説明

ウエットシートピロー包装体

【課題】経済的に必要最少量の含浸液の使用で十分含浸可能なウエットシートピロー包装体を提供すること。
【解決手段】個々に折り畳まれたウエットシートを個々に配列して収納したトレーをピロー包装したウエットシートピロー包装体であって、トレーの略中央の底にウエットシート取出口に相当する開口域が設けられ、該開口域はピロー包装体の合掌面の反対側の平面部に位置し、かつ、該平面部にウエットシート取出口が設けられてなるウエットシートピロー包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布等の繊維素材シートに液状化粧料や薬液等の液を含浸させたウエットシートピロー包装体に関する。
さらに詳しくは、本発明は、ウエットティッシュやフェイスマスクシート等のウエットシートを横向きにトレーに配列収納させて、所定量の含浸液を上下均一に含浸させ、使用に際しては天面・地面を逆転させてピロー包装体の取出口に接するトレー底開口域からシートの取出しを可能としたウエットシートピロー包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧水の使用は、容器より取出した化粧水を織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートに含浸させて、顔を軽くたたくようにして(パッティング)使われているが、このように使用時に化粧水をシートに含浸させて使用するのは手間がかかる上に、肌に適用する化粧水の量の過不足があったり、使用感が悪かったり、化粧効果が得られないなどの問題があった。
そこで、予め化粧水を織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートに含浸せしめたウエットティッシュが知られており、現在では、使用者ニーズに応じた多くの種類の商品が提供されるようになっている。
含浸液としては、化粧水に限らず、通常の洗浄消毒に用いる薬液を含浸させて手や皮膚の洗浄や消毒に頻繁に用いられている場合もある。
最近、液状化粧料等を含浸させたウエットティッシュやフェイスマスクシート等のウエットシートが汎用され、クレンジングやスキンケア等に用いられるようになっている。
手や皮膚の洗浄や消毒に用いるウエットティッシュは、一枚ずつ折り畳んだものを縦ないし上下方向に積層した状態のシート、あるいは一枚分のカット線を入れた連続状態のシートを数十枚単位で、取出し口付きの筒型容器や箱型容器に収納した据え置きタイプの商品が主流であるが、一枚ずつ個々に折り畳んだものを縦ないし上下方向に積層した状態のシートを数枚から十数枚単位で、取出し口付きピロー包装体等のプラスチックフィルム包装体に収納した携帯用の商品も提供されている。
【0003】
クレンジングやスキンケア等に用いられるウエットシートは、高価な液状化粧料を含浸させたり、場合によってはシート基材に化粧水の含浸させる量を高めたりして、コスト的に高くつく場合もあり、商品価値を高めるために一枚ずつ折り畳んだシートを個包装するか、複数枚単位で包装した商品が主流であるが、中には経済性を重視して折り畳んだシートを複数個単位で縦ないし上下方向に配列して箱型容器に収納した製品も知られている。
このように、種々のニーズに対応して、織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートに液状化粧料や薬液等の液を含浸させたウエットシート包装体は、汎用日用品や化粧品として出回っている。
【0004】
上述するウエットシートの包装には、プラスチックフィルムで商品を包装する、いわゆる軟包装が多用されており、経済性を初め多くの優れた利点を有することから、広く利用されている。
このプラスチックフィルムを用いた軟包装の一形態として、包装用フィルムを樋状から管状に形成しつつ製品を包み込むピロー包装が代表的である。
【0005】
ピロー包装は、現在、最も汎用化されている包装手段の一つであり、ピロー(枕)形状の袋で被包装物の製品が包装され、包装機に対して被包装物が横(水平)方向から供給されて管状に包装する場合は横ピロー、縦方向に包装する場合は縦ピローと称されている。
このピロー包装は、基本的には、被包装物を包装するプラスチックフィルムを供給する供給部、供給部から繰り出されたプラスチックフィルムを筒状にするフォーマー部、筒状プラスチックフィルム内部に被包装物を装填する装填部(コンベア)、被包装物を内部に収納した筒状プラスチックフィルムの端縁部同士をヒートシールするセンターシール部、センターシールしたプラスチックフィルム包装体のカット寸法を決める引き出し部、カット寸法の決まった筒状プラスチックフィルム包装体をシール及び切断するシール・切断部からなり、センターシールはプラスチックフィルム包装体の中央に位置し、プラスチックフィルムの折り返し部が包装体側面を形成する形状の包装手段である(非特許文献1)。このようなピロー包装は、製造工程が高速で包装可能という製造者側の経済性、得られた製品が携帯性がよく、開封がし易いという利便性があり、化粧品分野においても、この包装手段を利用してドライティッシュ、ウエットシート等の多くの製品が生産されている。
【0006】
特に最近、ウエットティッシュやフェイスマスクシート等、液状化粧料を含浸させたウエットシートが多く製品化され、肌の保湿効果を高めて潤いを与える等のために使用されるようになり、これらのウエットシートについては、より高い効果を得るために多量の液状化粧料を含浸させたウエット製品が求められている。
例えば、個包装のウエットシート包装体で液状化粧料を含浸させる場合、過剰量の含浸液を使用するという経済性を無視するなら均一な含浸量という品質の偏りについての問題は無いが、経済性を考えて必要最少量の含浸液を使用する場合には、多数枚のウエットシートを従来のように一方向(多くの場合は、縦ないし上下方向)に多数枚重ねて配列収納して包装したとき、個々のウエットシートに含浸される液状化粧料の含浸量が下方に近いものは含浸量が多く、上方に近い部分のものは含浸量が不足するという問題があり、多数枚のウエットシートに均一に含浸液を効率的に高含浸させることは難しかった。
従来、多数の折り畳んだウエットシートを横方向に配列して収納し、含浸させたウエットシート包装体は公知(特許文献1)であるが、後記説明するように容器包装であって、含浸量の均一化が難しく、本発明のピロー包装のように経済性がよく、含浸効率のよいウエットシート製品とは言えなかった。
【0007】
【非特許文献1】特許庁「技術分野別特許マップ」平成12年度機械18「フィルム包装技術」、第212頁
【特許文献1】特開2008−150317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述するように、経済性を無視して多量の液状化粧料や薬液等の液を含浸させたウエットシートを提供しようとする場合、不織布等の繊維素材シートを十分量の液と接触させる必要があるので、容器内に液を満たす必要があり、ピロー包装によってこれを実現化することはできなかった。
一方、十分な液量を確保できる容器形態の包装では、利便性に欠け、過剰包装になりやすく、経済性を満たすことはできなかった。
容器形態の包装である、上述する公知のウエットシート包装体(特許文献1)は、不織布等の繊維素材シートを折り畳んだ状態で、その多数を合成樹脂製箱型容器へ横向きに配列収納させた後、容器内に化粧液を注入してシートに含浸させたウエットシート製品であるが、包装に合成樹脂製箱型容器を用いるので、バッチ式で手数のかかる包装形態であり、ピロー包装のように簡便に、経済的にウエットシート包装体が得られることはなかった。
そこで、本発明では、多数個を同時に収納する包装形態であっても、ウエットシートへの液状化粧料の含浸量が上下左右均一で、しかもウエットシートの取出しが容易な包装体を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために、基本的には以下の構成を特徴とするものである。
(1)ウエットシートを収納したトレーを包装するピロー包装体であって、該トレー底の略中央にウエットシート取出口に相当する開口域が形成されており、該開口域はピロー包装体の合掌面の反対側の平面部に位置し、かつ、該平面部にウエットシート取出口が設けられてなり、さらに、該トレーには折り畳まれたウエットシートが横向きに複数個配列収納されてなることを特徴とするウエットシートピロー包装体。
(2)ウエットシートの折り目が、トレー底に接するように配列収納されてなることを特徴とする(1)に記載のウエットシートピロー包装体。
(3)ウエットシートは、該合掌面の反対面の平面部に設けられた開閉蓋の開閉によってトレー開口域及び該平面部の取出口を通して個々に取出し可能となっている(1)又は(2)に記載のウエットシートピロー包装体。
(4)トレー底の開口域自体は、余剰の含浸液の液溜めのための突条堤によって形成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
(5)横向きになるようにトレーに複数個配列して収納されたウエットシートと該突条堤との間隙に液不透過性シートを介在させていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
(6)ウエットシートが、繊維素材シートより形成されたものであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
(7)ウエットシートが、液状化粧料又は薬液が含浸されたものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
【0010】
本発明のウエットシートピロー包装体においては、ウエットシート取出し時に、ウエットシートピロー包装体の天面・地面が逆転することが特徴である。
すなわち、本発明のウエットシートピロー包装体は、個々に折り畳まれた繊維素材シート(なお、含浸後はウエットシートという)を個々に配列して収納したトレーを逆ピロー包装したウエットシートピロー包装体であるが、ピロー包装体合掌面の反対面の平面部に設けられたウエットシートの取出口は、トレー底の略中央に設けられたウエットシート取出しのための開口域と連通しているから、ウエットシートの取出し時には、天面側の該取出口から、同じく天面側に位置するトレー開口域を介してウエットシートを取出すことができる。
なお、本発明では、天面は、天方向又は上方向に面する側、地面は、地面方向又は下方向に面する側をいう。
【0011】
一般にピロー包装には正ピロー包装と逆ピロー包装のいずれかの方法があるが、本発明では折り畳んだ繊維素材シートを配列収納したトレーをピロー包装する場合、正ピロー包装を採用すると、トレー底に開口域を設ける必要はないが、トレーのテーパー状に広がった上部が、ピロー包装体合掌面の反対面のウエットシートの取出口が設けられた平面部に位置することになるので、取出口に設けられた開閉蓋の開閉や製品の積層によるトレーの変形や破損が生じるという問題がある。それに対して、逆ピロー包装を採用した場合、上記したように、強度のあるトレー底がウエットシートの取出口が設けられた平面部に位置することになるので、開閉蓋の開閉や製品の積層によるトレーの変形や破損が生じないという利点がある。
【0012】
本発明の繊維素材シートは個々に折り畳まれて、横向きになるようにトレーに複数個配列収納されており、この状態において注入された含浸液は繊維素材シートの上部から含浸されていく。繊維素材シートの折り畳み及び配列収納は、含浸液が未含浸のままでもよいし、含浸液が含浸したものでもよい。
なお、繊維素材シートの折り目がトレー底に接するように配列収納することにより、ピロー包装体に収納されたウエットシートの取出し易さが増すとともにトレー上での安定性が向上するという利点がある。
ピロー包装体の形成時は天面側に合掌面が位置するが、使用にあたっては天面・地面が逆転するから、合掌面は地面側になり天面側に位置することになったピロー包装体の平面部に設けられた開閉蓋を開け、トレー底(天面・地面の逆転したときは天面側に位置する)の略中央の開口域を通して、ウエットシートを個々に取出しすることができる。
【0013】
トレー底の略中央の開口域は突条堤によって区劃されており、この突条堤は余剰の含浸液の液溜めとなるので、ピロー包装体形成時にトレーに配列収納された繊維素材シートに注入された含浸液の余剰液は、該突条堤によってトレー底に溜まり、使用時の天面・地面の逆転によって該余剰液が、再度、繊維素材シートに含浸され、含浸液を有効に利用できる。
また、上述するように該突条堤が液溜めとなるので、該突条堤には液不透過性シートを置き、さらにそのシート上に横向きになるように複数個配列収納された繊維素材シートを置き、その上から含浸液を注入したとき、短時間で繊維素材シートに吸収しきれなかった含浸液の余剰液がトレー底の開口域からピロー包装体の平面部に流れ出る漏出を防ぐことができる。
【0014】
ピロー包装体形成直後の合掌面は天面側であるが、天面・地面の逆転により合掌面は地面側に位置することになる。使用にあたっては、天面・地面の逆転により天面側に位置するようになったピロー包装体の平面部に設けられた開閉蓋を開け、上記突条堤とウエットシートの間に位置する液不透過性シートを取り除いてから、横向きに配置されたウエットシートの上部を摘んで取出すことができる。
【0015】
繊維素材シートは、織布、不織布、ガーゼ、コットン等の素材より形成されたシートを使用し、液状化粧料又は薬液等の液を上記素材に含浸されるようにする。
本発明のウエットシートピロー包装体は、折り畳んだ繊維素材シートを、該シートが横向きになるようにトレー中に複数個配列収納せしめ、次いで含浸液を注入し、ピロー包装の合掌面が天面側になるようにピロー包装体を形成せしめ、さらに形成されたピロー包装体の天面・地面を反転して含浸液をウエットシート中に十分に行きわたらせることによって、効率的に液状化粧料又は薬液等の液を含浸させることができる。
上述するように、トレーへの配列収納前に、予め含浸液を含浸させた場合には、より安定的にウエットシートに含浸液を含浸させることができる。
【0016】
本発明のウエットシートピロー包装体を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のウエットシートピロー包装体製造のフローシート、図2は、本発明のウエットシート収納用のトレー斜視図、図3は、該トレー底の突条堤に液不透過性シートを載置したときの斜視図、図4は、トレーに折り畳んだ繊維素材シートを収納した状態の斜視図、図5は、図2のA―A方向の断面図、図6は、図3のB−B方向の断面図、図7は、図4のC−C方向の断面図、図8は、本発明のウエットシートピロー包装体の使用時の断面図、図9は、トレーに収納する繊維素材シートの断面図、図10は、その変形例図、図11は、繊維素材シートの平面図、図12は、繊維素材シートとしてのフェイスマスクシートの平面図、図13は、フェイスマスクシートの折り畳み状態、図14は、先行技術として紹介される化粧水含浸の横配列の不織布シートを収納した製品の斜視図、図15は、該製品の内部に収納される容器タイプの包装体の斜視図、第16図は、該製品への化粧水の注入の状況(左側)と化粧シート取出し状況(右側)の概念図を示す。
【0017】
例えば、本発明で先行技術(特許文献1)として紹介する化粧水含浸の横配列の不織布シートを収納した製品100は、図14及び図15に示すもので、包装容器自体は、紙製のような簡易包装体からなり、収納部102、蓋101から構成されている。この内部には、硬質プラスチックの容器110が収納されており、該プラスチック容器110は、タブ型容器の収納部111中にトレー120が収納されており、該トレー120に化粧水含浸シート122が横向きに配列収納されている。不織布シートには、図16(左側)に示すように化粧水123を含浸せしめた後、中蓋121をかぶせ、さらに硬質プラスチック容器の蓋112で密封する。使用に際しては、簡易包装箱100の内側に収納されたプラスチック容器110を取出し、蓋112を開け、さらにトレー120の中蓋121を開けて化粧水含浸シート122を取出す。
上記先行技術にある箱形容器による上記包装形態では、化粧水含浸シート122がトレー120に横向きで配列収納されてはいるが、トレー120自体は硬質プラスチックからなる容器110に収納されたものであって、2重包装が必要である。
上記先行技術における含浸された不織布シートの取り出しは、図16(右側)に示すように含浸された不織布シートの上部分を摘んで取出すが、折り畳んだ不織布シートの上部分は化粧水の含浸量が少なく、下部分には含浸液が常時滞留するから含浸量が必要以上に多くなる。このように、これでは上記箱形容器を用いた収納形態では、横配列の不織布シートの上下で不均一は免れず、不織布の上下ともに過不足なく含浸させようとすると、経済性を無視して過剰量の含浸液を注入せざるを得ない。
【0018】
一方、本発明のウエットシートピロー包装体では、上記先行技術にあるように、含浸液の上部分と下部分で不均一含浸が生じることは少ない。
すなわち、図1に示すように織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートと、底の一部、例えば略中央部が開口域となったトレーとを用意し、トレーに該繊維素材シートを横方向に規則的に収納し、含浸液を注入する。
トレーに配列収納する前の繊維素材シートは含浸液を含んでいるものでも以後の工程に何ら差し支えない。
【0019】
この状態でトレー底が地面に接したままでピロー包装し、ピロー包装体とする。この状態で移送・保管し、天面・地面を逆転させて、トレー中に滞留する含浸液を再度、繊維素材シートに含浸させるようにする。繊維素材シートには再度の含浸によって含浸液が十分に行きわたるようになる。天面・地面の逆転は、移送・保管後の使用前でもよいし、移送・保管前でもよいが、天面・地面の逆転からの時間経過によって取出し側の繊維素材シートの上部の含浸量が減少状態となる可能性もあるので、移送・保管後のできるだけ使用に近い時間の前に天面・地面を逆転させる方が、含浸液がより全体的に行きわたることとなる。
【0020】
図2〜図4の斜視図、図5〜図7の断面図に示すように本発明のウエットシートピロー包装体のトレー10は、側壁1、底2、突条堤3からなり、底2には開口域4が設けられている。突条堤3の上には液不透過性シート5が載置されている。トレー10には、折り畳まれた繊維素材シート6を横向きに配列して収納する。トレー10に配列収納した後の繊維素材シートには、含浸液として、液状化粧料又は薬液等の液7を上部より適宜の手段で注入する。なお、図中の矢印は、製造時の天面を示す。
【0021】
移送・保管前又は移送保管後に上記包装体の天面・地面を逆転するが、逆転後の時間経過が長いと取出し側の繊維素材シートの含浸液が含浸不足になることもあるので、出来得れば使用に近い段階で天面・地面を逆転させる方がベターである。図9、図10は繊維素材シート51、52の横断面図で、図11は、繊維素材シート53の平面図を示す。
含浸後はウエットシートとなる繊維素材シートは、織布、不織布、ガーゼ、コットン等の適宜の形状の繊維素材シートでよいが、図13に示すようフェイスマスクシートであってもよい。図12は、その折り畳み状態を示す。
【0022】
本発明では、織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートを用いるが、その材質は、液状化粧料の含浸性及び良好な肌触りを考えると、親水性の高い繊維素材が好ましい。このような繊維素材は、従来から知られているウエットシートやフェイスマスクシート等のウエットシート製品に広く使用されており、本発明においても、同様の繊維素材を使用目的に応じて選択し使用すれば良い。
【0023】
不織布を使用する場合には、目付は、50g/m2前後のものが好ましく、液含浸時の1枚の厚みは200〜800μmとすれば良い。また、繊維素材シートを複数枚積層した積層体の厚みは、液含浸時で1,000〜3,000μmとすれば良い。
さらに、含浸に供する繊維素材シートの形状は、長方形、正方形、楕円形等が一般的であり、使用目的に応じて、適当な大きさにカットすれば良い。また、フェイスマスクシートの場合は、顔全面を覆える形状でも良く、額や頬等の形状に合わせたものでも良い。
繊維素材シートは、二つ折りや三つ折りが一般的であり、Z字状やU字状に折り畳み、好ましくは折り目がトレー底に接するようにして、配列収納すれば良い。シートの折り畳みに於いては、市販の折り機を使用することが出来る。
【0024】
本発明で繊維素材シートに含浸する液状化粧料や薬液等の液は、従来から知られているウエットシートやフェイスマスクシート等のウエットシート製品に広く使用されているものを使用すれば良い。例えば、保湿性や肌触り等の観点から水溶性高分子を配合することが好ましく、加えて、美白成分や血行促進成分等を選択して配合すれば良い。
また、含浸させる液の粘度は、1〜5,000mPa・sのものが好ましく、粘度が高くなり過ぎると繊維素材シートに高含浸させることはできなくなる。
さらに、繊維素材シートの含浸シートへは、7〜9倍(含浸率700〜900%)含浸させたものが好ましい。
【0025】
本発明で利用する包装技術は、横ピロー包装であり、市販の逆ピロー包装機を使用することで効率的に本発明のウエットシート包装体を製造することが出来る。なお、ピロー包装に使用するプラスチックフィルムは、状況に応じて適宜合成樹脂を積層したラミネートフィルムを使用すれば良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明のウエットシートピロー包装体では、ウエットシートを形成する素材として、織布、不織布、ガーゼ、コットン等の繊維素材シートの折り畳まれたものを横向きに配列してトレーに収納するが、使用に際して天面・地面が逆転することにより効率的に液状化粧料や薬液等の液の含浸が可能である上に、携帯性に優れ、開封し易いという使用者の利便性に優れ、しかもピロー包装という汎用の包装形態を採用するので、経済性が高い。
また、多数個の繊維素材シートを同時に一体包装出来る上に、先の先行技術にある容器包装では、繊維素材シートを横方向に配置するという点では共通するにしても、多量の液を含浸する必要のある場合には、個々の繊維素材シートに均一に含浸させることが難しかった積層状態のウエットシートを包装対象として適用可能としたという利点がある。
さらに、ピロー包装により、従来のプラスチック容器に比べてプラスチックの使用量を大幅に削減出来るので、環境にも優しい製品を提供出来るという長所もある。
【実施例】
【0027】
(ティッシュタイプのウエットシート包装体)
繊維素材シートとしてコットン100%不織布(CO60S/A07、ユニチカ社製)を使用し、ウエットペーパー折り機(SWP500、東亜機工社製)にて、不織布を単層(実施例1)又は2層重ね(実施例2)で折り畳み(3Z)、この折り畳んだ不織布の中にノズルを挿入して液状化粧料を含浸(1回目)させた後、プレス機で軽くプレスして、裁断(サイズ:W40mm×L80mm)した。
別途準備した本発明用トレー(サイズ:125mm×100mm×42mm、材質:PP、厚さ:0.8mm 丸善社製)の底部開口域を形成する突条堤の上に液不透過性フィルム(材質:CPP、厚さ:30μm ショーエイコーポレイション社製)を載置し、その上に上記不織布シートを折り目がトレー底に接するよう横向きで規則的に25個ずつ配列収納した。
不織布シートを配列収納したトレーをコンベアで搬送しながら、トレーの上から液状化粧料をシャワーして含浸(2回目)させた後、プレス機で軽くプレスしてウエットシートとした。なお、使用した液状化粧料の組成は、クエン酸0.2%、クエン酸ナトリウム0.06%、ブチレングリコール5%、グリセリン3%、パラベン0.2%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.1%、EDTA0.1%、ヒアルロン酸ナトリウム1%溶液1%、精製水90.34%であった。
ウエットシートを横向きに配列収納したトレーを逆ピロー包装機(S-5630A-BX 大森機械工業社製)にてピロー包装した。
包材として、取出口のフラップ(材質:OPP50/ユポ80、サイズ:W77mm×P81mm及び材質:マイクロポーラスフィルム35/PET100、サイズ:W69mm×P75mm タニダ社製)を装着したラミネートフィルム(材質:PET12/AL7/Ny15/LLDPE40、サイズ:W333mm×P213mm メイワパックス社製)を使用した。耳折り機にて脱気、シール、ホットメルト塗布及び接着を行って本発明のウエットシートピロー包装体を製造した。
また、比較例として、実施例と同様にして裁断した不織布シート(単層・比較例1、2層重ね・比較例2)をプラスチック製硬質容器に配列収納し開口部に蓋をシールしたものも製造した。
そのときの状況をまとめた結果は以下の通りであった。
なお、実施例の包装体については、製造1時間後に天面・地面を逆転させてシート状態を観察した。
【0028】
【表1】

【0029】
注1.含浸量は、繊維素材シートの質量に対する含浸液質量の倍率で表した。なお、実施例においては、表中の含浸量となるよう含浸液量及びプレス条件を調整した。また、比較例においては、実施例と等量の液量で含浸した。
注2.含浸不均一性は、ウエットシートの上部分と下部分の間に含浸状態の差異があるかどうかの目視及び触感結果
注3.使用感の差は、ウエットシートの使用時に差異があるかどうかの触感結果
注4.包装の煩雑さは、容器の場合、プラスチック製硬質容器に繊維素材シートを収納する手数の上に、さらにこの容器自体を少なくとも1個単位でより大きい箱容器に詰めて製品とする(なお、本発明のものは、ピロー包装体自体が製品である)。
【0030】
(フェイスマスクタイプのウエットシート包装体)
不織布シート(材質:Re50/PET30 ACR-750 Web-Pro社製)を使用してストレッチマスク型シート(サイズ:W156mm×L188mm)を裁断し、四つ折りしそれを半分に折り畳んだ後、液状化粧料をシャワーして含浸(1回目)させた。別途準備した本発明用トレー(サイズ:100mm×100mm×47mm、材質:PP、厚さ:0.8mm 丸善社製)の底部開口域を形成する突条堤の上に液不透過性フィルム(材質:CPP、厚さ:30μm ショーエイコーポレイション社製)を載置し、その上に上記不織布シートを折り目がトレー底に接するよう横向きで規則的に28個ずつ配列収納した。
不織布シートを配列収納したトレーをコンベアで搬送しながら、トレーの上から液状化粧料をシャワーして含浸(2回目)させた後、プレス機で軽くプレスしてウエットシートとした。なお、使用した液状化粧料の組成は、クエン酸0.2%、クエン酸ナトリウム0.8%、ブチレングリコール5%、グリセリン3%、パラベン0.2%、キサンタンガム0.3%、カルボマー0.1%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.1%、コラーゲン1%、ヒアルロン酸ナトリウム1%溶液1%、精製水88.3%であった。
ウエットシートを横向きに配列収納したトレーを逆ピロー包装機(S-5630A-BX 大森機械工業社製)にてピロー包装した。包材として、取出口のフラップ(材質:OPP50/ユポ80、サイズ:W77mm×P81mm及び材質:マイクロポーラスフィルム35/PET100、サイズ:W69mm×P75mm タニダ社製)を装着したラミネートフィルム(材質:PET12/AL7/Ny15/LLDPE40、サイズ:W333mm×P213mm メイワパックス社製)を使用した。
耳折り機にて脱気、シール、ホットメルト塗布及び接着を行って本発明のウエットシートピロー包装体を製造した。
得られたウエットシートの含浸量は7倍量で、薬液は均一に含浸されており、使用に際して好ましいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のウエットシートピロー包装体製造のフローシート
【図2】本発明のウエットシート収納用のトレー斜視図
【図3】図2のトレー底の突条堤に液不透過性シートを載置したときの斜視図
【図4】図2のトレーに折り畳んだ繊維素材シートを収納した状態の斜視図
【図5】図2のA―A方向の断面図
【図6】図3のB−B方向の断面図
【図7】図4のC−C方向の断面図
【図8】本発明のウエットシートピロー包装体の使用時の断面図
【図9】トレーに収納する繊維素材シートの断面図
【図10】図9の変形例図、
【図11】繊維素材シートの平面図
【図12】繊維素材シートとしてのフェイスマスクシートの平面図
【図13】フェイスマスクシートの折り畳み状態
【図14】先行技術として紹介される化粧水含浸の横配列の不織布シートを収納した製品の斜視図
【図15】図14の製品の内部に収納される容器タイプの包装体の斜視図
【図16】図14の製品への化粧水の注入の状況(左側)と化粧シート取出し状況(右側)の概念図
【符号の説明】
【0032】
1 トレー側壁
2 トレー底
3 開口域形成のための突条堤
4 トレー底の開口域
5 液不透過性シート
6 繊維素材シート
7 含浸液
10 トレー
20 本発明のウエットシートピロー包装体
21 ピロー包装体平面部の蓋体
22 ピロー包装体の合掌面
51 繊維素材シートの折り畳み体
52 繊維素材シート積層体の折り畳み体
53 繊維素材シートの平面部
55 フェイスマスクシート
56 フェイスマスクシートの折り畳み体
100 先行技術製品
101 先行技術製品の包装体の蓋
102 先行技術製品の包装体の収容容器収納部
110 プラスチック容器
111 プラスチック容器収納部
112 プラスチック容器の蓋
120 化粧水含浸シート収納トレー
121 化粧水含浸シート収納トレーの中蓋
122 化粧水含浸シート
123 化粧水



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエットシートを収納したトレーを包装するピロー包装体であって、該トレー底の略中央にウエットシート取出口に相当する開口域が形成されており、該開口域はピロー包装体の合掌面の反対側の平面部に位置し、かつ、該平面部にウエットシート取出口が設けられてなり、さらに、該トレーには折り畳まれたウエットシートが横向きに複数個配列収納されてなることを特徴とするウエットシートピロー包装体。
【請求項2】
ウエットシートの折り目が、トレー底に接するように配列収納されてなることを特徴とする請求項1に記載のウエットシートピロー包装体。
【請求項3】
ウエットシートは、該合掌面の反対面の平面部に設けられた開閉蓋の開閉によってトレー開口域及び該平面部の取出口を通して個々に取出し可能となっている請求項1又は2に記載のウエットシートピロー包装体。
【請求項4】
トレー底の開口域自体は、余剰の含浸液の液溜めのための突条堤によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
【請求項5】
横向きになるようにトレーに複数個配列して収納されたウエットシートと該突条堤との間隙に液不透過性シートを介在させていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
【請求項6】
ウエットシートが、繊維素材シートより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。
【請求項7】
ウエットシートが、液状化粧料又は薬液が含浸されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のウエットシートピロー包装体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−42846(P2010−42846A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208712(P2008−208712)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】