説明

ウエスト部を有する衣類

【課題】 本発明は、腹部への強い押圧力によらずに装着時の体型調整ができ、しかも、徐々に体型そのものが修正されていくことができる衣類を提供することを課題とする。
【解決手段】 布製ウエスト部前面1と布製腹部3とからなる布製本体前面と、布製ウエスト部背面と布製腰部とからなる布製本体背面とから構成されるウエスト部を有する衣類であって、前記布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、前記布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えるものであるウエスト部を有する衣類である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエスト部を有する衣類であって、産後の腹部の形状が整っていくメカニズムと同様のメカニズムを働かせるための条件を組み込んだ衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特にウエストを中心として、自分の体型を美しく見せたいという強いニーズがある。このようなニーズに応えるために、ウエスト部を有する衣類、特に、身体に密着して装着する衣類においては、腹部のたるみなどによる膨出、特に下腹部の膨出、を抑え、装着者をより美しく見せるための機能を備えたものが汎用されている。
【0003】
しかし、膨出を抑えるために腹部を強く圧迫し、または、ウエストを過剰に締め付けることは、装着者に不快感や苦痛を与えるので、好ましいものとは言えない。また、それらは装着時にのみ効果を発揮するものであった。一部では、ウエスト部を有する衣類、特に、身体に密着して装着する衣類においては、装着者の腹部の形状を整えることができ、さらに装着者の腹部を強く圧迫、または、ウエストを過剰に締め付けることのないものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、図14に示すように、伸縮性の衣料本体表布に縫合された伸縮性腹部裏打ち布21、22の斜め上方向の収縮力により着用時に下腹部を斜め上方に引き上げ、着用完了後にはより強い押圧によりこの状態を保持し、腹部を美しい形状に整形し維持することができるガードルが提案されている。
【0005】
このように、上記を含む従来のウエスト部を有する衣類では、着衣時に、外見上、膨出した腹部の形状を整える手段として腹部を押圧することを重視し、腹部全体や局所を効率よく押圧する機能が提案されている。
着衣時に膨出した腹部の形状を整え、より美しく見せたいというニーズに応えるためには、それ相当に腹部を押圧する力(以下、押圧する力を押圧力と呼ぶ)を備える必要が生じる。時として、装着者の膨出した腹部の形状を整えるために必要な押圧力が腹部の筋肉や内臓を強く圧迫し、装着者に不快感や苦痛を与える。しかも、脱衣時には、元の体型に戻ってしまう。
ゆえに、装着者の腹部の形状を整えることができ、さらに装着者の腹部を強く圧迫、または、ウエストを過剰に締め付けることのないものという条件を満たすことは容易ではないというのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−247117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み、腹部への強い押圧力によらずに装着時の体型調整ができ、しかも、徐々に体型そのものが修正されていくことができる衣類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のウエスト部を有する衣類は、布製ウエスト部前面1と布製腹部3とからなる布製本体前面と、布製ウエスト部背面2と布製腰部4とからなる布製本体背面とから構成されるウエスト部を有する衣類であって、前記布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、前記布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えるものであることを特徴とする。
前記布製本体前面を体軸方向の長さで等分し、布製前腹部下部6aと布製前腹部上部6bとし、前記布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が、前記布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備えるものであること、前記布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、前記布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備えるものであること、前記布製本体前面の一部または全部に装着に伴う体軸方向の滑り止め機能を備えるものであること、前記布製本体背面の一部または全部に水平方向の伸縮機能を備えないものであること、前記布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えないものであること、前記ウエスト部を有する衣類が布製殿部5および/または布製股部12を備えるものであること、前記布製殿部5の人体の殿筋部に相当する部位に、前記布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10を備えるものであること、前記殿筋作用部10の装着に伴う水平方向の収縮距離が、装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備えるものであること、前記ウエスト部を有する衣類が布製脚部11を備えるものであること、前記ウエスト部を有する衣類が布製上半身の一部または全部を備えるものであること、が、それぞれ好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衣類によれば、腹部への強い押圧力によらずに、産後の腹部の形状が整っていくメカニズムと同様のメカニズム(以下、体型調整メカニズムという)を働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることで、装着時に腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、且つ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を根本から整える機能(体型そのものを身体の生理作用を利用し修正する機能)を備えた衣類を提供することが可能となる。さらに、腹部のみならず腰部や殿部にも、体型調整メカニズムを働かせるための条件を機能として取り入れることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す衣類である腹巻の正面説明図である。
【図2】図1に示した衣類である腹巻の背面説明図である。
【図3】本発明の他の実施の形態である生地の少ない股上の浅いショーツの装着状態における正面説明図である。
【図4】図3に示したショーツの装着状態における背面説明図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態である生地の多い股上の深いショーツの装着状態における正面説明図である。
【図6】図5に示したショーツの装着状態における背面説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である殿筋作用部10を備えたショーツを示す正面説明図である。
【図8】図7に示したショーツの背面説明図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態であるガードルを示す正面説明図である。
【図10】図9に示したガードルの背面説明図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態である殿筋作用部10を備えたガードルを示す正面説明図である。
【図12】図11に示したガードルの背面説明図である。
【図13】図11に示したガードルの腹部に備えた当て布である。
【図14】従来技術のガードルの着用状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねていく過程で、腹部のたるみが腹部の皮膚に加わる物理的な力と密接に関係していることを知見した。
皮膚には、苦痛を伴わない程度の負荷となる持続的な伸張力(以下、持続的伸張負荷と呼ぶ)が加わると伸び、持続的伸張負荷が減少すると縮むという生理的性質がある。
この生理的性質を、出産前後の腹部の皮膚を例として説明する。
妊娠経過に従い、胎児の重さ(大きさ)は妊婦の体内で増加していく。この胎児の重さの増加は、妊婦の腹部の皮膚に対する体内からの持続的伸張負荷となる。すると、腹部の皮膚は、持続的伸張負荷が加わると伸びるという皮膚の生理的性質に従い伸び、腹部は膨出する。
出産に伴い、胎児の影響による腹部の膨出は消失するが、腹部の皮膚は伸びたままで、著しくたるんでいる。しかし、同時に出産に伴い胎児の影響による持続的伸張負荷が消失する。すると、腹部の皮膚は、持続的伸張負荷が減少すると縮むという皮膚の生理的性質に従い、時間の経過と共に縮み、腹部の形状は妊娠前の体型へと整っていく。
【0012】
このように、産後の腹部のたるみが一時的なもので、時間の経過に伴い整っていくのは、腹部の皮膚への持続的伸張負荷が減少したことによるものであり、これが産後の腹部の形状が整っていくメカニズムである。このメカニズムと同様の体型調整メカニズムを利用すれば、妊娠時以外の腹部膨出や産後以外の腹部のたるみに対しても同様に、体型の形状を根本から整えることが可能となる。この体型調整メカニズムを働かせるためには、腹部の皮膚への持続的伸張負荷を減少させることが不可欠な条件となる。
また、身体の形状を整える手段として歯列矯正があるが、この歯列矯正も物理的な強い押圧力によるものではなく、苦痛を伴わない程度の持続的な負荷によって生じる骨の生理的性質(破骨細胞と骨芽細胞の性質)を利用している。
【0013】
このように、身体が持つ生理的性質を利用して身体の形状を整えるには、苦痛を伴わない程度の持続的な負荷が肝要となる。
ここで、腹部の皮膚を水平方向から弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、腹部の皮膚への持続的伸張負荷を減少させることは有効な手段となる。この有効な手段を衣類に機能として取り入れることで、体型調整メカニズムが働き、老若男女を問わず、腹部の筋肉や内臓を強い押圧力で圧迫することなく、日常的な継続使用により腹部の形状を整えることが可能となる。この観点から見ると、従来の衣類においては、腹部の皮膚に対する持続的伸張負荷に対する考慮がなされていないことがわかる。
【0014】
そこで、本発明者は、装着者の腹部を強く圧迫、または、ウエストを過剰に締め付けず、装着者に不快感や苦痛を与えないために、腹式呼吸等に伴う腹囲の増減に追従できる伸縮性を有する生地を選択した。さらに、選択し、それらを組み合わせて衣類を構成することを着想した。すなわち、生地から試験片を切り出し、所定の力を加えてその伸びた長さを測定する。そして、この測定した、引き伸ばした状態の数値から、引き伸ばす前の状態の数値を差し引いた長さ(以下、収縮距離と呼ぶ)を求め、収縮距離が異なる素材を組み合わせる。この収縮距離が異なる生地を組み合わせることによって生じる、衣類の各部における収縮距離の差異によって生じる作用(装着する際に一定の力で押し広げた場合、収縮距離の長い部位は、収縮距離の短い部位よりさらに伸びる。すなわち、装着時において収縮距離の最も長い部位が最も縮む)と衣類と皮膚との摩擦を考慮すれば、体型調整メカニズムを働かせるための手段を衣類に機能として取り入れることができ、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を根本から整える機能を備えた衣類を提供することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1および図2に示す本発明の第一の実施の形態である腹巻では、布製ウエスト部前面1と布製腹部3とからなる布製本体前面、と、布製ウエスト部背面2と布製腰部4とからなる布製本体背面、とから構成される。該衣類において、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えるもので構成されるようにする。
【0016】
この衣類では、装着者の実測腹囲より、適度に腹囲が短いサイズを適正サイズとするため、装着者は適正サイズを選択し、引き伸ばしながら装着する。そのため装着により衣類と皮膚との間に摩擦が生じる。さらに、腹部に密着する布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、背側の腰部に密着する布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなるという差異を設けているため、衣類の装着に伴う収縮距離の度合は、腹部に密着する布製本体前面が最大となり、腹部の皮膚を背側の腰部の皮膚より水平方向に弛ませ、腹部に軽くしわをよせる機能を備えることができるのである。
【0017】
このことで、衣類の装着に伴い、腹部の皮膚は水平方向に弛ませられ、腹部の皮膚への水平方向の持続的伸張負荷を軽減することができる。すると、持続的伸張負荷が減少すると縮むという皮膚の性質が作用し、体型調整メカニズムが働き、腹部の皮膚を縮ませる効果を生じさせ、腹部の形状を根本から整えることができる。したがって、本発明のウエスト部を有する衣類では、腹部への強い押圧力によらなくても、体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることができ、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を根本から整える機能を備えることが可能となる。
【0018】
また、布製本体前面を体軸方向の長さで等分し、布製前腹部下部6aと布製前腹部上部6bとし、布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備える構造とすることが好ましい。このことで、装着に伴う布製本体前面における布製前腹部下部6aの水平方向の収縮距離が、布製前腹部上部6bの水平方向の収縮距離より短くなる機能により、腹部の皮膚を上方向に押し上げることができる(図9)。この等分の数は、限定的ではない。
【0019】
また、布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備える構造とすることも好ましい。こうすることで、腰部に生じる体軸方向の衣服圧による動きにくさを改善することができる。さらに、腰部の皮膚に対する体軸方向の持続的伸張負荷(殿部の自重による)を減少させることができ、殿部下垂の予防改善ができる。
【0020】
また、布製本体前面の一部または全部に装着に伴う体軸方向の滑り止め機能を備える構造とすることも好ましい。こうすることで、腹部の皮膚に対する体軸方向の持続的伸張負荷(腹部の自重や日常動作や運動等に伴う皮膚の揺れ等によって生じる力による)を減少させることができ、装着者の腹部の形状を根本から整える機能を一層高めることができる(図11)。
【0021】
また、布製本体背面の一部または全部に水平方向の伸縮機能を備えない構造とすることも好ましい。こうすることで、布製本体前面と布製本体背面との装着に伴う水平方向の収縮距離の差を更に十分に取ることができ、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を整える機能を一層高めることができる。
【0022】
また、布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えない構造とすることも好ましい態様である。こうすることで、体型調整メカニズムを部分的に働かせることが可能となるので、装着者の腹部の局所に対し、より好適に作用させることができ、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を整える機能をさらに高めることができる(図9)。
【0023】
また、前記ウエスト部を有する衣類が布製殿部5および/または布製股部12を備えるものであることも好ましい態様である。この場合では、例えば、ショーツやブリーフ等にも体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることが可能となる。
【0024】
また、布製殿部5の人体の殿筋部に相当する部位に、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10を備えるものであることも好ましい態様である。こうすることで、布製腹部3と布製殿部5との装着に伴う水平方向の収縮距離の差を更に十分に取ることができ、布製腹部3を効率よく腹部に密着させることができる。
さらに、例えば、ショーツやブリーフ等の衣類に腹部のみならず腰部や殿部にも、体型調整メカニズムを働かせるための条件を機能として取り入れることが可能となり、腰部や殿部の皮膚に対する体軸方向の持続的伸張負荷(殿部の自重)を減少させることができ、殿部下垂の予防や改善もできる(図8)。
【0025】
また、殿筋作用部10の装着に伴う水平方向の収縮距離が、装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える構造とすることも好ましい。こうすることで、布製本体前面と布製本体背面との装着に伴う水平方向の収縮距離の差を更に効率よく取ることができる。
【0026】
また、前記衣類に布製脚部11を備える構造とすることも好ましい。こうすることで、例えば、ガードル、スパッツおよびタイツ等にも体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることが可能となり、衣類の種類を増加させることができる(図9)。
【0027】
また、前記衣類に布製上半身の一部または全部を備える構造とすることも好ましい。こうすることで、例えば、ボディスーツ、レオタード、水着等にも体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることが可能となり、衣類の種類を増加させることができる。
【0028】
前述のとおり、本発明は、ウエスト部を有する衣類を構成する布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えるもので構成されることを基本とする。
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1および図2に示す本発明の第一の実施の形態である腹巻では、布製ウエスト部前面1と布製腹部3とからなる布製本体前面、と、布製ウエスト部背面2と布製腰部4とからなる布製本体背面、とから構成される。
【0029】
本発明において、布製ウエスト部前面1および布製腹部3は、伸縮性のベア天竺(綿89%、ポリウレタン11%)生地からなり、水平方向の収縮距離と体軸方向の収縮距離に差異が生じ、水平方向の収縮距離が体軸方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、互いに縫着され、布製本体前面を構成している。
また、布製ウエスト部背面2は、伸縮性のベア天竺(綿89%、ポリウレタン11%)生地からなり、水平方向の収縮距離と体軸方向の収縮距離に差異が生じ、水平方向の収縮距離が体軸方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、布製腰部4は、布製腹部3で使用した生地を90度回転させ、体軸方向の収縮距離が、水平方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、互いに縫着され、布製本体背面を構成している。
布製本体前面および布製本体背面は、装着者の前後のほぼ中間線で左右が縫着されている。
【0030】
なお、本発明の第一の実施の形態においては、布製ウエスト部前面1、布製腹部3、布製ウエスト部背面2および布製腰部4は、同一の生地を用い、布製腰部4のみ生地を90度回転させ、体軸方向の収縮距離が、水平方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えさせたが、部分的に非伸縮性の糸を縫いこむとか、織り込む、また、部分的に非伸縮性の生地を縫いつける、あるいは、それぞれ収縮距離が異なる生地を用いてもよく、結果として、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えさせればよい。
【0031】
また、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、用途やデザインに等に応じ、布製ウエスト部前面1を体軸方向へ伸ばし、布製腹部3を体軸方向に狭くしてもよく、布製ウエスト部背面2を体軸方向へ伸ばし、布製腰部4を体軸方向に狭くしてもよく、布製ウエスト部前面1と布製ウエスト部背面2の体軸方向の長さが同一でなくてもよく、布製腹部3と布製腰部4の体軸方向の長さが同一でなくてもよく、布製本体前面と布製本体背面の体軸方向の長さは同一でなくてもよい。また、体軸方向の縫い合わせ位置が前または後に片寄ってもよい。
【0032】
また、その形状は筒状としたが、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、用途やデザインに応じ、形状は筒状に限定されるものではない。さらに、用途やデザインに等に応じ、ボタン、ファスナーおよびマジックテープ等を用いてもよい。
なお、本発明を腹巻に用いた第一の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではない。さらに用途やデザイン等に応じ、プラスチックや金属等の素材を用いてもよい。
【0033】
次に、本発明をショーツに用いた他の実施の形態を図3および図4を用いて説明する。図3および図4において「衣類」部分と「人体」部分とを区別するために、「人体」部分を破線で記した。
図3および図4に示す本発明の他の実施の形態である生地の少ない股上の浅いショーツは、本発明の第一の実施の形態の腹巻の布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備え、股部分を縫い合わせることによって、布製殿部5および布製股部12を備える構造とするものである。
【0034】
本発明のこの他の実施の形態である生地の少ない股上の浅いショーツの前面側を示す図3において、1は布製ウエスト部前面、3は布製腹部、12は布製股部である。背面側を示す図4において、2は布製ウエスト部背面、4は布製腰部、5は布製殿部である。
布製本体前面は、布製ウエスト部前面1および布製腹部3からなり互いに縫着されている。布製本体背面は、布製ウエスト部背面2および布製腰部4からなり互いに縫着され、布製殿部5が縫着されている。さらに、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2と、布製腹部3および布製殿部5は、装着者の前後のほぼ中間線で左右が互いに縫着され、布製股部12が縫着されている。また、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2には、図示は省略するが、ゴムが通されている。
【0035】
本発明の図3、図4に示す実施の形態において、布製ウエスト部前面1、布製ウエスト部背面2および布製腹部3は、伸縮性のベア天竺(綿89%、ポリウレタン11%)生地を使用し、水平方向の収縮距離と体軸方向の収縮距離に差異が生じ、水平方向の収縮距離が体軸方向の収縮距離より長くなる方向で構成した。また、布製腰部4は、布製腹部3で使用した生地を90度回転させ、体軸方向の収縮距離が、水平方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる方向で構成した。また、布製殿部5は、布製腰部4に使用した生地を用い、布製股部12は通気性の良い綿素材で構成した。
【0036】
なお、本発明の他の実施の形態である生地の少ない股上の浅いショーツにおいては、布製ウエスト部前面1、布製ウエスト部背面2および布製腰部4は、人体のウエスト部前面、ウエスト部背面および腰部に位置していない。さらに、布製腹部3や布製殿部5は、人体の腹部や殿部の全部を覆ってはいない。
このように、用途やデザイン等に応じ、衣類の各部名称と身体の部位名称が一致しない場合であっても、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることができ、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を根本から整える機能を備えることが可能となる。
【0037】
なお、本発明をショーツに用いた他の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではないことは、前述の場合と同様である。以下の素材の記述においても同様である。
【0038】
次に、本発明をショーツに用いた第3の実施の形態を図5および図6を用いて説明する。図5および図6において「衣類」部分と「人体」部分とを区別するために、「人体」部分を破線で記した。
図3および図4に示す本発明の他の実施の形態であるショーツでは、生地の少ない股上の浅いショーツの場合であったが、図5および図6に示す本発明の第3の実施の形態であるショーツは、生地の多い股上の深いショーツの場合である。
【0039】
本発明の第3の実施の形態であるショーツの前面側を示す図5において、1は布製ウエスト部前面、3は布製腹部、12は布製股部である。背面側を示す図6において、2は布製ウエスト部背面、4は布製腰部、5は布製殿部である。布製本体前面は、布製ウエスト部前面1および布製腹部3からなり互いに縫着されている。布製本体背面は、布製ウエスト部背面2および布製腰部4からなり互いに縫着され、布製殿部5が縫着されている。さらに、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2と、布製腹部3および布製殿部5は、装着者の前後のほぼ中間線で左右が互いに縫着され、布製股部12が縫着されている。また、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2には、図示は省略するが、ゴムが通されている。本発明において、前述の他の実施の形態と同様の生地を同様に用いた。
【0040】
なお、図5および図6に示す本発明の第3の実施の形態である生地の多い股上の深いショーツでは、図3および図4に示す生地の少ない股上の浅いショーツの布製ウエスト部前面1を体軸方向へ伸ばし、人体のウエスト部前面を覆った。また、布製腹部3を体軸方向へ伸ばし人体の腹部を覆い、布製ウエスト部背面2を体軸方向へ伸ばし人体のウエスト部背面を覆い、さらに、布製殿部5を体軸方向へ伸ばし、人体の殿部を覆った。また、布製腰部4を体軸方向および水平方向へ伸ばし、人体の腰部を覆った。
このように、用途やデザイン等に応じ、衣類各部を体軸方向および水平方向へ増減させる場合であっても、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることでき、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を根本から整える機能を備えることが可能となる。
【0041】
なお、本発明をショーツに用いた第3の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではない。
【0042】
次に、本発明をショーツに用いた第4の実施の形態を図7および図8を用いて説明する。
図7および図8に示す本発明の第4の実施の形態である殿筋作用部10を備えたショーツは、布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備え、布製殿部5の人体の殿筋部に相当する部位に、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10を備え、殿筋作用部10の装着に伴う水平方向の収縮距離が、装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える構造とするものである。
【0043】
本発明の第4の実施の形態であるショーツの前面側を示す図7において、1は布製ウエスト部前面、3は布製腹部、12は布製股部である。背面側を示す図8において、2は布製ウエスト部背面、4は布製腰部、5は布製殿部、10は殿筋作用部である。
布製本体前面は、布製ウエスト部前面1および布製腹部3からなり互いに縫着されている。布製本体背面は、布製ウエスト部背面2および布製腰部4からなり互いに縫着され、布製殿部5が縫着されている。さらに、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2と、布製腹部3および布製殿部5は、装着者の前後のほぼ中間線で左右が互いに縫着され、布製股部12が縫着されている。さらに、布製殿部5には、人体の殿筋部に相当する部位に、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10が設けられている。また、布製ウエスト部前面1および布製ウエスト部背面2には、図示は省略するが、ゴムが通されている。
【0044】
本発明の第4の実施の形態において、布製ウエスト部前面1、布製ウエスト部背面2および布製腹部3は、伸縮性のベア天竺(綿89%、ポリウレタン11%)生地を使用し、水平方向の収縮距離と体軸方向の収縮距離に差異が生じ、水平方向の収縮距離が体軸方向の収縮距離より長くなる方向で構成した。また、布製腰部4は、布製腹部3で使用した生地を90度回転させ、体軸方向の収縮距離が、水平方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる方向で構成した。
また、布製殿部5は、布製腰部4に使用した生地を用い、殿筋作用部10は、体軸方向には布製腰部4と同等の伸縮機能を有し、水平方向には伸縮機能を有さないレース生地を用い、尾骨近傍から布製殿部5の下辺に接し、布製腹部3の一部に連結する位置に備えた。布製股部12は通気性の良い綿
素材で構成した。
【0045】
なお、本発明の第4の実施の形態においては、殿筋作用部10の起始部を尾骨近傍とし、停止部は布製腹部3の一部としたが、殿筋作用部10の起始部および停止部は布製殿部5内に留めてもよい。こうすることで、装着者の殿部の局所に対し、より好適に体型調整メカニズムを働かせることが可能となる。
また、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、殿筋作用部10の起始部や停止部は布製殿部5内に限定されなくてもよく、殿筋作用部10の下辺が布製殿部5の下辺に接さなくてもよい。また、殿筋作用部10は本発明の第4の実施の形態のように、左右対称の位置に一対備えることが望ましいが、二対以上でもよく、対をなさなくてもよい。さらに、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備えていれば、用途やデザイン等に応じ、その形状および位置等は任意でもよい。
【0046】
なお、本発明をショーツに用いた第4の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではない。
【0047】
次に、本発明をガードルに用いた第5の実施の形態を図9および図10を用いて説明する。
図9および図10に示す本発明の第5の実施の形態であるガードルは、布製本体前面を体軸方向の長さで等分し、布製前腹部下部6aと布製前腹部上部6bとし、布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備え、布製本体背面の全部に水平方向の伸縮機能を備えず、布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えない構造とするものである。
本発明の第5の実施の形態であるガードルを示す図9において、6は布製前腹部(布製ウエスト部前面1の大半と布製腹部3の大半)、6aは布製前腹部下部、6bは布製前腹部上部、7は布製側腹部(布製腹部3の一部)、11は布製脚部、12は布製股部である。図9に示したガードルの背面を示す図10において、5は布製殿部、8は布製背腰部(布製ウエスト部背面2の大半と布製腰部4の大半)、9は布製背腰外側部(布製ウエスト部背面2の一部と布製腰部4の一部)、11は布製脚部である。
【0048】
布製ウエスト部前面1の大半と布製腹部3の大半からなる布製前腹部6は、ポリウレタン(弾性繊維)糸を縦糸として使用し、中庸の伸縮機能を有するナイロン糸にポリウレタン糸を交編させた縦編の生地で構成し、水平方向の伸縮機能を備える構造とし、布製ウエスト部背面2の大半と布製腰部4の大半からなる布製背腰部8、布製殿部5、布製側腹部7および布製ウエスト部背面2の一部と布製腰部4の一部からなる布製背腰外側部9は、綿糸を使用した綾織り生地で構成し伸縮機能を備えない構造とした。
このことで、伸縮機能を有する布製前腹部6が、伸縮機能を有さない布製背腰部8、布製殿部5、布製側腹部7および布製背腰外側部9より、装着に伴う水平方向の収縮距離が長くなる機能を備える構成とした。
【0049】
さらに、布製前腹部6の形状を下辺より上辺が長い台形状とし、布製本体前面を体軸方向の長さで等分し、布製前腹部下部6aと布製前腹部上部6bとし、布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備える構成とした。
なお、本発明をガードルに用いたために備えた布製股部12は通気性の良い綿素材で構成し、布製脚部11は、装着者の大腿部に不快感を与えずにフィットするポリウレタンを使用した縦編の生地で構成した。
【0050】
本発明の第5の実施の形態において、布製前腹部6は、下辺と上辺に水平方向の収縮距離の差異を有さない生地を用い、その形状を下辺より上辺が長い台形状とし、布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備えたが、下辺と上辺に水平方向の収縮距離の差異を有する生地を用いてもよく、結果として布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備えていればよい。
また、布製本体背面の全部に水平方向の伸縮機能を備えず、さらに、布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えない構造とするために、布製本体背面と布製本体前面の一部に綿糸を使用した綾織り生地で構成し伸縮機能を備えない構造としたが、これらは例示であって制限的なものではなく、結果として布製本体背面の一部または全部に水平方向の伸縮機能を備えず、また、布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えなければよい。
また、布製脚部11の長さは、膝上、膝下または足首あるいは爪先までといったように、用途やデザイン等に応じ、任意の長さでよい。また、第5の実施の形態においては、腹部に対して密着して装着する衣類であるが、腰部、殿部、股部および脚部に対しては、用途やデザインに応じ、必ずしも密着しなくてもよい。
【0051】
本発明をガードルに用いた第5の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではない。
【0052】
次に、本発明をガードルに用いた第6の実施の形態を図11および図12を用いて説明する。
図11および図12に示す本発明の第6の実施の形態であるガードルは、布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備え、布製本体前面の内面に装着に伴う体軸方向の滑り止め機能を備え、布製本体背面の一部に水平方向の伸縮機能を備えず、布製殿部5の人体の殿筋部に相当する部位に、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10を備え、殿筋作用部10の装着に伴う水平方向の収縮距離が、装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える構造とするものである。
【0053】
本発明の第6の実施の形態であるガードルを示す図11において、1は布製ウエスト部前面、3は布製腹部、11は布製脚部、12は布製股部である。図11に示したガードルの背面を示す図12において、2は布製ウエスト部背面、4は布製腰部、5は布製殿部、10は殿筋作用部、11は布製脚部である。布製ウエスト部前面1および布製腹部3は、伸縮性のナイロンベア天竺 (ナイロン85%、ポリウレタン15%) 生地を使用し、水平方向の収縮距離と体軸方向の収縮距離に差異が生じ、水平方向の収縮距離が体軸方向の収縮距離より長くなる方向で構成した。布製腹部3の内面に、伸縮性の生地に伸縮性を有する糸を大きく畝状に編み体軸方向に凸凹を有する加工を施した伸縮性の生地(図13)を当て布として使用した。布製腹部3の内面の当て布は、布製腹部3の生地より水平方向および体軸方向の伸縮性に優れている。
【0054】
また、布製ウエスト部背面2は、伸縮性のナイロンベア天竺 (ナイロン85%、ポリウレタン15%) 生地に伸縮性を備えない綿糸を縫い込み相対的に水平方向の収縮距離に差異を設け布製腰部4および布製殿部5は、布製腹部3に使用した生地を90度回転させ、体軸方向の収縮距離が、水平方向の収縮距離より長くなる方向で使用し構成した。また、殿筋作用部10は、体軸方向には布製腰部4と同等の伸縮機能を有し、水平方向には伸縮機能を有さないレース生地を用い、尾骨近傍に接さず布製殿部5の下辺に接し、布製腹部3に連結する位置に備えた。
なお、本発明をガードルに用いたために備えた布製股部12は通気性の良い綿素材で構成し、布製脚部11は、装着者の大腿部に不快感を与えずにフィットするポリウレタンを使用した生地で構成した。
【0055】
本発明の第6の実施の形態においては、伸縮性の生地に伸縮性を有する糸を大きく畝状に編み体軸方向に凸凹を有する加工を施した伸縮性の生地(図13)を当て布とし、布製腹部3の内面に使用し、体軸方向の滑り止め機能を備えたが、体軸方向の滑り止め機能を備えるためには、ゴムテープを編立てる時に、体軸方向に等間隔でポリウレタンをむき出しにして編立てる事で、滑り止めとし布製本体前面の内面生地としてもよく、布製本体前面の内面生地にシリコン等をゼリー状にし、体軸方向に等間隔で生地表面またはゴムテープに乗せて熱風乾燥させる等の後加工を施してもよい。
また、これらを設ける部位は、布製腹部3の内面に限らない。布製ウエスト部前面1の内面に設けてもよく、布製本体前面の外面や多層構造の場合はその内部に設けてもよく、結果として、布製本体前面の一部または全部に装着に伴う体軸方向の滑り止め機能を備えればよい。
また、本発明の第6の実施の形態においては、明確な布製股部12を設けているが、用途やデザインに応じ、該衣類が人体の股部を覆っていれば明確な布製股部12を設けなくてもよい。さらに、用途やデザインに応じ、ボタン、ファスナーおよびマジックテープ等を用いてもよい。
【0056】
なお、本発明の第6の実施の形態においては、殿筋作用部10は尾骨近傍に接さず、起始部を布製殿部5の下辺とし、停止部は布製腰部4の一部としたが、用途やデザインに等に応じ、殿筋作用部10の起始部および停止部は布製殿部5内に留めてもよい。また、布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えていれば、殿筋作用部10の起始部や停止部は布製殿部5内に限定されなくてもよく、殿筋作用部10の下辺が布製殿部5の下辺に接さなくてもよい。また、殿筋作用部10は本発明の第4の実施の形態のように、左右対称の位置に一対備えることが望ましいが、二対以上でもよく、対をなさなくてもよい。さらに、布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備えていれば、用途やデザイン等に応じ、その形状および位置等は任意でもよい。
【0057】
本発明をガードルに用いた第6の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては通気性、柔軟性、保温性、耐久性等に優れたものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられる。これらは例示であって制限的なものではない。
【0058】
図1〜図12に示されるものは、いずれも、本発明の基本的構造を備えている。このことにより、本発明のウエスト部を有する衣類は、腹部への強い押圧力によらずに、体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることで、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により装着者の腹部の形状を整える機能を備えることが可能となる。
【0059】
ここで、本明細書でいう密着して装着する衣類とは、身体の表面に直接に接して密着する場合に限らず、他の下着類を介して身体に密着する場合も含むものである。
また、本明細書では、立位での上下方向を体軸方向と呼ぶ。また、立位での足から頭の方向を上方向と呼ぶ。さらに、体軸方向に対して90度をなす方向を水平方向と呼ぶ。また、非装着時の布製本体を腹部側と腰部側に等分し、腹部側を布製本体前面と呼び、腰部側を布製本体背面と呼ぶ。
さらに、該衣類を構成する布製ウエスト部前面1、布製ウエスト部背面2、布製腹部3、布製腰部4、布製殿部5および布製股部12は次のように定める。該衣類の布製本体上辺が装着者の上腹部に位置する場合、布製本体前面において、装着者の上腹部に位置する部位を布製ウエスト部前面1と呼び、下腹部に位置する部位を布製腹部3と呼ぶが、該衣類構成のデザイン等において、布製本体上辺が装着者の上腹部に位置しない場合や布製ウエスト部前面1が不明瞭な場合等においては、布製本体の上部に位置し、その部位を取り除いた場合に布製本体の装着位置の保持に不都合を生じる部位を布製ウエスト部前面1と呼び、布製本体前面から布製ウエスト部前面1を取り除いた部位を布製腹部3と呼び、デザイン等によりそれらの体軸方向の位置や幅は一定ではない。
【0060】
布製本体背面に位置し、布製ウエスト部前面1に対応する部位を布製ウエスト部背面2と呼び、布製本体背面に位置し、布製腹部3に対応する部位を布製腰部4と呼ぶ。また、布製殿部5、布製股部12とは装着者の殿部、股部に位置する部位を呼ぶ。
なお、本件発明は衣類以外を想定しているものではないが、衣類の種類等によっては、衣類の各部名称と身体の部位名称が一致しない場合があるため、本明細書において衣類と身体の部位の混同を避けるため、衣類には「布製」の語を付加したが、用途やデザインに応じ、布製とは異なるプラスチックや金属等の素材を用いる場合もある。
【実施例】
【0061】
続いて、図7および図8に示したショーツのモニター試験結果について説明する。このモニター試験では、10代から60代の14名の社外モニターに対し、モニター自身が装着しているショーツやタイツ等の上に、図7および図8に示したショーツと同等の構造を有するサンプルショーツを重ねて装着させた後、腹部を強く圧迫していないか、ウエストを過剰に締め付けていないか等の装着感を調べ、腹部および殿部の形状の変化をモニター自身に鏡で確認させた。さらに、サンプルショーツ非装着時とサンプルショーツ装着時の殿部の位置の変化を比較するため、モニターの背を壁に接して立たせ、壁に接する殿部の位置の変化をモニター自身の感覚で確認させた。
なお、このモニター試験ではサンプルショーツの装着感について調査することを目的としているため、サンプルショーツの機能の詳細についてはモニターに告げず、モニター試験を行った。
【0062】
このモニター試験の結果、サンプルショーツを装着した時点(鏡や壁を使用する前)で、14名中3名が「殿部の形状の変化を感じる」と答えた。
サンプルショーツの装着感に関し、各モニターからは、「腹部への圧迫は感じない」(14名中14名)、「ウエスト部への圧迫は感じない」(14名中14名)、「腰部への圧迫は感じない」(14名中14名)、という回答が得られた。また、壁に接する殿部の位置の変化を確認させた結果、「壁に接する殿部の位置が高くなった」(14名中12名)、「わからない」(14名中2名)、という回答が得られた。さらに、モニター試験を終え、サンプルショーツ非装着となった時、もう一度、壁に接する殿部の位置を確認させたところ、「壁に接する殿部の位置が低くなった」(14名中14名)、という回答が得られた。
【0063】
続いて、図3および図4に示したショーツのモニター試験結果について説明する。このモニター試験では、30代から60代の4名のモニター(社内3名、社外1名)に対し、図3および図4に示したショーツと同等の構造を有するサンプルを4ヶ月間継続使用させた後、腹部を強く圧迫していないか、ウエストを過剰に締め付けていないか等の装着感および継続使用による体型の変化について調べた。
このモニター試験の結果、サンプルショーツの装着感に関し、各モニターからは、「腹部への圧迫は感じない」(4名中4名)、「ウエスト部への圧迫は感じない」(4名中4名)、「腰部への圧迫は感じない」(4名中4名)、という回答が得られた。継続使用による体型の変化に関し、「腹部の形状の変化を自覚できる」(4名中3名)、「腰部の形状の変化を自覚できる」(4名中4名)、「殿部の形状の変化を自覚できる」(4名中3名)、「体型の変化を周囲から指摘される」(4名中4名)、という回答が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、腹部への強い押圧力によらずに、衣類の装着に伴う収縮距離の差異によって生じる作用と衣類と皮膚との摩擦を考慮し、皮膚に対する持続的伸張負荷を軽減することで、持続的伸張負荷が減少すると縮むという皮膚の生理的性質を作用させ、体型調整メカニズムを働かせるための条件を衣類に機能として取り入れることで、腹部の皮膚を弛ませ、腹部に軽くしわをよせ、日常的な継続使用により、産後や急激な痩せに伴う腹部のたるみのみならず、装着者の腹部の形状を根本から整える機能を備えた衣類を提供することができ、さらに、腹部のみならず腰部や殿部にも、体型調整メカニズムを働かせるための条件を機能として取り入れることが可能となり、衣料業界に貢献する処大である。
【符号の説明】
【0065】
1:布製ウエスト部前面
2:布製ウエスト部背面
3:布製腹部
4:布製腰部
5:布製殿部
6:布製前腹部(布製ウエスト部前面1の大半と布製腹部3の大半)
6a:布製前腹部下部
6b:布製前腹部上部
7:布製側腹部(布製腹部3の一部)
8:布製背腰部(布製ウエスト部背面2の大半と布製腰部4の大半)
9:布製背腰外側部(布製ウエスト部背面2の一部と布製腰部4の一部)
10:殿筋作用部
11:布製脚部
12:布製股部
21、22:伸縮性腹部裏打ち布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製ウエスト部前面1と布製腹部3とからなる布製本体前面と、布製ウエスト部背面2と布製腰部4とからなる布製本体背面とから構成されるウエスト部を有する衣類であって、前記布製本体前面の装着に伴う水平方向の収縮距離が、前記布製本体背面の装着に伴う水平方向の収縮距離より長くなる機能を備えるものであることを特徴とするウエスト部を有する衣類。
【請求項2】
前記布製本体前面を体軸方向の長さで等分し、布製前腹部下部6aと布製前腹部上部6bとし、前記布製前腹部下部6aの装着に伴う水平方向の収縮距離が、前記布製前腹部上部6bの装着に伴う水平方向の収縮距離より短くなる機能を備えるものである請求項1に記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項3】
前記布製腰部4の装着に伴う体軸方向の収縮距離が、前記布製ウエスト部背面2の装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に長くなる機能を備えるものである請求項1〜請求項2のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項4】
前記布製本体前面の一部または全部に装着に伴う体軸方向の滑り止め機能を備えるものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項5】
前記布製本体背面の一部または全部に水平方向の伸縮機能を備えないものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項6】
前記布製本体前面の一部に水平方向の伸縮機能を備えないものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項7】
前記ウエスト部を有する衣類が布製殿部5および/または布製股部12を備える請求項1〜請求項6のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項8】
前記布製殿部5の人体の殿筋部に相当する部位に、前記布製殿部5の装着に伴う水平方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える殿筋作用部10を備える請求項7に記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項9】
前記殿筋作用部10の装着に伴う水平方向の収縮距離が、装着に伴う体軸方向の収縮距離より同一幅で比較した場合に短くなる機能を備える請求項8に記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項10】
前記ウエスト部を有する衣類が布製脚部11を備える請求項7〜請求項9のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。
【請求項11】
前記ウエスト部を有する衣類が布製上半身の一部または全部を備える、例えば、ボディスーツ、レオタード、水着等の請求項1〜請求項10のいずれかに記載のウエスト部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−17116(P2011−17116A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275987(P2009−275987)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507134655)有限会社ちょうりゅう (4)
【Fターム(参考)】