説明

ウォータージェット加工を用いて着色された布に模様を形成する方法及び装置

本発明は、着色された布(1)に模様を形成する方法に関する。この方法は、以下のステップを有する:
−所定の幅の着色された布(1)の無端織物を、支持要素(2)上で機械方向に選択された軌道速度で搬送し、
−少なくとも1つの水流スプリッターを、支持要素(2)上で搬送される布(1)の上に提供し、この場合、選択されたスプリッターの圧力で生成される柱状又は角柱状の液体ジェット(4)が、発生して支持要素(2)上で搬送される布(1)の面した面に向かって噴射し、
−着色された布(1)が、支持要素(2)上で機械方向に搬送される間に、液体ジェット(4)をこの布の面した面に当てることから成る着色された布(1)に模様を形成し、
−液体ジェット(4)は、着色された布(1)の面した面に当たる前に原版(5)の特定の開口部(6)を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色された布に模様を形成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの繊維製品の場合、目視可能な模様又はその他の模様効果が、既に完成された布地に引き続き形成される。着色の場合、多くの場合に付加的な処理が、カラー印刷時に実施される。これらの付加的な処理の場合、染料又は色粉が、着色されなかった繊維製品又は既に予め染められた繊維製品に添加される。同様に、既に染められた繊維製品から脱色する減色処理が考えられる。この専門分野では、着色された繊維製品を加工するいろいろな減色方法が公知である。しかしながらこれらの減色方法には様々な欠点がある。すなわち、例えばエッチング印刷が、減色印刷方法である。この減色印刷方法の場合、既に印刷された領域内の色を落とすため、既に着色された繊維製品が、苛性ソーダ又は重亜硫酸ナトリウムから成るペーストによって印刷される。このときに使用されるエッチングペーストが、入念に洗い落とされない場合、このエッチングペーストは、繊維製品の重大な破損を招きうる。別の化学誘導減色処理は、酸洗浄である。この酸洗浄の場合、色が、衣服に対して既に加工された繊維製品から除去される。この酸洗浄の場合、塩素漂白剤が、軽石中に染み込まされ、次いで衣服が、水なしに産業用洗濯機内に装填される。軽石と衣服とから成るこの装填物が、長時間運動し、酸の作用が、これらの軽石によって引き起こされた攪拌と関連して希望する程度の脱色を達成する。この場合、このことは、繊維の強度及び繊維の耐久性に対して極めて不利に影響しうる。
【0003】
純粋な機械式の減色処理は、石洗浄が酸の添加なしに実施されることを提唱する。ここでは、この減色は、摩擦,攪拌及び選択時の色落ちだけによって実施される。石洗浄時の繊維製品は、酸洗浄時よりも僅かに摩耗及び破損を被る。双方の場合、しかしながら繊維製品の洗い落とした模様は、正確に制御され得ず、繰り返し実施した場合に同じ品質で再生産され得ない。
【0004】
化学物質が、繊維の減色模様で使用される場合、しかもこれらの方法は、大きな環境汚染をもたらす。
【0005】
この背景に対抗して、エッチング液によらない加工によって布地に減色模様を形成する方法が開発されている。これらの方法は、製造設備を破損せずかつ摩耗させず、繊維製品を破損させない。
【0006】
繊維製品に流体で模様を形成する装置及び方法に関する例が、ヨーロッパ特許第 459 976号明細書中に記されている。この場合、繊維製品の反物が、模様形成ステーションによって搬送される。この場合、搬送装置が、支持面を有する。この支持面は、空白でない領域とこの領域内にちりばめられた空白な領域とから成る模様を有する。繊維製品が、模様形成ステーションによって搬送される間に、この繊維製品は、この支持面と同一平面に配置されている。支持面上の繊維製品が、模様形成ステーションによって移動される間に、ウォータージェットが、液体のカーテンを形成する。このカーテンは、繊維製品に向かって下方に指向されている。これらのウォータージェットが、繊維製品上でこの繊維製品の下にある模様付けされた支持面に当たる。その結果、この繊維製品の光学特性が、空白でない領域と空白な領域とから成る支持面の模様に応じて変化する。
【0007】
ウォータージェット加工を用いて着色された布地に縞状に模様を形成するもう1つの方法及び装置が、ヨーロッパ特許第 1 012 369号明細書によって開示されている。ここでは、ウォータージェット加工を用いて着色された布に縞模様を形成する改良された技術が記されている。この場合、縞模様は、布地の下にある模様を施した支持面なしに形成される。こうして、縞模様が、大きいコントラストでかつ改良された明瞭さで形成され得る。さらにいろいろな縞模様が、簡単にかつ安価に模様を制御するノズルを使用することなしに形成され得る。
【0008】
模様形成の低い品質又は縞の形の模様の制限が、ウォータージェット加工を用いて着色された布地に模様を形成する既に公知の方法及び装置の欠点として挙げられる。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第 459 976号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許第 1 012 369号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高い模様品質の多数の模様を可能にする、ウォータージェット加工を用いて着色された布地に模様を形成する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の方法及び対応する装置によって解決される。
【0011】
好適な実施形は、従属請求項に記載されている。
【0012】
着色された布に模様を形成する方法は、以下のステップを有する:所定の幅の着色された布の無端織物、すなわち反物が、支持要素上で機械方向に選択された軌道速度で搬送される。この場合、名称である布は、布地,ニット及び固化した不織布を含む。少なくとも1つの水流スプリッターが、支持要素上で搬送される布の上に提供される。この場合、選択されたスプリッターの圧力で生成される柱状又は角柱状の液体ジェットが、支持要素上で搬送される布の面した面に向かって噴射する。布が、支持要素上で機械方向に搬送される間に、液体ジェットが、この布の面した面に当たる。この方法の特徴は、布の面した面に向かって下に噴射する液体ジェットが特定の開口部を有する原版を最初に通過するステップである。水流スプリッターの液体ジェットが、着色された布上の原版の開口部の領域内だけに当たる。染料が、これらの開口部の領域内だけで着色された布から洗い落とされる。したがって布地は、これらの位置で明るい色を維持する。任意の模様が、原版の開口部の特殊な構造によって布、例えばジーンズの布に形成され得る。
【0013】
この方法の好適な実施形では、原版が無端ベルトから構成される。もう1つの好適な実施形は、原版を金属又は合成樹脂から成るドラムとして構成することにある。この場合、この原版は、水平軸線周りに回転する。この水平軸線は、布の軌道速度方向に対して横に延在する。
【0014】
支持要素も、無端バンドとして構成され得る。このような無端バンドは、例えば多数のシリンダ状のローラによって回転運動する。
【0015】
水によって吹き付けられた着色された布が、この布の下でスクリーンベルトとして構成された支持要素によって搬送され得る。このしみ出る水が、特に排水溝内に受け止められるか又は吸引箱によって吸引される。
【0016】
水流スプリッターは、出口開口部を有する。柱状の液体ジェット又は角柱状の液体ジェットが、形態に応じてこれらの出口開口部から出射する。例えば高い圧力の水のような液体が、適切な高圧ポンプから水流スプリッター内に送られる。
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、ハート形の模様を反物1上に形成する本発明の装置を示す。この反物1の場合、原版5が、ベルトとして構成されている。このベルトは、小さいハート形の開口部6を有する無端ベルトとして4つのシリンダ状のローラ9によって回転運動する。柱状の液体ジェット4が、図示しなかった水流スプリッターの出口開口部8から原版5の開口部6に対して垂直方向に反物1に上から当たる間に、着色された布1が、2つの別のシリンダ状のローラ3上で回転運動する支持要素2とベルト原版5との間で矢印の方向に左から右に搬送される。吸引箱7が、出口開口部8及び支持要素2の下に存在する。
【0018】
図2は、ハート形の模様を反物1上に形成する本発明の装置を示す。この場合、原版5は、ドラムとして構成されている。小さいハートが、模様として確認することができる。これらのハートは、布1上で洗浄された色の輪郭10として認識可能である。
【0019】
図3は、本発明の装置を示す。この装置の場合、着色された布1が、湾曲された反物の状態で原版5と支持要素2との間で矢印方向に搬送される。
【0020】
図4は、本発明の装置を示す。この装置の場合、支持要素2が、無端ベルトとして構成されていて、3つのローラ3によって矢印方向に移動される。
【0021】
図5は、図4に似たもう1つの実施の形態を示す。この実施の形態の場合、支持要素2が、無端ベルトとして構成されていて、3つのローラ3によって移動される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハート形の模様を反物1上に形成する本発明の装置を示す。
【図2】ハート形の模様を反物1上に形成する本発明の装置を示す。
【図3】本発明の装置を示す。
【図4】本発明の装置を示す。
【図5】図4に似たもう1つの実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0023】
1 反物
2 支持要素
3 ローラ
4 液体ジェット
5 原版
6 開口部
7 吸引箱
8 出口開口部
9 ローラ
10 洗浄された色の輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
−所定の幅の着色された布(1)の無端織物を、支持要素(2)上で機械方向に選択された軌道速度で搬送し、
−少なくとも1つの水流スプリッターを、支持要素(2)上で搬送される布(1)の上に提供し、この場合、選択されたスプリッターの圧力で生成される柱状又は角柱状の液体ジェット(4)が、発生して支持要素(2)上で搬送される布(1)の面した面に向かって噴射し、
−着色された布(1)が、支持要素(2)上で機械方向に搬送される間に、液体ジェット(4)をこの布の面した面に当てることから成る着色された布(1)に模様を形成する方法において、
−液体ジェット(4)は、着色された布(1)の面した面に当たる前に原版(5)の特定の開口部(6)を通過することを特徴とする方法。
【請求項2】
原版(5)は、無端ベルトとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
原版(5)は、ドラムとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
支持要素(2)は、無端ベルトとして構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液体ジェット(4)は、着色された布(1)の貫流後に吸引箱(7)内に吸引されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
着色された布に模様を形成する装置にあって、この装置は、所定の幅の着色された布(1)の無端織物を機械方向に選択された軌道速度で搬送する支持要素(2)及びこの支持要素(2)上で搬送される着色された布(1)の上に配置されている水流スプリッターを有し、この場合、この水流スプリッターは、選択されたスプリッターの圧力で出射される液ジェット(4)用の出口開口部(8)を有する装置において、この装置は、特定の開口部(6)を有する原版(5)を備え、この原版は、水流スプリッターと着色された布(1)との間に配置されていて、この布(1)は、支持要素(2)上で機械方向に選択された軌道速度で搬送されることを特徴とする装置。
【請求項7】
原版(5)は、無端ベルトとして構成されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
原版(5)は、ドラムとして構成されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−524464(P2008−524464A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547220(P2007−547220)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012558
【国際公開番号】WO2006/066684
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505196727)フライスナー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (19)
【Fターム(参考)】