説明

ウエハー保護膜用組成物

【課題】ウエハー表面を保護する保護膜性を維持しつつ、その工程終了後、不要となった上記保護膜を容易に洗浄除去でき、洗浄除去後の保護膜の残渣の有無が容易に検知できるウエハー保護膜を与える保護膜用組成物を提供すること。
【解決手段】保護被膜形成材料と蛍光検知剤を含有することを特徴とするウエハー保護膜用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハー表面に保護膜を形成するウエハー保護膜用組成物に関し、さらに詳しくは、ウエハー製造工程や組立工程の途中において、ウエハー表面を保護する保護膜性を維持しつつ、その工程終了後、不要となった上記保護膜を容易に洗浄除去ができ、洗浄除去後の保護膜の残渣の有無が容易に検知できるウエハー保護膜を与えるウエハー保護膜用組成物(以下、単に「保護膜用組成物」という場合がある)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のウエハーは、その製造工程、組立工程、搬送工程などで、ウエハーの表面にキズがついたり、異物が付着したり、腐食が発生したりする危険性がある。このことは、製品の歩留にも影響する。このために、上記の工程において、ウエハーの表面を保護するために、保護膜液を塗布し、乾燥した保護膜を形成する。上記の保護膜は、上記工程での保護膜としての役割が終了すると、洗浄剤により洗浄除去され、保護膜の残渣を皆無にして製品としてのウエハーを取り出す。保護膜除去後のウエハーの確認は、まずは目視によって行われることが多い。
【0003】
しかしながら、これまでの上記の保護膜は、一般的には無色であるために、洗浄剤による洗浄除去後の保護膜の残渣の有無が分かりにくく、目視による確認は熟練度を要した。このために、洗浄不良に伴う保護膜の微量の残渣の有無を完全に判別して管理することは非常に難しかった。また、染料などの着色剤を配合して、保護膜を着色することも試みられるが、微小な残渣のため、その発色を見分けることは困難であった。
【0004】
上記の保護膜の微量の残渣は、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリー(DRAM)などの集積回路に使用されるシリコンウエハーの表面に上記の微量の残渣が残っていた場合には、該シリコンウエハーを使用して得られるDRAMの性能に悪影響を及ぼす。このために、完全に除去しなければならない。
【0005】
前記の保護膜を形成する組成物としてある種の組成物、半導体素子保護膜用塗布組成物(特許文献1)、または、シリコンウエハー保護膜用樹脂組成物(特許文献2)などが開示されている。
【0006】
上記の特許文献1の保護膜組成物は、水溶性樹脂の水溶液からなる半導体素子保護膜用塗布組成物であり、ウエハーに塗布された保護膜を、加工後に23℃の純水に60秒程度浸漬して洗浄除去している。また、上記の特許文献2の保護膜用樹脂組成物は、ポリビニルアルコールを水性系溶媒に溶解した溶液からなるシリコンウエハー保護膜用樹脂組成物であり、ウエハーに塗布された保護膜を、加工後に80℃の水に2分間浸漬し更に80℃の水で30秒シャワー洗浄して洗浄除去している。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1、および特許文献2の保護膜用組成物は、そのウエハーに形成された保護膜の洗浄除去の判別は目視で行われているので、無色の保護膜の洗浄残渣の有無を完全に判別することは困難である。とくに、被着体と保護膜の色が似ていれば、より判別が困難になる。また、保護膜の洗浄除去は、該保護膜の厚み、洗浄温度、洗浄時間、洗浄液の種類などにより影響されるため、保護膜の洗浄除去を従来の目視検査により管理するのは容易ではなく、洗浄除去不良の残渣を見逃す危険性もある。上記の従来の目視検査により保護膜の洗浄残渣を見逃してしまった場合には、後工程でのウエハー上の素子の使用にも支障をきたす。
【0008】
上述のことから、洗浄後のウエハー保護膜の残渣が容易に検知できるウエハー保護膜を与えるウエハー保護膜用組成物が要望されている。
【0009】
【特許文献1】特開平9−106981号公報
【特許文献2】特開平10−120965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、ウエハー表面を保護する保護膜性を維持しつつ、その工程終了後、不要となった上記保護膜を容易に洗浄除去でき、洗浄除去後の保護膜の残渣の有無が容易に検知できるウエハー保護膜を与える保護膜用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、保護被膜形成材料と蛍光検知剤を含有することを特徴とするウエハー保護膜用組成物を提供する。
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ウエハーの保護膜となる被膜形成材料に、紫外線などの活性エネルギー線により発光する蛍光検知剤を適宜に配合した蛍光性を有する保護膜用組成物が、ウエハー工程終了後、不要となった上記保護膜を洗浄除去した場合に、洗浄除去後の保護膜の残渣の有無が紫外線などにより容易に検知でき、ウエハーに悪影響を及ぼす残渣を見逃すことなく完全に除去できることを見いだした。
【発明の効果】
【0013】
ウエハー表面を保護する保護膜が、その工程終了後、完全に洗浄除去されたか否かを、洗浄後の保護膜の残渣の有無を紫外線などの照射によって容易に確認管理できるようになり、ウエハーの性能に悪影響を及ぼす保護膜残渣を見逃すことなく完全に除去されたウエハーが得られる保護膜用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明を特徴づける蛍光検知剤は、紫外線などの活性エネルギー線により蛍光を発光する化合物であり、前記の保護膜を形成する被膜形成材料と相溶性のあるものであればいずれのものも使用することができ、得られる保護膜用組成物溶液に溶解・分散するものが好ましく使用される。
【0015】
上記の蛍光検知剤は、好ましくはその含有量がウエハー保護膜用組成物総量中で0.01質量%〜0.5質量%を占める量である。上記の蛍光検知剤の含有量が、上記の範囲を超えると、余剰の蛍光剤がウエハーに付着し残留する。一方、上記の蛍光検知剤の含有量が、少な過ぎると保護膜の残渣の検知が困難になる。
【0016】
前記の蛍光検知剤としては、公知の無機あるいは有機の蛍光顔料、蛍光染料、蛍光増白剤など、およびそれらの混合物、好ましくは蛍光増白剤を主成分とする蛍光顔料および/または蛍光染料が挙げられる。上記の蛍光増白剤は、単独でも、あるいは、蛍光顔料および/または蛍光染料と混合して使用することができる。
【0017】
上記の蛍光検知剤としては、例えば、ベンゾオキサゾール系、オキサゾール系、スチルベン系、クマリン系、ピラゾリン系、イミダゾール系、ナフタルイミド系、ビスベンゾオキサゾール系、ビススチルビフェニール系、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体系などの蛍光増白剤;キサンテン系酸性染料、キサンテン系塩基性染料、アクリジン系塩基性染料、ナフタルイミド系酸性染料、チアゾール系塩基性染料、エオシン、ローダミンなどの蛍光染料;アゾ系、YAG系蛍光体、ルモゲンLイエロー、ルモゲンLブリリアントイエロー、ルモゲンLイエローオレンジ、ルモゲンLレッドオレンジなどのルモゲン顔料などの蛍光顔料などが挙げられる。上記の蛍光検知剤は、単独でも、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0018】
前記の蛍光増白剤としては、好ましくは下記の式(1)で表わされる化合物である2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)が挙げられる。上記の蛍光増白剤は、有機溶媒に対する溶解性が良く、得られる保護膜用組成物中での分散性が極めて優れていることから、保護膜の残渣の有無の検知が精度良くできる。

【0019】
また、前記の蛍光染料としては、好ましくは下記の式(2)で表わされる化合物である6−アミノ−2,3−ジヒドロ−2−(4−メチルフェニル)−1,3−ジオキソ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−5−スルホン酸ナトリウムが挙げられる。

【0020】
また、前記の蛍光顔料としては、好ましくは下記の式(3)で表わされる化合物である9,10−ビス(フェニルアミノ)アントラセンが挙げられる。

【0021】
前記の蛍光検知剤は、蛍光増白剤(x)と蛍光顔料および/または蛍光染料(y)との、その配合がy/x=0〜50/50〜100(質量比)であるのが好ましい。上記の蛍光増白剤の配合割合が、上記範囲内であると得られる保護膜用組成物の残渣の有無をブラックライトなどの紫外線光源による発光により検知するのに有効である。
【0022】
前記の保護被膜形成材料は、ウエハーの製造工程、組立工程、搬送工程などで、ウエハーの表面のキズ、異物付着、腐食の発生などからウエハーを一時的に保護する樹脂組成物であり、使用後、水、アルカリ水溶液、有機溶剤などで洗浄可能なものであればいずれのものも使用することができる。
【0023】
前記の保護被膜形成材料としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、ロジン変性フェノール樹脂などのロジン類;(メタ)アクリル酸とその他共重合可能なモノマーとの共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル樹脂;ポリメチルビニルエーテル;ポリビニルピロリドン;ケン化度80%以上などのポリビニルアルコール;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;その他、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0024】
前記の保護被膜形成材料の内で、好ましくはロジン類、テルペン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、およびポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
前記の保護被膜形成材料は、その酸価が70mgKOH/g〜200mgKOH/gであるアルカリ水溶液などのアルカリ洗浄液にて除去可能な樹脂が特に有効である。上記の樹脂としては、例えば、ロジン類、アルカリ可溶性のアクリル樹脂、エポキシ樹脂など、およびそれらの混合物などが挙げられる。なお、本発明における酸価は、JIS K5902に準じて測定した値である。
【0026】
本発明の保護膜用組成物は、さらに、多糖類、脂肪酸、脂肪酸エステル、および界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。上記の添加成分は、保護被膜形成材料の塗膜形成性および洗浄除去性を向上させる。上記の成分は、各々単独でも、あるいは2種以上を混合しても使用することができる。
【0027】
上記の添加成分としては、例えば、セルロース、デンプン、グリコーゲンなどの多糖類、カプロン酸、カプリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの飽和脂肪酸;カプロン酸メチルエステル、カプロン酸エチルエステル、カプリル酸メチルエステル、カプリル酸エチルエステルなどの脂肪酸エステル;アニオン系、カチオン系、ノニオン系などの界面活性剤などが挙げられる。
【0028】
本発明の保護膜用組成物は、前記の保護被膜形成材料と蛍光検知剤とを有機溶媒または水などの水性溶媒などの溶媒に適宜に配合し、好ましくは上記蛍光検知剤が保護膜用組成物総量中で前記の占める量を配合して、公知の方法で均一に溶解分散して20質量%〜40質量%溶液に調製する。
【0029】
上記の有機溶媒としては、前記の保護被膜形成材料と蛍光検知剤と、その他添加成分を均一に分散できるアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。なお、前記の保護被膜形成材料が水溶性の場合には、水単独、あるいは水とアルコール類、エーテル類などの水性溶媒を組み合わせて使用するのが好ましい。
【0030】
上記の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコールなどの脂肪族飽和アルコール;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオールなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチル、モノエチル、モノイソプロピルなどのエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル、モノエチル、モノイソプロピルなどのジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテートなど、その他、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酪酸メチル、乳酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸プロピルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソプロピルケトン、アセトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族類など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
前記の保護膜用組成物の使用する1例は以下の通りである。例えば、電子部品、光学機器、医療部品、および自動車部品に使用されるシリコンウエハーなどのウエハー表面に浸漬法、ロールコート法、スピンコート法などの方法で、好ましくはスピンコーターなどの塗工機により膜厚2μm〜3μm程度になるように前記保護膜用組成物を塗布し、80℃〜120℃で乾燥し、ウエハー表面に保護膜を形成する。上記の保護膜が形成されているウエハーを、面取り加工したり、組立工程におけるウエハーからICチップを取り出す前に、上記の保護膜を、公知のアルカリ水溶液、あるいは有機溶剤などの洗浄剤を使用して、浸漬法、スプレー法、スピン法などの方法で洗浄除去する。上記の洗浄工程で、洗浄されたウエハーにブラックライトなどの紫外線光源を照射しながら、ウエハー表面に付着している残渣の発光がなくなるまで洗浄を行う。
【0032】
上記の洗浄剤としては、カセイソーダ、カセイカリ、アンモニアなどのアルカリ剤からなるアルカリ水溶液、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族類などの有機溶剤、水、水と水性溶媒との混合物などが挙げられる。
【0033】
前記のウエハーとしては、好ましくはダイナミックランダムアクセスメモリー(DRM)などに使用されるシリコンウエハー、その他、CdTe、ZnS、ZnTe、GaAs、MgO、STO、LiNbO3、LiTaO3、BGO、Al23、ガラス、サファイア、または石英などのウエハーが挙げられる。
【実施例】
【0034】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1](保護膜用組成物W1)
下記の成分を配合して均一に混合分散して本発明の保護膜用組成物W1を調製した。
・水素添加ロジン
(荒川化学(株)製、KR−612、酸価168mgKOH/g) 30部
・イソプロピルアルコール 50部
・酢酸エチル 19.9部
・蛍光検知剤(2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−
1,3−ベンゾキサゾール)) 0.1部
【0036】
[実施例2](保護膜用組成物W2)
下記の成分を配合して均一に混合分散して本発明の保護膜用組成物W2を調製した。
・水素添加ロジン
(荒川化学(株)製、KR−612、酸価168mgKOH/g) 30部
・イソプロピルアルコール 50部
・酢酸エチル 19.9部
・蛍光検知剤(2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−
1,3−ベンゾキサゾール)80部と6−アミノ−2,3−ジヒドロ−2−
(4−メチルフェニル)−1,3−ジオキソ−1H−ベンゾ[de]イソ
キノリン−5−スルホン酸ナトリウム20部との混合物) 0.1部
【0037】
[実施例3](保護膜用組成物W3)
下記の成分を配合して均一に混合分散して本発明の保護膜用組成物W3を調製した。
・水素添加ロジン
(荒川化学(株)製、KR−612、酸価168mgKOH/g)29.3部
・パルミチン酸 0.3部
・イソプロピルアルコール 50.4部
・酢酸エチル 19.9部
・蛍光検知剤(2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−
1,3−ベンゾキサゾール70部)と9,10−ビス(フェニルアミノ)
アントラセン30部との混合物) 0.1部
【0038】
[実施例4](保護膜用組成物W4)
下記の成分を配合して均一に混合分散して本発明の保護膜用組成物W4を調製した。
・アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−105) 5部
・イソプロピルアルコール 75部
・酢酸エチル 19.9部
・蛍光検知剤(2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−
1,3−ベンゾキサゾール)70部と9,10−ビス(フェニルアミノ)
アントラセン30部との混合物) 0.1部
【0039】
[比較例1〜4](保護膜用組成物X1〜X4)
保護膜用組成物W1〜W4の調製において蛍光検知剤を配合しない以外は実施例1〜4と同様にして比較例の保護膜用組成物X1〜X4を調製した。
【0040】
前記で得られた各々の保護膜用組成物の洗浄後の該組成物の残渣の有無を下記の方法で評価した。6inのシリコンウエハー表面にスピンコーターを使用して前記の保護膜用組成物を3μm(乾燥厚み)になるように塗布し、100℃に加熱されたホットプレート上で30秒間乾燥させて試料を作製した。上記の試料を0.3%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して洗浄を行い、浸漬時間経過ごとに、保護膜用組成物の塗膜の洗浄残渣をブラックライト(アズワン(株)製、ハンディーUVランプSLUV−4)を使用して365nm波長の紫外線を照射し、その発光状態を確認しながら残渣の有無を下記の基準にて判定した。評価結果を表1に示す。なお、保護膜用組成物W4および保護膜用組成物X4の洗浄は、イソプロピルアルコールに浸漬して以下同様に行った。
【0041】
評価:
(洗浄状態)
A:洗浄残渣が無い程度洗浄されているがその有無を完全に肉眼にて判定するのが困難である。
B:洗浄残渣が微量で、残渣の確認が肉眼ではやや困難である。
C:洗浄残渣が有り、残渣の確認が肉眼でできる。
(発光状態)
f1:残渣による発光が認められる。
fn:残渣が洗浄され発光が全く認められなくなった。
f0:残渣の発光が無い。
【0042】

【0043】
上記の評価結果より、蛍光検知剤を配合した保護膜用組成物は、その保護膜の洗浄残渣の発光状態を検知することにより、不要になった保護膜の洗浄除去が完了したか否かを確認することができる。すなわち、実施例1において、45秒以上で保護膜が洗浄除去できたことが分かる。一方、比較例の蛍光検知剤を配合していない保護膜用組成物は、洗浄が完了しても発光が伴わないために、その残渣の有無が肉眼で容易に判定しがたく洗浄除去の管理が十分にできない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の保護膜用組成物は、ウエハーに対するその保護膜性を維持しつつ、その工程終了後、洗浄除去される上記保護膜の洗浄除去後の残渣の有無を容易に検知して洗浄除去が完了したか否かを確認することができるウエハー保護膜を与えることから、シリコンウエハーなどの各種ウエハー用の保護膜用組成物として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護被膜形成材料と蛍光検知剤を含有することを特徴とするウエハー保護膜用組成物。
【請求項2】
前記蛍光検知剤の含有量が、ウエハー保護膜用組成物総量中で0.01〜0.5質量%を占める量である請求項1に記載の保護膜用組成物。
【請求項3】
前記蛍光検知剤が、少なくとも蛍光増白剤を主成分とする蛍光染料および/または蛍光顔料である請求項1または2に記載の保護膜用組成物。
【請求項4】
前記の蛍光検知剤が、蛍光増白剤(x)と蛍光染料および/または蛍光顔料(y)とが、y/x=0〜50/50〜100(質量比)である請求項3に記載の保護膜用組成物。
【請求項5】
前記蛍光増白剤が、2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)である請求項3または4に記載の保護膜用組成物。
【請求項6】
前記保護被膜形成材料が、ロジン類、テルペン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、およびポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の保護膜用組成物。
【請求項7】
前記保護被膜形成材料が、その酸価が70mgKOH/g〜200mgKOH/gの樹脂である請求項1に記載の保護膜用組成物。
【請求項8】
さらに、多糖類、脂肪酸、脂肪酸エステル、および界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の保護膜用組成物。
【請求項9】
前記ウエハーが、シリコン、CdTe、ZnS、ZnTe、GaAs、MgO、STO、LiNbO3、LiTaO3、BGO、Al23、ガラス、サファイア、または石英である請求項1に記載の保護膜用組成物。

【公開番号】特開2009−40841(P2009−40841A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205610(P2007−205610)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】