説明

ウェーハ輸送ケース

【課題】大きな容積を占有することなく、かつ容易な手段で密閉可能なウェーハ輸送ケースを提供すること。
【解決手段】リング形状のウェーハ収納容器12にウェーハ1を載置したユニットを複数重ねた状態で覆うウェーハ輸送ケース10であって、ウェーハ収納容器12を載置するための円盤状の載置台22と、ドーム状の形態を有するドーム部35と、当該ドーム部35の開口端から周方向外方に向かって延出する鍔部37とを有し、載置台22の上にウェーハ収納容器12の全体を覆うように配置される蓋体24と、載置台22の上に配設されるリング状のガスケット28と、鍔部37と載置台22の外周部22bを狭持して両者を固定する固定部材26とを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを収納し、輸送するためのウェーハ輸送ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の需要拡大に伴い、半導体ウェーハの需要も増加している。したがって、ウェーハを安全な状態で大量に輸送するウェーハ輸送ケースが要求されている。従来からのウェーハ輸送ケースとして、ケース体に形成された複数のU字型の溝に、ウェーハを別個に収納し、この状態で当該ウェーハを輸送または保管するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−56185号公報(図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているウェーハ輸送ケースの場合、ウェーハを挿入するためのU字の開口部を形成しなければならないので、ケース体は、円形のウェーハを収納するための容積と比べ、大きな容積が要求される。その結果、ケース体が大型化し、それに伴い、ウェーハ輸送ケースが大型化してしまうといった問題がある。また、特許文献1に開示されているウェーハ輸送ケースでは、ケース蓋に設けられているロック用翼状部材を、ケース本体に設けられた突起に嵌合させてウェーハ輸送ケースの密閉を行っている。したがって、ウェーハ輸送ケースの密閉を行うために複雑な機構を要する。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは大きな容積を占有することなく、かつ容易な手段で密閉可能なウェーハ輸送ケースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、リング形状のウェーハ収納容器にウェーハを載置したユニットを複数重ねた状態で覆うウェーハ輸送ケースであって、ウェーハ収納容器を載置するための円盤状の載置台と、ドーム状の形態を有するドーム部と、当該ドーム部の開口端から周方向外方に向かって延出する鍔部と、を有し、載置台の上にウェーハ収納容器の全体を覆うように配置される蓋体と、載置台の上に配設されるリング状のガスケットと、鍔部と載置台の外周部を狭持して両者を固定する固定部材とを有するものである。
【0007】
このように構成した場合には、ウェーハが収納されたウェーハ収納容器を載置台に載置し、蓋体を被せるといった容易な方法で、ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースの内部に収納することができる。さらに、蓋体の形状は、ドーム形状を有しているため、当該蓋体の形状をウェーハ収納容器の大きさに応じた形状とすることができる。その結果、蓋体が占有する容積を最小にすることができる。それに伴い、ウェーハ輸送ケースをコンパクトにすることができる。また、載置台にガスケットが配設されているため、蓋体を被せると、ウェーハ輸送ケースを密閉することができる。したがって、蓋体を被せるといった容易な手段でウェーハ輸送ケースを密閉することが可能となる。また、載置台に蓋体を被せ、その外側から固定部材を取り付けるといった容易な方法で蓋体を載置台に対して固定できる。したがって、ウェーハ収納容器を容易に収納することができる。
【0008】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、載置台および蓋体のうちの少なくとも一方は、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂もしくはAS樹脂から成るものである。
【0009】
このように構成した場合には、ウェーハ輸送ケースの透明性および耐衝撃性が向上する。また、これらの樹脂にカーボンファイバーや導電性樹脂等を配合することにより、帯電防止性を付与することが可能である。
【0010】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、ウェーハ収納容器は上方に突出する凸部を有しており、載置台にウェーハ収納容器の凸部と係合するための係合部を設けたものである。
【0011】
このように構成した場合には、ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースに対して位置決めすることが可能となる。また、ウェーハ収納容器がウェーハ輸送ケースの内部でガタついたり位置ズレしたりするのを防止できる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、載置台の外周部近傍には、ウェーハ収納容器に収納されているウェーハの方向性を表すための目印が設けられているものである。
【0013】
このように構成した場合には、ウェーハに一定の方向性を持たせて、ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースから取り出すことが可能となる。
【0014】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、載置台には、埃や塵を除去するためのフィルタが配設されているものである。
【0015】
このように構成した場合には、埃や塵等の汚染物質がウェーハ輸送ケース内に侵入するのを防止でき、その結果、ウェーハが汚染されるのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、大きな容積を占有することなく、かつ容易な手段で密閉可能なウェーハ輸送ケースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るウェーハ輸送ケース10について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係るウェーハ輸送ケース10に収納されるウェーハ収納容器12の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、図1〜図3および図5に示す矢示Z1方向を上および矢示Z2方向を下とそれぞれ規定する。
【0019】
ウェーハ1をウェーハ輸送ケース10にて輸送する前に、当該ウェーハ1は、ウェーハ収納容器12に収納される。図1に示すように、ウェーハ収納容器12は、平面において略リング状の形態を有している。また、ウェーハ収納容器12は、その外周側に設けられるリング状の円周部14と、円周部14の内側に設けられている載置部16とを有している。ウェーハ収納容器12の径方向の外寸は、例えば、ウェーハ1の外径を450mmとすると、500〜550mmの範囲が好適であるが、ウェーハ収納容器12に載置されるウェーハ1の外径に対応して適宜変更することができる。
【0020】
円周部14は、リング状の平板を周方向に沿って凹凸が交互に4回ずつ繰り返すような形態を有している。具体的には、円周部14は、上方側に突出する略円弧状の凸部18と、下方側にくぼむ略円弧状の凹部20とを有している。円周部12の径方向の長さは、20〜30mmの範囲であるのが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、ウェーハ収納容器12は、ウェーハ輸送ケース10によって運搬される際、ウェーハ1を載置部16に載置した状態で複数個積み重ねられる。ウェーハ収納容器12は、凸部18同士および凹部20同士が、それぞれ合わせさるように、他のウェーハ収納容器12の上に積み重ねられる。ウェーハ収納容器12が積み重ねられた状態では、各ウェーハ収納容器12の凸部18同士および凹部20同士がそれぞれ接するため、ウェーハ収納容器12同士がずれたり、ガタつくことはない。
【0022】
図2は、ウェーハ輸送ケース10の分解斜視図である。
【0023】
図2に示すように、ウェーハ輸送ケース10は、ウェーハ1が収納されたウェーハ収納容器12が載置される載置台22と、その上に被せられる蓋体24と、載置台22と蓋体24とを固定する固定部材26と、ガスケット28と、ウェーハ収納容器12を上から押さえる押さえ部材30とから、主に構成されている。
【0024】
載置台22は、円盤状の形態を有している。また、載置台22の外周部近傍からは、円周状に上方に向かって突出する周状突出部32が設けられている。この周状突出部32によって、載置台22は、載置部22aと外周部22bとに区分される。載置部22aは、積み重ねられたウェーハ収納容器12が載置される部分である。外周部22bは、後述する蓋体24における鍔部37と重なり合う部分である。載置台22は、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、メタクリル(PMMA)樹脂もしくはAS樹脂等の樹脂から成る。しかしながら、これらの樹脂に限定することなく、透明性、耐衝撃性もしくは耐帯電性を有する他の樹脂を採用してもよい。
【0025】
蓋体24は、円形状の円板部33と、その外縁から下方に向かって延出する円筒状の周壁部34とからなるドーム状のドーム部35と、ドーム部35の開口端から全周に亘って外方に延出する鍔部37とを有する。ドーム部35の内側には中空状の空間部39が形成されている(図4(A)を参照)。蓋体24は、PC、COP、PS、ABS樹脂、PMMA樹脂もしくはAS樹脂等の樹脂から成る。しかしながら、これらの樹脂に限定することなく、透明性、耐衝撃性もしくは耐帯電性を有する他の樹脂を採用してもよい。
【0026】
固定部材26は、2つの脚部26a,26aを有する断面略コの字状をした円弧状の部材である。また、固定部材26は、その内側に周方向に沿った円弧状の溝部26bを有する。固定部材26は、載置台22に蓋体24を被せた状態で、その外側から、溝部26に鍔部37および外周部22bを嵌め込む形で取り付けられる。本実施の形態では、固定部材26は合計4個用いられている。しかしながら、固定部材26の数は、4個に限定されるものではない。ガスケット28は、リング状の形態を有しており、載置台22における周状突出部32の外側に配置される。当該ガスケット28は、載置台22に蓋体24を被せた際に、気密性を持たせるための部材である。ガスケット28の素材として、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムもしくは熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0027】
押さえ部材30は、ウェーハ収納容器12と略同径のリング状の形態を有する部材である。押さえ部材30は、ウェーハ収納容器12と蓋体24との間に配置される。押さえ部材30をウェーハ収納容器12と蓋体24との間に配置することにより、ウェーハ輸送ケース10に収納されたウェーハ収納容器12のガタツキや位置ズレを防止できる。押さえ部材30の素材としては、ポリエチレン(PE)樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、PC、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)若しくはポリエーテルイミド(PEI)等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。しかしながら、押さえ部材30の素材は、これらの素材に限定されるものではない。これらの素材のうち、押さえ部材30の素材としてPE樹脂、TPEもしくはPBTを用いるのが好ましい。
【0028】
次に、ウェーハ輸送ケース10の組立工程について説明する。
【0029】
図3は、ウェーハ収納容器12をウェーハ輸送ケース10に収納するための工程を説明するための図であり、載置台22にウェーハ収納容器12を載置した状態を示す図である。図4は、ウェーハ収納容器12をウェーハ輸送ケース10に収納するための工程を説明するための図であり、(A)は、蓋体24に押さえ部材30を取り付けた状態を示す図であり、(B)は、ウェーハ収納容器12を収納した後のウェーハ輸送ケース10の斜視図である。
【0030】
まず、図3に示すように、ガスケット28を載置台22における周状突出部32の外側に取り付ける。そして、積層されたウェーハ収納容器12を載置部22aに載置する。次に、図3および図4(A)に示すように、蓋体24における円板部33の裏側に押さえ部材30を取り付ける。押さえ部材30の外径と周壁部34の内径は、略同一の大きさであるため、押さえ部材30を空間部39に嵌め込むことによって、押さえ部材30を蓋体24の内部に固定することができる。次に、押さえ部材30が取り付けられた蓋体24を、ウェーハ収納容器12が載置された載置台22の上に被せる。この際、周壁部34の内周面がガスケット28の外側になるように、蓋体24を載置台22の上に配置させる。この状態では、周壁部34の内周面とガスケット28の外周面が密着しているため、空間部39は、載置台22と蓋体24とによって密閉された状態となる。また、蓋体24を載置台22の上に配置した状態では、押さえ部材30は、蓋体24の円板部33とウェーハ収納容器12の両者と接触した状態となる。そのため、押さえ部材30によって、ウェーハ収納容器12が下方に向かって押さえられる。また、載置台22に蓋体24を被せた状態では、鍔部37と外周部22bが重なり合う。次に、重なり合った鍔部37と外周部22bの外側に合計4つの固定部材26を取り付ける。すると、図4(B)に示すように、ウェーハ収納容器12はウェーハ輸送ケース10の内部に収納される。4つの固定部材26は、それぞれが周方向に沿って等間隔に取り付けられるのが好ましい。固定部材26は、溝部26bに重なり合った鍔部37および外周部22bを嵌め込む形で取り付けられる。すると、脚部26a,26aによって鍔部37および外周部22bは狭持され、蓋体24は載置台22に対して固定される。
【0031】
図5は、ウェーハ収納容器12をウェーハ輸送ケース10に収納した状態を説明するための図であり、(A)は、蓋体24と押さえ部材30の一部を切断した状態の全体図であり、(B)は、(A)中の一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【0032】
図5(A)に示すように、固定部材26を取り付けることにより、蓋体24は、載置台22に対して固定される。また、押さえ部材30は、ウェーハ収納容器12と円板部33との間に介在するように配置されている。蓋体24が載置台22に固定された状態では、押さえ部材30は円板部33から下方に向かう圧力を受ける。押さえ部材30は、その圧力を利用して、ウェーハ収納容器12を押さえつけている。図5(B)に示すように、押さえ部材30は、リング形状であり、かつ平板状の周板部40と、周板部40の外周から全周に亘って略鉛直下方に向かって延出する外周部42と、周板部40の内周から全周に亘って略内側斜め上方に向かって延出する上周部44と、周板部40の内周から全周に亘って略内側斜め下方に向かって延出する下周部46とから構成されている。
【0033】
図5(B)に示すように、押さえ部材30は、積み重ねられたウェーハ収納容器12において最も上方に配置されるウェーハ収納容器12の円周部14を覆うように配置されている。押さえ部30が配置された状態では、当該押さえ部30は、凸部18と接している。具体的には、押さえ部30における外周部42および下周部46が凸部18と接している。また、押さえ部30は、円板部33の内側面33aとも接している。具体的には、上周部44および周板部40と外周部42とが交わる頂部48が内側面33aと接している。押さえ部材30が円板部33から下方に向かって圧力を受けると、上周部44が下方に向かって撓むと共に、頂部48はその力を受け止める。上周部44が撓むことによって下周部46に力が伝達される。そして、下周部46は上周部44から伝達された力により、凸部18をその接点において押さえつける。頂部48によって受け止められた力は、外周部42に伝達され、当該外周部42が凸部18をその接点において押さえつける。すなわち、押さえ部材30は、外周部42と下周部46とにより凸部18をその外周側と内周側の両側から押さえつけている。したがって、ウェーハ収納容器12がガタついたり、位置ズレしたりすることがなくなる。
【0034】
以上のように構成されたウェーハ輸送ケース10では、ウェーハ1が収納されたウェーハ収納容器12を載置台22に載置し、蓋体24を被せるといった容易な方法で、ウェーハ収納容器12をウェーハ輸送ケース10の内部に収納することができる。さらに、蓋体24の形状は、ドーム形状を有しているため、当該蓋体24の形状をウェーハ収納容器12の大きさに応じた形状とすることができる。その結果、蓋体24が占有する容積を最小にすることができる。それに伴い、ウェーハ輸送ケース10をコンパクトにすることができる。また、載置台22にガスケット28が配設されているため、蓋体24を被せた状態では、ウェーハ輸送ケース10を密閉することができる。したがって、蓋体24を被せるといった容易な手段でウェーハ輸送ケース10を密閉することが可能となる。また、載置台22に蓋体24を被せ、その外側から固定部材26を取り付けるといった容易な方法で蓋体24を載置台22に対して固定できる。したがって、ウェーハ収納容器12を容易に収納することができる。
【0035】
また、ウェーハ輸送ケース10では、ウェーハ収納容器12と蓋体24との間には、押さえ部材30が配置されている。したがって、ウェーハ収納容器12がガタついたり、位置ズレしたりすることを防止できる。また、押さえ部材30は、上周部44が撓むことによって下周部46に力が伝達される構成となっている。したがって、ウェーハ収納容器12を弾性的に保持することが可能となり、適度な力でウェーハ収納容器12を保持することが可能となる。また、押さえ部材30は、外周部42と下周部46とによりウェーハ収納容器12をその外周側と内周側の両側から押さえつけて保持している。したがって、ウェーハ収納容器12のガタつきや位置ズレをより効果的に防止することが可能となる。また、押さえ部材30の素材をPE樹脂やTPE等の樹脂とすることで、押さえ部材30に弾性を付与することが可能となる。
【0036】
また、ウェーハ輸送ケース10における載置台22および蓋体24は、PC、COP、PS、ABS樹脂、PMMA樹脂もしくはAS樹脂等の樹脂から成る。このため、ウェーハ輸送ケース10の透明性および耐衝撃性が向上する。また、これらの樹脂にカーボンファイバーや導電性樹脂等を配合することにより、帯電防止性を付与することが可能である。
【0037】
また、ウェーハ輸送ケース10では、蓋体24のドーム部35の高さを調節することによって、ウェーハ輸送ケース10に収納されるウェーハ1の数(積み重ねられるウェーハ収納容器12の数)が変更された場合にも適応できる。具体的には、予め複数種の高さが異なる蓋体24を用意しておけばウェーハ1の枚数の変更にも容易に適応することが可能となる。例えば、図6(A),(B)に示すように、積み重ねられるウェーハ収納容器12の数が少ない場合、蓋体24のドーム部35の高さを低くすることで、ウェーハ収納容器12を適切に収納することができる。
【0038】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0039】
上述の実施の形態では、ウェーハ輸送ケース10には、フィルタを配設していないが、図7(A),(B)に示すように、載置台22の略中央に円形の円孔50を設け、当該円孔50に円形状のフィルタ51を取り付けるようにしても良い。フィルタ51としては、一般的な高性能エアフィルタの他、アニオンフィルタ、カチオンフィルタまたは活性炭フィルタ等を採用することができるが、これらの種類のフィルタに限定されるものではない。フィルタ51を配設することによって、埃や塵等の汚染物質がウェーハ輸送ケース10内に侵入するのを防止できる。その結果、ウェーハ1が汚染物質によって汚染されるのを防止できる。また、フィルタ51の形状は円形に限定することなく、他の形状としても良い。また、フィルタ51の取り付け位置も載置台22の略中央に限定されるものではなく、ウェーハ輸送ケース10中の他の位置としても良い。
【0040】
また、上述の実施の形態では、載置台22には、係合部となるリブが設けられていないが、図8に示すように、載置部22aの外周部近傍に、ウェーハ収納容器12における凸部18の裏側に形成される空間部55に対応したリブ53を設けるようにしても良い。このような構成とすることで、凸部18の裏側に形成される空間部55にリブ53が嵌まり込み、ウェーハ収納容器12を載置台22に対して位置決めすることが可能となる。また、ウェーハ収納容器12のガタツキや位置ズレも防止できる。また、リブ53の数は、1つに限定されるものではなく、凸部18と対応するように、2つ以上4つ以下の範囲内で設けるようにしても良い。
【0041】
また、上述の実施の形態では、載置台22には、ウェーハ1の方向性を表すための目印となるノッチが設けられていないが、図8に示すように、外周部22aにノッチ56を設けるようにしても良い。このような構成とすることで、ウェーハ1に一定の方向性を持たせて、ウェーハ収納容器12を収納することが可能となる。したがって、装置等によって、ウェーハ輸送ケース10からウェーハ収納容器12を取り出す際も、ウェーハ1に方向性を持たせながら取り出すことができ、作業効率が向上する。また、目印として、ノッチ56の代わりに、タブを設けたり、印刷するようにしても良い。
【0042】
また、上述の実施の形態では、蓋体24には押さえ部材30を固定するための手段が設けられていないが、図9に示すように、円板部33から全周に亘って、または周方向沿った一部分に、下方に向かって略L字状に延出する係合手段58を設けるようにしても良い。このような構成を採用することにより、上周部44が係合手段58と係合し、固定部材26を蓋体24に対して確実に固定することができる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、載置台22および蓋体24の双方がPC、COP、PS、ABS樹脂、PMMA樹脂もしくはAS樹脂等の樹脂から構成されているが、載置台22および蓋体24のどちらか一方を上記樹脂以外の他の樹脂から構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のウェーハ輸送容器は、ウェーハを輸送するための輸送ケースを製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係るウェーハ輸送ケースに収納されるウェーハ収納容器の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るウェーハ輸送ケースの分解斜視図である。
【図3】ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースに収納するための工程を説明するための図であり、載置台にウェーハ収納容器を載置した状態を示す図である。
【図4】ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースに収納するための工程を説明するための図であり、(A)は、蓋体に押さえ部材を取り付けた状態を示す図であり、(B)は、ウェーハ収納容器を収納した後のウェーハ輸送ケースの斜視図である。
【図5】ウェーハ収納容器をウェーハ輸送ケースに収納した状態を説明するための図であり、(A)は、蓋体と押さえ部材の一部を切断した状態の全体図であり、(B)は、(A)中の一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【図6】収納されるウェーハの数を変更した場合のウェーハ輸送ケースの構成を説明するための図であり、(A)は、収納前の状態を示す図であり、(B)は、収納後の状態を示す図である。
【図7】本発明の変形例を示す図であり、載置台にフィルタを設けた場合のウェーハ輸送ケースの構成を示す図である。
【図8】本発明の変形例を示す図であり、載置台にリブおよびノッチを設けた場合のウェーハ輸送ケースの構成を示す図である。
【図9】本発明の変形例を示す図であり、蓋体に係合手段を設けた場合のウェーハ輸送ケースの構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1…ウェーハ
10…ウェーハ輸送ケース
12…ウェーハ収納容器
18…凸部
20…凹部
22…載置台
24…蓋体
26…固定部材
28…ガスケット
30…押さえ部材
35…ドーム部
37…鍔部
51…フィルタ
53…リブ(係合部)
56…ノッチ(目印)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング形状のウェーハ収納容器にウェーハを載置したユニットを複数重ねた状態で覆うウェーハ輸送ケースであって、
上記ウェーハ収納容器を載置するための円盤状の載置台と、
ドーム状の形態を有するドーム部と、当該ドーム部の開口端から周方向外方に向かって延出する鍔部と、を有し、上記載置台の上に上記ウェーハ収納容器の全体を覆うように配置される蓋体と、
上記載置台の上に配設されるリング状のガスケットと、
上記鍔部と上記載置台の外周部を狭持して両者を固定する固定部材と、
を有することを特徴とするウェーハ輸送ケース。
【請求項2】
前記載置台および前記蓋体のうちの少なくとも一方は、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂もしくはAS樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載のウェーハ輸送ケース。
【請求項3】
前記ウェーハ収納容器は上方に突出する凸部を有しており、前記載置台に前記ウェーハ収納容器の上記凸部と係合するための係合部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のウェーハ輸送ケース。
【請求項4】
前記載置台の外周部近傍には、前記ウェーハ収納容器に収納されている前記ウェーハの方向性を表すための目印が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のウェーハ輸送ケース。
【請求項5】
前記載置台には、埃や塵を除去するためのフィルタが配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のウェーハ輸送ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−141131(P2008−141131A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328519(P2006−328519)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】