説明

ウマヘルペスウイルスワクチン

【課題】EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気からウマを保護できるワクチンの提供。
【解決手段】不活性化EHV-1(例えば、化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス)を含み、典型的にはアジュバントをも含むワクチン(免疫原性組成物)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
呼吸器疾患は、ウマ産業にとって経済的な損害の主原因である。ウマヘルペスウイルス(EHV)、ウマインフルエンザウイルス(EIV)、及び細菌ストレプトコッカスequi(Streptococcus equi)は、ウマの感染性呼吸器疾患に最も多く関係する病原体である。世界的なウマヘルペスウイルスは、呼吸器感染症の結果としてウマの罹患に関係する主要な病原体である。ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)と4型(EHV-4)は両方とも呼吸器疾患を引き起し得る。EHV-1は、流産及び神経性疾患とも関係する。高い罹患度及びウマ産業の国際性のため、この病気を減らし、かつこれら病原体の伝播を制御するための有効なワクチンが要望されている。
【0002】
多数のEHVワクチンが商業的に入手可能である。しかし、一般に、どれも長い持続性保護を与えることができず、ほとんどEHV感染症に対して有意なレベルの保護を達成するために頻繁な追加免疫化が必要である。多くの場合、呼吸器系が感染の主要部位であるにもかかわらず、最も一般的に推奨されている投与経路は、筋肉内注射による。さらに、望ましくない副作用を引き起こすと報告されている市販ワクチンもある。EHV用の組換えワクチンの開発で多くの試みが報告されている。しかし、このアプローチは、未だ広範に受け入れられる市販の組換えワクチンの導入には至っていない。
【0003】
文献報告は、一貫して、EHV-4株による感染に対して交差保護を与えるためのEHV-1株に基づいたワクチンの能力の高度な可変性を実証している。EHV-4株に基づいたワクチンは、EHV-1とEHV-4の両株に対していくらかの保護を与える大きな性向を示しているが、EHV-4株に基づいた交差保護は、可変性を示すことも報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気からウマを保護できるさらなるワクチンの開発が継続的に要望されている。腸管外法経由(例えば、筋肉内、皮下又は静脈内)のみならず鼻腔内経由で投与することができる、EHV-1及び/又はEHV-4に対して有効なワクチンを開発することも有利だろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本発明は、EHV-1の不活性化型を含む免疫原性組成物に関する。特に、本出願は、EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気からウマを保護するためのワクチンを提供する。本ワクチンは、不活性化EHV-1(例えば、化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス)を含み、典型的にはアジュバントをも含む。本ワクチンは、保存剤、安定剤及び他のウマ病原体に対する抗原のような他の成分を含んでもよい。典型的に、他のウマ病原体に対する抗原は、EHV-4の不活性化型及びウマインフルエンザウイルス(“EIV”)の不活性化株のような不活性化型でも存在する。例えば、本ワクチンは、不活性化EHV-1に加え、ウマインフルエンザウイルスのA1及び/又はA2株の不活性化型を含む組合せワクチンでよい。EIVに対する好適な抗原の例としては、不活性化EIV A1ウイルス株A/EQ1/Newmarket/77、不活性化EIV A2ウイルス株Newmarket/2/93、及び不活性化EIV A2ウイルス株Kentucky/95が挙げられる。
【0006】
用語“ワクチン”及び“免疫原性組成物”は、本明細書では該ワクチンを接種した動物の免疫応答を刺激できる投与可能形態のいずれのタイプの生体物質をも表す広い意味で定義される。この発明の目的では、ワクチンは(免疫原性組成物)は、典型的に不活性化型のウイルス性物質を含む。ワクチンは、一般的にウイルス自体又はウイルスの免疫原性(抗原性)成分に基づいている。ここで、ワクチンに関して使用する場合、用語“保護”は、問題の病気又は状態に伴ういずれの症状の改善(部分的又は完全な)をも意味する。従って、本ワクチンによるEHVからのウマの保護は、ウイルス発散及び/又はEHV-1及び/又はEHV-4による感染に伴う1種以上の臨床徴候(例えば、発熱、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、うつ状態、及び二次細菌感染のために必要な抗生物質治療)の漸減をもたらす。
【0007】
一実施形態では、本免疫原性組成物は、化学的不活性化型のEHV-1を含む。化学的不活性化EHV-1 KyAウイルスを含むワクチンが特に望ましい。本技術の当業者に周知の種々の化学的不活性化剤を利用してウイルスを不活性化することができる。エチレンイミンと、二成分エチレンイミン(“BEI”)やアセチルエチルイミンのような関連誘導体は、EHV-1ウイルスの不活性化用に好適な化学的不活性化剤の例である。他の化学的不活性化剤、例えば、β-プロピオラクトン又はアルデヒド(ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドのような)もウイルスの不活性化に使用することができる。
【0008】
本ワクチンは、一般に、特にウイルスが鼻腔内投与できるように設計される場合、望ましくは生体接着特性を有し得るアジュバントを含む。適切なアジュバントの例としては、架橋アクリル酸ポリマーのような架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーが挙げられる。本明細書で使用する場合、用語“架橋アクリル酸ポリマー”は、混合物内で優勢なモノマーとしてアクリル酸を含むモノマー混合物から生成されるポリマー及びコポリマーを意味する。好適な架橋アクリル酸ポリマーの例としては、商標Carbopol(登録商標)934P及びCarbopol(登録商標)971で商業的に入手可能なものが挙げられる(B.F.Goodrich Co.,Cleveland,Ohioから入手可能)。本ワクチンで使用する1つの特に好適なアジュバントは、高くて約20,000cPsのブルックフィールド粘度(pH7.5の1.0wt.%水溶液として20rpmで測定した場合)を有する架橋アクリル酸ポリマーである。生体接着性アジュバントが望ましい場合、切除したばかりのウサギの胃組織の2片間で測定したとき少なくとも50ダイン/cm2の生体接着特性(米国特許第4,615,697号明細書記載の手順で測定した場合)を有するアジュバントを利用するのが有利だろう。
【0009】
EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気からウマを保護するための方法は、不活性化EHV-1を含有するワクチンをウマに投与する工程を含む。ワクチンは、鼻腔内及び/又は腸管外(例えば、筋肉内)投与を含む種々の方法で投与することができる。本方法の一実施形態では、まず、不活性化EHV-1含有ワクチンを1又は2回以上(例えば、2〜4週間の間隔で)筋肉内投与し、その後、該ワクチンを少なくとも1回鼻腔内投与する(例えば、ワクチンの最後の腸管外投与後2〜4週間)。ワクチンは、6カ月以上のウマに投与することが勧められる。理想的には、この病気の呼吸器症状の伝播を保護するため、特定群のすべてのウマに毎年ワクチン接種する。
【0010】
ウマヘルペスウイルスワクチンの製造方法も提供される。本方法は、典型的に、EHV-1ウイルス、例えば、EHV-1 KyAウイルスをサル細胞に接種する工程を含む。接種したサル細胞を、一般的には少なくともCPEが観察されるまで(通常36℃で約24〜120時間後)インキュベートし、このインキュベートした細胞からEHV-1ウイルスを収集する(例えば、培養流体をデカントかつろ過して)。収集したウイルス含有流体を二成分エチレンイミンのような化学的不活性化剤で処理し、不活性化EHV-1ウイルスを生成することができる。典型的には、不活性化ウイルスを例えば濃縮及び他成分とのブレンディングによって、さらに処理して市販製剤を製造する。例えば、不活性化ウイルスを含有する流体を濃縮し、アジュバント及び/又は1種以上の他のウマ病原体に対する抗原とブレンドすることができる。
【0011】
本出願は、(1)ウマにワクチンを投与可能なディスペンサーと、(2)EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気から保護可能な化学的不活性化EHV-1含有ワクチンとを組み合わせて含んでなるキットにも関する。本キットは、小滴として、例えば、エアロゾル、噴霧スプレイ及び/又は液滴としてその内容物を分配するディスペンサーと、少なくとも部分的に鼻腔内投与されたとき、EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気から保護できる形態のワクチンとを含み得る。
【0012】
この出願の全体にわたり、本文は、本組成物及び/又は関連方法の種々の実施形態に言及する。記載される種々の実施形態は、多種の実施例を与えることを意味し、二者択一的種類の記述と解釈すべきでない。むしろ、本明細書で提供される種々の実施形態の記述は、重複範囲でよいことに留意すべきである。本明細書で議論される実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
詳細な説明
本免疫原性組成物は不活性化型のEHV-1を含む。本ワクチンは、EHV-1及び/又はEHV-4と関係ある病気からウマを保護するために設計される。本ワクチンは、典型的に、化学的不活性化型のEHV-1を含み、化学的不活性化EHV-1 KyAウイルスを含むものが特に望ましい。本技術の当業者に周知の多種の化学的不活性化剤を利用してウイルスを不活性化することができる。エチレンイミン及び二成分エチレンイミン(“BEI”)やアセチルエチレンイミンのような関連誘導体は、EHV-1ウイルスの不活性化用に好適な化学的不活性化剤の例である。他の化学的不活性化剤、例えば、β-プロピオラクトン、アルデヒド(ホルムアルデヒドのような)及び/又は界面活性剤(例えば、Tween(登録商標)界面活性剤、Triton(登録商標)X、又はアルキルトリメチルアンモニウム塩)を使用してもウイルスを不活性化することができる。不活性化は、本技術の当業者に周知の標準的な方法で達成できる。試料を定期的な時間間隔で採取し、残留生ウイルスについて分析することができる。適切な細胞系についての細胞変性効果の監視及び/又は適切な特異性モノクロナール抗体による蛍光染色法を用いて残留生ウイルスの存在を検出することができる。
【0014】
BEIによる不活性化は、原料BEI溶液(例えば、0.1〜0.2Nの水性NaOHに0.1〜0.2Mの2-ブロモ-エチルアミンハイドロブロマイドを添加して生成される溶液)をウイルス流体と混ぜ合わせて約1〜2mMBEIの最終濃度を達成することができる。不活性化は、通常BEI-ウイルス混合物を36〜72時間絶え間なく混合しながら35〜40℃(例えば、37℃)に維持することで達成する。BEI濃度の過剰な最終濃度にチオ硫酸ナトリウム溶液を添加後(例えば、2〜3mMのチオ硫酸ナトリウムと1〜2mMのBEI溶液)数時間ミキシングして、ウイルス不活性化を停止できる。
【0015】
本免疫原性組成物は、通常アジュバントと、所望により不活性化EHV-1と共に取り込まれるTween(登録商標)界面活性剤のような1種以上の乳化剤を含む。好適なアジュバントとしては、例えば、ビタミンEアセテート可溶化液、水素化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、(鉱物)油エマルジョン、非イオン性界面活性剤、スクワレン及びサポニンが挙げられる。使用可能な他のアジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、及びフロイント不完全アジュバント(FIA)のような油ベースのアジュバントが挙げられる。Carbopol(登録商標)971ポリマーのような架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーは、本不活性化EHV-1免疫原性組成物用に特に好適なアジュバントである。
【0016】
このようなアジュバントの一例は、1種以上のオレフィン性不飽和カルボン酸モノマー(アクリル酸及び/又はメタクリル酸のような)と架橋剤を含むモノマー混合物の反応によって生成されるオレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーである。典型的に、少なくとも約90wt.%のモノマー混合物がオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーである。結果のポリマー生成物は、望ましくは、高くて約0.5wt.%、好ましくは高くて約0.2wt.%の未反応オレフィン性不飽和カルボン酸モノマーを含む。重合反応は、脂肪族ケトン、アルキルエステル又はその混合物を含む溶媒の存在下モノマー混合物の反応によって遂行し得る。好適な脂肪族ケトンとしては、アセトン及びシクロヘキサノン(本明細書では、用語“脂肪族ケトン”は環式脂肪族ケトンを包含する)のような3〜6個の炭素原子を有するものが挙げられる。好適なアルキルエステルの例としては、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル又はそれらの混合物のような3〜6個の炭素原子を有するものが挙げられる。
【0017】
好適なオレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーアジュバントは、望ましくは高くて約40,000cPsのブルックフィールド粘度(pH7.5の0.5wt.%水溶液として20rpmで)を有する。特に好適な例としては、高くて約15,000cPs、さらに望ましくは約4,000〜11,000cPs(pH7.5の0.5wt.%水溶液として20rpmで)の粘度を有するオレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーが挙げられる。
【0018】
好適なアジュバントの一例としては、アクリル酸と架橋剤を含むモノマー混合物から生成される架橋アクリル酸ポリマーが挙げられる。架橋剤としては、ジビニルグリコールのようなポリアルケニルポリエーテル架橋剤が挙げられる。好適なジビニルアルコールの例としては、アリルスクロース、アリルペンタエリスリトール、高くて1000の分子量を有するポリアルキレンジオールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。他の有用な架橋剤の例は、ジビニルベンゼン、N,N-ジアリルアクリルアミド、3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン等である。
【0019】
ワクチンを鼻腔内投与する予定の場合、粘膜について生体接着性のアジュバントの使用が有利だろう。生体接着性ポリマーは、一般に、目、鼻、口、胃腸管、膣腔及び直腸管内の粘膜に接着できるという特性を有する。生体接着剤は、生きた又は殺したばかりの粘膜又は皮膚組織のような生体表面に接着する物質として広く定義することができる。本明細書で当該語句が有用な生体接着剤を定義するために使用されるときの生体接着は、切除したばかりのウサギ胃組織の、接着剤によって一緒に接着されている2層を分離するのに必要な力を測定する手順によって分析する。この手順を用いると、生体接着剤は、米国特許第4,615,697号明細書(その開示は、参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている手順に従って2片の切除したばかりのウサギ胃組織を分離するために少なくとも約50ダイン/cm2の力を必要とする物質として定義することができる。切除したばかりのウサギ組織を分離するために必要な力の上限は、正確には分からないが、少なくとも約2000ダイン/cm2であると考えられる。
【0020】
アジュバントの好適な例としては、生体接着特性を有する架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマー(例えば、Carbopol(登録商標)971ポリマー、B.F.Goodrich Co.,Cleveland,Ohioから入手可能な架橋アクリル酸ポリマー)が挙げられる。このタイプのポリアクリル酸は、一般的に特定量のカルボン酸官能性と架橋剤を含有する架橋カルボキシ−官能性ポリマーである。このようなポリマーは、該ポリマーが、切除したばかりのウサギ胃組織の2片間で、少なくとも50ダイン/cm2(米国特許第4,615,697号明細書記載の方法で測定した場合)の接着力を示すような生体接着剤であり得る。
【0021】
一般に、投与しやすさ及び用量の均一性に適した投薬単位形で本組成物を調製することが有利である。本明細書では、投薬単位形は、治療すべき哺乳類被験者の単位用量として適した物理的に別個の単位を意味し;各単位は、必要な製薬キャリヤーと共に所望の治療効果を生じさせるために計算された所定量の活性物質を含有する。不活性化EHV-1(同様に不活性化EHV-4及び/又は不活性化EIV)の投薬単位形の仕様は、他の因子(a)活性物質の独特な特徴及び達成すべき特定の治療効果;(b)病気治療用の該活性物質の配合技術に固有の制限;及び(c)該投薬単位形の意図した投与方法によって決まる。
【0022】
主要な活性成分は、典型的に、有効量の便利かつ有効な投与のため、本明細書で開示されるような投薬単位形で好適な製薬的に許容性のキャリヤーと共に配合される。例えば、単位剤形は、1〜約5の相対効力単位(“RPUs”)の範囲の量でEHV-1抗原を含むことができる。この抗原の量は、一般的に約1〜約25/mlのキャリヤー中に存在する。補助活性成分(例えば、不活性化EIV及び/又は不活性化EHV-4)を含有する組成物の場合、投薬量は、該補助活性成分の常用量と投与方法を参照して決定される。
【0023】
本ワクチンは、典型的に、製薬的に許容性のキャリヤーと共に調製される不活性化EHV-1を含む。注射用に好適な製薬形態は、一般に無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散系と、無菌の注射溶液又は分散系の即時調製用の無菌粉末を含む。製剤は、望ましくは無菌であり、かつ容易に注射できる程度に流動性であるべきだ。剤形は、製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、かつ典型的には細菌及び真菌のような微生物の混入作用から保護される。キャリヤーは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒でよい。1つの可能なキャリヤーは、生理的食塩水である。溶液の適切な流動性は、例えば、レクチンのような皮膜を用い、分散系の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)、デオマイシン(deomycin)、ゲンタマイシン等によってもたらすことができる。多くの場合、等張性物質、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。所望により、吸収を遅延させる薬剤、例えば一ステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中で使用することで、注射用組成物の遅延性吸収をもたらすことができる。
【0024】
無菌注射用溶液は、適切な溶媒に、上で列挙した種々の他成分と共に所望量の不活性化ウイルスを取り込み、必要に応じ、その後にろ過滅菌化して調製することができる。一般に、分散系は、種々の活性成分を、基礎分散媒と、上で列挙したものから必要な他成分とを含有する無菌媒体中に取り込むことで調製することができる。無菌注射用溶液の調製用無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥法であり、活性成分の粉末と、その前もって滅菌ろ過した溶液からのさらに必要ないずれかの成分を得る。
【0025】
本組成物に安定剤を添加して不活性化ウイルスの安定性を高めることも有利だろう。好適な安定剤としては、例えば、グリセロール/EDTA、炭水化物(ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スターチ、スクロース、デキストラン又はグルコースのような)、タンパク質(アルブミン又はカゼインのような)及びタンパク質分解生成物(例えば、部分的に加水分解したゼラチン)が挙げられる。所望により、技術的に公知の方法で、アルカリ金属リン酸塩、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム及び/又はリン酸二水素カリウムのような試薬を用いて製剤を緩衝させることができる。エタノール又はプロピレングリコールのような他の溶媒を用いてワクチン製剤の成分の溶解性及び/又は溶液の安定性を高めることができる。本製剤で使用可能なさらなる添加剤としては、通常の抗酸化剤及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような通常のキレート剤が挙げられる。
【0026】
上述する本発明の好ましい実施態様の例は、具体的には以下の通りである。
(実施態様1)
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーを含むアジュバント
を含んでなるワクチン。
(実施態様2)
前記EHV-1 KyAウイルスが、エチレンイミン、エチレンイミンの誘導体及びそれらの混合物から成る群より選択される化合物を含む化学的不活性化剤による処理によって化学的に不活性化されている、実施態様1のワクチン。
(実施態様3)
前記EHV-1 KyAウイルスが、二成分エチレンイミンによる処理によって化学的に不活性化されている、実施態様2のワクチン。
(実施態様4)
さらに、不活性化EHV-4を含んでなる、実施態様1のワクチン。
(実施態様5)
さらに、不活性化ウマインフルエンザウイルスを含んでなる、実施態様1のワクチン。
(実施態様6)
前記不活性化ウマインフルエンザウイルスが、不活性化EIVウイルス亜型A1を含む、実施態様5のワクチン。
(実施態様7)
前記不活性化EIVウイルス亜型A1が、不活性化EIV A1ウイルス株A/EQ1/Newmarket/77を含む、実施態様6のワクチン。
【0027】
(実施態様8)
前記不活性化ウマインフルエンザウイルスが、不活性化EIVウイルス亜型A2を含む、実施態様5のワクチン。
(実施態様9)
前記不活性化EIVウイルス亜型A2が、不活性化EIV A2ウイルス株Newmarket/2/93、不活性化EIV A2ウイルス株Kentucky/95又はそれらの混合物を含む、実施態様8のワクチン。
(実施態様10)
不活性化EIVウイルス亜型A1及び不活性化EIVウイルス亜型A2を含んでなる、実施態様5のワクチン。
(実施態様11)
不活性化EIV A1ウイルス株A/EQ1/Newmarket/77、不活性化EIV A2ウイルス株Newmarket/2/93、及び不活性化EIV A2ウイルス株Kentucky/95を含んでなる、実施態様10のワクチン。
(実施態様12)
前記ワクチンが、EHV-1及びEHV-4からウマを保護することができる、実施態様1のワクチン。
(実施態様13)
前記架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーが、架橋アクリル酸ポリマーを含む、実施態様1のワクチン。
(実施態様14)
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための実施態様1〜13のいずれか1項のワクチンの使用。
(実施態様15)
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための実施態様5〜11のいずれか1項のワクチンの使用。
【0028】
(実施態様16)
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
エチレンイミン、エチレンイミンの誘導体又はそれらの混合物を含む化学的不活性化剤による処理によって不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーを含む生体接着性アジュバント
を含んでなるワクチン。
(実施態様17)
前記化学的不活性化剤が、二成分エチレンイミンを含む、実施態様16のワクチン。
(実施態様18)
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための実施態様16又は17のワクチンの使用。
(実施態様19)
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
不活性化EHV-1;及び
pH7.5の1.0wt.%水溶液として、20rpmで、高くて約20,000cPsの粘度を有する架橋アクリル酸ポリマーを含むアジュバント
を含んでなるワクチン。
(実施態様20)
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための実施態様19のワクチンの使用。
【0029】
(実施態様21)
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護する方法であって、以下の工程:
前記ウマに、化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルスと、架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーを含むアジュバントとを含んでなるワクチンを投与する工程を含んでなる方法。
(実施態様22)
前記ワクチンを前記ウマに投与する工程が、以下の工程:
前記ワクチンを胃腸管外投与する工程;及び
前記ワクチンを鼻腔内投与する工程
を含む、実施態様21の方法。
(実施態様23)
前記ワクチンを前記ウマに投与する工程が、以下の工程:
最初の工程で、前記ワクチンを少なくとも1回胃腸管外投与する工程;及び
次の工程で、前記ワクチンを鼻腔内投与する工程
を含む、実施態様22の方法。
(実施態様24)
前記ワクチンが、さらに不活性化EHV-4を含む、実施態様21の方法。
(実施態様25)
前記ワクチンが、さらに不活性化ウマインフルエンザウイルスを含む、実施態様21の方法。
(実施態様26)
前記ワクチンが、不活性化EIVウイルス亜型A1及び不活性化EIVウイルス亜型A2を含む、実施態様25の方法。
【0030】
(実施態様27)
ウマヘルペスウイルスワクチンの製造方法であって、以下の工程:
(a)EHV-1 KyAウイルスをサル細胞に接種する工程;
(b)この接種したサル細胞をインキュベートする工程;
(c)このインキュベートした細胞からEHV-1 KyAウイルスを収集する工程;及び
(d)この収集した細胞を、エチレンイミン、エチレンイミンの誘導体又はそれらの混合物を含む化学的不活性化剤で処理して不活性化EHV-1 KyAウイルスを生成する工程
を含んでなる方法。
(実施態様28)
前記サル細胞が、Vero細胞である、実施態様27の方法。
(実施態様29)
前記化学的不活性化剤が、二成分エチレンイミンを含む、実施態様27の方法。
(実施態様30)
さらに、前記不活性化EHV-1 KyAウイルスに、架橋アクリル酸ポリマーを含むアジュバントを添加する工程を含む、実施態様27の方法。
(実施態様31)
(1)ウマにワクチンを投与可能なディスペンサーと、(2)EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気から保護するための組成物であって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマー
を含む組成物とを組み合わせて含んでなるキット。
(実施態様32)
前記ディスペンサーは、その内容物を小滴として分配することができ、かつ前記組成物は、鼻腔内投与されたとき、EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気から保護することができる、実施態様31のキット。
【0031】
(実施態様33)
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;
不活性化EHV-4ウイルス;
不活性化EIVウイルス亜型A1;
不活性化EIVウイルス亜型A2;及び
アジュバント
を含んでなるワクチン。
(実施態様34)
前記不活性化EIVウイルス亜型A1が、EIV A1ウイルス株A/EQ1/Newmarket/77を含み、かつ前記不活性化EIVウイルス亜型A2が、不活性化EIV A2ウイルス株Newmarket/2/93及び不活性化EIV A2ウイルス株Kentucky/95を含む、実施態様33のワクチン。
(実施態様35)
前記アジュバントが、架橋アクリル酸ポリマーを含む生体接着性アジュバントを含む、実施態様33のワクチン。
(実施態様36)
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための実施態様33〜35のいずれか1項のワクチンの使用。
【0032】
以下、本発明を例証し、かつ当業者に本発明の製造及び使用方法を教示するのを補助するために提示した実施例により、本発明の組成物及び方法を説明する。これら実施例は、いかなる仕方によっても本発明の範囲を狭め、そうでなくても限定することを意図していない。
【実施例1】
【0033】
不活性化EHV-1株を含有する流体の生産
ウマの鼻肺炎ワクチン、不活化ウイルスを生産するため、まずEHV-1のマスター種培養を生産した。このマスター種からEHV-1の培養を成長させてから不活性化した。この不活性化ウイルス培養をアジュバントと混合してウマの鼻肺炎ワクチンを生産した。以下の方法を用いてウマの鼻肺炎ワクチンを生産した。
【0034】
EHV-1マスター種ウイルス培養(“EHV-1 MSV”)を生産するため、ウマヘルペスウイルス1型株KyA(EHV-1 KyA)をVero A139細胞上で3回とEVero細胞上で4回継代した。4回目の継代は、EHV-1 KyA、MSV Lot 001-dilと命名されたマスター種ウイルスとして用いた。
【0035】
マスター種ウイルスから、0〜5%の血清を有する最少必須培地(“MEM”)中、EHV-1 MSVでEVero細胞を感染させることによって、EHV-1の培養を生産した。細菌成長を阻止するのに十分な量のゲンタマイシンを培地に添加した。典型的には、EVero細胞は、0.001の標的感染多重度(“MOI”)を有するEHV-1MSVで感染させた。このような培養は、ガラスローラービン内又はマイクロキャリヤービーズ上で成長することができる。この培養を36℃±2℃で24〜120時間、細胞変性効果(“CPE”)が観察されるまでインキュベートした。インキュベーションの間、培養をEHV誘導CPEについて監視して純粋なEHV株を保証した。非定型のCPEが観察されたり、或いはコンタミネーションの巨視的又は顕微鏡的な何らかの証拠が存在した場合、その培養は捨てた。純粋なウイルス培養を無菌的に無菌ガラスカーボイ、無菌プラスチックカーボイ、又は無菌ステンレススチールタンク内に収集し、8ミクロン以上のフィルターでろ過して浄化した。バルクウイルス収集流体を試験して、不活性化前のマイコプラズマの非存在を保証した。すぐに不活性化しない収集流体は-40℃以下で保存した。
【0036】
収集後、死菌ワクチンを生産するためにウイルス培養を不活性化した。ウイルスを不活性化するため、培養温度を36℃±2℃に導いた。次に、0.15MのNaOH中、2-ブロモエチレンアミンハイドロブロマイドの0.2M溶液を二成分エチレンイミン(“BEI”)に環化し、培養に添加して最終濃度2mMのBEIを得た。生成した混合物を48時間36℃±2℃で連続して撹拌した。
【0037】
BEIによる処理後、培養をそのEHVに典型的なCPEを誘導する能力について調べ、実施例3記載の手順を用いてウイルスの不活性化を確実にした。この作業は、BEI処理ウイルス流体を、EVero細胞上で継代し、いずれのウイルス感染についてもEVero細胞をチェックすることで達成した。BEI処理培養流体は、不活性化検定が完了するまで、通常2〜7℃以下で保存した。ウイルス感染を示さない満足な不活性化試験後、十分量の1.0Mチオ硫酸ナトリウムの冷却(4℃±2℃)溶液を添加して過剰のBEIを中和し、最終濃度6mMを得た。
【0038】
EHV-1培養の活性化及び試験後、必要な場合、限外ろ過により、本明細書の実施例6記載のEHV力価放出検定法によって決定する場合、EHV-1について少なくとも1.0の相対効力(“RP”)を有するワクチンとしての製剤を可能にするであろう濃度に濃縮した。
【0039】
不活性化ウイルスは、不活性化EHV-1培養を生理食塩水及びアジュバントCarbopol(登録商標)971の0.5%原液と完全にブレンドすることでアジュバントワクチンとして調製し、バルク系列(bulk serial)を製造した。典型的な60L系列は、3.5〜4.0Lの不活性化EHV-1、12LのCarbopol(登録商標)971原液及び44〜44.5Lの生理食塩水をブレンドして作った。バルク系列は、1又は10用量(@2.2ml/用量)を含有するバイアル中に移すまで2〜8℃に維持した。各用量の不活性化ワクチンは、少なくとも1.0RP値の不活性化EHV-1、2mgのCarbopol(登録商標)971及び残量のゲンタマイシンを含んでいた。
【実施例2】
【0040】
不活性化ウマインフルエンザウイルスを含有する流体の生産
ウマインフルエンザウイルス−A/EQ1/Newmarket/77、亜型A1
ウマインフルエンザのMSV Rec ER1K亜型A1は、Wellcome Foundation Ltd.,Beckenham,Kent,U.K.で開発された。この原ウマ株を、特定病原体除去(SPF)ふ化鶏卵内で、単独又はA/Puerto Rico/8/34ウイルスと組合せて10回継代した。再同類ER1Kをさらに7回Vero組織培養内で継代し、A/E/Newmarket/77(Equi)(H7N7)Rec ER1Kと命名されるMSVを生産した。このウイルスは、Boehringer Ingelheim Vetmedica,Inc.(BIVI)によって、Coopers Animal Health,Inc.,Est.Lic.No.107から入手した。このウイルスをBIVIのEVero細胞系[Coopers Animal Healthから入手したVero細胞系はBIVIのEVero細胞と命名された]内で1回継代し、新しいマスター種ウイルスを確立した。このマスター種ウイルスは、Lot 111795と称する。
【0041】
ウマインフルエンザウイルス−Newmarket/2/93、亜型A2
ウマインフルエンザのNewmarket/2/93亜型A2は、Animal Health Trust,P.O.Box5 Newmarket,Suffolk CB8 8JH,EnglandのJ.A.Mummford博士から得た。ウイルスを鼻炎のウマから単離した。このウイルスを特定病原体除去(SPF)ふ化鶏卵内で5回継代してからMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞系内で5回継代した。MDCK内の5回目の継代をMSVと命名した。このMSVは、EIV NM/2/93,MSV Lot 001-dilと称する。
【0042】
ウマインフルエンザ−Kentucky/95、亜型A2
ウマインフルエンザのKentucky/95亜型A2は、Gluck Equine Research Center,Lexington,K.Y.から得た。ウイルスを鼻炎のウマから単離した。ウイルスを2回特定病原体除去(SPF)ふ化鶏卵内で継代した。そして、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞系内で3回、EVero細胞内で3回継代した。EVero細胞内の3回目の継代をMSVと命名した。このMSVは、EIV K95、MSV Lot 001-dilと称する。
【0043】
以下の手順を用い、別々であるが、同様の方法でウマインフルエンザ成分の3株を生産した。EVero細胞内の特徴的なEIV誘導細胞変性効果(CPE)を観察することによって、各生産ロットのNewmarket/2/93ウイルスをウマインフルエンザウイルス(EIV)と同定した。MDCK細胞内の特徴的なEIV誘導CPEを観察することによって、各生産ロットのNewmarket/2/93及びKentucky/95ウイルスをEIVと同定した。Newmarket/77及びKentucky/95は、サル腎臓細胞培養に対して細胞破壊性であり、単層培養内で典型的なEIV CPEをもたらした。Newmarket/2/93は、MDCK細胞培養に対して細胞破壊性であり、単層培養内で典型的なEIV CPEをもたらした。ウマの病原性は、いずれのウイルスについても評価しなかった。マスター種ウイルスは、9 C.F.R.113.27(c)、113.28、及び113.55に準拠した純度について調べた。Newmarket/77マスター種ウイルスは、ブタ小脳疾患、アカバネ(Akabane)、ウシ三日熱、ブルータング(Bluetongue)、及び短潜伏期性内臓栄養ニューカッスル病(Newcastle disease)のためだった。バルクウイルス収集流体は、不活性化前に9.C.F.R. 113.28に準拠してマイクロプラズマについて調べた。マスター種ウイルスは、以下の手順を用いて免疫原性について調べた。
【0044】
各系列から仕上げられた生成物のバルク又は最終容器試料は、モルモット力価試験によって力価を調べた。少なくとも10匹の体重300〜500gの各モルモットに筋肉内注射した。各モルモットの用量は、ウマ用ラベルのワクチンの単位用量として推奨されている用量の半分だった。2回目の用量は第1投与後14〜21日に注射した。同一ソース由来のさらに2匹のモルモットを対照として保持した。2回目の注射の14〜21日後に、各ワクチン接種したした血清試料と各対照を血球凝集阻止(HAI)により、Newmarket/77、Newmarket/2/93及びKentucky/95抗体について調べた。このワクチンのEIVフラクションの力価は、国立獣医業務研究所試験プロトコル、ウマインフルエンザ抗体の赤血球凝集阻止検定を行うための補足検定法(National Veterinary Services Laboratories Testing Protocol,Supplemental Assay Method for Conducting the Hemaggulation Inhibition Assay for Equine Influenza Antibody(MVSAM0124.01,1998年10月2日付け))を用いて決定した。
【0045】
試験中、対照がEIVフラクションについて1:10で血清陰性のままでない場合、その試験は無意味とみなし、試験を繰り返した。有効な試験で10頭のうち8頭のワクチン接種ウマがNewmarket/77フラクションに対して80以上のHAI抗体力価、及びNewmarket/2/93とKentucky/95フラクションに対して40以上の力価を示さない場合、その試料は不満足とみなした。不活性化EIVを含有するワクチンは、望ましくは少なくとも約64HAU/単位用量の不活性化EIVウイルス亜型A1及び/又は少なくとも約256HAU/単位用量の不活性化EIVウイルス亜型A2を含んで調製される。
【0046】
作業及び生産種用には、マスター種ウイルスから第1継代〜第4継代を利用した。マスター種ウイルスから第1継代〜第5継代によってワクチンを生産した。ウマインフルエンザ、株Newmarket/77亜型A1及びウマインフルエンザ、株Kentucky/95、亜型A2をEVero細胞系培養内で増殖させた。
【0047】
Newmarket/2/93の増殖に用いたMDCK細胞系は継代71〜91に限定した。継代71を凍結し、マスター細胞原料と名付けた。MDCK細胞培養を5〜10%のウシ胎児血清を含有するMEM内で増殖させた。Newmarket/2/93の種及び生産培養を10単位のトリプシン/mLで補充したMEM内で増殖させた。細胞培養は、1、3、10、30、50、又は140リットルの細胞培養容器、9Lのガラスローラービン、又はプラスチックローラービン内マイクロキャリヤービーズ上で成長させる。マスター及び作業用種ウイルスは、-60℃以下で保存する。
【0048】
MDCK細胞培養は、無菌ガラス又はプラスチック容器内で成長させた。培養は、40〜100mLの培地を有する75cm2又は150cm2のプラスチックフラスコ内で成長させた。拡張培養は、ローラービン培養内、100〜1000mLの培地中で成長させ、ローラービン培養内でも継代培養した。最初に液体窒素貯蔵所から出るときの細胞系の付着と成長に基づいて75cm2又は150cm2の表面付着面積を選択した。液体窒素貯蔵の応力のため、より小さい表面積で細胞増殖を始め、成長が達成されたとき、150cm2のT-フラスコ内でさらに細胞を継代培養することが有利な場合もある。細胞が液体窒素貯蔵から出て、150cm2のT-フラスコ内での拡張に十分な細胞の健康な単層が生成される場合、75cm2のT-フラスコを省略して細胞を直接150cm2のT-フラスコ内に植えた。
【0049】
ウイルスの接種前に、細胞増殖培地を培養容器からデカントした。培養容器に、血清のない最少必須培地(MEM)を添加し、細胞を30〜45分間すすいだ。すすぐ培地の量は、使用する培養容器によって決まる。すすいだ培地をデカントし、10単位の精製トリプシン/mlMEMを含有する血清のないMEMを種ウイルスが添加されている培養容器に添加することで培養容器に接種した。細胞培養を、Newmarket/77、Newmarket/2/93及びKentucky/95株について0.01の標的感染多重度(MOI)で感染させた。
【0050】
流体を収集するまで、細胞培養を36℃±2℃で維持した。接種後細胞形態学で誘導される特徴的なEIVについて単層を観察した。CPEは、単層表面から脱着する丸くなり、かつ屈折性の細胞を誘導した。CPEは、通常、接種後24〜96時間目に見えた。インキュベーション期間中、コンタミネーションの巨視的及び/又は微視的証拠について、又は細胞形態学の非定型的な変化について細胞を調べた。細菌のコンタミネーション又は非特異的な細胞分解の証拠を示したいずれの培養も捨てた。
【0051】
収集前に、各培養を巨視的及び微視的に調べた。コンタミネーション又は非定型的なCPEの証拠を示したいずれの培養も捨てた。接種後1〜4日に培養容器から流体を収集した。8ミクロン以上のフィルターでろ過して浄化後、培養容器内のウイルス培養流体を無菌的に無菌ガラス若しくはプラスチックカーボイ又はステンレススチールタンク内に収集した。プールした流体は、即座に不活性化するか又は後で不活性化するために-40℃以下で保存した。不活性化後無菌性及び抗原試験のため試料を集めた。
【0052】
培養流体の量を測定し、流体の温度を36℃±2℃に導いた。0.15MのNaOH中、二成分エチレンイミン(BEI)に環化された2-ブロモエチレンアミンハイドロブロマイドの0.2M溶液を培養流体に添加して2mMの最終BEI濃度を得た。この不活性化ウイルス流体は、不活性化試験の完了まで-40℃以下で凍結するか、又は4〜8℃で保存した。
【0053】
Newmarket/77及びKentucky/95の各ロットを、Vero A139細胞内の継代によって不活性化について調べた。Newmarket/2/93の各ロットは、MDCK細胞内の継代によって不活性化について調べた。適切な細胞培養単層(150ml)に1.0mlの不活性化EIV流体を接種し、少なくとも2継代を伴って36℃±2℃で14日間維持した。維持期間の最後に、細胞単層をEIVに典型的なCPEについて調べた。正のウイルス対照では、各EVero細胞の1つの培養フラスコに、それぞれ標準Newmarket/77及びKentucky/95ウイルスを接種し、MDCK細胞の1つのフラスコに、標準Newmarket/2/93ウイルスを接種した(それぞれ0.01の標的MOIに)。EVero細胞の1つのフラスコとMDCK細胞の1つのフラスコは負の対照として接種しなかった。インキュベーション及び継代後、BEI処理ウイルス流体内のウイルス感染細胞が存在しないことが、不活性化の満足な試験を構成した。標準ウイルスを接種した対照細胞は、EIVに典型的なCPEを示し、非接種フラスコはEIV CPEの証拠を示さなかった。
【0054】
満足な不活性化試験後、1.0Mチオ硫酸ナトリウムの冷却(4℃±2℃)溶液を添加して残留BEIを中和し、6mMの最終濃度を得た。不活性化流体は、最終生成物のバルキング(bulking)まで4℃±2℃以下で保存した。不活性化試験が不満足な場合、上述の手順を用いてBEIで流体を再処理し、不活性化について再試験することができる。
【0055】
必要な場合、限外ろ過で不活性化バルクウイルス流体の各ロットを2倍〜50倍に濃縮して所望濃度を達成した。不活性化バルクウイルス流体の1つ以上のバルクロットは、通常濃縮用にプールした。濃縮バルクウイルスは、バルキングまで4〜8℃で保持した。
【0056】
不活性化及び濃縮後に生じた生成物は、ウイルス収集流体の生産で用いた培地から残存量のゲンタマイシンを含んでいた。このレベルは生成物の用量ごとに許容されるレベルを超えていなかった。本ワクチンは、ワクチン1用量当たり2mgのCarbopol(登録商標)971を含んで調製した。
【0057】
吸い上げるか、又は正の圧力によって(無菌ろ過窒素)、バルキング用成分を無菌的にガラス、プラスチック、又はステンレススチール容器に添加した。系列を完全にブレンドしてから最終容器に充填する準備ができるまで2〜8℃に維持した。以下に、例として不活性化EIVワクチン組成を示す。
Newmarket/77 3,000ml
Newmarket/2/93 6,000ml
Kentucky/95 6,000ml
Carbopol(登録商標)971(0.5%原液) 12,000ml
生理食塩水 33,000ml
所望により、生理食塩水又はその一部を、不活性化EHV-1及び任意に不活性化EHV-4を含有する溶液と置き換えて組合せEHV/EIVワクチンを生産することができる。
【0058】
バルキング後、最終容器に充填するための無菌充填領域に移すための無菌プラスチック又はステンレススチール容器中に系列を引き出すか、又はバルク系列をサンプリングし、無菌プラスチックカーボイ中に引き出した。系列をカーボイ中に引き出した場合、それを4〜8℃で保存した。一度にバルクワクチンの2つ以上のカーボイを充填すべき場合、充填が必要なときに無菌ステンレススチール容器内にプールした。各用量のワクチンは十分な不活性化ウイルス収集流体を含むように調製し、少なくとも64赤血球凝集単位(HAU)のNewmarket/77、128HAUのNewmarket/2/93及び128HAUのKentucky/95を与えた。
【実施例3】
【0059】
ウイルスの不活性化の監視方法
EHV-1、EHV-4、EIV Newmarket/77、及びEIV Kentucky/95の各ロットをEVero細胞内での継代によって不活性化について試験した。EIVNewmarket/2/93の各ロットは、MDCK細胞内での継代によって不活性化について試験した。100及び150cm2のEVero細胞培養単層上に1.0mlの不活性化EHV又はEIV流体を接種し、少なくとも2継代を伴って14日間36℃±2℃で維持した。維持期間の最後で、細胞単層をEHV又はEIVに典型的なCPEについて調べた。EHV対照のため、EVero細胞の培養フラスコに標準EHV-1又はEHV-4を接種し(正の対照)、0.01の標的多重度(MOI)を与えた。EIV対照のため、EVero細胞の培養フラスコに標準EIV Newmarket/77又はEIV Newmarket/Kentucky/95ウイルスを接種し(正の対照)、0.01の標的多重度(MOI)を与えた。EIV Newmarket/2/93試験のため、MDCK細胞の培養フラスコに標準EIV Newmarket/2/93を接種し、0.01の標的MOIを与えた。負の対照として、非接種のEVero細胞又はMDCK細胞のフラスコを試験培養と同一条件下でインキュベートした。インキュベーション及び継代後、BEI処理ウイルス流体中のウイルス感染細胞が存在しないことが満足な不活性化試験を構成した。標準ウイルスを接種した対照細胞は、EHV又はEIVに典型的なCPEを示すはずである。非接種フラスコは、EHV又はEIV CPEの証拠を示さないはずである。満足な不活性化試験後、チオ硫酸ナトリウムを添加して残留BEIを中和し、最終生成物のバルクブレンディング前、不活性化流体を4℃±2℃以下で保存した。
【実施例4】
【0060】
EHV力価放出検定
EHV-1 mAb又はEHV-4 mAbによる96-ウェルプレートの塗布
EHV-1フラクションの力価の試験に使用する96-ウェルプレートにEHV-1モノクロナール抗体を塗布した。EHV-4含有試料の力価の試験に使用する96-ウェルプレートにEHV-4モノクロナール抗体を塗布した。EHV-1モノクロナール抗体(“EHV-1 mAb”)、16H9、IgGフラクションを塗料緩衝液に1:10,000希釈した。EHV-4モノクロナール抗体(“EHV-4 mAb”)、20F3、IgGフラクションを塗料緩衝液に1:10,000希釈した。mAb溶液の一定分量(100μl)を、NUNC MAXISORPプレートのカラム1以外の全ウェルに添加し、プレート封鎖カバーで封鎖した。このマルチウェルプレートを37℃で1時間、4℃で一晩中インキュベートした。
【0061】
試料中のEHV-1又はEHV-4抗原の定量化
試料中のEHV-1又はEHV-4抗原は、それぞれのmAbを塗布した微量定量プレートを用いて定量した。ELISAでの試験の前に、円錐状微量遠心管中の試料(例えば、アジュバントバルクワクチン又は最終容器ワクチン)の1mL量を最少18時間-40℃以下で凍結させた。ELISAを行った日に、微量遠心管内の試験ワクチンの凍結試料及びワクチン標準の凍結バイアルを37℃の水浴内で迅速に解凍し、ボルテックスして再懸濁固定物質とした。ワクチン標準の微量遠心管及び試験ワクチンの各微量遠心管に2.5μl量のTriton(登録商標)X-100を添加した。微量遠心管をボルテックスし、室温で1時間インキュベートした。管を15分ごとにボルテックスした。100μl量のEHV-1外部標準対照(又はEHV-4外部標準対照)を900μlの抗原希釈剤に添加した。一定分量(2.5μl)のTriton(登録商標)X-100を希釈EHV-1外部標準に添加した。外部標準流体を室温で1時間インキュベートし、15分ごとにボルテックスした。
【0062】
この1時間のインキュベーションの間、EHV mAb塗布プレートをPBS-Tween(登録商標)溶液で3回洗浄した。ウェル内の残存反応性部位は、200μl/ウェルの遮断緩衝液ですべてのウェルを後−塗布して遮断した。プレートを遮断緩衝液と共に最少30分間37℃でインキュベートした。1時間のインキュベーション後、500μlのワクチン標準及び試料を500μlの抗原希釈剤を含有する試験管に移すことで、ワクチン標準及び試験ワクチンの2倍の系列希釈物を調製した。
【0063】
後−塗布プレートをPBS-Tween(登録商標)溶液で3回洗浄した。標準及び試験ワクチンの非希釈から1:32希釈の一定分量(50μl)を添加して、表IV-1に示されるようなEHV-1 mAb及びEHV-4 mAb塗布プレートのウェルを複製した。適切な外部標準対照の50μl量を表IV-1に示されるような各プレートのウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。この1時間のインキュベーションの間、ウマ抗-EHV-1血清(又はウマ抗-EHV-4血清)を抗体希釈剤中1:1,000に希釈し、室温で1時間インキュベートした。
【0064】
1時間のインキュベーション後、マルチウェルプレートをPBS-Tween(登録商標)溶液で3回洗浄した。一定分量(50μl)の希釈ウマ抗-EHV-1血清(又は希釈ウマ抗-EHV-4血清)を、適切なプレートのカラム1のウェル以外の全ウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。この1時間のインキュベーションの間、ヒツジ抗-ウマIgG・HRP接合体を抗体希釈剤中1:2,500に希釈し、室温で1時間インキュベートした。
【0065】
1時間のインキュベーション後、プレートをPBS-Tween(登録商標)溶液で3回洗浄した。一定分量(50μl)のヒツジ抗-ウマIgG・HRP接合体を、カラム1のウェル以外の全ウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、再びプレートをPBS-Tween(登録商標)溶液で3回洗浄した。
【0066】
製造業者の説明書に従ってTMB基質を調製する。マルチチャンネルピペッターで列Aの全ウェルに一定分量(100μl)のTMB基質溶液を添加してからプレートの列B〜Hに順に添加した。マルチウェルプレートを室温でインキュベートした。650nmの波長で微量プレートリーダー上のプレートの示度によってウェルの光学密度を決定した。カラム1の対照ウェルはブランクとして働いた。EHV-1抗原の定量化に用いたプレートはTMB基質の添加35±10分後に読み取った。EHV-1外部標準を含有するウェルの光学密度は、0.500〜1.200のはずである。EHV-4抗原の定量化に用いたプレートはTMB基質の添加45±10分後に読み取った。EHV-4外部標準を含有するウェルの光学密度は、0.500〜1.200のはずである。試験ワクチン試料の相対効力値(“RPV”)は、光学密度の示度から、EHV-1外部標準対照(又はEHV-4外部標準対照)に対して値を正規化して決定した。
【0067】
III.有効な試験の基準
EHV-1外部標準(又はEHV-4外部標準)を含有するウェルの光学密度は、TMB基質の添加30±5分後に0.500〜1.200のはずである。負の対照ウェルの光学密度は、高くて0.250のはずである。この有効性基準のどちらかを満足しない場合、そのアッセイはノーテスト(NO TEST)とみなすべきであり、既成観念にとらわれずにアッセイを繰り返すことができる。試料の単位用量のRPV(不活性化EHV-1及び/又は不活性化EHV-4について)が1.0以上である場合、アッセイの相対効力の結果を良好とみなした。
【0068】
IV.試薬
EHV-1特異性モノクロナール抗体、IgGフラクション。ハイブリドーマ16H9は、George Allen博士,Gluck Equine Research Center,University of Kentucky,Lexington,KY.から得た。マウス腹水からのIgGフラクションは商業的に準備した。精製抗体をEHV-1 mAb 16H9-IgG,Lot 001,11-11-98,Exp.11-11-03と同定した。IgG抗体フラクションを4〜8℃で保存した。
【0069】
EHV-4特異性モノクロナール抗体、IgGフラクション。ハイブリドーマ20F3は、George Allen博士,Gluck Equine Research Center,University of Kentucky,Lexington,KY.から得た。マウス腹水からのIgGフラクションは商業的に準備した。精製抗体をEHV-1 mAb 20F3-IgG,Lot 001/11-11-98,Exp.11-11-03と同定した。IgG抗体フラクションを4〜8℃で保存した。
【0070】
ウマ抗-EHV-1ポリクロナール血清。EHV免疫原性研究でワクチン接種しない対照ウマから集めた血液、623-510-98E-015から病原性EHV-1による誘発後21日に血清のプールを調製した。抗体をウマ抗-EHV-1,Lot 001/030199,Exp.030104と同定した。血清を-40℃以下で凍結保存した。
【0071】
ウマ抗-EHV-1ポリクロナール血清。EHV免疫原性研究でワクチン接種しない対照ウマから集めた血液、623-510-98E-015から病原性EHV-4による誘発後21日に血清のプールを調製した。抗体をウマ抗-EHV-4,Lot 001/030399,Exp.030304と同定した。血清を-40℃以下で凍結保存した。
【0072】
ヒツジ抗-ウマIgG・HRP接合体、1mg/ml、Bethy Laboratories,Inc.カタログ番号A70-121P。抗体接合体を4〜8℃で保存した。
【0073】
EHV-1外部標準流体。EHV-1流体は、実施例1記載の手順に従って生産した。EHV-1外部標準流体のバイアルをEHV-1 Ext.Ref.Flds.,Lot 001/040599. Exp.040504と同定した。ウイルス流体を-40℃以下で保存した。
【0074】
EHV-4外部標準流体。EHV-4流体は、実施例6記載の手順に従って生産した。EHV-4外部標準流体のバイアルをEHV-4 Ext.Ref.Flds.,Lot 001/040699. Exp.040604と同定した。ウイルス流体を-40℃以下で保存した。
【0075】
EHV-1/EHV-4標準ワクチン。EHV-1/EHV-4標準ワクチンは、実施例8記載の免疫原性研究で用いたのと同じワクチンである(623-0510-98E-015)。このワクチンをEHV Imm.Vac,623-510-98E-015,lot# 001,11-6-98. Exp.110603と同定した。このワクチン標準を-40℃以下で保存した。
【0076】
実験では、以下の商業的に入手可能な試薬を使用した。
基質系。TMB(2成分),Kirkegaard及びPerry,カタログ番号50-76-00。
Triton(登録商標)X-100。Sigma,カタログ番号1043。
子ウシ血清。Hyclone Laboratories,Inc.,カタログ番号A-2151-L。
【0077】
実験用に以下の標準溶液を調製した。
塗布緩衝液(各試験用に新たに調製し、pH9.6に調整)
g/リットル 脱イオン水
a. Na2CO3・無水...............1.59
b. NAHCO3....................2.93
PBS(pH7.3に調整)
g/リットル 脱イオン水
a. Na2HPO4・無水..............1.18
b. NaH2PO4・無水..............0.23
c. NACl........................8.50
PBS-Tween(登録商標)溶液
g/リットル 脱イオン水
a. Na2HPO4・無水..............1.18
b. NaH2PO4・無水..............0.23
c. NACl........................8.50
d. Tween(登録商標)20...............0.05ml
遮断緩衝液(試験日に新たに調製)
a. PBS...........................75ml
b. 子ウシ血清.......................25ml
抗体希釈剤(遮断緩衝液としてのAame;試験日に新たに調製)
抗原希釈剤(試験日に新たに調製)
a. PBS...........................50ml
b. Triton(登録商標)X-100..........0.05ml
【実施例5】
【0078】
不活性化EHV-1によるウマの接種及びその後の病原性EHV-4による誘発
本研究の目的は、病原性EHV-4によって誘発されるワクチン接種ウマの交差保護について、不活性化EHV-1 KyAウイルスの免疫原性を実証することだった。本研究で用いたワクチンは、不活性化EHV-1 KyAウイルスと共にCarbopol(登録商標)971アジュバントを含んでいた。ウマを2種のワクチン接種療法でワクチン接種した。一方のワクチン接種療法は3回の筋肉内ワクチン接種であり、他方のワクチン接種療法は2回の筋肉内ワクチン接種と1回の鼻腔内投与だった。2〜4週間間隔でウマにワクチン接種した。非ワクチン接種ウマは対照として働いた。最後のワクチン接種3週間後、ワクチン接種したウマと非ワクチン接種対照ウマを病原性EHV-4で誘発した。
【0079】
非ワクチン対照ウマではEHV-4による誘発後、重症な呼吸器疾患が観察された。筋肉内又は筋肉内/鼻腔内療法でワクチン接種したウマは、ワクチン接種しないで誘発した対照ウマに比し、EHV-4によって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候に有意な減少を示した。非ワクチン接種対照ウマに対し、どちらかのワクチン接種療法でワクチン接種したウマには、ウイルス発散が有意に減少した。本研究の結果は、病原性EHV-4で引き起こされる呼吸器疾患に対する本ワクチンの不活性化EHV-1 KyAフラクションの免疫原性を実証した。さらに、本研究は、胃腸管外と胃腸管外/鼻腔内経路の両投与で、不活性化EHV-1 KyAフラクションが免疫原性であることを実証した。
【0080】
月齢が4〜9カ月の範囲の健康なオス及びメスウマを選択源から得た。ウマを端綱のタグ番号とマイクロチップ番号で特定した。研究開始時、すべてのウマは良い健康状態だった。最初のワクチン接種時に、ウマはEHV-1及びEHV-4に対して2以下のウイルス中和(VN)力価を持っていた。バッグからウマの識別番号を引き抜いてウマを無作為にグループ分けした。ワクチン接種及び誘発期間中、ウマは、仕切られていない囲い内で一緒に養い、自由選択の酪農品質のアルファルファ干し草、Sweet 14酪農サプリメント、ウマ用バイオミネラル、及び適宜水を与えた。
【0081】
バッグからウマの識別番号を引き抜いてウマを無作為にグループ分けした。ワクチン接種期間中、一般的な健康と何らかの異常挙動についてウマを観察した。ワクチン接種後どのウマにも何の異常な挙動又は有害な健康状態も観察されず、ワクチン接種後どのウマにも有害な注射部位反応も観察されなかった。ワクチン接種期間中、どのウマにも呼吸器疾患の臨床徴候は観察されなかった。
【0082】
ワクチン用のEHV-1流体は、実施例1記載の手順に従って生産した。すべてのウイルス流体はマスター種ウイルスから15継代であり、マスター細胞原料から20番目の継代の細胞上で生産した。ワクチンは、2ml用量につき、EHV-1及びEIV Newmarket/77,A1亜群、EIV Kentucky/95,A2亜群及びNewmarket/2/93、,A2亜群を含むように調製した(実施例2記載の手順によって生産)。ワクチンをEHV-1 Imm Vac,623-510-99E-116,lot# 001,1999年12月19日と標識した。
【0083】
不活性化EHV-1を含有する免疫原性組成物を2種のワクチン接種療法でウマに投与した。一方のワクチン接種療法は、3週間間隔の3回の筋肉内ワクチン接種だった。他方の療法は、2〜4週間離した2回の筋肉内接種後、2〜4週間後の鼻腔内経路による3回目の接種だった。各ワクチン接種療法グループは、11頭以上のウマを含んでいた。18頭のウマのグループは非ワクチン接種対照として働いた。最後のワクチン接種3週間後に、病原性EHV-4でウマを誘発した。EHV-4によって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候についてウマを監視し、下表V-1に示される得点システムで病気の重大度を記録した。ワクチン接種前とワクチン接種後の選択時に、血清学的評価用の血液と鼻の試料及びウイルスの単離用鼻スワブを採取した。
表V-1
臨床徴候得点システム
臨床徴候 徴候を示す日ごとに与えられる得点
鼻汁
水のようなわずかな量 1
水のような大量 2
粘液膿性結のわずかな量 3
粘液膿性結の大量 4
発熱
39.2〜39.9℃(102.5〜103.9゜F) 1
40.0〜40.5℃(104.0〜104.9゜F) 2
≧40.6℃(105.0゜F) 3
他の徴候
結膜炎 1
せき 2
呼吸困難 3
うつ状態 4
二次細菌感染に必要な抗生物質治療 5
【0084】
EHV-4誘発用ウイルス、株405の5回の反復滴定をVero細胞上で行った。滴定の力価は、5回の各滴定について4.63TCID50Log10/1mlだった。誘発のため2mlを投与して4.9TCID50Log10/用量を与えた。この病原性ウイルスの用量は、非接種対照ウマに重症な呼吸器疾患を引き起こすのに十分だった。
【0085】
EHV-4 405株は、American Type Culture Collectionから得、Vero細胞上で増殖させた。このウイルスは、鼻肺炎のウマから単離され、EHV及びEHVによって引き起こされる病気でよく認知されている科学者、M.Studdert博士によって特徴づけされた。このウイルスは、EHV-4の適切かつ代表的な標本としてATCCに提出され、かつ以前にEHV-4誘発株としてNVSLによって推奨されている。
【0086】
誘発用EHV-4の凍結原料を解凍し、5.0TCID50Log10/mlの標的濃度を含むように希釈し、-70℃で凍結させた。誘発ウイルスの試料を解凍し、力価を決定した。誘発時にウイルス流体を解凍し、3mlの注射器と21ゲージの針で2mlのEHV-4を取出した。針を除去し、適宜のグループのワクチン接種したウマと非ワクチン接種ウマに誘発ウイルスを鼻腔内投与した。
【0087】
誘発後、発熱、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、うつ状態、及び二次細菌感染に必要な抗生物質治療のような他の徴候を含むEHV-4によって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候についてウマを監視した。毎日、臨床疾患について観察し、疾患の重症度を記録した。
【0088】
ウイルス誘発後、選択した日にEHVの単離のため鼻スワブを採取し、-70℃で保存した。凍結試料を解凍し、輸送媒体からスワブを取り除いた。この試料を2500xgで20分間19〜22℃で遠心分離によって処理した。処理した試料の一定分量0.1mlを、Vero細胞の24時間単層を含有する48-ウェル組織培養プレートのウェルに添加した。培養プレートを7日間CO2インキュベーター内37℃でインキュベートした。EHVに典型的な細胞変性効果(CPE)の存在の定型的な基礎に基づいてウェルを観察した。細胞原性を示したウェルは、インキュベート期間の数日後に、該ウェルから0.2mlを、Vero細胞の24時間単層を含有する48-ウェル培養プレートのウェルに移して継代培養した。7日間CO2インキュベーター内37℃で培養プレートをインキュベートし、CPEについて観察した。CPEに対してポジティブだった処理鼻試料中のEHVの力価は、96-ウェル組織培養プレート内の細胞について標準的な滴定法で決定した。
【0089】
ワクチン接種前後及び病原性ウイルスによる誘発後、ウマの血清VN抗体力価を決定した。血液試料を採取して研究用のウマをスクリーニングすると、ウマ番号13がEHV-1及びEHV-4に対して8のVN力価を有していることを除き、すべてのウマがEHV-1及びEHV-4に対して2以下のVN抗体力価を持っていた。最初のワクチン接種時に、EHV-1及びEHV-4に対するVN力価はそれぞれ2及び4に下がった。筋肉内投与グループの1頭のさらなるウマは、2から8に増えるVN力価を有しており、胃腸管外/鼻腔内投与グループの2頭のウマは、2から16に増えるVN力価を持っていた。どのウマも呼吸器感染のいかなる証拠も示さなかった。第1ワクチン接種後、EHV-1及びEHV-4に対するVN力価の増加は可変だったが、すべてのウマのVN力価がワクチン接種前の力価と比較して増加した。第2及び第3ワクチン接種後、VN力価は第1接種後と基本的に同一のままだった。EHV-4に対するよりEHV-1に対するVN力価が大きかったが、EHV-1に対するVN力価は、EHV-4 VN力価の2倍より多く、4倍未満だった。EHV-1及びEHV-4に対するVN力価は、胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種グループより胃腸管外ワクチン接種グループの方が大きかったが、2倍未満の差だった。病原性EHV-4による誘発後21日では、EHV-1及びEHV-4の両者に対するVN抗体力価がワクチン接種ウマでわずかに増え、又は同一のままだった。しかし、非ワクチン接種対照ウマでは、EHV-1及びEHV-4の両者に対してVN抗体力価が32〜128倍増加した。EHV-1に対するVN抗体力価は、EHV-4誘発後のワクチン接種ウマと対照ウマのEHV-4に対するVN抗体力価と同一だった。
【0090】
ワクチン接種前後及び病原性ウイルスによる誘発後のウマから収集した鼻試料中のVN抗体力価は、血清中の抗体力価の決定に用いるのと同じVNアッセイで決定した。ワクチン接種後の血清中のVN活性と同様に、ワクチン接種後鼻分泌物中のVN活性は増加したが、程度は少なかった。EHV-4による誘発後、VN抗体力価は増加したが、わずかだけであり、かつ2〜3頭のウマだけだった。本報告では、VN抗体力価データは提示しない。
【0091】
病原性EHV-4を鼻腔内投与してウマを誘発した。誘発後、ウマの温度を毎日測り、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態を含む呼吸器疾患の臨床徴候を記録した。
【0092】
EHV-4誘発後、ウマの発熱を監視した。両ワクチン接種グループと対照グループで発熱は散発的かつ短い持続時間だった。発熱を示したウマの大多数では、1又は2日間だけ高温が観察された。胃腸管外/鼻腔内投与グループの1頭のワクチン接種ウマは、4日間連続して発熱を示した。誘発後5〜8、10又は13日間で、ワクチン接種グループと対照グループ間の発熱得点の分布に有意な相異の証拠はなかった。2頭未満の動物しかゼロでない発熱得点を持たなかったので、1〜4、9、11、12、及び14〜21日については、統計解析を行わなかった。測定値のばらつきの解析によって日ごと別々に温度を解析すると、ワクチン接種グループと対照グループ間で温度の有意な減少の証拠があったが、2〜3の別個の日についてだけだった。
【0093】
ウマの鼻汁の観察も行った。鼻汁は、正常、水のようなわずかな量、水のような大量、粘液膿性のわずかな量、及び粘液膿性の大量として評価し、それぞれ0、1、2、3、及び4と得点をつけた。胃腸管外ワクチン接種グループの3頭のウマは、1日だけ粘液膿性鼻汁を示した。ワクチン接種グループの他の総鼻汁得点は、主に1又は2日に制限される水のような鼻汁のわずかな量だった。対照的に、非ワクチン接種対照ウマは、連続した複数日間粘液膿性鼻汁を示した。誘発後3〜9日及び11〜15日で、両ワクチン接種グループと対照との間で有意な相異の証拠(≦0.0479)があった。胃腸管外ワクチン接種グループと対照グループとの間では(p≦0.0398)誘発後4、5、6、8、9、及び11日で、胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種グループと対照グループとの間では(p≦0.0259)3〜8及び11日で、鼻汁得点分布に有意な相異の証拠があった。
【0094】
誘発後の結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態の臨床徴候の観察を表4に示す。結膜炎は、ワクチン接種で観察される主要な徴候であり、2〜3日間記録した。あるワクチン接種ウマは1日呼吸困難を示し、あるワクチン接種ウマは3日連続でせきを示した。せきについてすべての他の観察は1日だけだった。各胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種グループの1頭のウマ、それぞれ8%及び9%は1日だけ臨床疾患の2つの徴候を示した。うつ状態はどのワクチン接種でも観察されなかった。ワクチン接種したウマと対照的に、非ワクチン接種対照ウマは、誘発後3日以上連続してせきとうつ状態の重度な臨床徴候を示した。臨床徴候を0=非存在及び1=存在として解析すると、胃腸管外(p≦0.0313)及び胃腸管外/鼻腔内(p≦0.0391)ワクチン接種グループと非ワクチン接種対照グループとの間で、誘発後3日及び6〜13日間で結膜炎を示す動物の数に有意な相異の証拠があった。非ワクチン接種対照と比べて両胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種グループでは、誘発後6日でうつ状態を示す動物の減少に有意な相異の証拠(p≦0.0156)があった。呼吸困難については、ワクチン接種と対照グループで有意な相異の証拠はなかった。
【0095】
日ごとに示した臨床徴候の数を総計すると、誘発後6〜9日及び11日に胃腸管外(p≦0.0242)と胃腸管外/鼻腔内(p≦0.0259)ワクチン接種グループと非ワクチン接種対照ウマとの間で臨床徴候数の分布に有意な相異の証拠があった。表V-1に示されるように、結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態の臨床徴候得点は、それぞれ1、2、3、及び4と得点をつけた。複合臨床得点は、鼻汁と臨床徴候得点の合計で計算した。複合得点の計算には温度は含めなかった。誘発後日ごとの各ウマについて複合臨床得点を計算した。総複合臨床得点は、誘発後すべての日の臨床徴候の合計である。誘発後3〜9日及び11〜15日で胃腸管外と非ワクチン接種対照グループとの間で複合臨床得点の有意な相異(p≦0.0331)及び総複合得点の有意な相異(p≦0.0001)の証拠があった。誘発後3〜9日及び11〜15日で胃腸管外/鼻腔内と非ワクチン接種対照グループとの間で複合臨床得点の有意な相異(p≦0.0241)及び総複合得点の有意な相異(p≦0.0001)の証拠があった。
【0096】
病原性EHV-4による誘発後、ウマのウイルス発散を監視した。誘発後1〜7日と18日まで隔日にウマから鼻試料を収集した。非ワクチン接種対照ウマ以外のすべてのウマの鼻試料からEHV-4誘発ウイルスを回収した。10-2希釈の非ワクチン接種対照ウマの大多数からウイルスが検出された。ウイルス発散が検出された主要な日は3〜5日だった。誘発後6日で数頭の非ワクチン接種対照ウマからウイルスが検出されたが、低レベルだった。誘発後ワクチン接種ウマからは誘発ウイルスを回収しなかった。
【0097】
結論
不活性化EHV-1 KyAウイルスを含有するワクチンは胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内経路の両投与で、全身的な体液性免疫応答を生じさせた。EHV-1含有ワクチンによるウマのワクチン接種は、EHV-1及びEHV-4に対する高レベルのVN抗体を産生した。EHV-1及びEHV-4の両者に対する抗体力価は、ワクチン接種動物の鼻試料内で検出されたが、比較的低い力価だった。従って、不活性化EHV-1 KyA含有ワクチンは、EHV-1に対してウマを免疫化することができ、かつEHV-4に対してウマを交差−免疫化することができる。ワクチン接種後のウマでは、ワクチン接種又は反応部位注射に対して異常な応答は何も観察されなかった。
【0098】
病原性EHV-4で誘発された非ワクチン接種対照ウマでは、水のような及び粘液膿性鼻汁、結膜炎、せき及びうつ状態の持続性発症から成る重度の呼吸器疾患が観察された。対照的に、EHV-4呼吸器疾患の臨床徴候の数、臨床徴候の重症度及び臨床徴候を示すワクチン接種ウマの数は、ワクチン接種ウマで有意に減少した。胃腸管外又は胃腸管外/鼻腔内経路でワクチン接種したウマは、EHV-4感染による呼吸器疾患の臨床徴候に有意な減少を示した。臨床疾患の低減は、胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種ウマの両者がEHV-4誘発後ウイルスを発散しないことを照明するデータによって支持された。非ワクチン接種対照ウマから集めた鼻試料は、EHV-4誘発後複数の日で高レベルのウイルスを含んでいた。
【0099】
ワクチン内に含まれる不活性化EHV-1 KyA抗原は、胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内経路で投与した場合、EHV-4によって引き起こされる呼吸器疾患に対するウマの交差保護について免疫原性だった。要約すると、この研究の結果は、不活性化EHV-1 KyAウイルスを含有するワクチンは、EHV-1に対するVN抗体のみならずEHV-4に対する交差中和抗体をも産生することを実証した。不活性化EHV-1 KyA含有ワクチンは、胃腸管外又は胃腸管外/鼻腔内療法によって投与すると、病原性EHV-4によって引き起こされる呼吸器疾患からウマを交差保護することができる。
【実施例6】
【0100】
不活性化EHV-1によるウマのワクチン接種及びその後の病原性EHV-1による誘発
この実施例で述べる研究の目的は、病原性EHV-1によって引き起こされる病気に対するウマの交差保護について、筋肉内又は筋肉内/鼻腔内経路で投与したときのEHV-1フラクションの免疫原性を実証することだった。さらなる目的は、EHV-1の免疫原性に存するEIVフラクションの非干渉を実証することだった。
【0101】
本研究の目的は、病原性EHV-1によって誘発されるワクチン接種ウマの保護用の不活化ウイルス、鼻肺炎ワクチンのEHV-1フラクションの免疫原性を実証することだった。本研究で用いたワクチンは、不活性化EHV-1を有して調製し、Carbopol(登録商標)971で補佐した。2種のワクチン接種療法でウマにワクチン接種した。一方のワクチン接種療法は3回の筋肉内ワクチン接種であり、他方のワクチン接種療法は2回の筋肉内ワクチン接種と1回の鼻腔内ワクチン接種だった。2〜4週間間隔でウマにワクチン接種した。非ワクチン接種ウマは対照として働いた。最後のワクチン接種後6週間で、ワクチン接種ウマ及び非ワクチン接種対照ウマを病原性EHV-1で誘発した。EHV-1による誘発後非ワクチン接種対照ウマでは、粘液膿性鼻汁、せき、呼吸困難、及びうつ状態を含む重度な呼吸器疾患の臨床徴候が観察された。
【0102】
月齢3〜4カ月の異なる品種の健康なオス及びメスウマを数源から得た。ウマを端綱のタグ番号とマイクロチップ番号で特定した。研究開始時、すべてのウマは、EHVによって引き起こされる呼吸器疾患について既知の以前の発生はなく、良い健康状態だった。バッグからウマの識別番号を引き抜いてウマを無作為にグループ分けした。ウマは、ワクチン接種及び誘発期間中、仕切られていない囲い内で一緒に養い、自由選択の酪農品質のアルファルファ干し草、Sweet 14酪農サプリメント、ウマ用バイオミネラル、及び適宜水を与えた。
【0103】
バッグからウマの識別番号を引き抜いてウマを無作為にグループ分けした。ワクチン接種期間中、一般的な健康と何らかの異常挙動についてウマを観察した。研究開始時、すべてのウマは、良い健康状態だった。ワクチン接種後どのウマにも何の異常な挙動又は有害な健康状態も観察されず、ワクチン接種後どのウマにも有害な注射部位反応も観察されなかった。ワクチン接種期間中、どのウマにもEIVによって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候は観察されなかった。
【0104】
病原性EHV-1でウマを誘発する予定日の約3週間前に、ウマに腺疫の発生が起こった。腫れたリンパ腺から採取した試料をMontana State University診断研究所に提出し、試料からストレプトコッカス equiが単離された。ウマにペニシリンを投与し、生の弱毒化 S.equiワクチン、Pinnacleをワクチン接種した。病原性EHV-1による誘発前3週間でウマを腺疫から快復させた。ウマについては、非ワクチン接種対照ウマにつてをEHV-1による誘発の日に研究から除いた。わずかなうつ状態と呼吸困難が観察され、調査時に吸気性きーきー音が聞こえた。筋肉内ワクチン接種グループの別のウマは、EHV-1誘発前5週間、2000年9月21日に死んだ。死亡原因は肺炎だった。筋肉内ワクチン接種グループの第3のウマは、誘発後1日、2000年10月28日に死んだ。死亡原因は、破裂腸間膜膿瘍及び引き続く毒素血症だった。膿瘍からS.equiが単離された。EHV-1によるすべてのウマ誘発は健康的であり、かつS.equi感染の証拠を示さなかった。研究から除いたウマの全データは本報告に含めなかった。
【0105】
ワクチン用のEHV-1流体は、実施例1及び2記載の手順に従って生産した。すべてのウイルス流体はマスター種ウイルスから15継代であり、マスター細胞原料から20番目の継代の細胞上で生産した。ワクチンは、2ml用量につき、EHV-1及びEIV Newmarket/77,A1亜群、EIV Kentucky/95,A2亜群及びNewmarket/2/93,A2亜群を含むように調製した。ワクチンをEHV-1 Imm Vac,Lot# 001,6129-0510-00E-045,03-Aug-00と標識した。
【0106】
研究の設計
2種のワクチン接種療法でウマにワクチンを投与した。一方のワクチン接種療法は、2〜4週間間隔の3回の筋肉内ワクチン接種だった。他方の療法は、2〜4週間離した2回の筋肉内接種と2〜4週間後の鼻腔内経路による3回目のワクチン接種だった。各ワクチン接種療法グループは、19〜20頭のウマを含んでいた。20頭のウマのグループは非ワクチン接種対照として働いた。最後のワクチン接種6週間後に、病原性EHV-1でウマを誘発した。EHV-1によって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候についてウマを監視し、疾患の重大度を記録した。ワクチン接種前とワクチン接種後の選択時に、血清学的評価用の血液と鼻試料及びウイルスの単離用鼻スワブを採取した。血液、鼻試料、及び鼻スワブの収集は、動物研究プロトコルに記載されている。
【0107】
EHV-1及びEHV-4に対する血清VN抗体力価
ワクチン接種前後及び病原性EHV-1による誘発後のウマの血清VN抗体力価を決定した。最初のワクチン接種時、筋肉内及び筋肉内/鼻腔内ワクチン接種の両グループのすべてのウマが、2以下又は4のEHV-1に対するVN抗体力価を持っていた。筋肉内ワクチン接種グループの1頭及び鼻腔内ワクチン接種グループの5頭のウマは、最初のワクチン接種時に8又は16のEHV-4に対するVN抗体力価を持っていた。最初のワクチン接種時、非ワクチン接種対照ウマのVN抗体力価は2〜16以下であり、大多数が2又は4以下だった。何らかの呼吸器感染の証拠を示したウマはなく、EHVに以前にさらされたかは分からなかった。1回のワクチン接種後、EHV-1及びEHV-4に対するVN力価の増加は、ほとんど又は全くなかった。非ワクチン接種対照ウマの抗体力価は変化しないままであり、実際には、数頭の対照ウマの抗体力価は、ワクチン接種前の力価よりわずかに減少した。第2ワクチン接種後、筋肉内及び筋肉内/鼻腔内ワクチン接種グループではEHV-1に対するVN抗体力価が増加した。EHV-4に対する抗体力価はどちらのワクチン接種グループでも増加しなかった。非ワクチン接種対照の抗体力価は変わらないままであり、又は非ワクチン接種対照グループでは下落し続けた。3回目のワクチン接種後、EHV-1に対するVN力価は増加し続けた。3回目のワクチン接種後EHV-4に対する抗体力価も増えた。筋肉内ワクチン接種グループのEHV-1及びEHV-4に対するVN抗体力価の幾何平均は、それぞれ86及び19であり、筋肉内/鼻腔内ワクチン接種グループではEHV-1及びEHV-4について、それぞれ69及び20だった。3頭の非ワクチン接種対照ウマを除き、3回目のワクチン接種期間の最後までにEHV-1及びEHV-4に対する抗体力価は変化せず、又は低下した。病原性EHV-1による誘発後21日に、両EHV-1及びEHV-4に対するVN抗体力価は、数頭のワクチン接種ウマで劇的に増加し、他のワクチン接種ウマでは少しだけ増加し、又は同じままだった。しかし、非ワクチン接種対照ウマでは、4頭の非ワクチン接種対照ウマを除くすべてで、EHV-1及びEHV-4の両方に対して100倍を超えてVN抗体力価が増加した。一般に、VN抗体力価は、EHV-4に対するよりEHV-1に対して大きかった。
【0108】
EHV-1誘発ウイルスの滴定
EHV-1誘発ウイルス、株KyDの5回繰返しの滴定をVero細胞上で行った。5回繰返しの滴定の結果は、4.4、4.4、4.4、4.4、及び4.5TCID50Log10/mlだった。平均力価は、4.4TCID50Log10/mlだった。誘発のため各ウマに2ml投与し、4.7TCID50Log10/2ml用量を与えた。誘発のためにウマに投与すべきウイルスの標的用量は4.0TCID50Log10/2ml用量以上だった。
【0109】
病原性EHV-1によるウマの誘発
EHV-1 KyD株は、American Type Culture Collectionから得、Vero細胞上で増殖させた。誘発に用いられるEHV-1の原料は4.0TCID50Log10/ml以上の標的濃度を含有すべきだった。原料を-70℃で凍結させた。誘発ウイルスの試料を解凍し、力価を決定した。誘発時にウイルス流体を解凍して2mlのEHV-1を3mlの注射器と21ゲージの針で取出した。針を除き、適宜のグループのワクチン接種及び非ワクチン接種ウマに鼻腔内投与した。ワクチン接種ウマ及び非ワクチン接種対照ウマは、誘発期間後21間、仕切りのない囲い内に一緒に収容した。
【0110】
誘発後、発熱と、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、うつ状態、及び二次細菌感染に必要な抗生物質治療のような他の症状を含むEHV-1によって引き起こされる呼吸器疾患の臨床徴候についてウマを監視した。臨床疾患について毎日ウマを観察し、疾患の重度を記録した。
【0111】
EHV-1誘発後、ウマの発熱を監視した。発熱は散発的であり、誘発の持続期間に渡って分散していた。2日及び3日間連続して高温だったウマが、非ワクチン接種対照グループのみならず両ワクチン接種グループ内にもいたが、発熱と呼吸器疾患の臨床徴候との関係はないようだった。各ワクチン接種グループと非ワクチン接種対照グループの間には発熱得点の分布に有意な相異の証拠はなかった。
【0112】
ウマの鼻汁の観察を行った。鼻汁は、動物プロトコルに従い、正常、水のようなわずかな量、水のような大量、粘液膿性のわずかな量、及び粘液膿性の大量として評価し、それぞれ0、1、2、3、及び4と得点をつけた。筋肉内ワクチン接種グループのすべてのウマでは水のような鼻汁が観察され、わずかな量と大量の水のような鼻汁を示すウマの数はほぼ同数だった。ウマ405及び423は、2日連続して粘液膿性鼻汁を示し、ウマ420及び469は、1日粘液膿性鼻汁を示した。非ワクチン接種対照ウマは、主に複数日連続して粘液膿性鼻汁を示した。動物プロトコルの得点システムによって鼻汁得点を解析すると、誘発後5〜7日及び10日で、筋肉内グループと非ワクチン接種対照グループとの間で鼻汁得点の分布に有意な相異の証拠がある(p≦0.0018)。同様の結果が水のような鼻汁について筋肉内/鼻腔内グループで誘発後観察され、1日又は2日間2頭のワクチン接種ウマで粘液膿性鼻汁が記録された。誘発後4〜7日、10及び19日で、筋肉内/鼻腔内グループと非ワクチン接種対照グループとの間に鼻汁得点の分布に有意な相異の証拠がある(p≦0.00463)。
【0113】
正常=0、水のような=1及び粘液膿性=2のシステムに従って鼻汁得点を解析すると、誘発後5〜7、10及び17日に筋肉内グループと非ワクチン接種対照グループの間で有意な相異の証拠があった(p≦0.0463)。誘発後4〜7及び10日に筋肉内/鼻腔内グループと非ワクチン接種対照グループの間にも鼻汁得点の分布に有意な相異の証拠があった(p≦0.0092)。
【0114】
結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態の臨床徴候についての誘発後観察も行った。ウマのほとんどの重症な病気の徴候が観察された日は、誘発後3〜11日だった。誘発後3〜11日に最も頻繁に病気の臨床徴候が現れた。ワクチン接種ウマと対照ウマで観察される第2期の臨床徴候もあるようだった。しかし、これは、ワクチン接種ウマでは1日だけ、対照ウマでは複数日間観察された。せき及び結膜炎は、筋肉内療法グループのワクチン接種で観察された主要な臨床疾患だった。結膜炎とせきは、ワクチン接種ウマでは長くて3日間連続して観察された。誘発後6又は7日に、非ワクチン接種対照に比し、筋肉内グループで結膜炎を示す動物の割合の有意な減少の証拠があり(p≦0.0197)、誘発後4〜8日に、非ワクチン接種対照に比し、筋肉内グループでせきを示す動物の割合の有意な減少の証拠がある(p≦0.0463)。結膜炎及びせきは、筋肉内/鼻腔内ワクチン接種グループで観察される病気の最も一般的な臨床徴候だった。誘発後6又は7日に、非ワクチン接種対照に比し、筋肉内グループで結膜炎を示す動物の割合の有意な減少の証拠があり(p≦0.0197)、誘発後5又は6日に、非ワクチン接種対照に比し、筋肉内グループでせきを示す動物の割合の有意な減少の証拠がある(p≦0.0044)。誘発後どの筋肉内ワクチン接種ウマでもうつ状態は観察されず、誘発後2頭の筋肉内/鼻腔内ワクチン接種ウマがだけで観察された。非ワクチン接種対照ウマでは、複数日間うつ状態が観察された。ワクチン接種とは対照的に、非ワクチン接種対照ウマは、一般的に4日間連続及び7又は8日間もの長期にわたって持続する疾患の複数の徴候を示した。同様の2頭の非ワクチン接種対照ウマは、二次細菌感染のため抗生物質治療を必要とした。動物プロトコルによって計算される臨床徴候得点は、筋肉内ワクチン接種対対照、及び筋肉内/鼻腔内ワクチン接種対対照について、それぞれ表7及び8に示される。
【0115】
日ごとに臨床徴候数を数え、0、1、2、又は3と記録した。日ごとに示される臨床徴候の数を総計すると、4〜8日間で、筋肉内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の臨床徴候数の分布に有意な相異の証拠がある(p≦0.0206)。5〜7日間で、筋肉内/鼻腔内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の臨床徴候数の分布に有意な相異の証拠がある(p≦0.0159)。
【0116】
鼻汁得点と臨床徴候得点の合計で複合臨床得点を計算した。クルスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)試験、2グループウィコキシン(Wicoxin's)試験の複数グループ拡張試験を用いてグループ間の得点が等しいという仮説を試験した。ウィコキシン試験を用い、各ワクチン接種グループの対照グループと比較した得点の減少という仮説を調べ(1観点試験)、ワクチン接種グループ間の得点が等しいという仮説を調べた(2観点試験)。誘発後4〜7日及び11日で、筋肉内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の複合臨床得点(p≦0.0372)及び総複合臨床得点について(p≦0.0001)有意な減少の証拠がある。誘発後4〜7日及び11日で、筋肉内/鼻腔内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の複合臨床得点(p≦0.0408)及び総複合臨床得点について(p≦0.0002)有意な減少の証拠がある。
【0117】
修正複合臨床得点、すなわち発熱を除いた臨床観察得点と鼻汁得点の合計も計算した。誘発後3〜8日と、10、11及び19日で、筋肉内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の修正複合臨床得点(p≦0.0383)及び総複合臨床得点(p≦0.0001)の有意な減少の証拠があった。誘発後3〜7日と、10、11及び19日で、筋肉内/鼻腔内グループと非ワクチン接種対照グループとの間の複合臨床得点(p≦0.0487)及び総複合臨床得点(p≦0.0001)の有意な減少の証拠もあった。
【0118】
誘発後のウマからのウイルス発散
EHV-1による誘発後発散されたすべての非ワクチン接種対照ウマ由来の鼻試料からEHV-1誘発ウイルスを回収し、-70℃で保存した。凍結試料を解凍し、輸送媒体からスワブを取り除いた。試料を2500xgで20分間19〜22℃で遠心分離処理した。Vero細胞の24〜48時間単層を含有する48-ウェル組織培養プレートに処理試料の一定分量0.1mlを添加した。培養プレートをCO2インキュベーター内37℃で7日間インキュベートした。EHVに典型的な細胞変性効果(CPE)の存在の定型的な基礎に基づいてウェルを観察した。細胞毒性を示したウェルは、インキュベーション期間7日後に、該ウェルから2mlをVero細胞の24〜48時間単層を含有する48-ウェル組織培養プレートに移して継代培養した。培養プレートをCO2インキュベーター内37℃で7日間インキュベートし、CPEについて観察した。CPEについてポジティブな処理鼻試料中のEHVの力価は、96-ウェル組織培養プレート内の細胞について標準的な滴定法で決定した。
【0119】
EHV-1による誘発後ウイルスを発散したすべての非ワクチン接種対照ウマ由来の鼻試料からEHV-1誘発ウイルスを回収した。EHV-1特異性モノクロナール抗体を用いた免疫蛍光アッセイにより、鼻スワブ中で検出されたウイルスをEHV-1と同定した。ウイルスは、10-2〜10-3希釈の非ワクチン接種対照ウマから検出された。ウイルス発散が検出された主な日は、2〜5日だった。筋肉内ワクチン接種グループの5頭のウマと、筋肉内/鼻腔内ワクチン接種グループの3頭のウマから誘発ウイルスを回収した。2〜5日で、非ワクチン接種対照グループに比し、筋肉内グループでウイルスの存在を示す動物の割合に有意な減少の証拠があり(p≦0.0001)、2〜5日で、非ワクチン接種対照グループに比し、筋肉内/鼻腔内グループでウイルスの存在を示す動物の割合に有意な減少の証拠がある(p≦0.0003)。
【0120】
満足な研究の基準
満足なEHV免疫原性研究のためには、以下の基準が満たされなければならない。
非ワクチン接種対照ウマは、ワクチン接種期間中EHV-1及びEHV-4に対して血清陰性のままであり、及び/又は病原性分野のウイルスに対する試験ウマの暴露の指標として病気の何らかの臨床徴候を示さなければならない。
病原性EHV-1による誘発後、非ワクチン接種対照動物の病気の臨床徴候に比し、ワクチン接種動物の病気の臨床徴候に統計的に有意な減少がなければならない。
【0121】
結論
この研究では、月齢3〜4カ月のオス及びメスの子ウマのグループに、筋肉内又は筋肉内/鼻腔内経路によって投与される3用量のワクチンでワクチン接種した。3用量のワクチンの投与後、すべてのワクチン接種動物がVN抗体を発生した。全身的な体液性応答の発生は、筋肉内及び筋肉内/鼻腔内ワクチン接種療法によってワクチン接種した動物で同様だった。EHV-1含有ワクチンによるウマのワクチン接種は、EHV-1及びEHV-4に対する高レベルのVN抗体を産生した。従って、EHV-1含有ワクチンはEHV-1に対してウマを免疫化することができ、EHV-4に対してウマを交差免疫化することができる。ワクチン接種後のウマに、ワクチン接種又は反応部位注射に対する何の異常な応答も観察されなかった。
【0122】
EHV-1含有ワクチンの、EHV-1によって引き起こされる呼吸器疾患からウマを保護するための能力を評価するため、EHV-1の病原性株であるKyD株による誘発後、ワクチン接種ウマの呼吸器疾患の臨床徴候を非ワクチン接種対照ウマの臨床徴候と比較した。EHV-1含有ワクチンによる3回目のワクチン接種後約6週間で、ワクチン接種及び非ワクチン接種対照ウマに病原性EHV-1で鼻腔内誘発した。病原性EHV-1で誘発された非ワクチン接種対照ウマでは、水のような鼻汁及び粘液膿性鼻汁、結膜炎、せき、うつ状態、及び呼吸困難の持続性発症からなる重度な呼吸器疾患が観察された。対照動物とは対照的に、ワクチン接種ウマでは、EHV-1呼吸器疾患の臨床徴候の数、臨床徴候の重大度及び臨床徴候を示すワクチン接種ウマの数が有意に減少した。ワクチン接種の筋肉内及び筋肉内/鼻腔内の両経路は、EHV-1感染による呼吸器疾患の臨床徴候の減少では同様だった。ワクチン接種ウマの臨床徴候の減少は、EHV-1誘発後にウイルスを発散する筋肉内及び筋肉内/鼻腔内ワクチン接種ウマがより少なく、より短期間ウイルスを発散するというデータによって支持される。
【0123】
本研究の結果は、不活性化EHV-1を含有するワクチンは、筋肉内又は筋肉内/鼻腔内経路のどちらで投与しても、EHV-1によって引き起こされる呼吸器疾患からウマを保護するために免疫原性であるVN抗体を産生した。
【実施例7】
【0124】
不活性化EHV-1及びEHV-4株を含有する免疫原性組成物の生産
混合ワクチンを生産するため、EHV-1及びEHV-4のマスター種培養を生産した。これらマスター種からEHV-1とEHV-4別個の培養を成長させてから不活性化した。不活性化ウイルス培養をアジュバントと混ぜ合わせて混合ワクチンを生産した。混合不活性化EHV-1/EHV-4ワクチンの生産に用いた方法は後述する。
【0125】
EHV-1 KyA,MSV Lot 001-dilと呼ばれる、マスター種ウイルス培養流体由来の不活性化EHV-1 KyAを含有する流体は、実施例1記載の手順に従って生産した。
【0126】
ウマヘルペスウイルス4型(EHV-4)のマスター種ウイルスを造るため、Boehringer Ingelheim Vetmedica,Inc.の職員が、鼻炎に感染されたウマからウイルスを単離した。単離ウイルスをVero A139細胞上で5回、EVero細胞上で3回継代した。第3継代をマスター種ウイルスとして用い、EHV-4,MSV Lot 001-dilと命名した。
【0127】
0〜5%の血清を有する最少必須培地(MEM)内に含まれる種ウイルスでEVero細胞を感染させることによってEHV-4の培養を生産した。培養をガラスローラービン内又はマイクロキャリヤービーズ上で24〜120時間36℃±2℃でインキュベートした。インキュベーションの間、培養をEHV誘導細胞変性効果(CPE)についてチックしてEHV株の純度を保証した。非定型的なCPEが存在するか又は何らかの巨視的若しくは微視的なコンタミネーションの証拠が存在する場合、その培養は捨てた。純粋なウイルス培養を無菌的に無菌ガラスカーボイ、無菌プラスチックカーボイ、又は無菌ステンレススチールタンク中に収集し、8ミクロン以上のフィルターでろ過して浄化した。収集後、ウイルス培養をインキュベートし、実施例1でEHV-1について記載した手順で不活化ワクチンを生産した。
【0128】
不活性化後、実施例5記載の手順によってEHVに典型的なCPEについて調べ、ウイルスの不活性化を確実にした。この作業は、EVero細胞上BEI処理ウイルス流体を通過させ、EVero細胞を何らかのウイルス感染についてチェックすることで達成した。何のウイルス感染も示さない満足な不活性化試験後、1.0Mのチオ硫酸ナトリウムの冷却(4℃±2℃)溶液を添加してBEIを中和し、6mMの最終濃度を得た。
【0129】
EHV-1及びEHV-4培養の不活性化及び試験後、培養をアジュバントとブレンドして最終製品、すなわち混合不活性化EHV-1/EHV-4ワクチンを製造した。この最終製品は、EHV-1流体、EHV-4流体、アジュバント原液(0.5%Carbopol(登録商標)971)、及び生理食塩水を3.75:3.00:12.00:41.19の割合で含む。典型的に、1バッチは3,750mLのEHV-1、3,000mLのEHV-4、12,000mLのアジュバント溶液、及び41,190mLの生理食塩水を含み、全量60Lのバルク系列を得る。
【実施例8】
【0130】
混合EHV-1及びEHV-4ワクチンによるウマの接種と、その後の病原性EHV-4による誘発
混合不活性化EHV-1/EHV-4ワクチンの免疫原性を実証するための実験を行った。本実験では、月齢が4〜7カ月の範囲で、かつEHV-1及びEHV-4に対してウイルス中性である6グループのオスウマとメスウマを用いた。下表VIII-1に示されるように、3グループを病原性EHV-1で誘発し、3グループを病原性EHV-4で誘発した。EHV-1で誘発されたウマのうち、1グループは3回の筋肉内(“IM”)注射でワクチン接種し、1グループは2回の筋肉内注射後1回の鼻腔内(“IN”)投与でワクチン接種し、1グループはワクチン接種しなかった。同様に、EHV-4で誘発されたウマのうち、1グループは全部筋肉内注射でワクチン接種し、1グループは2回の筋肉内注射後1回の鼻腔内投与でワクチン接種し、1グループはワクチン接種しなかった。
【0131】
3週間間隔で、不活性化EHV-1の用量につき1.0及び不活性化EHV-4の用量につき1.0のRPVを有する混合ワクチンの2ml用量をウマにワクチン接種した。実験中、呼吸器疾患の徴候についてウマを監視した。ワクチン接種期間中、どのウマにも呼吸器疾患の臨床徴候は観察されなかった。






表VIII-1
混合EHV-1/EHV-4ワクチン試験の概要
グループ 動物番号 ワクチン接種方法 誘発
グループIV-1 10 IM,IM,IM EHV-1
グループIV-2 10 IM,IM,IN EHV-1
グループIV-3 10 なし(対照グループ) EHV-1
グループIV-4 10 IM,IM,IM EHV-4
グループIV-5 10 IM,IM,IN EHV-4
グループIV-6 10 なし(対照グループ) EHV-4
【0132】
ワクチン接種後3週間で、5.0TCID50Log10/2mlの標的用量の病原性EHV-1又は病原性EHV-4で動物を誘発した。具体的には、EHV-1 Kentucky D株(約4.5TCID50Log10/2mlの用量)及びEHV-4 405株(約4.0TCID50Log10/2mlの用量)を誘発ウイルスとして使用し、2ml用量で鼻腔内投与した(鼻孔ごとに1mlとして投与)。ワクチンの保護は、発熱、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態のような呼吸器疾患の臨床徴候についてウマを監視し、かつ疾患の重大度を測定することで測った。さらに、血液及び鼻試料を採取してウイルス発散量を測定した。
【0133】
ウイルス誘発後、EHV-1又はEHV-4で誘発された全グループのワクチン接種ウマは、呼吸器疾患の徴候の有意な減少を示し、胃腸管外ワクチン接種グループと胃腸管外/鼻腔内ワクチン接種グループとの間にはほとんど差が示されなかった。具体的には、ワクチン接種動物は、鼻汁、結膜炎、せき、呼吸困難、及びうつ状態の有意な減少を経験した。これらの結果は、混合不活性化EHV-1/EHV-4ワクチン中に含まれるEHV-1及びEHV-4抗原は、胃腸管外又は胃腸管外/鼻腔内経路のどちらで投与されても、免疫原性であることを示している。
【0134】
ワクチン接種ウマが呼吸器疾患の低減を示すのに加え、ワクチン接種ウマは、ウイルス発散の減少をも示した。EHV-1で誘発されたワクチン接種ウマのうち、1〜3日間で1〜2.5log10TCID50/mlのウイルス発散は、胃腸管外ワクチン接種グループの30%及び胃腸管外/鼻腔内グループの40%しか観察されなかった。対照的に、非ワクチン接種対照グループの90%は、2〜7日間で2.5〜3.755log10TCID50/mlのウイルスを発散した。同様に、EHV-4で誘発されたワクチン接種ウマのうち、1〜3日間で1〜2.5log10TCID50/mlのウイルス発散は、胃腸管外ワクチン接種グループの40%及び胃腸管外/鼻腔内グループの50%しか観察されなかった。この場合もやはり、非ワクチン接種対照グループの100%が2〜7日間で1〜5.25log10TCID50/mlのウイルスを発散した。これらの統計は、ワクチン接種ウマがウイルスを発散する量と日数が、非ワクチン接種ウマに比べて有意に減少している証拠である。このような証拠は、混合不活性化EHV-1/EHV-4ワクチンに含まれるEHV-1及びEHV-4抗原は、胃腸管外又は胃腸管外/鼻腔内経路のどちらで投与されても、免疫原性であることを証明している。
【実施例9】
【0135】
混合EHV-1/EHV-4/ウマインフルエンザワクチンによるウマのワクチン接種及びその後の病原性ウマインフルエンザウイルスによる誘発
EIV A1及びA2に対する血清学的応答の評価によって、EIVワクチンフラクションの免疫原性を評価するための実験を行った。本研究は、混合鼻肺炎−インフルエンザワクチン、すなわち宿主動物内で血清学的な評価によって不活化されているウイルス中のEIV成分とEHV成分の不干渉を実証するためにも設計された。第3の目的は、インフルエンザワクチン及び鼻肺炎−インフルエンザ混合ワクチン中のEIV A1亜群とEIV A2亜群は、胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内経路で投与されたとき免疫原性であることを実証することだった。
【0136】
研究の設計
2種のワクチン接種療法でワクチンAをウマに投与した。一方のワクチン接種療法は、3週間間隔の3回の筋肉内ワクチン接種だった。他方の療法は、2週間離した2回の筋肉内ワクチン接種と3週間後の鼻腔内経路によるワクチン接種だった。各ワクチン接種療法グループは20頭のウマを含んでいた。5頭のウマのグループは非ワクチン接種対照として働いた。ワクチン接種前とワクチン接種後の選択時に、3種のEIVワクチン株のそれぞれに対する血清学的応答の評価のため、血液試料と鼻洗浄物を採取した。定期的な間隔でウマから血液及び鼻洗浄物を収集した。63日の実験期間中一般的な健康及び何らかの異常な挙動又は健康状態についてウマを観察した。
【0137】
ウマ
月齢が7〜9カ月の範囲の健康なオスとメスのウマを選択源から得た。ウマをマイクロチップ番号で特定し、サックからウマの識別番号を引き抜いてウマを無作為にグループ分けした。実験期間中、ウマは仕切られていない囲い内で養い、自由選択の酪農品質のアルファルファ干し草、Sweet 14酪農サプリメント、ウマ用バイオミネラル、及び適宜水を与えた。実験期間中、一般的な健康と何らかの異常挙動についてウマを観察した。ワクチン接種後どのウマにも何の異常な挙動又は有害な健康状態も観察されず、ワクチン接種後どのウマにも有害な注射部位反応も観察されなかった。最初のワクチン接種時、ワクチンAでワクチン接種したウマは、EIV A1及びA2亜群に対して10以下の赤血球凝集阻止(HAI)抗体力価を持っていた。
【0138】
ワクチン
本ワクチンは、EIV亜群A1と抗原性的に関係あるEIV A2亜群株を含むEIV不活化ウイルスを含んでいた。なぜなら、北米のA2亜群は、欧州由来のA2亜群と異なるので、本ワクチンは、それぞれ北米のA2亜群及び欧州のA2亜群の代表であるKentucky/95及びNewmarket/2/93と呼ばれる株を含んでいた。本ワクチンで使用するEIV及びEHVウイルス流体は、実施例7記載の手順に従って生産した。ウイルス流体はマスター種ウイルスから15継代であり、マスター細胞原料から20回目継代の細胞上で生産した。ワクチンAは、2ml用量あたり、64HA単位のEIV A1亜群、128HA単位の2種の各EIV A2亜群、及び3.0以上の相対効力(RP)単位のEHV-1及び3.0以上の相対効力(RP)単位のEHV-4を含むように調製した。ワクチンをEIV/EHV Imm/Intfr,623-0856-98E-107,Vaccine A Lot 001,12-15-98と標識した。
【0139】
ワクチンAのEIV及びEHVフラクションの効力決定
本ワクチンのEIVフラクションの効力は、国立獣医業務研究所試験プロトコル、ウマインフルエンザ抗体の赤血球凝集阻止検定を行うための補足検定法(National Veterinary Services Laboratories Testing Protocol,Supplemental Assay Method for Conducting the Hemaggulation Inhibition Assay for Equine Influenza Antibody(MVSAM0124.01,1998年10月2日付け))によって決定した。ワクチンAのEHV-1及びEHV-4の相対効力は、実施例4記載のEHV ELISA効力放出検定によって決定した。ワクチンAの効力は、EIVフラクションでは満足だった。10匹のモルモットのうち10匹はA1亜群について80以上のHAI抗体力価を有し、10匹のモルモットのうち10匹がワクチン中の各A2亜群について80以上のHAI抗体力価を有していた。相対効力値は4.73であり、EHV-1及びEHV-4フラクションについてそれぞれ4.73及び3.31だった。
【0140】
ワクチン接種後のEIV亜群A1及びA2の血清HAI抗体力価
ワクチンAによるワクチン接種後のウマのHAI抗体力価を決定した。すべてのワクチン接種ウマは、最初のワクチン接種時に全3種のEIV株に対して血清陰性だった。ワクチン接種前の期間、2頭の非ワクチン接種対照ウマはEIV A1に対して20のHAI抗体力価を持っており、他の3頭の対照ウマはEIV A1に対して血清陰性だった。すべての5頭の非ワクチン接種対照ウマは、2種のEIV A2対して血清陰性だった。実験期間中、非ワクチン接種対照ウマは、2種のEIV亜群A2に対して血清陰性のままであり、EIV亜群A1に対するHAI抗体力価の2倍より多くの変化は示さなかった。実験期間中、場EIVにさらしたという徴候はなかった。最初のワクチン接種後3週間で、大多数のウマがEIV A1亜群及びEIV A2 NM亜群に対する血清応答を示した。1回のワクチン接種後、4頭のウマだけがEIV A2 K亜群に血清応答を持っていた。EIV A2 K亜群に対して血清応答するウマの数は、2回目のワクチン接種後に増えた。3回目のワクチン接種後、3回の筋肉内ワクチン接種を受けた20頭のうち19頭(95%)のウマは、EIV A1亜群に対して40以上のHAI抗体力価を持っていた。3回の筋肉内注射後、20頭のうち18頭(90%)及び20頭のうち20頭(100%)のウマは、それぞれEIV A2 K及びEIV A2 NM亜群に対して20以上のHAI抗体力価を持っていた。同様に、2回の筋肉内注射と1回の鼻腔内ワクチン接種を受けた20頭のうち17頭(85%)のウマは、EIV A1亜群に対して40以上のHAI抗体力価を持っていた。2回の筋肉内注射と1回の鼻腔内ワクチン接種後、20頭のうち18頭(90%)及び20頭のうち20頭(100%)のウマは、それぞれEIV A2 K及びEIV A2 NM亜群に対して20以上のHAI抗体力価を持っていた。3回の筋肉内注射を受けたウマでは、3回目のワクチン接種後の幾何平均抗体力価は、EIV A1、A2 K、及びA2 NM亜群についてそれぞれ45、35及び61だった。2回の筋肉内ワクチン接種と1回の鼻腔内ワクチン接種を受けたウマの幾何平均抗体力価は、EIV A1、A2 K、及びA2 NM亜群についてそれぞれ39、24及び51だった。
【0141】
ワクチン接種後のEIV亜群A1及びA2に対する粘膜HAI抗体力価
ワクチンAによるワクチン接種後の鼻試料のHAI抗体力価を決定した。1回目のワクチン接種時、ウマからのいずれの鼻試料からも2種のEIV A2亜群に対するAHI抗体は検出されなかった。EIV亜群A1に対する赤血球凝集阻止力価は、1回目のワクチン接種時にワクチン接種及び非ワクチン接種対照ウマの数頭で検出された。1回目及び2回目のワクチン接種後、鼻分泌物中のAHI抗体のレベルは可変だった。最後の筋肉内又は鼻腔内ワクチン接種後、HAI抗体レベルは2種のA2亜群に比し、EIV A1亜群に対して最も高かった。筋肉内又は鼻腔内経路による3回目のワクチン接種後のウマから採取した鼻試料中には、EIV A2 K亜群に対するHAI抗体はほとんどなかった。興味深いことに、EIV A1及びA2 NM亜群に対するHAI抗体レベルは、鼻腔内経路による3回のワクチン接種を受けたウマでは低かった。
【0142】
考察
この研究の1つの目的は、どちらのワクチン接種療法で投与した場合もワクチン中のEIV A1及びA2フラクションの免疫原性を実証することだった。最後のワクチン接種後、3種のEIV株に対する血清HAI抗体応答の決定によって免疫原性を評価した。結果は、両ワクチン接種療法グループ内のウマの80%より多くが、最後のワクチン接種後EIV A1亜群に対して40以上の血清HAI抗体力価を有し、両ワクチン接種療法グループ内のウマの80%より多くが、最後のワクチン接種後両EIV A2亜群に対して20以上の血清HAI抗体力価を有することを示した。ワクチン接種後の選択時に、鼻試料中のEIV A1及びA2亜群に対するHAI抗体レベルも決定した。粘膜HAI抗体力価は、両ワクチン接種療法のウマから採取した鼻試料中の血清HAI抗体力価より低く、血清HAI力価と対照的に、粘膜HAI力価は、各ワクチン接種後にほとんど増加しなかった。赤血球凝集阻止検定は、鼻試料中で最も優勢な抗体のイソタイプを検出しない可能性がある。実験は、インフルエンザワクチン、不活化ウイルス及び鼻肺炎−インフルエンザワクチン、すなわち不活化ウイルス中のEIV A1亜群及びA2亜群は、胃腸管外及び胃腸管外/鼻腔内経路の両方で投与された場合、免疫原性であることを示している。特に、本研究は、EIV NM/77 A1亜群とK95 A2亜群及びNM/2/93 A2亜群が免疫原性であることを実証した。
【0143】
本研究の別の目的は、EIVとEHVワクチンフラクションは相互に不干渉であることを実証することだった。本研究で用いたワクチンAは、最少放出用量がそれぞれ64及び128HA単位であるEIV A1及びA2フラクションを有して調製され、かつEHV-1及びEHV-4フラクションについて3倍以上の相対効力値を有して調製された。本研究の結果は、最少抗原用量のEIVフラクションと最少EHV抗原用量より多く含むワクチンは、宿主動物内でEIV A1及びA2亜群に対する満足な血清応答を生じさせ得ることを実証した。このように、EHV-1及びEHV-4フラクションは、EIVワクチンフラクションの免疫原性と干渉しなかった。同様に、EHVフラクションは、モルモットモデルでの不満足な効力試験をもたらさなかった。
【0144】
本発明を種々の特異的かつ例示的実施形態及び技法に関して述べてきた。しかし、本発明の精神及び範囲内でありながら、多くの変形及び変更を為し得ることを理解すべきである。本明細書では種々の実施形態がある程度詳細に議論されているが、本発明は、種々多様な特定の文脈で具体化できる発明概念を提供すること理解すべきである。本明細書で議論されている特定の実施形態は、本免疫原性組成物の製造及び使用の特定方法の単に例示であり、本発明の範囲を限定することを意味しない。本明細書の開示を参照すれば、本技術の当業者には、例示的実施形態の種々の変更及び組合せのみならず、本発明の他の実施形態が明白だろう。
【0145】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーを含むアジュバント
を含んでなるワクチン。
【請求項2】
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための請求項1記載のワクチンの使用。
【請求項3】
さらに、不活性化ウマインフルエンザウイルスを含んでなる、請求項1のワクチン。
【請求項4】
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための請求項3のワクチンの使用。
【請求項5】
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
エチレンイミン、エチレンイミンの誘導体又はそれらの混合物を含む化学的不活性化剤による処理によって不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマーを含む生体接着性アジュバント
を含んでなるワクチン。
【請求項6】
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための請求項5のワクチンの使用。
【請求項7】
EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
不活性化EHV-1;及び
pH7.5の1.0wt.%水溶液として、20rpmで、高くて約20,000cPsの粘度を有する架橋アクリル酸ポリマーを含むアジュバント
を含んでなるワクチン。
【請求項8】
ウマヘルペスウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための請求項7のワクチンの使用。
【請求項9】
ウマヘルペスウイルスワクチンの製造方法であって、以下の工程:
(a)EHV-1 KyAウイルスをサル細胞に接種する工程;
(b)この接種したサル細胞をインキュベートする工程;
(c)このインキュベートした細胞からEHV-1 KyAウイルスを収集する工程;及び
(d)この収集した細胞を、エチレンイミン、エチレンイミンの誘導体又はそれらの混合物を含む化学的不活性化剤で処理して不活性化EHV-1 KyAウイルスを生成する工程
を含んでなる方法。
【請求項10】
(1)ウマにワクチンを投与可能なディスペンサーと、(2)EHV-1、EHV-4又はその組合せと関係ある病気から保護するための組成物であって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;及び
架橋オレフィン性不飽和カルボン酸ポリマー
を含む組成物とを組み合わせて含んでなるキット。
【請求項11】
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスと関係ある病気からウマを保護するためのワクチンであって、以下の成分:
化学的に不活性化されたEHV-1 KyAウイルス;
不活性化EHV-4ウイルス;
不活性化EIVウイルス亜型A1;
不活性化EIVウイルス亜型A2;及び
アジュバント
を含んでなるワクチン。
【請求項12】
ウマヘルペスウイルス及びウマインフルエンザウイルスに対してウマを免疫化するための医薬品製造のための請求項11のワクチンの使用。

【公開番号】特開2007−197470(P2007−197470A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127589(P2007−127589)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2002−573042(P2002−573042)の分割
【原出願日】平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】