説明

ウレタンフォーム用塗料、および、塗装されたウレタンフォーム製品

【課題】通常の取り扱いに対して、多少乱暴に取り扱っても、ちぎれや切れが生じず、水に対して吸水性を有しない、塗装されたウレタンフォーム製品、および、このような塗装されたウレタンフォーム製品を可能とするウレタンフォーム用塗料を提供する。
【解決手段】ポリウレタン、メチルエチルケトン、および、イソプロピルアルコールから構成され、かつ、25℃の粘度が270mPa・s以上330mPa・s以下であるウレタンフォーム用塗料であって、前記メチルエチルケトン100重量部に対して前記イソプロピルアルコール16重量部以上40重量部以下配合されてなるウレタンフォーム用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンフォーム用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンフォームは家具、インテリア分野においてクッション性を付与するために多く使われている。しかしながら、多孔質で水に接した場合に吸水しやすく、また、引張応力に対して弱いために、一般には皮革や、レザー、布などのカバーの下に配置されて用いられている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、様々なウレタンフォームに3次元形状を付与し、家具やインテリア、さらに他の様々な用途に用いられるように展開するためには、これらカバーの製作は手間がかかってコスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/043663公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、通常の取り扱いに対して、多少乱暴に取り扱っても、ちぎれや切れが生じず、水に対して吸水性を有しない、塗装されたウレタンフォーム製品、および、このような塗装されたウレタンフォーム製品を可能とするウレタンフォーム用塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ウレタンフォームに市販のさまざまな塗料を塗布してみた。このとき、作業が容易であるエアブラシを用いて、エアブラシで利用できる粘度に調整した塗料が、ウレタンフォーム内に塗料が吸収されてしまい乾燥できない(長期期間経過後も溶剤臭がする)、あるいは、乾燥後の塗装品の角部が硬くなり、ウレタンフォームの柔軟性が失われてしまう、などの問題が生じることが判った。
【0007】
とくに、このような塗料が塗装されたウレタンフォーム製品は非常に軽量であるために、児童が遊びやいたずらで投げることも想定され、その際に、角部が硬いと人に当たったときに、怪我に至らなくても、痛みを与える恐れがあり、解消すべき問題点であった。
【0008】
本発明者等はこのような、問題を解決すべく鋭意検討し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明のウレタンフォーム用塗料は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、ポリウレタン、メチルエチルケトン、および、イソプロピルアルコールから構成され、かつ、25℃の粘度が270mPa・s以上330mPa・s以下であるウレタンフォーム用塗料であって、前記メチルエチルケトン100重量部に対して前記イソプロピルアルコール16重量部以上40重量部以下配合されてなるウレタンフォーム用塗料である。
【0010】
本発明の塗装されたウレタンフォーム製品は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のウレタンフォーム用塗料がエアブラシによって塗布され、乾燥されてなることを特徴とする塗装されたウレタンフォーム製品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタンフォーム用塗料によれば、エアブラシによる塗布、その後の乾燥処理で、柔らかく、軽く、吸水性がなく、丈夫で、耐久性があり、かつ、角部であっても硬くない塗装されたウレタンフォーム製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施例の塗装品の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のウレタンフォーム用塗料は上記のように、ポリウレタン、メチルエチルケトン、および、イソプロピルアルコールから構成され、かつ、25℃の粘度が200mPa・s以上400mPa・s以下であるウレタンフォーム用塗料であって、前記メチルエチルケトン100重量部に対して前記イソプロピルアルコール16重量部以上40重量部以下配合されてなるウレタンフォーム用塗料である。
【0014】
本発明において、樹脂成分としてポリウレタンを有することが必要である。ポリウレタンの使用によって、母材であるウレタンフォームに一体化した塗膜が得られ、塗膜が母材から剥離するなどの問題が生じない。ポリウレタンとしては塗料用に市販されているものをそのまま用いることができる。
【0015】
本発明においてメチルエチルケトン、および、イソプロピルアルコールから構成される混合溶媒を用いることが必要である。そして、両者の混合比はメチルエチルケトン100重量部に対してイソプロピルアルコール16重量部以上40重量部以下配合されてなる割合であることが必要である。このような混合比とすることにより、ウレタンフォーム表面に塗料がとどまり、内部に浸透しないために、乾燥不良による溶媒臭の残存がなく、さらに、塗装されたウレタンフォーム製品において角部での硬さが生じにくい。
【0016】
本発明に係るウレタンフォーム用塗料は、これら原料を混合するが、その際に、25℃の粘度が200mPa・s以上330mPa・s以下の範囲となることが必要である。ただし、塗布直前までより高い粘度としておき、使用直前にこの粘度範囲となるようにしてもよい。粘度がこの範囲であると、エアブラシでの塗装が容易で、かつ、ウレタンフォーム内部への塗料の浸透が少ない。
【0017】
本発明に係るウレタンフォーム用塗料には本発明の効果を損なわない範囲で、上記主原料以外に、顔料や染料などの着色成分、調香料などの他の成分を適宜添加することができ、その場合も本発明に含まれる。
【0018】
このようにして得られた本発明に係るウレタンフォーム用塗料はエアブラシで塗布することが、簡単であり、容易に均一な厚さの塗布層を得ることができるので好ましい。塗布は2〜3回に分けて行うことで均一な厚さの塗布層を得ることができ、さらに防水性を確実に付与できるので好ましい。
【0019】
1回当たりの塗布量としては、乾燥後の塗料目付が500g/m2以上1kg/m2以下となるように塗布すると、十分な防水性と柔軟性を兼ね備えた塗装膜が得られる。
【0020】
塗布後の乾燥条件としては、室温で1時間程度放置することで十分に乾燥する。
【0021】
母材として用いるウレタンフォームとしては、市販の連続気泡の軟質ウレタンフォームをそのまま用いることができる。密度としては20kg/m3以上60kg/m3のものが好適に用いられ、最終製品の用途によって適宜選択する。
【0022】
本発明に係るウレタンフォーム用塗料はウレタンフォームのみならず、ウレタンフォームと他種の素材との組み合わせにおいても用いることができる。例えば、ベンチの天板部に形を合わせたウレタンフォームを載置したのちに(必要によってこれらを互いに接着して一体化させても良い)、天板ごと本発明に係るウレタンフォーム用塗料を塗布することで一体化させて、クッション付きベンチの天板とすることができる。このようなウレタンフォームと構造材などの他種素材とを組み合わせて塗装された製品も本発明に係る塗装されたウレタンフォーム製品に含まれる。
【0023】
本発明に係る塗装されたウレタンフォーム製品は、内部に水が浸透することがないので、家具・インテリアはもちろん、トイレ周辺や風呂・シンクなどの水回りにも、あるいは、屋外用のクッション椅子、クッション付きベンチ、プール・海水浴用品、子供・幼児用椅子、遊具、医療用ベッドなどに応用可能であり、また、触れても冷たくないので、直接あるいは間接、人が触れる箇所に応用でき、そのとき、快適に用いられる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明のウレタンフォーム用塗料の実施例について具体的に説明する。
【0025】
表1に示す、配合比(%)の溶媒を作成し、ウレタン樹脂(市販品:マイテック AE−870)を熔解させて、8種類のウレタンフォーム用塗料を調整した。このときの塗料の25℃での粘度をB型粘度計で測定した結果を表1に併せて示す。
【0026】
【表1】

【0027】
次いで、上記8種類のウレタンフォーム用塗料を用いて、図1にモデル的に示した、玩具人形用椅子用ウレタンフォーム母材(底面投射大きさ:13cm×19cm、高さ:15cm)を、それぞれ塗装した。
【0028】
具体的には上記形状にイノアック社製軟質ウレタンフォームKMO−25(連続気泡品。密度:25kg/m3)を上記椅子形状に切り出し、母材とした。この母材に明治機械製作所社製エアブラシを用いて、吹きつけ塗装した後、室温で1時間放置して乾燥し、この塗装・乾燥のサイクルを3回繰り返した。
【0029】
この塗装作業の際に、塗料1〜7に関しては問題なく塗装できたが塗料8は粘度が高く、エアブラシを用いての吹き付け塗装ができなかったために、塗料8に関しては、塗装性が充分でないとして「×」、その他は充分であるとして「○」として評価した。
【0030】
また、上記塗装中に、ウレタンフォーム内部に塗料が浸透してしまった場合を不良であるとして「×」、浸透せずに塗装できた場合を良好であるとして「○」として評価した。
【0031】
さらに、塗装完成品について角部の硬さを10人のモニターにより評価し、子供などが投げて遊んでしまうことを想定し、塗装完成品の重さを勘案して、硬すぎると判断されるモニターがいた場合を不十分として「×」、いなかった場合を十分として「○」として評価した。
【0032】
これら評価結果を表1に併せて記載する。なお、評価を行わなかった項目には「−」として記載した。
【0033】
表1より、本発明のウレタンフォーム用塗料は、良好な塗装性を備え、内部への塗料のしみ込みも生ぜず、また、塗装品の角部に危険と思われる硬さが生じないことが理解される。
【0034】
さらに、上記の評価で全て充分であると判断された6つの塗装完成品について、やはり10人のモニターにより、多少、乱暴な取り扱いを行ったが、全てにおいて切れやちぎれがないことが確認された。また、これら6種類の塗装完成品を水を張った浴槽内に一晩放置し、このときの前後の重量を測定して水のしみ込みの有無を調べたが、全てにおいて内部への水のしみこみがないことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン、メチルエチルケトン、および、イソプロピルアルコールから構成され、かつ、25℃の粘度が270mPa・s以上330mPa・s以下であるウレタンフォーム用塗料であって、前記メチルエチルケトン100重量部に対して前記イソプロピルアルコール16重量部以上40重量部以下配合されてなることを特徴とするウレタンフォーム用塗料。
【請求項2】
請求項1に記載のウレタンフォーム用塗料がエアブラシによって塗布され、乾燥されてなることを特徴とする塗装されたウレタンフォーム製品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195703(P2011−195703A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63952(P2010−63952)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(510078090)株式会社SIXINCH.ジャパン (1)
【Fターム(参考)】