説明

ウオーキングビーム搬送装置

【課題】サイズの異なるワークを取り扱うに際して、受け台治具の交換など段取り替えを必要としないウオーキングビーム搬送装置を提供する。
【解決手段】可動ビーム1を挟んで対をなす2本の固定ビーム2、2を並列させ配置し、横幅サイズの異なる2種のワークa、bを搬送できるウオーキングビーム搬送装置であって、各固定ビーム2、2の上部に、ワークを載置するための下段の水平段部21、21とその位置ずれを防止する垂直面部22、22の組合せと、上段の水平段部23、23とその位置ずれを防止する垂直面部24、24の組合せのような複数組を、階段状に、かつ左右対称に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥炉、焼成炉などに用いられるワーク移動用のウオーキングビーム搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウオーキングビーム搬送装置は、乾燥炉、焼成炉におけるワークの移動装置として広く用いられている。その基本動作は、固定ビームに載置された処理対象であるワークに対して、可動ビームは、上昇、前進、下降、後退を繰り返して、ワークを間欠的に前進、移動させるものである。一例を示すと、特許文献1には、このようなウオーキングビーム搬送装置が、固定または可動ビームを透明石英で構成して熱効率を向上させる技術とともに、その搬送動作についても開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−206299号公報:特許請求の範囲、各図
【0004】
ところが、本発明が対象としているようなウオーキングビーム搬送装置では、搬送対象のワークの種類によって横幅サイズが変化した場合、ベルトコンベヤのようにワークの配置を変更することで対応できないので、そのワークに適合した受け台治具に交換するなどの段取り替えが必要であった。
【0005】
このため、ワークにサイズが変更される都度、段取り替えのためラインの運転を一時的に停止せざるを得ず、乾燥炉または焼成炉の場合には、温度降下および温度上昇などの準備時間を要するうえ、段取り替えの時間と手間を要するなど生産効率が低下する問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、サイズの異なるワークを取り扱うに際して、受け台治具の交換など段取り替えを必要としないウオーキングビーム搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題は、可動ビームと固定ビームとを列設し、可動ビームを上昇、前進、降下、後退させて固定ビーム上のワークを間欠的に前進、移動させるウオーキングビーム搬送装置であって、可動ビームを挟んで対をなす2本の固定ビームを配置した場合には各固定ビームの上部に、または、固定ビームを挟んで対をなす2本の可動ビームを配置した場合には各可動ビームの上部に、ワークを載置する水平段部とその位置ずれを防止する垂直面部とを複数組、階段状に、かつ左右対称に配設して、ワークを、その横幅サイズに適合した前記水平段部に載置可能とするとともに、ワークの左右の位置ずれを前記垂直面部により防止可能としたことを特徴とするウオーキングビーム搬送装置。
【0008】
また、本発明は、可動ビームを挟んで対をなす2本の固定ビームを配置した場合、その可動ビームの上昇、前進動作時において、可動ビームに載置したワークの高さが、固定ビームの前記垂直面部の高さを超えない範囲で可動としたことを特徴とする形態、あるいは、固定ビームを挟んで対をなす2本の可動ビームを配置した場合、その可動ビームの降下、後退動作時において、固定ビームに載置したワークの高さが、可動ビームの前記垂直面部の高さを超えない範囲で可動としたことを特徴とする形態に具体化される。
【0009】
さらに、本発明は、断面角柱状ビームを高さに段差を設けて列設し、下段の断面角柱状ビームの上面をワークが載置される前記水平段部とし、上段の断面角柱状ビームの側面をワークの位置ずれを防止する前記垂直面部とした形態の前記ウオーキングビーム搬送装置に好ましく具体化される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動ビームを挟んで対をなす2本の固定ビームを配置した場合には各固定ビームの上部に、ワークを載置する水平段部とその位置ずれを防止する垂直面部とを複数組、階段状に、かつ左右対称に配設しているので、小サイズのワークは下段の水平段部に掛け渡して載置でき、またより大サイズのワークは上段の水平段部に掛け渡して載置するように、ワークの横幅サイズに適合した前記水平段部に載置可能とするので、サイズの異なるワークの搬送を段取り替えをすることなく行うことが可能となる。またサイズの異なるワークの場合も、ワークの左右に配置される垂直面部によりワークの左右方向への位置ずれが防止できるのである。
【0011】
また、可動ビームがワークを載置しながら前進動作するときに、ワークの高さが両側の固定ビーム側の前記垂直面部の範囲内に位置するよう移動動作を行うので、ワークの両側の前記垂直面部によって、ワークの横方向への位置ずれが防止されるのである。
【0012】
なお、固定ビームを挟んで対をなす2本の可動ビームを配置した場合には、可動ビームがワークを固定ビームに移載し、降下した後後退動作するときに、ワークの高さが両側の可動ビーム側の前記垂直面部の範囲内に位置するよう移動動作を行うので、ワークの両側の前記垂直面部によって、ワークの横方向への位置ずれが防止されるのである。よって本発明は、従来の問題点を解消したウオーキングビーム搬送装置として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明のウオーキングビーム搬送装置に係る実施形態について、図1〜3を参照しながら説明する。
本発明の第1形態として、図1には、可動ビーム1を挟んで対をなす2本の固定ビーム2、2を並列させ配置し、横幅サイズの異なる2種のワークa、bを搬送できるウオーキングビーム搬送装置の場合を示している。
この可動ビーム1を上昇させ(図1左図→右図)、前進、降下、後退させて固定ビーム2上のワークa(図1(A))、またはワークb(図1(B))を間欠的に前進、移動させるウオーキングビーム搬送装置であり、その特徴とするところは、その各固定ビーム2、2の上部に、ワークを載置するための下段の水平段部21、21とその位置ずれを防止する垂直面部22、22の組合せと、上段の水平段部23、23とその位置ずれを防止する垂直面部24、24の組合せのような複数組を、階段状に、かつ左右対称に配設した点にある。
【0014】
そして、搬送対象物が、大小2種類の横幅サイズの場合、小サイズのワークaは、その横幅サイズに適合した下段の幅の小さい水平段部21、21間に載置されるとともに、ワークaの左右に配置される前記垂直面部22,22によりワークaの位置ずれを防止するようにし、また、大サイズのワークbは、その横幅サイズに適合した上段の幅の大きい水平段部23,23間に載置されるとともに、ワークbの左右に配置される前記垂直面部24、24によりワークbの位置ずれを防止するよう構成されている。この場合、ワークのサイズの種類によって、予め水平段部と垂直面部の組合せ数を準備することとなる。
【0015】
垂直面部22、24による位置ずれ防止について補足する。
左右の固定ビームに架け渡して支承されたワークaは、上昇した可動ワーク1に押し上げられ(図1(A)左図〜右図)、次いで可動ビーム1はワークaを乗せたまま前進動作するのであるが、そのとき、ワークaは左右の垂直面部22、22の間を移動することになるので、何らかの理由で、ワークaの位置が右または左にずれようとする場合には、左右の垂直面部22、22に接触してそれ以上ずれないよう補正される。かくして、ワークaは垂直面部22、22の外方へ位置ずれを起こすことはないのである。ワークbの場合も全く同様である。
【0016】
また、ワークを載置するための水平段部21、23とその位置ずれを防止する垂直面部22、24の組合せは、適度な強度と耐熱性を有する材料、好ましくは金属材料で構成され得るが、水平段部21、23はワークを支承するに必要な幅員があればよく、図1では、垂直面部22、24と連続した構造が示されているが、必ずしも、垂直面部22、24と連続した構造に限定されない。
また、垂直面部22、24は、水平段部21、23と同様な材料で構成されればよく、その高さは、ワークの位置ずれ防止という観点から、ワークと機械的に接触して位置ずれを防止できる最小限の高さがあればよい。
【0017】
そして、前記の位置ずれ防止において、可動ビーム1を挟んで対をなす2本の固定ビーム2、2を配置した場合(図1参照)には、その可動ビーム1の上昇、前進動作時において、図1(A)のように、固定ビーム2から可動ビーム1に移載された小サイズのワークaの高さが、水平段部21、21と組合される前記垂直面部22、22の高さを超えない範囲、すなわち、下段の水平段部21、21の表面から垂直面部22、22の上端面までの範囲内に収まるよう作動するよう設定されていることにより可能となるのである。
【0018】
また、図1(B)のように、大サイズのワークbの場合、上段の水平段部23、23と組合される前記垂直面部24、24の高さを超えない範囲、すなわち、上段の水平段部23、23の表面から垂直面部24、24の上端面までの範囲内に収まるよう作動するよう設定されているもことにより可能となるのである。
【0019】
さらに、図2に示すように、固定ビーム3を挟んで対をなす2本の可動ビーム4、4を配置した場合、小サイズのワークaを載置して可動ビーム4、4が前進動作した後、降下、後退する動作時において、固定ビーム3、3に載置されたワークaの高さが、図2(A)のように、水平段部41、41と組合される垂直面部42、42の高さを超えない範囲、すなわち、下段の水平段部41、41の表面から垂直面部42、42の上端面までの範囲内に収まるよう作動するよう設定されていることにより、ワークaの位置ずれ防止が可能となるのである。
なお、大サイズのワークbの場合は、図2(B)に示すが、上記と同趣旨であるので、説明は省略する。
【0020】
次に、本発明におけるワークが載置される水平段部と、位置ずれ防止のための垂直面部の組合せについて、好ましい実施形態を説明する。この場合、図3に示すような、可動ビーム1を挟んで対をなす2本の固定ビーム5、5を並列させ配置したウオーキングビーム搬送装置の場合を事例とする。
【0021】
その基本原理は、図1のものと変りはないがその要部は、その各固定ビーム5、5の上部に、支持板部5aとその上に第1の断面角柱状ビーム61を配列して、載置板部5aの上面を第1水平段部51とし、角柱状ビーム61の側面を第1垂直面部52としたうえ、第2の断面角柱状ビーム62を、第1の断面角柱状ビーム61の外側に段差を設け階段状に左右対称に配設して、第1の断面角柱状ビーム61の上面を第2水平段部53とし、第2角柱状ビーム62の側面を第2垂直面部54としている点にある。
【0022】
かくして、図3(A)(B)に示すように、サイズの異なる2種のワークa、bに対して、すでに図1、2に基づいて詳述した通りの搬送動作と位置ずれ防止が可能となるのであります。このような断面角柱状ビームとしては、アルミニウム、鉄など金属の押し出し成形品などが容易に入手可能であり、高精度の構成が可能となるので好ましい。
【0023】
本発明の作用効果をまとめると、次の通りである。
a)サイズの異なる対象ワークを搬送する場合、従来は積載治具などの段取り替えが必要であったが、本発明ではその必要がないうえ、ワークの切換えに際して人手をほとんど要せず、自動化が可能となり、生産効率の向上が期待できる。
【0024】
b)本発明を適用した乾燥炉、焼成炉の場合には、従来の段取り替えに伴う、段取り替え前後の温度の低下、上昇に要する時間ロスが大幅に改善される。
c)本発明は、ワークの脱落は勿論、位置ずれも防止できるから、6列搬送など多数列搬送系列を持つ乾燥炉、焼成炉に特に有効であり、ラインが大きくなれば効果も相乗的に大きくなると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のウオーキングビーム搬送装置の動作を説明するための要部断面図(A)(B)。
【図2】他の形態の動作を説明するための要部断面図(A)(B)。
【図3】他の実施形態を示す要部上面図(A)要部縦断面図(B)。
【符号の説明】
【0026】
1:可動ビーム
2:固定ビーム、21:水平段部、22:垂直面部、23:水平段部、24:垂直面部
3:固定ビーム
4:可動ビーム、41:水平段部、42:垂直面部
5:固定ビーム、5a:支持板部、51:第1水平段部、52:第1垂直面部、53:第2水平段部、54:第2垂直面部
61:第1の断面角柱状ビーム、62:第2の断面角柱状ビーム
a:b:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ビームと固定ビームとを列設し、可動ビームを上昇、前進、降下、後退させて固定ビーム上のワークを間欠的に前進、移動させるウオーキングビーム搬送装置であって、可動ビームを挟んで対をなす2本の固定ビームを配置した場合には各固定ビームの上部に、または、固定ビームを挟んで対をなす2本の可動ビームを配置した場合には各可動ビームの上部に、ワークを載置する水平段部とその位置ずれを防止する垂直面部とを複数組、階段状に、かつ左右対称に配設して、ワークを、その横幅サイズに適合した前記水平段部に載置可能とするとともに、ワークの左右の位置ずれを前記垂直面部により防止可能としたことを特徴とするウオーキングビーム搬送装置。
【請求項2】
可動ビームを挟んで対をなす2本の固定ビームを配置した場合、その可動ビームの上昇、前進動作時において、可動ビームに載置したワークの高さが、固定ビームの前記垂直面部の高さを超えない範囲で可動としたことを特徴とする請求項1に記載のウオーキングビーム搬送装置。
【請求項3】
固定ビームを挟んで対をなす2本の可動ビームを配置した場合、その可動ビームの降下、後退動作時において、固定ビームに載置したワークの高さが、可動ビームの前記垂直面部の高さを超えない範囲で可動としたことを特徴とする請求項1に記載のウオーキングビーム搬送装置。
【請求項4】
断面角柱状ビームを高さに段差を設けて列設し、下段の断面角柱状ビームの上面をワークが載置される前記水平段部とし、上段の断面角柱状ビームの側面をワークの位置ずれを防止する前記垂直面部とした請求項1または2または3に記載のウオーキングビーム搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−227420(P2009−227420A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76120(P2008−76120)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)