ウエハ収納容器
【課題】大口径ウエハ収納容器を載置台に精度良くかつスムーズに位置合わせを行うことが可能な位置決め手段を提供すること
【解決手段】
ウエハ収納容器を載置する載置台に、側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに、頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを設け、載置台に載置されるウエハ収納容器下面に第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、およびレベルピン各々が当接する、前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面を設ける。また、各ピンの頂部角部および各穴部の入口部をテーパー形状にする。
【解決手段】
ウエハ収納容器を載置する載置台に、側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに、頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを設け、載置台に載置されるウエハ収納容器下面に第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、およびレベルピン各々が当接する、前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面を設ける。また、各ピンの頂部角部および各穴部の入口部をテーパー形状にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ収納容器を収納容器載置台に安定して取り付けるための位置決め手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のLSI(集積回路)の発展はめざましいものがあり、最小線幅40nm以下の量産LSIも登場していて、微細化の限界が近づきつつあるとは言え、「半導体の集積密度は3年で4倍になる」というムーアの法則は今後も持続すると予想されている。これに伴い1つのLSIチップに収納される情報量も大きく伸びて、チップサイズも増大していく傾向が続いている。また、微細化が進むに従いプロセスが複雑化し、ウエハ製造コストの増大も問題になっている。
【0003】
これらの課題に対応するためウエハの大口径化を行い、1枚のウエハからの取れ個数(CPW)を増やすことにより、1チップ当たりのコストの増大を低下または抑制することも検討されてきている。現状の最先端LSI工場におけるウエハサイズの主力は300mm径であるが、2010年代には450mmウエハサイズのLSI量産工場も計画されていて、将来もウエハサイズの大口径化は必然と考えられる。
【0004】
このウエハサイズの大口径化に従い、ウエハを保管し搬送するウエハ収納ケースも大型化していく。現在の量産レベルで使用している300mmウエハの場合、ウエハ収納容器からウエハを出し入れするときは、ウエハを水平にして行うことが主流であるから、ウエハをウエハ収納容器に保管したり搬送したりするときにも、ウエハ面を水平にした状態で行う。しかし、300mmを超えるウエハサイズになって来るとウエハの自重による撓みが大きくなり、現状のウエハ収納容器における収納ウエハピッチである10mmでは上下にあるウエハが接触する危険性がある。このピッチを増大すれば接触問題については解決するが、ウエハ収納容器がさらに大型化したり、1つのウエハ収納容器あたりのウエハ収納枚数が少なくなったりするという新たな問題が発生する。
【0005】
こうした問題を防止するために、ウエハを縦置きに保管し、搬送するということも提案されている。これによりウエハの自重によるウエハの撓みが防止できるという利点はあるものの、ウエハを縦置きでウエハ収納容器から出し入れするためには、ウエハ収納容器を載せて固定するウエハ収納容器載置台に正確に(水平方向および高さ方向において)ウエハ収納容器を設置することが要求されている。たとえば、水平方向の位置合わせが少しでも狂うとウエハを立てて取り出すことができなくなるし、高さ方向がバラツクとウエハ収納容器の安定度が悪くなって傾き、ウエハの出し入れ時に破損または損傷する可能性がある
【0006】
図7は従来のウエハ収納容器の外観を示す図である。本発明の説明に必要な部分のみを示す。ウエハ収納容器60はウエハ収納容器本体61の開口部に蓋体62で蓋をしている。ウエハ収納容器60がウエハ収納容器載置台にセット(設置)され、蓋体62がウエハ収納容器60から取り外され、ウエハの出し入れが行われる。ウエハ収納容器載置台にセットされるウエハ収納容器本体61の1つの側面には、キネマチィックカップリングであるV字型の長溝部材66が3か所に取り付けられている。(特許文献1を参照)一方ウエハ収納容器載置台には円柱形状のキネマティックカップリングピンが取り付けられていて、このキネマチィックカップリングピンが長溝部材66のV字溝にはまり、ウエハ収納容器60がウエハ収納容器載置台にセットされる。すなわち、従来は、3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)とウエハ収納容器載置台側からのキネマチィックカップリングピンで位置決めをしている。図7に示すウエハ収納容器60では、蓋体62がウエハ収納容器載置台の水平面に対して垂直にセットされ、その後で蓋体62がウエハ収納容器60から取り外され、ウエハ収納容器本体61内部にウエハが出し入れされる。ウエハはウエハ収納容器載置台に対して水平または垂直になり出し入れされる。
【特許文献1】特開H11−513347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示すようなウエハ収納容器60のV字型長溝66にウエハ収納容器載置台のキネマティックカップリングピン(以下、KC−ピン)を合わせる位置合わせ方式は、300mmウエハ収納容器などの位置決めに用いられている。しかし、このような位置決めタイプは、KCピンをV字型長溝に合わせれば良いだけなので位置決めを容易に行うことができるという利点があるが、高さ方向と水平方向の位置合わせについて同じ手段を用いて、高さ方向と水平方向の位置決めを同時に行うために、寸法が安定せず、キネマティックカップリング面の滑り性の問題もあり、正確な位置合わせが難しいという問題がある。
【0008】
図8は、図7で示すウエハ収納容器60のV字型長溝66にウエハ収納容器載置台のキネマティックカップリングピン(以下、KC−ピン)がはまった状態を模式的に示したものである。この図8に示すように、3か所のKC−ピン71(71−1〜3)と3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)72(72−1〜3)との対応位置関係(高さ方向および水平方向)が少しでもずれて、たとえば、KC−ピン71−1が対応するV字型長溝72−1にうまくはまりこんでも、KC−ピン71−3が、対応するV字型長溝72−3にうまくはまらず、V字型溝のV字斜面にかかってしまうと、高さが調整できず、ウエハ収納容器が傾いてしまう。この結果、ウエハも傾いてしまうので、ウエハ収納容器からウエハを出し入れするときに精度良く取り出せなくなってしまう。特にウエハが縦置き、すなわち、ウエハ収納容器載置台に対してウエハが垂直になっている時にも、ウエハの位置ずれが大きくなりウエハ出し入れ時にウエハに損傷を与える可能性もある。
【0009】
さらに、KC−ピンによって、V字型長溝のV字面が削れ、窪みができたりして、位置決め精度を保証できなくなる。また、3か所のキネマティックカップリング同士の位置が離れているほど、ウエハ収納容器が安定すると考えられるが、一方で3か所のキネマティックカップリング同士の距離が離れるに従って各位置精度を保証することが加工精度上難しくなってくる。この結果、上述したように、3か所のKC−ピンと3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)との対応位置関係(高さ方向および水平方向)にズレが大きくなってしまい、ウエハ収納容器載置台にセットされたウエハ収納容器が浮き上がったりして、上記問題点がさらに顕在化する。
【0010】
ウエハが大口径化し、ウエハ収納容器が大きくなると、キネマティックカップリング(V字型長溝)とK−Cピンで位置決めを行うことが益々難しくなり、ウエハ収納容器を正確な位置に位置決めすることが不可能になる。ウエハ収納容器はポリカーボネート等の高分子材料のインジェクション成形により製作されるが、不可避的に発生する成形収縮は距離に比例して大きくなる。たとえば、450mm径ウエハ用のウエハ収納容器の位置決めは、300mm径ウエハ用のウエハ収納容器の位置決めに比較して約1.5倍の精度が要求される。従って、300mm径を超えるサイズのウエハ用のウエハ収納容器においては、従来用いられているキネマティックカップリング(V字型長溝)とK−Cピンによる位置決め方式に代わる精度の良い位置決め方式が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ウエハ収納容器をウエハ収納容器載置台に精度良く設置するためにウエハ収納容器およびウエハ収納容器載置台に取り付けられた位置決め手段に関する。特に、今後ウエハの大きさが450mm以上に拡大されていく方向にあり、ウエハ収納容器の重量も大きく増大するために、300mm以上の大口径ウエハを搭載するウエハ収納容器の装置載置台への設置における位置決めの確実性および迅速な位置決めが要求されているが、本発明はこれらの要求にこたえる位置決め手段を提供するものである。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は以下のような手段を講じている。
本発明のウエハ収納容器は略六面体の外形を有し、その1つの面にウエハを出し入れする開口部および前記開口部を塞ぐ蓋体を有し、ウエハ収納容器が載置する載置台に、側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを有する。そして、ウエハ収納容器は、前記載置台に載置されるウエハ収納容器下面に、前記第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、前記第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、および前記レベルピン各々が当接する前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面を有する。
【0013】
また、前記レベル当接面は前記ウエハ収納容器下面に設けられた凹部の天井部の平坦面であり、前記凹部の入口および前記レベルピン頂部の端部にテーパーが設けられている。前記レベルピン頂部が前記凹部テーパー部にガイドされて前記レベルピンが前記凹部内側に挿入された段階において、前記第1および第2水平位置決めピンの先端が前記円筒状穴部および長穴部の入口部の高さになるように前記レベルピンテーパー部、前記凹部、前記水平位置決めピン、前記円筒状穴部、および前記長穴部の高さが設定されている。さらに、前記第1水平位置決めピンおよび/または前記第2水平位置決めピンの頂部の平面によっても高さ方向のレベルを決めることもできる。或いは、前記円筒状穴部および/または前記長穴部を前記ウエハ収納容器開口部付近に設けることもでき、或いは、前記ウエハ収納容器開口面左右の中央線上に前記円筒状穴部および/または前記長穴部を設けることもでき、或いは、前記円筒状穴部と前記長穴部を収納容器開口面左右の対称位置に配置することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位置決め手段を取り付けたウエハ収納容器を用いることにより、ウエハ収納容器を設置する装置側の収納容器載置台へ精度良くウエハ収納容器を設置し確実に所望の場所に設置できる。位置合わせ精度が良くなり、繰り返し設置位置の再現性が上がり、ウエハ収納容器が浮き上がったり傾いたりすることがなくなる。本発明の位置決め手段は構造が単純であり作製や取り付けが簡単である。また、円筒状穴部と長穴部における内面筒面を位置決めに使用するため、摩耗が殆どなく、繰り返し使用の耐久性に優れている。特に、載置台とウエハ容器の最下部で高さ方向の位置決めをする場合、ウエハ容器の最下部の損傷により、レベル出しが不正確になるおそれがあるが、レベル当接面は、ウエハ容器の最下部がより高い位置に配置されるので、通常の使用において最下部が損傷を受けてもレベル当接面が損傷を受けることはなく、正確なレベル出しが可能になる。さらに、レベルピンと高さ方向位置決め凹部を用いて水平方向の粗い位置決めを行うことができるので、位置決めがスムーズにしかも確実に精度良く行うことができる。また、水平方向位置決め手段と高さ方向位置決め手段を兼用できるので、ピン数を減らすことができその構造も簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明における収納容器の1つの面に取り付けられた位置合わせ手段と、載置台に取り付けられた位置合わせ手段との関係について説明する図である。ウエハ収納容器1は、略六面体の外形を有し、その1つの面であるウエハ収納容器本体2の開口部を蓋体3で蓋をしている。蓋体3はその内側にウエハ押さえ用のリテーナを有している。また、ウエハ収納容器本体2内部にはウエハ支持部材(溝板)を有していて、ウエハ収納容器本体2内においてウエハを支持している。ウエハ支持部材はウエハ収納容器本体2と一体となっている場合もあれば、別部材としてウエハ収納容器本体2内にセットされる場合もある。図1において、ウエハ収納容器本体2の1つの側面がプロセス装置等における(ウエハ収納容器)載置台の水平面に対面して設置されるが、この側面7に載置台との位置合わせ手段4、5、および6が取り付けられている。これらの側面に取り付けられた位置合わせ手段4、5、および6とそれぞれ対応した位置合わせ手段12、13、および14が載置台にも取り付けられていて、これらが適合して、載置台の所望の位置にウエハ収納容器1が設置される。
【0016】
位置合わせ手段4および5は、載置台の水平面との水平方向位置合わせ手段であり、ウエハ収納容器の水平方向位置を決定する。位置合わせ手段6は、載置台の水平面と垂直方向、すなわち高さ方向の位置合わせ手段であり、ウエハ収納容器の高さを決定する。図1においては、水平方向位置合わせ手段4および5は、高さ方向位置合わせ手段と異なる位置に存在する。すなわち、高さ方向の位置合わせと水平方向(x−y方向)の位置合わせを別個に行う。しかし、後述するように水平方向位置決め手段を高さ方向位置決め手段と兼用しても良い。高さ方向位置合わせ手段は3つ以上取り付けられる。2つ以下では高さ方向を安定して合わせこむことができないので、3つ以上必要となる。(ただし、高さを決定する部分の面積はそれ程広くないものとする。)図1においては、高さ方向位置合わせ手段は4か所(14−1〜4)に取り付けられている。また、水平方向位置合わせ手段は4および5の2か所に取り付けられている。
【0017】
本発明において、ウエハ収納容器に取り付けられる水平方向位置合わせ手段の一つである4は、凹部形状で円筒形状の穴になっている(円筒状穴部)。これに対応する載置台の位置合わせ手段12は、円柱状のピン(第1水平位置決めピン)となっていて、円筒状穴部4に嵌合する。すなわち、円筒状穴部4の内径は第1水平位置決めピン12の直径とほぼ等しい。実際には、第1水平位置決めピン12が円筒状穴部4にピッタリ嵌るようになっているので、第1水平位置決めピン12の直径は円筒状穴部4の内径よりわずかに小さい。また、円筒状穴部4および第1水平位置決めピンの(断面形状の)円形は水平面位置を決定するので、精度良く、できるだけ円形に近い方が良い。円柱状ピン12が円筒状穴部4に嵌合すると、他のピン13や14がなければ、ウエハ収納容器1は水平方向に回転する。すなわち、第1水平位置決めピンの側面によって、水平方向の位置決めを決定している。
【0018】
もう1つの水平方向位置決め手段である5も凹部形状で長穴溝である(長穴部)。ここで述べる「長穴」とは、この開口部を形成する周縁部分において互いに平行な直線部を開口長さL方向に有する開口部をいう。(図9参照)すなわち、この直線部(平行部)間距離が、短径(一方の径)の長さと等しくなる。これらの直線部の端部間を結ぶ周縁部分は、直線であってもよく、曲線(例えば円弧状)であっても良い。この長穴部5に、載置台11に取り付けられた第2水平位置決めピン13が挿入される。すなわち、第2水平位置決めピン13が挿入される長穴部5は、一方向に略平行な面を有し、その方向には第2水平位置決めピン13と相対位置を変える事ができ、その直角方向には第2水平位置決めピン13との相対位置は規制される。第2水平位置決めピン13の形状は、円柱形、四角柱、或いは平行側面を有する柱状である。或いは、長穴形状と同一形状でも良い場合もある。好適には円柱形であり、その場合、長穴部5の平行部の距離は円柱形ピンの直径とほぼ等しくピッタリ適合できるようになっている。(実際には、第2水平位置決めピン13が長穴部5の平行部にピッタリ嵌るようになっているので、第2水平位置決めピン13の直径は長穴部5の平行部の距離よりわずかに小さい。)すなわち、第2水平ピンの側面によって、水平方向の位置決めが決定されている。長穴部5と第2水平位置決めピン13の適合は、円形凹部4および第1水平位置決めピン12の嵌合による水平方向の回転を規制するので、ウエハ収納容器1は載置台10の水平面11における水平方向に精度良く確実に固定される。
【0019】
円筒状穴部4の中心と長穴部5の中心を結ぶ直線は、長穴部5の平行部の端面と平行であるときが、ウエハ収納容器1は最も水平方向に精度良く確実に規制される。図9はこのような場合の円筒状穴部4と長穴部5の位置関係について説明する図である。長穴部5の中心とは、長手方向の中心軸mと短辺(径)側中心軸nとの交点Pを言う。2つの短径側円弧(または曲線や直線)は必ずしも対称でなくとも良いので、短径の長さが異なることがあるが、その場合は平行部(端面16(16−1)と16(16−2)で規定される)の矩形形状の中心または対角線の交点と考えても良い。「円筒状穴部4の中心と長穴部5の中心を結ぶ直線は、長穴部5の平行部の端面と平行であるとき」とは、「円筒状穴部4の中心OとPを結ぶ直線mが16−1および16−2に平行であるとき」である。すなわち、このときは、中心軸mの方向は長穴部5における平行部の端面方向Lである。
【0020】
第2水平位置決めピン13として円柱状ピンが長穴部5に挿入されているとき、長穴部5の長手方向(m方向)には移動するが、mと直角方向のn方向には殆ど移動できない。円柱状ピン13の径と長穴部5の短径(すなわち、平行部の距離(16−1と16−2の距離))とはほぼ等しいので、それらのクリアランス程度の移動があるだけである。しかし、m方向に関しても、円筒状穴部4に第2水平位置決めピン12として円柱状ピンが嵌合しているときは、殆ど移動できず、それらのクリアランス程度の移動があるだけである。従って、これら2つの位置決め手段によって、水平方向は確実に固定できる。
【0021】
m軸と平行部16との平行度が悪くなるに従い、(平行部16の方向がm軸と傾き、m軸とL方向との角度が大きくなるに従い、)水平方向の移動も大きくなるので、m軸と平行部16が平行になるときが最も移動量が小さいことが分かる。円筒状穴部4と長穴部5が離れても、m軸と平行部16が平行になっていれば、水平方向の移動量は変わらないので、従来の方式に比べて、位置決め手段5の取り付け場所の自由度が大きいという利点もある。逆に言えば、位置決め手段5がウエハ収納容器1の側面7の周縁にあって、円筒状穴部4より離れていても、水平方向の位置合わせが精度良く確実に固定できる。尚、m軸と平行部16との平行度(m軸とL方向との角度)は、レイアウト上の都合から、少しずれる場合もあるが、10度程度は許容される。
【0022】
図1に示すように、ウエハ収納容器1側の高さ方向の位置決め手段6も凹部(「高さ方向位置決め凹部」とも記載)であり、好適には円筒形状溝穴で、載置台10の高さ方向の位置決め手段であるレベルピン14(高さ方向の位置(レベル)を決めるという意味で、「レベルピン」と呼ぶ)が高さ方向位置決め凹部6に入り、ウエハ収納容器1の高さを規定する。すなわち、高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域であるレベル当接面にレベルピン14の上端(頂部)の平坦面(レベル基準面)が当接して高さ方向位置決めが行われる。
【0023】
レベルピン14の形状は、たとえば円柱状であり、先端部(頂部)は略円弧状、球状または平坦状になっている。高さ方向位置決め凹部6の内側底面部(天井部)を摩耗させない(通常、載置台10側の位置決めピン14等は硬質の金属製であるが、ウエハ収納容器1側の凹部6等は高分子製であるから、ウエハ収納容器1の凹部6等がより摩耗しやすい)ために、平坦状が望ましい(平坦状の場合が単位面積当たりの負荷が最も小さい)が、ウエハ収納容器1を繰り返し用いなければ、平坦状でなくても良い。従ってレベル基準面は通常平坦面であるが、線や点である場合もある。高さ方向位置決め凹部6の内部空間(穴部)は、通常、レベルピン14よりも大きい。たとえば、レベルピン14が円柱状で、高さ方向位置決め凹部6も円筒状穴の場合、凹部6の穴径は、これに入るレベルピン14の直径より大きくなっている。従って、水平方向の位置が多少ずれてもレベルピン14は高さ方向位置決め凹部6に容易に入り込むことができる。後述するように、高さ方向位置決め凹部6の入口部がテーパー(斜面)になっている場合には、水平方向の位置がずれてレベルピン14の先端が接触しても、このテーパーでガイドされてスムーズにレベルピン14が高さ方向位置決め凹部6の内側空間(穴部)に入る。
【0024】
図1においては、4つ(またはウエハ収納容器1側と載置台10側との組み合わせで言えば4組)の高さ方向位置決め手段(6−1〜4および14−1〜4)を記載しているが、上述したように3つの高さ方向位置決め手段であっても良い。ただし、その場合、高さのバランスを保つには、3つの高さ方向位置決め手段で構成される三角形の内部に、ウエハ収納容器1の重心から下ろした鉛直軸とウエハ収納容器下面7との交点が存在することが必要である。(ここで、ウエハ収納容器下面とは、ウエハ収納容器1を載置台10に置いた時に載置台10の水平面(載置台上面)11に面したウエハ収納容器1の面である。従って、ウエハ収納容器1の下面に位置決め手段が取り付けられる。)特にこの交点が三角形の重心と一致するときが最も安定性が良い。高さ方向位置決め手段が4つの場合にも、高さのバランスを保つには、それらで構成される四角形の内部に、ウエハ収納容器1の重心から下ろした鉛直軸とウエハ収納容器下面7との交点が入っていることが必要である。特にこの交点が四角形の重心と一致するときが最も安定性が良い。
【0025】
尚、ウエハ収納容器側の高さ方向位置決め凹部6は円筒形状でなくても良く、その断面穴形状が矩形や多角形、楕円形状などでも良い。また、入口部が広く天井部が狭くなっていても良い。さらに、高さ方向位置決め凹部6の天井部は周囲が側面で完全に囲まれていなくても良い。たとえば、高さ方向位置決め凹部6の天井部を囲む壁面の一部を除去しても良い。
【0026】
載置台10側のレベルピン14も円柱状である必要はなく、断面が矩形や多角形、楕円形などでも良い。また先端部が狭く底部が広い台形状であっても良い。必要なことは、レベルピン14がウエハ収納容器1側の高さ方向位置決め凹部6にスムーズに入り込み、レベルピン14のレベル基準面が凹部6の当接面に当接すれば良い。
【0027】
図1において両矢印破線で示すように、ウエハ収納容器1の側面7に取り付けられた円筒状穴部4、長穴部5および高さ方向位置決め凹部6(6−1〜4)がそれらに対応する載置台10の水平面11に取り付けられた水平(方向)位置決めピン12、13およびレベルピン14(14−1〜4)と適合する。また、第1水平位置決めピン12、第2水平位置決めピン13およびレベルピン14のピンは、ウエハ収納容器の接触部を損傷しないこと、或いは、後述するように所定の穴部にスムーズに挿入することなどのために、それらの角を落とすか、或いはテーパーをつけている。
【0028】
図2は、載置台10の水平面11にウエハ収納容器本体2が設置された状態を示す。蓋体3は取り外して収納容器の内部が見えるようになっている。ウエハ収納容器本体2は載置台10に完全に接している分ではなく、通常は少し浮いた状態になっている。これは、ウエハ収納容器の側面がかならずしも平坦ではない(位置決め手段が突状に付いている場合もある)こと、蓋体3の取り外しを容易にすること、ハンドリング用治具やウエハを操作しやすくすることなどのためである。浮いたときの高さは、高さ方向位置決め手段によって決定される。ウエハ23は、ウエハ収納容器本体2に収納されているが、図2においては、垂直に収納されている。高さ方向の位置決めが不十分であると、この垂直になったウエハ23は位置ずれする可能性がある。ウエハ収納容器本体2に収納されたウエハ23を取り出すために、ハンドリング用のフォークが収納されたウエハ同士の間に入ってウエハを吸着して取り出す。水平方向の位置決めが不十分であるとフォークがウエハに接触してウエハを破損する可能性があるが、本発明を用いることにより、このようなことは発生しない。当然、ウエハがウエハ収納容器本体2に水平に入っているときも同様のことが言える。
【0029】
尚、図2に示されるように、位置決め手段が取り付けられたウエハ収納容器本体2の1つの側面7の反対側における側面21に、トップフランジ22が取り付けられていて、このトップフランジ22を用いて、ウエハ収納容器1またはウエハ収納容器本体2を搬送し、ハンドリングできる。
【0030】
図3はウエハ収納容器1が載置台10に設置されたときの底面図、立面図および側面図である。図3(a)は、載置台10の水平面11から(下方から)見たウエハ収納容器1の底面図であり、図3(b)は、ウエハ収納容器1が載置台10に設置されたときの、レベルピン14とそのピンが当接する高さ方向位置決め凹部6、第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4、第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入される長穴部5を横方向から透視して見た立面図(一部のみ示す)である。図3においては、レベルピン14は4つ(14−1〜4)配置されている。レベルピン14に対応して高さ方向位置決め凹部6も4つ(6−1〜4)配置されている。レベルピン14は高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域(レベル当接面)と当接し、高さ方向位置を決定している。レベルピン14は、水平方向に関しては高さ方向位置決め凹部6との間に隙間(空間)があり余裕がある。
【0031】
従って、レベルピン14が当接する高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域(レベル当接面)は水平方向の位置合わせで必要な領域よりも広い。すなわち、レベル当接面は対応するレベル基準面の面積および水平方向の位置合わせ余裕面積を合わせた領域よりも広い面積を持ち、多少のずれがあっても高さレベルが保持される。そうでなければ、高さ方向位置が変わってしまう恐れがある。第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4および第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入する長穴部5に関しては、重なって示されているが、この方向から見た図では同じ状態となる。図3(b)における左右方向に関しては、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13もそれぞれ円筒状穴部4および長穴部5にぴったり適合しており、ウエハ収納容器1は動かない。すなわち、これらの水平位置決めピンの側面およびこれらの穴部の内側面によって水平方向の位置合わせが行われている。また、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13の上端(頂部)はウエハ収納容器下面とは接触していないので、第1水平位置決め用円柱状ピン12および第2水平位置決め用円柱状ピン13によって高さ方向位置決めは行われない。
【0032】
図3(c)は図3(b)の方向と直角の横方向から見た側面図である。第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4の状態は図3(b)の図と同じであるが、第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入する長穴部5の状態に関しては、長穴部5の長手方向(図3(c)の左右方向)と第2水平位置決め用円柱状ピン13の間には隙間(空間)があり、一定程度移動できる。しかし、第1水平位置決め用円柱状ピン12と円筒状穴部4はぴったり嵌合しており、図3(c)の左右方向にも移動しない。すなわち、この方向においては、第1水平位置決めピンの側面および円筒状穴部の内側面によって水平方向の位置合わせが行われている。また、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13の上端(頂部)はウエハ収納容器下面とは接触していない。従って、第1水平位置決め用円柱状ピン12および第2水平位置決め用円柱状ピン13によって高さ方向位置決めは行われない。
【0033】
図3において上述したように、載置台10のレベルピン14(14−1〜4)はウエハ収納容器1の高さ方向位置決め凹部(6−1〜4)に入り、レベルピン14の頂部のレベル基準面が高さ方向位置決め凹部6の天井部のレベル当接面に当接して高さ方向位置決めを行う。円柱形状のレベルピン14の直径は、円筒形状の凹部6の内径より小さいため、レベルピン14は容易に凹部6に入る。また、図3から分かるように、レベル当接面は、ウエハ収納容器1の最下部より高い位置に配置されている。載置台とウエハ収納容器の最下部で高さ方向の位置決めをする場合、ウエハ収納容器の最下部の損傷により、レベル出しが不正確になるおそれがあるが、レベル当接面は、ウエハ収納容器の最下部より高い位置に配置されるので、通常の使用においてウエハ収納容器の最下部が損傷を受けてもレベル当接面が損傷を受けることはなく、正確なレベル出しが可能になる。
【0034】
図4はウエハ収納容器下面に取り付けられた円筒状穴部、長穴部および高さ方向位置決め凹部の1例を示す。図4(a)に示すように、円筒状穴部や長穴部45が設けられた部材44および高さ方向位置決め凹部43が設けられた部材42をウエハ収納容器下面41に取り付けている。部材44の高さは部材42の高さより低い方が良い。或いは、45の溝深さは43の溝深さより深い方が良い。(尚、これらと嵌合する載置台側の位置決めピンの高さによっても溝深さや部材高さが決定される。)すなわち、レベルピンの頂部のレベル基準面が高さ方向位置決め凹部の天井部の当接面に当接したときに、第1水平(方向)位置決めピンおよび第2水平(方向)位置決めピンの頂部が円筒状穴部および長穴部の天井部に接触しないようにする。これらにより、部材42により高さ方向位置決め精度が確保される。
【0035】
しかし、図4(a)においては、円筒状穴部や長穴部45が設けられた部材44や高さ方向位置決め凹部43が設けられた部材42はウエハ収納容器下面41に突状に付いているので、部材42や部材44が破損したり傷ついたりする可能性がある。これに対して、図4(b)においては、ウエハ収納容器下面46内に、円筒状穴部や長穴部48および高さ方向位置決め凹部47を形成しているので、円筒状穴部や長穴部48および高さ方向位置決め凹部47が破損したり傷ついたりする可能性は少ない。この場合、48の溝深さは47の溝深さより深い方が良い。これにより、高さ方向位置決め凹部により高さ方向位置決めがしやすくなる。(尚、これらと適合する載置台側の位置決めピンの高さによっても溝深さが決定される。)尚、図4(a)に示す突状の円筒状穴部や長穴部および高さ方向位置決め凹部と一体となったウエハ収納容器も、図4(b)において示すものと同様に、通常のインジェクション成形法で一体物として作成することも可能である。また、図4(a)と(b)を組み合わせて行うこともできる。さらに、図4(a)に示す部材を金属や耐摩耗性の高い高分子材料(たとえば、PEEK樹脂)を予め成形し、これらをウエハ収納容器本体の成形時にインサート成形により一体に成形しても良い。
【0036】
次に、レベルピン14で水平方向の粗い位置決めを行い、水平(方向)位置決めピンの挿入が容易にかつ確実に行う構造と方法について説明する。図5に示すように、レベル当接面を高さ方向位置決め凹部6の天井部81に設け、凹部6入口にテーパー82を設けてレベルピン14をガイドし、凹部6内側空間(穴部)にレベルピン14を導く。レベルピン14が全部(レベルピン14は通常3つ以上存在する)各凹部6のテーパー部82にガイドされて凹部6の内側に挿入された段階で、第1および第2水平位置決めピン12および13の先端が円筒状穴部4および長穴部5の入口部の高さに到達するように、凹部6、ピン12、13および14のテーパー部、及びそれらのピンの高さを設定する。このようにして、3つ以上のレベルピンが凹部に挿入されることにより、ウエハ収納容器の水平位置がレベルピンと凹部の遊びの範囲内に収まり、第1、第2水平位置決めピンが円筒状穴部、長穴部の所定位置近傍に位置し、それぞれに設けたテーパーによりスムーズに挿入される。この位置合わせ方法および構造は、凹部6入口のテーパー部によるレベルピン14のガイドおよび円筒状穴部4(または長穴部5)の入口のテーパー部による水平位置決めピンのガイドを用いた位置合わせであるので、2段ガイド位置合わせ方式と呼んでも良い。
【0037】
もっと具体的に説明する。載置台10の所望の場所に正確にウエハ収納容器が設置されることが必要であるが、ウエハ収納容器が搬送されて載置台10に設置される直前は、通常その位置が少しずれており、図5(a)に示すように、平坦領域であるレベル当接面を天井部81に有する高さ方向位置決め凹部6の入口のテーパー部82がレベルピン14の頂部86のテーパー部83に接触する。そして、テーパー部82および83により、ウエハ収納容器本体2は図5(a)における左下方向へ誘導される。次に、図5(b)に示すように、レベルピン14と凹部6のテーパー部分82および83の接触が終わり、ウエハ収納容器本体2はレベルピン14を凹部6内側に挿入しつつ下方に移動し、図5(c)に示すように、円筒状穴部4の入口部分が第1水平位置決めピン12に接する。すなわち、円筒状穴部4の入口部分もテーパー88になっていて、第1水平(方向)位置決めピン12の先端(頂部)87のテーパー部85と接触する。(長穴部5および第2水平(方向)位置決めピン13に関しても同様である。)ウエハ収納容器は円筒状穴部4と第1水平位置決めピン12のテーパー部分85と88に沿ってさらに左下方向に誘導される。このとき、図4(c)から分かるように、レベルピン14の側面は凹部6の内側面から少しずつ離れていく。
【0038】
次に、図5(d)に示すように、第1水平位置決めピン12と円筒状穴部4のテーパー部分85および88の接触が終わり、ウエハ収納容器は円筒状穴部4が第1水平位置決めピン12と嵌合状態を保って下方に移動する。このとき、図4(d)から分かるように、レベルピン14の側面は凹部6の内側面から完全に離れている。長穴部5および第2水平位置決めピン13に関しても同様であるから、この段階で水平方向の位置決めは完了する。また、凹部6の内側面はレベルピン14から少し離れながら下方に移動する。次に、図5(e)に示すように、レベルピン14の頂部86のレベル基準面にウエハ収納容器本体2の下面における凹部6の天井部81のレベル当接面が当接してウエハ収納容器の下降が終了し、高さ方向位置決めが完了する。尚、円筒状穴部4の天井部84は第1水平位置決めピン12の頂部87とは接触しない。(長穴部5および第2水平位置決めピン13に関しても同様である。)以上説明したように、レベルピン6の頂部86を利用して粗い位置決めを行い、第1水平位置決めピンの頂部87が円筒状穴部4の入口のテーパー部分88に導かれ、第1水平位置決めピンの円筒状穴部4への挿入が容易かつ確実となる。第2水平位置決めピンについても同様である。図5においては、各テーパー部の長さや角度を略同一に描かれているが、必要に応じてレベルピン14が挿入される凹部6の入口テーパー部分82を広くすることもできるし、第1水平位置決めピン6と円筒状穴部4のテーパー83の角度を急勾配にすることにより、挿入をスムーズにすることもできる。
【0039】
以上説明したように、レベル当接面はウエハ収納容器下面に設けられた凹部6の天井部81の平坦面であり、前記凹部6の入口および前記レベルピン頂部86にテーパーを設けている。また、レベルピン頂部86が前記凹部テーパー部82にガイドされてレベルピン14が前記凹部6内側に挿入された段階において、第1水平位置決めピン12および第2水平位置決めピン13の先端が円筒状穴部4および長穴部5の入口部の高さになるようにレベルピンのテーパー部83、凹部6、水平位置決めピン12および13、円筒状穴部4、および長穴部5の高さが設定されている。これらによって水平方向および高さ方向の位置決めがスムーズにかつ精度良く行われる。上述したように第1水平位置決めピンは円筒状穴部に嵌合しなければならないので、第1水平位置決めピンと円筒状穴部を精度良く位置合わせすることが必要となるが、本発明の2段ガイド位置合わせ方式を使用することにより、極めて簡単に精度良く第1水平位置決めピンと円筒状穴部の位置合わせをすることができる。また、第2水平位置決めピンと長穴部に関しても同様にして極めて簡単に精度良く位置合わせをすることができる。しかも簡単な構造で実現できることが特徴である。
【0040】
位置決めピンがウエハ収納容器の位置決め溝に入りウエハ収納容器1が載置台10に設置された後で、ウエハ収納容器1の開口部を閉じている蓋体3が取り外され、或いは開かれ、ウエハ収納容器1内に収納されたウエハを出し入れする。蓋体3をウエハ収納容器1から取り外すときや蓋体3をウエハ収納容器1にセットするときに、ウエハ収納容器本体2に横方向の力が作用する。特にウエハ収納容器1の開口部が横向きになっているときに大きい。たとえば、FOSB(Front Opening Shipping Box)のように、横方向の力で蓋体を押したとき、載置台10の水平面11に取り付けられたピンの位置により、ウエハ収納容器1の蓋体側の浮き上がりや、横方向の力のアンバランスという問題が生じる。横方向の力に対しては、主に第1および第2水平位置決めピンが関与する。
【0041】
そこで、本発明のウエハ収納容器においては、蓋体3を開閉するときのウエハ収納容器1の動きを抑えるため、ウエハ収納容器1の下面において、蓋体側(開口部)に隣接して円筒状穴部4および/または長穴5を取り付ける。或いは、円筒状穴部4および長穴5をウエハ収納容器1の蓋体3側から見た場合の左右の中央線上に配置する。図6(a)は左右の中央線19上に円筒状穴部4と長穴部5を設けた場合を示す。円筒状穴部4と長穴部5は逆の配置でも良い。或いは、図6(b)に示すように、円筒状穴部4と長穴部5を左右対称の位置に配置しても良い。これにより、蓋を開閉するときに左右対称の力がかかる場合に片側に偏った歪を起こすことを防止することができる。また図6(a)の場合には、円筒状穴部4はウエハ収納容器1の下面の蓋体側に隣接して配置されている。或いは、図6(b)の場合には、第1水平位置決めピン12と第2水平位置決めピン13の両方をウエハ収納容器1の下面の蓋体側に隣接して配置している。これにより、蓋を開閉するときにかかる力を受け、ウエハ収納容器前面の浮き上がりを防止するという効果もある。
【0042】
図10は、円筒状穴部4がウエハ収納容器1の重心Gの鉛直方向軸Vとウエハ収納容器下面7との交点にある場合を説明する図である。この場合にもウエハ収納容器1は安定して載置台にセットされる。図10は、ウエハ収納容器1の斜視図で内部も分かるようにしている。本発明に必要な部分のみを表示している。ウエハ収納容器1は、ウエハ収納容器本体2の開口部を蓋体3で蓋をしている。ウエハ収納容器本体2の1つの側面7がプロセス装置等における(ウエハ収納容器)載置台の水平面に対面して設置されるが、この側面7に載置台との位置合わせ手段、すなわち、円筒状穴部4、長穴部5、および高さ方向位置決め凹部6が取り付けられている。これらの側面に取り付けられた位置合わせ手段4、5、および6と対応した位置合わせ手段が載置台にも取り付けられていて、これらが適合して、載置台の所望の位置にウエハ収納容器1が設置される。
【0043】
ウエハ収納容器1の重心Gの位置から、ウエハ収納容器1が載置台に設置されたときに、鉛直方向軸V(z方向)と位置合わせ手段がとりつけられた面7との交点Cの近傍に水平方向位置合わせ手段が配置されると、重心Gのまわりのモーメントが最小化するので、ウエハ収納容器が極めて良く安定する。すなわち、水平方向位置合わせ手段4または5はC近傍に取り付けられている。(本発明で述べる近傍とは、約10mm以下、好適には約5mm以下の領域をいう。)ウエハ収納容器は通常蓋体が取り付けられた状態で載置台に設置されるので、ここで述べる重心とは蓋体3で蓋をされたウエハ収納容器1の重心である。さらに、ウエハ収納容器を載置台に設置するときは、ウエハ収納容器内にはウエハが入っている場合もあれば、入っていない場合もある。ウエハが入っているときとウエハが入っていないときとでは、ウエハ収納容器の重心位置は異なっている。また、溝板が分離できる状態になっている場合でも、溝板は通常ウエハ収納容器内に取り付けられた状態でセットされているので、溝板も含めた重心で規定する必要がある。
【0044】
ウエハ製造メーカーにおいては、主にウエハの入っていない空のウエハ収納容器にウエハを充填する。ウエハ購入メーカー(たとえば、デバイスメーカー)においては、主にウエハが充填されたウエハ収納容器からウエハを他のキャリアまたは装置へ移し代えて、最終的には空のウエハ収納容器となる。ウエハの入っていないウエハ収納容器は、ウエハのないものに比較するとかなり軽いので、ウエハ収納容器が搬送〜載置台設置の間で不安定になることは少なく、また、ウエハ収納容器が多少安定していなくともウエハが収納容器内にないので問題が発生することは少ない。従って、主として、ウエハが充填されているときの重心を考慮するだけで十分である。しかし、ウエハが一部だけ入っているときなども考慮しなければならないときには、重心として、ウエハが充填されているときの重心とウエハがないとき(空ウエハ)のときの重心との間の点を仮の重心として、好適にはそれらの間のほぼ中点付近を仮の重心として、上記の水平位置合わせ手段の位置を決定すれば良い。尚、重心Gは当然ウエハ収納容器内に存在する。
【0045】
尚、これまでの説明においては、主にウエハ収納容器下面がウエハ収納容器の1つの側面7になる場合を主に説明してきたが、ウエハ収納容器下面がウエハ収納容器の底面(ウエハ収納容器の開口部と対向する面)となる場合もある。このときには、これらの位置合わせ手段はウエハ収納容器の底面に取り付けられる。この場合、ウエハ収納容器が載置台に設置された時には、蓋体3は上方にあり、ウエハは上方を向いた収納容器本体の開口部から出し入れされる。また、このとき、ウエハ収納容器内において、ウエハは当然載置台水平面に対して垂直方向に配置されている。
【0046】
図11は、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)を有する位置決め手段を示した図である。共用ピン31は上部部分32と下部部分33が合体したピンであり、載置台11に取り付けられている。ウエハ収納容器側に取り付けられる位置決め手段は共用ピン31を受けるので、円筒状穴部と高さ方向位置決め凹部が共用されている。これを共用凹部36と呼ぶことにする。共用凹部36は基本的には円筒状穴部と同じく円筒状の穴である。共用凹部36の天井部35にレベル当接面(平坦領域)を設ける。共用ピンの下部部分33は、第1水平位置決めピン12と同様に、円柱形状になっていて、この円柱部が共用凹部36の円筒状穴部に内接して水平方向の位置決めを行う。共用ピン31の上部部分32は基本的にはレベルピン14と同様であり、その頂部34の平坦領域をレベル基準面として、レベル当接面に当接させることによりレベル決めを行うことができる。図11から分かるように、位置決めが完了したときには、共用ピン31の上部部分32と共用凹部36の側面との間には隙間(空間)が存在する。一方、共用ピンの下部部分33と共用凹部36の側面とはピッタリ嵌合している。また、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)および長穴部と高さ方向位置決め凹部を共用した共用凹部も同様である。これらにより、共用ピン31および共用凹部36を用いて、高さ方向位置決めと水平方向位置決めを一緒に行うことができることが分かる。尚、上述したレベルピン14のレベル基準面と同様に、頂部34のレベル基準面は通常平坦面であるが、線または点である場合もある。
【0047】
図12により、図11で示す共用ピン31および共用凹部36を用いて水平方向位置決めと高さ方向位置決めを行う方法について詳細に説明する。図12(a)に示すように、ウエハ収納容器本体2が下りてきて、共用凹部36の入口のテーパー部37に共用ピン31における頂部34の周縁部のテーパー部38が接触する。これらのテーパー部で滑ってウエハ収納容器本体2はさらに下降し、共用凹部36の内側空間に入っていき、図12(b)に示すように、共用ピン31の上部部分32の側面部が共用凹部36の内側面にガイドされながらウエハ収納容器本体2はさらに下降する。次に、図12(c)に示すように、共用凹部36の入口のテーパー部37が共用ピン31の上部部分32と下部部分33との結合部39に接触する。(共用ピン31の上部部分32の径は下部部分33の径より小さい。)この結合部39もテーパーになっているので、これらのテーパー部で滑って、共用ピン31はさらに共用凹部36の内側に入っていき、図12(d)に示すように、共用ピン31の下部部分33の円柱部側面が共用凹部36の側面に内接しながら下降していく。ここで、水平方向位置決めが完了する。最後に図12(e)に示すように、共用ピン31の頂部34のレベル基準面が共用凹部36の天井部35のレベル当接面に当接して、ウエハ収納容器本体2の下降が停止し、高さ方向の位置決めが完了する。
【0048】
上述の共用ピンは第2水平位置決めピンにも適用できるし、これと対応する共用凹部は長穴部にも適用できる。レベルピンは3つ以上必要であるが、これらのレベルピンのうち1つまたは2つを第1水平位置決めピンと第2水平位置決めピンと共用できる。また対応する円筒状穴部と長穴部を高さ方向位置決め凹部のうちの1つまたは2つと共用できる。従って、全体のピン数および穴部を少なくすることができ、構造が簡単になる。尚、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用する共用ピンの下部部分はと嵌合する円柱形状であるが、上部部分は必ずしも円柱形状である必要はない。たとえば、角柱形状、断面が曲線の柱状でも良い。また、長穴部と高さ方向位置決め凹部を共用する共用凹部の形状は、基本的に長穴部と同じ形状となる。これに対応する第2水平位置決めピンとレベルピンを共用する共用ピンの下部部分は、上述した第2水平位置決めピンの形状と同様であるが、上部部分はこれと類似である必要はない。上部部分は円柱形状がより好適ではあるが、たとえば、角柱形状、断面が曲線の柱状でも良い。
【0049】
本発明において記載したウエハは、半導体用基板だけでなく、ガラス、セラミック、プラスティック等の絶縁基板、或いは金属板なども含まれる。必ずしも円板形状である必要はなく、正方形形状、長方形形状、多角形形状、楕円形状などの板状体であっても良い。ウエハ収納容器の材質も高分子材料である必要もなく、金属製やセラミック製、これらの複合材料から形成されていても良い。また、本発明を適用できる産業分野も半導体産業だけでなく、太陽電池その他の薄い基板を用いる分野においても本発明を適用できる。また、上述の各実例および実施形態のそれぞれの説明において、各所に記載しなかった内容についても、お互いに矛盾がない限りにおいて適用できることも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ収納容器を使用する半導体産業等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明における収納容器の1つの面に取り付けられた位置合わせ手段と、載置台に取り付けられた位置合わせ手段との関係について説明する図である。
【図2】図2は、本発明における載置台の水平面にウエハ収納容器本体が設置された状態を示す図である。
【図3】図3は、本発明のウエハ収納容器が載置台に設置されたときの底面図、立面図および側面図である。
【図4】図4は、本発明のウエハ収納容器下面に取り付けられた円筒状穴部、長穴部および高さ方向位置決め凹部の1例を示す図である。
【図5】図5は、本発明における水平(方向)位置決めピンの挿入を容易にかつ確実に行う構造と方法について説明する図である。
【図6】図6は、本発明における第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピンの配置を示す図である。
【図7】図7は、従来のウエハ収納容器を示す図である。
【図8】図8は、従来用いられている、ウエハ収納容器のV字型長溝にウエハ収納容器載置台のKC−ピンがはまった状態を模式的に示した図である。
【図9】図9は、本発明の円筒状穴部と長穴部の位置関係について説明する図である。
【図10】図10は、本発明の位置決め手段を取り付けたウエハ収納容器の斜視図である。
【図11】図11は、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)を有する位置決め手段を示した図である。
【図12】図12は、図11で示す共用ピンおよび共用凹部を用いて水平方向位置決めと高さ方向位置決めを行う方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ウエハ収納容器、2 ウエハ収納容器本体、3 蓋体、
4 位置合わせ手段(円筒状穴部)、5 位置合わせ手段(長穴部)、
6 位置合わせ手段(高さ方向位置決め凹部)、7 ウエハ収納容器本体側面、
10 載置台、11 載置台水平面、
12 位置合わせ手段(第1水平(方向)位置決めピン)、
13 位置合わせ手段(第2水平(方向)位置決めピン)、
14 位置合わせ手段(レベルピン)、16 長穴溝平行部、
21 ウエハ収納容器本体側面、22 トップフランジ、23 ウエハ、
31 共用ピン、32 共用ピンの上部部分、33 共用ピンの下部部分、
34 共用ピンの頂部、35 共用凹部の天井部、36 共用凹部、
41 ウエハ収納容器、42 部材、43 高さ方向位置決め凹部、
44 部材、45 円筒状穴部、長穴部、46 ウエハ収納容器、
47 高さ方向位置決め凹部、48 円筒状穴部、長穴部、
60 ウエハ収納容器、61 ウエハ収納容器本体、62 蓋体、
66 長溝部材、71 KC−ピン、
72 キネマティックカップリング(V字型長溝)、
81 凹部の天井部、82 テーパー部、83 テーパー部、
84 円筒状穴部の天井部、85 テーパー部、86 レベルピンの頂部、
87 第1水平位置決めピンの頂部、88 テーパー部、
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ収納容器を収納容器載置台に安定して取り付けるための位置決め手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のLSI(集積回路)の発展はめざましいものがあり、最小線幅40nm以下の量産LSIも登場していて、微細化の限界が近づきつつあるとは言え、「半導体の集積密度は3年で4倍になる」というムーアの法則は今後も持続すると予想されている。これに伴い1つのLSIチップに収納される情報量も大きく伸びて、チップサイズも増大していく傾向が続いている。また、微細化が進むに従いプロセスが複雑化し、ウエハ製造コストの増大も問題になっている。
【0003】
これらの課題に対応するためウエハの大口径化を行い、1枚のウエハからの取れ個数(CPW)を増やすことにより、1チップ当たりのコストの増大を低下または抑制することも検討されてきている。現状の最先端LSI工場におけるウエハサイズの主力は300mm径であるが、2010年代には450mmウエハサイズのLSI量産工場も計画されていて、将来もウエハサイズの大口径化は必然と考えられる。
【0004】
このウエハサイズの大口径化に従い、ウエハを保管し搬送するウエハ収納ケースも大型化していく。現在の量産レベルで使用している300mmウエハの場合、ウエハ収納容器からウエハを出し入れするときは、ウエハを水平にして行うことが主流であるから、ウエハをウエハ収納容器に保管したり搬送したりするときにも、ウエハ面を水平にした状態で行う。しかし、300mmを超えるウエハサイズになって来るとウエハの自重による撓みが大きくなり、現状のウエハ収納容器における収納ウエハピッチである10mmでは上下にあるウエハが接触する危険性がある。このピッチを増大すれば接触問題については解決するが、ウエハ収納容器がさらに大型化したり、1つのウエハ収納容器あたりのウエハ収納枚数が少なくなったりするという新たな問題が発生する。
【0005】
こうした問題を防止するために、ウエハを縦置きに保管し、搬送するということも提案されている。これによりウエハの自重によるウエハの撓みが防止できるという利点はあるものの、ウエハを縦置きでウエハ収納容器から出し入れするためには、ウエハ収納容器を載せて固定するウエハ収納容器載置台に正確に(水平方向および高さ方向において)ウエハ収納容器を設置することが要求されている。たとえば、水平方向の位置合わせが少しでも狂うとウエハを立てて取り出すことができなくなるし、高さ方向がバラツクとウエハ収納容器の安定度が悪くなって傾き、ウエハの出し入れ時に破損または損傷する可能性がある
【0006】
図7は従来のウエハ収納容器の外観を示す図である。本発明の説明に必要な部分のみを示す。ウエハ収納容器60はウエハ収納容器本体61の開口部に蓋体62で蓋をしている。ウエハ収納容器60がウエハ収納容器載置台にセット(設置)され、蓋体62がウエハ収納容器60から取り外され、ウエハの出し入れが行われる。ウエハ収納容器載置台にセットされるウエハ収納容器本体61の1つの側面には、キネマチィックカップリングであるV字型の長溝部材66が3か所に取り付けられている。(特許文献1を参照)一方ウエハ収納容器載置台には円柱形状のキネマティックカップリングピンが取り付けられていて、このキネマチィックカップリングピンが長溝部材66のV字溝にはまり、ウエハ収納容器60がウエハ収納容器載置台にセットされる。すなわち、従来は、3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)とウエハ収納容器載置台側からのキネマチィックカップリングピンで位置決めをしている。図7に示すウエハ収納容器60では、蓋体62がウエハ収納容器載置台の水平面に対して垂直にセットされ、その後で蓋体62がウエハ収納容器60から取り外され、ウエハ収納容器本体61内部にウエハが出し入れされる。ウエハはウエハ収納容器載置台に対して水平または垂直になり出し入れされる。
【特許文献1】特開H11−513347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示すようなウエハ収納容器60のV字型長溝66にウエハ収納容器載置台のキネマティックカップリングピン(以下、KC−ピン)を合わせる位置合わせ方式は、300mmウエハ収納容器などの位置決めに用いられている。しかし、このような位置決めタイプは、KCピンをV字型長溝に合わせれば良いだけなので位置決めを容易に行うことができるという利点があるが、高さ方向と水平方向の位置合わせについて同じ手段を用いて、高さ方向と水平方向の位置決めを同時に行うために、寸法が安定せず、キネマティックカップリング面の滑り性の問題もあり、正確な位置合わせが難しいという問題がある。
【0008】
図8は、図7で示すウエハ収納容器60のV字型長溝66にウエハ収納容器載置台のキネマティックカップリングピン(以下、KC−ピン)がはまった状態を模式的に示したものである。この図8に示すように、3か所のKC−ピン71(71−1〜3)と3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)72(72−1〜3)との対応位置関係(高さ方向および水平方向)が少しでもずれて、たとえば、KC−ピン71−1が対応するV字型長溝72−1にうまくはまりこんでも、KC−ピン71−3が、対応するV字型長溝72−3にうまくはまらず、V字型溝のV字斜面にかかってしまうと、高さが調整できず、ウエハ収納容器が傾いてしまう。この結果、ウエハも傾いてしまうので、ウエハ収納容器からウエハを出し入れするときに精度良く取り出せなくなってしまう。特にウエハが縦置き、すなわち、ウエハ収納容器載置台に対してウエハが垂直になっている時にも、ウエハの位置ずれが大きくなりウエハ出し入れ時にウエハに損傷を与える可能性もある。
【0009】
さらに、KC−ピンによって、V字型長溝のV字面が削れ、窪みができたりして、位置決め精度を保証できなくなる。また、3か所のキネマティックカップリング同士の位置が離れているほど、ウエハ収納容器が安定すると考えられるが、一方で3か所のキネマティックカップリング同士の距離が離れるに従って各位置精度を保証することが加工精度上難しくなってくる。この結果、上述したように、3か所のKC−ピンと3か所のキネマティックカップリング(V字型長溝)との対応位置関係(高さ方向および水平方向)にズレが大きくなってしまい、ウエハ収納容器載置台にセットされたウエハ収納容器が浮き上がったりして、上記問題点がさらに顕在化する。
【0010】
ウエハが大口径化し、ウエハ収納容器が大きくなると、キネマティックカップリング(V字型長溝)とK−Cピンで位置決めを行うことが益々難しくなり、ウエハ収納容器を正確な位置に位置決めすることが不可能になる。ウエハ収納容器はポリカーボネート等の高分子材料のインジェクション成形により製作されるが、不可避的に発生する成形収縮は距離に比例して大きくなる。たとえば、450mm径ウエハ用のウエハ収納容器の位置決めは、300mm径ウエハ用のウエハ収納容器の位置決めに比較して約1.5倍の精度が要求される。従って、300mm径を超えるサイズのウエハ用のウエハ収納容器においては、従来用いられているキネマティックカップリング(V字型長溝)とK−Cピンによる位置決め方式に代わる精度の良い位置決め方式が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ウエハ収納容器をウエハ収納容器載置台に精度良く設置するためにウエハ収納容器およびウエハ収納容器載置台に取り付けられた位置決め手段に関する。特に、今後ウエハの大きさが450mm以上に拡大されていく方向にあり、ウエハ収納容器の重量も大きく増大するために、300mm以上の大口径ウエハを搭載するウエハ収納容器の装置載置台への設置における位置決めの確実性および迅速な位置決めが要求されているが、本発明はこれらの要求にこたえる位置決め手段を提供するものである。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は以下のような手段を講じている。
本発明のウエハ収納容器は略六面体の外形を有し、その1つの面にウエハを出し入れする開口部および前記開口部を塞ぐ蓋体を有し、ウエハ収納容器が載置する載置台に、側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを有する。そして、ウエハ収納容器は、前記載置台に載置されるウエハ収納容器下面に、前記第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、前記第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、および前記レベルピン各々が当接する前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面を有する。
【0013】
また、前記レベル当接面は前記ウエハ収納容器下面に設けられた凹部の天井部の平坦面であり、前記凹部の入口および前記レベルピン頂部の端部にテーパーが設けられている。前記レベルピン頂部が前記凹部テーパー部にガイドされて前記レベルピンが前記凹部内側に挿入された段階において、前記第1および第2水平位置決めピンの先端が前記円筒状穴部および長穴部の入口部の高さになるように前記レベルピンテーパー部、前記凹部、前記水平位置決めピン、前記円筒状穴部、および前記長穴部の高さが設定されている。さらに、前記第1水平位置決めピンおよび/または前記第2水平位置決めピンの頂部の平面によっても高さ方向のレベルを決めることもできる。或いは、前記円筒状穴部および/または前記長穴部を前記ウエハ収納容器開口部付近に設けることもでき、或いは、前記ウエハ収納容器開口面左右の中央線上に前記円筒状穴部および/または前記長穴部を設けることもでき、或いは、前記円筒状穴部と前記長穴部を収納容器開口面左右の対称位置に配置することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位置決め手段を取り付けたウエハ収納容器を用いることにより、ウエハ収納容器を設置する装置側の収納容器載置台へ精度良くウエハ収納容器を設置し確実に所望の場所に設置できる。位置合わせ精度が良くなり、繰り返し設置位置の再現性が上がり、ウエハ収納容器が浮き上がったり傾いたりすることがなくなる。本発明の位置決め手段は構造が単純であり作製や取り付けが簡単である。また、円筒状穴部と長穴部における内面筒面を位置決めに使用するため、摩耗が殆どなく、繰り返し使用の耐久性に優れている。特に、載置台とウエハ容器の最下部で高さ方向の位置決めをする場合、ウエハ容器の最下部の損傷により、レベル出しが不正確になるおそれがあるが、レベル当接面は、ウエハ容器の最下部がより高い位置に配置されるので、通常の使用において最下部が損傷を受けてもレベル当接面が損傷を受けることはなく、正確なレベル出しが可能になる。さらに、レベルピンと高さ方向位置決め凹部を用いて水平方向の粗い位置決めを行うことができるので、位置決めがスムーズにしかも確実に精度良く行うことができる。また、水平方向位置決め手段と高さ方向位置決め手段を兼用できるので、ピン数を減らすことができその構造も簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明における収納容器の1つの面に取り付けられた位置合わせ手段と、載置台に取り付けられた位置合わせ手段との関係について説明する図である。ウエハ収納容器1は、略六面体の外形を有し、その1つの面であるウエハ収納容器本体2の開口部を蓋体3で蓋をしている。蓋体3はその内側にウエハ押さえ用のリテーナを有している。また、ウエハ収納容器本体2内部にはウエハ支持部材(溝板)を有していて、ウエハ収納容器本体2内においてウエハを支持している。ウエハ支持部材はウエハ収納容器本体2と一体となっている場合もあれば、別部材としてウエハ収納容器本体2内にセットされる場合もある。図1において、ウエハ収納容器本体2の1つの側面がプロセス装置等における(ウエハ収納容器)載置台の水平面に対面して設置されるが、この側面7に載置台との位置合わせ手段4、5、および6が取り付けられている。これらの側面に取り付けられた位置合わせ手段4、5、および6とそれぞれ対応した位置合わせ手段12、13、および14が載置台にも取り付けられていて、これらが適合して、載置台の所望の位置にウエハ収納容器1が設置される。
【0016】
位置合わせ手段4および5は、載置台の水平面との水平方向位置合わせ手段であり、ウエハ収納容器の水平方向位置を決定する。位置合わせ手段6は、載置台の水平面と垂直方向、すなわち高さ方向の位置合わせ手段であり、ウエハ収納容器の高さを決定する。図1においては、水平方向位置合わせ手段4および5は、高さ方向位置合わせ手段と異なる位置に存在する。すなわち、高さ方向の位置合わせと水平方向(x−y方向)の位置合わせを別個に行う。しかし、後述するように水平方向位置決め手段を高さ方向位置決め手段と兼用しても良い。高さ方向位置合わせ手段は3つ以上取り付けられる。2つ以下では高さ方向を安定して合わせこむことができないので、3つ以上必要となる。(ただし、高さを決定する部分の面積はそれ程広くないものとする。)図1においては、高さ方向位置合わせ手段は4か所(14−1〜4)に取り付けられている。また、水平方向位置合わせ手段は4および5の2か所に取り付けられている。
【0017】
本発明において、ウエハ収納容器に取り付けられる水平方向位置合わせ手段の一つである4は、凹部形状で円筒形状の穴になっている(円筒状穴部)。これに対応する載置台の位置合わせ手段12は、円柱状のピン(第1水平位置決めピン)となっていて、円筒状穴部4に嵌合する。すなわち、円筒状穴部4の内径は第1水平位置決めピン12の直径とほぼ等しい。実際には、第1水平位置決めピン12が円筒状穴部4にピッタリ嵌るようになっているので、第1水平位置決めピン12の直径は円筒状穴部4の内径よりわずかに小さい。また、円筒状穴部4および第1水平位置決めピンの(断面形状の)円形は水平面位置を決定するので、精度良く、できるだけ円形に近い方が良い。円柱状ピン12が円筒状穴部4に嵌合すると、他のピン13や14がなければ、ウエハ収納容器1は水平方向に回転する。すなわち、第1水平位置決めピンの側面によって、水平方向の位置決めを決定している。
【0018】
もう1つの水平方向位置決め手段である5も凹部形状で長穴溝である(長穴部)。ここで述べる「長穴」とは、この開口部を形成する周縁部分において互いに平行な直線部を開口長さL方向に有する開口部をいう。(図9参照)すなわち、この直線部(平行部)間距離が、短径(一方の径)の長さと等しくなる。これらの直線部の端部間を結ぶ周縁部分は、直線であってもよく、曲線(例えば円弧状)であっても良い。この長穴部5に、載置台11に取り付けられた第2水平位置決めピン13が挿入される。すなわち、第2水平位置決めピン13が挿入される長穴部5は、一方向に略平行な面を有し、その方向には第2水平位置決めピン13と相対位置を変える事ができ、その直角方向には第2水平位置決めピン13との相対位置は規制される。第2水平位置決めピン13の形状は、円柱形、四角柱、或いは平行側面を有する柱状である。或いは、長穴形状と同一形状でも良い場合もある。好適には円柱形であり、その場合、長穴部5の平行部の距離は円柱形ピンの直径とほぼ等しくピッタリ適合できるようになっている。(実際には、第2水平位置決めピン13が長穴部5の平行部にピッタリ嵌るようになっているので、第2水平位置決めピン13の直径は長穴部5の平行部の距離よりわずかに小さい。)すなわち、第2水平ピンの側面によって、水平方向の位置決めが決定されている。長穴部5と第2水平位置決めピン13の適合は、円形凹部4および第1水平位置決めピン12の嵌合による水平方向の回転を規制するので、ウエハ収納容器1は載置台10の水平面11における水平方向に精度良く確実に固定される。
【0019】
円筒状穴部4の中心と長穴部5の中心を結ぶ直線は、長穴部5の平行部の端面と平行であるときが、ウエハ収納容器1は最も水平方向に精度良く確実に規制される。図9はこのような場合の円筒状穴部4と長穴部5の位置関係について説明する図である。長穴部5の中心とは、長手方向の中心軸mと短辺(径)側中心軸nとの交点Pを言う。2つの短径側円弧(または曲線や直線)は必ずしも対称でなくとも良いので、短径の長さが異なることがあるが、その場合は平行部(端面16(16−1)と16(16−2)で規定される)の矩形形状の中心または対角線の交点と考えても良い。「円筒状穴部4の中心と長穴部5の中心を結ぶ直線は、長穴部5の平行部の端面と平行であるとき」とは、「円筒状穴部4の中心OとPを結ぶ直線mが16−1および16−2に平行であるとき」である。すなわち、このときは、中心軸mの方向は長穴部5における平行部の端面方向Lである。
【0020】
第2水平位置決めピン13として円柱状ピンが長穴部5に挿入されているとき、長穴部5の長手方向(m方向)には移動するが、mと直角方向のn方向には殆ど移動できない。円柱状ピン13の径と長穴部5の短径(すなわち、平行部の距離(16−1と16−2の距離))とはほぼ等しいので、それらのクリアランス程度の移動があるだけである。しかし、m方向に関しても、円筒状穴部4に第2水平位置決めピン12として円柱状ピンが嵌合しているときは、殆ど移動できず、それらのクリアランス程度の移動があるだけである。従って、これら2つの位置決め手段によって、水平方向は確実に固定できる。
【0021】
m軸と平行部16との平行度が悪くなるに従い、(平行部16の方向がm軸と傾き、m軸とL方向との角度が大きくなるに従い、)水平方向の移動も大きくなるので、m軸と平行部16が平行になるときが最も移動量が小さいことが分かる。円筒状穴部4と長穴部5が離れても、m軸と平行部16が平行になっていれば、水平方向の移動量は変わらないので、従来の方式に比べて、位置決め手段5の取り付け場所の自由度が大きいという利点もある。逆に言えば、位置決め手段5がウエハ収納容器1の側面7の周縁にあって、円筒状穴部4より離れていても、水平方向の位置合わせが精度良く確実に固定できる。尚、m軸と平行部16との平行度(m軸とL方向との角度)は、レイアウト上の都合から、少しずれる場合もあるが、10度程度は許容される。
【0022】
図1に示すように、ウエハ収納容器1側の高さ方向の位置決め手段6も凹部(「高さ方向位置決め凹部」とも記載)であり、好適には円筒形状溝穴で、載置台10の高さ方向の位置決め手段であるレベルピン14(高さ方向の位置(レベル)を決めるという意味で、「レベルピン」と呼ぶ)が高さ方向位置決め凹部6に入り、ウエハ収納容器1の高さを規定する。すなわち、高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域であるレベル当接面にレベルピン14の上端(頂部)の平坦面(レベル基準面)が当接して高さ方向位置決めが行われる。
【0023】
レベルピン14の形状は、たとえば円柱状であり、先端部(頂部)は略円弧状、球状または平坦状になっている。高さ方向位置決め凹部6の内側底面部(天井部)を摩耗させない(通常、載置台10側の位置決めピン14等は硬質の金属製であるが、ウエハ収納容器1側の凹部6等は高分子製であるから、ウエハ収納容器1の凹部6等がより摩耗しやすい)ために、平坦状が望ましい(平坦状の場合が単位面積当たりの負荷が最も小さい)が、ウエハ収納容器1を繰り返し用いなければ、平坦状でなくても良い。従ってレベル基準面は通常平坦面であるが、線や点である場合もある。高さ方向位置決め凹部6の内部空間(穴部)は、通常、レベルピン14よりも大きい。たとえば、レベルピン14が円柱状で、高さ方向位置決め凹部6も円筒状穴の場合、凹部6の穴径は、これに入るレベルピン14の直径より大きくなっている。従って、水平方向の位置が多少ずれてもレベルピン14は高さ方向位置決め凹部6に容易に入り込むことができる。後述するように、高さ方向位置決め凹部6の入口部がテーパー(斜面)になっている場合には、水平方向の位置がずれてレベルピン14の先端が接触しても、このテーパーでガイドされてスムーズにレベルピン14が高さ方向位置決め凹部6の内側空間(穴部)に入る。
【0024】
図1においては、4つ(またはウエハ収納容器1側と載置台10側との組み合わせで言えば4組)の高さ方向位置決め手段(6−1〜4および14−1〜4)を記載しているが、上述したように3つの高さ方向位置決め手段であっても良い。ただし、その場合、高さのバランスを保つには、3つの高さ方向位置決め手段で構成される三角形の内部に、ウエハ収納容器1の重心から下ろした鉛直軸とウエハ収納容器下面7との交点が存在することが必要である。(ここで、ウエハ収納容器下面とは、ウエハ収納容器1を載置台10に置いた時に載置台10の水平面(載置台上面)11に面したウエハ収納容器1の面である。従って、ウエハ収納容器1の下面に位置決め手段が取り付けられる。)特にこの交点が三角形の重心と一致するときが最も安定性が良い。高さ方向位置決め手段が4つの場合にも、高さのバランスを保つには、それらで構成される四角形の内部に、ウエハ収納容器1の重心から下ろした鉛直軸とウエハ収納容器下面7との交点が入っていることが必要である。特にこの交点が四角形の重心と一致するときが最も安定性が良い。
【0025】
尚、ウエハ収納容器側の高さ方向位置決め凹部6は円筒形状でなくても良く、その断面穴形状が矩形や多角形、楕円形状などでも良い。また、入口部が広く天井部が狭くなっていても良い。さらに、高さ方向位置決め凹部6の天井部は周囲が側面で完全に囲まれていなくても良い。たとえば、高さ方向位置決め凹部6の天井部を囲む壁面の一部を除去しても良い。
【0026】
載置台10側のレベルピン14も円柱状である必要はなく、断面が矩形や多角形、楕円形などでも良い。また先端部が狭く底部が広い台形状であっても良い。必要なことは、レベルピン14がウエハ収納容器1側の高さ方向位置決め凹部6にスムーズに入り込み、レベルピン14のレベル基準面が凹部6の当接面に当接すれば良い。
【0027】
図1において両矢印破線で示すように、ウエハ収納容器1の側面7に取り付けられた円筒状穴部4、長穴部5および高さ方向位置決め凹部6(6−1〜4)がそれらに対応する載置台10の水平面11に取り付けられた水平(方向)位置決めピン12、13およびレベルピン14(14−1〜4)と適合する。また、第1水平位置決めピン12、第2水平位置決めピン13およびレベルピン14のピンは、ウエハ収納容器の接触部を損傷しないこと、或いは、後述するように所定の穴部にスムーズに挿入することなどのために、それらの角を落とすか、或いはテーパーをつけている。
【0028】
図2は、載置台10の水平面11にウエハ収納容器本体2が設置された状態を示す。蓋体3は取り外して収納容器の内部が見えるようになっている。ウエハ収納容器本体2は載置台10に完全に接している分ではなく、通常は少し浮いた状態になっている。これは、ウエハ収納容器の側面がかならずしも平坦ではない(位置決め手段が突状に付いている場合もある)こと、蓋体3の取り外しを容易にすること、ハンドリング用治具やウエハを操作しやすくすることなどのためである。浮いたときの高さは、高さ方向位置決め手段によって決定される。ウエハ23は、ウエハ収納容器本体2に収納されているが、図2においては、垂直に収納されている。高さ方向の位置決めが不十分であると、この垂直になったウエハ23は位置ずれする可能性がある。ウエハ収納容器本体2に収納されたウエハ23を取り出すために、ハンドリング用のフォークが収納されたウエハ同士の間に入ってウエハを吸着して取り出す。水平方向の位置決めが不十分であるとフォークがウエハに接触してウエハを破損する可能性があるが、本発明を用いることにより、このようなことは発生しない。当然、ウエハがウエハ収納容器本体2に水平に入っているときも同様のことが言える。
【0029】
尚、図2に示されるように、位置決め手段が取り付けられたウエハ収納容器本体2の1つの側面7の反対側における側面21に、トップフランジ22が取り付けられていて、このトップフランジ22を用いて、ウエハ収納容器1またはウエハ収納容器本体2を搬送し、ハンドリングできる。
【0030】
図3はウエハ収納容器1が載置台10に設置されたときの底面図、立面図および側面図である。図3(a)は、載置台10の水平面11から(下方から)見たウエハ収納容器1の底面図であり、図3(b)は、ウエハ収納容器1が載置台10に設置されたときの、レベルピン14とそのピンが当接する高さ方向位置決め凹部6、第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4、第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入される長穴部5を横方向から透視して見た立面図(一部のみ示す)である。図3においては、レベルピン14は4つ(14−1〜4)配置されている。レベルピン14に対応して高さ方向位置決め凹部6も4つ(6−1〜4)配置されている。レベルピン14は高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域(レベル当接面)と当接し、高さ方向位置を決定している。レベルピン14は、水平方向に関しては高さ方向位置決め凹部6との間に隙間(空間)があり余裕がある。
【0031】
従って、レベルピン14が当接する高さ方向位置決め凹部6の天井部の平坦領域(レベル当接面)は水平方向の位置合わせで必要な領域よりも広い。すなわち、レベル当接面は対応するレベル基準面の面積および水平方向の位置合わせ余裕面積を合わせた領域よりも広い面積を持ち、多少のずれがあっても高さレベルが保持される。そうでなければ、高さ方向位置が変わってしまう恐れがある。第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4および第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入する長穴部5に関しては、重なって示されているが、この方向から見た図では同じ状態となる。図3(b)における左右方向に関しては、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13もそれぞれ円筒状穴部4および長穴部5にぴったり適合しており、ウエハ収納容器1は動かない。すなわち、これらの水平位置決めピンの側面およびこれらの穴部の内側面によって水平方向の位置合わせが行われている。また、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13の上端(頂部)はウエハ収納容器下面とは接触していないので、第1水平位置決め用円柱状ピン12および第2水平位置決め用円柱状ピン13によって高さ方向位置決めは行われない。
【0032】
図3(c)は図3(b)の方向と直角の横方向から見た側面図である。第1水平位置決め用円柱状ピン12とそのピンが嵌合する円筒状穴部4の状態は図3(b)の図と同じであるが、第2水平位置決め用円柱状ピン13とそのピンが挿入する長穴部5の状態に関しては、長穴部5の長手方向(図3(c)の左右方向)と第2水平位置決め用円柱状ピン13の間には隙間(空間)があり、一定程度移動できる。しかし、第1水平位置決め用円柱状ピン12と円筒状穴部4はぴったり嵌合しており、図3(c)の左右方向にも移動しない。すなわち、この方向においては、第1水平位置決めピンの側面および円筒状穴部の内側面によって水平方向の位置合わせが行われている。また、第1水平位置決め用円柱状ピン12も第2水平位置決め用円柱状ピン13の上端(頂部)はウエハ収納容器下面とは接触していない。従って、第1水平位置決め用円柱状ピン12および第2水平位置決め用円柱状ピン13によって高さ方向位置決めは行われない。
【0033】
図3において上述したように、載置台10のレベルピン14(14−1〜4)はウエハ収納容器1の高さ方向位置決め凹部(6−1〜4)に入り、レベルピン14の頂部のレベル基準面が高さ方向位置決め凹部6の天井部のレベル当接面に当接して高さ方向位置決めを行う。円柱形状のレベルピン14の直径は、円筒形状の凹部6の内径より小さいため、レベルピン14は容易に凹部6に入る。また、図3から分かるように、レベル当接面は、ウエハ収納容器1の最下部より高い位置に配置されている。載置台とウエハ収納容器の最下部で高さ方向の位置決めをする場合、ウエハ収納容器の最下部の損傷により、レベル出しが不正確になるおそれがあるが、レベル当接面は、ウエハ収納容器の最下部より高い位置に配置されるので、通常の使用においてウエハ収納容器の最下部が損傷を受けてもレベル当接面が損傷を受けることはなく、正確なレベル出しが可能になる。
【0034】
図4はウエハ収納容器下面に取り付けられた円筒状穴部、長穴部および高さ方向位置決め凹部の1例を示す。図4(a)に示すように、円筒状穴部や長穴部45が設けられた部材44および高さ方向位置決め凹部43が設けられた部材42をウエハ収納容器下面41に取り付けている。部材44の高さは部材42の高さより低い方が良い。或いは、45の溝深さは43の溝深さより深い方が良い。(尚、これらと嵌合する載置台側の位置決めピンの高さによっても溝深さや部材高さが決定される。)すなわち、レベルピンの頂部のレベル基準面が高さ方向位置決め凹部の天井部の当接面に当接したときに、第1水平(方向)位置決めピンおよび第2水平(方向)位置決めピンの頂部が円筒状穴部および長穴部の天井部に接触しないようにする。これらにより、部材42により高さ方向位置決め精度が確保される。
【0035】
しかし、図4(a)においては、円筒状穴部や長穴部45が設けられた部材44や高さ方向位置決め凹部43が設けられた部材42はウエハ収納容器下面41に突状に付いているので、部材42や部材44が破損したり傷ついたりする可能性がある。これに対して、図4(b)においては、ウエハ収納容器下面46内に、円筒状穴部や長穴部48および高さ方向位置決め凹部47を形成しているので、円筒状穴部や長穴部48および高さ方向位置決め凹部47が破損したり傷ついたりする可能性は少ない。この場合、48の溝深さは47の溝深さより深い方が良い。これにより、高さ方向位置決め凹部により高さ方向位置決めがしやすくなる。(尚、これらと適合する載置台側の位置決めピンの高さによっても溝深さが決定される。)尚、図4(a)に示す突状の円筒状穴部や長穴部および高さ方向位置決め凹部と一体となったウエハ収納容器も、図4(b)において示すものと同様に、通常のインジェクション成形法で一体物として作成することも可能である。また、図4(a)と(b)を組み合わせて行うこともできる。さらに、図4(a)に示す部材を金属や耐摩耗性の高い高分子材料(たとえば、PEEK樹脂)を予め成形し、これらをウエハ収納容器本体の成形時にインサート成形により一体に成形しても良い。
【0036】
次に、レベルピン14で水平方向の粗い位置決めを行い、水平(方向)位置決めピンの挿入が容易にかつ確実に行う構造と方法について説明する。図5に示すように、レベル当接面を高さ方向位置決め凹部6の天井部81に設け、凹部6入口にテーパー82を設けてレベルピン14をガイドし、凹部6内側空間(穴部)にレベルピン14を導く。レベルピン14が全部(レベルピン14は通常3つ以上存在する)各凹部6のテーパー部82にガイドされて凹部6の内側に挿入された段階で、第1および第2水平位置決めピン12および13の先端が円筒状穴部4および長穴部5の入口部の高さに到達するように、凹部6、ピン12、13および14のテーパー部、及びそれらのピンの高さを設定する。このようにして、3つ以上のレベルピンが凹部に挿入されることにより、ウエハ収納容器の水平位置がレベルピンと凹部の遊びの範囲内に収まり、第1、第2水平位置決めピンが円筒状穴部、長穴部の所定位置近傍に位置し、それぞれに設けたテーパーによりスムーズに挿入される。この位置合わせ方法および構造は、凹部6入口のテーパー部によるレベルピン14のガイドおよび円筒状穴部4(または長穴部5)の入口のテーパー部による水平位置決めピンのガイドを用いた位置合わせであるので、2段ガイド位置合わせ方式と呼んでも良い。
【0037】
もっと具体的に説明する。載置台10の所望の場所に正確にウエハ収納容器が設置されることが必要であるが、ウエハ収納容器が搬送されて載置台10に設置される直前は、通常その位置が少しずれており、図5(a)に示すように、平坦領域であるレベル当接面を天井部81に有する高さ方向位置決め凹部6の入口のテーパー部82がレベルピン14の頂部86のテーパー部83に接触する。そして、テーパー部82および83により、ウエハ収納容器本体2は図5(a)における左下方向へ誘導される。次に、図5(b)に示すように、レベルピン14と凹部6のテーパー部分82および83の接触が終わり、ウエハ収納容器本体2はレベルピン14を凹部6内側に挿入しつつ下方に移動し、図5(c)に示すように、円筒状穴部4の入口部分が第1水平位置決めピン12に接する。すなわち、円筒状穴部4の入口部分もテーパー88になっていて、第1水平(方向)位置決めピン12の先端(頂部)87のテーパー部85と接触する。(長穴部5および第2水平(方向)位置決めピン13に関しても同様である。)ウエハ収納容器は円筒状穴部4と第1水平位置決めピン12のテーパー部分85と88に沿ってさらに左下方向に誘導される。このとき、図4(c)から分かるように、レベルピン14の側面は凹部6の内側面から少しずつ離れていく。
【0038】
次に、図5(d)に示すように、第1水平位置決めピン12と円筒状穴部4のテーパー部分85および88の接触が終わり、ウエハ収納容器は円筒状穴部4が第1水平位置決めピン12と嵌合状態を保って下方に移動する。このとき、図4(d)から分かるように、レベルピン14の側面は凹部6の内側面から完全に離れている。長穴部5および第2水平位置決めピン13に関しても同様であるから、この段階で水平方向の位置決めは完了する。また、凹部6の内側面はレベルピン14から少し離れながら下方に移動する。次に、図5(e)に示すように、レベルピン14の頂部86のレベル基準面にウエハ収納容器本体2の下面における凹部6の天井部81のレベル当接面が当接してウエハ収納容器の下降が終了し、高さ方向位置決めが完了する。尚、円筒状穴部4の天井部84は第1水平位置決めピン12の頂部87とは接触しない。(長穴部5および第2水平位置決めピン13に関しても同様である。)以上説明したように、レベルピン6の頂部86を利用して粗い位置決めを行い、第1水平位置決めピンの頂部87が円筒状穴部4の入口のテーパー部分88に導かれ、第1水平位置決めピンの円筒状穴部4への挿入が容易かつ確実となる。第2水平位置決めピンについても同様である。図5においては、各テーパー部の長さや角度を略同一に描かれているが、必要に応じてレベルピン14が挿入される凹部6の入口テーパー部分82を広くすることもできるし、第1水平位置決めピン6と円筒状穴部4のテーパー83の角度を急勾配にすることにより、挿入をスムーズにすることもできる。
【0039】
以上説明したように、レベル当接面はウエハ収納容器下面に設けられた凹部6の天井部81の平坦面であり、前記凹部6の入口および前記レベルピン頂部86にテーパーを設けている。また、レベルピン頂部86が前記凹部テーパー部82にガイドされてレベルピン14が前記凹部6内側に挿入された段階において、第1水平位置決めピン12および第2水平位置決めピン13の先端が円筒状穴部4および長穴部5の入口部の高さになるようにレベルピンのテーパー部83、凹部6、水平位置決めピン12および13、円筒状穴部4、および長穴部5の高さが設定されている。これらによって水平方向および高さ方向の位置決めがスムーズにかつ精度良く行われる。上述したように第1水平位置決めピンは円筒状穴部に嵌合しなければならないので、第1水平位置決めピンと円筒状穴部を精度良く位置合わせすることが必要となるが、本発明の2段ガイド位置合わせ方式を使用することにより、極めて簡単に精度良く第1水平位置決めピンと円筒状穴部の位置合わせをすることができる。また、第2水平位置決めピンと長穴部に関しても同様にして極めて簡単に精度良く位置合わせをすることができる。しかも簡単な構造で実現できることが特徴である。
【0040】
位置決めピンがウエハ収納容器の位置決め溝に入りウエハ収納容器1が載置台10に設置された後で、ウエハ収納容器1の開口部を閉じている蓋体3が取り外され、或いは開かれ、ウエハ収納容器1内に収納されたウエハを出し入れする。蓋体3をウエハ収納容器1から取り外すときや蓋体3をウエハ収納容器1にセットするときに、ウエハ収納容器本体2に横方向の力が作用する。特にウエハ収納容器1の開口部が横向きになっているときに大きい。たとえば、FOSB(Front Opening Shipping Box)のように、横方向の力で蓋体を押したとき、載置台10の水平面11に取り付けられたピンの位置により、ウエハ収納容器1の蓋体側の浮き上がりや、横方向の力のアンバランスという問題が生じる。横方向の力に対しては、主に第1および第2水平位置決めピンが関与する。
【0041】
そこで、本発明のウエハ収納容器においては、蓋体3を開閉するときのウエハ収納容器1の動きを抑えるため、ウエハ収納容器1の下面において、蓋体側(開口部)に隣接して円筒状穴部4および/または長穴5を取り付ける。或いは、円筒状穴部4および長穴5をウエハ収納容器1の蓋体3側から見た場合の左右の中央線上に配置する。図6(a)は左右の中央線19上に円筒状穴部4と長穴部5を設けた場合を示す。円筒状穴部4と長穴部5は逆の配置でも良い。或いは、図6(b)に示すように、円筒状穴部4と長穴部5を左右対称の位置に配置しても良い。これにより、蓋を開閉するときに左右対称の力がかかる場合に片側に偏った歪を起こすことを防止することができる。また図6(a)の場合には、円筒状穴部4はウエハ収納容器1の下面の蓋体側に隣接して配置されている。或いは、図6(b)の場合には、第1水平位置決めピン12と第2水平位置決めピン13の両方をウエハ収納容器1の下面の蓋体側に隣接して配置している。これにより、蓋を開閉するときにかかる力を受け、ウエハ収納容器前面の浮き上がりを防止するという効果もある。
【0042】
図10は、円筒状穴部4がウエハ収納容器1の重心Gの鉛直方向軸Vとウエハ収納容器下面7との交点にある場合を説明する図である。この場合にもウエハ収納容器1は安定して載置台にセットされる。図10は、ウエハ収納容器1の斜視図で内部も分かるようにしている。本発明に必要な部分のみを表示している。ウエハ収納容器1は、ウエハ収納容器本体2の開口部を蓋体3で蓋をしている。ウエハ収納容器本体2の1つの側面7がプロセス装置等における(ウエハ収納容器)載置台の水平面に対面して設置されるが、この側面7に載置台との位置合わせ手段、すなわち、円筒状穴部4、長穴部5、および高さ方向位置決め凹部6が取り付けられている。これらの側面に取り付けられた位置合わせ手段4、5、および6と対応した位置合わせ手段が載置台にも取り付けられていて、これらが適合して、載置台の所望の位置にウエハ収納容器1が設置される。
【0043】
ウエハ収納容器1の重心Gの位置から、ウエハ収納容器1が載置台に設置されたときに、鉛直方向軸V(z方向)と位置合わせ手段がとりつけられた面7との交点Cの近傍に水平方向位置合わせ手段が配置されると、重心Gのまわりのモーメントが最小化するので、ウエハ収納容器が極めて良く安定する。すなわち、水平方向位置合わせ手段4または5はC近傍に取り付けられている。(本発明で述べる近傍とは、約10mm以下、好適には約5mm以下の領域をいう。)ウエハ収納容器は通常蓋体が取り付けられた状態で載置台に設置されるので、ここで述べる重心とは蓋体3で蓋をされたウエハ収納容器1の重心である。さらに、ウエハ収納容器を載置台に設置するときは、ウエハ収納容器内にはウエハが入っている場合もあれば、入っていない場合もある。ウエハが入っているときとウエハが入っていないときとでは、ウエハ収納容器の重心位置は異なっている。また、溝板が分離できる状態になっている場合でも、溝板は通常ウエハ収納容器内に取り付けられた状態でセットされているので、溝板も含めた重心で規定する必要がある。
【0044】
ウエハ製造メーカーにおいては、主にウエハの入っていない空のウエハ収納容器にウエハを充填する。ウエハ購入メーカー(たとえば、デバイスメーカー)においては、主にウエハが充填されたウエハ収納容器からウエハを他のキャリアまたは装置へ移し代えて、最終的には空のウエハ収納容器となる。ウエハの入っていないウエハ収納容器は、ウエハのないものに比較するとかなり軽いので、ウエハ収納容器が搬送〜載置台設置の間で不安定になることは少なく、また、ウエハ収納容器が多少安定していなくともウエハが収納容器内にないので問題が発生することは少ない。従って、主として、ウエハが充填されているときの重心を考慮するだけで十分である。しかし、ウエハが一部だけ入っているときなども考慮しなければならないときには、重心として、ウエハが充填されているときの重心とウエハがないとき(空ウエハ)のときの重心との間の点を仮の重心として、好適にはそれらの間のほぼ中点付近を仮の重心として、上記の水平位置合わせ手段の位置を決定すれば良い。尚、重心Gは当然ウエハ収納容器内に存在する。
【0045】
尚、これまでの説明においては、主にウエハ収納容器下面がウエハ収納容器の1つの側面7になる場合を主に説明してきたが、ウエハ収納容器下面がウエハ収納容器の底面(ウエハ収納容器の開口部と対向する面)となる場合もある。このときには、これらの位置合わせ手段はウエハ収納容器の底面に取り付けられる。この場合、ウエハ収納容器が載置台に設置された時には、蓋体3は上方にあり、ウエハは上方を向いた収納容器本体の開口部から出し入れされる。また、このとき、ウエハ収納容器内において、ウエハは当然載置台水平面に対して垂直方向に配置されている。
【0046】
図11は、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)を有する位置決め手段を示した図である。共用ピン31は上部部分32と下部部分33が合体したピンであり、載置台11に取り付けられている。ウエハ収納容器側に取り付けられる位置決め手段は共用ピン31を受けるので、円筒状穴部と高さ方向位置決め凹部が共用されている。これを共用凹部36と呼ぶことにする。共用凹部36は基本的には円筒状穴部と同じく円筒状の穴である。共用凹部36の天井部35にレベル当接面(平坦領域)を設ける。共用ピンの下部部分33は、第1水平位置決めピン12と同様に、円柱形状になっていて、この円柱部が共用凹部36の円筒状穴部に内接して水平方向の位置決めを行う。共用ピン31の上部部分32は基本的にはレベルピン14と同様であり、その頂部34の平坦領域をレベル基準面として、レベル当接面に当接させることによりレベル決めを行うことができる。図11から分かるように、位置決めが完了したときには、共用ピン31の上部部分32と共用凹部36の側面との間には隙間(空間)が存在する。一方、共用ピンの下部部分33と共用凹部36の側面とはピッタリ嵌合している。また、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)および長穴部と高さ方向位置決め凹部を共用した共用凹部も同様である。これらにより、共用ピン31および共用凹部36を用いて、高さ方向位置決めと水平方向位置決めを一緒に行うことができることが分かる。尚、上述したレベルピン14のレベル基準面と同様に、頂部34のレベル基準面は通常平坦面であるが、線または点である場合もある。
【0047】
図12により、図11で示す共用ピン31および共用凹部36を用いて水平方向位置決めと高さ方向位置決めを行う方法について詳細に説明する。図12(a)に示すように、ウエハ収納容器本体2が下りてきて、共用凹部36の入口のテーパー部37に共用ピン31における頂部34の周縁部のテーパー部38が接触する。これらのテーパー部で滑ってウエハ収納容器本体2はさらに下降し、共用凹部36の内側空間に入っていき、図12(b)に示すように、共用ピン31の上部部分32の側面部が共用凹部36の内側面にガイドされながらウエハ収納容器本体2はさらに下降する。次に、図12(c)に示すように、共用凹部36の入口のテーパー部37が共用ピン31の上部部分32と下部部分33との結合部39に接触する。(共用ピン31の上部部分32の径は下部部分33の径より小さい。)この結合部39もテーパーになっているので、これらのテーパー部で滑って、共用ピン31はさらに共用凹部36の内側に入っていき、図12(d)に示すように、共用ピン31の下部部分33の円柱部側面が共用凹部36の側面に内接しながら下降していく。ここで、水平方向位置決めが完了する。最後に図12(e)に示すように、共用ピン31の頂部34のレベル基準面が共用凹部36の天井部35のレベル当接面に当接して、ウエハ収納容器本体2の下降が停止し、高さ方向の位置決めが完了する。
【0048】
上述の共用ピンは第2水平位置決めピンにも適用できるし、これと対応する共用凹部は長穴部にも適用できる。レベルピンは3つ以上必要であるが、これらのレベルピンのうち1つまたは2つを第1水平位置決めピンと第2水平位置決めピンと共用できる。また対応する円筒状穴部と長穴部を高さ方向位置決め凹部のうちの1つまたは2つと共用できる。従って、全体のピン数および穴部を少なくすることができ、構造が簡単になる。尚、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用する共用ピンの下部部分はと嵌合する円柱形状であるが、上部部分は必ずしも円柱形状である必要はない。たとえば、角柱形状、断面が曲線の柱状でも良い。また、長穴部と高さ方向位置決め凹部を共用する共用凹部の形状は、基本的に長穴部と同じ形状となる。これに対応する第2水平位置決めピンとレベルピンを共用する共用ピンの下部部分は、上述した第2水平位置決めピンの形状と同様であるが、上部部分はこれと類似である必要はない。上部部分は円柱形状がより好適ではあるが、たとえば、角柱形状、断面が曲線の柱状でも良い。
【0049】
本発明において記載したウエハは、半導体用基板だけでなく、ガラス、セラミック、プラスティック等の絶縁基板、或いは金属板なども含まれる。必ずしも円板形状である必要はなく、正方形形状、長方形形状、多角形形状、楕円形状などの板状体であっても良い。ウエハ収納容器の材質も高分子材料である必要もなく、金属製やセラミック製、これらの複合材料から形成されていても良い。また、本発明を適用できる産業分野も半導体産業だけでなく、太陽電池その他の薄い基板を用いる分野においても本発明を適用できる。また、上述の各実例および実施形態のそれぞれの説明において、各所に記載しなかった内容についても、お互いに矛盾がない限りにおいて適用できることも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ収納容器を使用する半導体産業等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明における収納容器の1つの面に取り付けられた位置合わせ手段と、載置台に取り付けられた位置合わせ手段との関係について説明する図である。
【図2】図2は、本発明における載置台の水平面にウエハ収納容器本体が設置された状態を示す図である。
【図3】図3は、本発明のウエハ収納容器が載置台に設置されたときの底面図、立面図および側面図である。
【図4】図4は、本発明のウエハ収納容器下面に取り付けられた円筒状穴部、長穴部および高さ方向位置決め凹部の1例を示す図である。
【図5】図5は、本発明における水平(方向)位置決めピンの挿入を容易にかつ確実に行う構造と方法について説明する図である。
【図6】図6は、本発明における第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピンの配置を示す図である。
【図7】図7は、従来のウエハ収納容器を示す図である。
【図8】図8は、従来用いられている、ウエハ収納容器のV字型長溝にウエハ収納容器載置台のKC−ピンがはまった状態を模式的に示した図である。
【図9】図9は、本発明の円筒状穴部と長穴部の位置関係について説明する図である。
【図10】図10は、本発明の位置決め手段を取り付けたウエハ収納容器の斜視図である。
【図11】図11は、第1水平位置決めピンとレベルピンを共用したピン(共用ピン)を有する位置決め手段を示した図である。
【図12】図12は、図11で示す共用ピンおよび共用凹部を用いて水平方向位置決めと高さ方向位置決めを行う方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ウエハ収納容器、2 ウエハ収納容器本体、3 蓋体、
4 位置合わせ手段(円筒状穴部)、5 位置合わせ手段(長穴部)、
6 位置合わせ手段(高さ方向位置決め凹部)、7 ウエハ収納容器本体側面、
10 載置台、11 載置台水平面、
12 位置合わせ手段(第1水平(方向)位置決めピン)、
13 位置合わせ手段(第2水平(方向)位置決めピン)、
14 位置合わせ手段(レベルピン)、16 長穴溝平行部、
21 ウエハ収納容器本体側面、22 トップフランジ、23 ウエハ、
31 共用ピン、32 共用ピンの上部部分、33 共用ピンの下部部分、
34 共用ピンの頂部、35 共用凹部の天井部、36 共用凹部、
41 ウエハ収納容器、42 部材、43 高さ方向位置決め凹部、
44 部材、45 円筒状穴部、長穴部、46 ウエハ収納容器、
47 高さ方向位置決め凹部、48 円筒状穴部、長穴部、
60 ウエハ収納容器、61 ウエハ収納容器本体、62 蓋体、
66 長溝部材、71 KC−ピン、
72 キネマティックカップリング(V字型長溝)、
81 凹部の天井部、82 テーパー部、83 テーパー部、
84 円筒状穴部の天井部、85 テーパー部、86 レベルピンの頂部、
87 第1水平位置決めピンの頂部、88 テーパー部、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを有する載置台に載置されるウエハ収納容器であって、
略六面体の外形を有し、その1つの面にウエハを出し入れする開口部および前記開口部を塞ぐ蓋体を有し、
前記載置台に載置される前記ウエハ収納容器の下面に
前記第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、
前記第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、および
前記レベルピン各々が当接する、前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面
を有することを特徴とするウエハ収納容器。
【請求項2】
前記レベル当接面は前記ウエハ収納容器下面に設けられた凹部の天井部の平坦面であり、前記凹部の入口および前記レベルピン頂部にテーパーを設けていることを特徴とし、前記レベルピン頂部が前記凹部テーパー部にガイドされて前記レベルピンが前記凹部内側に挿入された段階において、前記第1および第2水平位置決めピンの先端が前記円筒状穴部および長穴部の入口部の高さになるように前記レベルピンテーパー部、前記凹部、前記水平位置決めピン、前記円筒状穴部、および前記長穴部の高さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のウエハ収納容器。
【請求項3】
前記第1水平位置決めピンおよび/または前記第2水平位置決めピンの頂部の平面によっても高さ方向のレベルを決めることを特徴とする請求項1または2に記載のウエハ収納容器。
【請求項4】
前記円筒状穴部および/または前記長穴部は前記ウエハ収納容器開口部付近に設けられているか、或いは、前記ウエハ収納容器開口面左右の中央線上に前記円筒状穴部および/または前記長穴部が設けられているか、或いは、前記円筒状穴部と前記長穴部は収納容器開口面左右の対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のウエハ収納容器。
【請求項1】
側面によって水平方向の位置決めをする第1水平位置決めピンおよび第2水平位置決めピン、並びに頂部のレベル基準面によって高さ方向のレベルを決める3つ以上のレベルピンを有する載置台に載置されるウエハ収納容器であって、
略六面体の外形を有し、その1つの面にウエハを出し入れする開口部および前記開口部を塞ぐ蓋体を有し、
前記載置台に載置される前記ウエハ収納容器の下面に
前記第1水平位置決めピンに嵌合する円筒状穴部、
前記第2水平位置決めピンが挿入される長穴部、および
前記レベルピン各々が当接する、前記ウエハ収納容器下面の最下部より上に位置する3つ以上のレベル当接面
を有することを特徴とするウエハ収納容器。
【請求項2】
前記レベル当接面は前記ウエハ収納容器下面に設けられた凹部の天井部の平坦面であり、前記凹部の入口および前記レベルピン頂部にテーパーを設けていることを特徴とし、前記レベルピン頂部が前記凹部テーパー部にガイドされて前記レベルピンが前記凹部内側に挿入された段階において、前記第1および第2水平位置決めピンの先端が前記円筒状穴部および長穴部の入口部の高さになるように前記レベルピンテーパー部、前記凹部、前記水平位置決めピン、前記円筒状穴部、および前記長穴部の高さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のウエハ収納容器。
【請求項3】
前記第1水平位置決めピンおよび/または前記第2水平位置決めピンの頂部の平面によっても高さ方向のレベルを決めることを特徴とする請求項1または2に記載のウエハ収納容器。
【請求項4】
前記円筒状穴部および/または前記長穴部は前記ウエハ収納容器開口部付近に設けられているか、或いは、前記ウエハ収納容器開口面左右の中央線上に前記円筒状穴部および/または前記長穴部が設けられているか、或いは、前記円筒状穴部と前記長穴部は収納容器開口面左右の対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のウエハ収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−135387(P2010−135387A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307449(P2008−307449)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】
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