ウエルシュ菌の検出方法およびウエルシュ菌検出用のキット

【課題】エンテロトキシン産生ウエルシュ菌の迅速かつ簡便で正確な検出をする。
【解決手段】ウエルシュ菌のエンテロトキシン遺伝子、cpe遺伝子に含まれるターゲット領域に対するプライマー対のセットを設計し、かかるプライマー対のセットを用いて一本鎖核酸として遺伝子産物を増幅する。さらにかかる増幅産物を、プライマー対のセットとは異なるターゲット領域内の配列にハイブリダイズする第1プローブ結合標識高分子担体と、固相化した第2プローブ担持展開支持体を用い、核酸クロマトグラフ法を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする迅速かつ簡便な検出方法および検出キット、より詳しくは、ウエルシュ菌のcpe遺伝子由来の転写産物を鋳型にし増幅させ、その増幅産物を検出するための方法および検出用のキットに関する。
【背景技術】
【0002】
偏性嫌気性のグラム陽性桿菌であるウエルシュ菌は、人や動物の腸管内や、あるいは下水、河川、海、耕地などの土壌等に広く分布しており、また食品類の汚染率も高い。ウエルシュ菌による食中毒は、分子量約35000のタンパク質であるエンテロトキシンが原因物質であり、一般にエンテロトキシンは易熱性であり、また酸にも弱く胃液によりその多くが失活されるが、食品中で大量に増殖したエンテロトキシン産生性ウエルシュ菌の生菌を大量摂取した場合などに発症する感染型の食中毒である。
【0003】
因みに食品1gあたり106cfu程度のエンテロトキシン産生性ウエルシュ菌により食品が汚染されると食中毒を発症する。ウエルシュ菌の検出法としては、増菌培養や嫌気的条件での菌分離培養を経て血清学的試験やエンテロトキシン産生試験、生化学的性状試験等が実施されている。これらの検出手法は結果を得るまでに、3−5日程度の非常に長い時間と多大な労力が必要である。
【0004】
またウエルシュ菌のエンテロトキシン遺伝子(cpe)の塩基配列も既に公開されており、遺伝子学的な手法を用いたエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出方法が開発されている。遺伝子学的な手法、特に核酸増幅法を用いれば、高感度な検査法となり得るため、食中毒菌を含めた感染症菌の検出にとって有益性は高い。
【0005】
この核酸増幅法の1つにPCR(Polymerase
Chain Reaction)法を用いた検査方法があり、それに適したプライマーが発見されている。この方法は、鋳型の熱変性から、鋳型とプライマーのアニーリングを経て、プライマーの伸張反応までを1サイクルとするため、1分間隔で温度を上下させ得る特別な機器を必要とするだけでなく、検査に要する所要時間も約3時間程度はかかる方法である。
【0006】
また例えば特許第3419299号公報にも記載されているように、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動させると更に30分程度の時間が必要であり、最終的なPCR産物の検出には、発ガン性物質である臭化エチジウム等を用いる必要がある。
【0007】
さらに別の1つとしては、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を用いた方法(特開2007−159533号公報参照)も開発され、その方法に適したプライマーが発見されている。この方法は、65℃の等温で鋳型とプライマーのアニーリングおよびプライマーの伸張反応を行う方法であり、プライマーの伸張反応時に産生されるピロリン酸が反応液中のマグネシウムと反応し白濁を伴うピロリン酸マグネシウムを産生する事を利用し、その濁度の産生によりプライマーの伸張反応が起こった事を知るものであって、増幅時間は前記したPCR法に比べて約1時間程度と比較的短かくて済む。
【0008】
この場合に増幅反応が起こったか否かは、プライマーの伸張反応時に産生されるピロリン酸の反応白濁に伴う濁度の産生によりプライマーの伸張反応が起こったことを知るようにしたものである。しかし任意の検体を試料とした場合に、非特異増幅の可能性を考慮する必要があるが、ピロリン酸マグネシウムを用いた検出方法では、非特異的な増幅反応が起こったとしても白濁するため擬陽性の懸念が拭えない。
【0009】
定量PCR 等のリアルタイム検出系で使用されるTaqManプローブやBeaconプローブに代表される増幅反応においてプライマーとして機能しない検出用の蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(さきの特許第3419299号公報)、あるいはベンゾ-1,3-チアゾール骨格を有する化学発光性化合物(特開平7−89959号公報参照)などを用いれば、その配列特異的なハイブリ反応により、非特異的な増幅産物の検出を回避する事が可能である。
【0010】
しかし、蛍光プローブを用いれば、さらにそれらの蛍光プローブを検出するための特別な機器が別途必要となる。また蛍光プローブを用いずに配列特異的なハイブリ反応を利用して検出する方法として、伝統的にはサザンハイブリダイゼーション法またはノーザンハイブリダイゼーション法があるが、検出までに多大の時間と労力を要するために現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3419299号公報
【特許文献2】特開2007−159533号公報
【特許文献3】特開平7−89959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
広く様々な施設において、食中毒の発生を未然に防止するためには、菌で汚染された食品を摂取する前に、その各現場において、その多様な食品を試料として正確に検査できるだけでは成り立たない。即ち、その正確な検査を迅速かつ簡便でなければならない。また、食品現場での試験を想定すれば、発ガン性物質を用いた検査手法は避けるべきものである。更に広く様々な施設において実効性を確保するためには、特別な機器は不要とすべきである。
【0013】
一般に食中毒の原因物質であるウエルシュ菌の増菌培養や分離培養を経て検査する場合、通常は3−5日程度の非常に長い時間と多大な労力が費やされるため、摂食現場において食品の摂取前に検査を行うことは事実上不可能である。そこで、遺伝子学的な手法を用いたエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出方法を用いれば、当日中の検査を実施する事は可能となる。
【0014】
しかし、PCR法に最適化されたプライマーを用いた検査法の場合には、特別な機器が必要であり、広く様々な施設での実施における実効性はない。また検出までの時間も長く、食品摂取前の検査には間に合わず不的確である。更に検出段階で発ガン性物質の使用は食品現場での検査は想定できない。
【0015】
LAMP法に最適化されたプライマーを用いた検査法の場合、増幅反応が起こったか否かの判定はできるが、ピロリン酸マグネシウムを用いた検出法では、得られた増幅産物が標的核酸由来か非特異増幅由来かの判定ができない。また、増幅時間に1時間程度は必要であり、食品摂取前の検査としては、迅速性に欠ける。
【0016】
本発明の課題は、エンテロトキシン産生ウエルシュ菌を、特別な機器を用いることなく、迅速かつ簡便な操作で、非特異増幅産物の検出を回避するシステムを用いて、正確に検出する方法および、それに用いる検出キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を総じて解決するため、まずウエルシュ菌の毒素であるエンテロトキシンの遺伝子、特にその転写産物であるmRNAを、食中毒の原因であるエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の生菌を捕らえる標的とした。 ウエルシュ菌の検出手段としてNASBA(Nucleic Acid Sequence-based
Amplification)法を用いる場合においては特別な機器を用いる必要がなく、RNAを鋳型として簡便にワンステップで標的核酸を増幅できる。
【0018】
このNASBA法は核酸増幅法として、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法という1本鎖RNAを鋳型として、3種類の酵素(逆転写酵素、T7 RNA polymerase、RNase H)を用いて、鋳型に対しての逆鎖の1本鎖RNAを増幅産物として好適に産生することができる。このNASBA法は等温で増幅反応が進むため、ヒートブロックがあれば増幅反応を実施でき、また特別な機器を必要としない。
【0019】
さらに、NASBA法の増幅産物は1本鎖のRNAであるため、増幅反応のプライマーとして使用されない1本鎖のオリゴヌクレオチドをプローブとして配列特異的にハイブリ結合する場合に、2本鎖核酸を増幅産物とする在来の増幅法に比べて競合鎖が存在しない条件でプローブと増幅産物のハイブリ結合反応で増幅産物を検出できるだけでなく、2本鎖を1本鎖に変性する工程を省くことができる利点がある。
【0020】
さらにNASBA産物の検出方法としては、配列特異的なプローブを用いたハイブリ反応を利用したプレート法、核酸クロマトグラフィー法が挙げられる。特に核酸クロマトグラフィー法はメンブレンストリップ上の特定位置に固相化されたオリゴヌクレオチドプローブと着色粒子で標識されオリゴヌクレオチドプローブにより、毛細管現象を利用して流れてきた標的NASBA産物を配列特異的にサンドイッチハイブリダイゼーションにより捕捉し、標的NASBA産物が両プローブで捕捉された時のみ着色粒子を介して視認できるため、ほかに特別な機器を準備して用いることなく簡便に検出できるシステムであるといえる。
【0021】
上記の配列特異的なプローブを用いたハイブリ反応を利用したプレート法や核酸クロマトグラフィー法は、標的NASBA産物の検出法としてきわめて適しており、ごく少量の標的であっても短時間で検出し得る特徴を有している。
【0022】
さらに、標的NASBA産物の増幅による増幅産物の検出にあたっては、非特異増幅産物を検出しない検出原理を有し、また検出時の操作性が極めて簡便で、検出時間も短く、格別の機器を用いる事なく検出し得る核酸クロマトグラフィー法を使用することとした。
【0023】
さらに本発明者らは、増幅領域内に有りかつ増幅反応時に使用したプライマーとは異なる配列と特異的にハイブリ結合可能であり、更には核酸クロマトグラフィー法を用いた検出方法に適する特徴を有した2種類のプローブを見出し、エンテロトキシン産生ウエルシュ菌を、特別な機器を用いることなく、迅速かつ簡便な操作で、非特異増幅産物の検出を回避するシステムを用いて正確に検出するべく本発明の完成に至った。
【0024】
すなわち、本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅することができる配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマー対とを備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法に関する。
【0025】
また本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸をNASBA法に代表される(核酸増幅)技術を使い、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’の末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより一本鎖核酸として増幅するようにしたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法に関する。
【0026】
さらに本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅した核酸を、配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第1のプローブと、該第1のプローブと対をなすところの、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第2のプローブとにより検出するようにしたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法に関する。
【0027】
さらに本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする食中毒原因菌の検出方法であって、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸を、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより1本鎖核酸とすることによって増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記した(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法に関する。
【0028】
さらに本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする食中毒原因菌の検出方法であって、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸から配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとを用いて1本鎖核酸とすることにより増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記した(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とする検出キットに関する。
【発明の効果】
【0029】
上記した通り、本発明は検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅することができる配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマー対とを備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法である。
【0030】
また検体試料中より任意に抽出された標的核酸をNASBA法に代表される(核酸増幅)技術を使い、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’の末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより一本鎖核酸として増幅するようにしたウエルシュ菌の検出方法であり、さらに検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅した核酸を、配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第1のプローブと、該第1のプローブと対をなすところの、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第2のプローブとにより検出するようにしたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法である。
【0031】
さらに、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸を、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより1本鎖核酸とすることによって増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記した(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法である。
【0032】
さらに本発明は、エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする食中毒原因菌の検出方法であって、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸から配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとを用いて1本鎖核酸とすることにより増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記した(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とする検出キットである。
【0033】
本発明は、上記したそれぞれの構成により、エンテロトキシン産生ウエルシュ菌を特別な機器を用いることなく、特異的に検出することが可能である。また、極めて短時間で高感度にcpe RNAを検出することが可能であり、食中毒が発症する基準である食品1gあたり106cfu程度のエンテロトキシン産生性ウエルシュ菌も食品試料より迅速かつ確実に検出することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】核酸クロマトグラフィー検出法に最適なプローブ対を選別した時の検討結果をあらわした表。
【図2】NASBA増幅法に最適なプライマー対を選別した時の検討結果をあらわした表。
【図3】NASBA法に適したプライマー対と核酸クロマトグラフに適したプローブ対を併せた検査方法の性能、特に検出感度に至るまでの時間の速さを検討した結果をあらわした表。
【図4】NASBA法に適したプライマー対と核酸クロマトグラフに適したプローブ対を併せた検査方法の性能、特に特異性を検討した結果をあらわした表。
【図5】NASBA法に適したプライマー対と核酸クロマトグラフに適したプローブ対を併せた検査方法の性能、特に食品試料中のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を検出可能であることを示すヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片。
【図6】NASBA法に適したプライマー対と核酸クロマトグラフに適したプローブ対を併せた検査方法の性能、特に血漿料中のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を検出可能である事を示すヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔工程(a)〕―試料中から抽出した標的核酸を増幅する工程
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒原因菌の検出に際して、検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅させるが、上記エンテロトキシン産生ウエルシュ菌に特異的な標的核酸としては、cpe遺伝子、特にその転写産物であるmRNAに含まれる領域の核酸を例示することができる。
【0036】
また工程(a)で標的核酸の増幅に際して用いられる配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマー対は、cpe遺伝子、特にその転写産物であるmRNAを標的核酸として増幅することができるプライマー対であり、配列番号1と2に示されるヌクレオチド配列である。
【0037】
より具体的には、配列番号1に示されるヌクレオチド配列(5’-GAATAACTATAGGAGAACAA-3’)からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列(5’-CACATCTTTCACCAGTTTCA-3’)及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーのプライマー対の組み合わせが用いられる。
【0038】
上記したRNAポリメラーゼプロモーター配列としては、T7RNAポリメラーゼのプロモーター配列、T3RNAポリメラーゼのプロモーター配列、SP6RNAポリメラーゼのプロモーター配列等を挙げることができるが、なかでもT7RNAポリメラーゼのプロモーター配列が、高いRNA増幅効率を呈することができる点で好ましい。
【0039】
またT7RNAポリメラーゼのプロモーター配列として、例えば、5’−AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAG−3’(配列番号14)を挙げることができる。上記配列番号1〜2に示されるヌクレオチド配列において、1塩基又は数個(例えば1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の塩基が欠失、置換又は付加されていても、標的核酸を増幅することができるものであれば、本発明におけるプライマーとして使用することができる。
【0040】
上記フォワードプライマーやリバースプライマーは、DNA合成装置等を用いて常法により合成することができる。先に述べたとおり、これらのプライマー対はcpe遺伝子、特にその転写産物であるmRNAを標的核酸として増幅することができる配列番号1と2に示されるヌクレオチド配列である。
【0041】
すなわち、より具体的には、配列番号1に示されるヌクレオチド配列(5’-GAATAACTATAGGAGAACAA-3’)からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列(5’-CACATCTTTCACCAGTTTCA-3’)及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーのプライマー対の組み合わせが用いられる。
【0042】
かかるRNAポリメラーゼプロモーター配列としては、T7RNAポリメラーゼのプロモーター配列、T3RNAポリメラーゼのプロモーター配列、SP6RNAポリメラーゼのプロモーター配列等を挙げることができるが、なかでもT7RNAポリメラーゼのプロモーター配列が、高いRNA増幅効率の点で好ましい。この場合におけるT7RNAポリメラーゼのプロモーター配列として、例えば、5’−AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAG−3’(配列番号14)を挙げることができる。
【0043】
上記配列番号1〜2に示されるヌクレオチド配列において、1塩基又は数個(例えば1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の塩基が欠失、置換又は付加されていても、標的核酸を増幅することができるものであれば、本発明におけるプライマーとして使用することができる。上記フォワードプライマーやリバースプライマーは、DNA合成装置等を用いて常法により合成することができる。
【0044】
上記工程(a)における検出対象の食中毒菌の核酸を含む可能性のある被検試料としては、糞便、尿、血液、組織ホモジェネート、食品材料及びそれらに含まれる微生物や、かかる微生物の培養物の細胞溶解液等を挙げることができる。かかる被検試料から核酸を抽出するための方法としては、チオシアン酸グアニジンを用いるRNA抽出法や、EDTA−SDS−フェノール−エタノールを用いる核酸抽出法等の公知の方法の他、ExtragenII(東ソー社製)やMora−Extract(Advanced
Microorganism Research社製)等の市販品を用いることもできる。
【0045】
標的核酸が標的RNAである場合、上記工程(a)において用いられる標的核酸の増幅法として、NASBA法、転写媒介性増幅法(TMA法)、転写酵素と逆転写酵素の協奏反応によるRNA増幅・検出法(Transcription Reverse Transcription Concerted Reaction、TRC法)等の公知のRNA増幅法がある。
【0046】
例えば、NASBA法、TMA法およびTRC法の場合、その原理としてRNA polymeraseを用いて転写反応を利用し増幅産物を得るという共通点がある一方で、相違点も存在する。TRC法の場合、NASBA法やTMA法とは異なり、増幅試薬にフォワードプライマーおよびリバースプライマーを加えただけでは、原理上増幅反応は開始されない。これは、核酸増幅工程の前段階としてシーザープローブによる標的mRNAの切断工程が必要なためである。
【0047】
即ち、TRC法はNASBA法やTMA法に比べ、増幅反応において工程数が多く複雑性を持った増幅法と言える。NASBA法とTMA法は、ほぼ同じ増幅原理を有しているが、増幅反応に用いる酵素の数が、TMA法では逆転写酵素とRNA polymeraseの2種類であるのに対し、NASBA法では逆転写酵素、RNA polymeraseおよびRNaseHの3種類であり、この点が両方法間の差異である。TMA法では、逆転写酵素に含まれるRNaseH活性を利用し、DNAとRNAの二本鎖のRNA鎖側を分解する反応を行っている。
【0048】
即ち、TMA法ではRNAを鋳型にcDNAを合成する逆転写反応と、DNAとRNAの二本鎖のRNA鎖側を分解する反応を1種類の酵素(逆転写酵素)で担わせているのに対し、NASBA法では、これら2つの反応(逆転写反応およびDNAとRNAの二本鎖のRNA鎖側を分解する反応)を1種類の酵素で競合させる事なく、各反応に対し専用の酵素を当て効率的に増幅反応を行うという特徴を有している。これら核酸増幅方法の差異を踏まえ、なかでも特にNASBA法、たとえば特許第2650159号公報に記載のNASBA法を有利に用いることができる。
【0049】
上記したNASBA法は、試料中の標的RNAをRNAポリメラーゼや逆転写酵素を介して増幅する方法であるが、例えば、前記した特許第2650159号公報に記載されているNASBA法においては以下の工程からなるものであることが開示されている。
【0050】
(A) 標的核酸(第一鋳型)とRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するリバースプライマーが配列特異的にハイブリダイズする工程;
(B) 逆転写酵素により、標的核酸を鋳型にしてリバースプライマーの3’末端側からDNAを合成し、RNA鎖とDNA鎖からなる二本鎖核酸を形成する工程;
(C) RNA鎖とDNA鎖からなる二本鎖核酸の内、RNAのみをRNaseHにより分解して一本鎖DNAを形成する工程;
(D) ついで該一本鎖DNA(第二鋳型)とファワードプライマーが配列特異的にハイブリダイズする工程;
(E) 逆転写酵素により、該一本鎖DNAを鋳型(第二鋳型)にしてファワードプライマーの3’末端側からDNAを合成し、RNAポリメラーゼのプロモーターを有する二本鎖DNAを形成する工程;
(F) RNAポリメラーゼにより、該二本鎖DNAから一本鎖RNA(第三鋳型)を合成する工程;
(G) 該一本鎖RNA(第三鋳型)とファワードプライマーが配列特異的にハイブリダイズする工程;
(H) 逆転写酵素により、該一本鎖RNA(第三鋳型)を鋳型にしてファワードプライマーの3’末端側からDNAを合成し、RNA鎖とDNA鎖からなる二本鎖核酸を形成する工程;
(I) RNA鎖とDNA鎖からなる二本鎖核酸の内、RNAのみをRNaseHにより分解して一本鎖DNA(第四鋳型)を形成する工程;
(J) ついで該一本鎖DNA(第四鋳型)とリバースプライマーが配列特異的にハイブリダイズする工程;
(K) 逆転写酵素により、該一本鎖DNAを鋳型(第四鋳型)にしてリバースプライマーの3’末端側からDNAを合成し、RNAポリメラーゼのプロモーターを有する二本鎖DNAを形成する工程;
(L) RNAポリメラーゼにより、該二本鎖DNAから一本鎖RNA(第三鋳型)を合成する工程;
(M) 工程(G)から工程(L)を繰り返す。

【0051】
〔工程(b)〕―増幅産物を核酸クロマト法を用いて検出する工程
上記したNASBA法により増幅された前記工程(a)の増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する。
【0052】
工程(b)において用いられるプローブ対は、上記工程(a)での増幅産物と相補的であり、かつプライマーで使用したヌクレオチド配列を除いたヌクレオチド配列から選ばれたプローブ対であり、配列番号3と4に示されるヌクレオチド配列である。より具体的には、配列番号3に示されるヌクレオチド配列(5’-CATGGTAATATCTCTGATGATGGATC-3’)からなる第1のプローブと、配列番号4に示されるヌクレオチド配列(5’-TAACAGGAATATGGCTTAGTAAAAC-3’)からなる第2のプローブ対の組み合わせが用いられる。
【0053】
配列表では、便宜上DNA配列で示されているが、DNAのヌクレオチド配列からなるプローブ対であってもよいし、RNAのヌクレオチド配列からなるプローブ対であってもよい。しかし、プローブとしての安定性に優れていることからDNAのヌクレオチド配列からなるプローブ対であることが好ましい。
【0054】
上記プローブ対のいずれを第1のプローブ又は第2のプローブにするかは、適宜選択・決定することができる。また、上記配列番号3又は4に示されるヌクレオチド配列において、1塩基又は数個(例えば1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の塩基が欠失、置換又は付加されていても、特異的な標的核酸を検出することができるものであれば、本発明におけるプローブとして使用することができる。
【0055】
第1のプローブを標識高分子担体に固相化結合させる方法としては、5’又は3’末端に付加基を導入した配列番号3に示されるヌクレオチド配列を有するDNAを、付加基を導入した標識高分子担体に結合させる方法を挙げることができる。上記付加基を導入するDNAの末端は5’末端が好ましい。また、上記付加基としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基等を挙げることができるが、例えば、標識高分子担体がカルボキシル基で修飾されている場合はアミノ基が好ましい。
【0056】
上記標識高分子担体における高分子担体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩等の親水性樹脂やアクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、ポリスチレン系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、NBR樹脂、ポリアミド系ラテックス、カルボキシ変性ポリスチレン系ラテックス等のラテックスなどを挙げることができる。
【0057】
この場合に上記配列番号3に示されるヌクレオチド配列にアミノ基が導入されている場合には、アミノ基とカルボキシキル基を介して共有結合を生じる反応によって、第1のプローブを標識高分子担体に結合させることが容易となるため、ポリスチレン系ラテックス中にカルボキシル基を導入したカルボキシ変性ポリスチレン系ラテックスが好ましく、具体的には、カルボキシル基含有ポリスチレンラテックス(固型分4%(w/w))(Duke Scientific社製)やカルボキシル基含有ポリスチレンラテックス(固型分10%(w/w))(Bangs社製)を用いることができる。
【0058】
第1プローブが結合した標識高分子担体である第1プローブ結合標識高分子担体の調製のための具体的な方法としては、例えば、配列番号3に示されるヌクレオチド配列の5'末端にアミノ基を導入した第1プローブと、カルボキシル基含有ポリスチレンラテックス(Bangs社製)と、水溶性カルボジイミドを50mMのMES(2-Morpholinoethanesulfonic acid、monohydrate)(同仁化学研究所社製)緩衝液中で混合し、ラテックス中のカルボキシル基と第1のプローブのアミノ基とを結合させた後、モノエタノールアミン(和光純薬工業社製)を添加し、さらに反応させ、上記反応液を遠心分離後上清除去し、得られた沈殿に非イオン性の界面活性剤を含むHEPES(2−[4−(2−Hydroxyethyl) -1- piperazinyl]
ethanesulfonic acid)(埼京化成社製)緩衝液で洗浄及び再懸濁して調製する方法を挙げることができる。
【0059】
また、高分子担体の粒子径の大きさは適宜選択することができるが、メンブレン孔径より小さい粒径から選択されることが好ましく、例えば直径500nm以下の粒子の大きさを選択することができる。また、上記の標識高分子担体として、展開支持体の色と識別可能な色を呈する、高分子担体を用いてもよく、顔料等を用いて着色した高分子担体を用いることもできる。
【0060】
さらに、第2プローブを担持展開した支持体の調製方法としては、展開支持体上の識別可能な所定の位置に第2プローブを固相化する方法を挙げることができる。具体的には例えば、5’又は3’末端に付加基を導入した配列番号4に示されるヌクレオチド配列を有するプローブを展開支持体に固相化させる方法を挙げることができる。
【0061】
上記付加基を導入するDNAの末端は3’末端が好ましい。また、上記付加基としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基等を挙げることができるが、例えば、展開支持体がカルボキシル基で修飾されている場合はアミノ基が好ましく、かかる付加基の付加の有無に関わらず、化学合成法等公知の方法を利用して第2のプローブを作製することが可能である。
【0062】
上記の展開支持体としては、ナイロンメンブレンやカルボキシル基修飾ナイロンメンブレン等のナイロンメンブレン誘導体、セルロースメンブレンやニトロセルロースメンブレン等セルロースメンブレン誘導体などを挙げることができるが、上記配列番号4に示されるヌクレオチド配列にアミノ基が導入されている場合には、アミノ基とカルボキシキル基を介して共有結合を生じる反応によって、第2のプローブを展開支持体上の識別可能な所定の位置に固相化することが容易となるため、カルボキシル基修飾ナイロンメンブレンがより好ましい。
【0063】
また第2プローブ担持展開支持体の具体的な調製方法としては、例えば、カルボキシル基修飾ナイロンメンブレンを水溶性カルボジイミドにより処理し、脱イオン水で洗浄して活性化し、かかる活性化したカルボキシル基修飾ナイロンメンブレンに、第2のプローブ配列を有するヌクレオチドを識別可能となるように適宜所定の位置に固相化する。
【0064】
かかる固相化状態のまま凡そ15分間風乾し、その後第2のプローブ配列を有するヌクレオチドが固相化されたカルボキシル基修飾ナイロンメンブレンをTrisベース緩衝液で処理することで活性基を消去し、ヌクレオチドが固相化されたメンブレンを脱イオン水で洗浄して調製する方法を例示することができる。なお、第2プローブ配列を有するヌクレオチドの固相化の態様としては特に制限されず、ライン状でも円形スポット状でもよい。
【0065】
上記の工程(b)における前記増幅産物を検出する方法としては、展開支持体に固相化して担持された第2プローブ及び標識高分子担体結合第1プローブに、増幅した1本鎖核酸をハイブリダイズさせて検出する方法であれば特に制限されないが、あらかじめ第1プローブを標識高分子担体に結合した第1プローブ結合標識高分子担体を保持部に保持させておくことが好ましく、かかる保持部として、ADVANTEC製の吸収パッドを好適に例示することができる。
【0066】
かかる第1プローブ結合標識高分子担体を保持した展開パッド等からなる保持部を、前記第2プローブ担持展開支持体の他端に順次連結することにより、本発明の検出方法に有利に用いることができる核酸クロマトグラフ用試験片とすることができる。なお上記した保持部の作製方法としては、第1プローブ配列を有するヌクレオチドが結合している標識高分子担体を保持部に塗布し、乾燥させる方法を例示することができる。
【0067】
工程(b)において、前記した工程(a)における増幅産物を、展開支持体に担持させた第2プローブ及び標識高分子担体に結合した第1プローブにハイブリダイズさせて検出する方法としては、例えば、上記核酸クロマトグラフ用試験片を、増幅産物を含む溶液に浸すことで、上記第1プローブ結合標識高分子担体は、上記保持部から展開支持体に浸出し、展開支持体上の第1プローブと対をなす第2プローブが固相化されている所定の位置に達した場合に、かかる所定の位置で、上記増幅産物をサンドイッチハイブリダイズすることで捕捉することができる。

【0068】
〔工程(c)〕―検出像を判定・評価する工程
ついで、第1プローブ配列を有するヌクレオチドが結合している標識高分子担体が、第2プローブ配列を有するヌクレオチドが展開支持体上の固相化されている位置に達した所定の位置で蓄積することにより、所定の位置に現れる着色ラインや着色スポット等の有無を検出像として直接又は蛍光可視化装置で、判定することによりウエルシュ菌の存否、および量を評価することができ、かかる評価により検出対象食中毒菌(エンテロトキシン産生ウエルシュ菌)を検出することができる。なお、上記判定は、簡便性の点で目視判定とすることが好ましい。

【0069】
〔ウエルシュ菌検出用キット〕
本発明のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出用キットとしては、上記本発明のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出のために用いることができ、試料中より任意に抽出されたエンテロトキシン産生ウエルシュ菌に特異的な標的核酸を増幅することのできる配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマー対とを備えたものである。
【0070】
かかるキットは、上記プライマー対の他、前記した工程(a)におけるRNA増幅法に用いられる各種試薬類や、前記工程(b)における増幅産物の検出法に用いられる各種試薬類を備えていてもよい。
【0071】
または、試料中より任意に抽出されたエンテロトキシン産生ウエルシュ菌に特異的な標的核酸からプライマーを用いて1本鎖核酸として増幅する増幅セットと;増幅産物と相補的なヌクレオチド配列、例えば配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第1のプローブが標識高分子担体に結合された第1プローブ結合標識高分子担体と;第1のプローブと対をなす第2のプローブ、例えば配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブが固相化された第2プローブ担持展開支持体とを備えたキットであってもよく、上記増幅セットと前記核酸クロマトグラフ用試験片とを備えたキットをも好適に例示することができる。
【0072】
かかるキットは上記本発明のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出のために好適に用いることができる。

【実施例1】
【0073】
合成RNAの作製
プライマーおよびプローブ性能を確認するため、プラスミドベクターを利用したDNAクローニングによって、cpe遺伝子領域の合成 RNAを作製した。具体的には、まず、プラスミドベクターに、ウエルシュ菌の標的遺伝子cpeのDNA断片を挿入後、宿主となる大腸菌に形質転換し、標的遺伝子領域をクローニングした組換え体を作製した。大腸菌から組み換えプラスミドを抽出した後、MEGAscript Kit(Ambion社製)を用いてプロトコールにしたがってRNAを合成した。合成RNAのコピー数は、分光光度計を用い波長260nmにおける吸光度より算出した。
【0074】
プローブ結合標識高分子担体の作製
オリゴヌクレオチドプローブとカルボキシル基含有ポリスチレンラテックスとを結合させるために、プローブ配列の5’末端にアミノ基を導入した5’末端アミノ基導入オリゴヌクレオチドをDNA合成機により合成した。配列番号3および10〜13のプローブ配列を有するヌクレオチドと、カルボキシル基含有ポリスチレンラテックス(Bangs社製)とを、水溶性カルボジイミドを50mMのMES(2-Morpholinoethanesulfonic
acid、monohydrate)(同仁化学研究所社製)緩衝液中で混合し、ラテックス中のカルボキシル基とプローブのアミノ基とを結合させた後、モノエタノールアミン(和光純薬工業社製)を添加し、さらに反応させた。
【0075】
上記反応液を遠心分離後上清除去し、得られた沈殿に非イオン性の界面活性剤を含むHEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1- piperazinyl] ethanesulfonic acid)(埼京化成社製)緩衝液で洗浄及び再懸濁して、プローブ配列を有するヌクレオチドが結合している標識高分子担体が調製され、使用時まで4℃にて保存された。
【0076】
プローブ配列を有するオリゴヌクレオチドが、識別可能な所定の位置に固相化された展開支持体の作製
オリゴヌクレオチドプローブと、カルボキシル基修飾ナイロンメンブレン(ポール社製)とを結合させるために、プローブ配列の3’末端にアミノ基を導入した3’末端アミノ基導入オリゴヌクレオチドをDNA合成機により合成した。上記メンブレンを水溶性カルボジイミドにより処理し、脱イオン水で洗浄し活性化させた。
【0077】
かかる活性化されたカルボキシル基修飾ナイロンメンブレンに上記3’末端アミノ基導入オリゴヌクレオチド(配列番号3,4および11〜13)の1種類を結合させ、15分間風乾した。風乾されたメンブレンをTrisベース緩衝液で処理し、残存する活性基を除去した後、メンブレンを脱イオン水で洗浄し、再び風乾することで、プローブ配列を有するオリゴヌクレオチドが、識別可能な所定の位置にライン状に固相化された展開支持体を作製することができた。
【0078】
核酸クロマトグラフ測定用試験片の作製
さらに本発明に用いられる核酸クロマトグラフ用試験片を以下のように作製した。具体的にはプローブ配列を有するヌクレオチドが結合している標識高分子担体を緩衝液に溶解して展開パッド(ADVANTEC社製)に塗布した後、乾燥させて保持部とした。さらに上記展開支持体の一端に、上記展開支持体とは重なり合わない部分で保持部を連結した。さらに、該展開支持体の他端に吸収パッド(ADVANTEC社製)を連結し、核酸クロマトグラフ測定用試験片とした。
【0079】
プローブ対の決定
配列番号3、4、11〜13のプローブを固相化した展開支持体と、配列番号3、10〜13のプローブと結合した標識高分子担体を用いて、核酸クロマトグラフ測定用試験片を作製し、1010コピーのin vitro合成RNAを使用して、最も効率よく核酸クロマトグラフで検出し得るプローブ対を調べた。
【0080】
結果
配列番号3のヌクレオチドを第1プローブとし、配列番号4のヌクレオチドを第2プローブとした時、最も効率よく標的核酸を検出し得ることが判明した(図1参照)。

【実施例2】
【0081】
フォワードプライマーの決定
フォワードプライマーとしては、配列番号1、5、6に示されるヌクレオチド配列を用いられた。鋳型としては実施例1の〔合成RNAの作製〕で作製したcpe RNAを用い、in vitro合成RNAをRNase
free waterで段階希釈し、100コピー/テストに調製した。またNASBA法の実施に必要な試薬は、NASBA Amplification キット(カイノス社製)を使用し、NASBA法はそのキットの操作手順に従い実施した。
【0082】
但し、増幅時間は、使用説明書記載の90分ではなく、短縮して60分とした。増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動により確認することができた。具体的には、2%濃度のアガロースゲルを用い、定電圧100Vで40分間、電気泳動した。その他の操作方法等に関しては、Molecular
Clonig 第2版に従い実施した。
【0083】
結果
フォワードプライマーとしては、配列番号1を用いると、何れのリバースプライマーともNASBA法により目的長の増幅産物が得られることが判明した(図2(A)参照)。
【0084】
リバースプライマーの決定
つぎに、フォワードプライマーとしては、配列番号1を用い、リバースプライマーとしては、その5’末端側にRNAポリメラーゼプロモーター配列が付加された配列番号2、7、8、9に示されるヌクレオチド配列が用い、10コピー/テストのin vitro合成RNAを鋳型にして、NASBA増幅時間を30分に短縮し、その他の操作は前記した実施例2の〔フォワードプライマーの決定〕と同じ操作でより高い効率でNASBA増幅可能なプライマー対を調べた。
【0085】
結果
その結果、配列番号1のフォワードプライマーの対となるリバースプライマーとしては、配列番号2を用いた時、NASBA法において最も増幅効率が優れることが判明した(図2(B)参照)。

【実施例3】
【0086】
プライマー対およびプローブ対の有用性の確認
フォワードプライマーとしては、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を用い、リバースプライマーとしては、その5’末端側にRNAポリメラーゼプロモーター配列が付加された配列番号2に示されるヌクレオチド配列を用いて、10コピー/テストのin vitro合成RNAを鋳型として、NASBA増幅を行った。また、ネガティブコントロールとしては、in vitro合成RNA の代わりに、RNase free water を用いた。
【0087】
この場合にNASBA法に必要な試薬は、NASBA Amplification キット(カイノス社製)を使用し、NASBA法はそのキットの操作手順に従い実施した。但し、増幅時間は、使用説明書記載の90分ではなく、15分または30分と短縮した。増幅産物の検出には、第1のプローブとして配列番号3に示されるヌクレオチド配列を、第2プローブとして配列番号4に示されるヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片を用いた。検出ラインは、目視または、イムノクロマトリーダ(浜松ホトニクス社製)にて実施した。
【0088】
結果
その結果、その増幅産物を目視およびイムノクロマトリーダにて検出することができ(図3参照)、しかもNASBA法によりわずか10コピーの鋳型を、増幅時間15分のきわめて短い時間で増幅させるプライマーを見いだす事に成功した。

【実施例4】
【0089】
特異性試験
上記した実施例1〜3で得られたそれぞれの結果においてエンテロトキシン遺伝子を有するウエルシュ菌のみを検出することができるかについて確かめるため、エンテロトキシン遺伝子を有するウエルシュ菌としては、NCTC8239株を使用し、またエンテロトキシン遺伝子を持たないウエルシュ菌株としては、ACTT13124株を使用し、本発明のプライマーセット、プローブセットを用いてそれぞれの特異性について調べた。
【0090】
ウエルシュ菌の培養は、BactoTM Brain Heart Infusion(Becton Dicknson社製)を用い、37℃温度条件下で行った。培養した菌体からの核酸抽出は、ExtragenII(東ソー社製)を用い、その使用説明書にしたがい実施した。抽出核酸量は、分光光度計を用い波長260nmにおける吸光度より算出した。
【0091】
この場合に、フォワードプライマーとしては、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を用い、またリバースプライマーとしては、その5’末端側にRNAポリメラーゼプロモーター配列が付加された配列番号2に示されるヌクレオチド配列を用いて、ウエルシュ菌のNCTC8239株またはACTT13124株から抽出した核酸1.4μgを試料として、NASBA法による増幅を行った。
【0092】
NASBA法の実施に必要な試薬は、NASBA Amplification キット(カイノス社製)を使用し、NASBA法はそのキットの操作手順に従い実施した。但し、増幅時間は、使用説明書に記載された90分ではなく、30分に短縮した。増幅産物の検出には、第1のプローブとして配列番号3に示されるヌクレオチド配列を、また第2プローブとして配列番号4に示されるヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片を用いた。なおこの場合における検出ラインは、目視にて行った。
【0093】
結果
エンテロトキシン産生ウエルシュ菌から抽出した核酸を試料として用いた場合には、核酸クロマトでライン検出されるが、エンテロトキシン非産生のウエルシュ菌から抽出した核酸を試料として用いた場合には、核酸クロマト上にラインは検出されなかった。即ち、cpe遺伝子を有するエンテロトキシン産生ウエルシュ菌は検出可能だが、cpe遺伝子を保持しないウエルシュ菌は検出されないことが解った。従って、上記プライマー対およびプローブ対は、エンテロトキシン産生ウエルシュ菌を特異的に検出し得ると判明した(図4参照)。

【実施例5】
【0094】
食品試料中のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出
上記の実施例1〜4で得られた結果により、食品試料中のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を検出できるかについて、実際にカレー材料を用いて調べた。カレー材料には、野菜や肉類、果物、調味料、香辛料、油などが含まれている。カレー材料としては、カリー屋カレー(ハウス食品社製)を用い、培養したエンテロトキシン産生ウエルシュ菌をカレー材料1gあたり106cfu添加し、ウエルシュ菌入りの食品試料とした。
【0095】
ウエルシュ菌入りの食品試料またはウエルシュ菌を添加しないカレー材料は、生理食塩水で10%濃度に希釈し、エクスナイザー400(オルガノ社製)で1分間ホモジナイズした。その後、夾雑物を除去するため、ガラス繊維濾紙(GEヘルスケア社製)を用いて濾過し、その濾過液からExtragenII(東ソー社製)を用いて抽出核酸を調製した。
【0096】
この場合に、フォワードプライマーとしては、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を用いるとともに、またリバースプライマーとしては、その5’末端側にRNAポリメラーゼプロモーター配列が付加された配列番号2に示されるヌクレオチド配列を用いてNASBA増幅反応を実施した。NASBA法の実施に必要な試薬は、NASBA Amplification キット(カイノス社製)を使用し、NASBA法はそのキットの操作手順に従い実施した。
【0097】
だだし、増幅時間は使用説明書に記載の90分ではなく、20分と短縮した。増幅産物の検出には、第1のプローブとして配列番号3に示されるヌクレオチド配列を、第2プローブとして配列番号4に示されるヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片を用いた。なお検出ラインは、目視にて行った。
【0098】
結果
食品試料としてウエルシュ菌を添加していないカレー材料を用いた場合、ラインは検出されないが、食中毒を発症するに足る菌数のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を添加した食品試料を用いた場合は、ラインの検出が確認された(図5参照)。

【実施例6】
【0099】
血漿中のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌の検出
検査対象となる試料の任意性を調べる為、食品試料に加え、血液成分である血漿を試料としエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を検出できるかについて実験した。培養したエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を血漿中に1mLあたり106cfu添加し、ウエルシュ菌入りの血漿試料とした。
【0100】
ウエルシュ菌入りの血漿試料またはウエルシュ菌を添加しない血漿試料は、ExtragenII(東ソー社製)を用いて処理することにより抽出核酸を調製した。この場合にフォワードプライマーとしては、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を用い、またリバースプライマーとしては、その5’末端側にRNAポリメラーゼプロモーター配列が付加された配列番号2に示されるヌクレオチド配列を用いてNASBA法による増幅反応を実施した。
【0101】
この場合に、NASBA法の実施に必要な試薬は、NASBA Amplification キット(カイノス社製)を使用し、NASBA法はそのキットの操作手順に従い実施した。但し、増幅時間は、使用説明書に記載されている90分ではなく、大幅に短縮した20分とした。増幅産物の検出には、第1のプローブとして配列番号3に示されるヌクレオチド配列を、また第2プローブとして配列番号4に示されるヌクレオチド配列を用いた核酸クロマトグラフ測定用試験片を用いた。なお検出ラインは、目視にて行った。
【0102】
結果
ウエルシュ菌を添加していない血漿試料を用いた場合、ラインは検出されないが、食中毒を発症するに足る菌数のエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を添加した血漿試料を用いた場合は、ラインの検出が確認された(図6参照)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅することができる配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマー対とを備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法。
【請求項2】
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸をNASBA法に代表される(核酸増幅)技術を使い、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’の末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより一本鎖核酸として増幅するようにしたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法。
【請求項3】
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌を検出対象とする食中毒菌の検出方法であって、検体試料中より任意に抽出された標的核酸を増幅した核酸を、配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第1のプローブと、該第1のプローブと対をなすところの、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第2のプローブとにより検出するようにしたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法。
【請求項4】
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする食中毒原因菌の検出方法であって、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸を、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとにより1本鎖核酸とすることによって増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とするウエルシュ菌の検出方法。
【請求項5】
エンテロトキシン(cpe)遺伝子を有するウエルシュ菌(clostridium perfringens)を検出対象とする食中毒原因菌を検出するためのものであって、
(a)検体試料中より任意に抽出された標的核酸から配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2に示されるヌクレオチド配列及びその5’末端側に付加されたRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるリバースプライマーとを用いて1本鎖核酸とすることにより増幅させる工程;
(b)前記増幅産物を、核酸クロマト法を用いて、展開支持体に担持された配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる第2プローブ及び標識高分子担体に結合した配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなる第1プローブとハイブリダイズさせて検出する工程;
(c)検出像を判定することによりウエルシュ菌の有無を評価する工程;
上記(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とするウエルシュ菌検出用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48611(P2013−48611A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189796(P2011−189796)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(597128004)国立医薬品食品衛生研究所長 (22)
【出願人】(391031074)株式会社カイノス (5)
【Fターム(参考)】