説明

ウェーブガイド超音波センサ装置

【課題】簡単な構造で位相速度を増加させると共に、群速度が一定の入射周波数の帯域幅を増加させて超音波の可視化性能を向上させるウェーブガイド超音波センサ装置を提供する。
【解決手段】対象体に対して超音波信号を送受信する超音波センサ10と、超音波センサ10の一側を支持して超音波信号のモードを切り替えるウェッジ20と、ウェッジ20と対象体との間に備えられ、送受信される超音波信号をガイドするウェーブガイド30と、送受信される超音波信号を処理する高出力超音波システム50とを含み、ウェーブガイドの外面のうちの少なくとも一部に酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のウェーブガイド超音波センサ装置に関し、詳しくは、ウェーブガイドを介してガイドされ放射される超音波信号を介する可視化性能を向上させることのできるウェーブガイド超音波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不透明で高温であるナトリウムのような極限環境中における内部構造物は高温クリッピーにより損傷が生じ得るため、このような損傷は内部構造物の表面に微細な表面欠陥として現れる。ところで、前述のような極限環境にある内部構造物は、不透明、高温、および高放射能などのような極限要因によって微細な表面欠陥を肉眼で検査することが難しい。したがって、極限環境にある内部構造物の欠陥検査の方法は一般的に超音波センサを用いる方式が採用される。
【0003】
超音波センサを用いる内部構造物の可視化方式は、超音波センサをナトリウム内に直接液浸させて検査する方式と、外部に超音波センサを設けてステンレス鋼材質の板ウェーブガイドを用いて第0次反対称のラム波(Lamb wave)であるAモードのラム波を送受信するウェーブガイド超音波センサ方式に区分される。このうち、前記直接液浸による超音波センサ方式は、超音波センサが極限環境の液体金属と接することによって、超音波センサの寿命が短縮されるという問題がある。一方、前記ウェーブガイド超音波センサ方式は、超音波センサが液体金属の外部で5m以上の細長い金属板のウェーブガイドを用いて超音波信号を遠隔に送受信し、超音波センサの搬送位置による超音波信号の振幅の大きさおよび電波の時間差を表すC−スキャン可視化方式が採用されることによって、直接に液浸による超音波センサ方式の問題である寿命短縮を補完できるという長所を有する。
【0004】
ここで、厚さが1mmであるSS304ステンレス鋼ウェーブガイドが採用される場合、入射周波数1.5MHzにてAモードのラム波の位相速度(Cph)が2.6m/ms程度であって、ルーサイト(lucite)固体ウェッジの縦波速度(V)である2.7m/msよりも小さい。これによって、Aモードのラム波をウェーブガイドを介して発振させるためには、ウェッジ内部に液体の接触媒質が充填された液体ウェッジが適用されざるを得ない。
【0005】
一方、前記ウェーブガイド超音波センサ方式を適用することにおいて、Aモードのラム波の分散性の発生を最小化するために群速度が一定の周波数領域において入射波を加振しなければならない。このような群速度が一定の周波数帯から伝播される超音波パルスは分散性が最小化されるため、パルス波形が変化しないことからS/N比が良好になり、漏れ縦波ビームの放出角の変化が発生しないのでビームのプリファイルが均一になる。
【0006】
また、5m以上のウェーブガイド超音波センサにおいてAモードのラム波の長距離電波によって発生する分散性による入射波の周波数バンド幅の増加によって、ナトリウムのような液体金属のうち放射される漏れ縦波のビーム放出角の変化の幅が大きくなることによるビーム広がり現象が発生する。このようなビーム広がり現象の広がり角が大きくなれば、分解能が低下するという短所が引き起こる。これによって、高い解像度のC−スキャン超音波映像を実現させるためには、ウェーブガイドセンサで伝播されるAモードのラム波の群速度が極めて一定になる特性を実現しなければならない。また、ナトリウムのような液体金属の中における漏れ縦波の放射ビームの角度切り替え範囲を大きくするためには、Aモードのラム波の群速度が一定の周波数帯域にて位相速度は可能なだけ大きく変わらなければならない。これによって、Aモードのラム波の群速度が一定する周波数帯において、位相速度が大きく変わる新しいウェーブガイドセンサを開発する必要性が持続的に要求される。
【0007】
結論的に、前記ウェーブガイド超音波センサで伝播するAモードの位相速度(Cph)がウェッジの縦波速度(V=2.7m/ms)およびナトリウムの縦波速度(V=2.474m/ms)よりも大きく、入射パルスの加振周波数範囲(0.8MHz〜1.7MHz)においてウェーブガイドを介して伝播するAモードのラム波の群速度が一定であり、一定の入射波加振周波数の範囲においてAモードのラム波の位相速度差が大きいウェーブガイド超音波センサ装置を実現するための研究/開発が求められるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述のような問題点を考慮して案出されたものであって、簡単な構造で位相速度を増加させるとともに、群速度が一定の入射周波数の帯域幅を増加させて超音波の可視化性能を向上させることのできるウェーブガイド超音波センサ装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、固体ウェッジの縦波速度よりも大きい位相速度の実現が可能なウェーブガイド超音波センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するためのウェーブガイド超音波センサ装置は、超音波センサと、ウェッジと、ウェーブガイド、および高出力超音波システムを含む。
【0011】
前記超音波センサは、極限環境に置かれた対象体に対して超音波信号を送受信し、前記ウェッジは、前記超音波センサの一側を支持し、前記超音波信号のモードを切り替える。このとき、前記ウェッジは固体に形成されることがよい。
【0012】
前記ウェーブガイドは、ウェッジと前記対象体との間に備えられ、前記送受信される超音波信号をガイドする。ここで、前記ウェーブガイドの外面のうちの少なくとも一部に酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられる。
【0013】
より具体的に、前記コーティング層は、前記ウェーブガイドを隔てて一側と他側に互いに対称型に備えるか、前記ウェーブガイドの一側または他側のうちのいずれか1つにのみ非対称型に設けられ、0.125mm〜0.25mmの厚さを有する。このようなコーディング層が備えられたウェーブガイドは、ステンレス鋼板に形成され、長さは5m以上であり、厚さは1mm〜2mmであることがよい。
【0014】
前記高出力超音波システムは、前記送受信される超音波信号を処理して可視化する。
【0015】
本発明の他の側面によるウェーブガイド超音波センサ装置は、高温、高放射能および/または不透明な極限環境に置かれる対象体の状態を超音波信号に可視化するためのものであって、前記超音波信号を送受信する超音波センサと対象体との間に備えられ、超音波信号をガイドするウェーブガイドの外面に位相速度を増加させ、群速度を一定に維持させる酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
前述のような構成を有する本発明によれば、第1に、ウェーブガイドの外面に酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられることによって、ウェーブガイドに沿って伝播されるAモードのラム波の群速度が一定の周波数領域を拡大させる。これによって、5m以上の長さを有するウェーブガイドを介して長距離伝播されるAモードのラム波の分散性の発生を最小化し、入射波の波形歪みを最小化することができる。
【0017】
第2に、酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が備えられるウェーブガイドを介する長距離Aモードのラム波の入射パルスの周波数スペクトルの帯域幅の増加、および漏れ縦波のビーム広がり角を最小化し、超音波の可視化分解能を向上させることができる。
【0018】
第3に、酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層は、Aモードのラム波の位相速度を固体に形成されるウェッジの縦波速度よりも大きくすることができるとともに、群速度が一定の周波数範囲の領域を増加させることができる。これによって、高温の環境において長期間使用できる固体に形成されるウェッジの使用が可能になって、ウェーブガイド超音波センサ装置の寿命を向上させるとともに、液体金属における漏れ縦波の放射ビームの角度切り替え範囲を増加させて放射ビームのステアリング機能が5m以上の長距離でも正常に作動できるようにする利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るウェーブガイド超音波センサ装置が採用される原子炉を概略的に示した概念図である。
【図2】図1に示される本発明によるウェーブガイド超音波センサ装置を概略的に示す構成図である。
【図3A】ウェーブガイドに沿って伝播されるSモードのラム波とAモードのラム波を概略的に示す図である。
【図3B】ウェーブガイドに沿って伝播されるSモードのラム波とAモードのラム波を概略的に示す図である。
【図4A】ウェーブガイドにコーティング層が非対称型および対称型に備えられた状態を概略的に示す図である。
【図4B】ウェーブガイドにコーティング層が非対称型および対称型に備えられた状態を概略的に示す図である。
【図5】ウェーブガイドの他端で超音波信号が放射される状態を説明するための図である。
【図6】ウェーブガイドの厚さ別Aモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図7】ウェーブガイドの厚さ別Aモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図8】コーティング層が備えられたウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図9】コーティング層が備えられたウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図10】コーティング層の厚さ別ウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図11】コーティング層の厚さ別ウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図12】非対称型/対称型のコーティング層が備えられたウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図13】非対称型/対称型のコーティング層が備えられたウェーブガイドのAモードのラム波の位相速度と群速度の分散特性の曲線が示されるグラフである。
【図14】漏れ縦波の放射角が示されるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい一実施形態を添付の図面を参考して説明する。
【0021】
図1および図2を参考すれば、本発明に係るウェーブガイド超音波センサ装置1は、超音波センサ10、ウェッジ20、ウェーブガイド30、および高出力超音波システム50を含む。
【0022】
参考に、図1に示すように、本発明の一実施形態に係るウェーブガイド超音波センサ装置1は、超音波信号を用いて液体金属炉、鉛冷却炉、一体型原子炉などのよう直接に接近が難しい極限環境中の内部構造物(O、以下、「対象体」と称する)に対する遠隔超音波の可視化検査を行う。本実施形態では、対象体(O)はナトリウムのような液体金属(L)が受容される原子炉(N)に浸漬されるものとして例示する。
【0023】
このようなウェーブガイド超音波センサ装置1は、詳細に示さないが、原子炉(N)の上部に備えられるヘッド(H)の二重回転プラグ(図示せず)に固定され、上部はヘッド(H)の外部に突出し、下部は対象体(O)の炉心の上端と向い合う。かかる構成によって、ウェーブガイド超音波センサ装置1は、ヘッド(H)に備えられる二重回転プラグ(図示せず)の回転駆動時に収集される超音波信号と超音波センサの位置情報から対象体(O)である炉心の上端のC−スキャン映像(I)を獲得する。
【0024】
図2を参考して、前述のウェーブガイド超音波センサ装置1をより詳しく説明する。
【0025】
まず、超音波センサ10は、超音波信号を対象体(O)に送信させるか、または対象体(O)から反射される超音波信号を受信する。
【0026】
ウェッジ20は、超音波センサ10の一側を支持するよう設けられ、超音波信号のモードを切り替える。具体的に、ウェッジ20は、超音波センサ10から送信される超音波信号をラム波に切り替えるか、後述するウェーブガイド30を介して受信されるラム波を縦波に切り替える。すなわち、超音波センサ10によって送受信される超音波信号がウェッジ20を経ることによって、ラム波または縦波にモードが切り替えられるのである。本実施形態においてはウェッジ20が固体に形成されるものとして例示し、より好ましくはルーサイト(lucite)であるものとして例示する。
【0027】
参考に、ラム波とは、薄い板状の固体内を進行する波を指すものであって、図3に示すように、進行方式に応じて対称モード(S−Mode)と反対称モード(A−Mode)とに分類される。図3Aに示すように、対称モードのラム波(S−Mode)は、進行方向に振動する波の成分が板厚の中心線(C)に対して対称をなすか、図3Bに示すように反対称モードのラム波(A−Mode)は非対称である。本実施形態においては、様々なモードのラム波の中から図3Bに示す第0次反対称のラム波(A)が用いられるものと例示する。以下は、説明の便宜のために、ウェッジ20によってモードが切り替えられる第0次反対称のラム波(A)をAモードのラム波と称する。
【0028】
ウェーブガイド30は、超音波センサ10と対象体(O)との間に備えられ、送受信される超音波信号をガイドする。具体的に、ウェーブガイド30は図に示すように、一端は原子炉(N)の外部で超音波センサ10の一側を支持するウェッジ20に接続し、他端は原子炉(N)に受容される液体金属(L)に浸漬されて対象体(O)と向い合う。これによって、超音波センサ10から放射されてウェッジ20によって切り替えられるAモードのラム波がウェーブガイド30の長手方向に伝播し、対象体(O)にガイドされる。このようなウェーブガイド30は、厚さが1mm〜2mmであり、長さが5m以上である、細長いステンレス鋼材質の板に形成される。
【0029】
一方、本発明に係るウェーブガイド30の外面には、図4に示すように、酸化アルミニウム(Al)またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層40が設けられる。ここで、コーティング層40は、図4Aに示すようにウェーブガイド30の外面のいずれか一側にだけ設けられる非対称型に形成されるか、図4Bに示すようにウェーブガイド30の外面の両側に設けられる対称型に形成されてもよい。また、コーティング層40は、ウェーブガイド30の放射端部のような外面のうちの少なくとも一部に形成されてもよい。
【0030】
コーティング層40は材質の特性上、Aモードのラム波の群速度の一定周波数領域を拡大させる。これによって、5m以上の長さを有するウェーブガイド30を介して長距離伝播されるAモードのラム波の分散性の発生を最小化し、入射波の波形歪みを最小化することができる。また、ウェーブガイド30を介する長距離Aモードのラム波の電波による入射パルスの周波数スペクトルの帯域幅の増加および漏れ縦波のビーム広がり角を最小化することで、超音波の可視化分解能を向上させる。
【0031】
だけでなく、コーティング層40は、Aモードのラム波の位相速度を固体に形成されるウェッジ20の縦波速度よりも増加させ、群速度が一定の周波数領域における位相速度と大きさ変化の範囲を増加させる。これによって、高温環境において長時間使用できる固体に形成されるウェッジ20の使用が可能になり、ウェーブガイド超音波センサ装置1の寿命を向上させるとともに、液体金属(L)における漏れ縦波の放射ビームの角度切り替え範囲を増加させることで、放射ビームのステアリング機能が5m以上の長距離であっても正常に作動できるようにする利点を有する。
【0032】
すなわち、前述のような酸化アルミニウム(Al)またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層40をウェーブガイド30の外面に設けることによって、Aモードのラム波の位相速度および群速度の一定周波数領域を増加させ、Aモードのラム波の電波性能および漏れ縦波の放射角切り替え性能を改善するものである。
【0033】
高出力超音波システム50は、送受信される超音波信号を処理して可視化することによって、高出力超音波のパルサー/レシーバ51およびコンピュータ53を含む。
【0034】
高出力超音波パルサー/レシーバ51は、超音波センサ10に接続し、対象体(O)に送信される超音波信号を発生させるとともに、対象体(O)から反射して超音波センサ10で受信される超音波信号が提供される。このとき、高い出力超音波パルサー/レシーバ51は、入射パルスの周波数を調整して超音波信号を生成し、対象体(O)の表面情報を有して受信される超音波信号を収集させる。一方、高出力超音波パルサー/レシーバ51によって収集される超音波信号は、オシロスコープ52によって測定され、A/D変換器54によってデジタル信号に切り替えられてコンピュータ53によって制御される。
【0035】
参考に、高出力超音波システム50とは別途に超音波センサ10はスキャナコントローラ60によって制御される(図1参照)。
【0036】
図5には超音波センサ10を支持するウェッジ20に接続されるウェーブガイド30を介するAモードのラム波の電波と、ウェーブガイド30の他端部を介して液体金属(L)に漏れ縦波が抜け出る概念図が示される。
【0037】
図5のように、ウェーブガイド30によって伝播されるAモードのラム波が液体金属(L)に接して縦波に漏れ、このとき、漏れ縦波のビーム放射角(α)は、下記の数式1のスネル(Snell)法則に応じて決定される。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、Vは液体金属(L)の縦波速度、CphはAモードのラム波の位相速度、またfは周波数を指す。参考に、ウェーブガイド30が1mmの厚さを有するSS304ステンレス鋼板に形成され、ウェーブガイド30に1.5MHzの超音波信号が入射され、Aモードのラム波の位相速度と液体金属(L)の縦波速度がそれぞれ約2560m/sおよび2474m/sである場合、数式1によって漏れ縦波のビーム放射角(α)は75度程度になる。
【0040】
図6および図7を参考すれば、ナトリウムで形成される液体金属(L)内におけるウェーブガイド30の厚さ(t)によるAモードのラム波の位相速度(Cph)と、群速度(C)の分散特性の曲線が示される。長さが5m以上である長距離ウェーブガイド30をナトリウムを含む液体金属(L)に適用するためには、Aモードのラム波の位相速度(Cph)がナトリウムの液体金属(L)の縦波速度(V)の2474m/sよりも大きくなければ、漏れ縦波にモードが切り替えられてウェーブガイド30の他端を介して超音波ビームが放出されることができない。ここで、ウェーブガイド超音波センサ装置1において主に用いられる超音波センサ10は、1MHzセンサと1.5MHzセンサであり、トンバースト入射波の加振周波数で主に用いられる周波数帯域は0.8MHz〜1.7MHzである。入射波の加振周波数の範囲である0.8MHz〜1.7MHz帯域において群速度(C)は図7に示すように一定でなければならず、位相速度は図6に示すように大きさの変化の幅が大きくなければならない。ここで、Aモードのラム波の群速度(C)が一定でなければ、5m以上の長さを有するウェーブガイド30の長距離の電波でAモードのラム波の分散性の発生を最小化することができず、また、位相速度(Cph)の大きさ変化の幅が大きくなければ、液体金属(L)中における漏れ縦波の放射ビームの角度切り替え範囲を増加させることができない。
【0041】
参考に、図6および図7に示すように、Aモードのラム波の位相速度(Cph)の大きさ変化の幅が大きく、群速度(C)が一定の条件を満たすウェーブガイド30の厚さ(t)は1.5mmであるが、群速度(C)が一定の周波数領域は0.9MHz〜1.2MHz範囲であるため、ビーム放射角切り替えの周波数の範囲(0.8MHz〜1.7MHz)が制限されてしまうという問題がある。
【0042】
前述したような既存の問題を改善するために、本発明のようにコーティング層40が備えられるウェーブガイド30を介して伝播されるAモードのラム波の位相速度(Cph)と、群速度(C)の分散特性の曲線が図8および図9に示される。図8および図9は、厚さが1.5mmであるSS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30と、厚さが1mmであるSS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30の外面にベリリウム(Be)、酸化アルミニウム(Al)、および銅(Cu)で形成されるコーティング層40が備えられたウェーブガイド30におけるAモードのラム波の位相速度(Cph)と、群速度(C)を理解するため、理論式に基づく数値解析の結果が示される。
【0043】
参考に、ベリリウム(Be)および酸化アルミニウム(Al)は、自然に存在する様々な材料のうちから超音波速度が最も速い物質であって、それぞれの縦波速度は12.89m/msおよび10.75m/msである。このようなベリリウム(Be)および酸化アルミニウム(Al)の縦波速度は、SS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30の縦波速度の5.79m/msの2倍に該当する。一方、銅(Cu)の縦波速度は4.66m/msであり、SS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30よりも遅い。
【0044】
これによって、SS304ステンレス鋼板に超音波速度が速いベリリウム(Be)および酸化アルミニウム(Al)によって形成されるコーティング層40がウェーブガイド30に備えられれば、位相速度(Cph)と群速度(C)が図8および図9に示すように、コーティング層40が備えられないウェーブガイド30と比較して著しく増加することが分かる。特に、図9に示すように、ベリリウム(Be)および酸化アルミニウム(Al)で形成されるコーティング層40が備えられたウェーブガイド30は、入射波の加振周波数領域(0.8MHz〜1.7MHz)にて群速度が極めて一定になる特性があって、5m以上の長距離の電波による波形の歪み現象を改善することができる。このとき、ベリリウム(Be)および酸化アルミニウム(Al)によって形成されるコーティング層40が備えられたウェーブガイド30の位相速度(Cph)と群速度(C)の特性が互いに類似することも分かる。
【0045】
また、超音波速度が遅い銅(Cu)で形成されるコーティング層40がウェーブガイド30に備えられる場合には、コーティング層40が備えられていないウェーブガイド30と比較して位相速度(Cph)と群速度(C)が減少する特性が現れる。これによって、銅(Cu)は、本発明で説明するコーティング層40の材料として適していないことが分かる。
【0046】
図10および図11を参考すれば、ベリリウム(Be)で形成されるコーティング層40の厚さが厚いほどウェーブガイド30を介して伝播されるAモードのラム波の位相速度(Cph)と群速度(C)が相対的に増加することが分かる。しかし、図11に示すように、コーティング層40の厚さが0.5mmである場合、群速度(C)が一定に維持される現象が減少する。これによって、一定の群速度(C)のために、ウェーブガイド30にコーティングされるコーティング層40の厚さはほぼ0.125mm〜0.25mmであることが好ましい。また、図10に示すように、コーティング層40の厚さが0.125mm以上である場合、Aモードのラム波の位相速度(Cph)がルーサイト材質のウェッジ20の縦波速度の2.7m/msよりも大きくなって、高温環境においてもより安定して長い期間使用できる固体に形成されたウェッジ20の使用が可能になることが分かる。
【0047】
図12および図13には、非対称型および対称型にコーティング層40が備えられたウェーブガイド30の位相速度(Cph)と群速度(C)の分散特性の曲線が示される。より詳しく、図12および図13には、図4Aに示すように厚さ(t)が1mmであるSS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30のいずれか一側面にのみベリリウム(Be)に形成された非対称型コーティング層40が設けられる場合と、図4Bに示すように、厚さ(t)が1mmであるSS304ステンレス鋼板で形成されるウェーブガイド30の両側外面にベリリウム(Be)で形成される対称型のコーティング層40が設けられる場合とを比較した。ここで、非対称型/対称型のコーティング層40の厚さはすべて0.125mmである。
【0048】
図12および図13のグラフに示すように、一側の外面にのみコーティング層40が備えられた非対称型のウェーブガイド30に比べ、両側の外面にコーティング層40が備えられた対称型ウェーブガイド30の位相速度(Cph)と群速度(C)の大きさが大きくなるとともに、群速度(C)がより一定になることが分かる。
【0049】
参考に、図3Aに示すSモードのラム波の変位分布の変化はウェーブガイド30の厚さ中心線(C)で大きく現れ、図3Bに示すAモードのラム波の変位分布の変化はウェーブガイド30の外面で大きく現れるため、Aモードのラム波である場合に表面物性に大きく影響を受ける。これによって、Aモードのラム波は、ウェーブガイド30の外面に設けられるコーティング層40による位相速度(Cph)の増加効果がSモードのラム波と比較して相対的に大きい。一方、図13に示すように、非対称型コーティング層40である場合、群速度(C)が一定になる効果が対称型のコーティング層40に比べて相対的に低く現れるのは、Aモードのラム波の変位分布の対称性に大きく影響を与えるためである。
【0050】
図14は、厚さが1mmまたは1.5mmであるSS304ステンレス鋼板に形成されたウェーブガイド30と、厚さが1mmであるSS304ステンレス鋼板に形成されたウェーブガイド30にベリリウム(Be)で形成されるコーティング層40が0.125mmまたは0.25mmに備えられたウェーブガイド30が、ナトリウムを含む液体金属(L)内で放出する漏れ縦波の放射角を表すグラフが示される。
【0051】
漏れ縦波の放射角(α)は、数式1によるα(f)=sin−1[V/Cph(f)]によって導き出される。入射波の加振周波数領域(0.8MHz〜1.7MHz)においてウェーブガイド30の厚さ(t)が1mmである場合には漏れ縦波が制限的に発生し、ウェーブガイド30の厚さ(t)が1.5mmである場合には1MHz以下の低い周波数領域においてビーム放射角度が急激に変化して放射ビームのビーム広がり角が大きくなる問題が発生することが分かる。しかし、ウェーブガイド30にコーティング層40が設けられることによって、漏れ縦波のビーム放射角の切り替え範囲が一定になることが分かる。
【0052】
上述したように、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当の技術分野における熟練した当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させることができることを理解することができるであろう。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定められ、発明を実施するための最良の形態によって制限されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1:ウェーブガイド超音波センサ装置
10:超音波センサ
20:ウェッジ
30:ウェーブガイド
40:コーティング層
50:高出力超音波システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体に対して超音波信号を送受信する超音波センサと、
前記超音波センサの一側を支持し、前記超音波信号のモードを切り替えるウェッジと、
前記ウェッジと前記対象体との間に備えられ、前記送受信される超音波信号をガイドするウェーブガイドと、
前記送受信される超音波信号を処理する高出力超音波システムと、
を含み、
前記ウェーブガイドの外面のうちの少なくとも一部に酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられることを特徴とするウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項2】
前記コーティング層は、前記ウェーブガイドを隔てて一側と他側に互いに対称型に備えるか、前記ウェーブガイドの一側または他側のうちのいずれか1つにのみ非対称型に設けられることを特徴とする請求項1に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項3】
前記コーティング層は、0.125mm〜0.25mmの厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項4】
前記ウェーブガイドは、ステンレス鋼板に形成され、長さは5m以上であり、厚さは1mm〜2mmであることを特徴とする請求項2に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項5】
前記ウェッジは、固体に形成されることを特徴とする請求項1に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項6】
高温、高放射能および/または不透明な極限環境に置かれる対象体の状態を超音波信号に可視化するウェーブガイド超音波センサ装置であって、
前記超音波信号を送受信する超音波センサと対象体との間に備えられ、超音波信号をガイドするウェーブガイドの外面に位相速度を増加させ、群速度を一定に維持させる酸化アルミニウム(Al)および/またはベリリウム(Be)で形成されるコーティング層が設けられることを特徴とするウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項7】
前記ウェーブガイドは板形に備えられ、前記コーティング層は前記ウェーブガイドの一側の外面または両側の外面に非対称型または対称型に設けられるか、前記ウェーブガイドの外面のうちの少なくとも一部領域に形成されることを特徴とする請求項6に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。
【請求項8】
前記コーティング層は、0.125mm〜0.25mmの厚さを有することを特徴とする請求項6または7に記載のウェーブガイド超音波センサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−271319(P2010−271319A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117940(P2010−117940)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(500002490)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティチュート (20)
【出願人】(502043352)コリア ハイドロ アンド ニュークリア パワー カンパニー リミティッド (23)
【Fターム(参考)】