説明

ウリジンを含んだ組成物及びその使用方法

【課題】認知及び神経機能を改善し、神経細胞及び脳細胞による神経伝達物質の合成及び放出、膜合成を向上させる方法を提案する。
【解決手段】ウリジン又はそのソース、あるいは、ウリジン又はそのソースとコリンとを含んだ組成物を投与することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウリジン又はウリジンソースをもった組成物の投与によって、認知及び神経機能を改善し、神経伝達物質の合成及び放出と神経細胞及び脳細胞の膜合成を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウリジンは、ピリミジンヌクレオシドであり、リボ核酸及びUDPグルコースやUTPグルコースのような組織グリコーゲンの合成における要素である。従来におけるウリジン単独の医療用途には、オロト酸尿症のようなピリミジン合成の欠損症に関連する遺伝疾患の治療が含まれている。コリンは、多くの食品の食物成分であるが、正常な膜構造及び機能にとって重要ないくつかのリン脂質の一部である。コリンは、非経口栄養を受けている患者に追加カロリー及び必須脂肪酸を届ける脂肪乳剤に含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ウリジン又はウリジンソースをもった組成物の投与によって、認知及び神経機能を改善し、神経伝達物質の合成及び放出と神経細胞及び脳細胞の膜合成を向上させる方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの態様において、本発明は、ウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含んだ組成物を対象者に投与して、該対象者における認知機能を改善する方法を提供する。
【0005】
他の態様において、本発明は、ウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含んだ組成物を対象者に投与して、該対象者における神経機能を改善する方法を提供する。
【0006】
他の態様において、本発明は、ウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含んだ組成物を対象者に投与して、該対象者における認知機能の低下を治療又は改善する方法を提供する。
【0007】
他の態様において、本発明は、ウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含む組成物を対象者あるいは対象者の脳細胞又は神経細胞に投与して、該対象者の脳細胞又は神経細胞の神経伝達物質合成能力を増進又は強化する方法を提供する。
【0008】
他の態様において、本発明は、シナプスに隣接した神経細胞にウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成が強化され、これによってシナプスにおける神経伝達物質のレベルが向上する、シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる方法を提供する。
【0009】
他の態様において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースを対象者に投与して、該対象者の組織、プラスマ(血漿)、又は細胞におけるシチジンのレベルを向上させる方法を提供する。
【0010】
他の態様において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与して、該対象者の組織、プラスマ、又は細胞におけるシチジンのレベルを向上させる方法を提供する。
【0011】
他の態様において、本発明は、対象者にウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成が強化され、これによって該対象者の脳細胞又は神経細胞の膜生成が刺激又は強化される、対象者の脳神経又は神経細胞の膜生成を刺激又は強化する方法を提供する。
【0012】
他の態様において、本発明は、神経細胞にウリジン、ウリジンソース、又はウリジン及びコリンを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成が強化され、これによって神経細胞の神経突起伸長が刺激又は強化される、神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ウリジン又はウリジンソースをもった組成物の投与によって、認知及び神経機能を改善し、神経伝達物質の合成及び放出と神経細胞及び脳細胞の膜合成を向上させる方法を提案する。
【0014】
一つの例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースを対象者に投与して、該対象者における認知機能を改善する、対象者の認知機能改善方法を提供する。
【0015】
また、一つの例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与して、該対象者の認知機能を向上させる、対象者の認知機能改善方法を提供する。
【0016】
“ウリジン又はウリジンソースとコリンと”なる語句は、本発明に係る二つの実施形態、a)ウリジン及びコリンの組み合わせ、b)ウリジンソース及びコリンの組み合わせ、の意味をもつものである。“ウリジン”、“コリン”、“ウリジンソース”は、ここに記載されているそれら各自の意味のいずれかを示している。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0017】
一つの例において、認知機能は記憶である。記憶は、他の例においては、空間記憶、作業記憶、参照記憶、短期記憶、長期記憶、又は中期記憶である。さらに他の例においては、記憶は、当分野で知られている他のタイプの記憶である。各記憶形態が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0018】
図21〜図23に示すデータから見て取れるように、ウリジンがいくつかのタイプの記憶を改善する。異なるタイプの記憶の評価における種の違いを超えた効果の一貫性が、本発明の研究結果を裏付けている。実験例15におけるデータは、さらに、ウリジンの効果がコリンの含有によって強化されることを示している。しったがって、ウリジン及びコリンを含む組成物の投与が記憶の改善に効果的で、さらに、一例においては、ウリジン又はコリン単独での投与よりも効果が高い。
【0019】
他の例において、認知機能は学習である。学習は、その他の例においては、認識学習、感情学習、又は精神運動学習である。さらに他の例においては、学習は、当分野で知られている他のタイプの学習である。各学習形態が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0020】
他の例において、認知機能は知能である。その他の例においては、知能は言語知能、音楽知能、空間知能、身体知能、対人知能、個人内知能、又は論理数学的知能である。さらに他の例においては、知能は、当分野で知られている他のタイプの知能である。各知能タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0021】
他の例において、認知機能は精神的適合である。その他の例においては、認知機能は、当分野で知られている他のタイプの認知機能である。各認知機能タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0022】
一つの例において、認知機能を“改善する”又は認知機能の“改善”とは、認知機能を実行する対象者の能力を向上させるということで用いられる。他の例においては、対象者における認知機能の向上又は改善されたベースラインレベルということで用いられる。その他の例においては、試験又は実験に応じた認知機能の向上又は改善レベルということで用いられる。
【0023】
他の例において、認知機能を改善するとは、認知機能の10%改善効果を意味する。他の例では、20%改善が達成される。その他の例では、30%改善、40%改善、50%改善、60%改善、70%改善、80%改善、90%改善が達成される。さらにその他の例では、認知機能を改善するとは、認知機能の100%改善効果を意味する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0024】
他の例において、認知機能の改善は、治療開始前の認知機能に関連して評価される。他の例では、認知機能の改善は、治療しない対象者に関連して評価される。その他の例では、認知機能の改善は、たとえば実験等のように画一化された基準に関連して評価される。各認知活動の改善のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0025】
他の例において、認知機能の改善は、対象者の脳における神経細胞間のつながりの数によって評価される。他の例では、改善は、対象者の脳内又は脳内の特定領域における毛細管数によって評価される。その他の例では、改善は、神経活動によって評価される。さらに他の例では、改善は、神経機能、言語機能、又はコミュニケーション能力によって評価される。また他の例では、改善は、アセチルコリンやその他の神経伝達物質のレベル、又は認知機能に関係した脳内化学物質の測定によって評価される。また他の例では、改善は、対象者の脳を走査するポジトロン断層法(PET)や核磁気共鳴画像法(MRI)によって評価される。また他の例では、改善は、認知機能評価法(CASI)(Peila R et al, Stroke. 32: 2882-9, 2001)によって評価される。また他の例では、改善は、たとえばここに開示した実験(実験例13)のような実験により評価される。認知機能の改善を評価するためのさらなる手法が当分野で良く知られ、たとえば、Antonova E et al (Schizophr Res. 2004 Oct 1; 70(2-3):117-45) 及びCognitive Function Analysis (Greenwood Pub Group, 1998) に開示されている。各手法が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0026】
本発明の方法の一つの例において、本発明の組成物は、対象者においてシチジンのレベルを向上させ、それによって、ここに記載した効果の一つを仲介する(たとえば、認知又は神経機能の改善、神経機能の刺激、膜合成、神経伝達物質放出等)。他の例においては、対象者におけるシチジン三リン酸(CTP)のレベルを向上させることによって効果が仲介される。さらに他の例においては、対象者におけるCDPコリンのレベルを向上させることによって効果が仲介される。また他の例においては、対象者におけるシチジン、CTP、CDPコリンの誘導体のレベルを向上させることによって効果が仲介される。また他の例においては、対象者におけるシチジン、CTP、CDPコリンの代謝産物のレベルを向上させることによって効果が仲介される。また他の例においては、シチジン、CTP、CDPコリン、又はそれらの誘導体又は代謝産物のレベルを向上させることによって効果が仲介される。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0027】
図9〜図11に見て取れるように、経口投与したウリジンは、迅速にそして効果的に脳内シチジンレベルを上昇させるように働く。ウリジンが血流中に効果的にそして迅速に吸収されることを示す図3〜8と結びつけた場合、人を含むいくつかの種において、これらの知見は、ウリジンの投与がシチジン、CTP、及びCDPコリンのレベルを上昇させることを裏付ける。実験例15のデータはさらに、コリンの含有によってウリジンの効果が強化されることを示している。
【0028】
一つの例において、シチジンレベルは組織的レベルである。他の例においては、シチジンレベルは脳レベルである。その他の例においては、シチジンレベルは、神経組織レベルである。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0029】
他の例において、ウリジン投与のもたらし得る利益は、シチジン投与の利益よりも大きい。これは、ウリジンに比べてシチジンが、血液脳関門の通過に関し、通過できないあるいはウリジンよりも通過の効率が格段に悪いという事実に基づく(Cornford et al., Independent blood-brain barrier transport system for nucleic acid precursors. Biochim. Biophys. Acta 349:211-219, 1975)。
【0030】
他の例において、シチジン、CTP、又はCDPコリン、あるいはそれらの誘導体又は代謝産物の増加は、細胞を活性化させてリン脂質のレベルを向上させ、それによってここに記載する効果の一つが仲介される。一つの例においては、リン脂質はホスファチジルコリン(PC)である。他の例においては、リン脂質はホスファチジルエタノールアミン(PE)である。また他の例においては、リン脂質はホスファチジルセリン(PS)である。さらに他の例においては、リン脂質は、PC、PE、又はPSの誘導体又は代謝産物である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0031】
他の例において、本発明は、対象者にウリジン又はウリジンソースを投与することによって、該対象者における神経機能を改善する、対象者の神経機能改善方法を提供する。
【0032】
他の例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者における神経機能を改善する、対象者の神経機能改善方法を提供する。
【0033】
他の例において、本発明の方法により改善される神経機能は、シナプス伝達である。一つの例では、シナプス伝達は、運動ニューロンに隣接する。他の例では、シナプス伝達は、介在ニューロンに隣接する。また他の例では、シナプス伝達は、感覚ニューロンに隣接する。各シナプス伝達のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0034】
他の例において、シナプス伝達は、神経細胞の神経突起伸長の刺激又は強化の手法によって改善又は強化される。また他の例では、神経細胞の神経突起伸長の刺激又は強化が、シナプス伝達の改善又は強化に部分的に関与する。また他の例では、本発明の組成物は、神経突起伸長の刺激なしでもシナプス伝達を改善又は強化する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0035】
“神経突起”は、一つの例において、神経細胞から伸びた突起を示す。一つの例では、その突起は樹状突起である。また他の例では、その突起は軸索である。各神経突起のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0036】
他の例において、シナプス伝達は、神経細胞の神経突起数を増加させるとにより改善又は強化される。その他の例では、シナプス伝達の改善又は強化は、神経細胞の神経突起数増加なしでも得られる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0037】
他の例において、シナプス伝達は、神経細胞の神経突起の枝分かれを刺激又は強化することによって改善又は強化される。その他の例では、シナプス伝達の改善又は強化は、神経細胞の神経突起の枝分かれ刺激又は強化なしでも得られる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0038】
実験例9のデータは、膜前駆体のレベルが向上したときに、神経細胞が、より多くの枝(側枝)を伴ってより多くの神経突起を提供することを、示している。細胞の表面積及びサイズを増加させると、細胞は、一つの例では、近隣の細胞とより多くのつながりを形成し得る。さらに、細胞膜の量又は組織の向上は、一つの例では、神経伝達物質の合成及び放出を変え、これはまた、一つの例では、記憶形成に作用する。したがって、神経突起伸長を促進するウリジンのような化合物は、ニューロ結合の損失及び記憶障害を伴うアルツハイマー病のような神経退化疾患の治療に有用である。
【0039】
他の例において、対象者におけるシナプス伝達の改善は、ウリジン及びコリン、又はウリジンの投与の結果として神経細胞の膜の量が向上することによって達成される。その他の例では、神経細胞の膜の合成を刺激することによって改善が達成される。さらに他の例では、神経細胞の膜の合成を強化することによって改善が達成される。また他の例では、神経細胞の膜の量又は合成の刺激又は強化が、対象者におけるシナプス伝達を向上させる仲介に部分的に関与する。また他の例では、ウリジン及びコリン、又はウリジンは、神経細胞の膜の量又は合成の刺激又は強化なしでもシナプス伝達を改善する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0040】
他の例において、改善又は強化される神経機能は、神経伝達物質の機能である。一つの例では、改善は、シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる手法によって得られる。その他の例では、改善は、シナプスにおける神経伝達物質の放出を向上させる手法によって得られる。さらに他の例では、改善は、シナプスにおける神経伝達物質のレベル又は放出を変えることなく得られる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0041】
図12〜図13のデータに見て取れるように、神経機能を向上させるウリジンの能力を際立たせているのが、神経伝達物質機能の著しい改善である。図14〜図17のデータからは、神経機能を向上させるウリジンの能力をさらに実証する、神経突起の形態に対するウリジンの有益な効果を読み取ることができる。実験例15のデータはさらに、ウリジンの効果がコリンの含有によって強化されることを示している。したがって、ウリジン及びコリンを含む組成物の投与が、神経機能の向上に効果があり、一つの例では、ウリジンやコリンの単独投与に比べてより効果的である。
【0042】
他の例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースを対象者に投与して、該対象者における認知機能の低下を治療又は改善する、対象者の認知機能低下治療又は改善方法を提供する。
【0043】
他の例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与して、該対象者における認知機能の低下を抑制し又は防ぐ、対象者の認知機能低下治療又は改善方法を提供する。
【0044】
“認知機能の低下を治療又は改善する”とは、一つの例において、低下を和らげるということである。また他の例では、低下を防ぐということである。さらに他の例では、低下を反転させるということである。また他の例では、低下を緩やかにするということである。また他の例では、低下に歯止めをかけるということである。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0045】
他の例において、認知機能の低下は、神経障害に起因する。一つの例では、神経障害は記憶障害である。記憶障害は、一つの例では、記憶力低下を含む。その他の例では、記憶障害は、脳老化に関連する。一つの例において、記憶障害は、ピック病、レビー小体病、又は認知症のいずれかである。他の例では、認知症は、ハンチントン病又はエイズ認知症に関連する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0046】
他の例において、認知機能の低下は、神経変性疾患に起因する。一つの例では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。その他の例では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、前頭側頭認知症、ハンチントン病、又はプリオン病である。また他の例では、神経変性疾患は、当分野で知られているその他の神経変性疾患である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0047】
他の例において、認知機能の低下は、循環器疾患に起因する。一つの例では、循環器疾患は、脳梗塞である。他の例では、循環器疾患は、多発梗塞性認知症である。その他の例では、循環器疾患は、当分野で知られている他の循環器疾患である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0048】
一つの例において、神経障害は、ドーパミン作動性経路に関連する。他の例では、神経障害は、ドーパミン作動性経路に関連しない。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0049】
他の例において、神経障害は、認知機能障害である。一つの例では、認知機能障害は、失読症である。他の例では、認知機能障害は、注意力の欠如、意識の欠如、集中力の欠如、又は関心の欠如を含む。その他の例では、認知機能障害は、軽度の認知障害又は加齢による記憶障害を含む。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0050】
他の例において、神経障害は、情緒障害である。一つの例では、情緒障害は、躁、鬱、緊張、パニック、不安、又は気分変調を含む。他の例では、情緒障害は、季節性気分障害を含む。その他の例では、情緒障害は、双極性障害を含む。
【0051】
他の例において、神経障害は、精神病である。その他の例において、神経障害は、鬱病である。一つの例では、鬱病は、内因性鬱病である。その他の例では、鬱病は、大鬱病性障害である。また他の例では、鬱病は、不安鬱病である。また他の例では、鬱病は、双極性鬱病である。各鬱病のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0052】
他の例において、神経障害は、運動失調及びフリードライヒ失調を含んだ群から選ばれるものである。
【0053】
他の例において、神経障害は、運動障害である。運動障害は、その他の例では、遅発性ジスキネジー、ジストニア、又はトゥレットシンドロームを含んでいる。また他の例では、運動障害は、当分野において知られているその他の運動障害である。
【0054】
他の例において、神経障害は、脳血管障害である。脳血管障害は、一つの例では、低酸素症に起因する。他の例では、脳血管障害を引き起こし得るその他の原因が引き金となる。また他の例では、脳血栓症である。さらに他の例では、脳血管障害は、虚血である。
【0055】
他の例において、神経障害は、行動症状である。その他の例において、神経障害は、神経症候群である。また他の例では、行動症状又は神経症候群は、脳損傷、脊髄損傷、又は酸素欠乏症の後に続く。
【0056】
他の例において、神経障害は、末梢神経系障害である。その他の例では、末梢神経系障害は、神経筋障害、重症筋無力症、又はポリオ後症候群である。また他の例では、末梢神経系障害は、当分野で知られているその他の末梢神経系障害である。さらに他の例では、神経筋障害は、筋ジストロフィーである。
【0057】
ここに記載した神経障害の各タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0058】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースを投与することによって、対象者の脳細胞の神経伝達物質合成能力を向上又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞の神経伝達物質合成能力向上又は強化方法を提供する。
【0059】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を投与することによって、対象者の脳細胞の神経伝達物質合成能力を向上又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞の神経伝達物質合成能力向上又は強化方法を提供する。
【0060】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースを投与することによって、対象者の脳細胞又は神経細胞のシナプス内で効果的な量の神経伝達物質を反復放出させる能力を向上又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞シナプス内神経伝達物質効果的量反復放出能力向上又は強化方法を提供する。
【0061】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を投与することによって、対象者の脳細胞又は神経細胞のシナプス内で効果的な量の神経伝達物質を反復放出させる能力を向上又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞シナプス内神経伝達物質効果的量反復放出能力向上又は強化方法を提供する。ここに記載するように、本発明の知見は、ウリジンが、神経伝達物質を合成し反復放出する神経能力を強化することを示している(実験例7)。実験例15のデータは、さらに、当該ウリジンの効果が、コリンの含有により強化されることを示している。
【0062】
一つの例において、本発明の方法により強化された放出は、神経細胞の刺激に続いて起こる。一つの例では、強化された放出は、神経細胞の脱分極に続いて起こる。一つの例では、強化された放出は、基底神経伝達物質放出である。一つの例では、神経細胞の刺激は、神経細胞のカリウムイオンへの暴露を含む。他の例では、神経細胞の刺激は、当分野で知られているその他の神経刺激手法を含む。神経刺激と神経伝達物質放出を評価する手法は、当分野で良く知られており、たとえば、Bewick GS, J Neurocytol. 32: 473-87,2003に記載されている。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0063】
他の例において、本発明は、シナプスに隣接した神経細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる、シナプス内神経伝達物質レベル向上方法を提供する。
【0064】
他の例において、本発明は、シナプスに隣接した神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる、シナプス内神経伝達物質レベル向上方法を提供する。
【0065】
他の例において、本発明は、神経にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、刺激に対する神経の感度を向上させる、神経刺激感度向上方法を提供する。
【0066】
他の例において、本発明は、神経にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、刺激に対する神経の感度を向上させる、神経刺激感度向上方法を提供する。
【0067】
一つの例において、レベル又は活性度あるいは放出が本発明の方法によって影響を受ける神経伝達物質は、アセチルコリンである。他の例では、神経伝達物質はドーパミンである。その他の例では、神経伝達物質はセロトニンである。また他の例では、神経伝達物質は5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)である。また他の例では、神経伝達物質はGABA(アミノ酪酸)である。また他の例では、神経伝達物質は当分野で知られているその他の神経伝達物質である。各神経伝達物質のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0068】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースを投与することにより、脳細胞又は神経細胞によるホスファチジルコリン(PC)の生成を刺激する、対象者脳細胞又は神経細胞PC生成刺激方法を提供する。
【0069】
他の例において、本発明は、対象者あるいは脳細胞又は神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を投与することにより、脳細胞又は神経細胞によるホスファチジルコリン(PC)の生成を刺激する、対象者脳細胞又は神経細胞PC生成刺激方法を提供する。ここに記載するように、本発明の研究結果は、ウリジンがPC前駆体のCDP−コリンの合成を強化する(実験例6)ことを示している。また実験例15のデータはさらに、当該ウリジンの効果がコリンの含有により強化されることを示している。
【0070】
他の例において、本発明は、細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、細胞膜の成分の量又は合成を刺激又は強化する、細胞膜成分量又は合成刺激又は強化方法を提供する。
【0071】
他の例において、本発明は、細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、細胞膜の成分の量又は合成を刺激又は強化する、細胞膜成分量又は合成刺激又は強化方法を提供する。
【0072】
他の例において、本発明の方法により合成が強化される成分はPCである。他の例では、当該成分はグリセロリン脂質である。その他の例では、当該成分はホスファチジン酸である。また他の例では、当該成分はPEである。また他の例では、当該成分はレシチンである。また他の例では、当該成分はPIである。また他の例では、当該成分はPSである。また他の例では、当該成分は、2−リソレシチン、プラスマロゲン、コリンプラスマロゲン、ホスファチジルグリセロール、コリンジホスファチジルグリセロール、コリンスフィンゴリピド、又はコリンスフィンゴミエリンである。また他の例では、当分野で知られているその他のリン脂質である。各リン脂質のタイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0073】
他の例において、本発明は、細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、リン脂質前駆体の量又は合成を刺激又は強化する、リン脂質前駆体量又は合成刺激又は強化方法を提供する。
【0074】
他の例において、本発明は、細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、リン脂質前駆体の量又は合成を刺激又は強化する、リン脂質前駆体量又は合成刺激又は強化方法を提供する。他の例では、リン脂質前駆体はCDPコリンである(実験例6)。その他の例では、リン脂質前駆体はCTPである。また他の例では、リン脂質前駆体はイノシトールである。また他の例では、リン脂質前駆体はコリンである。また他の例では、リン脂質前駆体はグリセロールである。また他の例では、リン脂質前駆体はアセテートである。また他の例では、リン脂質前駆体は、当分野で知られているその他のリン脂質前駆体である。各リン脂質が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0075】
他の例において、本発明は、対象者にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の生成を刺激又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞膜生成刺激又は強化方法を提供する。
【0076】
他の例において、本発明は、対象者にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の生成を刺激又は強化する、対象者脳細胞又は神経細胞膜生成刺激又は強化方法を提供する。
【0077】
一つの例において、膜は神経突起膜である。他の例では、膜は樹状突起膜である。その他の例では、膜は軸索膜である。また他の例では、膜は当分野で知られているその他の膜である。各膜タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0078】
他の例において、細胞膜の量又は合成の刺激は、リン脂質の合成を刺激すること又は強化することにより達成される(実験例6)。他の例では、神経細胞膜の量又は合成の刺激又は強化は、リン脂質前駆体の合成を刺激又は強化することにより達成される(実験例6)。その他の例では、リン脂質又はその前駆体の合成の刺激又は強化は、神経細胞膜の量又は合成を刺激することに部分的に起因する。また他の例では、本発明の組成物は、リン脂質又はその前駆体の合成を刺激又は強化することなく膜の量又は合成を刺激する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0079】
脳細胞膜又は神経細胞膜の生成を評価する手法は、当分野で良く知られている。他の例では、膜生成は、神経突起伸長又は分岐のレベルを測定することで評価される(実験例9)。その他の例では、膜生成は、膜マーカープロテインのレベルを測定することで評価される(実験例8)。また他の例では、膜生成は、膜前駆体の合成を測定することで評価される。また他の例では、膜生成は、ウリジン治療の前と後で膜の量を測定することにより評価される。また他の例では、膜生成は、膜の代謝回転の生物学的指標を測定することで評価される。指標や細胞膜の代謝回転は当分野で良く知られており、たとえば、Das KP et al, Neurotoxicol Teratol 26(3): 397-406, 2004 に記載されている。膜生成を評価する各方法が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0080】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させ、リン脂質又はその前駆体の合成を強化することによって、神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化する、神経細胞神経突起伸長刺激又は強化方法を提供する。
【0081】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させ、リン脂質又はその前駆体の合成を強化することによって、神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化する、神経細胞神経突起伸長刺激又は強化方法を提供する。ここに記載するように、本発明の研究結果は、ウリジンが神経突起の伸長及び分岐を強化することを示す(実験例9)。実験例15のデータはさらに、当該ウリジンの効果がコリンの含有により強化されることを示している。
【0082】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、神経細胞の神経突起数を向上させる、神経細胞神経突起数向上方法を提供する。
【0083】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を接触させることにより、リン脂質又はその前駆体の合成を強化して、神経細胞の神経突起数を向上させる、神経細胞神経突起数向上方法を提供する。
【0084】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースを接触させることにより、神経細胞の神経突起分岐を刺激又は強化する、神経細胞神経突起分岐刺激又は強化方法を提供する。
【0085】
他の例において、本発明は、神経細胞にウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物あるいはコリンを含む組成物を接触させることにより、神経細胞の神経突起分岐を刺激又は強化する、神経細胞神経突起分岐刺激又は強化方法を提供する。
【0086】
一つの例において、本発明の方法のターゲットである細胞あるいは該方法で接触させる細胞は神経細胞である。他の例では、当該細胞は脳細胞である。その他の例では、当該細胞は、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方を含む組成物との接触で膜又はその成分の合成が強化されるその他の細胞である。また他の例では、当該細胞は、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方を含む組成物との接触で神経機能が強化されるその他の細胞である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0087】
他の例において、本発明の方法の神経細胞、神経突起、又は脳細胞は、新たに分化したものである。他の例では、当該細胞は、新たに分化したものではない。一つの例では、“新たな分化”とは、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方の投与を開始する前の24時間内に分化した神経を示す。他の例では、神経は投与前48時間前に分化したものである。また他の例では、神経は投与前72時間内に分化したものである。さらに他の例では、神経は投与前1週間内に分化したものである。その他の例では、“新たな分化”とは、本発明の組成物の投与を開始した後に分化を終えた神経を示す。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0088】
神経分化を評価する手法は、当分野で良く知られており、たとえば、Contestabile A et al (Neurochem Int. 45: 903-14, 2004) に記載されている。そのような各手法が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0089】
他の例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースを対象者に投与することにより、組織、プラスマ、又は細胞におけるシチジンのレベルを向上させる、対象者の組織、プラスマ、又は細胞のシチジンレベル向上方法を提供する。
【0090】
他の例において、本発明は、ウリジン又はウリジンソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することにより、組織、プラスマ、又は細胞におけるシチジンのレベルを向上させる、対象者の組織、プラスマ、又は細胞のシチジンレベル向上方法を提供する。他の例では、本発明は、対象者に本発明の組成物を投与して、対象者の組織、プラスマ、又は細胞におけるCTPのレベルを向上させる方法を提供する。その他の例では、本発明は、本発明の組成物を投与して、対象者の組織、プラスマ、又は細胞におけるCDPコリンのレベルを向上させる方法を提供する。また他の例では、本発明は、本発明の組成物を投与して、対象者の組織、プラスマ、又は細胞におけるシチジン、CTP、又はCDPコリンの誘導体のレベルを向上させる方法を提供する。また他の例では、本発明は、本発明の組成物を投与して、対象者の組織、プラスマ、又は細胞におけるシチジン、CTP、又はCDPコリンの代謝産物のレベルを向上させる方法を提供する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0091】
一つの例において、組織は脳組織である。一つの例では、組織は神経組織である。他の例では、組織は脊髄組織である。また他の例では、組織は当分野で知られているその他の組織である。
【0092】
一つの例において、細胞は脳細胞である。一つの例では、細胞は神経細胞である。他の例では、細胞は脊髄細胞である。また他の例では、細胞は当分野で知られているその他の細胞である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0093】
一つの例において、本発明で投与されるウリジンは、ウリジン−5’−モノホスフェイト(UMP)である。他の例では、ウリジンは、ウリジン−5’−ジホスフェイト(UDP)である。その他の例では、ウリジンは、ウリジン−5’−トリホスフェイト(UTP)である。また他の例では、ウリジンはUDPグルコースである。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0094】
他の例において、ウリジン前駆体が本発明の方法で投与される。一つの例では、投与されるウリジン前駆体は、シチジン−5’−モノホスフェイトである。他の例では、投与されるウリジン前駆体は、シチジン−5’−ジホスフェイト(CDP)である。その他の例では、投与されるウリジン前駆体は、CDPグルコースである。また他の例では、投与されるウリジン前駆体は、当分野で知られている薬理学的に許容されたウリジン前駆体、誘導体、又は代謝産物である。
【0095】
他の例において、ウリジン誘導体が本発明の方法で投与される。“誘導体”とは、一つの例としては、ウリジンが対象者の体内で誘導体へ変換されるといったようにウリジンに化学的に関連する化合物を示す。他の例では、“誘導体”は、誘導体が対象者の体内でウリジンへ変換されるといったようにウリジンに化学的に関連する化合物を示す。一つの例では、変換は、一つ以上の安定した中間体を介して起こる。他の例では、変換は直接的に起こる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0096】
他の例において、ウリジン代謝産物が本発明の方法で投与される。
【0097】
他の例において、ウリジン自身以外のウリジンベース化合物がウリジンソース又はウリジン前駆体として働く。これらは、いくつかの例において、藻類や、ウリジンホスフェイト又はアシル化ウリジンなどのウリジン塩のような、ウリジンリッチ(豊富な)食物又は食料品である。他の例では、たとえば米国特許5470838に記載されているような、ウリジンのアシル誘導体又はそれらの混合物の治療上又は薬学上有効な投与量が投与される。
【0098】
他の例において、ウリジンソースは、シチジン−ジホスホコリン(CDPコリン;シチコリン)である。シチコリンは、1:1モル比でウリジンと同量のコリンを含んでいるが、一つの例では、対象者に必要な全コリンを供給するには十分でない。したがって、この例において、シチコリンは、対象者に必要な全ウリジンのソース及びコリンの一部として働く。
【0099】
他の例において、ウリジン前駆体、誘導体、又はソースの塩が本発明の方法で使用される。一つの例では、塩は、UMP二ナトリウム(実験例2,3)である。他の例では、塩は、その他の薬理学上許容されるウリジン前駆体又は誘導体の塩である。また他の例では、投与される組成物は、単独有効成分としてウリジンあるいはその前駆体又は誘導体の塩を含む。各ウリジン塩が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0100】
他の例において、上記のようなウリジン関連化合物の2以上の混合物が投与される。ウリジン前駆体、誘導体、代謝産物、又はソースの各タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0101】
ここで使用する“ウリジン”は、一例として上記のような、ウリジンホスフェイト、ウリジン前駆体、ウリジン代謝産物、ウリジンベース化合物、又はそれらの塩を示す。他の例では、“ウリジン”は、当分野で知られているウリジン又は関連化合物を示す。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0102】
一つの例において、ウリジン、その誘導体、ソース、又は前駆体は、一日におおよそ20mgから50gまでの間の投薬量で本発明の方法において投与される。他の例では、ウリジン又は関連化合物は、一日におおよそ50mg〜30gの投薬量で投与される。また他の例では、投薬量は、一日あたりおおよそ、75mg〜20g、100mg〜20g、100mg〜10g、200mg〜8g、400mg〜6g、600mg〜4g、800mg〜3g、1〜2.5g、1.5〜2g、5mg〜5g、5mg〜50gである。各投薬量又は投薬量範囲が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0103】
一つの例において、本発明の方法で投与されるコリンは、コリン塩である。一つの例では、塩はコリンクロライド(塩化コリン)である。他の例では、塩は酒石酸水素コリンである。さらに他の例では、塩はステアリン酸コリンである。また他の例では、塩は、コリンアルホスセラート、デヒドロコール酸コリン、コリンシドロゲンシトラート、又はサリチル酸コリンである。また他の例では、塩は、当分野で知られているその他のコリン塩である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0104】
他の例において、コリンは、コリンエステルなどのコリンベース化合物である。
【0105】
他の例において、コリンは、コリンに解離する化合物である。一つの例では、該化合物はスフィンゴミエリンである。他の例では、該化合物はアシルグリセロホスホコリンである。また他の例では、該化合物はレシチンである。さらに他の例では、該化合物はリゾレシチンである。また他の例では、該化合物はグリセロホスファチジルコリンである。その他の例において、これらコリン関連化合物の2以上の混合物が投与される。
【0106】
ここに使用する“コリン”とは、一つの例において、コリンリン酸塩、コリン前駆体、コリン代謝産物、コリンベース化合物、又は上記物質の塩を示す。他の例では、“コリン”は、当分野で知られているコリン又は関連化合物を示す。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0107】
他の例において、コリン又はコリン関連化合物は、対象者の血液又は脳内で少なくとも20〜30ナノモルのコリンレベルが達成されるような手法及び投薬量で投与される。別の例では、10〜50ナノモルのコリンレベルが達成される。その他の例では、5〜75ナノモルのコリンレベルが達成される。さらに他の例では、25〜40ナノモルのコリンレベルが達成される。また他の例では、30〜35ナノモルのコリンレベルが達成される。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0108】
他の例において、コリン、その誘導体、ソース、又は前駆体は、一日に20mg〜50gの投薬量で本発明の方法において投与される。他の例では、コリン又は関連化合物は、一日に、おおよそ50mg〜30g、75mg〜20g、100mg〜20g、100mg〜10g、200mg〜8g、400mg〜6g、600mg〜4g、800mg〜3g、1〜2.5g、1.5〜2g、5mg〜5g、5mg〜50gの投薬量で投与される。各投薬量範囲が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0109】
他の例において、本発明の組成物は、治療患者の母集団の少なくとも10%で期待の効果が得られるような用量で投与される。別の例では、治療患者の少なくとも20%に効果が現れる用量である。さらに他の例では、治療患者の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%に効果が現れる。また他の例では、患者の90%以上に効果が現れる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0110】
一つの例において、本発明の方法の対象者は哺乳類である。他の例では、対象者は人間である。別の例では、対象者は齧歯類又は事件動物である。その他の例では、対象者は男性である。また他の例では、対象者は女性である。さらに他の例では、対象者は当分野で知られているその他の種類の対象である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0111】
一つの例において、“投与する”あるいは“投与”とは、対象者を本発明の化合物に接触させる状態に置くことを言う。他の例では、投与は、本発明の組成物を飲み込む又は吸収することを含む。その他の例では、投与のステップとして、調合剤や栄養剤などを利用する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0112】
一つの例において、投与は対象者により実施される。他の例では、投与は介護者により実施される。その他の例では、投与は第三者により実施される。各投与タイプが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0113】
他の例において、追加の治療用化合物が本発明の方法の一部として対象者に投与される。別の例では、ウリジン、その前駆体、誘導体、又はソースが組成物における単独の有効成分である。また他の例では、ウリジン、その前駆体、誘導体、又はソースと、コリン、その前駆体、誘導体、又はソースと、が組成物における単独の有効成分である。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0114】
一つの例において、追加の治療用化合物は、ベンジルバルビツレートやその誘導体などのウリジンホスホリラーゼ阻害因子として働く薬である。他の例では、該化合物は、ウリジンの効能を向上させる薬である。別の例では、該化合物は、ジラゼプやヘキソベンジンなどのウリジン分泌阻害化合物である。さらに他の例では、該化合物は、L−ウリジン、L−2’,3’−ジデオキシウリジン、及びD−2’,3’−ジデオキシウリジンなどのウリジン腎輸送競合物である。また他の例では、該化合物は、リン脂質の生成においてウリジンと共用作用するように働く薬である。また他の例では、該化合物は、米国特許5723449及び5567689に記載されているようなL−ウリジン、L−2’,3’−ジデオキシウリジン、及びD−2’,3’−ジデオキシウリジン、又はそれらの混合物などの腎クリアランスにおいてウリジンと競合する化合物である。また他の例では、該化合物は、対象者に有益なその他の化合物である。
【0115】
他の例において、本発明の方法は、神経細胞、ニューロン、又は脳細胞のP2Yレセプタを刺激する手法により上記効果の一つを生じる。別の例では、その上記効果の一つは、神経細胞又はニューロンのP2Yレセプタ刺激の結果として部分的に生じる。さらに他の例では、上記効果の一つは、他のタイプの細胞のP2Yレセプタを刺激する手法により部分的に又は全体的に生じる。また他の例では、上記効果の一つは、P2Yレセプタの刺激なしで生じる。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0116】
一つの例において、P2Yレセプタの刺激は、本発明の組成物におけるウリジン又は関連化合物により仲介される。他の例では、ウリジンは、細胞でP2Yレセプタを刺激する第2の化合物に変換される。一つの例では、その第2の化合物は、ウリジン−5’−トリホスフェイトである。別の例では、第2の化合物は、ウリジン、その誘導体、又はソースの分野で知られている代謝産物である。各化合物の例が本発明の個々の実施形態に相当する。他の例において、ウリジン、その誘導体、又はソースは、細胞内外で第2の化合物に変換される。別の例では、ウリジン、その誘導体、又はソースは、第2の化合物に変換された後に細胞から分泌される。その他の例では、ウリジン、その誘導体、又はソースは、第2の化合物に変換された細胞から分泌された後に他の細胞と接触し、該他の細胞においてP2Yレセプタを刺激する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0117】
P2Yレセプタは、血小板活性化及びその他の生物学的機能に関与するとして知られたレセプタのファミリーである。それらは、Mahaut-Smith MP et al, Platelets. 2004 15:131-44, 2004 に概説されている。
【0118】
一つの例において、本発明のP2YレセプタはP2Y2レセプタである。他の例では、P2YレセプタはP2Y4レセプタである。別の例では、P2YレセプタはP2Y6レセプタである。また他の例では、P2Yレセプタは、当分野で知られているその他のP2Yレセプタである。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0119】
他の例において、P2Yレセプタはセカンドメッセンジャーを刺激する。一つの例では、セカンドメッセンジャーはGアルファプロテインである。他の例では、セカンドメッセンジャーはGアルファ(q)プロテインである。別の例では、セカンドメッセンジャーはcAMPである。その他の例では、セカンドメッセンジャーは当分野で知られているその他のセカンドメッセンジャーである。セカンドメッセンジャー及びこれらに結びついたシグナル伝達経路は、当分野で良く知られており、たとえば、Ferguson S. Pharm Rev 53: 1-24, 2001; Huang E et al, Ann Rev Biochem 72: 609-642, 2003; Blitterswijk W el al, Biochem. J. 369: 199-211, 2003 にも記載されている。各セカンドメッセンジャーが本発明の個々の実施形態に相当する。
【0120】
他の例において、セカンドメッセンジャーは、ホスホリパーゼC酵素を刺激し、細胞内カルシウムレベルを調節し、また、プロテインキナーゼC活性を向上させる。一つの例では、上記伝達経路の一つ以上が膜産生を刺激する。他の例では、セカンドメッセンジャーが、膜産生を刺激する他の細胞経路を調節し又は刺激する。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0121】
一つの例において、本発明の組成物におけるウリジン又は関連化合物は、P2Yレセプタ以外のレセプタを刺激する。
【0122】
本発明の方法の他の例において、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方は、対象者の血流で脳細胞又は神経細胞へ運ばれる。他の例では、当該物質は、拡散によって対象者の脳細胞又は神経細胞に運ばれる。別の例では、当該物質は、能動輸送によって対象者の脳細胞又は神経細胞へ運ばれる。その他の例では、当該物質は、対象者の脳細胞又は神経細胞に直接接触させるなどの手法により対象者に投与される。各具体例が本発明の個々の実施形態に相当する。
【0123】
一つの例において、“調合剤”は、治療効果のある量の有効成分、すなわちウリジン及びコリンのいずれか又は両方を、薬剤的に許容されるキャリア又は希釈薬と一緒にすることを示す。“治療効果のある量”とは、一つの例では、所定の条件及び投薬計画に対して治療効果をもたらす量のことを示す。
【0124】
他の例において、調合剤は、非経口投与、腫瘍近傍投与、経粘膜投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与、頭蓋内投与、膣内投与、又は腫瘍内投与のような、当業者が知っている各種手法で対象者に投与される。
【0125】
他の例において、調合剤は経口投与されるので、固体や液体製剤などの経口投与に適した形態とすることが想定される。適した固体経口製剤は、たとえば、タブレット、カプセル、丸剤、顆粒、小丸剤その他を含む。適した液体経口製剤は、液剤、懸濁剤、溶液剤、乳濁剤、油剤その他を含む。本発明の一つの例では、ウリジン及びコリンを含む組成物は、カプセル製剤の形態をとる。この例に従うと、本発明の組成物は、活性化合物及び不活性キャリア又は希釈剤に加えてハードゼラチンカプセルを含む。
【0126】
他の例において、調合剤は、液体製剤の静脈注射、動脈注射、又は筋肉注射により投与される。適した液体製剤は、液剤、懸濁剤、溶液剤、乳濁剤、油剤その他を含む。一つの例では、調合剤は、静脈投与するために適した形態の製剤とされる。他の例では、調合剤は、動脈投与するために適した形態の製剤とされる。その他の例では、調合剤は、筋肉内投与するために適した形態の製剤とされる。
【0127】
さらに、他の例において、調合剤は、たとえば肛門坐剤や尿道坐剤のような坐剤として投与される。他の例では、調合剤は、小丸剤の皮下移植によって投与される。その他の例では、小丸剤は、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方の一定期間放出コントロールを可能とする。
【0128】
薬剤的に許容されるキャリア又は希釈剤は、当業者には良く知られている。一つの例では、キャリア又は希釈剤は、固体製剤用の固体キャリア又は希釈剤、液体製剤用の液体キャリア又は希釈剤、あるいはこれらの混合である。
【0129】
固体キャリアや希釈剤は、他の例において、ガム、澱粉(たとえばコーンスターチ、プレゼラチン化スターチ)、糖(たとえば乳糖、マンニトール、スクロース、右旋性グルコース)、セルロース系物質(たとえば微結晶性セルロース)、アクリル酸塩(たとえばポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、又はこれらの混合物を含む。
【0130】
液体製剤に対して薬剤的に許容されるキャリアは、他の例において、水性の又は非水性の液剤、懸濁剤、乳濁剤、又は油剤である。非水性溶剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。水性キャリアは、食塩水及び緩衝媒体を含んだ水、アルコール溶液や水溶液、乳剤、又は懸濁液を含む。油剤の例としては、石油、動物油、植物油、又は合成油、たとえば落花生油、大豆油、鉱物油、オリーブ油、ひまわり油、魚肝油である。
【0131】
他の例において、組成物はさらに、結合剤(たとえばアカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(たとえばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、ナトリウムスターチグリコレート)、各種pH及びイオン強度の緩衝剤(たとえばTris-HCL、アセテート、リン酸塩)、表面吸収防止用のアルブミンやゼラチンなどの添加剤、洗剤(たとえばTween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(たとえばグリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(たとえばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定剤(たとえばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(たとえばカルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(たとえばアスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(たとえばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(たとえばコロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(たとえばフタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(たとえばカルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、高分子塗膜(たとえばポロクサマー又はポロクサミン)、被覆及び皮膜形成剤(たとえばエチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリル酸)、補助薬を含む。
【0132】
他の例において、ここに提供された調合剤は、放出コントロール組成物、すなわち、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方が投与後一定期間放出される組成物である。放出コントロール又は持続組成物は、脂溶性持続製剤(たとえば脂肪酸、ろう、油)の処方を含む。その他の例では、組成物は、即時放出組成物、すなわち、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方のすべてが投与後直ぐに放出される組成物である。
【0133】
他の例において、調合剤は、放出コントロールシステムで誘導される。たとえば、組成物は、静脈内注射、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮貼付、リポソーム、又はその他の投与方式を使用して投与される。一つの例では、ポンプが使用される(Langer, supra; Sefton, CRC Crit, Ref. Biomed Eng. 14:201 (1987)、Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980)、Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989) 参照)。他の例では、ポリマー材料が使用される。別の例では、放出コントロールシステムは、治療標的、すなわち脳の直ぐ近くに置かれ、この場合、全身投薬の分画だけが必要とされる(たとえばGoodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984) 参照)。その他の放出コントロールシステムは、Langer (Science 249:1527-1533 (1990) による概説で話題にされている。
【0134】
有効成分を含む調合剤の調合は、当分野で良く知られており、たとえば、混合、顆粒化、又はタブレット化プロセスである。有効治療成分は、薬剤的に許容され且つ有効成分に適合する賦形剤と混合されることが多い。経口投与については、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方、又は塩、エステル、N−酸化物その他の生理学的に容認される誘導体が、当該目的で慣用されている賦形剤、安定剤、又は不活性希釈剤のような添加剤と混合され、そして、慣用手法により、タブレット、コートタブレット、ハード又はソフトゼラチンカプセル、液剤、アルコール又は油性溶液のような経口投与に適した形態とされる。非経口投与については、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方、又は塩、エステル、N−酸化物その他の生理学的に容認される誘導体が、必要ならたとえば可溶化剤などの慣用され且つ当該目的に適した薬剤と共に、液剤、懸濁剤、又は乳濁剤とされる。
【0135】
有効成分は、不活性の薬剤的に許容される塩の形態として組成物に処方することができる。薬剤的に許容される塩は、たとえば塩酸やリン酸のような無機酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸その他の有機酸で形成される酸付加塩(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基で形成)を含む。遊離カルボキシル基から形成される塩は、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄のような無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインその他のような有機塩基を利用して抽出可能である。
【0136】
医薬として使用するために、ウリジン及びコリンのいずれか又は両方の塩は、薬剤的に許容される塩である。その他の塩は、一つの例において、本発明に係る組成物又はその薬剤的に許容される塩の調合に有用である。本発明の組成物の薬剤的に許容される適した塩は、たとえば、本発明に係る組成物の液剤と、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸のような薬剤的に許容される塩の液剤と、を混合することにより形成され得る酸付加塩を含んでいる。
【実験例】
【0137】
実験例1
チロシン干渉のないHPLCによるシチジンの測定
【0138】
材料及び方法
【0139】
試料調製
ヘパリン化プラスマの1ミリリットル(mL)サンプルに内部標準として使用する1μgフルオロウリジンを入れ、そしてメタノール(5mL)を加えてタンパク質を除いた。サンプルは、遠心分離し、凍結乾燥し、0.25N酢酸アンモニウム(pH8.8)の5mL中で再生した後、直ちにホウ素アフィニティカラムで精製した。
【0140】
ホウ素アフィニティカラム
全ステップは4℃で実施した。二つの5mL酢酸アンモニウム洗剤と共にホウ素アフィニティカラム(Affigel-601, Bio-Rad)を準備し、サンプルを適用し、そしてカラムを酢酸アンモニウムで重ねて洗浄した後に、0.1Nギ酸(7mL)でヌクレオシドを溶出した。溶出液は凍結乾燥してから、HPLC分析用に100μL水で再生した。ホウ素アフィニティカラムは、ヌクレオチド塩基アデノシン、シチジン、グアノシン、チミジン、及びウリジンを含む多数の生体分子を拘束する。
【0141】
HPLC
HPLC分析は、Rainin Dynamax Microsorb C18 カラム(3μmパッキング、4.6×100mm)を装備したBeckman System Gold 装置(Beckman Instruments)を使用して室温で実施した。標準HPLC法は、Lopez-Coviella et al, (J. Neurochem 65: 889-894, 1995) に記載されている。修正HPLC用に、0.004Nリン酸カリウム緩衝剤(pH5.8)及びギ酸に代わる0.1%メタノールを含み、1mL/分の流量で35°に加熱したアイソクラチック溶離バッファを使用した。
【0142】
実験結果
【0143】
ヌクレオシドを測定するための標準HPLC法では、ウリジンとシチジンの分かれたピークが得られたが、人のプラスマサンプルで示したように(図1)、シチジンとチロシンのピークの一致がシチジンレベルの正確な測定を邪魔する。チロシンは、プラスマや脳脊髄液(CSF)などのほとんどの生体液中に存在する。本実験例では、シチジンとチロシンのピークを区別する修正HPLC法を使用し、シチジンレベルの正確な測定を可能にした(図2)。
【0144】
実験例2
UMPの経口投与による人のプラスマウリジンレベル向上
【0145】
材料及び実験方法
【0146】
研究計画
8人の健康な対象者(男性5人、女性3人、27〜67歳)に対し、少なくとも三日間の休薬期間をあけて三日、投薬量を徐々に上げながら(初日500mg、中日1000mg、最終日2000mg)、各日とも一晩中飲食を控えた後の朝7時〜8時に二ナトリウムUMP(Numico, Wageningen, NL)を飲むように指示した。全対象者に昼食は摂らせた。血液サンプルは、8時間の間でヘパリン化チューブに採血した。プラスマは、メタノールで処理してプロテインを沈殿させ、クロロホルムで抽出し、そして、水層のアリコートを凍結乾燥して水で溶解し、紫外検出を伴うHPLCにより測定した。
【0147】
統計分析
統計分析は、SPSS12.0で実行した。データは、mean±SEM (平均値の標準誤差)として表した。文中に詳細を示したように、統計効果を評価するために、対応のないスチューデントt検定、一元配置分散分析(ANOVA)、繰り返しANOVA、二元配置ANOVAを使用した。適切な場合にTukey's HSD事後解析を実施した。有意水準はp<0.05に設定した。
【0148】
実験結果
【0149】
500,1000,2000mgのUMPを経口投与した対象者の血中ウリジンレベルを、ベースラインと、投薬後1時間、2時間、4時間、8時間で測定した。プラスマウリジンレベルは、実験例1同様に分析した。プラスマウリジンレベルは、用量依存的に経口UMPに応じて上昇し、8時間でベースラインレベルに戻った(図3)。
【0150】
実験例3
ウリジン又はUMPの経口投与によるジャービルのプラスマウリジンレベル向上
【0151】
材料及び実験方法
【0152】
実験計画
8〜9匹のオスのジャービル(60〜80g)の各グループに一晩中餌を与えず、ウリジン(Sigma, St. Louis, MO; 250mg/kg体重)(図4)又は二ナトリウムUMP(1mmol/kg体重、強制飼養による250mg/kgウリジンと同等の投薬)(図5)を投与し、1時間後にTelazol麻酔下で断頭犠牲にした。図6では、体重の0、0.1、0.5、2.5%のいずれかの量を含んだ食物(Harlan Teklad, Madison, WI)を4週間ジャービルに食べさせ、一晩絶食してから、同成分の最後の食事を摂らせた1時間後に犠牲にした。首から収集した血を、EDTAを含んだチューブに採取し、実験例2と同様に処理した。
【0153】
実験結果
【0154】
ウリジンの経口投与がプラスマウリジンレベルを上昇させ得るかどうか解明するために、250mg/kgシチジン又はウリジンを強制飼養でジャービルに摂取させた60分後、実験例1同様の手法にてプラスマウリジンレベルを評価した。シチジン及びウリジン食の両方において、シチジンやウリジンを含まない食物を摂取したコントロールグループに対し統計的に有意なマージンをもって、プラスマウリジンレベルが向上した。ウリジン食が、シチジン食以上に、おおよそ3目盛高いプラスマウリジンレベルの結果を示している。
【0155】
プラスマウリジンレベル向上の起こる時間を評価するため、別の実験において、ジャービルに、水か、又は1ミリモル(mmol)UMP/kg体重を投与し、60分内の各時間で犠牲にしてプラスマウリジンレベルを評価した。プラスマウリジンレベルは投与後10分内で向上し、30分までの間にピークレベルに達した(図5)。
【0156】
別の実験いおいて、ジャービルには、コントロール食か、又は0.1%、0.5%、2.5%UMP含有食のいずれかを与えた。1時間後、プラスマウリジンレベルを評価した。図6に示すように、プラスマウリジンレベルは、UMP食に応じて用量依存的に向上した。これらの結果は、ウリジンの経口投与で血流中に取り入れられることを示す。
【0157】
実験例4
ウリジン又はUMPの経口投与によるジャービルの脳ウリジン向上
【0158】
材料及び方法
【0159】
ジャービル脳組織処理
断頭後の頭蓋から脳を即座に取り出し、ドライアイスで凍結、80%メタノールで均質化、遠心分離、凍結乾燥、そして実験例3同様に分析した。
【0160】
実験結果
【0161】
ウリジンの経口投与で脳ウリジンレベルが上昇し得るかどうか解明するため、実験例3の第1実験からジャービルの脳を均質化し、ウリジンレベルを分析した。コントロール動物に比較し、シチジンの経口投与は脳ウリジンレベルを2倍向上させる結果をもたらすが、ウリジンの経口投与はそれ以上に脳ウリジンレベルを3倍向上させる結果を示した(図7)。各グループ間の違いは統計的に有意であった。
【0162】
脳ウリジンレベル向上の起こる時間を評価するため、実験例3の第2実験のジャービルで脳ウリジンレベルを評価した。脳ウリジンレベルはウリジン投与後10分内で向上し、30分内でピークレベルに達した。プラスマウリジンレベルで観察された結果に類似している(図8)。これらの結果は、ウリジンの経口投与が脳まで効率的に運ばれることを示している。
【0163】
実験例5
脳におけるウリジンの容易なシチジン変換
【0164】
別の実験において、250mg/kg体重のウリジンを経口投与したジャービルにつき、60分後にシチジン及びウリジンのプラスマ及び脳レベルを評価した。コントロール動物に対する倍増が計測され、図9A(プラスマ)及び図9B(脳)に示している。各ケースにおいて、シチジンの増分が、ウリジンの増分を100%として示されている。これらの結果は、(a)血流中のウリジンが脳に運ばれ、(b)ウリジンの代謝処理が脳内とプラスマ内とで異なる、特に、プラスマ内よりも効率的にシチジンへ変換されることを表している。
【0165】
実験例6
脳及び神経細胞株内におけるリン脂質前駆体CDPコリンのウリジンによるレベル向上
【0166】
方法
【0167】
実験計画
データは、グループサイズが5〜16匹の範囲の動物による3実験からプールされた。オスのジャービル(60〜80g)に強制飼養でUMP(1mmol/kg体重)を与え、指示時間で犠牲にした。実験例4同様に、脳均質化後、プロテイン沈殿、凍結乾燥し、サンプルをHPLC−UVで分析した。
【0168】
CDPコリンレベルの評価
脳組織又は細胞はメタノール/クロロフォルム(1:2vol/vol)で溶解し、遠心分離後、水相を真空乾燥してから100〜200μL水で再懸濁し、イオン交換カラム(Alltech Hypersil Aps-2,5 μM, 250 x 4.6 mm)でHPLCにより分離した。CDPコリンは、40分でUMPのように近接して共に溶出する物質に対するCDPコリンの分解能を向上させるNaHPOバッファA(1.75mM NaHPO, pH2.9)及びB(500mM, pH4.5)の直線傾斜で溶出した。CDPコリンに対する滞留時間は9.5分だった。個々のヌクレオチドピークは380nmのUV吸収により検出され、選択サンプルにヌクレオチド標本を追加した真正標本の位置との比較で識別された。
【0169】
PC12細胞
PC12細胞は、37℃で10%ウシ胎仔血清(FBS)を補った最小必須培地(MEM;Invitrogen, Carlsbad, CA)で保持される。実験培養は、テスト化合物有り又は無しで、50ng/ml mouse 2.5S(2.5 subunit)NGF及び1%FBSを含む培地で2又は4日間であった。NGF及びFBSはInvitrogenより得られた。
【0170】
実験結果
脳内リン脂質前駆体レベルに対する経口投与ウリジンの効果を評価するために、実験例3の第2実験によるジャービットの脳を、ケネディー経路を介したリン脂質生合成の重要中間体、CDPコリンのレベルについて分析した。CDPコリンのレベルは、UMP投与後30分間で直線的に(回帰分析、r=0.98、p<0.02)顕著に上昇下(図10)。
【0171】
神経細胞におけるウリジンのCDPコリン変換を直接的に示すため、神経細胞分化能をもつ細胞株のPC12細胞を、ウリジンで処理し、CDPコリンの細胞内レベルを測定した。ウリジン処理により、50分後のCDPレベルに統計的に有意な向上が結果として得られた(図11)。これらの結果は、脳へ運ばれた後、ウリジンがおそらく中間体CTPを経てCDPコリンのようなリン脂質前駆体へ変換され、その結果、脳細胞内リン脂質前駆体合成の向上により認知機能が増補されることを示している。
【0172】
実験例7
UMPの経口投与による加齢ラット脳内の神経伝達物質放出向上
【0173】
方法
【0174】
動物及びUMP補助食
マイクロダイアリシスの時点で22〜24ヶ月のオスの中年Fisher 344ラットを、National Institute on Aging (Harlan Sprague-Dawley, Indianapolice, IN) から入手した。ラットは、標準の飼育コンディションで個々に飼育し、12時間の昼夜サイクルに晒しつつ自由摂食で給餌した。各ラットは、おおよそ500mg/kg/日のUMP・2Na(ウリジンのLD50(腹腔)は約4.3g/kg)を摂取した。
【0175】
ラットは、コントロール実験食(Teklad Global 16% protein rodent diet, TD.00217, Harlan Teklad, Madison)、又はUMP・2Na(2.5%, TD.03398, UMP・2Na; Numico Research, the Netherlands)を補強した該実験食を6週間摂食する前に、7日以上施設に順応させた。
【0176】
ラットには、到着から少なくとも7日後まで実験食を与えなかった。そして彼らの体重を、摂食開始時(t=0)、1、2、4、6周後の時点で測った。t=0の時点で、ラットをランダムに二つのグループに分けた。当該グループ間に有意な体重差はなく(F1,11=3.03,p>0.05)、平均体重は455±5(N=13ラット)であった。数週間の繰り返し測定で、対象内因子として摂食期間(0、1、2、4、6周)による有意な体重変化(F4,44=2.65,p<0.05)が見られたが、UMP食(対コントロール)及びUMP×時間の相互関係のいずれも体重に影響しなかった(それぞれF1,11=0.01,F4,44=1.25、両者p>0.05)。
【0177】
本実験例に記載した実験は二回行われ、そのそれぞれで、7匹のコントロールラットと9匹のUMP食投与ラットを使った。
【0178】
薬品及び液剤
ドーパミン(DA)、ジヒドロキシフェニール酢酸(DOPAC)、ホモバニリン酸(HVA)、セロトニン(5−HT)、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)、及び3,4−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA、internal standard)をSigma(St. Louis, MO)から購入し、HClO(0.1M)に溶かして1mM原液を作成して、アリコートを−80℃にキープした。塩酸ケタミン(100mg/ml)をFort Dodge Animal Health(Fort Dorge, LA)から購入した。キシラジン(20mg/ml)はPhenix Scientiffic, Inc.(St. Joseph, MO)から得た。
【0179】
リンゲル液はNaCl147、KCl2.7、CaCl1.2、MgCl0.85mMを含んだものとした。高カリウム溶液用には、KClを80mMに増加すると共にNaClを69.7mMに減少させ、オスモル濃度を維持した。全液剤は、二重蒸留脱イオン水から生成し、Steriflip(登録商標、Millipore, Bedford, MA)で濾過した。
【0180】
生体内マイクロダイアリシス
ラットは、ケタミン及びキシラジン(それぞれ腹腔内80及び10mg/kg体重)で麻酔し、Kopf定位フレームに置いた。全外科手術用器具は熱泡乾燥滅菌剤又は70%エタノールで殺菌した。2mmトレフィン骨ドリルで頭蓋骨に小孔を穿孔した。CMA/11 14/04 Cupr probe(O.D. 0.24 mm, 4mm membrane, 6,000 Da, CMA microdialysis, Sweden)を、切歯棒を−5.0mmにセットして右線条体(Paxinos G et al, The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates, 2nd ed., Academic Press, San Diegoに記載されているように、ブレグマからAP=+0.5,ML=−3.0、硬膜からDV=−7.3mm)内に移植した。プローブは、歯科用セメント及び三本のアンカースクリューを使用して頭蓋骨に永久的に固定した。手術後のラットは、腹腔内に生理食塩水(5ml/kg)を注入し、目を覚ますまでヒーティングパッド上で37℃の体温をキープした。
【0181】
自由行動ラットは、液体スイベルを不要とする回転台上円形ボウルでかん流し(Wang L et al, Neurochem Int 42: 465-70, 2003参照)、手術後初日に環境に慣らさせた。実験は手術後おおよそ48時間で実施し、午前10:00から午後4:00までの間に遂行した。リンゲル液は、微量注入ポンプ(CMA/100)による1.5μl/分の定速で、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)樹脂管及び気密シリンジ(Exmire type 1, CMA)を使用して継続的にかん流させた。透析物は15分間隔で収集した。0.2M HClO及び0.1mM EDTAを含む抗酸化剤混合物5μlを、収集前にサンプリングバイアルに追加し、ドーパミン及びその代謝産物を保護した。最初の60分内のサンプルは分析から外した。続いて、連続3セッションのサンプルを収集した。最後のセッション(1.5時間、6サンプル)以外は、1時間(4サンプル)で収集した。順番は次の通り:セッション1(aCSF)、2(High K)、3(aCSF)。全サンプルは、クラッシュアイス上で収集して直ぐに凍結させ、HPLC分析まで−80℃を維持した。
【0182】
プロテイン及びモノアミンのための脳解剖
マイクロダイアリシス実験の後、ラットを、ケタミン及びキシラジン(80及び10mg/kg、腹腔内)で麻酔した。黒インクをプローブに通し、プローブ周囲の組織を染めた。ラットは、ギロチン断頭した。脳は、冷却した解剖台で即座に解剖した。左線条体は、液体窒素中に置いたエッペンドルフチューブ内で今後のプロテイン分析のために簡易凍結した。右線条体はさらに解剖し、目視観測でプローブの位置を測定した。線条体内にプローブが見つからなかった場合のデータは含めなかった。
【0183】
ラットの追加グループ(20ヶ月、コントロールとUMPの両方ともn=6)を6週間飼育した。これらのラットにはマイクロダイアリシスを実行しなかった。線条体(左及び右とも)を上記同様に収集し、ドーパミン及びその代謝産物の組織レベルを測定した。
【0184】
組織ドーパミンサンプルの抽出
線条体は、重さを量り、0.1M HClO及び1μM EDTAを含むHO1mlを用いて1分間アイス上のエッペンドルフチューブで均質化した。10秒のボルテックス後、アリコートを、ビシンコニン酸(Sigma, St. Louis, MO)プロテイン分析のために使用した。ホモジネートは、その後にUltrafree-MC centrifugal filter units(Millipore, 14,000rpm/15min/4℃)で濾過した。水相をHPLCにかける前に1:10希釈を行った。内部標準均質化前に、サンプルにDHBAを添加した。ドーパミン及びその代謝産物の濃度はHPLCで測定し、三回の繰り返し測定の値を平均してサンプルあたりプロテインの量に標準化した。
【0185】
ドーパミン及び代謝産物の分析
透析物及び組織のDA及び代謝産物は、ESA Microdialysis Cell (model 5014B, ESA, North Chelmsford, MA) を用いたESA Coulochem II 5100A detector (E=−175mV;E=+325mV;Eguard=350mV)を使用して測定した。移動相(MD−TM,ESA)は75mM NaHPO、1.7mMオクタンスルホン酸、100μl/Lトリエチルアミン、25μM EDTA、100%アセトニトリル、pH3.0を含む。流速は0.4mL/分。カラム(ESA MD 150,3×150mm、3μm、120Å)はカラムオーブンで40℃に維持した。サンプルは、Alltech 580 autosampler(Alltech, Deerfield, IL)にてHPLCに注入し、分析の間、冷却トレイにて4℃に維持した。データは、Alltech AllChrom (TM) data systemにより計算され、AllChrom plus (TM) softwareで分析された。タイムラインプログラムは、サンプルの分離及び検出の間に検出ゲインを変更することができ、1回の注入で、透析物における低DA及び高代謝産物濃度データを得ることができるようになっている。
【0186】
データ分析
データは、各ポイントで6〜9測定のサンプリング時間に従い表した(平均値±標準誤差(S.E.M.))。DA及び手代謝産物の基礎値は、K刺激前の最初の4連続サンプルの平均を基に決定し(透析物における平均値は10.2±0.4nM、n=22)、これを100%の値にあてた。統計は、Turkey's HSD事後検定を伴う二元配置ANOVA(処理×時間)を使用して実行した。一元配置ANOVAは、各時点における3グループのなかの差異を比較するために使用した。p値>0.05は統計的有意を評価するために使用した。ドーパミンの基礎レベルは、2回の反復実験の間で均質で、したがって対応するグループ内でプールした(F1,20=3.99,p>0.05)。透析物の基礎DAレベルは、K刺激前の4連続サンプルにおいて1時間平衡後も安定していた(F3,57=0.15、p>0.05、対象内因子としてサンプリング時間(0、15、30、45分)を使用した繰り返し測定を伴う一元配置ANOVA)。
【0187】
基礎DAレベル同様、透析物のDOPAC及びHVA基礎レベルは、612±14及び369±7nM(n=22ラット)であり、安定していた(それぞれF3,57=1.06、F3,57=0.84、両者p>0.05)。基礎DOPAC及びHVAレベルに対するUMP処理の効果はなかった(コントロール対UMP−1週対UMP−6週、それぞれF2,19=0.27、F2,19=0.03、両者p>0.05)。
【0188】
実験結果
【0189】
脳内神経伝達物質放出に対する経口投与ウリジン代謝産物の効果を評価するために、加齢ラットを制限環境において、コントロール食か2.5%UMP補助食のどちらかを1又は6週間与えた。UMP補給は、処理グループ中の透析物における基礎DAレベルに影響しなかった(コントロール対UMP−1週対UMP−6週、F2,19=0.98)。透析物中のDA濃度は10.2±0.4nM(n=22ラット)。
【0190】
誘発線条体DA放出(高K溶液かん流に続く)に対するUMP補助食の効果は、図12Aに示している。統計的に有意な差(F2,266=3.36)が、コントロール、UMP−1週、及びUMP−6週処理グループの透析物中DAレベルに見られた。事後多重比較により、コントロールとUMP−6週のグループ間に有意な差が現れた。データをさらに3セクションに分けると(前、K誘発、後)、コントロールとUMP−6週のグループ間に、283±9%から341±21%という、K誘発DA放出の有意な増強が見られた(図12B)。UMP−1週グループは、コントロールグループに対するDA放出の向上を示しているが(316±15%)、この向上が顕著であるとは言えない。
【0191】
次に、線条体透析物におけるDA代謝産物3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)及びホモバニリン酸(HVA)に対するUMP補助食の効果を評価した。K脱分極は、全グループにおいてベースラインレベルに比べ、DOPAC(図13A)及びHVA(図13B)を65±4%及び51±4%へ顕著に減少させた(それぞれF2,95=51.90、F2,95=92.74、全p<0.01)。処理グループのK減少DOPAC及びHVA間に差はなかった(それぞれF2,266=1.01、F2,266=1.20)。液剤を、105分で高K支援から通常リンゲル液へ変えると、透析物におけるDOPAC及びHVAレベルの両方が向上し、変更後30分で最大レベルに達した(DOPAC169±9%、HVA149±5%)。しかし、3グループ間で有意な差は見られなかった。
【0192】
さらに、UMP食は、線条体のニューロンからの神経伝達物質アセチルコリンの基礎放出向上を示す(図14)。
【0193】
これらの結果は、(a)経口投与ウリジンが脳内の神経伝達物質放出を改善し、(b)ウリジンの媒介による脳機能の増強が、ジャービルに限らない多種の現象であり、(c)ウリジンによる脳機能の増強が、加齢認知機能障害に対する生物学的に関連した動物モデルを現す。
【0194】
実験例8
UTPの経口投与による加齢ラット脳内NF−70及びNF−Mレベルの向上
【0195】
方法
【0196】
データ分析
データは、各グループ6〜16測定のUMP処理に従って表された(neans±S.E.M.)。Turkey's HSD事後検証を伴う一元配置ANOVAを処理間の差を比較するために使用し、Newman-Keuls multiple range testを図16のデータのために使用した。
【0197】
ウエスタンブロッティング
線条体組織を、200μl溶解バッファ(60mM Tris-HCl, 4% SDS, 20% glycerol, 1mM dethiothreitol, 1mM AEBSF, 8μM aprotinin, 500μM bestatin, 15μM E64, 200μM leupeptin, 10 μM pepstatin A)を含んだエッペンドルフチューブに置いた。サンプルは、超音波分解、煮沸(10分)、遠心分離にかけた(室温1分間14,000g)。上澄みをクリーンチューブに移し、Bicinchoninic Acid assay (Sigma, St. Louis, MO) を使用して総プロテイン量を測定した。
【0198】
プロテインの等量(40μgプロテイン/レーン)を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4-15% SDS PAGE; Bio-Rad, Hercules, CA)にロードした。ゲル電気泳動の前に、ブロモフェノールブルー溶液(0.07%)を各サンプルに追加した。プロテインが分離され、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(immobilon-P, Millipore)上に移し、1時間、5%ウシ血清アルブミン(Tris-buffered saline/0.15% Tween 20)で封鎖した。Tris-buffered saline (TBST) で310分洗浄後、ブロットを、NF−70及びNF−M(それぞれ1:2000、1:5000、Calbiochem, La Jolla, CA)を含む関心のあるプロテインに対する各種抗体をもつTBSTで、オービタルシェーカー上4℃の一晩、培養した。それぞれ製造元から提示されているようにECL system(Amersham, Piscataway, NJ)及びKodak X-AR filmを使用して、プロテイン−抗体錯体を検出し可視化した。フィルムは透明アダプタをもつSupervista S-12 scanner(UMAX Technologies, Freemont, CA)を用いてデジタル化した。分析は、パブリックドメインNIH Image program (NIH V.1.61) を使用して実施した。
【0199】
実験結果
【0200】
脳内新膜の生成を増補し得るウリジンレベルが向上しているかどうかを評価するために、ニューロフィラメントのNF−70及びNF−Mのレベル、神経突起伸長のバイオマーカー、について、実験例7の実験によるラットの脳において評価した。図15に示すように、6週間のUMP補助食が、NF−70(図15A)及びNF−M(図15B)のレベルを、それぞれコントロールレベルに対し182±25%(F2,31=6.01、p<0.05)及び221±34%(F2,21=8.86、p<0.01)へ、顕著に向上させた。UMP食1週間摂取では、これら二つのプロテインについて、コントロールグループと比較して統計的に有意なレベル向上は見られなかった。線条体におけるNF−70とNF−Mのレベルは、それぞれコントロールレベルに対し、204±36%及び221±34%に向上した。
【0201】
実験例9
ウリジン又はUTPの経口投与による神経突起伸長及び分岐とPC12細胞内NF−70及びNF−Mレベルの向上
【0202】
方法
【0203】
データ分析
データは、mean±SEMとして表した。分散分析(ANOVA)を、グループ間の差を決定するために使用した(有意レベル、p<0.05)。差が検出されたときは、平均値をNewman-Keuls multiple range test を使用して分離した。
【0204】
神経突起伸長実験
PC12細胞は、コラーゲンコートの60mm培養皿で1%ウシ胎仔血清を含むMEM内でまばらに皮膜した。実験グループは、次の通り。ウリジン、ウリジン三リン酸塩、シチジン、reactive blue 2、スラミン、及びPPAD(Sigma, St. Louis, MO)。全処理は、皮膜後24時間実施した。処理期間終了時、OpenLab ソフトウエアを使用し、Zeiss Axioplan 2 位相差顕微鏡で画像を取得した。6デジタル画像が各皿からキャプチャされ、トータルで処理グループあたり18〜24画像となった。各実験の各グループでおおよそ300細胞が計測された。実験は3部構成で実施した。神経突起分岐及び神経突起長を含む神経突起の数量化は、実験グループに左右されない1以上のリサーチャーにより実施した。神経突起長は、パブリックドメインNIHソフトウエア“Image J”を使用して測定した。細胞体の直径より長い経路を神経突起としてカウントした。経路生産細胞だけを分析した。
【0205】
細胞内UTP及びCTPの検出
細胞内UTP及びCTPのレベルは、5mM NaHPO,pH2.65をバッファAとして使用する他は、実験例6同様のHPLCにより分析した。
【0206】
実験結果
NGF誘発神経突起伸長におけるウリジン処理(10〜200μM)の効果を次に実験した。NGFの欠乏で、PC12細胞は神経突起を成長させなかった(1%以下)。NGF欠乏下のウリジン処理(50μM、2又は4日)は、神経突起の生成を起こさなかった。NGF存在下におけるウリジン(50〜200μM)は、4日処理後に細胞あたり神経突起数を強化した(図16A〜C)が、2日処理又は低ウリジン濃度(10,25μM)では効果が見られなかった。NGFに晒した細胞のシチジン処理もまた、神経突起伸長における効果を示さなかった。
【0207】
ウリジンが細胞あたり神経突起数を向上させるので、NGF存在における神経突起分岐及び長さに対するウリジン効果も評価した。ウリジン(50μM)及びNGFによる4日処理後、細胞あたり神経突起分岐ポイント数は、NGFのみによる処理細胞に比べ、有意に(p<0.01)向上した(図16D)。ウリジンは、NGF分化細胞における平均神経突起長に有意な影響を与えなかった。
【0208】
ニューロフィラメントプロテインは神経突起中に豊富で、したがって、神経突起数向上は、ニューロフィラメントプロテインの発現向上に関連付けられると思われる。そこで、NGF単独又はNGF+ウリジン(50μM)によるPC12細胞の4日処理後のNF−70(70kD)及びNF−Mレベルを測定した(図16E)。NF−70及びNF−Mの発現は、NGF単独処理の細胞に比べ、ウリジン処理後に有意に(それぞれp<0.01、p<0.001)向上した。NGFの欠乏下でのウリジン処理は、ニューロフィラメントプロテインのレベルにも影響を示さなかった。したがって、ウリジンは、PC12細胞における神経突起伸長を増補する。
【0209】
NGF欠乏下の外因性ウリジン追加は、PC12細胞における細胞内UTP及びCDPコリンレベルを向上させる(実験例6)。ウリジンが、NGF存在下でUTPとCTPレベルのどちらに影響するか決定するために、UTP及びCTPのレベルを、NGF、NGF存在下でヌクレオチドなし(コントロール)、ウリジン、シチジン、又はCTPで2日間処理したPC12細胞で測定した。ウリジン(50μM)は、NGF単独処理を受けた細胞に比べ、UTP及びCTPの両レベルを有意に(p<0.05)向上させた(それぞれ図17A−B)。UTP(100μM)又はシチジン(50μM)は、いずれのヌクレオチドの細胞内レベルにも有意な影響は見られなかった。
【0210】
UTPが神経突起伸長に対するウリジンの効果を仲介するかどうかを確認するために、PC12細胞を、NGF及び各種用量のUTPで処理した。処理4日後、UTP(10及び50μM)は、NGF単独処理細胞に比べ、神経突起伸長を有意に(p<0.01)強化した。したがって、ウリジン又はUTPが神経突起伸長を増補する。
【0211】
要するに、ウリジン又はUTP補助食は、ラットの脳において二つの主なニューロフィラメントプロテインのレベルを向上させ、PC12細胞の神経突起伸長を誘発すると言える。
【0212】
実験例10
NGF分化PC12細胞のピリミジン反応P2Y2、P2Y4、及びP2Y6レセプタ発現
【0213】
方法
【0214】
P2Yレセプタの検出
rabbit anti-P2Y2、anti-P2Y4(両者Calbiochem)、又はrabbit anti-P2Y6(Novus Biologicals, Litteleton, CO)を使用して、実験例8同様にウエスタンブロットを実施した。
【0215】
免疫細胞化学
PC12細胞は、コラーゲンを塗布した12mmガラスカバースリップ(A. Daigger & Co., Vernon Hills, IL)で成長させたことを除いて、上記同様に処理した。プロテインは、免疫蛍光を使用して可視化した。簡単に言うと、細胞は、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.25%Triton X-100で透過し、10%ノーマルヤギ血清にてブロックし、適切な抗体(mouse anti-NF-70及びrabbit anti-P2Y2、rabbit anti-P2Y4、又はrabbit anti-P2Y6のいずれか)にて一晩培養した。P2Y2及びP2Y4の可視化に対して、コントロール培養物を、免疫染色が固有のものであることを裏付けるために、一次抗体プラスコントロール抗原で培養した。コントロール抗原は、P2Y6レセプタに対し有効ではなかった。次に細胞は、蛍光色素結合二次抗体で1時間培養し(goat anti-rabbit ALEXA 488及びgoat anti-mouse ALEXA 568, Molecular Probes, Eugene, OR)、DAPI(Vector Laboratories, Burlingame, CA)をもつか又はもたないマウンティングメディアでガラススライドにマウントした。一次抗体に提供したコントロール抗原は、免疫染色が固有であることを裏付けるために使用した。デジタル画像は、OpenLabソフトウエアを用いたZeiss(Oberkochen, Germany) Axioplanマイクロスコープで、Zeiss Plan-Neofluor 40x oil-immersion objectiveを使用して得た。
【0216】
実験結果
【0217】
UTPは、ピリミジン活性化したP2Yレセプタのクラス、すなわちP2Y2、P2Y4,及びP2Y6の作用薬である。これらレセプタが細胞外UTPの神経突起伸長に作用するメカニズムに参加しているのかどうか、レセプタがPC12細胞に発現するかどうか、そして、NGFへの暴露でその発現が変わるのかどうかを見るために、PC12細胞を0〜7日間NGFで処理し、レセプタのレベルを測定した。NGF処理3日後、P2Y2レセプタの発現が最大レベルに達し、これは、NGF処理3日より前の場合よりも有意に(p<0.001)高かった(図19A)。P2Y2の可視化及び局在化のために、P2Y4及びP2Y6レセプタも同様に、細胞を、NGFの存在下又は欠如下で4日間成長させ、そして、神経マーカーNF−70及びP2Y2、P2Y4、又はP2Y6のための免疫染色を施した(それぞれ図19Bの左から右)。これら三つのレセプタはすべて、NGF分化PC12細胞で多く発現した。さらに、P2Y2は、ニューロンマーカーMAP−2で共に局在化した(図20)。NGFの欠如において、レセプタプロテインの発現は、免疫染色では検出されなかった。加えて、ウリジンの存在は、NGF単独に晒した細胞での発現量に比べても、レセプタの発現に作用しなかった。したがって、P2Y2、P2Y4、及びP2Y6レセプタは、神経細胞には存在するが、その前駆体には存在しない。
【0218】
実験例11
NGF誘発神経突起伸長のウリジン効果に対するP2Yレセプタの拮抗作用による阻害
【0219】
P2Yレセプタによる信号伝達がウリジンによる神経突起伸長の誘発を仲介するかどうか確かめるために、PC12細胞を、NGF、ウリジン(100μM)、及びP2Yレセプタ拮抗薬のスラミン(30μM)、ピリドキサール−リン酸−6−アゾフェニル−2’,4’ジスルホン酸(PPADS、30μM)、及びreactive blue(RB−2、10μM)で4日間培養した。各拮抗薬は、NGF刺激神経突起伸長のウリジン強化を有意に(p<0.05又は0.001)ブロックした(図21)。PC12細胞のウリジン摂取を阻害するP2Yレセプタ拮抗薬はなかった。これらの結果は、P2Yレセプタを介した信号伝達が神経突起伸長のウリジン誘発を仲介することを示している。
【0220】
実験例12
ホスファチジルイノシトール(IP)信号伝達のUTP及びウリジンによる刺激
【0221】
方法
【0222】
代謝標識及びPI代謝回転分析
PI代謝回転の分析を、(Nitsch RM et al, J Neurochem 69: 704-12, 1997)の記載に基づき実施した。簡単に言うと、細胞は、無血清MEMにおけるmyo-[2-H]inositol(17.0 Curie/mmol; Amersham Biosciences)の1.25マイクロキュリー(μCi/dish)で36時間代謝標識し、Hank's balanced salt solution(HBSS)で二回洗浄し、HBSS内10mM塩化リチウムで15分処理した。60分37℃の10mMリチウムの存在下で薬剤を添加した。細胞は氷冷メタノールで溶解させ、脂質は、クロロホルム/メタノール/水(体積で2:2:1)を用いた抽出で除いた。標識した水溶性イノシトールリン酸は、AG1−X8カラム(Bio-Rad)、溶離液としての1Mギ酸アンモニウム及び0.1Mギ酸を使用したイオン交換クロマトグラフィーにより、free[H]inositolから分離した。放射能は、液体シンチレーションスペクトロメトリにより数量化した。
【0223】
実験結果
【0224】
P2Y2、P2Y4、P2Y6レセプタは、ホスホリパーゼC/ジアシルグリセロール/イノシトール 三リン酸(PLC/DAG/IP3)信号伝達経路を活性化する。神経突起伸長を促進するウリジン又はUTPの濃度がこれらレセプタを活性化させるかどうか見るために、NGF分化PC12細胞を[3H]-inositol(50μM)又はUTP(10,100μM)で1時間標識し、放射性標識したIPの代謝回転測定によりIP信号伝達を評価した(図22)。IPの形成は、100μM UTP(p<0.05)の追加及び50μMウリジン(p<0.01)により、有意に向上した。P2Yレセプタ拮抗薬PPADS(100μM)は、UTPによるIP信号伝達の刺激を有意に(p<0.05)ブロックした。これらは、UTPが、P2Yレセプタ仲介によるIP信号伝達経路の刺激を通した神経突起伸長を促進することを示している。
【0225】
実験例10〜12の結果は、ウリジンとその代謝産物による神経突起伸長刺激、すなわちP2Yレセプタの活性化による、メカニズムを提示している。少なくともP2Yレセプタの作用の一部がIP信号伝達により仲介される。総合すれば、実験例7〜12により得られた結果は、ウリジン治療が、各種メカニズム:(1)神経伝達物質放出の強化、(2)CTPを通した膜リン脂質の前駆体としての作用、(3)UTPを通したP2Yレセプタ結合細胞内信号伝達経路の活性化、による神経伝達物質の強化で認知機能を改善し得るさらなる裏付けを提供している。メカニズム(2)及び(3)は、神経突起形成を向上させるようにも働く。
【0226】
実験例13
各種におけるUMP補助食の学習及び記憶強化
【0227】
材料及び実験方法
【0228】
モリスの水迷路
加齢ラット(18ヶ月、500g)に、コントロール食又は2.5%UMP食含有食を6週間摂食させた。これらラットを、プラットホームを隠した直径6フィートの水プールの4等分個所の各個所に順に入れて、各トライアル90秒の間にプラットフォームに泳ぎ着くかどうか試し、泳いだ時間「平均脱出時間」を記録した。4トライアルのセットを4日連続で繰り返した。プラットホームは各日とも同じ位置とした。このモリスの水迷路として知られたテストは、空間記憶の指標となる。
【0229】
食事パレット学習分析
コントロール又は任意のUMP含有食(0、0.1、0.5又は2.5%)を3週間与えたオスの若年成人ジャービットについて、各出口に小さな食事パレットを用意した4本の枝通路をもつ中央室を備えた放射状迷路でテストした。テスト前は動物に一晩絶食させ、そして、中央室においた動物が180秒で全パレットを見つけられるか試した。パレット発見に要した時間が短いほど、学習及び空間記憶が改善されているこを示す。
【0230】
作業記憶及び参照記憶分析
コントロール又は0.1%UMP食を4週間与え、上記の食事パレットをすべて発見できるように訓練した10匹のジャービルグループに対し、上記迷路の枝通路2本だけに(常に同じ2本)食事パレット報酬を用意した修正テストを実施した。このテストにおいて、ジャービルが1日の内に一度訪れた枝通路を再訪すると作業エラーを1とする。参照記憶は、ジャービルが(修正テストで)食事パレットの無い枝通路を訪れると1とする。
【0231】
実験結果
【0232】
前の実験例で、経口投与ウリジンがいくつかの方法で働いて神経細胞の能力を改善し増補することを示した。本実験例では、ウリジンが認知機能を増補することを直接示す。加齢ラット(18ヶ月、500g)に、コントロール食又は2.5%UMP・2Na食を6週間与え、空間記憶の指標となるモリス水迷路を使用して記憶をテストした。UMP・2Na強化食を投与したラットは、プラットホームのある位置に到達するのに要した時間について、統計的に有意な減少を見せ(図23)、これは、UMPが空間記憶を強化することを示す。
【0233】
経口投与ウリジンの学習及び空間記憶に対する効果についてもジャービルで実験した。コントロール又は任意のUMP含有食(0、0.1、0.5又は2.5%)を3週間与えたオスの若年成人ジャービットについて、各出口に小さな食事パレットを用意した4本の枝通路をもつ中央室を備えた放射状迷路でテストした。テスト前は動物に一晩絶食させ、そして、中央室においた動物が180秒で全パレットを見つけられるか試した。パレットの発見に要する時間を減少させるには、空間学習を必要とする。UMP補助食の用量に依存して、ジャービルがパレットを発見するために要した時間が減少した(図24)。
【0234】
さらに、経口投与ウリジンの作業記憶及び参照記憶に対する効果を実験した。コントロール又は0.1%UMP食を4週間与え、上述の食事パレットをすべて発見できるように訓練したジャービルに対し、作業記憶及び参照記憶を測定する修正テストを実施した。UMP補助食を与えたジャービルは、作業記憶エラー(図25A)及び参照記憶エラー(図25B)の両方で回数を減少させていることが裏付けられている。
【0235】
これらの結果は、(a)ウリジン補助食が学習及び各種の記憶(空間、作業、参照)を改善すること、(b)効果は特定の種に限られないこと、(c)効果は加齢による認知機能障害の生物学的に関連したモデルに現れること、を示している。
【0236】
要するに、本結果は、経口投与ウリジンが、神経学的信号伝達、神経細胞構造、及び認知機能に積極的に関与していることを示している。これらの結果はまた、ウリジンがその効果を発揮するいくつかのメカニズムにも関わっている。
【0237】
実験例14
ウリジン及びコリンによる神経伝達物質放出の向上
【0238】
材料及び実験方法
【0239】
脳切片の用意
オスのSprangue-Dawleyラット、9〜11ヶ月を、ケタミン(85mg/kg体重、筋肉注射)で麻酔し、4℃に冷却した部屋で断頭した。脳は迅速に取り出し、1mMケタミン及び15μ/mlエゼリンを含む冷却した(4℃)酸化Krebsバッファ(119.5 mM NaCl, 3.3 mM KCl, 1.3 mM CaCl, 1.2 mM MgSO, 25 mM NaHCO, 1.2 mM KHPO, 11 mM glucose, 0.03 mM EDTA, pH 7.4)内に置いた。残った髄膜及び脈絡叢を除いた後、線条体、海馬、及び皮質の30μm切片をMcIllwain tissue chopperで即座に用意し、3回洗浄して、カスタムメイドの表面かん流チャンバ(Warner Instrument, Hamden, CT)内に置いた。
【0240】
表面かん流及び電気刺激
切片は、上記の酸化Krebs/ケタミン/エゼリンバッファ、流速0.8ml/分の表面かん流チャンバにより37℃で60分平衡に保った。表面かん流チャンバは、電気刺激装置(model S88; Grass Instruments)に接続した二つの相対した銀マッシュ電極を含んでいる。カスタムメイドの極性反転デバイスを、チャンバの分極防止と、各パルス開始後50マイクロ秒の電流及び電圧を監視して一定のチャンバ抵抗を確保するために、使用した。平衡期間後、切片は、20μMコリン、25μMシチジン、及び25μMウリジンのいずれか又は全部が存在又は欠如したKrebs/ケタミン/エゼリンバッファの高Kバージョンでかん流することで消極した。かん流液は、2時間の期間中収集し、アセチルコリン分析した。値は、切片のプロテイン含有で標準化した。
【0241】
実験結果
【0242】
アセチルコリン放出に関するウリジン及びコリンの効果を見るために、線条体、海馬、及び皮質(n=8)の切片を、コリンの存在又は欠如下で培養して消極し、アセチルコリン放出を測定した。いくつかのグループにおいて、シチジン又はウリジンがその上に追加された。コリンはウリジンの有無に関係なくアセチルコリン放出を向上させた(図26)。
【0243】
この結果は、ニューロンが繰り返し刺激されてアセチルコリンを放出するとき、膜リン脂質(つまりPC)のコリン在庫補充により、放出される神経伝達物質の量をコリンが向上させることを示している。上記実験例は、シチジン新PCに使用されるCDPコリンの合成をウリジンが増補することを示している。実験例の結果をあわせると、新しいリン脂質を合成する神経の能力及びそれによる神経伝達物質の繰り返し放出が、コリンと一緒のウリジンの追加によって、添加又は相乗作用の手法で向上すると考えられる。
【0244】
実験例15
消極を繰り返した後の神経伝達物質追加放出のウリジン及びコリンによる向上
【0245】
脳切片を、この場合、8サイクル又は刺激と休みを20分期間交互にして、上記実験例に記載のように繰り返し刺激する。全グループにおいて、神経伝達物質の放出量が各連続した刺激期間で減少したが、この減少は、ウリジン又はコリンいずれかの存在下で有意に低下する。この効果は、ウリジン及びコリン両方の存在で強化される。したがって、繰り返し刺激後の神経伝達物質放出量はウリジン又はコリンの存在で向上し、ウリジン及びコリンの存在でさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】標準HPLC法で試験したシチジンとチロシンのピーク(6.59)の一致を示す図。
【図2】溶離液(バッファ)をメタノールと共に使った修正HPLC法で試験したシチジン(3.25)とチロシン(2.92)の異なったピークを示す図。
【図3】経口UMP投与で人の血中ウリジンレベルが上昇することを示しており、ウリジンの250mg/kg(体重)経口投与後におけるプラスマのウリジン(100%値に設定)対シチジンの比率を表す図。
【図4】経口ウリジン投与でジャービル(アレチネズミ)の血中ウリジンレベルが上昇することを示しており、シチジン又はウリジンの疑似投与又は投与後60分のプラスマウリジンレベルを表す図。**はp<0.01対疑似投与コントロール、##はp<0.01対シチジン。
【図5】経口UMP投与でジャービルの血中ウリジンレベルが上昇することを示しており、水又はUMPを投与したときからの各時点においてプラスマウリジンレベルを表す図。
【図6】UMP補足食でジャービルの血中ウリジンレベルが上昇することを示しており、表示した割合のUMPを含んだ食物を与えたジャービルにおけるプラスマウリジンレベルを表す図。
【図7】経口ウリジン投与で脳ウリジンレベルが上昇することを示しており、シチジン又はウリジンの疑似投与又は投与後60分の脳ウリジンレベルを表す図。**はp<0.01対疑似投与コントロール、##はp<0.01対シチジン。
【図8】経口UMP投与で脳ウリジンレベルが上昇することを示しており、水又はUMPを投与したときからの各時点において脳ウリジンレベルを表す図。
【図9】ウリジンが脳内で容易にシチジンへ変わることを示しており、250mg/kg(体重)のウリジンを経口投与した後のプラスマ(A)及び脳(B)におけるウリジン(100%)に対するシチジンの比率を表す図。
【図10】経口UMP投与で脳CDP−コリンレベルが上昇することを示しており、水又はUMPを投与したときからの各時点において脳CDP−コリンレベルを表す図。
【図11】神経細胞株におけるCDP−コリンの細胞内レベルがウリジンにより向上することを示しており、表示した濃度のウリジンと共に6時間培養した細胞で、ピコモル(pmol)CDP−コリン/mgプロテインとして表示した6皿(dish)の平均値の標準誤差(means ± SEM)を表す図。実験は3回繰り返した。*はp<0.05。
【図12】線条体透析物中のカリウム誘発ドーパミン(DA)放出がUMP食事補給により著しく向上することを示す図。(A)K誘発線条体DA放出に対する食事UMP補給の効果で、データは、各ポイントで6から9測定を計算したもの(means ± SEM)。カリウム刺激前の4測定の平均による値が100%に設定されている。(B)UMP治療グループごとに得られたデータ。*はp<0.05対相応コントロール。
【図13】UMP食事補給を伴った線条体透析物におけるDOPAC及びHVAレベルに対するカリウムの効果を示す図。(A)がDOPAC、(B)がHVA。*はp<0.05対相応コントロール。
【図14】UMP治療に伴うアセチルコリン基底(basal)濃度の向上を示しており、平均値の標準誤差(means ± SEM)で表す図。*はp>0.05。
【図15】対側性線条体における神経フィラメントプロテインレベルに対するUMP食事補給の効果を示す図。(A)がNF−70、(B)がNF−M。*はp<0.05、**はp<0.01対相応コントロール。
【図16A】ウリジン治療でPC12細胞の神経突起伸長が強化されることを示しており、ウリジン(50μM)存在下のNGF(50ng/ml)と非存在下のNGF(50ng/ml)とで4日間治療したPC12細胞の図。
【図16B】ウリジン治療でPC12細胞の神経突起伸長が強化されることを示しており、2日及び4日治療後の細胞あたり神経突起数の図。値は平均値の標準偏差(means + SEM)、**はp<0.01対NGF治療。
【図16C】ウリジン治療でPC12細胞の神経突起伸長が強化されることを示しており、異なる濃度のウリジン(50,100,200μM)を加えたNGFによる2日又は4日後の細胞あたり神経突起数の図。N=NGF、U=ウリジン、値は平均値の標準偏差(means + SEM)。
【図16D】ウリジン治療でPC12細胞の神経突起伸長が強化されることを示しており、各細胞に対する分岐点数の図。N=NGF、U=ウリジン、値は平均値の標準偏差(means + SEM)、**はp<0.01対NGF治療。
【図16E】ウリジン治療でPC12細胞の神経突起伸長が強化されることを示しており、ウエスタンブロッティングを用いて決定した構造タンパク質(プロテイン)NF−70及びNF−Mのレベルの図。N=NGF、U=ウリジン、値は平均値の標準偏差(means + SEM)、***はp<0.001対NGF治療。
【図17】2日間NGFに晒したPC12細胞におけるUTP及びCTPの細胞内レベルがウリジン治療により向上することを示す図。ウリジン治療(50μM)によって(A)細胞内UTPレベル及び(B)細胞内CTPレベルが格段に向上する。N=NGF、U=ウリジン、C=シチジン、値は平均値の標準偏差(means + SEM)、*はp<0.05対NGF治療。
【図18】UTP治療で神経突起伸長が向上することを示す図。NGF及びUTPによる4日間のPC12細胞の治療で、NGF単独治療に比べ、細胞あたり生成される神経突起数が格段に向上する。値は平均値の標準偏差(means + SEM)、**はp<0.01。
【図19】NGF分化PC12細胞がピリミジン感受性P2Yレセプタを発現することを示す図。(A)各種期間NGFで細胞を培養した後のP2Y2、P2Y4、P2Y6レセプタ発現のレベル、(B)NGF治療の4日後、細胞を固定し、NF−70(赤)及びP2Yレセプタ(緑)を免疫蛍光を使用して可視化したもの。左側がP2Y2、中央がP2Y4、右側がP2Y6。値は平均値の標準偏差(means + SEM)、***はp<0.001。
【図20】P2Y2レセプタをニューロンマーカMAP−2で再特定した図。左側がP2Y2、中央がMAP−2、右側が合成。
【図21】P2Yレセプタ拮抗薬が神経突起伸長に対するウリジンの効果を抑制することを示す図。細胞は、NGFと、ウリジン(100μM)、P2Yレセプタ拮抗薬PPADS、スラミン、RB−2との各種組み合わせで4日間治療した。値は平均値の標準偏差(means + SEM)、***はp<0.001対NGF治療、#はp<0.05、###はp<0.001対NGF+ウリジン治療。
【図22】UTP及びウリジンによってホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転が刺激されることを示す図。細胞は、一晩で[H]イノシトールで代謝標識され、表示した濃度のUTP、ウリジン又はUTP+PPADSで刺激され、そして、PI分解から抽出された放射性同位元素標識化イノシトールリン酸がシンチレーション計測により測定された。値は平均値の標準偏差(means + SEM)、*はp<0.05、**はp<0.01対コントロール、#はp<0.05対100μMのUTP治療。
【図23】経口UMPでラットの学習及び空間記憶が改善されることを示す図。制限環境においた18ヶ月のラットにコントロール(対照)食又はUMP食を6週間摂取させた後、1日4回ずつ4日間、モリス水迷路を使用した実験を行った。プラットフォーム到達平均時間は秒表示。
【図24】経口UMPでジャービルの学習及び空間記憶が改善されることを示す図。コントロール(対照)食又は表示量のUMP含有食を与えたジャービルの学習及び空間記憶は、放射状迷路で実験した。結果は、3分をデッドラインとした残り時間で示している。
【図25】経口UMPで作業記憶及び参照記憶が改善されることを示す図。コントロール(対照)又は0.1%UMP食を4週間与えたジャービルの記憶について、作業記憶失敗(A)及び参照記憶失敗(B)の両方を測定できるように、図24に示した実験を改変して実験した。ダイヤ印がコントロールジャービスから得られたデータ、三角印が0.1%UMP食を与えたジャービルから得られたデータを示す。
【図26A】線条体切片における神経伝達物質放出がウリジン及びコリンで向上することを示す図。データは、2時間あたりのナノモル(nmol)/mgプロテインで表してあり、平均値の標準偏差(means ± SEM)、*=p<0.001対コリン非存在値。図中の最初のシリーズがコリン非存在での実施、次のシリーズがコリン存在での実施。その各シリーズにおける棒グラフは、左から右へ、付加化合物なし、シチジン付加、ウリジン付加(それぞれ適量をコリンに付加)。
【図26B】海馬切片における神経伝達物質放出がウリジン及びコリンで向上することを示す図。データは、2時間あたりのナノモル(nmol)/mgプロテインで表してあり、平均値の標準偏差(means ± SEM)、*=p<0.001対コリン非存在値。図中の最初のシリーズがコリン非存在での実施、次のシリーズがコリン存在での実施。その各シリーズにおける棒グラフは、左から右へ、付加化合物なし、シチジン付加、ウリジン付加(それぞれ適量をコリンに付加)。
【図26C】皮質切片における神経伝達物質放出がウリジン及びコリンで向上することを示す図。データは、2時間あたりのナノモル(nmol)/mgプロテインで表してあり、平均値の標準偏差(means ± SEM)、*=p<0.001対コリン非存在値。図中の最初のシリーズがコリン非存在での実施、次のシリーズがコリン存在での実施。その各シリーズにおける棒グラフは、左から右へ、付加化合物なし、シチジン付加、ウリジン付加(それぞれ適量をコリンに付加)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における認知機能を改善する方法であって、
対象者にウリジン又はそのソースを投与することによって、該対象者の認知機能を改善することを特徴とする方法。
【請求項2】
対象者における認知機能を改善する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者の認知機能を改善することを特徴とする方法。
【請求項3】
対象者における認知機能の低下を治療又は改善する方法であって、
対象者にウリジン又はそのソースを投与することによって、該対象者における認知機能の低下を阻害又は防止することを特徴とする方法。
【請求項4】
対象者における認知機能の低下を治療又は改善する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者における認知機能の低下を阻害又は防止することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記低下は、循環器疾患、神経変性病、又は精神病に起因するものであることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記認知機能が、記憶、学習、知能、又は精神的適合であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象者における神経機能を改善する方法であって、
ウリジン又はそのソースを対象者に投与することによって、該対象者における神経機能を改善することを特徴とする方法。
【請求項8】
対象者における神経機能を改善する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者における神経機能を改善することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記神経機能が、シナプス伝達又は神経伝達物質の機能であることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の方法。
【請求項10】
対象者の脳におけるシチジン、シチジン三リン酸、又はCDPコリンのレベルを向上させる方法であって、
ウリジン又はそのソースを対象者に投与することによって、該対象者の脳におけるシチジン、シチジン三リン酸、又はCDPコリンのレベルを向上させることを特徴とする方法。
【請求項11】
対象者の脳におけるシチジン、シチジン三リン酸、又はCDPコリンのレベルを向上させる方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者の脳におけるシチジン、シチジン三リン酸、又はCDPコリンのレベルを向上させることを特徴とする方法。
【請求項12】
神経伝達物質を合成する対象者の脳細胞又は神経細胞の能力を向上又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースを対象者に投与することによって、神経伝達物質を合成する該対象者の脳細胞又は神経細胞の能力を向上又は強化することを特徴とする方法。
【請求項13】
神経伝達物質を合成する対象者の脳細胞又は神経細胞の能力を向上又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、神経伝達物質を合成する該対象者の脳細胞又は神経細胞の能力を向上又は強化することを特徴とする方法。
【請求項14】
シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる方法であって、
シナプスに隣接した神経細胞にウリジン又はそのソースを接触させることによってリン脂質又はその前駆体の合成を強化し、該シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させることを特徴とする方法。
【請求項15】
シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させる方法であって、
シナプスに隣接した神経細胞にウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を接触させることによってリン脂質又はその前駆体の合成を強化し、該シナプスにおける神経伝達物質のレベルを向上させることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記神経伝達物質がアセチルコリンであることを特徴とする請求項9、請求項12、請求項13、請求項14、又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の合成を刺激又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースを対象者に投与することによって、該対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の合成を刺激又は強化することを特徴とする方法。
【請求項18】
対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の合成を刺激又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者の脳細胞又は神経細胞の膜の合成を刺激又は強化することを特徴とする方法。
【請求項19】
対象者の神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースを対象者に投与することによって、該対象者の神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化することを特徴とする方法。
【請求項20】
対象者の神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化する方法であって、
ウリジン又はそのソースとコリンとを含む組成物を対象者に投与することによって、該対象者の神経細胞の神経突起伸長を刺激又は強化することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記投与によってリン脂質の生成が強化されることにより、前記膜の合成又は前記神経突起伸長を刺激又は強化することを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウリジンは、ウリジン−5’−モノホスフェイト、ウリジン−5’−ジホスフェイト、又はウリジン−5’−トリホスフェイトであることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ソースは、シチコリン(CDPコリン)であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記コリンは、コリン塩であることを特徴とする請求項2、請求項4、請求項5、請求項6、請求項8、請求項9、請求項11、請求項13、請求項15、請求項16、請求項18、請求項20、請求項21、請求項22、又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウリジン又はその代謝産物が、前記対象者の神経細胞又は脳細胞におけるP2Yレセプタの刺激によって効果を仲介することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項11、請求項22、又は請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ウリジン又はその代謝産物が、神経細胞又は脳細胞におけるP2Yレセプタの刺激によって効果を仲介することを特徴とする請求項12〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記代謝産物は、ウリジン−5’−トリホスフェイトであることを特徴とする請求項25又は請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【公開番号】特開2013−64026(P2013−64026A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7080(P2013−7080)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2007−532388(P2007−532388)の分割
【原出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】