説明

ウコン入り飲料の製造方法

【発明の課題】ウコンの沈殿や濁りが生じない、またウコンの分散性に優れたウコン入り飲料の製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】水もしくは湯にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウコン入り飲料の製造方法に関し、詳しくは、水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン入り飲料を製造する際に、ウコン粉末、特にクルクミノイド(クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン)含量の高いウコン粉末を直接、水もしくは湯に投入すると、ウコン粉末が水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないということが生じる。また、製造工程中で水面に浮いたウコン粉末は、調合タンク等の壁面についたままで残ってしまったり、パイプに付着してしまったりして、作業上の問題だけでなく、品質の問題も生じる。
【0003】
よって、従来飲料に使用されてきたウコンは、エタノールに溶かしたエキス製剤でクルクミン含量が0.8%程度、粉末製剤でも15%程度のものであった。しかし、クルクミン含有飲料を作る際、エタノールに溶かしたもので作ろうとすると、アルコール含量が高くなり清涼飲料水規格として使用できず、クルクミン含量の低いウコンエキスを使用した際、ウコン特有の臭い、苦味が問題となり嗜好的な飲料ができなかった。
【0004】
そこで、水に分散可能な基質上に複合体を形成したクルクミンとして、クルクミンと水溶性で分岐鎖のある又は環状のポリサッカライドおよび水に可溶な又は水に分散可能なタンパクからなる群から選ばれた基質との複合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、水もしくは湯に対して不溶性の固形物(ココア、コーヒー、抹茶、胡麻、栗、ウコンおよび芋類の中から選ばれた1種または2種以上)の粉末もしくはペースト状物と安定剤とを水もしくは湯に加え、ホモゲナイズ処理した後、当該処理液に糖類、香料等の常用成分を加えて調合することを特徴とする不溶性固形物入り飲料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、上記方法では、ウコン粉末を水もしくは湯に投入した際の、ウコンの分散性を向上させることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平03−097761号公報
【特許文献2】特開2001−029053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ウコン入り飲料を製造する際に、ウコン粉末を投入時のウコンの分散性を向上し、ウコンが水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないということがおきない、ウコン入り飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、ウコン入り飲料を製造するに際し、水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱し、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することによって、クルクミノイド含量の高いウコン粉末投入時のウコンの分散性を向上させ、ウコン粉末が水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないということがおきないことを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである。
【0011】
項1.水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造方法。
項2.水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンと常用成分とを加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加えることを特徴とするウコン入り飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ウコン入り飲料を製造するに際し、水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱し、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することによって、ウコン粉末投入時のウコンの分散性を向上させ、ウコンが水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないことがおきないことにより、ウコン入り飲料の製造の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱し、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造法である。
【0014】
本発明で原料として用いるウコン粉末は、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LIINE)の根茎の乾燥物を粉末にしたもので、通常0.2μm〜260μmの粉末である。
【0015】
なお、本発明で用いるウコン粉末のクルクミン含量は特に制限はなく、クルクミン含量が75%以上の高含有のウコン粉末でも、水または湯へのウコン粉末投入時のウコンの分散性を向上させ、ウコンが水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないことがおきない。
【0016】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLBが10〜18、好ましくは10〜13ものであり、例えば、ホモゲン[商標]NO.2429(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を挙げることができる。
【0017】
また、本発明で用いる酵素分解レシチンとは、ホスファジルコリン、ホスファエタノールアミン、ホスファジルイノシトール、ホスファジルセリン、ホスファジン酸等を主要なリン脂質とする大豆レシチンに酵素であるホスホリパーゼA2 を作用させ、β位のエステル結合を加水分解し、水酸基を増やし、親水性を増大させたものである。HLBは10〜13のものであり、例えば、SLP-ホワイトリゾ(辻製油社製)を挙げることができる。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステルまたは酵素分解レシチンの添加量は、ウコン粉末1質量部に対して、1/10〜10質量部、好ましくは1〜3質量部である。
【0019】
なお、本発明では、水もしくは70〜90℃程度の湯にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて70〜90℃にて加熱溶解する。その際の水や湯に飲料の常用成分を添加しておいても良い。他の原料を入れる前の水もしくは湯にポリグリセリン脂肪酸を加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を分散した後に、他の常用成分を加えることが好ましい。
【0020】
また、常用成分としては、例えば、糖類、高甘味度甘味料、香料、果汁、野菜汁、牛乳、乳化剤、増粘剤等があり、使用目的に応じてこれらの中から適宜選択して用いてもよい。
【0021】
糖類としては、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラクトース、果糖ぶどう糖液糖などを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ソーマチン、ステビオサイド、アリテームなどを挙げることができる。香料としては、レモン香料、オレンジ香料、グレープフルーツ香料等の柑橘系香料などを挙げることができる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。増粘剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、ジェランガム、ペクチンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明のウコン入り飲料とは、クルクミン高含有品の粉末品を使用することで、クルクミン高含有でもウコン特有の臭い、苦味が少ない嗜好的な飲料である。このウコン入り飲料は二日酔いの予防・改善、抗酸化作用、抗アレルギー、動脈硬化予防、ガン予防等の効果を期待することができる。
【0023】
本発明は、水もしくは湯にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加えた後、常用成分を加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造法であり、常用成分を加えた後は、常法により飲料を調製すればよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に記載のない限り「%」とは「質量%」を、「部」とは、「質量部」を意味するものとする。また、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品を表し、文中の「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0025】
実験例1
ウコン粉末の分散性の試験
処方
粉末クルクミンNO.3705(ウコン粉末)* 0.04 (%)
下記試料(表1) 表2
クエン酸(無水)*(pH調整用)
水にて合計100%とする。
【0026】
試料は下記のものを使用した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
試験法
(1)試料を水に加え、それぞれ80℃にて10分間攪拌加熱した。
(2)ウコン粉末を加え、20℃まで冷却し、クエン酸にてpH3.6に調整し、全量を補正した。
(3)100mLスクリュー瓶に充填後、85℃にて30分間加熱殺菌を行った。
(4)殺菌後、室温(20℃)まで冷却し、そのまま1日静置し、状態を評価した結果を表3に示した。
【0030】
評価
【0031】
【表3】

【0032】
以上より、HLB10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルもしくは酵素分解レシチンまたはHLB10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを使用することで、ウコン粉末の液面への浮きを抑制し、軽く振るだけで均一に再分散するものができた。
【0033】
実施例1 ウコン入り飲料(コラーゲン入り、ミカン風味)
処方
【0034】
【表4】

【0035】
製造法
水にホモゲン※NO.2429*、果糖ぶどう糖液糖を加え、80℃10分間過熱攪拌後、粉末クルクミンNO.3705*、ニッピペプタイドFEP、柑橘混合透明果汁53、スクラロース*、クエン酸(無水)S*を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)にて10000rpm、5分間にて均質化し、全量を補正後、93℃達温にて残りの原料を加え、ホットパック充填を行った。
【0036】
製造中に容器や攪拌プロペラに粉末クルクミンが付着すること無く、最終飲料でも液面への浮き、塊の沈殿が生じない飲料ができた。また、細かい沈殿は生じるが、軽く振るだけで再分散した。
【0037】
実施例2 ウコン入り飲料
処方
【0038】
【表5】

【0039】
製法
10部の水に果糖ぶどう糖液糖、ホモゲン※NO.2429を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解後、粉末クルクミンNO.3705を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)にて8000rpm 10分間にて均質化を行った(1)。70部の水にビストップ※D−1840を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解後、(1)を加え、イノシトール、スクラロース、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウムを加え、全量補正を行った。93℃達温にて残りの原料を加え、ホットパック充填を行った。
【0040】
ウコン臭さ、苦味が少なく嗜好的で粉末クルクミンが浮くこと無く、さらにビストップ※D−1840を入れることで沈殿も少ない飲料ができた。
【0041】
嗜好的で、ウコンの浮きも無く、沈殿の少ない飲料ができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によると、ウコン入り飲料を製造する際に、ウコン粉末を投入時のウコンの分散性を向上し、ウコンが水面に浮いたり、塊になったりして、なかなか均一に分散しないということがおきない、ウコン入り飲料の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水にポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または酵素分解レシチンを加えて、加熱溶解後、当該溶液にウコン粉末を加え、さらに常用成分を前記加熱溶解の前または後に加えて調合することを特徴とするウコン入り飲料の製造方法。

【公開番号】特開2008−92806(P2008−92806A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274554(P2006−274554)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】