説明

ウォッシャノズルおよびその製造方法

【課題】ノズルを形成する2つの部材のシール性を高めて、拡散範囲のばらつきを抑制する。
【解決手段】底部41aおよび側壁部41bを有する嵌合凹部FCを備えた第1ノズル体40と、側壁部41bに密着する密着壁部51を有し、嵌合凹部FCに嵌合する第2ノズル体50と、底部41aと当接平面部52との間に設けられ、ウォッシャ液が流通する各流路MS,SSと、第1ノズル体40の縁部44と第2ノズル体50の球状表面部53との間に設けられ、第1ノズル体40と第2ノズル体50との間をシールするシール部とを設けた。これにより、各ノズル体40,50を、側壁部41bと密着壁部51とを密着させて凹凸嵌合、つまり挿入代を持たせて凹凸嵌合させることができ、両者の結合強度を高めてシール性を向上させることができる。よって、ウォッシャ液の拡散範囲にばらつきが生じるのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、ノズルを保持するノズル保持部材とを備えたウォッシャノズルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、ウィンドシールド(洗浄面)の表面に付着した埃等の汚れを落とすためのウォッシャ装置が設けられている。ウォッシャ装置は、車室内等に設けたワイパスイッチの操作により作動するポンプを備え、ポンプの作動によりウォッシャタンク内のウォッシャ液(洗浄液)が、ホースおよびウォッシャノズルを介して洗浄面に向けて噴射される。そして、洗浄液の噴射とともにワイパブレードを往復払拭動作させることで、洗浄面に付着した汚れを落とすことができる。
【0003】
ウォッシャノズルは、洗浄液を噴射するノズルを備えており、当該ノズルとしては、洗浄面の広範囲に亘って洗浄液を噴射できるようにした、所謂、拡散式のノズルが知られている。この拡散式のノズルは、少量の洗浄液で効率良く洗浄面を洗浄できるようにしており、このような拡散式のノズルとしては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載されたノズル(噴射方向可変拡散ノズル)は、内部に供給口,内部流路,フィードバック流路および噴射口を備えた下部発振ノズルと、当該下部発振ノズルを閉塞する平板状の上部蓋ノズルとを備えている。そして、下部発振ノズルに設けた各流路等を閉塞するよう上部蓋ノズルを重ね合わせ、両者を溶着等の結合手段により合体させている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたノズルは、内部に液体流入部,液体噴射部および自己振動流路を備え、同一形状(半球状)に形成された第1分割体および第2分割体を備えている。そして、各分割体の流路等を設けた側を互いに突き合わせた後、突き合わせ面の周囲に形成された溝部に溶融樹脂を供給し、これにより両者を一体化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−067887号公報(図1)
【特許文献2】特開2009−227209号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の各特許文献1,2に記載されたノズルによれば、ノズルを形成する2つの部材(下部発振ノズルおよび上部蓋ノズル/第1分割体および第2分割体)の平面同士を互いに突き合わせた後、両者を溶着等の結合手段により一体化している。したがって、ノズル内を流れる洗浄液の液圧が高い場合等においては、2つの部材は平面同士で接触して溶着されているため、両者の結合強度が不充分で両者間に隙間が生じることがある。そして、2つの部材間に隙間が生じてシール性が低下した場合には、洗浄液に正確に自己振動を与えることができなくなり、その結果、洗浄液の拡散範囲にばらつきが生じる等の問題が起こり得る。
【0008】
本発明の目的は、ノズルを形成する2つの部材のシール性を高めて、拡散範囲のばらつきを抑制することができるウォッシャノズルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウォッシャノズルは、洗浄面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを保持するノズル保持部材とを備えたウォッシャノズルであって、前記ノズルを形成し、底部および側壁部を有する嵌合凹部を備えた第1ノズル体と、前記ノズルを形成し、前記側壁部と対向する対向壁部を有し、前記嵌合凹部に嵌合する第2ノズル体と、前記第1ノズル体の前記底部と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む一端側との間に設けられ、前記洗浄液が流通する流路と、前記第1ノズル体の前記嵌合凹部の開口側と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む他端側との間に設けられ、前記第1ノズル体と前記第2ノズル体との間をシールするシール部と、を備えることを特徴とするウォッシャノズル。
【0010】
本発明のウォッシャノズルは、前記シール部を、前記ノズルの周囲に沿うよう連続して設けることを特徴とする。
【0011】
本発明のウォッシャノズルの製造方法は、洗浄面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを保持するノズル保持部材とを備えたウォッシャノズルの製造方法であって、底部および側壁部を有する嵌合凹部を備えた第1ノズル体と、前記側壁部と対向する対向壁部を備えた第2ノズル体を準備し、前記嵌合凹部に前記第2ノズル体を嵌合し、前記第1ノズル体の前記底部と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む一端側との間に前記洗浄液が流通する流路を形成する嵌合工程と、前記第1ノズル体の前記嵌合凹部の開口側と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む他端側との間にシール部材を供給し、前記第1ノズル体と前記第2ノズル体との間にシール部を形成するシール工程と、シール工程を経て完成した前記ノズルを、前記ノズル保持部材に形成した装着凹部に装着する装着工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のウォッシャノズルの製造方法は、前記シール部を、前記ノズルの周囲に沿うよう連続して設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、底部および側壁部を有する嵌合凹部を備えた第1ノズル体と、側壁部と対向する対向壁部を有し、嵌合凹部に嵌合する第2ノズル体と、第1ノズル体の底部と第2ノズル体の対向壁部を挟む一端側との間に設けられ、洗浄液が流通する流路と、第1ノズル体の嵌合凹部の開口側と第2ノズル体の対向壁部を挟む他端側との間に設けられ、第1ノズル体と第2ノズル体との間をシールするシール部とを備えている。これにより、各ノズル体を、側壁部と対向壁部とを密着するよう凹凸嵌合、つまり挿入代を持たせて凹凸嵌合させることができ、両者の結合強度を高めて、両者が洗浄液の液圧により変形するのを抑制できる。したがって、シール性を向上させることができ、洗浄液の拡散範囲にばらつきが生じるのを抑制できる。また、ノズル内に設けられる流路と各ノズル体をシールするシール部とを、側壁部(対向壁部)を介して離間させたので、各ノズル体の流路近傍における変形をシール部に伝達し難くすることができ、長期に亘りシール性を維持することができる。
【0014】
本発明によれば、シール部を、ノズルの周囲に沿うよう連続して設けるので、例えば、シール部を環状に形成することができる。これにより、例えば、2つの分離したシール部を有するノズルに比して、シール部の強度を高めることができ、ひいてはシール性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るウォッシャノズルを装着した車両の一部を示す図である。
【図2】図1のウォッシャノズルを拡大して示す斜視図である。
【図3】図2のウォッシャノズルの断面図である。
【図4】(a),(b)は、ノズル単体を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4のノズルを分解した分解斜視図である。
【図6】(a),(b)は、ノズルのシール工程を説明する説明図である。
【図7】(a),(b)は、第2実施の形態に係る第2ノズル体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明に係るウォッシャノズルを装着した車両の一部を示す図を、図2は図1のウォッシャノズルを拡大して示す斜視図を、図3は図2のウォッシャノズルの断面図を、図4(a),(b)はノズル単体を拡大して示す斜視図を、図5は図4のノズルを分解した分解斜視図をそれぞれ表している。
【0018】
図1に示すように、自動車等の車両10の前方側には、ウィンドシールドとしてのフロントガラス(洗浄面)11が設けられている。フロントガラス11上には、DR側(運転席側)ワイパ部材12およびAS側(助手席側)ワイパ部材13が揺動自在に設けられている。
【0019】
DR側ワイパ部材12は、DR側ワイパブレード12aとDR側ワイパアーム12bとを備え、DR側ワイパブレード12aはDR側ワイパアーム12bの先端側に回動自在に装着されている。AS側ワイパ部材13は、AS側ワイパブレード13aとAS側ワイパアーム13bとを備え、AS側ワイパブレード13aはAS側ワイパアーム13bの先端側に回動自在に装着されている。
【0020】
各ワイパアーム12b,13bの基端側には、ワイパモータ(図示せず)の回転運動を揺動運動に変換するリンク機構(図示せず)が設けられ、ワイパモータを回転駆動させることにより、各ワイパブレード12a,13aは、フロントガラス11上の各払拭範囲11a,11bを往復払拭動作するようになっている。
【0021】
車両10の前方側には、ボンネット10aが設けられている。ボンネット10aのフロントガラス11寄りには、一対のウォッシャノズル14が取り付けられている。各ウォッシャノズル14には、ホース(図示せず)の一端側が取り付けられ、ホースの他端側はポンプ(図示せず)を介してウォッシャタンク(図示せず)に接続されている。各ウォッシャノズル14は、所謂、拡散式のウォッシャノズルであって、ワイパスイッチ(図示せず)を操作することで、フロントガラス11上の比較的広範囲な各噴射範囲15a,15bに向けてウォッシャ液(洗浄液)を噴射するようになっている。
【0022】
各ウォッシャノズル14は、何れも同様に構成されており、図2および図3に示すように、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されたノズル保持部材20とノズル30とを備えている。
【0023】
ノズル保持部材20は頭部21と脚部22とを備え、これらの頭部21および脚部22はそれぞれ一体となるよう固定されている。頭部21は、ボンネット10a(図1参照)への固定状態においてフロントガラス11に向けて開口し、ノズル30が装着される装着凹部21aを備えている。装着凹部21aの内側は球状に形成され、これにより球状のノズル30を回動自在に保持するようになっている。
【0024】
脚部22は円筒状に形成され、その内側にはウォッシャ液が流通する流通流路22aが形成されている。流通流路22aの一端側(図中上側)は、頭部21の装着凹部21aに接続され、流通流路22aを流通するウォッシャ液は、装着凹部21aに装着されたノズル30に導かれるようになっている。
【0025】
脚部22の他端側(図中下側)には、ホースの一端側が取り付けられるテーパ肩部22bが一体に設けられ、テーパ肩部22bはホースの脱落を防止するようになっている。また、頭部21の脚部22側には、一対の係合爪部21bが一体に設けられ、各係合爪部21bを弾性変形させつつボンネット10aの装着孔(図示せず)に挿通することで、ノズル保持部材20(ウォッシャノズル14)をボンネット10aに固定できるようになっている。
【0026】
ノズル30は、図4および図5に示すように、第1ノズル体40および第2ノズル体50を備え、第1ノズル体40と第2ノズル体50との間には、溶融樹脂MR(図6参照)を硬化させてなるシール部60(図中網掛部分)が設けられている。ここで、各ノズル体40,50およびシール部60は、何れも同じプラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されている。
【0027】
ノズル30は、各ノズル体40,50をシール部60により一体化することで球状に形成され、球状に形成されたノズル30は、図3に示すように、装着凹部21aに向けて所定圧で押圧することで装着凹部21aに嵌め込まれている。また、ノズル30は、装着凹部21aに装着した状態で回動するようになっており、これによりノズル30のノズル保持部材20に対する傾斜角度を調整、つまりウォッシャ液のフロントガラス11(図1参照)に対する噴射位置を調整するようにしている。
【0028】
第1ノズル体40は、装着凹部21aの曲率半径と略同じ曲率半径に設定された球状本体部41と、球状本体部41から突出した流入側凸部42と、球状本体部41から流入側凸部42側とは反対側に突出した噴射側凸部43とを備えている。
【0029】
球状本体部41は、図5に示すように底部41aを備え、底部41aの周囲には、当該底部41aを囲うようにして側壁部41b(図中斜線部分)が形成されている。ここで、底部41aおよび側壁部41bは、第2ノズル体50が嵌合する嵌合凹部FCを形成している。底部41aには、流入側凸部42から噴射側凸部43に向けて延在する一対の流路形成凸部41cが一体に設けられている。各流路形成凸部41cは、図中実線矢印で示す主流路(流路)MSと、図中破線矢印で示す一対の副流路(流路)SSとを形成するようになっている。
【0030】
流入側凸部42は、ノズル保持部材20を形成する頭部21の内部、つまり各流路MS,SSの上流側に配置(図3参照)されている。流入側凸部42は略円筒形状に形成され、その径方向内側には流入口42aが形成されている。流入口42aの入口側の開口面積は、出口側の開口面積よりも大きく設定され、流入口42aの出口側においてウォッシャ液の流通を絞るようになっている。つまり、流入口42aは、各流路MS,SSに向けてウォッシャ液の流速を高めるようになっている。
【0031】
噴射側凸部43は、ノズル保持部材20を形成する頭部21の外部、つまり各流路MS,SSの下流側に配置(図3参照)され、フロントガラス11に向けられている。噴射側凸部43は略円筒形状に形成され、その径方向内側には噴射口43aが形成されている。噴射口43aの入口側の開口面積は、出口側の開口面積よりも小さく設定(詳細図示せず)され、噴射口43aの入口側においてウォッシャ液の流通を絞るようになっている。つまり、噴射口43aは、フロントガラス11に向けてウォッシャ液の流速を高めるようになっている。
【0032】
第2ノズル体50は、第1ノズル体40の嵌合凹部FCに嵌合し得る形状に形成され、第2ノズル体50の周囲には、対向壁部としての密着壁部51(図中斜線部分)が設けられている。密着壁部51は、第2ノズル体50を嵌合凹部FCに嵌合した状態のもとで、嵌合凹部FCを形成する側壁部41bと密着するようになっている。つまり、密着壁部51と側壁部41bとが密着することにより、ノズル30の内部と外部とがシールされ、各流路MS,SSを流れるウォッシャ液がノズル30の外部に漏洩するのを防止している。
【0033】
第2ノズル体50の密着壁部51を挟む一端側、つまり図5における第2ノズル体50の裏面側(図中奥側)は、当接平面部52となっている。この当接平面部52は、第2ノズル体50を嵌合凹部FCに嵌合した状態のもとで、流路形成凸部41cの先端側(図中手前側)に隙間無く密着するようになっている。このように、各流路MS,SSは、第1ノズル体40の底部41aと第2ノズル体50の当接平面部52との間に設けられている。
【0034】
一方、第2ノズル体50の密着壁部51を挟む他端側、つまり図5における第2ノズル体50の表面側(図中手前側)は、球状表面部53となっている。これにより、第2ノズル体50を嵌合凹部FCに嵌合した状態のもとで、第2ノズル体50は第1ノズル体40とともに球状を形成するようになっている。
【0035】
第2ノズル体50の球状表面部53には、一対の治具装着凹部53aが形成され、各治具装着凹部53aには、自動組立装置等の把持治具(図示せず)の先端側が係合するようになっている。つまり、当該把持治具により第2ノズル体50を把持することで、第2ノズル体50を第1ノズル体40のところへ搬送しつつ、第2ノズル体50を嵌合凹部FCに嵌合するようになっている。
【0036】
図4の網掛部分に示すように、シール部60は、第1ノズル体40の嵌合凹部FCの開口側(図中上側)に形成された縁部44と、第2ノズル体50の密着壁部51を挟む他端側、つまり球状表面部53との間に設けられている。シール部60は、各ノズル体40,50を接着する接着機能と、各ノズル体40,50間をシール(密封)するシール機能とを備えており、縁部44と球状表面部53との間に流し込まれた溶融樹脂MR(図6参照)が硬化することにより所定形状に形成されている。
【0037】
シール部60は、環状本体部61と駄肉部62とを備えている。環状本体部61は、流入口42a,各流路MS,SS,噴射口43aを挟む第2ノズル体50側で、ノズル30の周囲に沿うよう連続して略環状に形成されている。駄肉部62は、環状本体部61の噴射側凸部43側に一体に設けられ、噴射側凸部43に形成されたゲート平面部43bを覆うよう断面が略円弧形状に形成されている。
【0038】
ここで、ゲート平面部43bには、シール部60の成形時(各ノズル体40,50の接着時)に用いる金型(図示せず)に形成されたゲート(溶融樹脂供給孔)が対向するようになっている。これにより、ゲートから供給される溶融樹脂MRは、ゲート平面部43bから縁部44と球状表面部53との間に流し込まれるようになっている。
【0039】
次に、ノズル30の自己振動作用、つまり各流路MS,SSによるウォッシャ液の拡散作用について説明する。
【0040】
流入口42aからノズル30内に流入したウォッシャ液は、図5の実線矢印で示す主流路MSと、図5の破線矢印で示す副流路SSとに分離される。分離された副流路SSは、噴射口43a側から流入口42a側に戻って主流路MSと再度合流するようになっている。このように副流路SSをフィードバック流れとして主流路MSに合流させることで、噴射口43aから噴射されるウォッシャ液が振動するようになる。その結果、噴射口43aからフロントガラス11に向けて、ウォッシャ液が広範囲で拡散するようになる。
【0041】
次に、以上のように形成したウォッシャノズル14の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0042】
図6(a),(b)はノズルのシール工程を説明する説明図を表している。
【0043】
[部品成形工程]
まず、図5に示すように、第1ノズル体40および第2ノズル体50(部品)を成形する。各ノズル体40,50の成形においては、それぞれに対応した所定の金型(図示せず)を用い、当該金型の内部に溶融樹脂を流し込むことで所定形状に成形(射出成形)する。
【0044】
[嵌合工程]
次に、部品成形工程で成形した第1ノズル体40および第2ノズル体50を準備し、第1ノズル体40の嵌合凹部FCに第2ノズル体50を嵌合させる。このとき、第1ノズル体40の側壁部41bと第2ノズル体50の密着壁部51とを密着させ、かつ第2ノズル体50の当接平面部52を、第1ノズル体40の流路形成凸部41cの先端側に密着させる。これにより、各ノズル体40,50が一体化し、図6(b)に示すように底部41aと当接平面部52との間に各流路MS,SSが形成される。ここで、当該嵌合作業は、自動組立装置等の把持治具を各治具装着凹部53aに係合させ、把持治具を駆動制御して第2ノズル体50を移動させることにより行われる。
【0045】
このように嵌合工程を経ることで、図6(a)に示すように、各ノズル体40,50間(縁部44,球状表面部53間)には、ノズル30の周囲に沿うよう連続した略環状の溝部Gが形成される。
【0046】
[シール工程]
次いで、嵌合工程を経て形成された略環状の溝部Gに、図示しない金型のゲートから、高温の溶融樹脂(シール部材)MRを太線矢印に示すように所定圧で供給する。すると、ゲート平面部43bから溝部G内に溶融樹脂MRが行き渡り、各ノズル体40,50の溶融樹脂MRとの接触部分が溶融する。これにより、溶融樹脂MRの周辺の各ノズル体40,50が組織的に一体化し、各ノズル体40,50間にシール部60(環状本体部61および駄肉部62)が形成される。よって、各ノズル体40,50は互いに強固に接着され、ひいては図4に示すようなノズル30が完成する。
【0047】
ここで、図6(b)に示すように、第1ノズル体40と第2ノズル体50とを凹凸嵌合させたことで、側壁部41bと密着壁部51との間には挿入代ISが形成される。これにより、第1ノズル体40とシール部60との接触部分である第1シール部JS1と、第2ノズル体50とシール部60との接触部分である第2シール部JS2とを、各流路MS,SSから離間させている。また、各ノズル体40,50を凹凸嵌合させたことで、第2ノズル体50を肉厚にして、第2ノズル体50の剛性を高めて変形し難くしている。
【0048】
[装着工程]
次に、シール工程を経て完成したノズル30を準備するとともに、別の作業工程で組み立てたノズル保持部材20を準備する。そして、図3に示すように、ノズル保持部材20の装着凹部21aに、ノズル30を所定圧で押圧して嵌め込む(装着する)。ここで、噴射口43aが装着凹部21aの開口側を向くように嵌め込むようにする。また、第1ノズル体40が図中下方側(脚部22側)に位置するよう、ノズル保持部材20に対するノズル30の位置調整をし、これによりウォッシャノズル14が完成する。ただし、第2ノズル体50が図中下方側に位置するようノズル30の位置調整を行っても良い。要は、図2に示すように、噴射口43aの開口状態が、フロントガラス11の左右方向に沿うよう横長開口状態となるようにすれば良い。
【0049】
以上詳述したように、第1実施の形態によれば、底部41aおよび側壁部41bを有する嵌合凹部FCを備えた第1ノズル体40と、側壁部41bと密着する密着壁部51を有し、嵌合凹部FCに嵌合する第2ノズル体50と、第1ノズル体40の底部41aと第2ノズル体50の密着壁部51を挟む一端側の当接平面部52との間に設けられ、ウォッシャ液が流通する各流路MS,SSと、第1ノズル体40の嵌合凹部FCの開口側の縁部44と第2ノズル体50の密着壁部51を挟む他端側の球状表面部53との間に設けられ、第1ノズル体40と第2ノズル体50との間をシールするシール部60とを設けた。
【0050】
これにより、各ノズル体40,50を、側壁部41bと密着壁部51とを密着させて凹凸嵌合、つまり挿入代ISを持たせて凹凸嵌合させることができ、両者の結合強度を高めて、両者がウォッシャ液の液圧により変形するのを抑制できる。したがって、シール性を向上させることができ、ウォッシャ液の拡散範囲にばらつきが生じるのを抑制できる。また、ノズル30内に設けられる各流路MS,SSと各ノズル体40,50をシールするシール部60とを、側壁部41b(密着壁部51)を介して離間させたので、各ノズル体40,50の各流路MS,SS近傍における変形をシール部60に伝達し難くすることができ、長期に亘りシール性を維持することができる。
【0051】
また、第1実施の形態によれば、シール部60を、ノズル30の周囲に沿うよう連続して略環状に設けたので、例えば、2つの分離したシール部を有するノズルに比して、シール部の強度を高めることができ、ひいてはシール性をより向上させることができる。
【0052】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
図7(a),(b)は第2実施の形態に係る第2ノズル体を示す斜視図を表している。
【0054】
第2実施の形態では、第1実施の形態に比して、第1ノズル体40に一体に設けた各流路形成凸部41c(図5参照)を省略するとともに、図7に示すように、各流路形成凸部41cと同じ形状の各流路形成凸部71を、第2ノズル体70の密着壁部51を挟む一端側の平面部72に一体成形した点が異なっている。ここで、各流路形成凸部71は第1ノズル体40の内側に入り込み、その先端側が第1ノズル体40の底部41aに隙間無く密着するようになっている。
【0055】
これにより、第1ノズル体40の底部41aと第2ノズル体70の平面部72との間に、各流路MS,SS(図5参照)が形成されるようになっている。つまり、各流路形成凸部41cを省略した第1ノズル体40と、第2ノズル体70とを一体化することにより、第1実施の形態におけるノズル30と同じ形状のノズル(図示せず)が形成されるようになっている。
【0056】
以上のように形成した第2実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、第1ノズル体40と第2ノズル体50(70)との間の略環状の溝部G(図6参照)に、溶融樹脂MRを供給して接着したものを示したが、本発明はこれに限らず、第1ノズル体40および第2ノズル体50(70)の溝部Gの周辺を、接着剤,超音波溶着,ホットメルト溶着等の他の接着手段により接着しても良い。
【0058】
また、上記各実施の形態においては、対向壁部として、側壁部41bと密着する密着壁部51としたものを示したが、本発明はこれに限らず、側壁部41bとの間に部分的に隙間が形成されるような対向壁部としても良い。この場合、第1ノズル体に対する第2ノズル体の嵌合作業を容易にすることができる。ここで、第1ノズル体と第2ノズル体との間に形成された隙間には、シール部材60となる溶融樹脂MR(図6参照)が入り込むので、シール性能が損なわれるようなことは無い。
【0059】
さらに、上記各実施の形態においては、流路形成凸部41c(71)の先端側を、当接平面部52(底部41a)に密着させ、これにより各流路MS,SSを形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、流路形成凸部41c(71)の先端側と当接平面部52(底部41a)との間に、第1ノズル体40および第2ノズル体50(70)よりも柔らかいプレート部材を介在させても良く、これによりシール性をより向上させることができる。この場合、第1ノズル体40または第2ノズル体50(70)の流路形成凸部41c(71)を省略し、プレート部材に流路形成凸部を一体に設けることもでき、これにより、第1ノズル体40および第2ノズル体50(70)を容易に成形できるようになる。
【0060】
また、上記各実施の形態においては、ウォッシャノズル14を、車両10のフロントガラス11を洗浄するものに適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10のリヤガラス,航空機,鉄道車両等のウィンドシールドを洗浄するものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 車両
10a ボンネット
11 フロントガラス(洗浄面)
11a,11b 払拭範囲
12 DR側ワイパ部材
12a DR側ワイパブレード
12b DR側ワイパアーム
13 AS側ワイパ部材
13a AS側ワイパブレード
13b AS側ワイパアーム
14 ウォッシャノズル
15a,15b 噴射範囲
20 ノズル保持部材
21 頭部
21a 装着凹部
21b 係合爪部
22 脚部
22a 流通流路
22b テーパ肩部
30 ノズル
40 第1ノズル体
41 球状本体部
41a 底部
41b 側壁部
41c 流路形成凸部
42 流入側凸部
42a 流入口
43 噴射側凸部
43a 噴射口
43b ゲート平面部
44 縁部
50 第2ノズル体
51 密着壁部(対向壁部)
52 当接平面部
53 球状表面部
53a 治具装着凹部
60 シール部
61 環状本体部
62 駄肉部
G 溝部
FC 嵌合凹部
IS 挿入代
JS1 第1シール部
JS2 第2シール部
MR 溶融樹脂(シール部材)
MS 主流路(流路)
SS 副流路(流路)
70 第2ノズル体
71 流路形成凸部
72 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを保持するノズル保持部材とを備えたウォッシャノズルであって、
前記ノズルを形成し、底部および側壁部を有する嵌合凹部を備えた第1ノズル体と、
前記ノズルを形成し、前記側壁部と対向する対向壁部を有し、前記嵌合凹部に嵌合する第2ノズル体と、
前記第1ノズル体の前記底部と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む一端側との間に設けられ、前記洗浄液が流通する流路と、
前記第1ノズル体の前記嵌合凹部の開口側と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む他端側との間に設けられ、前記第1ノズル体と前記第2ノズル体との間をシールするシール部と、
を備えることを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項2】
請求項1記載のウォッシャノズルにおいて、前記シール部を、前記ノズルの周囲に沿うよう連続して設けることを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項3】
洗浄面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルを保持するノズル保持部材とを備えたウォッシャノズルの製造方法であって、
底部および側壁部を有する嵌合凹部を備えた第1ノズル体と、前記側壁部と対向する対向壁部を備えた第2ノズル体を準備し、前記嵌合凹部に前記第2ノズル体を嵌合し、前記第1ノズル体の前記底部と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む一端側との間に前記洗浄液が流通する流路を形成する嵌合工程と、
前記第1ノズル体の前記嵌合凹部の開口側と前記第2ノズル体の前記対向壁部を挟む他端側との間にシール部材を供給し、前記第1ノズル体と前記第2ノズル体との間にシール部を形成するシール工程と、
シール工程を経て完成した前記ノズルを、前記ノズル保持部材に形成した装着凹部に装着する装着工程と、
を備えることを特徴とするウォッシャノズルの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のウォッシャノズルの製造方法において、前記シール部を、前記ノズルの周囲に沿うよう連続して設けることを特徴とするウォッシャノズルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1265(P2013−1265A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135013(P2011−135013)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】