説明

ウエブ搬送装置

【課題】作業者の安全を確保しつつ、簡単な構成で通紙作業を行うことができるウエブ搬送装置を提供する。
【解決手段】ウエブ搬送装置1は、エアの供給を受けることによりエアのエア圧に応じた押圧力で一対のロール41、42を互いに接近及び離反する方向に相対的に移動させるエアシリンダ43と、エアシリンダ43に高圧エアと低圧エアを選択的に供給可能なエア供給手段52と、自動運転時に所定の制御信号に応じてエア供給手段52からエアシリンダ43に高圧エアを供給する自動操作手段56と、手動運転時に手動切換操作に応じてエア供給手段52からエアシリンダ43に低圧エアを供給する手動操作手段57を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブを搬送するウエブ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のニップロールの間にウエブを挟持して送出するウエブ搬送装置は、ニップロール間に作業者が挟まれるのを防ぐために装置本体の周りが安全柵で囲まれており、安全柵の中に入ることはできない。
【0003】
一方、ニップロール間にウエブを挿通させる通紙作業は、作業者が安全柵の中に入り、行わなければならない。従って、従来は、安全柵の外側からウエブ搬送装置を操作してニップロール間を開放させた後に、装置全体を非常停止してから安全柵の内側に入り、通紙作業を行い、そして、作業終了後、安全柵の外側に出て非常停止を解除し、ニップロールを戻す操作を行っていた。作業者の安全を確保することは最優先される事項であるが、上記のような一連の作業は、多大な工数を要し、コスト高を招いていた。
【0004】
また、特許文献1には、安全対策として、ニップロール間に作業者が挟まれた場合に、センサで検知してニップロール間を開放する技術が示されている。しかし、作業者が挟み込まれたことを検出してからニップロール間を開放しているので、作業者に重大な損傷が残ることは免れない。
【0005】
【特許文献1】特開平4−201941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者の安全を確保しつつ、簡単な構成で通紙作業を行うことができるウエブ搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のウエブ搬送装置は、ウエブを一対のロールの間に挟持して該ロールの回転により搬送するウエブ搬送装置において、エアの供給を受けることによりエアのエア圧に応じた押圧力で一対のロールを互いに接近及び離反する方向に相対的に移動させるエアシリンダと、エアシリンダに高圧エアと低圧エアを選択的に供給可能なエア供給手段と、自動運転時に所定の制御信号に応じてエア供給手段からエアシリンダに高圧エアを供給する自動操作手段と、手動運転時に手動切換操作に応じてエア供給手段からエアシリンダに低圧エアを供給する手動操作手段とを有することを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、手動運転時には低圧エアでエアシリンダを駆動するので、仮に作業者が一対のロールの間に挟まれた場合でも、作業者に重大な損傷が与えられるのを防止することができる。従って、手動運転時に行われる通紙作業において作業者の安全を確保できる。
【0009】
また、本装置によれば、自動運転時には自動操作手段によってエアシリンダが駆動操作されるので、手動操作手段の手動操作状態に影響を受けることなく、一対のロールを互いに接近した位置もしくは離反した位置に配置することができる。従って、例えば手動運転時に手動操作手段を操作して一対のロールの間を開状態とし、閉状態に戻し忘れたまま自動運転に切り換えた場合でも、自動操作手段によって閉状態にすることができる。
【0010】
本発明の好適な一つの具体例として、エア供給手段が、自動運転時に高圧エアを供給し、手動運転時に高圧エアの供給を停止する高圧側開閉弁と、高圧側開閉弁により高圧エアが供給されている場合に低圧エアの供給を停止し、高圧エアの供給が停止されている場合に低圧エアを供給する低圧側開閉弁を有する構成とし、自動操作手段が高圧側開閉弁とエアシリンダとの間に介在され、手動操作手段が低圧側開閉弁とエアシリンダとの間に介在された構成とすることができる。かかる構成によれば、エアシリンダに対して高圧エアと低圧エアを選択的に供給することができる。
【0011】
また、低圧側開閉弁が、高圧側開閉弁から自動操作手段に供給される高圧エアを利用して駆動される構造を有してもよい。かかる構成によれば、低圧側開閉弁の開閉を指示する信号線を省略することができ、構成の簡素化を図ることができる。
【0012】
そして、自動操作手段から高圧エアの供給を受けることにより自動操作手段とエアシリンダとの間を連通させ、手動操作手段から低圧エアの供給を受けることにより手動操作手段とエアシリンダとの間を連通させる切換手段を備える構成としてもよい。
【0013】
そして、本発明の好適な一つの具体例として、作業者の侵入を防ぐ安全柵を備えており、手動操作手段が安全柵の内側で且つ一対のロールの近傍位置に配設された構成としてもよい。この構成によれば、作業者は、手動運転時に安全柵の内側で一対のロールの動きを視認しながら手動操作手段を操作することができ、作業の安全性及び確実性を高めることができる。
【0014】
また、手動運転時に安全柵の内側で手動操作手段を操作して一対のロールの間を開状態とし、閉状態に戻し忘れたまま安全柵の外側に退出してしまった場合でも、安全柵の外側から自動運転に切り換えて自動操作手段によって閉状態にすることができる。
【0015】
そして、本発明の好適な一つの具体例として、一対のロールを有するロール搬送手段を複数備え、安全柵の外側でかつ各ロール搬送手段の近傍位置に、対応するロール搬送手段の自動運転又は手動運転を選択可能な操作手段を配設した構成としてもよい。
【0016】
これによれば、従来のように装置全体を非常停止させることなく、複数のロール搬送手段の中から対象とするロール搬送手段のみを手動運転とすることができる。従って、対象外のロール搬送手段については自動運転させることができ、例えば、手動運転中のロール搬送手段の上流位置までウエブを搬送させることができ、当該ロール搬送手段に対する通紙作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、手動運転時には低圧エアでエアシリンダを駆動するので、仮に作業者が一対のロールの間に挟まれた場合でも、作業者に重大な損傷が与えられるのを防止することができる。従って、手動運転時に行われる通紙作業において作業者の安全を確保できる。
【0018】
また、本発明によれば、自動運転時では自動操作手段によってエアシリンダが駆動操作されるので、手動操作手段の手動操作状態に影響を受けることなく、一対のロールを互いに接近した位置もしくは離反した位置に配置することができる。従って、例えば手動運転時に手動操作手段を操作して一対のロールの間を開状態とし、閉状態に戻し忘れたまま自動運転に切り換えた場合でも、自動操作手段によって閉状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1は、ウエブ搬送装置1の構成を示す概略図であり、図1(a)は、ウエブ搬送装置1を正面から見た外観図、図1(b)は、ウエブ搬送装置1の安全柵Gを取り外して装置本体2の内部を開放した状態を示す図である。
【0020】
ウエブ搬送装置1は、装置本体2と、装置本体2の制御を行う制御装置3を有する。装置本体2は、図1に示すように、床面Fに沿って上流側から下流側に延在するように設置されている。装置本体2の正面には、作業者が侵入するのを防ぐ安全柵Gが着脱可能に取り付けられており、エリア別に取り外して内部を開放できるようになっている。各安全柵Gは、電磁ロックRによって鍵が掛かっており、電磁ロックRを解除しなければ、取り外すことができない。各電磁ロックRは、対応するエリアE内を自動運転から手動運転に切り換えることによって解除できる。
【0021】
安全柵Gの外側には、主操作盤11と、複数の副操作盤12が設置されている。主操作盤11は、ウエブ搬送装置1の下流位置に設置されており、その盤面には、装置全体の動作を制御するための操作ボタンや表示灯等(図示せず)が設けられている。
【0022】
副操作盤12は、複数のエリアE1〜E6のうち、ロール搬送手段33(図1(b)を参照)が設けられたエリアE2、E3、E5に対応して設置されており、その盤面12a(図2を参照)には、ロール搬送手段33の運転状態を自動運転又は手動運転に切り換えるための操作ボタンや表示灯等が設けられている。
【0023】
図2は、副操作盤12の操作面12aの構成を示す図である。副操作盤12の盤面12aには、停止準備ボタン21、停止ボタン22、運転再開準備ボタン23、運転ボタン24、非常停止ボタン25が設けられている。そして、停止準備状態を示す停止準備ランプ26と、停止可能状態を示す停止可ランプ27が設けられている。
【0024】
停止準備ボタン21は、対応するエリアE内の自動運転を停止する準備を行う際に押し操作され、停止ボタン22は、自動運転を停止する準備が完了した後に押し操作される。そして、運転再開準備ボタン23は、自動運転を再開する準備を行う際に押し操作され、運転ボタン24は、自動運転を開始する際に押し操作される。
【0025】
装置本体2の内部には、図1(b)に示すように、複数のローラJが上流側から下流側に向かってウエブWを搬送可能に配設されている。装置本体2の内部は、上流側から下流側に複数のエリア(本実施の形態では6つのエリア)E1〜E6に区画されている。
【0026】
最上流に位置する第1エリアE1には、ロール状に巻かれたウエブWを下流側に向かって巻き出す巻出装置31が設けられている。そして、最下流に位置する第6エリアE6には、上流側から搬送されたウエブWをロール状に巻き取る巻取装置32が設けられている。
【0027】
そして、第2、第3、第5エリアE2、E3、E5には、それぞれロール搬送手段33が設けられている。ロール搬送手段33は、ウエブWを一対のニップロール41、42の間に挟持してニップロール41、42の回転により搬送する構成を有する。ニップロール41、42は、下側に駆動ロール41が配置され、上側に押圧ロール42が配置されている。駆動ロール41は、図示していないモータ駆動手段に連結されており、所定のタイミングで回転駆動され、また、回転を停止した状態とすることができる。
【0028】
押圧ロール42は、図示していない支持アームの先端部に回転自在に支持されており、支持アームの基端部に連結されたエアシリンダ43を駆動することによって、上下に移動されて駆動ロール41に接近及び離反し、接近により駆動ロール41との間にウエブWを挟持し、離反により駆動ロール41との間にウエブWを挿通可能な間隙が形成される。
【0029】
エアシリンダ43は、エアのエア圧に応じた押圧力で押圧ロール42を移動させる。エアシリンダ43は、エアが供給されることにより押圧ロール42を接近方向に移動させる第1気室43a(図4を参照)と、エアが供給されることにより押圧ロール42を離反方向に移動させる第2気室43bを有する。
【0030】
なお、本実施の形態では、駆動ロール41に対して押圧ロール42を上下移動させる構成の場合を例に説明したが、一対のロール41、42を互いに接近させる閉方向と離反させる開方向に相対的に移動させることができるものであればよく、例えば、駆動ロール41と押圧ロール42の両方を移動させてもよい。
【0031】
そして、安全柵Gの柵内で且つ各ロール搬送手段33の近傍には、手動操作用のセレクタバルブスイッチ44が個々に設けられている。セレクタバルブスイッチ44は、後述する手動操作手段57を手動で切換操作するためのものであり、作業者が押圧ロール42の動きを視認しながら操作できる位置に配置されている。
【0032】
図3は、セレクタバルブスイッチ44の外観図である。セレクタバルブスイッチ44は、「開放」と「戻し」の2ポジションのうち、いずれか一方を選択して切換可能な構成を有する。このセレクタバルブスイッチ44を手動運転時において操作することにより、手動操作手段57が手動切換操作され、「開放」を選択した場合に押圧ロール42を駆動ロール41から離反させる開方向に移動させ、「戻し」を選択した場合に押圧ロール42を駆動ロール41に接近させる閉方向に移動させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、つまみを回動させるターン型スイッチにより構成した場合を例に示したが、「開放」と「戻し」のいずれか一方を選択可能なスイッチであればよく、例えばレバースイッチでもよい。
【0034】
制御装置3は、ウエブ搬送装置1のウエブ搬送制御を行うものであり、シーケンスプログラムコンピュータや電源回路、タイマリレー回路等によって構成されている。制御装置3の入力側には、主操作盤11や副操作盤12に設けられた操作ボタンや装置本体2内の各種センサからの入力信号を入力する信号線が接続されている。そして、制御装置3の出力側には、装置本体2内の切換電磁弁等、モータ駆動装置、主操作盤11や副操作盤12の表示灯26等に出力信号を出力する信号線等が接続されている。
【0035】
図4は、ウエブ搬送装置1のエア回路図である。なお、図4に示すエア回路51は、一つのロール搬送手段33についてのエア回路図であり、同様のエア回路が各エリアEのロール搬送手段33に対応して各々設けられている。
【0036】
エア回路51は、自動運転回路と手動運転回路の二系統からなり、自動運転回路では、高圧エアを用いてエアシリンダ43が駆動され、手動運転回路では、低圧エアを用いてエアシリンダ43が駆動される。
【0037】
エア回路51には、エアシリンダ43に高圧エアと低圧エアを選択的に供給可能なエア供給手段52と、所定の制御信号に応じてエア供給手段52からエアシリンダ43に高圧エアを供給する自動操作手段56と、手動切換操作に応じてエア供給手段52からエアシリンダ43に低圧エアを供給する手動操作手段57が設けられている。
【0038】
エア供給手段52は、自動運転時に自動操作手段56に高圧エアを供給し、手動運転時に高圧エアの供給を停止する高圧側開閉弁53と、高圧側開閉弁53によって高圧エアの供給が行われている場合に低圧エアの供給を停止し、高圧エアの供給が停止されている場合に低圧エアを供給する低圧側開閉弁54を有する。
【0039】
高圧側開閉弁53は、制御装置3から自動運転の制御信号を受け取ることによってエア源Pと自動操作手段56との間を連通させ、制御装置3から手動運転の制御信号を受け取ることによってエア源Pと自動操作手段56との間の連通を遮断する。
【0040】
低圧側開閉弁54は、高圧側開閉弁53から自動操作手段56に供給される高圧エアをパイロットエアとして利用し、そのパイロットエアによってエア源Pと手動操作手段57との間の連通を遮断するように駆動される。そして、高圧側開閉弁53によってエア源Pと自動操作手段56との間の連通が遮断されて、パイロットエアの供給がなくなると、エア源Pと手動操作手段57との間を連通させるように駆動される。パイロットエアを利用して低圧側開閉弁を駆動する構成としたことによって、低圧側開閉弁の開閉を指示する信号線を省略することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0041】
低圧側開閉弁54と手動操作手段57との間には、低圧側開閉弁54から手動操作手段57に供給される圧縮エアのエア圧を減圧させる減圧弁55が設けられている。従って、エア供給手段52は、自動運転が選択されている場合には、自動操作手段56に高圧エアを供給し、手動運転が選択されている場合には、手動操作手段57に低圧エアを供給することができる。
【0042】
自動操作手段56は、高圧側開閉弁53とエアシリンダ43との間に介在されている。本実施の形態では、自動操作手段56は、5ポート3ポジションの切換電磁弁によって構成されており、制御装置3からの制御信号に応じてスプールのポジションを移動させて、高圧側開閉弁53とエアシリンダ43の第1気室43aとの間を連通させる接近ポジションと、高圧側開閉弁53とエアシリンダ43の第2気室43bとの間を連通させる離反ポジションのいずれか一方を選択して配置させることができる。
【0043】
手動操作手段57は、低圧側開閉弁54とエアシリンダ43との間に介在されている。本実施の形態では、手動操作手段57は、4ポート3ポジションのセレクタバルブによって構成されており、上述のセレクタバルブスイッチ44を操作して「開放」を選択することにより、スプールのポジションを、低圧側開閉弁54とエアシリンダ43の第2気室43bとの間を連通させる開放ポジションに配置することができる。そして、「戻し」を選択することにより、スプールのポジションを、低圧側開閉弁54とエアシリンダ43の第1気室43aとの間を連通させる戻しポジションに配置することができる。
【0044】
エアシリンダ43の第1気室43aには第1切換弁(切換手段)58が接続され、第2気室43bには第2切換弁(切換手段)59が接続されている。第1切換弁58は、自動操作手段56から高圧エアの供給を受けることにより自動操作手段56と第1気室43aとの間を連通させ、手動操作手段57から低圧エアの供給を受けることにより手動操作手段57と第1気室43aとの間を連通させる切換動作を行う。
【0045】
第2切換弁59は、自動操作手段56から高圧エアの供給を受けることにより自動操作手段56と第2気室43bとの間を連通し、手動操作手段57から低圧エアの供給を受けることにより手動操作手段57と第2気室43bとの間を連通させる切換動作を行う。
【0046】
上記したエア回路51によれば、自動運転では、制御装置3からの切換制御信号に応じて、高圧エアをエアシリンダ43の第1気室43a又は第2気室43bに供給して、高圧エアによりエアシリンダ43を駆動することができる。そして、手動運転では、セレクタバルブスイッチ44の操作によって、低圧エアをエアシリンダ43の第1気室43a又は第2気室43bに供給して、低圧エアによりエアシリンダ43を駆動することができる。従って、例えば手動運転時に作業者が駆動ロール41と押圧ロール42との間に挟まれた場合に、作業者に重大な損傷が与えられるのを防止することができ、手動運転時に行われる通紙作業において作業者の安全を確保することができる。
【0047】
また、上記したエア回路51によれば、自動運転では自動操作手段56によってエアシリンダ43が操作されるので、手動操作手段57の操作状態に影響を受けることなく、押圧ロール42を開閉させることができる。従って、例えば手動運転で手動操作手段57を操作して押圧ロール42を開状態とし、閉状態に戻し忘れたまま自動運転に切り換えた場合でも、自動操作手段56によって閉状態にすることができる。
【0048】
上記構成を有するウエブ搬送装置1は、エリアE別に手動運転と自動運転を切り換えることができる。例えば、作業者が第2エリアE2のロール搬送手段33にウエブWを挿通する作業を行う場合、第2エリアE2のみを手動運転とすることができる。他のエリアでは通常の自動運転が維持され、例えば第1エリアE1では、巻き出し装置31を駆動して、ワークWを巻き出し、第2エリアE2の手前まで供給することができる。
【0049】
第2エリアE2のロール搬送手段33にウエブWを挿通するには、安全柵Gの外側で且つロール搬送手段33の近傍位置である第2エリアE2の正面に設置された副操作盤12の停止準備ボタン21が押し操作される。自動運転中の場合には、副操作盤12の停止準備ランプ26が点灯し、第2エリアE2内が予め設定された停止可能状態となるまで自動運転が継続される。
【0050】
そして、第2エリアE2内が停止可能状態である場合、もしくは停止可能状態になると、副操作盤12の停止可ランプ27が点灯し、次の指示を待つ待機状態とされる。かかる状態で、副操作盤12の停止ボタン22を押し操作すると、第2エリアE2の運転状態が自動運転から手動運転に切り換えられる。
【0051】
従って、高圧側開閉弁53は、制御装置3から手動運転の制御信号を受け取り、エア源Pと自動操作手段56との間の連通を遮断する。そして、低圧側開閉弁54は、高圧側開閉弁53からのパイロットエアの供給がなくなり、エア源Pと手動操作手段57との間を連通させる。従って、自動操作手段56への高圧エアの供給が停止され、手動操作手段57に低圧エアが供給される。従って、手動操作手段57によるエアシリンダ43の操作が可能になる。
【0052】
第2エリアE2が手動運転になると、第2エリアE2の電磁ロックRが解除されて、安全柵Gの取り外しが可能になり、安全柵Gの内側に作業者が入ることが可能になる。作業者は、ロール搬送手段33の近傍に位置するセレクタバルブスイッチ44を操作して、「開放」を選択することにより、押圧ロール42を上方に移動させて駆動ロール41と押圧ロール42との間に間隙を形成し、その間隙に、第1エリアE1の下流端まで巻き出されたウエブWを挿通することができる。
【0053】
それから、「戻し」を選択することにより、押圧ロール42を下方に移動させて駆動ロール41と押圧ロール42との間にウエブWを挟持することができる。挿通作業終了後は、安全柵Gを元に戻して運転ボタン24を押し操作することにより、第2エリアE2のロール搬送手段33を手動運転から自動運転に切り替えることができる。
【0054】
上記したウエブ搬送装置1によれば、手動運転では、低圧エアによってエアシリンダ43を駆動することができる。従って、仮に作業者が駆動ロール41と押圧ロール42との間に挟まれた場合でも重大な損傷を与えるのを防ぐことができ、作業者の安全を確保することができる。
【0055】
また、手動運転から自動運転に切り換えることによって、エアシリンダ43を駆動する手段を手動操作手段57から自動操作手段56に変更することができる。従って、例えば通紙作業の後に、セレクタバルブスイッチ44を「開放」から「戻し」に戻し忘れた場合でも、自動操作手段56によってエアシリンダ43を駆動して、押圧ロール42を下方に移動させ、押圧ロール42と駆動ロール41との間にウエブWを挟持できる。従って、ウエブWを挟持しないまま自動運転がなされるのを防ぎ、ウエブWが詰まる等の不具合が発生するのを防ぐことができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、上述の実施の形態では、ニップロールの場合を例に説明したが、ニップロールに限定されるものではなく、ウエブWを挟持して搬送するものであれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ウエブ搬送装置の構成を示す概略図。
【図2】副操作盤の操作面の構成を示す図。
【図3】ウエブ搬送装置の柵内に設けられたセレクタバルブスイッチを示す外観図。
【図4】ウエブ搬送装置のエア回路図。
【符号の説明】
【0058】
1 ウエブ搬送装置
2 装置本体
3 制御装置
11 主操作盤
12 副操作盤
31 巻き出し装置
32 巻き取り装置
33 ロール搬送手段
41 駆動ロール
42 押圧ロール
43 エアシリンダ
43a 第1気室
43b 第2気室
44 セレクタバルブスイッチ
51 エア回路
52 エア供給手段
53 高圧側開閉弁
54 低圧側開閉弁
55 レギュレータ
56 自動操作手段
57 手動操作手段
G 安全柵
P エア源
R 電磁ロック
W ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを一対のロールの間に挟持して該ロールの回転により搬送するウエブ搬送装置において、
エアの供給を受けることにより該エアのエア圧に応じた押圧力で前記一対のロールを互いに接近及び離反する方向に相対的に移動させるエアシリンダと、
該エアシリンダに高圧エアと低圧エアを選択的に供給可能なエア供給手段と、
自動運転時に所定の制御信号に応じて前記エア供給手段から前記エアシリンダに前記高圧エアを供給する自動操作手段と、
手動運転時に手動切換操作に応じて前記エア供給手段から前記エアシリンダに前記低圧エアを供給する手動操作手段と、
を有することを特徴とするウエブ搬送装置。
【請求項2】
前記エア供給手段は、自動運転時に高圧エアを供給し、手動運転時に前記高圧エアの供給を停止する高圧側開閉弁と、前記高圧側開閉弁により前記高圧エアが供給されている場合に前記低圧エアの供給を停止し、前記高圧エアの供給が停止されている場合に前記低圧エアを供給する低圧側開閉弁を有し、
前記自動操作手段が前記高圧側開閉弁と前記エアシリンダとの間に介在され、前記手動操作手段が前記低圧側開閉弁と前記エアシリンダとの間に介在された構成を有することを特徴とする請求項1に記載のウエブ搬送装置。
【請求項3】
前記低圧側開閉弁は、前記高圧側開閉弁から前記自動操作手段に供給される高圧エアを利用して駆動される構造を有することを特徴とする請求項2に記載のウエブ搬送装置。
【請求項4】
前記自動操作手段から前記高圧エアの供給を受けることにより前記自動操作手段と前記エアシリンダとの間を連通させ、前記手動操作手段から前記低圧エアの供給を受けることにより前記手動操作手段と前記エアシリンダとの間を連通させる切換手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のウエブ搬送装置。
【請求項5】
自動運転時に作業者が侵入するのを防ぐ安全柵を備えており、
前記手動操作手段が前記安全柵の内側で且つ前記一対のロールの近傍位置に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のウエブ搬送装置。
【請求項6】
前記一対のロールを有するロール搬送手段を複数備え、
前記安全柵の外側でかつ前記各ロール搬送手段の近傍位置に、対応する前記ロール搬送手段の自動運転又は手動運転を選択可能な操作手段を配設したことを特徴とする請求項5に記載のウエブ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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