説明

ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法

【課題】 ウシの乳房炎抵抗性に関連する遺伝子を新たに見出し、更に効率のよいウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法を提供すること。
【解決手段】 ウシの乳房炎感受性がIGF1R遺伝子の1110位への1〜4bp部分の挿入に起因することを見出し、かかる挿入により生じた塩基配列の違いを利用して、乳房炎抵抗性の遺伝子診断を行う方法を提供する。具体的には、
工程(a):診断対象であるウシの核酸試料を得る工程、
工程(b):工程(a)にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び、
工程(c):工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在を調べる工程、
を含むウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に関し、詳しくは、乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rにおける変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に関する。
【0002】
本明細書において、「IGF1R」はIGF1R遺伝子が転写され翻訳されて生成したタンパク質を意味する。また、「IGF1R遺伝子」はIGF1Rをコードしている翻訳領域のエクソン部分、隣接している非翻訳領域のエクソン部分、それらのイントロン部分、および、該遺伝子の発現の制御に関わる領域に加え、ウシの乳房炎抵抗性(感受性)に関連する変異部分が含まれるDNAの領域を意味する。
【背景技術】
【0003】
乳房炎は、ホルスタイン種等の搾乳牛に見られる感染症で、Streptococcus aureusなどの常在細菌がウシ乳頭より侵入して乳腺組織に炎症をもたらす。一般に感染症に対する感受性・抵抗性は遺伝的な側面が少なくないが、乳房炎に関するDNA情報は明らかになっていないため、専ら飼養管理面から対策がとられている。
【0004】
乳房炎に罹患したウシのミルクは多数の細菌を含むため商品とならず廃棄される。いったん乳房炎に罹患した搾乳牛は繰り返し乳房炎を発症することから、経済的な損失は大きく我が国では乳房炎による損害は年間600億円と算定されており、その対策として乳房炎抵抗性を高めるためのDNA診断手法を確立する必要がある。遺伝子のどのような変異によって、乳房炎抵抗性から感受性になるのかを迅速に検出できる手段を得ることができれば、このような遺伝子診断法を確立することができる。
【0005】
本発明者らは、ウシの乳房炎抵抗性と密接に関連する遺伝子(FEZL遺伝子)を同定し、当該遺伝子の変異を検出することによってウシの乳房炎抵抗性を遺伝子工学的に診断する方法を既に開発した(特許文献1参照)。しかし、現在では、FEZL遺伝子が乳房炎抵抗性型を示すウシが開発当初よりも減少し、特許文献1の方法による診断効率が徐々に低下していることが分かってきた。
乳房炎抵抗性という形質は、単純劣性遺伝病とは異なり、多くの遺伝子が関与することにより決定している。したがって、FEZL遺伝子が乳房炎感受型である牛群の中でも、実際には乳房炎に罹りやすいウシと罹りにくいウシが混ざっている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−67928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、乳房炎抵抗性に関連する遺伝子を新たに見出し、特許文献1の方法よりも更に効率のよいウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法を提供することである。これにより、乳房炎抵抗性のウシをスクリーニングすることによって、今後の乳房炎の発生を減らすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために研究を重ねた結果、既知のIGF1R遺伝子が乳房炎と密接に関連していることを明らかにした。なお、IGF1R遺伝子は従来寿命に関わる遺伝子として報告されていた(Holzenberger, M. et al., Nature 421, 182-187 (2003))が、ウシの乳房炎抵抗性診断に利用できることは全く知られていなかった。
さらに本発明者らは、このIGF1R遺伝子の発現の制御に関わる領域(配列表の配列番号1)への1〜4bpの挿入という変異により、IGF1Rの発現が上昇したことが乳房炎抵抗性低下の原因であることを見出した。
また、該遺伝子上に設定した特定のオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法により、かかる変異が検出されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)工程(a):診断対象であるウシの核酸試料を得る工程、
工程(b):工程(a)にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び、
工程(c):工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在を調べる工程、
を含むウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法。
(2)ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が、配列表の配列番号1に示される塩基配列の1〜5,258位を含む領域である(1)に記載の遺伝子診断法。
(3)遺伝子増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応法によって行われる(1)又は(2)に記載の遺伝子診断法。
(4)変異の存在を、遺伝子増幅反応により増幅された核酸断片の塩基配列を決定することにより調べる(1)〜(3)のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
(5)核酸試料が、ゲノミックDNA、cDNA、又はmRNAを含む試料である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
【0010】
(6)ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を遺伝子増幅反応により増幅することによってウシのIGF1R遺伝子の変異を検出するために利用され、15個以上のヌクレオチドからなることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用オリゴヌクレオチドプライマー。
(7)(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(c)配列表の配列番号1に示される塩基配列又はその相補塩基配列とハイブリッド形成し、ポリメラーゼ連鎖反応法によりウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を増幅するために利用できる一切の配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(d)遺伝子コードの縮退のために前記オリゴヌクレオチド(a)〜(c)から派生したオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたことを特徴とする(6)に記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(8)(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの5’端側の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの3’端側の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたものであることを特徴とする(6)又は(7)に記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【0011】
(9)15〜50個のヌクレオチドからなるものであることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(10)15〜35個のヌクレオチドからなるものであることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(11)(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなるものであることを特徴とする(6)〜(10)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【0012】
(12)遺伝子増幅反応が、上記(6)〜(11)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
(13)上記(6)〜(11)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用キット。
(14)上記(6)〜(11)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性診断用遺伝子診断試薬。
【0013】
(15)ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域又はそれに対応するmRNAとハイブリッド形成でき、ウシのIGF1R遺伝子の変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用ヌクレオチドプローブ。
(16)変異の存在が、上記(15)に記載のヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーション法により行われ、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列を解明、及び/又は、単離することによってIGF1R遺伝子の変異を検出することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乳房炎抵抗性低下に関係する変異部位を有するIGF1R遺伝子を利用して、乳房炎抵抗性をより効率よく、かつ確実に診断するための遺伝子診断法、該方法に用いられるキット、プライマー及びプローブが提供される。
本発明により乳房炎抵抗性のウシをスクリーニングし、育種に利用することによって、今後の乳房炎の発生を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により当業者には明らかであろう。以下の[発明を実施するための最良の形態]の項の記載、及び具体的な実施例などの記載は、本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみここにおいて示されているものであることは理解されるべきであり、本明細書で開示されている本発明の意図、並びに範囲内で様々な改変、並びに修飾が、それらの記載に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)乳房炎抵抗性、及び感受性ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの解析
遺伝子上の変異と乳房炎抵抗性との関連を調べるために、まず乳房炎抵抗性のウシのIGF1R遺伝子の塩基配列を明らかにした。なお、IGF1R遺伝子は寿命を制御する機能を持つ遺伝子として既知であり、該遺伝子が単離された例はこれまで報告されているが、ウシの乳房炎抵抗性と密接な関連を有することについては知られていなかった。
本発明者らは、乳房炎抵抗性と感受性のウシを含む家系の牛群についてゲノム連鎖解析を行い、ポジショナルクローニング法と云われる手法を用いてウシIGF1R遺伝子に乳房炎抵抗性低下の原因となる変異があることを予測した。
ここで、ポジショナルクローニング法とは、連鎖地図上に原因遺伝子座のマッピングを行った後、その染色体領域より原因遺伝子を単離する方法であり、その詳細は動物遺伝育種学事典(社団法人 畜産技術協会発行)に記載されている。
【0017】
次に、得られた乳房炎抵抗性ウシのIGF1R遺伝子のうち、発現の制御に関わる領域のゲノミックDNA及びcDNA全塩基配列を、配列表の配列番号1に示す。ここで塩基配列の決定(シークエンシング)は、化学分解法(Maxam & Gilbert法)、チェーンターミネーター法(Sangerジデオキシ法)などの常法により行うことができる。
なお、配列番号1に示すcDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を、配列番号2に示す。
【0018】
乳房炎抵抗性低下の原因となるIGF1R遺伝子上の変異は、乳房炎抵抗性ウシ、及び乳房炎感受性ウシのIGF1R遺伝子の塩基配列を比較することによって明らかにすることができる。すなわち、前記の抵抗性ウシの場合と同様に感受性ウシのIGF1R遺伝子の塩基配列を調べ、これを抵抗性ウシ遺伝子と比較することにより、抵抗性低下の原因である変異を確認することができる。
【0019】
その結果、乳房炎感受性ウシでは、配列表の配列番号1に示される乳房炎抵抗性ウシのIGF1R遺伝子の塩基配列のうち1110位に1〜4bpのシトシン(c)が挿入される変異を見出した(図1)。
【0020】
(2)ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法(検出方法)の確立
以上のように、ウシの乳房炎抵抗性に影響する遺伝子上の変異が解明され(図1)、この変異を利用して乳房炎抵抗性の診断及び検出を行うことができる。
具体的なウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法(検出方法)としては、次のような工程を含む様態が例示される。すなわち、
工程(a):診断対象であるウシの核酸試料を得る工程、
工程(b):工程(a)にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び、
工程(c):工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在を調べる工程、
である。
【0021】
第1に、工程(a):診断対象であるウシの核酸試料を得る工程について述べる。
本発明の診断対象としては、乳牛種、肉牛種を問わずいかなるウシ(Bos taurus)をも供試することができる。
本発明に用いられるウシの核酸試料としては、IGF1Rをコードする塩基配列を有するものであれば特に限定されるものではなく、適当な細胞又は組織由来の核酸(全ゲノミックDNA及び細胞の全RNAから転写されたcDNAを包含する)、例えば、ゲノミックDNA、cDNA、mRNA等があげられる。
ウシの核酸試料の調製は、公知の方法、例えばMolecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), J. Sambrook & D. W. Russell (Ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001) に記載の方法により行うことができる。
【0022】
第2に、工程(b):工程(a)にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程について述べる。
工程(a)で得られた核酸試料、及び適当なプライマーを用いて、ウシIGF1R遺伝子に存在しうる変異部位を含む領域が増幅され、所望の核酸断片を得ることができる。
本工程で用いられる遺伝子増幅反応の方法としては、該領域を増幅できる方法であれば特に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)、RNAポリメラーゼを利用した核酸増幅法や鎖置換増幅法のような核酸増幅法を利用することができる。これらの中でもPCR法が好ましく用いられる。
増幅の対象となる、変異部位を含む領域としては、ウシIGF1R遺伝子の塩基配列のうち、ウシの乳房炎抵抗性低下の原因となる変異が存在しうる部分(すなわち、配列表の配列番号1における1110〜1113位)を含んでいる領域であれば特に限定されず、例えば、配列表の配列番号1に示される塩基配列の中の1〜5,258位を含む領域が挙げられる。
【0023】
本明細書中、「ポリメラーゼ連鎖反応法」又は「PCR法」とは、一般的に、米国特許第4683195号明細書に記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うところのサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR法で用いられるプライマーは、鋳型内部の増殖されるべきヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、該増幅されるべきヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用され得る。
【0024】
PCR法は、R. K. Saiki et al., Science, 239, 487-491 (1988); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002 (1988) などに記載の方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法により行うことができる。また、PCR法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコールに従って実施することもできる。
本発明において、PCRの条件は特に限定されず、通常行われる公知の条件、例えば上記した文献の記載を参考に選択することができる。PCRにおいては、DNA鎖の熱変性、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼによる相補鎖の合成からなる1つのサイクルが、例えば、10〜80回、好ましくは20〜35回繰り返して行われる。
【0025】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられる。これらは既知の方法、例えば、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホアミダイト法、ホスホネート法などの方法により化学合成されることができる。通常オリゴヌクレオチドの合成は、修飾された固体支持体上で便利に行うことができることが知られており、例えば、市販されている自動化された合成装置を用いて行うことができる。また、該オリゴヌクレオチドの合成は外注することもできる。該オリゴヌクレオチドは、1つ、又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基、あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよい。
【0026】
本発明の遺伝子増幅反応で用いるオリゴヌクレオチドプライマーとしては、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を遺伝子増幅反応により増幅することによってウシのIGF1R遺伝子の変異を検出するために利用され、15個以上のヌクレオチドからなるものであれば、特に限定されない。
【0027】
第3に、工程(c):工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在を調べる(検出する)工程について述べる。
本工程において、工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在が調べられる。変異の存在の検出方法としては特に限定されないが、前述の工程(b)での遺伝子増幅反応により増幅された核酸断片そのものを鋳型としてその塩基配列を決定する方法、あるいは、増幅された核酸断片を適当なベクターにクローニングして塩基配列を決定する方法などによって変異の検出を行うことができる。
【0028】
上記以外の変異の検出法としては、例えば前述の工程(b)での遺伝子増幅反応により得られた核酸断片長を調べる方法が使用できる。ここで、核酸断片長を調べる方法は特に限定されないが、ポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲル上での電気泳動により核酸断片を分離し、例えば既知分子量のマーカーDNAフラグメントの移動度に対してのそれの移動度に基づいて、目的の核酸断片を同定する方法が好まれる。
さらに、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む適当な核酸断片をプローブとして用いるハイブリダイゼーション法のような公知の変異検出方法も使用できる。
【0029】
本発明のウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法(検出方法)により、乳房炎抵抗性や感受性の程度を診断することができる。なお、本発明で云うウシの乳房炎抵抗性とは、遺伝子的に乳房炎に抵抗性であることを意味する。
【0030】
(3)オリゴヌクレオチドプライマー
本発明の遺伝子診断法において用いられるオリゴヌクレオチドプライマーは、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を遺伝子増幅反応により増幅することによってウシのIGF1R遺伝子の変異を検出するために利用され、15個以上のヌクレオチドからなることを特徴とする。
このようなオリゴヌクレオチドプライマーは、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列、好ましくは、配列表の配列番号1に示される塩基配列に基づいて設計することができる。
【0031】
このようなオリゴヌクレオチドプライマーの代表的な例としては、
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(c)配列表の配列番号1に示される塩基配列又はその相補塩基配列とハイブリッド形成し、ポリメラーゼ連鎖反応法によりウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を増幅するために利用できる一切の配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(d)遺伝子コードの縮退のために前記オリゴヌクレオチド(a)〜(c)から派生したオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたオリゴヌクレオチドプライマーを挙げることができる。
【0032】
このようなオリゴヌクレオチドプライマーとして、より好ましくは、
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの5’端側の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの3’端側の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたものを、特に上記(a)及び(b)のそれぞれから少なくとも1種類ずつ用いることができる。
【0033】
本発明において、オリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド数は、15〜50個、好ましくは15〜35個とすることができる。上記上限を超えると合成コストがかかり好ましくなく、一方下限未満であると特異性が低くなって、やはり好ましくない。
【0034】
これらの中でも特に、
(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなるオリゴヌクレオチドプライマーが好適に用いられる。
【0035】
(4)オリゴヌクレオチドプローブ
本発明の遺伝子診断法において用いられるオリゴヌクレオチドプローブは、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列又はその相補塩基配列とハイブリッド形成でき、ウシのIGF1R遺伝子の変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする。
このようなオリゴヌクレオチドプローブは、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列、好ましくは、配列表の配列番号1に示される塩基配列に基づいて設計することができる。
【0036】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブの代表的な例としては、配列表の配列番号1に示された塩基配列の1〜5,258位の領域又はその相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
【0037】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いてウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断を行なう場合は、ハイブリダイゼーション法など公知の方法により行なうことができる。すなわち、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列又はその相補塩基配列と該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリッド形成させ、当該領域の塩基配列を解明、及び/又は、単離することによって、ウシのIGF1R遺伝子の変異を検出することができる。
【0038】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、検出を容易にするためのラベル成分により標識されていることができる。該ラベル成分は、分光学的手段、光学的手段、生化学的手段、免疫学的手段、酵素化学的手段、放射化学的手段などにより検出できるものであることができる。ラベル成分の例としては、ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼなどの酵素、32Pなどのアイソトープ、ビオチン、蛍光色素、発光物質、発色物質などが挙げられる。
【0039】
(5)ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用キットおよび遺伝子診断試薬
本発明におけるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用キットとは、上記(3)で説明したオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とするものである。
当該キットにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマーの他に含まれるものは特に限定されず、たとえばDNA合成酵素、通常用いられる組成のPCR反応液などが挙げられる。
【0040】
また、本発明におけるウシの乳房炎抵抗性診断用遺伝子診断試薬とは、上記(3)で説明したオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とするものである。
当該遺伝子診断試薬において、上記オリゴヌクレオチドプライマーの他に含まれるものは特に限定されず、たとえばDNA合成酵素、通常用いられる組成のPCR反応液などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例等をもってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の記載では、特に説明がない場合には、J. Sambrook & D. W. Russell (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001) に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法により行われている。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールの指示に従って行っている。
【0042】
実施例1
(1)乳房炎抵抗性ウシIGF1R遺伝子の塩基配列の決定
まず、ホルスタイン種の特定種雄牛の孫娘に当たる搾乳牛の集団から選ばれた、乳房炎抵抗性ウシ(297頭)及び感受性ウシ(181頭)からなる家系の牛群について、ポジショナルクローニング法に基づき、多型性DNAマーカーを用いて乳房炎抵抗性と連鎖するウシ染色体の領域(乳房炎抵抗性領域)を調べた。
すなわち、まず、連鎖地図上にあるDNAマーカーのうち乳房炎抵抗性と最も強く連鎖するマーカーを分離した結果、乳房炎抵抗性領域は第21番染色体であると決定された。
別に調製したウシの人工細菌染色体(BAC)ライブラリーから、上記乳房炎抵抗性領域に存在するBACクローンを89個分離した。”Genome Analysis:Genetic and Physical Mapping”Kay E. Davis&Shirley M. Tilghman editors(Cold Spring Harbor Laboratory Press)によりDNAマーカーを多数開発し、Terwilliger, J. D.(1995)A powerful likelihood method for the analysis of linkage disequilibrium between trait loci and one or more polymorphic marker loci. Am. J. Hum. Genet. 56, 777-787の方法により、乳房炎抵抗性に最も強く連鎖するDNAマーカーを探索した。
【0043】
これにより、この連鎖の強さは、FEZLという転写因子の型と相関性があることが明らかとなった。このことから、乳房炎抵抗性領域に存在し、かつFEZLにより発現量を調節されている候補遺伝子を2種まで絞ることができた。
これらの遺伝子の発現の制御に関わる領域の塩基配列を解読し、乳房炎抵抗性ウシと感受性ウシを比較したところ、候補遺伝子のうちIGF1R遺伝子のcDNAの一部(配列表の配列番号1における1110位)において、感受性ウシに特異的な1〜4bpが挿入される変異を見出した。以下、挿入変異を有する遺伝子を感受性遺伝子型、変異を有しない遺伝子を抵抗性遺伝子型と呼ぶことがある。
【0044】
(2)IGF1R遺伝子の発現
IGF1R遺伝子の抵抗性遺伝子型ホモ個体および感受性・抵抗性遺伝子型ヘテロ個体のウシより採取した新鮮な乳腺組織を材料とし、RNA調製用試薬であるトリゾール(インビトロジェン社製)を使用して全RNAを調製した。この全RNA画分を鋳型に用い、IGF1R遺伝子の発現について定量的なPCRをTaqMan試薬(アプライドバイオシステムズ社製)により、ジェネティックアナライザーHT-7900(アプライドバイオシステムズ社製)で行った。その結果、IGF1R遺伝子の抵抗性遺伝子型ホモ個体の方が、感受性・抵抗性遺伝子型ヘテロ個体よりも、IGF1R遺伝子の発現量が少なかった。
【0045】
(3)IGF1R遺伝子の発現に対する挿入変異の効果について
IGF1R遺伝子の抵抗性遺伝子型と感受性遺伝子型それぞれの発現制御に関わる領域のゲノム断片(配列表の配列番号1)をつないだルシフェラーゼ遺伝子のコンストラクトを、ベクター(プロメガ社製)に入れ、ミドリザル腎由来細胞株COS-7に導入し、ルシフェラーゼ遺伝子の発現(転写活性)をルシフェラーゼ酵素の活性測定にて定量した。
その結果、IGF1R遺伝子の感受性遺伝子型では、抵抗性遺伝子型と比べ有意に転写活性が上昇していることが分かった。このことから、IGF1R遺伝子における挿入変異の存在により、IGF1R遺伝子の転写活性が上昇することが、乳房炎抵抗性の低下をもたらすと考えられた。
【0046】
実施例2 (ウシのゲノミツクDNA上のIGF1R遺伝子の挿入変異の有無の確認)
乳房炎感受性のウシに認められた1〜4bpの挿入変異部位を含むDNA断片を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーIGF1R-F及びIGF1R-Rを、配列表の配列番号1に示される塩基配列に基づいて合成した(図1)。配列表の配列番号3,4にそれぞれプライマーIGF1R-F、IGF1R-Rの塩基配列を示す。
【0047】
一方、診断対象であるウシの核酸試料として、各ウシ感受性遺伝子型ホモ個体、抵抗性遺伝子型ホモ個体および感受性・抵抗性遺伝子型へテロ個体の血液(抗擬固剤としてEDTA、ヘパリンを含む)より、自動核酸分離装置NA-1000(クラボウ社製)を用いてそれぞれのゲノミックDNAを調製した。
これらのゲノミックDNAを鋳型とし、プライマーIGF1R-FとIGF1R-Rを用いたPCR (La Taq (タカラバイオ 社製)を使用、94 ℃で30秒、60 ℃で30秒、72 ℃で1分間からなる工程を1サイクルとした60サイクル反応)を行った。PCRにより得られた核酸断片(PCR生成物)の塩基配列を、3730蛍光DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて比較した(図2)。
【0048】
その結果、抵抗性遺伝子型ホモ個体に由来するIGF1R遺伝子の抵抗性遺伝子型を鋳型にPCRで増幅させたDNA断片の283〜286番目の塩基がチミン(T、抵抗性遺伝子型)であったのに対し、感受性遺伝子型ホモ個体に由来する感受性遺伝子型を鋳型とした場合は283番目に1〜4bp挿入しているため、283〜286番目の塩基はシトシン(C、感受性遺伝子型)であった。
したがって、IGF1R遺伝子に存在しうる変異部位(283〜286番目の塩基、すなわち配列表の配列番号1における1110〜1113位)を比較することで、IGF1R遺伝子の抵抗性遺伝子型と感受性遺伝子型を見分けることができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乳房炎抵抗性IGF1R遺伝子の1〜4bp変異部分及びプライマーの設計例を示す図である。
【図2】乳房炎抵抗性IGF1R遺伝子における挿入変異の存在を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
図1中、四角で囲った部分は、挿入変異を検出するためのプライマー(上段はIGF1R-F、下段はIGF1R-R)設計の基礎となった部分を示す。水平方向への矢印は、プライマーの5’から3’への方向を示す。二股に分かれた矢印は、乳房炎感受性ウシの持つ挿入変異部位、及び、挿入されるヌクレオチドを示す。
図2中、上段はIGF1R抵抗性遺伝子型のPCR生成物を、中段はIGF1R感受性・抵抗性遺伝子型のPCR生成物を、下段はIGF1R感受性遺伝子型のPCR生成物を示す。四角で囲った部分は変異部位を示し、矢印は当該PCR生成物のうち283番目の塩基(TまたはC)を指す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(a):診断対象であるウシの核酸試料を得る工程、
工程(b):工程(a)にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び、
工程(c):工程(b)にて得られた核酸断片について変異の存在を調べる工程、
を含むウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法。
【請求項2】
ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域が、配列表の配列番号1に示される塩基配列の1〜5,258位を含む領域である請求項1に記載の遺伝子診断法。
【請求項3】
遺伝子増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応法によって行われる請求項1又は2に記載の遺伝子診断法。
【請求項4】
変異の存在を遺伝子増幅反応により調べることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
【請求項5】
核酸試料が、ゲノミックDNA、cDNA、又はmRNAを含む試料である請求項1〜4のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
【請求項6】
ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を遺伝子増幅反応により増幅することによってウシのIGF1R遺伝子の変異を検出するために利用され、15個以上のヌクレオチドからなることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項7】
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの任意の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
(c)配列表の配列番号1に示される塩基配列又はその相補塩基配列とハイブリッド形成し、ポリメラーゼ連鎖反応法によりウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域を増幅するために利用できる一切の配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(d)遺伝子コードの縮退のために前記オリゴヌクレオチド(a)〜(c)から派生したオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたことを特徴とする請求項6に記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項8】
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの5’端側の領域に相当する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列のうちの3’端側の領域に対する相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項9】
15〜50個のヌクレオチドからなるものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項10】
15〜35個のヌクレオチドからなるものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項11】
(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び、
(b)配列表の配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
からなるものであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項12】
遺伝子増幅反応が、上記請求項6〜11のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の遺伝子診断法。
【請求項13】
上記請求項6〜11のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用キット。
【請求項14】
上記請求項6〜11のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性診断用遺伝子診断試薬。
【請求項15】
ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域又はそれに対応するmRNAとハイブリッド形成でき、ウシのIGF1R遺伝子の変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用ヌクレオチドプローブ。
【請求項16】
変異の存在が、上記請求項15に記載のヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーション法により行われ、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rに存在しうる変異部位を含む領域の塩基配列を解明、及び/又は、単離することによってIGF1R遺伝子の変異を検出することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断方法。
【請求項17】
上記請求項15に記載のオリゴヌクレオチドプローブを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断用キット。
【請求項18】
上記請求項15に記載のオリゴヌクレオチドプローブを含有し、ウシの乳房炎抵抗性遺伝子IGF1Rの変異を検出することによるウシの乳房炎抵抗性の遺伝子診断法に用いられることを特徴とする、ウシの乳房炎抵抗性診断用遺伝子診断試薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−72946(P2008−72946A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255408(P2006−255408)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(301029403)独立行政法人家畜改良センター (12)
【出願人】(595038556)社団法人畜産技術協会 (10)
【Fターム(参考)】