説明

ウエハーダイシング用保護膜組成物

本発明は、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンと、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分と、溶媒としての、水または水と有機溶媒との混合物とを含むウエハーダイシング用保護膜組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のダイシング工程に用いられる、熱安定性に優れたウエハーダイシング用保護膜組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、ウエハーダイシング工程は、半導体積層工程の完了後、それぞれの配列されたデバイスを、ストリートと呼ばれる境界面に沿ってウエハーを切削することにより分離する工程である。切削工程が終わると、チップ製造工程が行われ、半導体製品が完成する。
【0003】
このようなウエハーダイシング工程は、半導体の集積化に伴ってストリートの間隔が狭くなり、積層物の機械的物性も脆弱になるため、これを解決するための方向に変化している。
【0004】
素子の集積化度が高まるにつれて、積層物の最上段にある絶縁膜を形成する主材料としてのポリイミドがウエハーダイシング工程中に破れたり損傷したりする。よって、ウエハーダイシング工程も、ブレードによってウエハーを切断していた既存の工程から、レーザーによってウエハーを穿孔した後でブレードを用いる工程に変わりつつあり、レーザーのみを用いてウエハーを切断する工程も導入されている。ところが、レーザーを用いるレーザーダイシング工程では、レーザーの熱によってヒュームが発生して飛散し、これによりウエハーの上部表面が汚染されてしまうという問題点が発生する。
【0005】
かかる問題点を解決するための公知技術としては、ウエハーの上部表面にポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)またはセルロース(Cellulose)系の水溶性レジンを塗布して保護膜を形成し、レーザー光を照射する加工方法が開示されている。
【0006】
ところが、この種の技術によっても、レーザー光の熱によりウエハーの切断面からシリコンガスが発生すると、ウエハー保護膜の剥離が発生する。また、シリコンガスとともにヒュームが発生し、これらは、剥離状態の保護膜とウエハーの上部表面との間に蓄積されるため、ウエハー保護膜を水で洗浄しても、蓄積されたヒュームは、水によって洗い流されないという問題があった。
【0007】
また、水溶性レジンは、熱安定性に劣るという欠点がある。よって、レーザーダイシング工程の際にレーザーの照射を受けると、内部から熱が発生し、この熱により、ポリビニルアルコールなどの水溶性レジンの熱分解が発生する。また、熱分解の途中で架橋が発生し、このような熱架橋物質は、レーザーダイシング工程後における水による洗浄によっても除去されず、ウエハーの上部表面に残る。
【0008】
現在、レーザーダイシング工程は、一般に、レーザー照射による穿孔工程の後、ブレードを用いてウエハーを切削する切削工程で行われるが、ブレードを用いたウエハー切削工程の際に、ウエハー保護膜の硬度が高い場合、保護膜の破断が発生し、これにより、保護膜の破断隙間に、切削の際に発生する異物が入り込む。そして、この異物は、非水溶性物質であって、ウエハー基板の上部に付着しているため、水による洗浄の際に洗い流されないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するためのものであり、その目的は、熱安定性に優れ、ダイシング工程中のレーザー照射による熱架橋物質の生成を防止し、ウエハーとの接着力に優れ、レーザーダイシング工程中における保護膜の剥離を防止し、適正な硬度を有する保護膜を形成することにより、レーザーによる穿孔の後、ブレードで切削しても保護膜の破断が発生しない、ウエハーダイシング用保護膜組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンと、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分と、溶媒としての、水または水と有機溶媒との混合物とを含むウエハーダイシング用保護膜組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物は、熱安定性に優れ、ダイシング工程中のレーザー照射による熱架橋物質の生成を防止し、ウエハーとの接着力に優れ、レーザーダイシング工程中における保護膜の剥離を防止することができる。また、保護膜組成物として使用できる適正な硬度を有する保護膜を形成することができ、ウエハーを切削する際の保護膜の破断の発生を防止することができる。さらに、ウエハーに対する塗布性能にも優れるため、集積度が高まっている半導体デバイスの製造時のダイシング工程において幅広く使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンと、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分と、溶媒としての、水または水と有機溶媒との混合物とを含むウエハーダイシング用保護膜組成物に関する。
【0013】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物においては、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジン(固形分基準)と、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分(水溶性レジンは固形分基準)は、1:9〜7:3の重量比で含まれ、溶媒は組成物全体の粘度が10〜100cPとなる範囲で含まれ得る。
【0014】
また、ウエハーダイシング用保護膜組成物は、組成物に含まれるレジン成分の固形分総重量に対して10〜80ppmの水溶性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0015】
一般に、ウエハーダイシング用保護膜組成物に使用されるレジン成分として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース系のレジン、ポリアクリル酸(PAA)などの水溶性レジンが使われている。これらの中でも、ヒドロキシ基またはカルボキシル基を有する水溶性レジンは、熱に弱いか、或いは熱分解の際に架橋副産物を生成するという欠点がある。一方、本発明の組成物で使用する水溶性レジンとしてのポリエチルオキサゾリンとポリビニルピロリドンは、熱安定性および水に対する溶解性に優れるという特徴を有する。
【0016】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物は、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンとして、ポリエチルオキサゾリン、またはポリエチルオキサゾリンとポリビニルピロリドンとの混合物を含むことが好ましい。
【0017】
ポリエチルオキサゾリンの一例として、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)は、アクアゾルという商品名で知られているが、熱安定性および水に対する溶解性に優れる。窒素雰囲気の下で昇温速度を10℃/minにして熱重量分析器(TGA)で重量減少を測定すると、350℃以上で重量減少が現れ始め、380℃付近で急激に分解が起こる。ところが、分解途中で架橋副産物が生成されないため、水に溶解されないディフェクト(defect)が発生しない。
【0018】
ポリビニルピロリドンも熱安定性および水に対する溶解性に優れる。窒素雰囲気の下で昇温速度を10℃/minにして熱重量分析器(TGA)で重量減少を測定すると、300℃付近で重量減少が現れ始め、400℃付近で急激に分解が起こる。ところが、分解途中で架橋副産物が生成されないため、水に溶解されないディフェクトが発生しない。
【0019】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物において、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分は、保護膜の基板接着性の向上と硬度調節のために使用される。水溶性レジンの例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、セルロース、ポリアクリル酸(PAA)などを挙げることができ、アルコール単量体の例としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、トリメチルプロパノールなどを挙げることができる。
【0020】
ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)は、水溶性レジンであって、水に対する溶解性がよく、ウエハーとの接着力が非常に優れている。よって、ポリビニルアルコールを使用すると、ウエハーダイシング用保護膜組成物の接着力を向上させることができ、これにより、レーザー照射の際の保護膜の剥離を防止することができる。ポリビニルアルコールは、鹸化度と分子量によって水に対する溶解度が異なり、溶解後の貯蔵安定性も異なる。ポリビニルアルコールの鹸化度が100%の場合には、水に対する溶解度が良くなく、水に溶解された後でゲル化が進むため、時間によって粘度が上昇する。このため、鹸化度87〜90%のポリビニルアルコールを使用することができる。鹸化度87〜90%のポリビニルアルコールは、時間による粘度変化がないため、溶液剤として使用可能である。また、分子量によっても溶解性と時間による安定性が異なるが、重合度500〜2000のポリビニルアルコールは、溶解性および貯蔵安定性に優れる。よって、本発明では、鹸化度87〜90%および重合度500〜2000のポリビニルアルコールを使用することが好ましい。
【0021】
ここで、ポリビニルアルコールは、熱安定性が低いため、熱安定性に優れたポリエチルオキサゾリンおよび/またはポリビニルピロリドンと混合して使用し、250℃以下で、水によって溶解されない架橋副産物が生成されない範囲内で使用することが好ましい。
【0022】
本発明の保護膜組成物において、ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジン(固形分基準)と、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分(水溶性レジンは固形分基準)とは、1:9〜7:3の重量比で含まれることが好ましく、3:7〜7:3の重量比で含まれることがさらに好ましい。前述したような範囲で含まれる場合、熱安定性、ウエハーに対する接着性、保護膜の硬度などの側面で望ましい物性が現れる。
【0023】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物において、水溶性界面活性剤は、組成物の塗布性を向上させ、貯蔵安定性を高める役割を果たす。
【0024】
一般に、レーザーダイシング工程で使用する保護膜フィルムの厚さは1μm以上とするため、保護膜組成物の塗布性が良くない場合、ウエハーの中央と縁部の膜厚差が発生して工程マージンが減る。よって、本発明の保護膜組成物は、水溶性の界面活性剤を添加することにより、組成物の塗布性を向上させることを特徴とする。水溶性界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性アルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン、ヒドロキシ官能基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ官能基を有するポリエーテル−ポリエステル変性ポリアルキルシロキサン、非イオン性ポリアクリル系水溶性界面活性剤、アルコールアルコキシレート、及びポリメリックフルオロ系水溶性界面活性剤などを挙げることができ、これらは1種単独でまたは少なくとも2種が使用できる。
【0025】
また、本発明者は、水溶性界面活性剤が保護膜組成物で分散剤の役割も行い、時間経過に伴って保護膜組成物にゲル化が発生しないことを発見した。よって、本発明の保護膜組成物は、水溶性界面活性剤を含むことにより、塗布性の向上だけでなく、優れた貯蔵安定性も有する。
【0026】
本発明の保護膜組成物において、水溶性界面活性剤は、組成物に含まれるレジン成分の固形分総重量に対して10〜80ppmで含まれることが好ましい。水溶性界面活性剤がこの範囲で含まれる場合、保護膜組成物の塗布性、貯蔵安定性などにおいて望ましい物性が現れるうえ、その他に熱安定性、ウエハーに対する接着性、保護膜の硬度などにおいても望ましい。
【0027】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物は、溶媒として水を使用するが、保護膜組成物の膜厚を高めるために或いは塗布性を向上させるために、有機溶媒を混合して使用することもできる。有機溶媒の例としては、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、エチレンカーボネートなどのアルキルカーボネート系を挙げることができる。このような有機溶媒は1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
ここで、プロピレングリコールモノメチルエーテルは、水とのいずれの混合比でも互いに溶解されて混溶性に優れるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、水100gに対して16g以下のみ溶解される溶解性を有するため、この範囲内で使用しなければならない。
【0029】
特に、極性の高いアルキルカーボネート系のブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、エチレンカーボネートなどの有機溶媒を混合して使用すると、貯蔵安定性と塗布性の向上の観点からみて有利な効果を示す。
【0030】
エチレンカーボネートは常温で固体または水によく溶解され、グリセリンカーボネートは水にいずれの混合比でも溶解される。ところが、ブチレンカーボネートとプロピレンカーボネートは、水に対する溶解度が常温でそれぞれ10%、25%以下であるので、この範囲内で使用しなければならない。
【0031】
本発明の保護膜組成物において、溶媒は、全体組成物の粘度が10〜100cPとなるように調節して添加される。保護膜組成物の粘度がこの範囲内の場合には優れた塗布性を示し、ウエハー接着性、保護膜の硬度などにおいても望ましい物性が現れる。
【0032】
本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物は、性能を向上させるために、当業界における公知の少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0033】
特に、本発明のウエハーダイシング用保護膜組成物は、溶液剤の気泡生成を抑制するために、添加剤として消泡剤をさらに含むことができる。このような消泡剤としては、ポリシロキサン、ポリアルキルシロキサン、フルオロシリコン重合体などを挙げることができる。
【0034】
また、本発明は、ウエハーダイシング用保護膜組成物を用いて製造される半導体素子に関する。本発明に係る半導体素子は、レーザー、ブレードなどを用いてウエハーをダイシングする場合にも、本発明に係るウエハーダイシング用保護膜によって完璧に保護され、保護膜の洗浄も容易なので、欠陥のない状態に製造されることを特徴とする。
【0035】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳しく説明する。なお、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎない。本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、多様な修正および変更を加え得る。
【0036】
実施例1〜10および比較例1〜6:ウエハーダイシング用保護膜組成物の製造
実施例1
攪拌器付き混合槽に、ポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:50)5g、およびポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:87〜90%)5gを添加し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0037】
実施例2
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:50)3g、ポリビニルピロリドン(重合度:1200)3g、およびポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)4gを添加し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0038】
実施例3
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:50)3g、ポリビニルピロリドン(重合度:1200)3g、およびポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)4gを添加し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0039】
実施例4
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:500)7g、およびポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:87〜90%)3gを添加し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0040】
実施例5
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度500)3g、およびポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)7gを添加し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0041】
実施例6
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:50)5gおよびポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:87〜90%)5gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)と消泡剤(BYK−025、BYK社製)を固形分のポリエチルオキサゾリンとポリビニルアルコール含量の和に対してそれぞれ30ppmずつ投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0042】
実施例7
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:50)3g、ポリビニルピロリドン(重合度:1200)3g、およびポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)4gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)と消泡剤(BYK−025、BYK社製)を固形分のポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール含量の和に対してそれぞれ30ppmずつ投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0043】
実施例8
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度;50)2g、ポリビニルピロリドン(重合度:1200)2g、およびポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)6gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)と消泡剤(BYK−025、BYK社製)を固形分のポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール含量の和に対してそれぞれ30ppmずつ投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0044】
実施例9
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:500)7gおよびポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:87〜90%)3gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)と消泡剤(BYK−025、BYK社製)を固形分のポリエチルオキサゾリンとポリビニルアルコール含量の和に対してそれぞれ30ppmずつ投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0045】
実施例10
攪拌器付き混合槽にポリエチルオキサゾリン(商品名:アクアゾル、重合度:500)3g、ポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)7g、トリスエチレングリコール(TEG)1g、およびブチレンカーボネート0.3gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)と消泡剤(BYK−025、BYK社製)を固形分のポリエチルオキサゾリンとポリビニルアルコール含量の和に対してそれぞれ30ppmずつ投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0046】
比較例1
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)10g、および溶媒としての水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0047】
比較例2
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)9g、ポリエチレングリコール(重量平均分子量700)1g、および溶媒としての水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0048】
比較例3
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)9gおよびペンタエリスリトール(Pentaerithritol)1gを添加し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0049】
比較例4
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)8g、ポリエチレングリコール(重量平均分子量700)1g、およびペンタエリトスリトール1gを添加し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0050】
比較例5
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)9gおよびポリエチレングリコール(重量平均分子量700)1gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)を固形分のポリビニルアルコールとポリエチレングリコールの和に対して300ppm投入し、溶媒として水を溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0051】
比較例6
攪拌器付き混合槽にポリビニルアルコール(重合度:1700、鹸化度:87〜90%)9gおよびペンタエリスリトール1gを添加し、界面活性剤(BYK−337、BYK社製)を固形分のポリビニルアルコールとペンタエリトリトールの和に対して300ppm投入し、溶媒として水とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を70/30(w/w)の割合で溶液の粘度が60cPとなるように添加した後、常温で1時間500rpmの速度で攪拌してウエハーダイシング用保護膜組成物を製造した。
【0052】
試験例1:ストリップ速度測定テスト
4インチの酸化シリコン基板に実施例と比較例のサンプルをスピンコートした後、110℃で15分間乾燥させた膜厚が1μmとなるようにスピン速度(rpm)を調節してサンプルを製造した。これらのサンプルが水にストリップされる速度をDRM機械によって測定した。なお、測定単位は秒当たり除去される膜厚で表示した。試験結果を下記表1に示す。
◎:1000nm/s以上
○:800nm/s以上1000nm/s未満
△:500nm/s以上800nm/s未満
×:500nm/s未満
試験例2:塗布性能測定テスト
4インチの酸化シリコン基板に実施例と比較例のサンプルをスピンコートした後、110℃で15分間乾燥させた膜厚が1μmとなるようにスピン速度(rpm)を調節してサンプルを製造した。その後、ウエハーの中央、および中央から上下左右それぞれ2cm、4cm離れた地点の膜厚を測定して標準偏差を確認し、ウエハーダイシング用保護膜組成物の塗布性能を確認した。試験結果を下記表1に示す。
◎:1%以下
○:1%よりも大きく2%以下
△:2%よりも大きく4%以下
×:4%よりも大きい
試験例3:鉛筆硬度測定テスト
4インチの酸化シリコン基板に実施例と比較例のサンプルをスピンコートした後、110℃で15分間乾燥させた膜厚が1μmとなるようにスピン速度(rpm)を調節してサンプルを製造した。その後、JID D 0202の実験方法に基づいて鉛筆硬度を測定した。試験結果を下記表1に示す。
【0053】
試験例4:密着性測定テスト
4インチの酸化シリコン基板に実施例と比較例のサンプルをスピンコートした後、110℃で15分間乾燥させた膜厚が1μmとなるようにスピン速度(rpm)を調節してサンプルを製造した。その後、JIS K5600−5−6の実験方法に基づいてクロスカットテスト(テーピングテスト)を行った。試験結果を下記表1に示す。
◎:離れた格子の数(0個)
○:離れた格子の数(1〜5個)
△:離れた格子の数(5〜10個)
×:離れた格子の数(10個以上)
試験例5:熱安定性テスト
4インチの酸化シリコン基板に実施例と比較例のサンプルをスピンコートした後、110℃で15分間乾燥させた膜厚が1μmとなるようにスピン速度(rpm)を調節してサンプルを製造した。その後、熱風乾燥機に250℃で10分間放置した後、水によって洗い流されるかを確認した。これは水に溶けない熱分解架橋物質が熱によって生成されるかを確認するためのテストである。試験結果を下記表1に示す。
◎:奇麗にストリップされる
○:微細なパーティクルが存在する
△:ストリップされていない部分が多い
×:全くストリプされない
試験例6:貯蔵安定性テスト
実施例と比較例のサンプルを常温で保管しながら1週毎に粘度の測定と塗布性の測定を行い、時間による物性の変化が発生するかを測定した。試験結果を下記表1に示す。
◎:36週以上安定
○:18週以上安定
△:8週以上安定
×:8週未満で安定
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンと、水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分と、溶媒としての、水または水と有機溶媒との混合物とを含むウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項2】
前記ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジン(固形分基準)と前記水溶性レジンおよび前記アルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分(水溶性レジンは固形分基準)とは、1:9〜7:3の重量比で含まれ、前記溶媒は、組成物全体の粘度が10〜100cPとなる範囲で含まれることを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項3】
前記組成物に含まれるレジン成分の固形分総重量に対して10〜80ppmの水溶性界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項4】
前記ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンが、ポリエチルオキサゾリンであることを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項5】
前記水溶性レジンは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、セルロースおよびポリアクリル酸(PAA)よりなる群から選ばれ、前記アルコール単量体は、モノエチレングリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトールおよびトリメチルプロパノールよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項6】
前記水溶性レジンおよび前記アルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分は、ポリビニルアルコールであり、該ポリビニルアルコールは87〜90%の鹸化度および500〜2000の重合度を有することを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項7】
前記ポリエチルオキサゾリンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種のレジンは、ポリエチルオキサゾリンであり、前記水溶性レジンおよびアルコール単量体から選ばれる少なくとも1種の成分は87〜90%の鹸化度および500〜2000の重合度を有するポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項8】
前記水溶性界面活性剤は、ポリエーテル変性アルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン、ヒドロキシ官能基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ官能基を有するポリエーテル−ポリエステル変性ポリアルキルシロキサン、非イオン性ポリアクリル系水溶性界面活性剤、アルコールアルコキシレート、及びポリメリックフルオロ系水溶性界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項9】
前記溶媒は水と有機溶媒との混合物であり、前記有機溶媒はイソプロピレンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、およびエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項10】
前記有機溶媒は、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、およびエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のウエハーダイシング用保護膜組成物を用いて製造される半導体素子。

【公表番号】特表2011−522411(P2011−522411A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511503(P2011−511503)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002727
【国際公開番号】WO2009/145526
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】