説明

ウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体を有効成分として含有する新規JAK3阻害剤

【課題】新規JAK3阻害剤を見出すこと、およびJAK3阻害活性を有する新規化学構造の化合物を見出すこと。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の少なくとも一つを有効成分として含有するJAK3阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有する新規JAK3阻害剤、およびウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有する新規チオフェン誘導体またはその塩に関する。本発明のJAK3阻害剤は、JAK3が関与するとされる疾患の予防および/または治療剤として有用であることが期待される。
【背景技術】
【0002】
JAKファミリー(JAK1〜3、TYK2)は、サイトカインがその生物活性を発揮するために必須のチロシンキナーゼである。JAKはサイトカインが受容体へ結合後、細胞内で活性化され、その下流において転写因子Statを活性化する。JAK1とJAK2は生体内において広範に発現しているが、JAK3は血球系細胞において限局的に発現している。このJAK3の欠損はヒト、マウス何れにおいてもリンパ球系細胞の分化・増殖不全を来たし重症複合型免疫不全症(Severe Combined Immunodefiency;SCID)を呈する(Japanese Journal of Clinical Immunology, 32,(2) 85 (2009)(非特許文献1))。このことは、免疫抑制がJAK3を介したシグナル経路の遮断により生じることを示唆している。従って、JAK3を阻害する化合物には、免疫応答の制御作用が見込まれ、各種自己免疫疾患などの予防および/または治療に有用であることが期待される。
【0003】
既存のJAK3を阻害する化合物としては、ピロロピリミジン骨格を有する化合物(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 16, 5633 (2006)(非特許文献2))、四環性ピリドン骨格を有する化合物(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 12, 1219 (2002)(非特許文献3))、オキシインドール骨格を有する化合物(非特許文献2)などが知られている。
【0004】
一方、ウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体が、IKK−2阻害剤として知られている(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 312, 373 (2005)(非特許文献4))。
【0005】
しかしながら、本願に係るウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体がJAK3に対して阻害活性を有することについては全く知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Japanese Journal of Clinical Immunology, 32,(2) 85 (2009)
【非特許文献2】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 16, 5633 (2006)
【非特許文献3】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 12, 1219 (2002)
【非特許文献4】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 312, 373 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規JAK3阻害剤を見出すこと、およびJAK3阻害活性を有する新規化学構造の化合物を見出すことは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、どのような化学構造の化合物がJAK3阻害活性を有するかについて、鋭意探索研究を行った結果、ウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体がJAK3阻害活性を有することを見出した。
【0009】
さらに、ウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有する新規チオフェン誘導体を数多く合成し、それらの化合物の薬理作用を鋭意探索研究した結果、それらの化合物においてもJAK3阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される化合物またはその塩(以下、特記なき限り「本発明化合物」ともいう)の少なくとも一つを有効成分として含有するJAK3阻害剤に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Aは下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f)を示し;
【0013】
【化2】

【0014】
1は水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、アミノ基のアミド、アミノ基のスルホンアミド、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基またはシアノ基を示し;R2は水素原子または低級アルキル基を示し;R3およびR4は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し;R5はヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示し;R1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1がアミノ基のアミドのとき、該アミノ基のアミドはヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基または低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;pは0、1、2または3を示し;pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい。]
本発明のJAK3阻害剤は、前記一般式(1)において、Aが下記一般式(2a)を示すことが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
また本発明のJAK3阻害剤は、好ましくは、前記一般式(1)において、Aが下記一般式(2a)を示し;
【0017】
【化4】

【0018】
1が水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、低級アルキルカルボニルアミノ基、低級アルキルスルホニルアミノ基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、N−メトキシ−N−メチルアミノカルボニル基またはシアノ基を示し;R1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1が低級アルキルカルボニルアミノ基のとき、該低級アルキルカルボニルアミノ基はヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;R1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;pが0、1、2または3を示し;pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい。
【0019】
また本発明は、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3,4−トリメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メトキシピリジン−3−イル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,4−ジメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(4−モルホリニル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−シアノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(カルボキシメトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−クロロフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[(1,1’−ビフェニル)−3−イル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、および
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
からなる群から選ばれる化合物またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有するJAK3阻害剤についても提供する。
【0020】
本発明のJAK3阻害剤は、JAK3が関与するとされる疾患、例えば、自己免疫疾患、角膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(「ドライアイ」とも呼ばれる)、アレルギー性結膜炎、前部ぶどう膜炎、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、ぶどう膜炎などの予防および/または治療剤として有用であることが期待される。
【0021】
本発明はまた、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3,4−トリメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メトキシピリジン−3−イル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,4−ジメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(4−モルホリニル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−シアノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(カルボキシメトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−クロロフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[(1,1’−ビフェニル)−3−イル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、および
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
からなる群から選ばれる化合物またはその塩についても提供する。
【0022】
本発明はさらに、上述した本発明の化合物または塩を含有する医薬組成物についても提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明化合物である、ウレイド基とアミノカルボニル基を置換基として有するチオフェン誘導体またはその塩は、優れたJAK3阻害活性を有している。よって、本発明化合物は、JAK3が関与するとされる疾患、例えば、自己免疫疾患、角膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(「ドライアイ」とも呼ばれる)、アレルギー性結膜炎、前部ぶどう膜炎、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、ぶどう膜炎などの予防および/または治療剤として有用であることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環など)の定義について以下に詳しく説明する。また、以下の文言の定義が別の文言の定義に準用される場合、各定義の好ましい範囲および特に好ましい範囲も準用することができる。
【0025】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1〜8個、好ましくは1〜6個の直鎖または分枝のアルキル基を示す。具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基などが挙げられる。
【0026】
「低級アルケニル基」とは、炭素原子数が2〜8個、好ましくは2〜6個の直鎖または分枝のアルケニル基を示す。具体例として、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−ブテニル基などが挙げられる。
【0027】
「低級アルキニル基」とは、炭素原子数が2〜8個、好ましくは2〜6個の直鎖または分枝のアルキニル基を示す。具体例として、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、イソブチニル基、イソペンチニル基などが挙げられる。
【0028】
「低級シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8個、好ましくは3〜6個のシクロアルキル基を示す。具体例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0029】
「アリール基」とは、炭素原子数が6〜14個の単環式芳香族炭化水素または2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。
【0030】
「複素環基」とは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1または複数個のヘテロ原子を環内に有する飽和若しくは不飽和単環式複素環(好ましくは、1若しくは2個のヘテロ原子を環内に有する、炭素原子数3〜5個の飽和若しくは不飽和単環式複素五または六員環)または2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環(好ましくは、1若しくは2個のヘテロ原子を環内に有する、炭素原子数7〜13個の2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環)から水素1原子を除いた残基を示す。
【0031】
「飽和の単環式複素環」の具体例として、窒素原子を環内に有するピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、トリアゾリジン環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環など、酸素原子を環内に有するテトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環など、硫黄原子を環内に有するテトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環など、窒素原子と酸素原子を環内に有するオキサゾリジン環、イソオキサゾリジン環、モルホリン環など、窒素原子と硫黄原子を環内に有するチアゾリジン環、イソチアゾリジン環、チオモルホリン環などが挙げられる。
【0032】
また、それらの飽和の単環式複素環はベンゼン環などと縮合してジヒドロインドール環、ジヒドロインダゾール環、ジヒドロベンゾイミダゾール環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロシンノリン環、テトラヒドロフタラジン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、ジヒドロベンゾフラン環、ジヒドロイソベンゾフラン環、クロマン環、イソクロマン環、ジヒドロベンゾチオフェン環、ジヒドロイソベンゾチオフェン環、チオクロマン環、イソチオクロマン環、ジヒドロベンゾオキサゾール環、ジヒドロベンゾイソオキサゾール環、ジヒドロベンゾオキサジン環、ジヒドロベンゾチアゾール環、ジヒドロベンゾイソチアゾール環、ジヒドロベンゾチアジン環、キサンテン環、4a−カルバゾール環、ペリミジン環などの2環式または3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0033】
「不飽和の単環式複素環」の具体例として、窒素原子を環内に有するジヒドロピロール環、ピロール環、ジヒドロピラゾール環、ピラゾール環、ジヒドロイミダゾール環、イミダゾール環、ジヒドロトリアゾール環、トリアゾール環、テトラヒドロピリジン環、ジヒドロピリジン環、ピリジン環、テトラヒドロピリダジン環、ジヒドロピリダジン環、ピリダジン環、テトラヒドロピリミジン環、ジヒドロピリミジン環、ピリミジン環、テトラヒドロピラジン環、ジヒドロピラジン環、ピラジン環など、酸素原子を環内に有するジヒドロフラン環、フラン環、ジヒドロピラン環、ピラン環など、硫黄原子を環内に有するジヒドロチオフェン環、チオフェン環、ジヒドロチオピラン環、チオピラン環など、窒素原子と酸素原子を環内に有するジヒドロオキサゾール環、オキサゾール環、ジヒドロイソオキサゾール環、イソオキサゾール環、ジヒドロオキサジン環、オキサジン環など、窒素原子と硫黄原子を環内に有するジヒドロチアゾール環、チアゾール環、ジヒドロイソチアゾール環、イソチアゾール環、ジヒドロチアジン環、チアジン環などが挙げられる。
【0034】
また、それらの不飽和の単環式複素環はベンゼン環などと縮合してインドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ジヒドロキノリン環、キノリン環、ジヒドロイソキノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、ジヒドロシンノリン環、シンノリン環、ジヒドロフタラジン環、フタラジン環、ジヒドロキナゾリン環、キナゾリン環、ジヒドロキノキサリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、クロメン環、イソクロメン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾチオフェン環、チオクロメン環、イソチオクロメン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾオキサジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾチアジン環、フェノキサンチン環、カルバゾール環、β−カルボリン環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環などの2環式または3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0035】
「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペントキシ基などが挙げられる。
【0036】
「低級アルケニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルケニル基で置換された基を示す。具体例として、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基、ヘプテニルオキシ基、オクテニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2−メチル−1−プロペニルオキシ基、2−メチル−2−ブテニルオキシ基などが挙げられる。
【0037】
「低級シクロアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0038】
「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基などが挙げられる。
【0039】
「複素環オキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が複素環基で置換された基を示す。
「低級アルキルアミノ基」とは、アミノ基の一方または両方の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチル(メチル)アミノ基などが挙げられる。
【0040】
「低級シクロアルキルアミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基またはアミノ基の一方の水素原子が低級シクロアルキル基で、他方の水素原子が低級アルキル基、低級アルケニル基若しくは低級アルキニル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、シクロヘキシル(メチル)アミノ基、シクロヘキシル(ビニル)アミノ基、シクロヘキシル(エチニル)アミノ基などが挙げられる。
【0041】
「アリールアミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子がアリール基で置換された基またはアミノ基の一方の水素原子がアリール基で、他方の水素原子が低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基若しくは低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アントリルアミノ基、フェナントリルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチル(フェニル)アミノ基、エチル(フェニル)アミノ基、フェニル(ビニル)アミノ基、エチニル(フェニル)アミノ基、シクロヘキシル(フェニル)アミノ基などが挙げられる。
【0042】
「複素環アミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子が複素環基で置換された基またはアミノ基の一方の水素原子が複素環基で、他方の水素原子が低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級シクロアルキル基若しくはアリール基で置換された基を示す。
【0043】
「アミノ基のアミド」とは、アミノ基とカルボン酸類とから形成されるアミドを示す。ここで、カルボン酸類とは、RaCOOH(Raは水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基などを示す)で示される飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、炭素環系カルボン酸、複素環系カルボン酸などを示す。また、これらのカルボン酸の酸無水物[(RaCO)2O]、酸ハロゲン化物(RaCOX、Xはハロゲン原子を示す)も「カルボン酸類」に含まれる。具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;アクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、トルイル酸などの炭素環系カルボン酸;フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸などの複素環系カルボン酸;無水酢酸などの酸無水物などが挙げられる。
【0044】
「低級アルキルカルボニルアミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子が低級アルキルカルボニル基で置換された基またはアミノ基の一方の水素原子が低級アルキルカルボニル基で、他方の水素原子が低級アルキル基、低級アルケニル基若しくは低級アルキニル基で置換された基を示す。具体例として、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基、n−ヘキシルカルボニルアミノ基、n−ヘプチルカルボニルアミノ基、n−オクチルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、sec−ブチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、イソペンチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、メチルカルボニル(メチル)アミノ基、メチルカルボニル(ビニル)アミノ基、メチルカルボニル(エチニル)アミノ基などが挙げられる。
【0045】
「アミノ基のスルホンアミド」とは、アミノ基とスルホン酸類とから形成されるスルホンアミドを示す。ここで、スルホン酸類とは、RaSO3H(Raは水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基などを示す)で示される飽和脂肪族モノスルホン酸、飽和脂肪族ジスルホン酸、不飽和脂肪族スルホン酸、炭素環系スルホン酸、複素環系スルホン酸などを示す。また、これらのスルホン酸の酸無水物[(RaSO22O]、酸ハロゲン化物(RaSO2Hal、Halはハロゲン原子を示す)も「スルホン酸類」に含まれる。スルホン酸類としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化メタンスルホニルなどが挙げられる。
【0046】
「低級アルキルスルホニルアミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子が低級アルキルスルホニル基で置換された基またはアミノ基の一方の水素原子が低級アルキルスルホニル基で、他方の水素原子が低級アルキル基、低級アルケニル基若しくは低級アルキニル基で置換された基を示す。具体例として、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基、n−ブチルスルホニルアミノ基、n−ペンチルスルホニルアミノ基、n−ヘキシルスルホニルアミノ基、n−ヘプチルスルホニルアミノ基、n−オクチルスルホニルアミノ基、イソプロピルスルホニルアミノ基、イソブチルスルホニルアミノ基、sec−ブチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、イソペンチルスルホニルアミノ基、ジメチルスルホニルアミノ基、メチルスルホニル(メチル)アミノ基、メチルスルホニル(ビニル)アミノ基、メチルスルホニル(エチニル)アミノ基などが挙げられる。
【0047】
「低級アルキルチオ基」とは、メルカプト基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、イソペンチルチオ基などが挙げられる。
【0048】
「アリールチオ基」とは、メルカプト基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントリルチオ基、フェナントリルチオ基などが挙げられる。
【0049】
「低級アルキルスルホニル基」とは、スルホン酸基のヒドロキシ基が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基などが挙げられる。
【0050】
「低級アルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基などが挙げられる。
【0051】
「アリールカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、アントリルカルボニル基、フェナントリルカルボニル基などが挙げられる。
【0052】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルコキシ基で置換された基を示す。具体例として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、イソペントキシカルボニル基などが挙げられる。
【0053】
「アリールオキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリールオキシ基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、アントリルオキシカルボニル基、フェナントリルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0054】
「低級アルキルカルボニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキルカルボニル基で置換された基を示す。具体例として、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、イソペンチルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0055】
「アリールカルボニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリールカルボニル基で置換された基を示す。具体例として、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、アントリルカルボニルオキシ基、フェナントリルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0056】
「アミノカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアミノ基で置換された基を示す。
【0057】
「低級アルキルアミノカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルキルアミノ基で置換された基を示す。具体例として、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、エチルメチルアミノカルボニル基などが挙げられる。
【0058】
「置換基を有してもよい低級アルキル基」または「置換基を有してもよい低級アルケニル基」とは、下記α1群から選択される1または複数個の置換基を有してもよい「低級アルキル基」または「低級アルケニル基」を示す。
【0059】
[α1群]
ハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトロ基およびシアノ基。
【0060】
「置換基を有してもよいアリール基」または「置換基を有してもよい複素環基」とは、下記β1群から選択される1または複数個の置換基を有してもよい「アリール基」または
「複素環基」を示す。
【0061】
[β1群]
ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン原子で置換された低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトロ基およびシアノ基。
【0062】
本発明でいう「複数個の基」とは、夫々の基が同一であっても異なるものであってもよく、置換する部位において2個以上、置換可能な数以下の個数の基を示し、その個数は2個の場合が好ましい。また、水素原子やハロゲン原子も「基」の概念に含まれる。
【0063】
本発明でいう「JAK3阻害剤」とは、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有する医薬組成物を意味する。
【0064】
本発明でいう「予防および/または治療剤」とは、疾病の予防および/または治療の為の薬剤を意味する。
【0065】
本発明でいう「JAK3が関与するとされる疾患」とは、例えば、自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬、変形性関節症、骨粗鬆症、脊椎関節炎、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(「ドライアイ」とも呼ばれる)、アレルギー性結膜炎、前部ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症、眼組織移植拒絶反応による炎症、加齢黄斑変性(初期加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性および/または滲出型加齢黄斑変性)、糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、血管新生黄斑症、突発性黄斑上膜、増殖性硝子体網膜症、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、網膜剥離や外傷を起因とした炎症や変性、後眼部の手術後炎症、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、視神経炎などが挙げられる。
【0066】
なお、上述した具体的な疾患は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
本発明化合物における「塩」とは、医薬として許容される塩であれば、特に制限はない。具体的には塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0068】
本発明化合物は水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
本発明化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合は、その異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0069】
本発明化合物にプロトン互変異性が存在する場合は、その互変異性体も本発明に含まれる。
【0070】
本発明化合物に結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
【0071】
(a)本発明化合物における例として、一般式(1)で示される化合物において、各基が下記に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
【0072】
【化5】

【0073】
(a1)Aは下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f)を示し;および/または
【0074】
【化6】

【0075】
(a2)R1は水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、アミノ基のアミド、アミノ基のスルホンアミド、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基またはシアノ基を示し;および/または
(a3)R2は水素原子または低級アルキル基を示し;および/または
(a4)R3およびR4は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し;および/または
(a5)R5はヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示し;および/または
(a6)R1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(a7)R1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(a8)R1がアミノ基のアミドのとき、該アミノ基のアミドはヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(a9)R1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基または低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(a10)pは0、1、2または3を示し;および/または
(a11)pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい。
【0076】
すなわち、本発明化合物は、一般式(1)で示される化合物において、前記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)および(a11)から選択される1または2以上の各組合せ、またはその塩からなる。
【0077】
(b)本発明化合物におけるAの好ましい例として、一般式(1)で示される化合物において、Aが下記一般式(2a)を示す場合が挙げられる。
【0078】
【化7】

【0079】
本発明においては、この(b)の条件と前記(a)の条件との組み合わせを充足する化合物またはその塩が好ましい。
【0080】
(c)本発明化合物におけるより好ましい例として、一般式(1)で示される化合物において、各基が下記に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
【0081】
(c1)Aが下記一般式(2a)を示し;および/または
【0082】
【化8】

【0083】
(c2)R1が水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、低級アルキルカルボニルアミノ基、低級アルキルスルホニルアミノ基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、N−メトキシ−N−メチルアミノカルボニル基またはシアノ基を示し;および/または
(c3)R1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(c4)R1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(c5)R1が低級アルキルカルボニルアミノ基のとき、該低級アルキルカルボニルアミノ基はヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(c6)R1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;および/または
(c7)pが0、1、2または3を示し;および/または
(c8)pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい。
【0084】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、前記(c1)、(c2)、(c3)、(c4)、(c5)、(c6)、(c7)および(c8)から選択される1または2以上の各組み合わせからなる化合物またはその塩が、より好ましい。
【0085】
なお、この(c)の条件と前記(a)および/または(b)の条件との組み合わせを充足する化合物またはその塩も本発明の範囲である。
【0086】
(d)本発明化合物の好ましい具体例として、以下の化合物またはその塩を挙げることができる。
【0087】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3,4−トリメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メトキシピリジン−3−イル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,4−ジメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(4−モルホリニル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−シアノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(カルボキシメトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−クロロフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−[(1,1’−ビフェニル)−3−イル]チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
本発明化合物のうち、(d)で列挙した化合物は新規なものであり、本発明は当該化合物またはその塩自体についても提供する。さらに本発明は、これらの化合物またはその塩を含有する医薬組成物についても提供する。
【0088】
本発明化合物は、以下の方法により製造することができる。なお、個々の具体的な製造方法については、後述の実施例[製造例]の項で詳細に説明する。また、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、下記の合成経路中で示されているRは任意の置換基を、TFAはトリフルオロ酢酸を、Halはハロゲン原子を、NaOHは水酸化ナトリウムを、Boc2Oは二炭酸ジ−tert−ブチルを、NBSはN−ブロモスクシンイミドを示す。
【0089】
(合成経路1)
本発明化合物(I)は、合成経路1に従い合成することができる。すなわち、化合物(II)とイソシアン酸トリクロロアセチルをアセトニトリルなどの有機溶媒中、室温から40℃で1時間から6時間反応させた後、さらにアンモニア−メタノール溶液を加えて、0℃から室温で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)を得ることができる。
【0090】
【化9】

【0091】
(合成経路2)
本発明化合物(I)は、合成経路2に従い合成することができる。すなわち、化合物(III)と対応するボロン酸またはボロン酸ピナコールエステルなどのボロン酸エステル(IV)をN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、または有機溶媒と水との混合溶媒中、炭酸セシウムなどの塩基とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などの触媒の存在下、70℃から100℃で1時間から6時間反応させることにより本発明化合物(I)を得ることができる。
【0092】
【化10】

【0093】
(合成経路3)
本発明化合物(I−2a−5;前記一般式(1)においてAが(2a)、R1がCOOHおよびpが1である化合物)、(I−2a−6;前記一般式(1)においてAが(2a)、R1がCONHCH2COOHおよびpが1である化合物)、(I−2a−7;前記一般式(1)においてAが(2a)、R1がOCH2COOHおよびpが1である化合物)および(I−2a−8;前記一般式(1)においてAが(2a)、R1がCH2OHおよびpが1である化合物)は、合成経路3に従って合成することができる。すなわち、化合物(I−2a−1)〜(I−2a−4)のそれぞれにメタノールなどの有機溶媒中、水酸化ナトリウムまたはアンモニア−メタノール溶液を加えて、室温から65℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I−2a−5)〜(I−2a−8)をそれぞれ得ることができる。
【0094】
【化11】

【0095】
(合成経路4)
化合物(II)は、合成経路4に従って製造することができる。すなわち、化合物(V)と対応するボロン酸またはボロン酸ピナコールエステルなどのボロン酸エステル(IV)を1,4−ジオキサンなどの有機溶媒と水との混合溶媒、またはエタノールとトルエンとの混合溶媒中、炭酸セシウムなどの塩基とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などの触媒の存在下、70℃から100℃で1時間から6時間反応させることにより化合物(VI)が得られる。さらに、化合物(VI)にジクロロメタンなどの有機溶媒中、トリフルオロ酢酸を加えて、0℃から室温で1時間から6時間反応させることにより化合物(II)を得ることができる。
【0096】
【化12】

【0097】
(合成経路5)
化合物(VI−2a−1;化合物(VI)においてAが(2a)、R1がNH2およびpが1である化合物)、(VI−2a−2;化合物(VI)においてAが(2a)、R1がCOORおよびpが1である化合物)、(VI−2a−3;化合物(VI)においてAが(2a)、R1がCH2OHおよびpが1である化合物)および(VI−2a−4;化合物(VI)においてAが(2a)、R1がOHおよびpが1である化合物)は、合成経路5に従い合成することができる。
【0098】
すなわち、化合物(V)と対応するボロン酸またはボロン酸ピナコールエステルなどのボロン酸エステル(IV−a)〜(IV−d)を1,4−ジオキサンなどの有機溶媒と水との混合溶媒またはエタノールとトルエンとの混合溶媒中、炭酸セシウムなどの塩基とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などの触媒の存在下、70℃から100℃で1時間から6時間反応させることにより化合物(VI−2a−1)〜(VI−2a−4)がそれぞれ得られる。
【0099】
化合物(VI−2a−5)は、化合物(VI−2a−1)と各種カルボン酸をN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール存在下、終夜室温で反応させることにより得ることができる。
【0100】
化合物(VI−2a−6)は、化合物(VI−2a−2)にメタノールなどの有機溶媒中、水酸化ナトリウムを加えて、室温から65℃で1時間から24時間反応させることにより得ることができる。さらに、化合物(VI−2a−6)と各種アミン化合物をN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール存在下、終夜室温で反応させることにより化合物(VI−2a−7)を得ることができる。
【0101】
化合物(VI−2a−8)は、化合物(VI−2a−3)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に無水酢酸および4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基を加えて1時間から24時間反応させることにより得ることができる。
【0102】
化合物(VI−2a−9)および(VI−2a−10)は、化合物(VI−2a−4)と各種ハロゲン化合物をテトラヒドロフランまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどの塩基存在下、室温で1日間から4日間反応させることでそれぞれ得ることができる。さらに化合物(VI−2a−11)は、化合物(VI−2a−10)とモルホリンなどの各種アミン化合物をN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、室温から100℃で1日間から4日間反応させることにより得ることができる。
【0103】
【化13】

【0104】
(合成経路6)
化合物(V)は、合成経路6に従い製造することができる。すなわち、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン(VII)と2−シアノアセトアミドをエタノールなどの有機溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基を加えて、室温から70℃で1時間から6時間反応させることにより化合物(VIII)が得られる。化合物(VIII)と二炭酸ジ−tert−ブチルをテトラヒドロフランなどの有機溶媒中、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、50℃から100℃で1日間から4日間反応させることにより化合物(IX)が得られる。化合物(IX)とN−ブロモスクシンイミドをN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、0℃から室温で1時間から3時間反応させることにより化合物(V)を得ることができる。
【0105】
【化14】

【0106】
(合成経路7)
化合物(III)は、合成経路7に従い製造することができる。すなわち、化合物(VIII)とイソシアン酸トリクロロアセチルをアセトニトリルなどの有機溶媒中、室温から40℃で1時間から6時間反応させた後、さらにアンモニア−メタノール溶液を加えて、0℃から室温で1時間から24時間反応させることにより化合物(X)が得られる。化合物(X)とN−ブロモスクシンイミドをN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、0℃から室温で1時間から3時間反応させることにより化合物(III)を得ることができる。
【0107】
【化15】

【0108】
本発明化合物の新たな薬理作用を見出す為に、本発明化合物のJAK3阻害活性測定試験系におけるJAK3に対する阻害活性試験を実施し、それらの試験における本発明化合物の効果について評価検討した。その詳細については、後述の実施例[薬理試験]の項で詳しく説明するが、本発明者らは、本発明化合物が優れたJAK3阻害活性を有することを見出した。
【0109】
よって、JAK3阻害活性を有する本発明化合物は、JAK3が関与するとされる疾患、例えば、自己免疫疾患、角膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(「ドライアイ」とも呼ばれる)、アレルギー性結膜炎、前部ぶどう膜炎、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、ぶどう膜炎などの予防および/または治療剤として有用であることが期待される。
【0110】
本発明化合物は経口でも、非経口でも投与することができる。投与形態としては、経口投与、眼局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)、静脈内投与、経皮投与などが挙げられ、必要に応じて医薬として許容される添加剤を適宜選択して使用し、投与形態に適した剤型に製剤化することができる。
【0111】
投与剤型としては、経口剤の場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが挙げられ、非経口剤としては、注射剤、点眼剤、眼軟膏、挿入剤、眼内インプラント用製剤などが挙げられる。
【0112】
例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの場合、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖などの賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油などの滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどのコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントールなどの矯味剤などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができる。
【0113】
注射剤は、塩化ナトリウムなどの等張化剤;リン酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどの界面活性剤;メチルセルロースなどの増粘剤などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができる。
【0114】
点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができ、そのpHは眼科用製剤に許容される範囲内であれば特に問題はなく、好ましくはpH4〜8の範囲が望ましい。
【0115】
眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィンなどの汎用される基剤を使用し、製剤化することができる。
【0116】
挿入剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸などの生体分解性ポリマーを使用して、製剤化することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤などを必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0117】
眼内インプラント用製剤は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースなどの生体分解性ポリマーを使用して製剤化することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤などを必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0118】
本発明化合物の投与量は、剤型、患者の症状、年令、体重などに応じて適宜選択できる。例えば、経口投与の場合、0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、特に好ましくは0.5〜1000mgのものを1日あたり1〜数回に分けて投与することができる。注射剤の場合、0.00001〜2000mg、好ましくは0.0001〜1500mg、特に好ましくは0.001〜500mgのものを1日あたり1〜数回に分けて投与することができる。点眼剤の場合、0.00001〜10%(w/v)、好ましくは0.0001〜5%(w/v)、特に好ましくは0.001〜1%のものを1日1〜数回点眼することができる。眼軟膏剤の場合、0.0001〜2000mgを含有するものを塗布することができる。挿入剤または眼内インプラント用製剤の場合、0.0001〜2000mgを含有するものを挿入またはインプラントすることができる。
【0119】
以下に、本発明化合物の製造例、製剤例および薬理試験を示す。なお、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0120】
[製造例]
本発明化合物の代表的な製造例を以下に示す。
【0121】
<参考例1:2−アミノチオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物1)>
2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン(8.8g、58mmol)にエタノール(60mL)を加え、2−シアノアセトアミド(7.2g、86mmol)、トリエチルアミン(3.4mL、24mmol)を加えて、50℃〜60℃で窒素雰囲気下で2.5時間撹拌した。冷却後に不溶物を濾過した後に、濾液を濃縮して得られる残渣に、混合溶媒(60mL、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)と水(60mL)を加えて撹拌した後に得られる黄色固体を濾取することにより標記化合物(8.9g)を得た。
【0122】
【表1】

【0123】
<参考例2:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物2)>
2−アミノチオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物1、10.8g、76mmol)に二炭酸ジ−tert−ブチル(25g、115mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(29.4g、228mmol)、テトラヒドロフラン(250mL)を加えて窒素雰囲気下で終夜加熱還流した。二炭酸ジ−tert−ブチル(25g、115mmol)を更に加えて窒素雰囲気下で2日間加熱還流した。冷却した後にテトラヒドロフランを一部留去して得られる残渣を酢酸エチルに溶解し、塩酸、水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2)で精製することにより標記化合物(8.7g)を淡黄色固体として得た。
【0124】
【表2】

【0125】
<参考例3:5−ブロモ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物3)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物2、4.0g、17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解し、氷冷下でN−ブロモスクシンイミド(3.3g、18mmol)を加えて窒素雰囲気中、氷冷下で1.5時間撹拌した。酢酸エチル(150mL)を加えた後に1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1)で精製することにより標記化合物(4.5g)を淡黄色粉末として得た。
【0126】
【表3】

【0127】
<参考例4:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−1)>
5−ブロモ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物3、0.20g、0.62mmol)に2−イソプロピルオキシフェニルボロン酸(0.17g、0.93mmol)、炭酸セシウム(0.30g、0.93mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.10g、0.09mmol)、エタノール(3mL)、トルエン(3mL)を加えて、80℃〜90℃で窒素雰囲気中で1.5時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3−1/2)で精製することにより無色油状物として標記化合物(71mg)を得た。
【0128】
【表4】

【0129】
以下、市販されている対応するボロン酸或いはボロン酸エステルを使用し、参考例4の製造方法に準じて、参考化合物4−2〜4−34を得た。
【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
【表11】

【0137】
【表12】

【0138】
【表13】

【0139】
【表14】

【0140】
【表15】

【0141】
<参考例5:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物5−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(3−アミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−18、0.10g、0.30mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)を加え、シアノ酢酸(38mg、0.45mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(86mg、0.45mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(60mg、0.45mmol)を加えて、終夜室温で窒素雰囲気下で撹拌した。反応液に1N塩酸、水、飽和重曹水、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られる黄色固体を濾取することにより、標記化合物(77mg)を得た。
【0142】
【表16】

【0143】
参考化合物4−18とマロン酸モノエチルエステルを使用し、参考例5の製造方法に準じて、参考化合物5−2を得た。
【0144】
【表17】

【0145】
<参考例6:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(3−カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物6−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(3−メトキシカルボニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−9、0.55g、1.46mmol)にジオキサン(5mL)、メタノール(1mL)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液(2.9mL)を加えて40℃〜45℃で窒素雰囲気下、終夜撹拌した。1N塩酸を用いて反応液を酸性にした後に酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより淡黄色固体として標記化合物(0.50g)を得た。
【0146】
【表18】

【0147】
参考化合物4−17を使用し、参考例6の製造方法に準じて参考化合物6−2を得た。
【0148】
【表19】

【0149】
<参考例7:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[3−[[(2−メトキシ−2−オキソエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物7−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(3−カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物6−1、0.10g、0.28mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)を加え、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(80mg、0.42mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(55mg、0.42mmol)、グリシンメチルエステル塩酸塩(55mg、0.44mmol)、トリエチルアミン(45mg、0.44mmol)を加えて、終夜室温で窒素雰囲気下で撹拌した。酢酸エチルを加えて1N塩酸、水、飽和重曹水、水、飽和食塩水で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより淡黄色固体として標記化合物(0.11g)を得た。
【0150】
【表20】

【0151】
以下、参考化合物6−2と対応するアミンを使用し、参考例7の製造方法に準じて、参考化合物7−2〜7−5を得た。
【0152】
【表21】

【0153】
【表22】

【0154】
<参考例8:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物8−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−31、90mg、0.27mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)を加え、炭酸セシウム(130mg、0.40mmol)、2−ヨードプロパン(70mg、0.40mmol)を加えて、終夜室温で窒素雰囲気下で撹拌した。1N塩酸を加えて酸性にした後に酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2)で精製することにより淡黄色油状物として標記化合物(51mg)を得た。
【0155】
【表23】

【0156】
以下、参考化合物4−31と対応するハロゲン化合物を使用し、参考例8の製造方法に準じて、参考化合物8−2〜8−3を得た。
【0157】
【表24】

【0158】
<参考例9:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[2−(アセチルオキシメチル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物9−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−33、56mg、0.16mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)を加え、無水酢酸(17μL、0.17mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(22mg、0.17mmol)を加えて、2時間室温で窒素雰囲気下で撹拌した。1N塩酸を加えて酸性にした後に酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより標記化合物(56mg)を得た。
【0159】
【表25】

【0160】
参考化合物4−32を使用し、参考例9の製造方法に準じて参考化合物9−2を得た。
【0161】
【表26】

【0162】
<参考例10:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物10−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−31、50mg、0.15mmol)にテトラヒドロフラン(3mL)を加え、炭酸カリウム(23mg、0.16mmol)、ブロモ酢酸エチルエステル(20μL、0.18mmol)を加えて、終夜室温で窒素雰囲気下で撹拌した。水を加えた後に酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより白色固体として標記化合物(68mg)を得た。
【0163】
【表27】

【0164】
参考化合物4−31と対応するハロゲン化合物を使用し、参考例10の製造方法に準じて、参考化合物10−2を得た。
【0165】
【表28】

【0166】
<参考例11:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[2−(3−ブロモプロポキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物11)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−31、50mg、0.15mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)を加え、炭酸セシウム(73mg、0.23mmol)、1,3−ジブロモプロパン(46μL、0.45mmol)を加えて、終夜室温で窒素雰囲気下で撹拌した。酢酸エチルで抽出した後に、水、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層;酢酸エチル/n−ヘキサン)で精製することにより、標記化合物(63mg)を白色固体として得た。
【0167】
【表29】

【0168】
<参考例12:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[2−[3−(4−モルホリノ)プロポキシ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物12−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−[2−(3−ブロモプロポキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物11、62mg、0.14mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)を加えて、モルホリン(72μL、0.81mmol)を加えて50℃窒素雰囲気下で終夜撹拌した。濃縮して得られる白色固体を濾取することにより標記化合物(40mg)を得た。
【0169】
【表30】

【0170】
参考化合物11と対応するアミンを使用し、参考例12の製造方法に準じて、参考化合物12−2〜12−3を得た。
【0171】
【表31】

【0172】
<参考例13:2−アミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物13−1)>
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物4−1、71mg、0.19mmol)にジクロロメタン(2mL)を加えた後、トリフルオロ酢酸(1mL)を加え室温で2時間撹拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した後に、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2−2/1)で精製することにより標記化合物(39mg)を無色油状物として得た。
【0173】
【表32】

【0174】
以下、参考化合物4−2〜4−16、4−20〜4−32、5−1、5−2、7−1〜7−5、8−1〜8−3、9−1、9−2、10−1、10−2、12−1〜12−3を使用し、参考例13の製造方法に準じて、参考化合物13−2〜13−46を得た。
【0175】
【表33】

【0176】
【表34】

【0177】
【表35】

【0178】
【表36】

【0179】
【表37】

【0180】
【表38】

【0181】
【表39】

【0182】
【表40】

【0183】
【表41】

【0184】
【表42】

【0185】
【表43】

【0186】
【表44】

【0187】
【表45】

【0188】
【表46】

【0189】
【表47】

【0190】
<参考例14:2−アミノ−5−(3−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物14−1)>
5−ブロモ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物3、0.20g、0.62mmol)に3−メチルフェニルボロン酸(0.13g、0.93mmol)、炭酸セシウム(0.30g、0.93mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.10g、0.09mmol)、エタノール(3mL)、トルエン(3mL)を加えて、80℃〜90℃で窒素雰囲気下で1.5時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動層:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3−1/2)で精製して得られる残渣にジクロロメタン(2mL)を加えた後、トリフルオロ酢酸(1mL)を加え室温で2時間撹拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した後に、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣をクロロホルムを用いて洗浄することにより標記化合物(40mg)を無色固体として得た。
【0191】
【表48】

【0192】
以下、市販されている対応するボロン酸或いはボロン酸エステルを使用し、参考例14の製造方法に準じて、参考化合物14−2〜14−18を得た。
【0193】
【表49】

【0194】
【表50】

【0195】
【表51】

【0196】
【表52】

【0197】
【表53】

【0198】
【表54】

【0199】
【表55】

【0200】
<参考例15:2−(アミノカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物15)>
2−アミノチオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物1、1.9g、13mmol)にアセトニトリル(65mL)を加えた後に、イソシアン酸トリクロロアセチル(1.8mL、15mmol)を加えて窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。2mol/Lアンモニア・メタノール溶液(20mL)を30分間で滴下した後に、終夜室温で撹拌した。析出する白色固体を濾取することにより標記化合物(1.1g)を得た。
【0201】
【表56】

【0202】
<参考例16:5−ブロモ−2−(アミノカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物16)>
2−(アミノカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物15、560mg、3.1mmol)にN,N−ジメチルホルムアミド(15mL)を加えて、氷冷下でN−ブロモスクシンイミド(600mg、3.4mmol)を加え、窒素雰囲気中にて氷冷下で1時間、室温で終夜撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えた後に、水、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより標記化合物(537mg)を得た。
【0203】
【表57】

【0204】
<参考例17:2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物17)>
1−(2−ブロモフェニル)プロパン−1−オン(0.18g、0.82mmol)にジオキサン(2.5mL)と水(0.5mL)を加えた後、酢酸カリウム(0.12g、1.23mmol)、ビス(ピナコラート)ジボラン(0.31g、1.23mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.082mmol)を加えて90℃で窒素雰囲気下で3時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣に5−ブロモ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物3、0.10g、0.31mmol)、ジオキサン(2.5mL)、水(0.5mL)を加えた後、炭酸セシウム(0.15g、0.47mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.04g、0.03mmol)を加えて90℃で窒素雰囲気下で1時間撹拌した。酢酸エチルを加えて飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより標記化合物(94mg)を得た。
【0205】
【表58】

【0206】
以下、各種ハロゲン化アリール、ビス(ピナコラート)ジボランおよび参考化合物3を使用して、参考例17の製造方法に準じて、参考化合物17−2〜17−3を得た。
【0207】
【表59】

【0208】
以下、参考化合物17−1〜17−3を使用して、参考例13の製造方法に準じて、参考化合物18−1〜18−3を得た。
【0209】
【表60】

【0210】
<実施例1:2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(化合物1−1)>
2−アミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物13−1、39mg、0.14mmol)にアセトニトリル(3mL)を加えた後、イソシアン酸トリクロロアセチル(23μL、0.19mmol)を加え30℃〜40℃で4時間撹拌した。2mol/Lアンモニア・メタノール溶液(0.16mL)を加えて窒素雰囲気下、終夜室温で撹拌した。溶媒を留去した残渣にクロロホルムを加えて得られた淡黄色固体を濾取することにより標記化合物(28mg)を得た。
【0211】
【表61】

【0212】
以下、参考化合物13−2〜13−46、14−1〜14−18、18−1〜18−3を使用して、実施例1の製造方法に準じて、化合物1−2〜1−67を得た。
【0213】
【表62】

【0214】
【表63】

【0215】
【表64】

【0216】
【表65】

【0217】
【表66】

【0218】
【表67】

【0219】
【表68】

【0220】
【表69】

【0221】
【表70】

【0222】
【表71】

【0223】
【表72】

【0224】
【表73】

【0225】
【表74】

【0226】
【表75】

【0227】
【表76】

【0228】
【表77】

【0229】
【表78】

【0230】
【表79】

【0231】
【表80】

【0232】
【表81】

【0233】
【表82】

【0234】
【表83】

【0235】
【表84】

【0236】
<実施例2:2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(化合物2)>
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―メトキシカルボニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(化合物1−18、25mg、0.078mmol)にメタノール2mLを加え、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.12mL)を加えて60℃〜65℃で窒素雰囲気中5時間撹拌した。1N塩酸を加えて反応液を酸性にした後に、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣にジオキサン(2mL)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液(78μL)、メタノール(1mL)を加えて60℃〜65℃で終夜撹拌した。1N塩酸を用いて酸性にした後に酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる黄色固体を濾取することにより標記化合物(7mg)を得た。
【0237】
【表85】

【0238】
<実施例3:2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(化合物3−1)>
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(2−メトキシ−2−オキソエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(化合物1−28、11mg、0.029mmol)にメタノール(1mL)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液(43μL)を加えて40℃〜50℃で窒素雰囲気中4時間撹拌した。1N塩酸(1mL)を加えて反応液を酸性にした後に、酢酸エチルと水を加えて析出する白色固体を濾取して標記化合物(4mg)を得た。
【0239】
【表86】

【0240】
以下、参考化合物1−56、1−29を使用して、実施例3の製造方法に準じて、化合物3−2、3−3を得た。
【0241】
【表87】

【0242】
<実施例4:2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(化合物4)>
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(アセチルオキシメチル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド(化合物1−54、11mg、0.03mmol)にメタノール(1mL)を加え、2mol/Lアンモニア・メタノール溶液(0.15mL、0.3mmol)を加えて50℃で窒素雰囲気中3.5時間撹拌した後に、更に2mol/Lアンモニア・メタノール溶液(0.075mL)とメタノール(1mL)を加えて50℃で終夜撹拌した。反応溶媒を留去して得られる白色固体を濾取することにより標記化合物(6mg)を得た。
【0243】
【表88】

【0244】
<実施例5:2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(化合物5−1)>
5−ブロモ−2−(アミノカルボニルアミノ)チオフェン−3−カルボキサミド(参考化合物16、96mg、0.36mmol)に2−メトキシフェニルボロン酸(83mg、0.54mmol)、炭酸セシウム(177mg、0.54mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(42mg、0.036mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)、水(1mL)を加えて、90℃で窒素雰囲気下で1時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水、飽和食塩水で洗浄した後に硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる固体をメタノールで洗浄することにより標記化合物(45mg)を得た。
【0245】
【表89】

【0246】
以下、参考化合物16と市販されている対応するボロン酸を使用し、実施例5の製造方法に準じて、実施例5−2、5−3を得た。
【0247】
【表90】

【0248】
[製剤例]
本発明化合物の代表的な製剤例を以下に示す。
【0249】
1)錠剤(150mg中)
本発明化合物 1mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 40mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
前記処方の錠剤にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂などの通常のコーティング剤)3mgを用いてコーティングを施し、目的とする錠剤を得ることができる。また、本発明化合物並びに添加物の種類および/または量を適宜変更することで、所望の錠剤を得ることもできる。
【0250】
2)カプセル剤(150mg中)
本発明化合物 5mg
乳糖 135mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
本発明化合物並びに添加剤の種類および/または量を適宜変更することで、所望のカプセル剤を得ることができる。
【0251】
3)点眼剤(100ml中)
本発明化合物 100mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 500mg
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量
本発明化合物および添加物の種類および/または量を適宜変更することで、所望の点眼剤を得ることができる。
【0252】
[薬理試験]
<JAK3阻害活性測定試験>
JAK3阻害活性はQS S Assist JAK3_TR−FRET Kit(カルナバイオサイエンス社;製品番号08−046TX)を用いて測定した。以下にその具体的な方法を示す。
【0253】
(1)被験化合物溶液の調製
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解後、アッセイバッファー(Tween 20およびジチオスレイトール含有トリス緩衝液)で40μMとなるように希釈した。
【0254】
(2)JAK3酵素溶液の調製
ヒトJAK3キナーゼドメインをQS S Assist JAK3_TR−FRET Kitの指示書に従いアッセイバッファー中で希釈混合した。
【0255】
(3)検出試薬の調製
ユーロピウム標識抗リン酸化チロシン抗体(パーキンエルマー社)およびアロフィコシアニン−ストレプトアビジン(パーキンエルマー社)をそれぞれ最終濃度が5.3nMおよび33.3nMとなるように検出バッファー(Tween 20およびEDTA含有トリス緩衝液)中で希釈混合した。
【0256】
(試験方法および測定方法)
1)384穴プレートの各ウェルに被験化合物溶液を5μL、JAK3基質溶液(カルナバイオサイエンス社より購入)を5μL、JAK3酵素溶液を10μL添加した。
【0257】
2)室温で1時間インキュベーションした。
3)各ウェルに検出試薬を60μL添加した。
【0258】
4)室温で30分間インキュベーションした。
5)プレートリーダー(ARVOsx;パーキンエルマー社)でTR−FRETシグナルを測定した。
【0259】
(JAK3阻害率の計算)
JAK3阻害率は以下の式により算出した。
【0260】
JAK3阻害率(%)=100×{1−(被験物質のTR−FRET値−ブランクのTR−FRET値)/(コントロールのTR−FRET値−ブランクのTR−FRET値)}
(評価結果)
評価結果の例として、被験化合物(化合物1−1、1−2、1−9、1−12、1−15、1−19、1−20、1−21、1−23、1−25、1−27、1−33、1−39、1−42、1−43、1−47、1−49、1−50、1−51、1−53、1−56、1−57、2、3−1、3−2、4、5−1および5−2)の10μMにおけるJAK3阻害率を表91に示す。
【0261】
【表91】

【0262】
なお、100%以上の阻害率については100%と示した。
表91に示されるように、本発明化合物は優れたJAK3阻害活性を有する。よって、本発明化合物はJAK3が関与するとされる疾患の予防および/または治療剤として有用であることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有するJAK3阻害剤。
【化1】

[式中、Aは下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f)を示し;
【化2】

1は水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、アミノ基のアミド、アミノ基のスルホンアミド、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基またはシアノ基を示し;
2は水素原子または低級アルキル基を示し;
3およびR4は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し;
5はヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示し;
1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1がアミノ基のアミドのとき、該アミノ基のアミドはヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基または低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
pは0、1、2または3を示し;
pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、Aが下記一般式(2a)を示す請求項1に記載のJAK3阻害剤。
【化3】

【請求項3】
前記一般式(1)において、Aが下記一般式(2a)を示し;
【化4】

1が水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、フェノキシ基、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、低級アルキルカルボニルアミノ基、低級アルキルスルホニルアミノ基、低級アルキルチオ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、N−メトキシ−N−メチルアミノカルボニル基またはシアノ基を示し;
1が低級アルキル基のとき、該低級アルキル基はヒドロキシ基、低級アルキルカルボニルオキシ基およびモルホリノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1が低級アルコキシ基のとき、該低級アルコキシ基はハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、モルホリノ基、4−フルオロフェニルピペラジノ基、カルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1が低級アルキルカルボニルアミノ基のとき、該低級アルキルカルボニルアミノ基はヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
1がアミノカルボニル基のとき、該アミノカルボニル基は水素原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく、さらに前記低級アルキル基はカルボキシル基および低級アルコキシカルボニル基からなる群より選択される1または複数の基で置換されていてもよく;
pが0、1、2または3を示し;
pが2または3のとき、R1は同一または異なっていてもよい請求項1に記載のJAK3阻害剤。
【請求項4】
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3,4−トリメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メトキシピリジン−3−イル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,4−ジメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(4−モルホリニル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−シアノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(カルボキシメトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−クロロフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[(1,1’−ビフェニル)−3−イル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、および
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
からなる群から選ばれる化合物またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有するJAK3阻害剤。
【請求項5】
JAK3が関与するとされる疾患の予防および/または治療剤である請求項1〜4のいずれかに記載のJAK3阻害剤。
【請求項6】
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルオキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3,4−トリメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メトキシピリジン−3−イル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−イソプロピルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−エトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[(2−シアノアセチル)アミノ]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロポキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,4−ジメトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−メチルチオフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(4−モルホリニル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[4−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−シアノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−エトキシ−2−オキソエトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3―カルボキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[2−(カルボキシメトキシ)フェニル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ヒドロキシメチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−メトキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−クロロフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−[(1,1’−ビフェニル)−3−イル]チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(4−アセチルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ジメチルアミノフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−プロピオニルフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド、および
2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−アセチル−4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
からなる群から選ばれる化合物またはその塩。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物または塩を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2012−176930(P2012−176930A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222143(P2011−222143)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】