装密度が高いので、稼動時に信号線や動力線に断線等が発生しないようにするためには、信号線や動力線の配線ルートが重要である。また、配線ルートの決定には、実際にウェーハ搬送ロボット内で行われる配線作業及び配線の固定方法も考慮される。
【0005】
特に、ウェーハ搬送ロボットの配線作業において、最重要となる箇所が旋回配線部である。旋回配線部とは、ウェーハ搬送ロボットのアームに設けられたセンサとウェーハ搬送ロボット外部の制御コントローラボックスを接続する配線において、旋回駆動するアームから旋回駆動モータ周囲までの配線部である。旋回配線部に関しては、配線可能な実装スペースが極端に限られ、配線密度も高く、配線長や旋回手順、配線固定方法等には、とくに注意して作業を行わなければならない。半導体業界では、ウェーハに形成されるパターンの微細化、ウェーハの大口径化が進んでおり、ウェーハ搬送装置には、高クリーン化と共に製品の故障率や装置システムダウン時間の低減化など、高信頼性が求められており、信号線の断線等により信頼性の低下を招くことは極力避けなければならない。
【0006】
従来では、多関節型の産業用ロボットにおいて、電線の省配線化を図ることにより電線の断線を起り難くし、また、電線の配線の引き回しを容易にするウェーハ搬送装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−38360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェーハ搬送ロボットにおいて、上記の動力線や信号線は、ウェーハ搬送ロボットの旋回駆動時に発生する配線の屈曲に十分耐えうるだけの、耐屈曲性に優れた可動ケーブルによって構成されている。可動ケーブルは、外周と擦れて異物が発生することによる発塵や断線、信号電源電圧が小さい箇所についてはノイズ影響も含めて製品信頼性の面において、重要な箇所であり、改善すべき要素でもある。ウェーハ搬送装置における搬送ロボットI/O信号の信号伝達については、信号レベルが小さいものが一般的であり、外部ノイズ影響によって誤動作しないように、シールド等で信号ラインを保護することが重要である。I/O信号用として配線するためのケーブルにおいては、ノイズ影響を極力外部から受けないような信号伝達方式が望ましい。
【0009】
しかしながら、シールド処理されている可動ケーブルの場合、網形のシールド処理により信号線(芯線)を保護している。このようなシールド保護では、屈曲によるストレスやシールドの処理方法によっては、芯線にシールド線が接触して短絡する可能性がある。
【0010】
また、従来の可動ケーブルを用いた旋回配線部では、可動ケーブル構成及びウェーハ搬送ロボットの内部の部品実装密度が高いことから、可動ケーブルのウェーハ搬送ロボットへの取付が煩わしく、また、センサと旋回駆動モータとの位置関係からケーブルの束線作業が必要になる等、配線作業に多大な時間やコストが掛かっていた。
【0011】
特許文献1に開示されたウェーハ搬送装置は、ウェーハ搬送ロボットが多関節型ロボットであり、ウェーハ搬送ロボット本体が走行動作を行うための走行装置を有するウェーハ搬送ロボットを具備したものではない。従って、上記の旋回駆動による配線の短絡や断線については考慮されていない。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、ウェーハ搬送ロボット内部の配線作業が困難である配線箇所にてノイズ影響に強く、かつ配線作業効率を向上させることができるウェーハ搬送ロボット及びそれを用いたウェーハ搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく本発明に係るウェーハ搬送ロボットは、ウェーハを把持するアームと、そのアームを支持し内部に前記アームを旋回駆動させる旋回駆動モータ及び前記アームを伸縮駆動させる伸縮駆動モータを有するロボット本体部と、そのロボット本体部を移動させるための走行手段とを備えたウェーハ搬送ロボットにおいて、前記ロボット本体部の内部において前記旋回駆動モータの周囲を通って配線され、アームの駆動に用いられる信号を伝達するための旋回配線部は、シールド処理が施されたフレキシブルプリント基板を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係るウェーハ搬送装置は、ウェーハの搬送先或いは搬送元に取り付けられる筐体と、その筐体に設けられウェーハを収納する容器と、前記容器内のウェーハを搬送先に供給するまたは前記搬送元のウェーハを前記容器に回収するウェーハ搬送ロボットと、搬送されるウェーハの位置及び向きを補正するアライナを備えたウェーハ搬送装置において、上記のウェーハ搬送ロボットを備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送ロボット内部の配線作業が困難である配線箇所にてノイズ影響に強く、かつ配線作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のウェーハ搬送装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のウェーハ搬送ロボットの構成を示す斜視図である。
【図3】従来のウェーハ搬送ロボットにおける旋回配線部の配線構成図である。
【図4】本実施形態の旋回配線部を構成を示す平面図である。
【図5】本実施形態のウェーハ搬送ロボットにおける旋回配線部の配線構成図である。
【図6】図4の旋回配線部を取り付けたウェーハ搬送ロボットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のウェーハ搬送装置の構成を示す斜視図である。図1に示すように、ウェーハ搬送装置は、半導体試料となる半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)を検査する半導体検査装置やウェーハに素子等を実装する半導体製造装置等の上位装置にウェーハを搬送するものである。ウェーハ搬送装置は、クリーンボックス7と、クリーンボックス7の内部に設けられるウェーハ搬送用ロボット(以下、単に「搬送ロボット」と称する)2と、ファンフィルタユニット3と、スイッチングDC電源ユニット4と、制御コントローラボックス5と、複数枚のウェーハを収納した容器(図示せず)と、容器を設置するためのロードポート(図示せず)を備える。
【0019】
ファンフィルタユニット3は、クリーンボックス7の上方に設けられ、外気をクリーンボックス内部に取り込むためのファンとフィルタを備える。フィルタは、ファンとクリーンボックスの間に介在し、ファンが取り込む外気をろ過することで、外気に含まれる塵や埃などの異物を除去したクリーンエアを生成する。ファンフィルタユニット3が取り込んだクリーンエアは、クリーンボックス7の内部に供給され、クリーンボックスの床部(ベース)に設けられた排気口(図示せず)から排気される。これにより、クリーンボックス7の内部には、上部から下部にクリーンエアが流れるダウンフローが形成され、クリーンボックス7の内部を高い洗浄度に維持することができる。
【0020】
ファンフィルタユニット3の上方には、スイッチングDC電源ユニット4及び制御コントローラボックス5が配置される。電源ユニット4には、装置内でDC電源供給により動作する各種部品へ供給を行う。制御コントローラボックス5の内部にはウェーハ搬送装置のシステム制御を行うための基板が搭載される。搭載される基板は、CPU制御基板、通信用制御基板、信号制御基板及びロボット駆動制御基板等である。ファンフィルタユニット3の上方には搬送ロボット2の駆動を制御するためのモータドライバユニット6が搭載され、モータドライバ6は、搬送ロボット2の内部に実装される各軸駆動モータ(後述するアーム軸モータ、旋回軸モータ)と一対一で動力線を介して接続されている。モータドライバユニット6は、制御コントローラボックス5内のロボット駆動制御基板に接続され、搬送ロボット2の動作に係る位置決定信号やモータの励磁状態等の信号が送信される。搬送ロボット2には、各アーム軸の動作限界を検知するためのセンサが実装され、これらのセンサはモータドライバユニット6を介さずに、直接、制御コントローラボックス5内部のロボット駆動制御基板へ接続される。ロボットを駆動させる際には、制御コントローラボックス5内のロボット駆動制御基板より、搬送ロボット2の移動量(アーム軸の伸縮量、旋回軸の回転角度等)に相当するパルス信号が、駆動モータ動力線を伝達して、各軸駆動用のモータドライバへ伝達され、モータドライバから各軸モータへ、駆動用のパルス信号を更に伝達し、駆動モータが回転する。
【0021】
搬送ロボット2は、搬送ロボット本体8と、搬送ロボット本体8を走行させる走行手段9とを備える。走行手段9は、クリーンボックス7に敷設されたレール及びレール上を走行する走行体であり、その走行体上に搬送ロボット本体8が載置される。
【0022】
図2は、搬送ロボットの詳細な構成を示す斜視図である。図2に示すように、搬送ロボット本体8は、筐体10と、筐体10上に設けられウェーハを把持する2つのアーム12,14と、筐体10内に設けられアーム12,14を旋回させる旋回駆動モータ16と、各アーム12,14をそれぞれ独立に伸縮させる伸縮駆動モータと、搬送ロボット本体8を昇降動作させる昇降軸モータ17とを備える。2つのアーム(第1のアーム12、第2のアーム14)の先端には、それぞれウェーハを載置して真空吸着等により固定するハンドが設けられている。伸縮駆動モータは、第1のアーム12を駆動するための第1のアーム軸モータ13、第2のアーム14を駆動するための第2のアーム軸モータ15とからなり、制御コントローラボックス5からのパルス指令に従って駆動制御される。旋回駆動モータ16は、第1のアーム12及び第2のアーム14の両方を旋回させる。
【0023】
第1のアーム軸モータ13及び第2のアーム軸モータ15にそれぞれ設けられ搬送ロボット駆動の駆動限界を検知するセンサは信号線を介して制御コントローラボックス5に接続される。その信号線は、センサが取り付られた第1及び第2のアーム軸モータ13,15から旋回駆動モータ16の周囲を通り、コネクタ接続を介して搬送ロボット外部まで配線されるものであり、センサから旋回駆動モータ16周辺を通りコネクタ接続されるまでの信号線を構成するケーブル及びコネクタを旋回配線部と称する。
【0024】
以下、旋回配線部について詳細に説明する。まず、本実施形態の搬送ロボットの配線旋回部と対比するために、従来の搬送ロボットにおける旋回配線部について説明する。
【0025】
図3は、従来の搬送ロボットに取り付けられた旋回配線部を上方から見た平面図である。図3に示すように、旋回配線部を固定する固定板となるアクリル板21上の中央には、旋回駆動モータ16が実装され、旋回駆動モータを固定するためのモータ固定金具23により旋回駆動モータ16が旋回駆動により実装位置が変化しないよう確実に固定される。
【0026】
旋回配線部は、可動ケーブルで構成された旋回配線ケーブル26と、その一端に設けられる旋回配線開始コネクタ24とで構成される。モータ固定金具23には旋回配線開始コネクタ24を取り付けるための取付穴が設けられ、旋回配線開始コネクタ24を旋回配線開始コネクタ固定ネジ25により確実に固定する。旋回配線開始コネクタ24を旋回配線開始コネクタ固定ネジ25に固定した状態で、旋回配線用ケーブル26の配線を行う。旋回配線用ケーブル26の配線に際して、旋回配線用ケーブル26がロボット動作時に摩擦により擦れないよう保護するべく、ケーブル保護カバー27を旋回配線用ケーブル26と隣り合わせとなるよう配線する。また、旋回開始部(旋回配線部の旋回配線開始コネクタ24側)の配線を安定して固定するために、旋回配線部の途中には、旋回配線用ケーブル26及びケーブル保護カバー27を固定するケーブル固定金具28が設けられる。ケーブル固定金具28により旋回配線用ケーブル26及びケーブル保護カバー27を固定した状態で、旋回配線を行う。搬送ロボット2のケーブル保護カバー27の終端が位置する箇所には、ケーブル保護カバー固定金具29とケーブル保護カバー固定金具取付ネジ30が設けられ、ケーブル保護カバー固定金具29とケーブル保護カバー固定金具取付ネジ30により、旋回配線用ケーブル26とケーブル保護カバー27を固定する。これにより、旋回配線部は確実に搬送ロボットに固定される。旋回配線終了後は、旋回配線ケーブル26を折り曲げて搬送ロボット内の上方向(図3紙面垂直方向)にて吊り上げる。吊り上げた旋回配線ケーブル26の先端にはケーブル接続用のコネクタが実装されているが、吊り上げた所からコネクタまでの間に、旋回動作により影響を受けないようにするため、束線バンド等で配線を固定させる必要がある。
【0027】
本実施形態では、旋回配線部は、フレキシブルプリント基板で構成されたフレキシブルプリントケーブルを備える。
【0028】
図4は、本実施形態の搬送ロボットが備える旋回配線部の構成を示したものである。なお、図中、左欄には、4A−4A線方向から見た旋回配線部と示し、下欄には、4B−4B線方向から見た旋回配線部を示している。図4に示すように、旋回配線部40は、フレキシブルプリント基板41と、フレキシブルプリント基板の両端に設けられたコネクタ実装用基板43,47とを備える。
【0029】
フレキシブルプリント基板41は、厚さ数十μm程度のフィルム状のものであり、屈曲性に優れ、小さな力で繰り返し変形させることができ、変形した場合においても変形前と同等の電気的特性を維持することができる。本実施形態では、旋回配線部40は、一端がアクリル板21上に固定された旋回駆動モータ16の周辺で制御コントローラボックス5からの信号線とコネクタ接続され、他端が搬送ロボット本体8の上部に位置するアーム軸モータ13,15のセンサとコネクタ接続されるため、アーム軸モータ13,15の位置と旋回駆動モータ16の位置を考慮して、フレキシブルプリント基板41をL字状に形成した。
【0030】
フレキシブルプリント基板41の両端に設けられたコネクタ実装用基板43,47は、旋回配線部40を搬送ロボット本体に取り付けるための基板である。具体的には、旋回配線部の配線開始側(旋回駆動モータ16側)に、ケーブル開始コネクタ実装用小型基板43が旋回配線開始ケーブルコネクタ42の実装面側に取り付けられる。ケーブル開始コネクタ実装用小型基板43には、旋回配線部40を搬送ロボット2に取り付けるための取付穴44が設けられる。
【0031】
フレキシブルプリント基板41は屈曲性に優れているため、フレキシブルプリント基板41の先端にコネクタを直接取り付けて旋回配線開始ケーブルコネクタ42を実装させる作業は難しいので、フレキシブルプリント基板41の端に剛性の高いケーブル開始コネクタ実装用小型基板43を設け、その基板43に旋回配線開始ケーブルコネクタ42を実装させることで、実装作業効率を向上させることができる。
【0032】
また、ケーブル開始コネクタ実装用小型基板43には、半田付けを行ったときの半田部に対する絶縁保護を目的として、コネクタ実装後の半田部にモータ固定金具23(図2参照)と接触して短絡しないよう半田部保護用の絶縁シート45が取り付けられる。
【0033】
旋回配線部40の配線終了側(アーム軸モータ13,15側)の先端にも、旋回配線開始部側と同様に、旋回配線終端ケーブルコネクタ46の実装面にケーブル終端コネクタ実装用小型基板47が取り付けられる。ケーブル終端コネクタ実装用小型基板47についても、コネクタを搬送ロボット2へ取り付けるための取付穴48が設けられる。
【0034】
また、本実施形態では、フレキシブルプリント基板41の中央部に、可動ケーブル49の一部分を、絶縁テープ50を用いて貼り付けている。
【0035】
フレキシブルプリント基板41の特性であるフィルム状の形状と屈曲性に起因して、フレキシブルプリント基板41の剛性が従来の可動ケーブルで構成された旋回配線部に比べて少ないために、実際に旋回配線部を搬送ロボットに組み込み、搬送ロボットを旋回動作させたときに、旋回配線部を固定するアクリル板21から旋回配線部の可動部(搬送ロボットの動きに追従して移動する部分)が落ちてしまう可能性がある。配線の土台であるアクリル板21から旋回配線部が落ちると、搬送ロボットの旋回動作時に、旋回配線部がアクリル板21の下にて捩れる、または、アクリル板21の下に挟まることがあり、これに起因して搬送ロボットの旋回動作に影響を及ぼすことも起こりうる。ただし、本実施形態では、フレキシブルプリント基板41の中央部に、可動ケーブル49の一部分を貼付することにより、フレキシブルプリント基板41の剛性を大きくさせることができ、旋回配線部40を搬送ロボット2に取り付けたときに、旋回配線部2のアクリル板21からの落下を防止することができる。
【0036】
図5は、図4の旋回配線部40を搬送ロボット2に取り付けた状態を上方から見た平面図である。図5に示すように、アクリル板21上の中央には、旋回駆動モータ16が実装され、旋回駆動モータ16を固定するためのモータ固定金具63により旋回駆動モータ16が旋回駆動により実装位置が変化しないよう確実に固定される。
【0037】
モータ固定金具23には旋回配線部40のケーブル開始コネクタ実装用小型基板43を取り付けるための取付穴が設けられ、その取付穴とケーブル開始コネクタ実装用小型基板43の取付穴44とを旋回配線開始コネクタ固定ネジ25により締結することで、ケーブル開始コネクタ実装用小型基板43がモータ固定金具23に固定される。
【0038】
旋回配線開始コネクタ24を旋回配線開始コネクタ固定ネジ65に固定した状態で、フレキシブルプリント基板41の配線を行う。フレキシブルプリント基板41はケーブル保護カバー67と共に配線され、フレキシブルプリント基板41の途中には、フレキシブルプリント基板41及びケーブル保護カバー67を固定するケーブル固定金具68が設けられる。ケーブル固定金具68により旋回配線用のフレキシブルプリント基板41及びケーブル保護カバー67を固定した状態で、旋回配線を行う。搬送ロボット2のケーブル保護カバー67の終端が位置する箇所には、ケーブル保護カバー固定金具69とケーブル保護カバー固定金具取付ネジ70が設けられ、ケーブル保護カバー固定金具69とケーブル保護カバー固定金具取付ネジ70により、フレキシブルプリント基板41とケーブル保護カバー67を固定する。ケーブル保護カバー67及びケーブル固定金具68の作用効果については図3で説明した従来の旋回配線部のものと同様である。
【0039】
図6は、本実施形態の旋回配線部の終端(センサ側)の取付け方法を説明するための斜視図である。ケーブル開始コネクタ実装用小型基板43の取付け及びフレキシブルプリント基板41の旋回配線終了後は、鉛直上部に配線を行い、ケーブル固定金具73を用いてケーブル終端直前にてフレキシブルプリント基板41を固定する。最後に、旋回配線終端ケーブルコネクタ46を実装したケーブル終端コネクタ実装用小型基板47を本基板に設けた小型基板固定ネジ75により固定し、旋回配線部40の開始部とともに、確実に搬送ロボット2に固定し組み込む。
【0040】
図3で説明した従来の可動ケーブルで構成された旋回配線部では、旋回配線部を90度折り曲げて吊り上げる作業が必要であった。本実施形態では、フレキシブルプリント基板の形状をL字状に形成することで、配線を折り曲げて吊り上げる作業を省略することができる。また、従来の配線方式の場合、旋回配線部の終端は、コネクタがケーブルの線材に直接取り付けられた構成であったため、終端を束線バンド等により確実に固定する必要があった。これに対して本実施形態では、コネクタ実装用基板をネジにより固定することで、安定した状態にてロボットに組み込むことができる。
【0041】
本実施形態の搬送ロボット2によれば、旋回駆動するアーム部周辺の配線である旋回配線部40を、シールド処理を施したフレキシブルプリント基板41を用いて構成したことにより、駆動モータ動力線等によりノイズ影響を受けやすかった信号に対してのノイズ影響を低減することができる。ひいては、ノイズ影響を受けずに安定した信号を伝達することによって従来よりも信頼性を大きく向上させることができる。
【0042】
フレキシブルプリント基板41を用いた旋回配線部40は、従来の可動ケーブルを用いた旋回配線部よりも軽量であり小型化を実現しているため、旋回配線可能エリアを有効に活用できる。
【0043】
また、コネクタを搬送ロボット2に固定する方式は、L字状のフレキシブルプリント基板41の両端に小型のコネクタ実装用基板43,47を設け、そのコネクタ実装用基板を取付穴44,48で締結固定して搬送ロボット2に組み込む方式であるため、本実施形態の搬送ロボット2では、(1)配線旋回部40を搬送ロボットに容易に組み込むことができ、作業効率を向上させることができる、(2)従来の可動ケーブルの場合において必要としていたケーブルの束線作業が不要となる、(3)搬送ロボット2へ取り付けた状態が安定する等の効果が得られる。また、上述の搬送ロボット2を備えたウェーハ搬送装置1も、上記の作用効果が得られ、信頼性を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定される。
【符号の説明】
【0045】
1 ウェーハ搬送装置
2 ウェーハ搬送ロボット
13,15 アーム軸モータ
16 旋回駆動モータ
40 旋回配線部
41 フレキシブルプリント基板
43 ケーブル開始コネクタ実装用小型基板
44 取付穴
47 ケーブル終端コネクタ実装用小型基板
48 取付穴
49 可動ケーブル
67 ケーブル保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを把持するアームと、そのアームを支持し内部に前記アームを旋回駆動させる旋回駆動モータ及び前記アームを伸縮駆動させる伸縮駆動モータを有するロボット本体部と、そのロボット本体部を移動させるための走行手段とを備えたウェーハ搬送ロボットにおいて、
前記ロボット本体部の内部において前記旋回駆動モータの周囲を通って配線され、アームの駆動に用いられる信号を伝達するための旋回配線部は、シールド処理が施されたフレキシブルプリント基板を備えたことを特徴とするウェーハ搬送ロボット。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハ搬送ロボットにおいて、前記旋回配線部は、前記フレキシブルプリント基板と、そのフレキシブルプリント基板の両端に設けられたコネクタ実装用基板とを備え、それらコネクタ実装用基板には旋回配線部を前記ロボット本体部に組み込むための取付穴が形成されたことを特徴とするウェーハ搬送ロボット。
【請求項3】
請求項1記載のウェーハ搬送ロボットにおいて、
前記旋回配線部の周囲には、配線旋回部を保護するケーブル保護カバーが巻装され、前記フレキシブルプリント基板は、ケーブル保護カバーと隣接させて巻装されることを特徴とするウェーハ搬送ロボット。
【請求項4】
請求項1記載のウェーハ搬送ロボットにおいて、前記フレキシブルプリント基板には、フレキシブルプリント基板の屈曲性を補強するための可動ケーブルが貼付されていることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項5】
ウェーハの搬送先或いは搬送元に取り付けられる筐体と、その筐体に設けられウェーハを収納する容器と、前記容器内のウェーハを搬送先に供給するまたは前記搬送元のウェーハを前記容器に回収するウェーハ搬送ロボットと、搬送されるウェーハの位置及び向きを補正するアライナを備えたウェーハ搬送装置において、
請求項1乃至4のいずれか1項記載のウェーハ搬送ロボットを備えたことを特徴とするウェーハ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−42002(P2011−42002A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190987(P2009−190987)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】