説明

ウエハ加工体、ウエハ加工用部材、ウエハ加工用仮接着材、及び薄型ウエハの製造方法

【解決手段】支持体上に仮接着材層が形成され、かつ仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが積層されてなるウエハ加工体であって、
上記仮接着材層が、上記ウエハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、この第二仮接着層に積層され、支持体に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A’)からなる第三仮接着層の3層構造を有する複合仮接着層単位を備えたウエハ加工体。
【効果】本発明の仮接着材層は、耐熱性が高いために、幅広い半導体成膜プロセスに適用でき、段差を有するウエハに対しても、膜厚均一性の高い接着材層を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ウエハを効果的に得ることを可能にするウエハ加工体、ウエハ加工用部材、ウエハ加工用仮接着材、及び薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(「裏面」ともいう)研削によって薄型化し、更に裏面にTSVを含む電極形成を行う工程が必要である。従来、シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、TSV形成工程や裏面での配線層形成工程を行うには適しない。
【0003】
そこで、半導体基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着層を介して接合することによって、裏面研削、TSVや裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着層である。これは基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要で、更に最後に薄型ウエハを支持体から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することから、本明細書では、この接着層を仮接着層とよぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着層とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着材に高強度の光を照射し、接着材層を分解することによって支持体から接着材層を剥離する技術(特許文献1:特開2004−64040号公報)、及び、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着材に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2:特開2006−328104号公報)が提案されている。前者の技術はレーザー等の高価な装置が必要であり、更には、支持体にレーザー光を透過するガラス基板のような特定の基板を使用する必要もあり、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。また後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であるため、適用範囲は狭かった。更にこれらの仮接着層では、高段差基板の均一な膜厚形成と、支持体への完全接着にも適さなかった。
【0005】
また、シリコーン粘着剤を仮接着材層に用いる技術が提案されている(特許文献3:米国特許第7541264号公報)。これは基板を支持体に付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、あるいは分解するような薬剤に浸漬して基板を支持体から分離するものである。そのため剥離に非常に長時間を要し、実際の製造プロセスへの適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−64040号公報
【特許文献2】特開2006−328104号公報
【特許文献3】米国特許第7541264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、仮接着が容易であり、かつ、高段差基板の均一な膜厚での形成も可能であり、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、剥離も容易で、生産性を高めることができるウエハ加工体、ウエハ加工用部材、ウエハ加工用仮接着材、及びこれを使用する薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、
(A)の高重合度オルガノポリシロキサンからなる熱可塑性仮接着層と、
(B)の変性シロキサン重合体を主成分とする層からなる熱硬化性仮接着層と、更には
(A’)の高重合度オルガノポリシロキサンからなる熱可塑性仮接着層との3層系からなる仮接着材層を、ウエハと支持体の接合に使用することで、この仮接着材層を使用して貫通電極構造や、バンプ接続構造を有する薄型ウエハを、簡単に製造する方法を見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記のウエハ加工体、ウエハ加工用部材、ウエハ加工用仮接着材、及び薄型ウエハの製造方法を提供する。
(1) 支持体上に仮接着材層が形成され、かつ仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが積層されてなるウエハ加工体であって、
上記仮接着材層が、上記ウエハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、この第二仮接着層に積層され、支持体に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A’)からなる第三仮接着層の3層構造を有する複合仮接着層単位を備えたウエハ加工体。
(2) 第一及び第三の重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である(1)記載のウエハ加工体。
(3) 重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である(1)又は(2)記載のウエハ加工体。
【化1】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化2】

(式中、Zは
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化4】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化5】

(式中、Zは
【化6】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化7】

(式中、Vは
【化8】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
(4) 支持体上に仮接着材層が形成され、この仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが仮接着されるウエハ加工用部材であって、
上記仮接着材が、上記支持体に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A’)からなる第三仮接着層と、該接着層の上に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、更にこの第二仮接着層上に積層され、上記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層を備えたウエハ加工用部材。
(5) 第一及び第三の重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である(4)記載のウエハ加工用部材。
(6) 重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である(4)又は(5)記載のウエハ加工用部材。
【化9】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化10】

(式中、Zは
【化11】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化12】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化13】

(式中、Zは
【化14】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化15】

(式中、Vは
【化16】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
(7) 表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着するためのウエハ加工用仮接着材であって、上記ウエハの表面に接着かつ剥離可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、この第二仮接着層に積層され、支持体に接着かつ剥離可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体(A’)からなる第三仮接着層を有するウエハ加工用仮接着材。
(8) 重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である(7)記載のウエハ加工用仮接着材。
(9) 重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である(7)又は(8)記載のウエハ加工用仮接着材。
【化17】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化18】

(式中、Zは
【化19】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化20】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化21】

(式中、Zは
【化22】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化23】

(式中、Vは
【化24】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
(10) (a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体層(A)、(B)、(A’)からなる3層構造を有する複合仮接着層を介して支持体に剥離可能に接合する工程、
(b)支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、
(c)ウエハの回路非形成面に加工を施す工程、
(d)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、並びに
必要により
(e)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
(11) (a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面に(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体層(A)を形成すると共に、支持体上に(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体層(A’)及び(B)を順次形成し、前記重合体層(A)と重合体層(B)とを接合する工程、
(b)支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、
(c)ウエハの回路非形成面に加工を施す工程、
(d)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、並びに
必要により
(e)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
(12) 表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体層(A)、(B)、(A’)の組み合わせからなる接着層を介して支持体に接合された積層体より、加工を施したウエハを支持体から剥離する工程(d)において、
(d−1)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程、
(d−2)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程、
(d−3)吸着面の温度が10〜100℃の温度範囲で、支持体を加工ウエハからピールオフにて剥離する工程、並びに
(d−4)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の仮接着材層は、耐熱性が高いために、幅広い半導体成膜プロセスに適用でき、段差を有するウエハに対しても、膜厚均一性の高い接着材層を形成でき、この膜厚均一性のため容易に50μm以下の均一な薄型ウエハを得ることが可能となり、更には、薄型ウエハ作製後、このウエハを支持体より室温で、容易に剥離することができるため、割れ易い薄型ウエハを容易に扱えるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のウエハ加工体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のウエハ加工体は、図1に示したように、加工すべきウエハ1と、ウエハ1の加工時にウエハ1を支持する支持体2と、これらウエハ1と支持体2との間に介在する仮接着材層3を備え、この仮接着材層3が、熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)(第一仮接着層)と熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)(第二仮接着層)と、更には熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体(A’)の3層構造単位を有し、第一仮接着層が表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハの表面に剥離可能に接着され、第三仮接着層が支持体に剥離可能に接着されているものである。
また、本発明のウエハ加工用部材は、上記支持体2と、その上に積層された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体(A’)と、熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)と、更にはその上に積層された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)とを有するものであり、本発明のウエハ加工用仮接着材は、上記層(A)、(B)及び(A’)の積層体からなるものである。
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
<仮接着材層>
−第一仮接着層(A)及び第三仮接着層(A’)/熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層−
それぞれ仮接着層(A)及び(A’)は、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、好ましくは99.500〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、好ましくは0.500〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%、好ましくは0.000〜0.100モル%含有し、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサンの層であり、(A)及び(A’)は、同一でも異なっていてもよい。
【0014】
上記において、有機置換基R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭化水素基、これら水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基、好ましくはメチル基及びフェニル基である。
【0015】
該オルガノポリシロキサンの分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、ポリスチレン標準物質によって作製した検量線に則って得られる重量平均分子量(本明細書では、「重量平均分子量」とはこれを意味する。)の値で、重量平均分子量が200,000以上、より好ましくは350,000以上であり、かつ、1,000,000以下より好ましく800,000以下で、更には分子量740以下の低分子量成分含有量が0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0016】
該オルガノポリシロキサンにおいて、重量平均分子量が200,000より低い場合、ウエハを薄型化するための研削工程に耐えられない場合がある。一方、重量平均分子量が1,000,000を超える場合には、工程終了後の洗浄工程で洗浄できない場合がある。
一方、分子量が740以下の低分子量成分が0.5質量%を超えて含まれると、貫通電極形成中の熱処理やウエハ裏面に形成されるバンプ電極の熱処理に対して、十分な耐熱性が得られない。
【0017】
更に、D単位は樹脂中の99.000〜99.999モル%を構成し、99.000モル%未満では、ウエハ薄型化のための研削工程に耐えられず、99.999モル%を超えると、工程終了後のウエハとの剥離が行えない場合がある。
【0018】
M単位は、D単位を主成分とする樹脂の末端の活性基の封止のために加えられ、その分子量を調整するために使用される。
【0019】
この熱可塑性オルガノポリシロキサン層は、予めフィルムとし、該フィルムをロールラミネータ等を使用してウエハに貼り合わせ使用しても、その溶液をスピンコート、ロールコータなどの方法によってウエハ上に形成して使用してもよい。スピンコートなどの方法によってウエハ上にこの(A)層を形成する場合、又は支持体あるいはB層上に(A’)層を形成する場合には、樹脂を溶液としてコートすることが好ましいが、このときには、ペンタン、へキサン、シクロヘキサン、デカン、イソドデカン、リモネンなどの炭化水素系溶剤が好適に使用される。また、この熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体溶液には、公知の酸化防止材を耐熱性向上のために添加することができる。また、この(A)層又は(A’)層は、それぞれ膜厚0.1〜10μmの間で形成されて使用される。0.1μmより薄い場合、デバイスウエハの段差をカバーしきれなかったり、フィルムとしての耐久性がない場合があり、一方、10μmより厚いと、薄型ウエハを形成する場合の研削工程に耐えられない場合が生じる。なお、この熱可塑性シロキサンには、耐熱性を更に高めるため、シリカ等のフィラーを非反応性オルガノポリシロキサン100質量部に対して50質量部以下添加してもよい。
【0020】
−第二仮接着層(B)/熱硬化性変性シロキサン重合体層−
一般式(1)あるいは(2)のいずれかで示される熱硬化性変性シロキサン重合体を主成分とする熱硬化性組成物の硬化物の層が仮接着層(B)として使用される。
【0021】
一般式(1)の重合体:
下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物。
【化25】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、アリール基等の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化26】

(式中、Zは
【化27】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
この場合、R1〜R4の具体例としては、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられ、mは、好ましくは3〜60、より好ましくは8〜40の整数である。また、B/Aは0〜20、特に0.5〜5である。
【0022】
一般式(2)の重合体:
下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物。
【化28】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、アリール基等の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0、好ましくは0.1≦(c+d)/(a+b+c+d)≦0.8である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化29】

(式中、Zは
【化30】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化31】

(式中、Vは
【化32】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
この場合、R1〜R4、mの具体例は上記と同様である。
【0023】
これらの式(1)又は(2)の熱硬化性変性シロキサン重合体を主成分とする熱硬化性組成物は、その熱硬化のために、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上の架橋剤を含有する。
特に、2官能、3官能、4官能以上の多官能架橋剤、とりわけエポキシ樹脂、例えば、日本化薬(株)製のEOCN−1020、EOCN−102S、XD−1000、NC−2000−L、EPPN−201、GAN、NC6000や下記式のような架橋剤を含有することができる。
【化33】

【0024】
架橋剤の配合量は、上記熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは1〜20質量部であり、2種類又は3種類以上を混合して配合してもよい。
【0025】
また、この組成物には、酸無水物のような硬化触媒を上記熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対し10質量部以下含有することが可能である。
【0026】
一方、この組成物は、フィルムで、ウエハに形成された(A)層あるいは支持体に形成された(A’)層のいずれかの上に形成してもよい。また、この組成物を溶剤に溶解し、塗布、具体的にはスピンコート、ロールコータ、ダイコータなどの方法によって(A)層上、あるいは、(A’)層上に形成してもよい。その場合には、例えば、溶剤としてシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0027】
なお、組成物には、耐熱性を更に高めるため、公知の酸化防止剤、シリカ等のフィラーを熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して50質量部以下添加してもよい。
【0028】
仮接着層(B)は、硬化時の膜厚10〜200μm、好ましくは20〜120μmで成膜することが好ましい。膜厚が10μm未満の場合には、ウエハ薄型化の研削工程に十分耐えられず、200μmを超える場合には、TSV形成工程などの熱処理工程で樹脂変形を生じ、実用に耐えない場合が生じる。
【0029】
<薄型ウエハの製造方法>
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路等を有するウエハと支持体との接着層として、前述の(A)、(B)、(A’)の3層からなる仮接着材層又はその単位を用いることを特徴とする。本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、典型的には5〜300μm、より典型的には10〜100μmである。
【0030】
本発明の薄型ウエハの製造方法は(a)〜(e)の工程を有する。
[工程(a)]
工程(a)は、表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの回路形成面を、上述した(A)、(B)、(A’)の3層からなる仮接着材層を介して支持体と接合する工程である。回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム−ヒ素ウエハ、ガリウム−リンウエハ、ガリウム−ヒ素−アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600〜800μm、より典型的には625〜775μmである。
支持体としては、シリコンウエハやガラス、石英ウエハ等の基板が使用可能であるがなんら制約はない。本発明においては、支持体を通して仮接着材層に放射エネルギー線を照射する必要はなく、支持体の光線透過性は不要である。
【0031】
仮接着層(A)、(B)、(A’)はそれぞれフィルムで、ウエハや支持体に形成することもでき、あるいは、それぞれの溶液をスピンコートなどの方法によりウエハや支持体に形成することができる。この場合、スピンコート後、その溶剤の揮発条件に応じ、80〜180℃の温度で、予めプリベークを行ったのち、使用に供される。更に、(A)、(A’)、(B)は、予めそのフィルム同士を貼り合わせた後、(A)をウエハ側に、(A’)を支持体側にして接合に供することも可能である。
(A)層、(B)層、(A’)層が形成されたウエハ及び支持体は、(A)、(B)及び(A’)層を介して、接合された基板として形成される。このとき、好ましくは40〜230℃、より好ましくは40〜200℃の温度領域で、この温度にて減圧下、この基板を均一に圧着することで、ウエハが支持体と接合したウエハ加工体(積層体基板)が形成される。
ウエハ貼り合わせ装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB、SUSS社のXBC300等が挙げられる。
【0032】
[工程(b)]
工程(b)は、支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削する工程、即ち、工程(a)にて貼り合わせて得られたウエハ加工体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程である。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する装置としては、例えば(株)ディスコ製DAG−810(商品名)等が挙げられる。
【0033】
[工程(c)]
工程(c)は、回路非形成面を研削したウエハ加工体、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハ加工体の回路非形成面に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例としては、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成など、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0034】
[工程(d)]
工程(d)は、工程(c)で加工を施したウエハをウエハ加工体から剥離する工程、即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前にウエハ加工体から剥離する工程である。剥離方法としては、主にウエハと支持体を加熱(好ましくは200〜250℃)しながら、水平方向に沿って反対方向にスライドさせることにより両者を分離する方法、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式でウエハ加工体から剥離する方法等が挙げられる。
【0035】
本発明には、これらの剥離方法すべてに適用可能であるが、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式で剥離する方法等がより適している。これらの剥離方法は、通常、室温で実施される。
【0036】
[工程(e)]
工程(e)は、剥離したウエハの回路形成面に仮接着層(A)が一部残存した場合に、これを除去する工程である。工程(d)により支持体より剥離されたウエハの回路形成面には、仮接着層(A)が一部残存している場合があり、この(A)の除去は、例えば、ウエハを洗浄することにより行うことができる。
工程(e)には、仮接着材層中の(A)層である熱可塑性オルガノポリシロキサンを溶解するような洗浄液であればすべて使用可能であり、具体的には、ペンタン、へキサン、シクロヘキサン、デカン、イソドデカン、リモネンなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。また、除去しにくい場合は、上記溶剤に、塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類としては、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。また、残存物の除去性を向上させるため、既存の界面活性剤を添加してもよい。洗浄方法としては、上記液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が可能である。温度は10〜80℃、好ましくは15〜65℃が好適であり、必要があれば、これらの溶解液で(A)層を溶解したのち、最終的に水洗又はアルコールによるリンスを行い、乾燥処理させて、薄型ウエハを得ることも可能である。
【0037】
この場合、特には、表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を上記重合体層(A)、(B)、(A’)の組み合わせからなる接着層を介して支持体に接合された積層体より、加工を施したウエハを支持体から剥離する工程(d)において、
(d−1)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程、
(d−2)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程、
(d−3)吸着面の温度が10〜100℃の温度範囲で、支持体を加工ウエハからピールオフにて剥離する工程、並びに
(d−4)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
にて行うことが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0039】
[樹脂合成例1]
4つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン1,000g(3.38モル)及びヘキサメチルジシロキサン0.24g(0.0015モル)を仕込み、温度を110℃に保った。次いで、これに10質量%テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドシリコネート4gを加え、4時間かけて重合した後、160℃で2時間、後処理を行って、ジメチルポリシロキサンを得た。
このジメチルポリシロキサンを29Si−NMR法でD単位とM単位の割合を調べたところ、D単位99.978%、M単位0.022%で、おおよそ重合度9,000の下記構造のジメチルポリシロキサンと同定された。
【化34】

【0040】
このジメチルポリシロキサン500gをヘキサン500gに溶解したのち、これを2Lのアセトン中に投入し、析出した樹脂を回収して、その後、真空下でヘキサン等を除去して、分子量740以下の低分子量成分が0.05質量%である、重量平均分子量が700,000のジメチルポリシロキサン重合体を得た。この重合体20gをイソドデカン80gに溶解し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、ジメチルポリシロキサン重合体のイソドデカン溶液(A−1)を得た。
【0041】
[樹脂合成例2]
4つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン1,000g(3.38モル)及びトリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン0.93g(0.003モル)を仕込み、温度を110℃に保った。次いで、これに10質量%テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドシリコネート4gを加え、4時間かけて重合した後、160℃で2時間、後処理を行って、ジメチルポリシロキサンを得た。
このジメチルポリシロキサンを29Si−NMR法でD単位、M単位、T単位のそれぞれの割合を調べたところ、D単位99.911%、M単位0.067%、T単位0.022%であり、下記構造の分岐状ジメチルポリシロキサンと同定された。
【化35】

【0042】
この分岐状ジメチルポリシロキサン500gをヘキサン500gに溶解したのち、これを2Lのアセトン中に投入し、析出した樹脂を回収して、その後、真空下でヘキサン等を除去して、分子量740以下の低分子量成分が0.07質量%である、重量平均分子量が400,000のジメチルポリシロキサン重合体を得た。この重合体20gをイソドデカン80gに溶解し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、ジメチルポリシロキサン重合体のイソドデカン溶液(A−2)を得た。
【0043】
[樹脂合成例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に9,9’−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(M−1)43.1g、平均構造式(M−3)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン29.5g、トルエン135g、塩化白金酸0.04gを仕込み、80℃に昇温した。その後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(M−5)17.5gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。このとき、フラスコ内温度は、85℃まで上昇した。滴下終了後、更に80℃で2時間熟成した後、トルエンを留去すると共に、シクロヘキサノンを80g添加して、樹脂固形分濃度50質量%のシクロヘキサノンを溶剤とする樹脂溶液を得た。この溶液の樹脂分の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量45,000であった。また、一般式(1)において、A=0.9、B=0.1であった。更に、この樹脂溶液50gに、ヘキサメトキシメチロールメラミン((株)三和ケミカル製、ニカラックMW−390)を5g、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン(和光純薬工業(株)製、BSDM)を0.2g添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、樹脂溶液(B−1)を得た。
【0044】
[樹脂合成例4]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)396.9g、化合物(M−2)45.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−3)1,269g、化合物(M−4)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−5)107.3gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、78℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成し、次いで室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い、下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この樹脂溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを950g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを溶剤とする樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中の樹脂の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量62,000であり、式(2)における(c+d)/(a+b+c+d)は0.10である。更にこの樹脂溶液100gにクレゾールノボラックのエポキシ体(日本化薬(株)製、EOCN1020−55)を15g、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、リカシッドHH−A)0.2gを添加して、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、樹脂溶液(B−2)を得た。式(2)において、原料からのモル比計算でa=0.49、b=0.41、c=0.05、d=0.05であった。
【0045】
【化36】

【0046】
[樹脂フィルム作製例1]
樹脂合成例1で作成した樹脂溶液(A−1)を厚さ38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上にブレードナイフを使用してコーティングし、その後、100℃の乾燥機で30分加熱して、PETシート上に5μmの熱可塑性ポリオルガノシロキサン層を有するフィルムを形成した。更に、このポリオルガノシロキサン層の上に、樹脂合成例4で作製した樹脂溶液(B−2)を、ブレードナイフを用いてコーティングして、その後、90℃の乾燥機で30分間加熱し、PETシート上に2層合わせて、厚さ70μmの樹脂層が形成されたフィルム(B−3)を得た。
【0047】
[実施例1〜3及び比較例1,2]
実施例1:
表面に高さ10μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)にスピンコートにて(A−1)層を表1に示す膜厚で、ウエハバンプ形成面に成膜した。
一方、直径200mm(厚さ:500μm)のガラス板を支持体とし、この支持体にまず(A−1)層をスピンコートにてコートし、更に、その(A−1)層の上に、(B−1)層をスピンコートにて形成する方法で、ポリオルガノシロキサン層(A’)層と熱硬化性変性シロキサン層(B)層の2層を形成した。このとき、いずれの場合にも、樹脂をコート後、120℃で2分間ホットプレート上で加熱処理した。
この樹脂層を有するシリコンウエハ及びガラス板をそれぞれ、樹脂面が合わされるように、真空貼り合わせ装置内で表1に示す条件にて貼り合わせ、積層体を作製した(圧着条件)。
なお、ここで、基板接着後の異常を目視で判別するために支持体としてガラス板を使用したが、ウエハなどの光を透過しない基板も使用可能である。
その後、下記試験を行った。結果を表1に示す。
実施例2:
実施例1において(A)層として(A−2)、B層として(B−2)を用いて表1に記載の厚さにした以外は実施例1と同様に処理を行い、積層体を作製した。
実施例3:
B層とA’層からなるフィルム(B−3)は、真空ラミネータ(タカトリ製、TEAM−100)を用いて、ウエハステージ温度100℃で100Paの真空下でポリオルガノシロキサン層がガラス支持体に接するようラミネートし、その後10秒間放置したのち、大気開放して表1の膜厚のフィルムを成型した。
そして、実施例1と同様にA層に積層し、積層体を作製した。
比較例1:
B層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に処理し、積層体を作製した。
比較例2:
実施例1のウエハ上に直接、(B)層を形成した以外は、実施例1と同様に処理し、積層体を作製した。
【0048】
−接着性試験−
200mmのウエハ接合は、EVG社のウエハ接合装置EVG520ISを用いて行った。接合温度は表1に記載の値、接合時のチャンバー内圧力は10-3mbar以下、荷重は5kNで実施した。接合後、一旦、180℃で1時間オーブンを用いて基板を加熱し、B層の硬化を実施したのち、室温まで冷却した後の界面の接着状況を以下の方法で確認し、その良否を判定した。
まず、界面での気泡(ボイド)などの異常の有無を目視で確認し、気泡の見られる場合を不良とした。また、TTV(Total Thickness Variation)測定装置(フロンティアセミコンダクター社製 FSM 413EC−MOT−300)で積層ウエハ中の樹脂総厚みを測定し、その分布が中心膜厚に対して、5%以内の場合を良、5%を超える場合を不良と判定した。
【0049】
−裏面研削耐性試験−
グラインダー(DISCO製、DAG810)でダイヤモンド砥石を用いてシリコンウエハの裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡(100倍)にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0050】
−耐熱性試験−
シリコンウエハを裏面研削した後の積層体を窒素雰囲気下の250℃オーブンに2時間入れた後、270℃のホットプレート上で10分加熱した後の外観異常の有無を調べた。270℃で異常が発生しなかった場合、更に300℃で10分間の追加加熱を行い、その耐熱性について評価した。それぞれの工程を合格した温度を、250℃、270℃、300℃と記載した。また、270℃の工程を合格したものを、良好と判定した。
【0051】
−剥離性試験−
基板の剥離性は、50μmまで薄型化したウエハ側にダイシングフレームを用いてダイシングテープを貼り、このダイシングテープ面を真空吸着によって、吸着版にセットした。その後、室温にて、ガラスの1点をピンセットにて持ち上げることで、ガラス基板を剥離した。50μmのウエハを割ることなく剥離できた場合を良好、割れなどの異常が発生した場合を不良と評価した。
【0052】
−洗浄除去性試験−
上記剥離性試験終了後のダイシングテープを介してダイシングフレームに装着された200mmウエハ(耐熱性試験条件に晒されたもの)を、接着層を上にしてスピンコーターにセットし、洗浄溶剤としてイソドデカンを3分間噴霧したのち、ウエハを回転させながらイソプロピルアルコール(IPA)を噴霧にてリンスを行った。その後、外観を観察して残存する接着材樹脂の有無を目視でチェックした。樹脂の残存が認められないものを合格と評価した。この場合の基準を、3分で残渣の残る場合には、更に追加で2分洗浄し、同様に観察した。5分以内で洗浄可能であった場合を良好と判断した。
【0053】
【表1】

【符号の説明】
【0054】
1 ウエハ
2 支持体
3 仮接着材層
(A) 熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(第一仮接着層)
(B) 熱硬化性変性シロキサン重合体層(第二仮接着層)
(A’) 熱可塑性オルガノシロキサン重合体層(第三仮接着層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に仮接着材層が形成され、かつ仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが積層されてなるウエハ加工体であって、
上記仮接着材層が、上記ウエハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、この第二仮接着層に積層され、支持体に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A’)からなる第三仮接着層の3層構造を有する複合仮接着層単位を備えたウエハ加工体。
【請求項2】
第一及び第三の重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である請求項1記載のウエハ加工体。
【請求項3】
重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である請求項1又は2記載のウエハ加工体。
【化1】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化2】

(式中、Zは
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化4】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化5】

(式中、Zは
【化6】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化7】

(式中、Vは
【化8】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【請求項4】
支持体上に仮接着材層が形成され、この仮接着材層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハが仮接着されるウエハ加工用部材であって、
上記仮接着材が、上記支持体に剥離可能に接着された熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A’)からなる第三仮接着層と、該接着層の上に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、更にこの第二仮接着層上に積層され、上記ウエハの表面に剥離可能に接着可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層を備えたウエハ加工用部材。
【請求項5】
第一及び第三の重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である請求項4記載のウエハ加工用部材。
【請求項6】
重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である請求項4又は5記載のウエハ加工用部材。
【化9】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化10】

(式中、Zは
【化11】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化12】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化13】

(式中、Zは
【化14】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化15】

(式中、Vは
【化16】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【請求項7】
表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウエハを支持体に仮接着するためのウエハ加工用仮接着材であって、上記ウエハの表面に接着かつ剥離可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層に積層された熱硬化性変性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、この第二仮接着層に積層され、支持体に接着かつ剥離可能な熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体(A’)からなる第三仮接着層を有するウエハ加工用仮接着材。
【請求項8】
重合体層(A)及び(A’)が、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を99.000〜99.999モル%、R131415SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1.000〜0.001モル%、R16SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0.000〜0.500モル%含有し(但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基を示す。)、かつ重量平均分子量が200,000〜1,000,000で、更には分子量740以下の低分子量成分が0.5質量%以下である非反応性オルガノポリシロキサン層である請求項7記載のウエハ加工用仮接着材。
【請求項9】
重合体層(B)が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシルフェニレン含有高分子化合物又は下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物からなる熱硬化性変性シロキサン重合体100質量部に対して、架橋剤としてホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する組成物の硬化物層である請求項7又は8記載のウエハ加工用仮接着材。
【化17】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、Aは正数、Bは0又は正数である。Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基である。
【化18】

(式中、Zは
【化19】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化20】

[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ、0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。更に、Xは下記一般式(3)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化21】

(式中、Zは
【化22】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。また、R5、R6はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【化23】

(式中、Vは
【化24】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R7、R8はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【請求項10】
(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、請求項1乃至3のいずれか1項記載の重合体層(A)、(B)、(A’)からなる3層構造を有する複合仮接着層を介して支持体に剥離可能に接合する工程、
(b)支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、
(c)ウエハの回路非形成面に加工を施す工程、
(d)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、並びに
必要により
(e)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
【請求項11】
(a)表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面に請求項1乃至3のいずれか1項記載の重合体層(A)を形成すると共に、支持体上に請求項1乃至3のいずれか1項記載の重合体層(A’)及び(B)を順次形成し、前記重合体層(A)と重合体層(B)とを接合する工程、
(b)支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、
(c)ウエハの回路非形成面に加工を施す工程、
(d)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、並びに
必要により
(e)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。
【請求項12】
表面に回路形成面及び裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、請求項1乃至3のいずれか1項記載の重合体層(A)、(B)、(A’)の組み合わせからなる接着層を介して支持体に接合された積層体より、加工を施したウエハを支持体から剥離する工程(d)において、
(d−1)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程、
(d−2)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程、
(d−3)吸着面の温度が10〜100℃の温度範囲で、支持体を加工ウエハからピールオフにて剥離する工程、並びに
(d−4)剥離したウエハの回路形成面に残存する仮接着材層を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−110391(P2013−110391A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225874(P2012−225874)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】