説明

ウエブの熱処理装置

【課題】下ノズルから吹き出された熱風を安定良く流すことができ、ウエブの安定走行を実現でき、また、ウエブの乾燥ムラを防止することができるウエブの熱処理装置を提供する。
【解決手段】ウエブWが前後方向に走行する熱処理室10と、ウエブWの走行路の下方に複数配列された下ノズル14と、前後方向に隣接する下ノズル14,14の間にそれぞれ配された熱風を吸い込むための複数の吸い込みボックス42を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、フィルム、金属箔、布帛などのウエブを熱風によって加熱させるウエブの熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱処理室内部においてウエブを前後方向に走行させ、このウエブの下面にある下ノズルから熱風を吹き付けて、加熱処理する熱処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−4274公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような熱処理装置においては、熱風を吹き出すための下ノズルが、走行路に沿って前後方向に配され、熱処理室の両側に熱風の排気口が設けられている。
【0004】
そのため、走行路の順次手前の下ノズルから吹き出される熱風の影響を受けて、後方に行くほど風量が集積されて、ウエブに乱れを生じるという問題点があった。
【0005】
また、熱処理室の両側に熱風の排気口があると、その排気口の位置によって、下ノズルから吹き出された熱風の流れが変わり、この影響はウエブの幅が広くなるほど大きくなるという問題点があった。そして、このような熱風の乱れによってウエブの安定走行に支障を来し、また、ウエブの乾燥ムラの原因にもなっていた。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、下ノズルから吹き出された熱風を安定良く流すことができ、ウエブの安定走行を実現でき、また、ウエブの乾燥ムラを防止することができるウエブの熱処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエブが前後方向に走行する熱処理室と、前記熱処理室内部において、前記走行するウエブの下面から、前記ウエブの幅方向に熱風を吹き付けるために、前後方向に複数配列された下ノズルと、 前記下ノズルの後方に配された熱風を吸い込むための吸い込み部と、を有したウエブの熱処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各下ノズルから吹き出された熱風を、吸い込み部によって回収するため、熱風の流れに乱れが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの熱処理装置10について図1〜図4に基づいて説明する。
【0010】
この熱処理装置10においては、紙、フィルム、金属箔(例えば、アルミニウム、銅)、布帛などのウエブWを熱風で加熱させる。
【0011】
(1)熱処理装置10の構造
図1に基づいて、熱処理装置10の構造について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の熱処理装置10縦断面図である。
【0013】
熱処理装置10は、断熱構造の熱処理室12を有し、熱処理室12の前面から後面へウエブWを前後方向に速度0.1〜500m/分で走行させている。ウエブWの幅としては、0.3〜3mである。
【0014】
なお、熱処理室12は、水平方向に設置するだけでなく、傾斜、または、垂直に設けた状態であってもよい。また、以下の説明では前後方向とは、ウエブWが走行する方向を意味する。
【0015】
熱処理室12の内部には、ウエブWの走行路の下面に沿って複数の下ノズル14が配列されている。この下ノズル14のピッチ間隔は、0.3〜1mである。
【0016】
ウエブWの走行路の上面であって、熱処理室12の前面には上ノズル16が設けられ、後面には排気口17が設けられており、この上ノズル16は、ウエブWの上面に対し前から後に向かって熱風を吹き出し、排気口17から排気される。
【0017】
下ノズル14に熱風を送るために下ノズル14の下部には下ダクト18が設けられ、この下ダクト18には循環ファン20とヒータ22を介して熱風が送られる。また、上ノズル16にも同様に循環ファン20とヒータ22を介して熱風が送られる。なお、循環ファン20に代えて送風ファンでもよい。
【0018】
また、隣接する下ノズル14と下ノズル14との間には、吸い込みボックス42が設けられている。この吸い込みボックス42は熱風を吸い込むためのものであり、吸い込みボックス42から吸い込まれた熱風は吸い込みボックス42の両側に設けられている吸い込みダクト44を通して排気される。なお、この吸い込みボックス42は、片側のみでもよい。
【0019】
また、下ノズル14と上ノズル16からウエブWに吹き付けられた熱風は、再び循環ファン20に循環する。循環ファン20によって循環した熱風と、フィルタ21を経て外部から吸気された空気が、ヒータ22によって加熱されて熱風となる。この熱風はフィルタ23を経て、上記のように下ダクト18と上ノズル16に送られる。なお、不要な熱風は、排気ファン25によって排気される。
【0020】
(2)下ノズル14の構造
次に、下ノズル14の構造について図2と図3に基づいて説明する。
【0021】
下ノズル14は、下部空間30と上部空間32とに区画され、下部空間30に下ダクト18から熱風が吹き込む。下部空間30から上部空間32には複数の孔34を介して熱風が送られる。上部空間32内部には、熱風をスリット状の吹出口36に案内するための案内壁38が設けられている。この案内壁38と相対向する下ノズル14の前面壁の上端部は傾斜して吹出口36の方向に向かう。
【0022】
下ノズル14の後面上端部から板状のフィン40が延設されている。このフィン40の長さは隣接する下ノズル14との間隔の2/3程度である。
【0023】
(3)吸い込みボックス42の構造
次に、図2〜図4に基づいて吸い込みボックス42の構造について説明する。
【0024】
吸い込みボックス42は、下ノズル14の後方であって、かつ、下ノズル14と、隣接する次の下ノズル14との間に配されるものであり、その取り付け位置は下ノズル14から延びたフィン40の後端部の位置から次の下ノズル14との間に配されている。なお、最も後端部の吸い込みボックス42のみ、下ノズル14の間でなく、下ノズル14の後方に位置している。
【0025】
この吸い込みボックス42は、図3に示すようにウエブWの幅方向に沿って延びており、その上面にパンチング孔によって形成された吸い込み孔46が形成されている。
【0026】
吸い込みボックス42の下方には図4に示すように下ダクト18が設けられているため、吸い込みダクト44はその下ダクト18の両側に配置され、吸い込みボックス42の両端部の下面から熱風が吸い込まれる構造となっている。
【0027】
(4)熱処理装置10の動作状態
次に、下ノズル14と吸い込みボックス42を中心に、熱処理装置10の動作状態について説明する。
【0028】
前後方向に走行するウエブWが熱処理室12内部に入り、下ノズル14から吹き付けられた熱風によってフローティング状態となり、これによりウエブWの下面が加熱される。熱風の温度は10〜300℃(好適には、60〜200℃)であり、風速は1m〜30m/秒である。
【0029】
ところで、下ダクト18から吹き付けられた熱風は、下ノズル14の下部空間30によってウエブWの幅方向に一旦広がり、複数の孔34を通って上部空間32に流れる。上部空間32に流れた熱風は案内壁38に沿って流れ、吹出口36から斜め上方、即ち上後方に吹き付けられる。
【0030】
この吹き付けられた熱風は、ウエブWの下面に当たり、ウエブWと下ノズル14との間の圧力が高まり、その後、熱風が流れ徐々に圧力が低くなり、コアンダー効果によりウエブWはフィン40に吸い付けられる。そして、このとき熱風はフィン40が存在することにより整流され、渦などが発生しない。
【0031】
ウエブWの下面に流れている熱風はフィン40を経て後端部に至ると、吸い込みボックス42からの吸い込み力によって吸い込み孔46に吸い込まれる。そして、熱風は両側の吸い込みダクト44に流れ、上記したように排気ファン25によって外部に排気されるか、再び循環する。
【0032】
(5)効果
本実施形態によれば、上記のように下ノズル14からフィン40を経た熱風は、従来のように両側に排気されるのではなく、その流れる方向にある吸い込みボックス42によって全て吸い込まれる。そのため、熱風の流れに乱れが生じることがなく、また、従来のように風量の集積も起こることがなく、ウエブWを安定して走行させることができると共に、乾燥ムラがなく均一な乾燥ができる。特に、幅方向に沿って熱風を吸い込むため、幅方向における乾燥ムラが発生することがなく、ウエブWが幅広であっても乾燥ムラが発生しない。
【0033】
(変更例)
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0034】
(1)変更例1
上記実施形態では下ノズル14の後部にフィン40を設けたが、このフィン40を設けることなく、下ノズル14の後方に吸い込みボックス42を設けてもよい。
【0035】
(2)変更例2
上記実施形態では吸い込みボックス42の吸い込み孔46をパンチング孔としたが、これに代えてスリット孔にしてもよい。
【0036】
(3)変更例3
上記実施形態では、上ノズル16を熱処理室12の後方に1箇所設けたが、これに代えて特許文献1に示すように、下ノズル14の上方に千鳥状に複数の上ノズル16を配列してもよい。
【0037】
(4)変更例4
図5に示すように、前後方向に隣接する下ノズル14の間であって、かつ、ウエブWの走行路の下方にロール50を回転自在に配置して、ウエブWを走行させる熱処理装置10においても、ロール50の下方に吸い込みダクト44を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態を示す熱処理装置の縦断面図である。
【図2】ノズルと吸い込みボックスの縦断面図である。
【図3】ノズルと吸い込みボックスの平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】変更例4における熱処理装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
W ウエブ
10 熱処理装置
12 熱処理室
14 下ノズル
16 上ノズル
18 ダクト
40 フィン
42 吸い込みボックス
44 吸い込みダクト
46 吸い込み孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブが前後方向に走行する熱処理室と、
前記熱処理室内部において、前記走行するウエブの下面から、前記ウエブの幅方向に熱風を吹き付けるために、前後方向に複数配列された下ノズルと、
前記下ノズルの後方に配された熱風を吸い込むための吸い込み部と、
を有したウエブの熱処理装置。
【請求項2】
前記吸い込み部が、前後方向に隣接する前記下ノズルの間にそれぞれ配されている、
請求項1記載のウエブの熱処理装置。
【請求項3】
前記吸い込み部が、前記ウエブの幅方向に配されている、
請求項1記載のウエブの熱処理装置。
【請求項4】
前記下ノズルからフィンが後方に延び、
前記フィンの後端部の近傍に前記吸い込み部が配されている、
請求項1記載のウエブの熱処理装置。
【請求項5】
前後方向に隣接する前記下ノズルの間であって、かつ、ウエブの走行路の下方にロールを回転自在に配置し、前記ロールの下方に前記吸い込みダクトを配置する、
請求項1記載のウエブの熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−70114(P2008−70114A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−320461(P2007−320461)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】