ウエハ加工用テープ
【課題】接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止する。
【解決手段】剥離フィルム2と接着剤層3と粘着剤層41と基材フィルム42とがこの順番で積層され、基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着テープ4が接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープ1において、接着剤層における基材フィルム側から、接着剤層と粘着剤層との境界線R上を跨ぐようにして、マーキングMが形成され、当該マーキングで粘着剤層と接着剤層を融着又は溶着した。
【解決手段】剥離フィルム2と接着剤層3と粘着剤層41と基材フィルム42とがこの順番で積層され、基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着テープ4が接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープ1において、接着剤層における基材フィルム側から、接着剤層と粘着剤層との境界線R上を跨ぐようにして、マーキングMが形成され、当該マーキングで粘着剤層と接着剤層を融着又は溶着した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハ加工用テープに関し、特に半導体ウエハのダイシング・ピックアップに使用されるウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する際に、半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップを基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの双方の機能を併せもつ「ウエハ加工用テープ」が開発されている。ウエハ加工用テープは主に、剥離フィルムと、ダイシングテープとして機能する粘着テープと、ダイボンディングフィルムとして機能する接着剤層とから、構成されている。
【0003】
近年では、携帯機器向けのメモリ等の電子デバイス分野において、より一層の薄型化と高容量化が求められている。そのため、厚さ50[μm]以下の半導体チップを多段積層する実装技術に対する要請は年々高まっている。
このような要請に応えるべく、薄膜化を図ることができ、半導体チップの回路表面の凹凸を埋め込むことができるような柔軟性を有する上記ウエハ加工用テープが開発され、開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ウエハ加工用テープは、一般的には、半導体ウエハのサイズよりも大きいがリングフレームには接触しない程度の形状で、接着剤層側から接着剤層と粘着剤層との界面部分までが打ち抜かれており、貼合の際にはウエハマウンターにより半導体ウエハとそれを支持するリングフレームに貼合され、リングフレーム上で円形にカットされる。
【0005】
ところで、最近では、上記作業性を考慮し、リングフレーム上でカットするのではなく、ウエハ加工用テープはプリカット加工がなされている。「プリカット加工」とは、粘着テープ(基材フィルム上に粘着剤層が形成されている。)に対し、あらかじめ打ち抜き加工を施すことをいい、詳しくは、基材フィルムおよび粘着剤層を、リングフレームに貼合可能でかつリングフレームからはみ出さない大きさで、円形に打ち抜き加工を施すことである。
プリカット加工を施したウエハ加工用テープを使用すれば、ウエハマウンターによる半導体ウエハWへの貼合工程において、円形に打ち抜かれたウエハ加工用テープ1が剥離用くさび101によって剥離フィルム2からの剥離のきっかけを得た後、貼合ローラー103によって半導体ウエハWおよびリングフレーム5への貼合が実施され(図3参照)、リングフレーム上で粘着テープをカットする工程を省くことができ、更にはリングフレームへのダメージをなくすこともできる。
【0006】
その後は、半導体ウエハをダイシングして複数の半導体チップを作製し、粘着テープの基材フィルム側から放射線を照射するなどして粘着剤層と接着剤層との間の剥離強度(粘着力)を十分に低下させてから、粘着テープの基材フィルムをエキスパンドさせて半導体チップのピックアップを行う。「放射線」とは、紫外線のような光線または電子線などの電離性放射線をいう。
【0007】
ところで半導体装置の多機能化、薄型化、複雑化が進み、これに伴いウエハ加工用テープの接着剤層には、個々の半導体装置に対応できる多様性、膜厚や各部の寸法の精密性などが要求されるようになっている。
また、一方で、ウエハやリングフレームはその形状は既に確立されており、それらへの適合性を考慮して、接着剤層が同形状であることが求められている。このため、ウエハ加工用テープは種類が多様化しているにも拘わらず、接着剤層の形状が画一化しているため、視覚的にそれらを識別することが難しくなっている。
このため、近年は、ウエハ加工用テープには、その種別を容易に識別可能とするために、接着剤層や粘着剤層の上面にウエハ加工用テープの種別を示すマーキングを付することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−269601号公報
【特許文献2】特開2007−288170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のようなウエハマウンターによる半導体ウエハへの貼合工程において、このようなプリカット加工を施したウエハ加工用テープから剥離フィルムを剥離すると、ウエハ加工用テープの先端部分が剥離用くさびを通過した場合に、接着剤層の先端部分が粘着テープの粘着剤層から剥離してしまい、接着剤層が半導体ウエハに密着していない部分ができてしまうという不具合を生じる問題があった。
【0010】
この理由として、接着剤層と粘着テープの粘着剤層との間の剥離力(粘着力)が非常に低いことが挙げられる。
しかしながら、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力を上昇させることは、その後の工程において、基材フィルムをエキスパンドさせ、半導体チップをピックアップする際に、ピックアップミスを発生させる原因になりうることが分かっている。
最近の傾向として、1つの半導体パッケージ内にてより多くの半導体チップを積層するため、半導体チップを薄肉化することが益々進んでおり、そのような薄肉の半導体チップのピックアップをミスなく行うためには、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力がより低いものが求められている状況にあり、安易に剥離力を上昇させることは困難になっている。
【0011】
また、粘着剤層に放射線硬化型粘着剤層を用いることで、ウエハマウンターによるウエハへの貼合工程において、半導体用接着シートが剥離用くさび(ピールプレート)によって保護フィルム(セパレーター)からの剥離のきっかけを得て、プレスローラーによってウエハ及びリングフレームへの貼合が実施されるまでは、粘着剤層と接着剤層の剥離強度を高く保ち、半導体素子のピックアップを行う際には、粘着剤層に放射線を照射して、粘着剤層と接着剤層の剥離強度を低下させる手法も考えられるが、半導体チップの薄肉化が進むと、これに対応し得る程度に接着剤層と粘着剤層との間の剥離力を低減した場合、放射線照射前の粘着剤層と接着剤層の剥離強度をそもそも十分に高くすることは困難であり、剥離フィルムの剥離に伴う接着剤層の先端部分の粘着剤層からの剥離を十分に防ぐことは困難であった。
【0012】
したがって、本発明の主な目的は、半導体ウエハへの貼合工程において、接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止することができるウエハ加工用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、剥離フィルムと接着剤層と粘着剤層と基材フィルムとがこの順番で積層され、前記基材フィルムと前記粘着剤層とからなる粘着テープが前記接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープにおいて、前記接着剤層における前記基材フィルム側から、前記接着剤層と前記粘着剤層との境界線上を跨ぐようにして、マーキングが形成され、当該マーキングで前記粘着剤層と前記接着剤層を融着又は溶着したウエハ加工用テープが提供される。
【0014】
上記のウエハ加工用テープは、前記剥離フィルムを帯状に形成すると共に、前記剥離フィルムがその長手方向一端部から剥離される場合において、前記マーキングは、少なくとも、前記接着剤層の外周における前記剥離フィルムからの剥離起点を含む範囲で形成する構成としても良い。
【0015】
また、上記のウエハ加工用テープのマーキングは、レーザー照射、加熱又は超音波振動により形成しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、剥離フィルムの剥離に際し、粘着剤層から剥離を生じやすい接着剤層の外周部分に対応して、接着剤層と粘着剤層との境界線を跨ぐようにしてマーキングの形成が行われるので、粘着剤層に対する接着剤層の密着性を高めることができ、当該接着剤層の剥離を効果的に防止することが可能となる。また、この場合、粘着剤層と接着剤層との密着性は粘着剤層と接着剤層との境界線の周辺のみが高められるので、ダイシング後の半導体素子のピックアップの妨げとはならない。
また、ウエハ加工用テープの情報を示すマーキングを利用しているので、ウエハ加工用テープの製造時に接着剤層の剥離防止のための対策を施すための工数を増やす必要がないことから、従前の生産性を維持したまま接着剤層の剥離防止効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ウエハ加工用テープの概略構成を示す図面である。
【図2】剥離フィルム、接着剤層および粘着テープの概略的な積層構造を示す縦断面図である。
【図3】ウエハ加工用テープを半導体ウエハおよびリングフレームに貼合する装置・方法を概略的に説明するための図面である。
【図4】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図5】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図6】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図7】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図8】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図9】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図10】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【図11】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【図12】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ウエハ加工用テープ]
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は、芯材となるコア6にロール状に巻回されており、使用時においてコア6から繰り出される。
図2に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は、主に、帯状の剥離フィルム2と、接着剤層3と、粘着テープ4とを備えており、粘着テープ4は、さらに、粘着剤層41と基材フィルム42とから構成されている。そして、剥離フィルム2、接着剤層3、粘着剤層41、基材フィルム42がこの順番で積層されている。
また、粘着テープ4は、個々のウエハ及び接着剤層3に対応するように、予め円形にプリカットされており、接着剤層3及びプリカットされた粘着テープ4は、剥離フィルム2の長手方向に沿って複数並んで形成されている。
【0019】
接着剤層3は、ウエハの形状に対応して当該ウエハよりも外径の大きな円形状に形成されている。図1において二点鎖線によりウエハWの取り付け予定位置を示しているが、この図示のように、ウエハWは剥離フィルム2が除去された接着剤層3の中央に貼着される。
また、上記基材フィルム42及び粘着剤層41は、プリカットにより、接着剤層3と同心でより外径の大きな円形に形成される。これにより、図2に示すように、粘着テープ4は、接着剤層3の周囲を取り囲むようにしてその粘着剤層41側の面が剥離フィルム2に密着することも可能となっている。
【0020】
また、接着剤層3及び粘着剤層41における剥離フィルム2側の面には、接着剤層3と粘着剤層41の境界線(接着剤層3の外周輪郭線)を跨ぐようにして、このウエハ加工用テープ1に関する所定情報を示すマーキングMが加熱処理により形成されている。このマーキングMは、例えば、ウエハ加工用テープ1の製造元、型番、使用材料、サイズ等、種々のウエハ加工用テープの中から使用に適したウエハ加工用テープを選出するのに供する情報が、記号、符号、文字、図案、絵、しるし等により記載される。
【0021】
このマーキングMの形成には、レーザー照射、熱線照射、超音波溶着、熱印字その他の加熱手法が用いられ、その形成位置において、接着剤層3と粘着剤層41との間で融着又は溶着が生じる程度に加熱される。また、このマーキングの形成は、接着剤層3における基材フィルム42側から行われるが、レーザーや熱線を利用する場合には、基材フィルム42を透過させて加熱形成し、超音波や熱印字を利用する場合には基材フィルム42を介して接着剤層3と粘着材層41とを溶着又は融着する。
なお、図2では、融着又は溶着によりマーキングMが形成される領域を二点鎖線で図示した。
また、「外周輪郭線を跨ぐ」とは、図2に示すように、接着剤層3の半径方向におけるマーキングMの一端部m1が接着剤層3と粘着剤層41の境界線の内側に位置し、他端部m2が接着剤層3と粘着剤層41の境界線の外側に位置する状態を示すものとする。
さらに、マーキングMは、接着剤層3と粘着剤層41の境界線の全周に渡って形成しても良いし、一部であっても良いが、一部とする場合には、図1に示すように、接着剤層3と粘着剤層41の境界線の、剥離作業時に剥離フィルム2が繰り出される方向Aにおける剥離起点Sを含む範囲で形成することが望ましい。
また、このマーキングMは、接着剤層3におけるウエハWの取り付け予定位置よりも外側に形成することが望ましい。
【0022】
以下、ウエハ加工用テープ1の各構成や製造方法、使用方法などについて具体的に説明する。
【0023】
[剥離フィルム]
前述のように、剥離フィルム2は矩形の帯状に形成され、製造時及び使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものである。
剥離フィルム2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリエチレン系、その他、剥離処理がされたフィルム等周知のものを使用することができる。
【0024】
[粘着テープ:粘着剤層]
図1及び図2に示すように、粘着テープ4は、接着剤層3を覆うと共に、接着剤層3の周囲全域で剥離フィルム2に接触可能となっている。
粘着テープ4は、剥離フィルム2の全面に形成された粘着剤層41及び基材フィルム42がダイシング用のリングフレーム5(図3参照)の形状に対応してプリカットされ、円形の領域の周囲が除去されることで形成される。
【0025】
粘着剤層41に用いられる材料は、特に制限されるものでは無いが、放射線重合性成分を含有してなるのが好ましい。粘着剤層41に用いられる、主鎖に対して、少なくとも放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有するアクリル系共重合体(以下「アクリル系共重合体(A)」と称する)はどのようにして製造されたものでもよいが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物等からなる共重合体(A1)の炭素鎖を主鎖とし、共重合体(A1)が有する官能基に対して付加反応することが可能な官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物(A2)を付加反応して得られる。
【0026】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数6〜12のヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、または炭素数5以下の単量体である、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなどを列挙することができる。この場合、単量体として、炭素数の大きな単量体を使用するほどガラス転移点は低くなるので、所望のガラス転移点のものを作製することができる。
また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも5質量%以下の範囲内でできる。
【0027】
また、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基含有不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0028】
前記の付加反応することが可能な官能基と炭素−炭素二重結合を有する化合物(A2)の官能基としては、共重合体(A1)の官能基が、カルボキシル基または環状酸無水基である場合には、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、水酸基である場合には、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができ、アミノ基である場合には、イソシアネート基などを挙げることができる。
化合物(A2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および光重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0029】
上記のアクリル系共重合体(A)の合成において、共重合を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般にアクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤が好ましく、重合開始剤としては、α,α'−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾベルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節し、その後官能基における付加反応を行うことにより、所望の分子量のアクリル系共重合体(A)を得ることができる。
また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、この共重合は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0030】
以上のようにして、アクリル系共重合体(A)を得ることができるが、当該アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、30万〜100万程度が好ましい。30万未満では、放射線照射の凝集力が小さくなって、ウエハをダイシングする時に、素子のずれが生じやすくなり、画像認識が困難となることがある。また、この素子のずれを、極力防止するためには、分子量が、40万以上である方が好ましい。分子量が100万を越えると、合成時および塗工時にゲル化する可能性があるからである。
なお、特性面からは、ガラス転移点が低いので分子量が大きくても、パターン状ではなく全体を放射線照射した場合、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分ではないため、延伸後の素子間隙が不十分であり、ピックアップ時の画像認識が困難であるといった問題が発生することはないが、それでも90万以下である方が好ましい。なお、本発明における分子量とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
また、粘着剤層41において、アクリル系共重合体(A)の光重合性炭素−炭素二重結合の導入量は、放射線硬化後に十分な粘着力の低減効果が得られる量であればよく、UV照射量等の使用条件などにより異なり一義的ではないが、好ましくは0.5〜2.0meq/g、より好ましくは0.8〜1.5meq/gである。二重結合量が少なすぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が小さくなり、二重結合量が多すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分ではなく、延伸後の素子間隙が不十分であり、ピックアップ時に各素子の画像認識が困難になることがある。さらに、アクリル系共重合体(A)そのものが安定性に欠け、製造が困難となる。
【0032】
さらに、アクリル系共重合体(A)は、主鎖に対して、未反応の水酸基及びカルボキシル基を含有する基を有するものである。アクリル系共重合体(A)が、水酸基価5〜100となるような水酸基を有すると放射線照射後の粘着力を減少することによりピックアップミスの危険性をさらに低減することができるので好ましい。水酸基価は20〜70であることがさらに好ましい。また、アクリル系共重合体(A)が、酸価0.5〜30となるようなカルボキシル基を有するとテープ復元性を改善することにより、使用済テープ収納型の機構への対応が容易とすることができるので好ましい。酸価は1〜10であることがさらに好ましい。ここで、アクリル系共重合体(A)の水酸基価が低すぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が十分でなく、高すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性を損なう。また酸価が低すぎると、テープ復元性の改善効果が十分でなく、高すぎると粘着剤の流動性を損なう。
【0033】
なお、ウエハ加工用テープ1に用いられる放射線硬化性粘着剤層41を紫外線照射によって硬化させる場合には、必要に応じ副成分として、光重合開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
さらに、放射線硬化性粘着剤層には、必要に応じ副成分として、例えばポリイソシアネート化合物などの硬化剤等を含むことができる。硬化剤の配合量は、主成分であるアクリル系重合体100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
粘着剤層41の厚さは、5〜50[μm]が好ましい。
【0034】
[粘着テープ:基材フィルム]
粘着テープ4の基材フィルム42は、フィルムとして放射線透過性を有するものであれば公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、またはポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。またはこれらの群から選ばれる2種以上が混合されたものもしくは複層化されたものでもよい。
基材フィルム42の厚みは50〜200[μm]が好ましく用いられる。
また、基材フィルム42はこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。
【0035】
[接着剤層]
ウエハ加工用テープ1の接着剤層3に用いられる材料は、特に限定されるものでは無く、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコンオリゴマー系等を使用することができる。
【0036】
[ウエハ加工用テープの使用方法]
ウエハ加工用テープ1を半導体ウエハWおよびリングフレーム5に貼りつける作業を図3に基づいて説明する。
この貼り付け作業の際には、ウエハ加工用テープ1をそのロール体から繰り出して、所定の経路を搬送して、主に剥離フィルム2のみをローラ100により巻き取っている。
ウエハ加工用テープ1の搬送経路には、剥離用くさび101が設けられており、剥離用くさび101の先端部を折り返し点として、剥離フィルム2が折り返される。この時、接着剤層3と粘着剤層41の境界線における搬送方向下流側の端部(剥離起点S)上を跨ぐようにしてマーキングMが加熱形成されていることから、融着又は溶着により接着剤層3の剥離起点Sにおいて粘着テープ4との密着性が高められており、折り返される剥離フィルム2に引っ張られたとしても、接着剤層3は粘着テープ4からの剥離が防止される。
従って、剥離用くさび101の先端部において、剥離フィルム2のみが巻き取りローラ100に巻き取られる。
【0037】
剥離用くさび101の先端部の搬送方向の延長線上には、吸着ステージ102が設けられており、吸着ステージ102の上面には、半導体ウエハWおよびリングフレーム5が設置されている。
剥離用くさび101により剥離フィルム2が引き剥がされた接着剤層3および粘着テープ4は、半導体ウエハW上に導かれ、貼合ローラ103によってウエハWに貼合される。
【0038】
その後、接着剤層3を半導体ウエハWに、また、粘着テープ4をリングフレーム5に貼りつけた状態で、半導体ウエハWをダイシングする。
ついで、粘着テープ4に放射線照射等の硬化処理を施してダイシング後の半導体ウエハW(半導体チップ)をピックアップする。このとき、粘着テープ4は硬化処理によって剥離力が低下しているので、接着剤層3は粘着テープ4の粘着剤層12から容易に剥離し、半導体チップは裏面に接着剤層3が付着した状態でピックアップされる。また、マーキングMは、接着剤層3に対する半導体ウエハWの貼合位置から外れているので、ピックアップに対する影響も生じない。
半導体チップの裏面に付着した接着剤層3は、その後、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、ダイボンディングフィルムとして機能する。
【0039】
[ウエハ加工用テープにおける技術的効果]
上記ウエハ加工用テープ1では、剥離フィルム2の剥離に際し、粘着剤層41から剥離を生じやすい接着剤層3の外周部分に対応して、接着剤層3と粘着剤層41との境界線Rを跨ぐようにして接着剤層3の表面に加熱によるマーキングMの形成が行われるので、粘着剤層41に対する接着剤層3の密着性を高めることができ、当該接着剤層3の剥離を効果的に防止することが可能となる。また、マーキングMの形成は、これらの境界線Rの周辺のみに行われ、さらには、ウエハの貼合予定位置を回避しているので、ダイシング後の半導体素子のピックアップの妨げとはならない。
また、ウエハ加工用テープ1の情報を示すマーキングMを利用しているので、ウエハ加工用テープ1の製造時に接着剤層3の剥離防止のための対策を施すための工数を増やす必要がないことから、従前の生産性を維持したまま接着剤層3の剥離防止効果を高めることが可能となる。
また、マーキングMの形成は、レーザー加熱、熱線照射、超音波溶着、熱印字等、周知の方法を用いるので、容易に実現することができる。
また、マーキングMは、接着剤層3と粘着剤層41とが相互に熱による融着又は溶着を伴って形成されるので、より確実な剥離防止効果を得ることが可能である。
【実施例1】
【0040】
以下、ウエハ加工用テープについてマーキングの形成範囲、形成位置、形成の有無、形成方法など各種の条件を変えて形成された複数の実施例及び比較例とで、接着剤層の剥離防止効果を比較した比較試験について説明する。
ウエハ加工用テープの粘着剤層(X)はどのように製造されたものでも構わないが、ここでは放射線重合性炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー(分子量70万Mw、Tg=-65℃)100部、ポリイソシアネート系硬化剤6部に、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)1部を配合し、ポリオレフィン系基材フィルム(Z)(厚さ100[μm])上に乾燥膜厚が10[μm]となるように塗布した後110℃で2分間乾燥し、ウエハ加工用テープの粘着剤層(X)および基材フィルム(Z)部分を作成した。
【0041】
接着剤層は、ここではアクリル系共重合体100部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100部、キシレンノボラック型フェノール樹脂10部に、エポキシ硬化剤として2-フェニルイミダゾール5部とキシレンジアミン0.5部を配合し、接着剤層の厚み10[μm]となるよう、PETフィルムに塗布後110℃で2分間乾燥し得られた接着剤層(a)を用いた。
更に、上記のように作製した粘着フィルムを所定の大きさ・形状にプリカット加工を施し、上述のように作成されたウエハサイズよりも大きい形状で打ち抜き加工を施した厚さ10[μm]の接着剤層(a)をこの粘着剤層(X)上に貼合したものをウエハ加工用テープとした。
【0042】
次に、ウエハ加工用テープの基材フィルム(Z)の面から、接着剤層(a)におけるウエハの貼合予定部分を除く、図4〜図9の範囲にのみレーザー照射又は熱印字により任意の図案のマーキングを行なった。図4〜図9において上部が半導体ウエハ及びリングフレームへの貼りつけ作業における搬送方向下流側を示している。つまり、図の接着剤層(a)と粘着剤層の境界線Rの上端部が剥離起点となる。
図4の例では境界線Rの全周に渡って当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンAとする)、図5の例では境界線Rの搬送方向下流側端部と上流側端部の二カ所において当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンBとする)、図6の例では境界線Rの搬送方向下流側端部のみにおいて当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンCとする)、図7の例では境界線Rのいずれにもマーキングが施されておらず(パターンなしとする)、図8の例では境界線Rの搬送方向下流側端部及び上流側端部を除く範囲で当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンDとする)、図9の例では境界線Rの搬送方向下流側端部のみを除く範囲で当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されている(パターンEとする)。
【0043】
また、境界線Rに対するマーキングの形成位置を異ならせた場合での比較を行うために、図10の例では境界線Rを跨ぐ位置にマーキングを施し(パターンiとする)、図11の例では境界線Rより内側にマーキングを施し(パターンiiとする)、図12の例では境界線Rより外側にマーキングを施した(パターンiiiとする)。
【0044】
なお、レーザー照射で照射されるレーザーは、一般的にレーザーマークの形成に利用されるレーザー種類・波長であればどれでも良い。本実施例及び比較例においては、CO2レーザーマーカを使用し、ウエハ加工用テープの接着剤層(a)の表面で、接着剤層におけるウエハ貼合予定部分を除いた図4〜9の領域及び図10〜12の位置にレーザー照射を行ってマーキングを形成した。
また、熱印字については、一般的に利用される方法であればどれでもよく、本実施例及び比較例においては、ウエハ加工用テープの接着剤層の表面で、接着剤層におけるウエハ貼合予定部分を除く、図4〜9の領域及び図10〜12の位置に熱印字を行った。
また、超音波による溶着又は融着は一般的に利用される方法であればどれでも良く、本実施例及び比較例においては、超音波マーキング装置を使用し、ウエハ加工用テープの接着剤層(a)の表面で、接着剤層(a)のウエハ貼合予定部分を除く図4〜9の領域及び図10〜12に超音波加工を行った。
なお、レーザー照射や熱印字、超音波などの融着又は溶着により施すマークの形状は、外周輪郭線Rをまたぐような記号、符号、文字、図案、しるし等であればなんでも良い。
【0045】
なお、これらのウエハ加工用テープは、接着剤層における粘接着剤層とは逆側の面にポリエチレンテレフタレート(PET)系の剥離フィルムを設けた。
【0046】
実施例1〜9の適用条件を表1に、比較例1〜18の適用条件を表2に示す。これらの実施例1〜9及び比較例1〜18の適用条件に従って作製したウエハ加工用テープを、図3に示すウエハ貼合装置にセットし、貼合温度70℃における、貼合性を確認した。貼合時に問題なく貼合出来たものを○、接着剤層と粘着フィルムとが剥がれて接着剤層がめくれ上がったものを×とした。
【0047】
【表1】
【表2】
【0048】
上記比較試験の結果、表1に示すとおり、実施例1〜9では貼合試験において結果が良好であり、接着剤層(a)の外周部であって剥離フィルムとの剥離起点Sを含む部分において半導体ウエハの貼合予定部位よりも密着力を増大させれば、接着剤層(a)が粘着テープの粘着剤層(X)から剥離するのを防止することができることが分かった。また、マーキングは、レーザー加熱、熱印字、超音波加熱のいずれにより形成した場合でも接着剤層(a)の剥離防止効果が得られることが分かった。なお、マーキングは半導体ウエハの貼合予定部位から外れているので、ピックアップミスも誘引されない。
なお、比較例1〜19は、いずれも粘着フィルムと接着剤層とがはがれて接着剤層がめくれ上がった。
【符号の説明】
【0049】
1 ウエハ加工用テープ
2 剥離フィルム
3 接着剤層
4 粘着テープ
41 粘着剤層
42 基材フィルム
M マーキング
R 境界線
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハ加工用テープに関し、特に半導体ウエハのダイシング・ピックアップに使用されるウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する際に、半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップを基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの双方の機能を併せもつ「ウエハ加工用テープ」が開発されている。ウエハ加工用テープは主に、剥離フィルムと、ダイシングテープとして機能する粘着テープと、ダイボンディングフィルムとして機能する接着剤層とから、構成されている。
【0003】
近年では、携帯機器向けのメモリ等の電子デバイス分野において、より一層の薄型化と高容量化が求められている。そのため、厚さ50[μm]以下の半導体チップを多段積層する実装技術に対する要請は年々高まっている。
このような要請に応えるべく、薄膜化を図ることができ、半導体チップの回路表面の凹凸を埋め込むことができるような柔軟性を有する上記ウエハ加工用テープが開発され、開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ウエハ加工用テープは、一般的には、半導体ウエハのサイズよりも大きいがリングフレームには接触しない程度の形状で、接着剤層側から接着剤層と粘着剤層との界面部分までが打ち抜かれており、貼合の際にはウエハマウンターにより半導体ウエハとそれを支持するリングフレームに貼合され、リングフレーム上で円形にカットされる。
【0005】
ところで、最近では、上記作業性を考慮し、リングフレーム上でカットするのではなく、ウエハ加工用テープはプリカット加工がなされている。「プリカット加工」とは、粘着テープ(基材フィルム上に粘着剤層が形成されている。)に対し、あらかじめ打ち抜き加工を施すことをいい、詳しくは、基材フィルムおよび粘着剤層を、リングフレームに貼合可能でかつリングフレームからはみ出さない大きさで、円形に打ち抜き加工を施すことである。
プリカット加工を施したウエハ加工用テープを使用すれば、ウエハマウンターによる半導体ウエハWへの貼合工程において、円形に打ち抜かれたウエハ加工用テープ1が剥離用くさび101によって剥離フィルム2からの剥離のきっかけを得た後、貼合ローラー103によって半導体ウエハWおよびリングフレーム5への貼合が実施され(図3参照)、リングフレーム上で粘着テープをカットする工程を省くことができ、更にはリングフレームへのダメージをなくすこともできる。
【0006】
その後は、半導体ウエハをダイシングして複数の半導体チップを作製し、粘着テープの基材フィルム側から放射線を照射するなどして粘着剤層と接着剤層との間の剥離強度(粘着力)を十分に低下させてから、粘着テープの基材フィルムをエキスパンドさせて半導体チップのピックアップを行う。「放射線」とは、紫外線のような光線または電子線などの電離性放射線をいう。
【0007】
ところで半導体装置の多機能化、薄型化、複雑化が進み、これに伴いウエハ加工用テープの接着剤層には、個々の半導体装置に対応できる多様性、膜厚や各部の寸法の精密性などが要求されるようになっている。
また、一方で、ウエハやリングフレームはその形状は既に確立されており、それらへの適合性を考慮して、接着剤層が同形状であることが求められている。このため、ウエハ加工用テープは種類が多様化しているにも拘わらず、接着剤層の形状が画一化しているため、視覚的にそれらを識別することが難しくなっている。
このため、近年は、ウエハ加工用テープには、その種別を容易に識別可能とするために、接着剤層や粘着剤層の上面にウエハ加工用テープの種別を示すマーキングを付することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−269601号公報
【特許文献2】特開2007−288170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のようなウエハマウンターによる半導体ウエハへの貼合工程において、このようなプリカット加工を施したウエハ加工用テープから剥離フィルムを剥離すると、ウエハ加工用テープの先端部分が剥離用くさびを通過した場合に、接着剤層の先端部分が粘着テープの粘着剤層から剥離してしまい、接着剤層が半導体ウエハに密着していない部分ができてしまうという不具合を生じる問題があった。
【0010】
この理由として、接着剤層と粘着テープの粘着剤層との間の剥離力(粘着力)が非常に低いことが挙げられる。
しかしながら、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力を上昇させることは、その後の工程において、基材フィルムをエキスパンドさせ、半導体チップをピックアップする際に、ピックアップミスを発生させる原因になりうることが分かっている。
最近の傾向として、1つの半導体パッケージ内にてより多くの半導体チップを積層するため、半導体チップを薄肉化することが益々進んでおり、そのような薄肉の半導体チップのピックアップをミスなく行うためには、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力がより低いものが求められている状況にあり、安易に剥離力を上昇させることは困難になっている。
【0011】
また、粘着剤層に放射線硬化型粘着剤層を用いることで、ウエハマウンターによるウエハへの貼合工程において、半導体用接着シートが剥離用くさび(ピールプレート)によって保護フィルム(セパレーター)からの剥離のきっかけを得て、プレスローラーによってウエハ及びリングフレームへの貼合が実施されるまでは、粘着剤層と接着剤層の剥離強度を高く保ち、半導体素子のピックアップを行う際には、粘着剤層に放射線を照射して、粘着剤層と接着剤層の剥離強度を低下させる手法も考えられるが、半導体チップの薄肉化が進むと、これに対応し得る程度に接着剤層と粘着剤層との間の剥離力を低減した場合、放射線照射前の粘着剤層と接着剤層の剥離強度をそもそも十分に高くすることは困難であり、剥離フィルムの剥離に伴う接着剤層の先端部分の粘着剤層からの剥離を十分に防ぐことは困難であった。
【0012】
したがって、本発明の主な目的は、半導体ウエハへの貼合工程において、接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止することができるウエハ加工用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、剥離フィルムと接着剤層と粘着剤層と基材フィルムとがこの順番で積層され、前記基材フィルムと前記粘着剤層とからなる粘着テープが前記接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープにおいて、前記接着剤層における前記基材フィルム側から、前記接着剤層と前記粘着剤層との境界線上を跨ぐようにして、マーキングが形成され、当該マーキングで前記粘着剤層と前記接着剤層を融着又は溶着したウエハ加工用テープが提供される。
【0014】
上記のウエハ加工用テープは、前記剥離フィルムを帯状に形成すると共に、前記剥離フィルムがその長手方向一端部から剥離される場合において、前記マーキングは、少なくとも、前記接着剤層の外周における前記剥離フィルムからの剥離起点を含む範囲で形成する構成としても良い。
【0015】
また、上記のウエハ加工用テープのマーキングは、レーザー照射、加熱又は超音波振動により形成しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、剥離フィルムの剥離に際し、粘着剤層から剥離を生じやすい接着剤層の外周部分に対応して、接着剤層と粘着剤層との境界線を跨ぐようにしてマーキングの形成が行われるので、粘着剤層に対する接着剤層の密着性を高めることができ、当該接着剤層の剥離を効果的に防止することが可能となる。また、この場合、粘着剤層と接着剤層との密着性は粘着剤層と接着剤層との境界線の周辺のみが高められるので、ダイシング後の半導体素子のピックアップの妨げとはならない。
また、ウエハ加工用テープの情報を示すマーキングを利用しているので、ウエハ加工用テープの製造時に接着剤層の剥離防止のための対策を施すための工数を増やす必要がないことから、従前の生産性を維持したまま接着剤層の剥離防止効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ウエハ加工用テープの概略構成を示す図面である。
【図2】剥離フィルム、接着剤層および粘着テープの概略的な積層構造を示す縦断面図である。
【図3】ウエハ加工用テープを半導体ウエハおよびリングフレームに貼合する装置・方法を概略的に説明するための図面である。
【図4】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図5】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図6】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図7】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図8】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図9】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成領域を示す図である。
【図10】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【図11】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【図12】接着剤層と粘着剤層の境界線に対するマーキングの形成位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ウエハ加工用テープ]
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は、芯材となるコア6にロール状に巻回されており、使用時においてコア6から繰り出される。
図2に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は、主に、帯状の剥離フィルム2と、接着剤層3と、粘着テープ4とを備えており、粘着テープ4は、さらに、粘着剤層41と基材フィルム42とから構成されている。そして、剥離フィルム2、接着剤層3、粘着剤層41、基材フィルム42がこの順番で積層されている。
また、粘着テープ4は、個々のウエハ及び接着剤層3に対応するように、予め円形にプリカットされており、接着剤層3及びプリカットされた粘着テープ4は、剥離フィルム2の長手方向に沿って複数並んで形成されている。
【0019】
接着剤層3は、ウエハの形状に対応して当該ウエハよりも外径の大きな円形状に形成されている。図1において二点鎖線によりウエハWの取り付け予定位置を示しているが、この図示のように、ウエハWは剥離フィルム2が除去された接着剤層3の中央に貼着される。
また、上記基材フィルム42及び粘着剤層41は、プリカットにより、接着剤層3と同心でより外径の大きな円形に形成される。これにより、図2に示すように、粘着テープ4は、接着剤層3の周囲を取り囲むようにしてその粘着剤層41側の面が剥離フィルム2に密着することも可能となっている。
【0020】
また、接着剤層3及び粘着剤層41における剥離フィルム2側の面には、接着剤層3と粘着剤層41の境界線(接着剤層3の外周輪郭線)を跨ぐようにして、このウエハ加工用テープ1に関する所定情報を示すマーキングMが加熱処理により形成されている。このマーキングMは、例えば、ウエハ加工用テープ1の製造元、型番、使用材料、サイズ等、種々のウエハ加工用テープの中から使用に適したウエハ加工用テープを選出するのに供する情報が、記号、符号、文字、図案、絵、しるし等により記載される。
【0021】
このマーキングMの形成には、レーザー照射、熱線照射、超音波溶着、熱印字その他の加熱手法が用いられ、その形成位置において、接着剤層3と粘着剤層41との間で融着又は溶着が生じる程度に加熱される。また、このマーキングの形成は、接着剤層3における基材フィルム42側から行われるが、レーザーや熱線を利用する場合には、基材フィルム42を透過させて加熱形成し、超音波や熱印字を利用する場合には基材フィルム42を介して接着剤層3と粘着材層41とを溶着又は融着する。
なお、図2では、融着又は溶着によりマーキングMが形成される領域を二点鎖線で図示した。
また、「外周輪郭線を跨ぐ」とは、図2に示すように、接着剤層3の半径方向におけるマーキングMの一端部m1が接着剤層3と粘着剤層41の境界線の内側に位置し、他端部m2が接着剤層3と粘着剤層41の境界線の外側に位置する状態を示すものとする。
さらに、マーキングMは、接着剤層3と粘着剤層41の境界線の全周に渡って形成しても良いし、一部であっても良いが、一部とする場合には、図1に示すように、接着剤層3と粘着剤層41の境界線の、剥離作業時に剥離フィルム2が繰り出される方向Aにおける剥離起点Sを含む範囲で形成することが望ましい。
また、このマーキングMは、接着剤層3におけるウエハWの取り付け予定位置よりも外側に形成することが望ましい。
【0022】
以下、ウエハ加工用テープ1の各構成や製造方法、使用方法などについて具体的に説明する。
【0023】
[剥離フィルム]
前述のように、剥離フィルム2は矩形の帯状に形成され、製造時及び使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものである。
剥離フィルム2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリエチレン系、その他、剥離処理がされたフィルム等周知のものを使用することができる。
【0024】
[粘着テープ:粘着剤層]
図1及び図2に示すように、粘着テープ4は、接着剤層3を覆うと共に、接着剤層3の周囲全域で剥離フィルム2に接触可能となっている。
粘着テープ4は、剥離フィルム2の全面に形成された粘着剤層41及び基材フィルム42がダイシング用のリングフレーム5(図3参照)の形状に対応してプリカットされ、円形の領域の周囲が除去されることで形成される。
【0025】
粘着剤層41に用いられる材料は、特に制限されるものでは無いが、放射線重合性成分を含有してなるのが好ましい。粘着剤層41に用いられる、主鎖に対して、少なくとも放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有するアクリル系共重合体(以下「アクリル系共重合体(A)」と称する)はどのようにして製造されたものでもよいが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物等からなる共重合体(A1)の炭素鎖を主鎖とし、共重合体(A1)が有する官能基に対して付加反応することが可能な官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物(A2)を付加反応して得られる。
【0026】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数6〜12のヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、または炭素数5以下の単量体である、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなどを列挙することができる。この場合、単量体として、炭素数の大きな単量体を使用するほどガラス転移点は低くなるので、所望のガラス転移点のものを作製することができる。
また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも5質量%以下の範囲内でできる。
【0027】
また、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基含有不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0028】
前記の付加反応することが可能な官能基と炭素−炭素二重結合を有する化合物(A2)の官能基としては、共重合体(A1)の官能基が、カルボキシル基または環状酸無水基である場合には、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、水酸基である場合には、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができ、アミノ基である場合には、イソシアネート基などを挙げることができる。
化合物(A2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および光重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0029】
上記のアクリル系共重合体(A)の合成において、共重合を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般にアクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤が好ましく、重合開始剤としては、α,α'−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾベルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節し、その後官能基における付加反応を行うことにより、所望の分子量のアクリル系共重合体(A)を得ることができる。
また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、この共重合は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0030】
以上のようにして、アクリル系共重合体(A)を得ることができるが、当該アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、30万〜100万程度が好ましい。30万未満では、放射線照射の凝集力が小さくなって、ウエハをダイシングする時に、素子のずれが生じやすくなり、画像認識が困難となることがある。また、この素子のずれを、極力防止するためには、分子量が、40万以上である方が好ましい。分子量が100万を越えると、合成時および塗工時にゲル化する可能性があるからである。
なお、特性面からは、ガラス転移点が低いので分子量が大きくても、パターン状ではなく全体を放射線照射した場合、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分ではないため、延伸後の素子間隙が不十分であり、ピックアップ時の画像認識が困難であるといった問題が発生することはないが、それでも90万以下である方が好ましい。なお、本発明における分子量とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
また、粘着剤層41において、アクリル系共重合体(A)の光重合性炭素−炭素二重結合の導入量は、放射線硬化後に十分な粘着力の低減効果が得られる量であればよく、UV照射量等の使用条件などにより異なり一義的ではないが、好ましくは0.5〜2.0meq/g、より好ましくは0.8〜1.5meq/gである。二重結合量が少なすぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が小さくなり、二重結合量が多すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分ではなく、延伸後の素子間隙が不十分であり、ピックアップ時に各素子の画像認識が困難になることがある。さらに、アクリル系共重合体(A)そのものが安定性に欠け、製造が困難となる。
【0032】
さらに、アクリル系共重合体(A)は、主鎖に対して、未反応の水酸基及びカルボキシル基を含有する基を有するものである。アクリル系共重合体(A)が、水酸基価5〜100となるような水酸基を有すると放射線照射後の粘着力を減少することによりピックアップミスの危険性をさらに低減することができるので好ましい。水酸基価は20〜70であることがさらに好ましい。また、アクリル系共重合体(A)が、酸価0.5〜30となるようなカルボキシル基を有するとテープ復元性を改善することにより、使用済テープ収納型の機構への対応が容易とすることができるので好ましい。酸価は1〜10であることがさらに好ましい。ここで、アクリル系共重合体(A)の水酸基価が低すぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が十分でなく、高すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性を損なう。また酸価が低すぎると、テープ復元性の改善効果が十分でなく、高すぎると粘着剤の流動性を損なう。
【0033】
なお、ウエハ加工用テープ1に用いられる放射線硬化性粘着剤層41を紫外線照射によって硬化させる場合には、必要に応じ副成分として、光重合開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
さらに、放射線硬化性粘着剤層には、必要に応じ副成分として、例えばポリイソシアネート化合物などの硬化剤等を含むことができる。硬化剤の配合量は、主成分であるアクリル系重合体100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
粘着剤層41の厚さは、5〜50[μm]が好ましい。
【0034】
[粘着テープ:基材フィルム]
粘着テープ4の基材フィルム42は、フィルムとして放射線透過性を有するものであれば公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、またはポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。またはこれらの群から選ばれる2種以上が混合されたものもしくは複層化されたものでもよい。
基材フィルム42の厚みは50〜200[μm]が好ましく用いられる。
また、基材フィルム42はこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。
【0035】
[接着剤層]
ウエハ加工用テープ1の接着剤層3に用いられる材料は、特に限定されるものでは無く、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコンオリゴマー系等を使用することができる。
【0036】
[ウエハ加工用テープの使用方法]
ウエハ加工用テープ1を半導体ウエハWおよびリングフレーム5に貼りつける作業を図3に基づいて説明する。
この貼り付け作業の際には、ウエハ加工用テープ1をそのロール体から繰り出して、所定の経路を搬送して、主に剥離フィルム2のみをローラ100により巻き取っている。
ウエハ加工用テープ1の搬送経路には、剥離用くさび101が設けられており、剥離用くさび101の先端部を折り返し点として、剥離フィルム2が折り返される。この時、接着剤層3と粘着剤層41の境界線における搬送方向下流側の端部(剥離起点S)上を跨ぐようにしてマーキングMが加熱形成されていることから、融着又は溶着により接着剤層3の剥離起点Sにおいて粘着テープ4との密着性が高められており、折り返される剥離フィルム2に引っ張られたとしても、接着剤層3は粘着テープ4からの剥離が防止される。
従って、剥離用くさび101の先端部において、剥離フィルム2のみが巻き取りローラ100に巻き取られる。
【0037】
剥離用くさび101の先端部の搬送方向の延長線上には、吸着ステージ102が設けられており、吸着ステージ102の上面には、半導体ウエハWおよびリングフレーム5が設置されている。
剥離用くさび101により剥離フィルム2が引き剥がされた接着剤層3および粘着テープ4は、半導体ウエハW上に導かれ、貼合ローラ103によってウエハWに貼合される。
【0038】
その後、接着剤層3を半導体ウエハWに、また、粘着テープ4をリングフレーム5に貼りつけた状態で、半導体ウエハWをダイシングする。
ついで、粘着テープ4に放射線照射等の硬化処理を施してダイシング後の半導体ウエハW(半導体チップ)をピックアップする。このとき、粘着テープ4は硬化処理によって剥離力が低下しているので、接着剤層3は粘着テープ4の粘着剤層12から容易に剥離し、半導体チップは裏面に接着剤層3が付着した状態でピックアップされる。また、マーキングMは、接着剤層3に対する半導体ウエハWの貼合位置から外れているので、ピックアップに対する影響も生じない。
半導体チップの裏面に付着した接着剤層3は、その後、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、ダイボンディングフィルムとして機能する。
【0039】
[ウエハ加工用テープにおける技術的効果]
上記ウエハ加工用テープ1では、剥離フィルム2の剥離に際し、粘着剤層41から剥離を生じやすい接着剤層3の外周部分に対応して、接着剤層3と粘着剤層41との境界線Rを跨ぐようにして接着剤層3の表面に加熱によるマーキングMの形成が行われるので、粘着剤層41に対する接着剤層3の密着性を高めることができ、当該接着剤層3の剥離を効果的に防止することが可能となる。また、マーキングMの形成は、これらの境界線Rの周辺のみに行われ、さらには、ウエハの貼合予定位置を回避しているので、ダイシング後の半導体素子のピックアップの妨げとはならない。
また、ウエハ加工用テープ1の情報を示すマーキングMを利用しているので、ウエハ加工用テープ1の製造時に接着剤層3の剥離防止のための対策を施すための工数を増やす必要がないことから、従前の生産性を維持したまま接着剤層3の剥離防止効果を高めることが可能となる。
また、マーキングMの形成は、レーザー加熱、熱線照射、超音波溶着、熱印字等、周知の方法を用いるので、容易に実現することができる。
また、マーキングMは、接着剤層3と粘着剤層41とが相互に熱による融着又は溶着を伴って形成されるので、より確実な剥離防止効果を得ることが可能である。
【実施例1】
【0040】
以下、ウエハ加工用テープについてマーキングの形成範囲、形成位置、形成の有無、形成方法など各種の条件を変えて形成された複数の実施例及び比較例とで、接着剤層の剥離防止効果を比較した比較試験について説明する。
ウエハ加工用テープの粘着剤層(X)はどのように製造されたものでも構わないが、ここでは放射線重合性炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー(分子量70万Mw、Tg=-65℃)100部、ポリイソシアネート系硬化剤6部に、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)1部を配合し、ポリオレフィン系基材フィルム(Z)(厚さ100[μm])上に乾燥膜厚が10[μm]となるように塗布した後110℃で2分間乾燥し、ウエハ加工用テープの粘着剤層(X)および基材フィルム(Z)部分を作成した。
【0041】
接着剤層は、ここではアクリル系共重合体100部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100部、キシレンノボラック型フェノール樹脂10部に、エポキシ硬化剤として2-フェニルイミダゾール5部とキシレンジアミン0.5部を配合し、接着剤層の厚み10[μm]となるよう、PETフィルムに塗布後110℃で2分間乾燥し得られた接着剤層(a)を用いた。
更に、上記のように作製した粘着フィルムを所定の大きさ・形状にプリカット加工を施し、上述のように作成されたウエハサイズよりも大きい形状で打ち抜き加工を施した厚さ10[μm]の接着剤層(a)をこの粘着剤層(X)上に貼合したものをウエハ加工用テープとした。
【0042】
次に、ウエハ加工用テープの基材フィルム(Z)の面から、接着剤層(a)におけるウエハの貼合予定部分を除く、図4〜図9の範囲にのみレーザー照射又は熱印字により任意の図案のマーキングを行なった。図4〜図9において上部が半導体ウエハ及びリングフレームへの貼りつけ作業における搬送方向下流側を示している。つまり、図の接着剤層(a)と粘着剤層の境界線Rの上端部が剥離起点となる。
図4の例では境界線Rの全周に渡って当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンAとする)、図5の例では境界線Rの搬送方向下流側端部と上流側端部の二カ所において当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンBとする)、図6の例では境界線Rの搬送方向下流側端部のみにおいて当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンCとする)、図7の例では境界線Rのいずれにもマーキングが施されておらず(パターンなしとする)、図8の例では境界線Rの搬送方向下流側端部及び上流側端部を除く範囲で当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されており(パターンDとする)、図9の例では境界線Rの搬送方向下流側端部のみを除く範囲で当該境界線Rを跨がるようにマーキングが施されている(パターンEとする)。
【0043】
また、境界線Rに対するマーキングの形成位置を異ならせた場合での比較を行うために、図10の例では境界線Rを跨ぐ位置にマーキングを施し(パターンiとする)、図11の例では境界線Rより内側にマーキングを施し(パターンiiとする)、図12の例では境界線Rより外側にマーキングを施した(パターンiiiとする)。
【0044】
なお、レーザー照射で照射されるレーザーは、一般的にレーザーマークの形成に利用されるレーザー種類・波長であればどれでも良い。本実施例及び比較例においては、CO2レーザーマーカを使用し、ウエハ加工用テープの接着剤層(a)の表面で、接着剤層におけるウエハ貼合予定部分を除いた図4〜9の領域及び図10〜12の位置にレーザー照射を行ってマーキングを形成した。
また、熱印字については、一般的に利用される方法であればどれでもよく、本実施例及び比較例においては、ウエハ加工用テープの接着剤層の表面で、接着剤層におけるウエハ貼合予定部分を除く、図4〜9の領域及び図10〜12の位置に熱印字を行った。
また、超音波による溶着又は融着は一般的に利用される方法であればどれでも良く、本実施例及び比較例においては、超音波マーキング装置を使用し、ウエハ加工用テープの接着剤層(a)の表面で、接着剤層(a)のウエハ貼合予定部分を除く図4〜9の領域及び図10〜12に超音波加工を行った。
なお、レーザー照射や熱印字、超音波などの融着又は溶着により施すマークの形状は、外周輪郭線Rをまたぐような記号、符号、文字、図案、しるし等であればなんでも良い。
【0045】
なお、これらのウエハ加工用テープは、接着剤層における粘接着剤層とは逆側の面にポリエチレンテレフタレート(PET)系の剥離フィルムを設けた。
【0046】
実施例1〜9の適用条件を表1に、比較例1〜18の適用条件を表2に示す。これらの実施例1〜9及び比較例1〜18の適用条件に従って作製したウエハ加工用テープを、図3に示すウエハ貼合装置にセットし、貼合温度70℃における、貼合性を確認した。貼合時に問題なく貼合出来たものを○、接着剤層と粘着フィルムとが剥がれて接着剤層がめくれ上がったものを×とした。
【0047】
【表1】
【表2】
【0048】
上記比較試験の結果、表1に示すとおり、実施例1〜9では貼合試験において結果が良好であり、接着剤層(a)の外周部であって剥離フィルムとの剥離起点Sを含む部分において半導体ウエハの貼合予定部位よりも密着力を増大させれば、接着剤層(a)が粘着テープの粘着剤層(X)から剥離するのを防止することができることが分かった。また、マーキングは、レーザー加熱、熱印字、超音波加熱のいずれにより形成した場合でも接着剤層(a)の剥離防止効果が得られることが分かった。なお、マーキングは半導体ウエハの貼合予定部位から外れているので、ピックアップミスも誘引されない。
なお、比較例1〜19は、いずれも粘着フィルムと接着剤層とがはがれて接着剤層がめくれ上がった。
【符号の説明】
【0049】
1 ウエハ加工用テープ
2 剥離フィルム
3 接着剤層
4 粘着テープ
41 粘着剤層
42 基材フィルム
M マーキング
R 境界線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムと接着剤層と粘着剤層と基材フィルムとがこの順番で積層され、
前記基材フィルムと前記粘着剤層とからなる粘着テープが前記接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層における前記基材フィルム側から、前記接着剤層と前記粘着剤層との境界線上を跨ぐようにして、マーキングが形成され、
当該マーキングで前記粘着剤層と前記接着剤層を融着又は溶着したことを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項2】
前記剥離フィルムを帯状に形成すると共に、前記剥離フィルムがその長手方向一端部から剥離される場合において、
前記マーキングは、少なくとも、前記接着剤層の外周における前記剥離フィルムからの剥離起点を含む範囲で形成することを特徴とする請求項1記載のウエハ加工用テープ。
【請求項3】
前記マーキングは、レーザー照射により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【請求項4】
前記マーキングは、加熱により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【請求項5】
前記マーキングは、超音波振動により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【請求項1】
剥離フィルムと接着剤層と粘着剤層と基材フィルムとがこの順番で積層され、
前記基材フィルムと前記粘着剤層とからなる粘着テープが前記接着剤層を覆うと共に、当該接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層における前記基材フィルム側から、前記接着剤層と前記粘着剤層との境界線上を跨ぐようにして、マーキングが形成され、
当該マーキングで前記粘着剤層と前記接着剤層を融着又は溶着したことを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項2】
前記剥離フィルムを帯状に形成すると共に、前記剥離フィルムがその長手方向一端部から剥離される場合において、
前記マーキングは、少なくとも、前記接着剤層の外周における前記剥離フィルムからの剥離起点を含む範囲で形成することを特徴とする請求項1記載のウエハ加工用テープ。
【請求項3】
前記マーキングは、レーザー照射により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【請求項4】
前記マーキングは、加熱により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【請求項5】
前記マーキングは、超音波振動により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用テープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−89823(P2013−89823A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230231(P2011−230231)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
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