説明

ウレタンプレポリマー組成物

【課題】引火点が250℃以上と高く、塗膜を軟化させることがなく、かつ、粘度が低いウレタンプレポリマー組成物および該組成物を用いた2液型ポリウレタンシーリング材の提供。
【解決手段】分子内に活性水素基を2個以上有する化合物(A)と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)に、オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した組成物(E)と、
引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F)と、
を含有するウレタンプレポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンプレポリマー組成物に関し、より詳しくは、ポリウレタン系シーリング材として好適に用いることができるウレタンプレポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主剤(基剤)としてのポリイソシアネート(ウレタンプレポリマー)、硬化剤としてのポリオール等の活性水素基を有する化合物および硬化触媒を含有する2液型ポリウレタンシーリング材が知られている。
この2液型ポリウレタンシーリング材組成物に用いられるウレタンプレポリマーは、ブリキ缶やアルミラミネートパウチに密閉されるものであるが、使用時には、硬化剤と混ぜるために、ブリキ缶を開封して掻き出したり、アルミパウチから搾り出したりする必要があり、ウレタンプレポリマーの粘度は低いことが望まれている。
【0003】
このウレタンプレポリマーの粘度を下げる方法としては、従来より、(1)ウレタンプレポリマーを構成するPPGなどのポリオール化合物を低分子量のものとする方法、(2)イソシアネート(NCO)基と水酸(OH)基の比(NCO/OH)(以下、「NCOインデックス」ともいう。)を上げることにより得られるウレタンプレポリマーの平均分子量を下げる方法、(3)可塑剤を添加する方法等が採られてきている。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法では、得られるウレタンプレポリマー組成物の架橋点間の距離が短くなり、硬化物の硬度が高くなって、伸びが低下するため、シーリング材として適した物性を保持するには限界があり、また、組成物中のNCO基量が増えることにより発泡の危険性が増加する問題もあった。
また、上記(2)の方法では、例えば、NCOインデックスを1.7以上にすると、活性水素基含有化合物と反応していない遊離のジイソシアネート化合物が増加し、得られるウレタンプレポリマー組成物の発泡の危険性が増加するのみならず、引火点の低下や健康面に危害をもたらす問題があった。
更に、上記(3)の方法では、通常用いられている一般的な可塑剤(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルアジペート等)を用いた場合、得られるウレタンプレポリマー組成物の引火点が250℃以下となりやすく、危険物第4類の第4石油類に該当することにより保管数量等の管理上の制約が著しく増加する問題があり、また、一般的な可塑剤では、塗膜への可塑剤の移行による塗膜を軟化、埃の付着による汚染、塗膜とシーリング材との剥離等が起こる問題があった。
【0005】
一方、特許文献1には、「トリレンジイソシアネートとポリオキシアルキレンポリオールを反応させて得られ、NCO含有量が3.3重量%以下であり、且つ遊離トリレンジイソシアネートの含有量が1重量%未満であり、末端にイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーに対して乾性油及び/又は半乾性油を0.1〜10重量%添加することを特徴とするウレタンプレポリマー組成物。」が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−91603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のウレタンプレポリマー組成物は、引火点が250℃を超えるものの、乾性油や半乾性油として例示されている桐油、ナタネ油、アマニ油、綿実油が塗膜を軟化させるため、塗装による被覆が本質的に必要なポリウレタン系シーリング材としては不適切であるという問題があった。
そこで、本発明は、引火点が250℃以上と高く、塗膜を軟化させることがなく、かつ、粘度が低いウレタンプレポリマー組成物および該組成物を用いた2液型ポリウレタンシーリング材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタンプレポリマー生成後の遊離のポリイソシアネート化合物とオキサゾリジン化合物を反応させ、更に引火点の高い特定の化合物を可塑剤として用いることにより、得られるウレタンプレポリマー組成物の引火点が250℃以上と高く、塗膜を軟化させることがなく、粘度が低くなることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)に記載のウレタンプレポリマー組成物および(10)に記載の2液型ポリウレタンシーリング材を提供する。
(1)分子内に活性水素基を2個以上有する化合物(A)と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)に、オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した組成物(E)と、
引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F)と、
を含有するウレタンプレポリマー組成物。
(2)上記化合物(F)が、グリコールエステル、トリメリット酸エステルおよびアジピン酸ポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)に記載のウレタンプレポリマー組成物。
(3)上記グリコールエステルが、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサエート)である上記(2)に記載のウレタンプレポリマー組成物。
(4)上記トリメリット酸エステルが、トリメリット酸トリアルキルエステルである上記(2)に記載のウレタンプレポリマー組成物。
(5)上記化合物(F)の分子量が500〜2000であり、20℃における粘度が1000mPa・s以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
(6)上記化合物(F)の含有量が、上記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して2〜50質量部である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
(7)更に、引火点250℃未満で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F′)を含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
(8)上記オキサゾリジン化合物(D)が、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジンである上記(1)〜(7)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
(9)上記オキサゾリジン化合物(D)が、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンである上記(1)〜(7)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物を主剤として用いる2液型ポリウレタンシーリング材。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明するように、本発明によれば、引火点が250℃以上と高く、塗膜を軟化させることがなく、かつ、粘度が低い(具体的には、4.0〜20.0Pa・s程度)ウレタンプレポリマー組成物および該組成物を用いた2液型ポリウレタンシーリング材を提供することができる。また、発泡の危険性が少なく、塗膜への可塑剤の移行による塗膜の軟化や埃の付着による汚染、更には塗膜とシーリング材との剥離も防ぐことができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係るウレタンプレポリマー組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、分子内に活性水素基を2個以上有する化合物(A)と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)に、オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した組成物(E)と、
引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F)と、を含有するウレタンプレポリマー組成物である。
本発明の組成物は、更に、引火点250℃未満で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F′)を含有しているのが好ましい。
次に、化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、ウレタンプレポリマー(C)、オキサゾリジン化合物(D)、組成物(E)ならびに化合物(F)および(F′)について詳述する。
【0012】
<化合物(A)>
上記化合物(A)は、分子内に活性水素基を2個以上有する化合物であり、水酸基、メルカプト基およびアミノ基(イミノ基も含む、以下同様。)からなる群より選択される置換基を分子内に2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、水酸基を2個以上有するポリオール化合物、メルカプト基を2個以上有するポリチオール化合物、アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物が挙げられ、ポリオール化合物であるのが好ましい。
【0013】
上記ポリオール化合物としては、具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオール化合物のうち、少なくともポリエーテルポリオールを用いる場合、すなわち、ポリエーテル骨格を有するポリオールがウレタンプレポリマーに含まれる場合には、後述するポリイソシアネート化合物(B)との反応により得られるウレタンプレポリマーの粘度が低く、該ウレタンプレポリマーを含有する本発明の組成物の粘度も低くなり、作業性にも優れ、硬化後の硬化物の柔軟性も高いため、シーリング材として好適に用いることができる。
【0014】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレンオキサイドなどから選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸やオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
【0016】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
【0017】
上記ポリチオール化合物としては、具体的には、例えば、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ポリアミン化合物としては、具体的には、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンテトラミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
上記ポリイソシアネート化合物(B)は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物であり、その具体例としては、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
これらのうち、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)であるのが、入手が容易である理由から好ましい。
また、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であるのが、比較的安価である理由から好ましい。
更に、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるのが、反応性が高い理由から好ましい。
本発明においては、このような理由から好適に例示される各種ポリイソシアネート化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<ウレタンプレポリマー(C)>
上記ウレタンプレポリマー(C)は、上記化合物(A)と過剰の上記ポリイソシアネート化合物(B)(すなわち、活性水素基に対して過剰のNCO基)を反応させて得られる反応生成物であって、一般に、0.5〜5重量%のNCO基を分子末端に含有する。
【0022】
本発明においては、上記化合物(A)と上記ポリイソシアネート化合物(B)との反応におけるNCOインデックスは、1.8〜2.0であるのが好ましく、1.85〜2.0であるのがより好ましい。NCOインデックスがこの範囲であると、得られるウレタンプレポリマー(C)および該ウレタンプレポリマー(C)を含有する本発明の組成物の粘度が低くなる。なお、上述したように、NCOインデックスをこのような範囲にすると、上記化合物(A)と反応していない遊離のポリイソシアネート化合物(B)が増加し、得られる本発明の組成物の発泡の危険性が増加するのみならず、引火点の低下や健康面に危害をもたらす問題があるが、本発明は、後述するオキサゾリジン化合物(D)を用いることによりかかる問題を解決するものである。
【0023】
また、本発明においては、このウレタンプレポリマー(C)の生成は、通常のウレタンプレポリマーと同様の方法で行うことができ、例えば、上記インデックスの上記化合物(A)と上記ポリイソシアネート化合物(B)とを、50〜100℃で加熱かくはんすることによって行うことができる。また、必要に応じて、有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0024】
<オキサゾリジン化合物(D)>
上記オキサゾリジン化合物(D)は、分子内に活性水素基とオキサゾリジン環とをそれぞれ1個以上有する化合物であれば特に限定されない。
本発明においては、上記ウレタンプレポリマー(C)に上記オキサゾリジン化合物(D)を添加することにより、上記ウレタンプレポリマー(C)中の遊離のポリイソシアネート化合物(B)の少なくとも一部を除去、すなわち、遊離のポリイソシアネート化合物(B)と反応してイソシアネート基を潰すことができ、得られる本発明の組成物の発泡や引火点の低下を防ぎ、健康面への危害も抑制することができる。
また、本発明においては、上記オキサゾリジン化合物(D)は、該オキサゾリジン化合物と反応しないで残存する遊離のポリイソシアネート化合物(B)の含有量が1.0質量%以下となるように添加するのが好ましい。ここで、遊離のポリイソシアネート化合物(B)の含有量(質量%)とは、ウレタンプレポリマーを生成する際に添加したポリイソシアネート化合物(B)の全仕込み量に対する遊離のポリイソシアネート化合物(B)の割合をいう。
【0025】
上記オキサゾリジン化合物(D)としては、例えば、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン等が挙げられる。
【0026】
上記N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、例えば、アルカノールアミンとケトンまたはアルデヒドとの脱水縮合反応によって調製することができる。
このようなN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとしては、具体的には、例えば、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(以下、「ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(1)」とする。)、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン(以下、「ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(2)」とする。)、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(以下、「ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(3)」とする。)、2−(p−メトキシフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(以下、「ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(4)」とする。)、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシプロピル)−5−メチルオキサゾリジン(以下、「ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(5)」とする。)等が挙げられる。
これらのうち、ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(2)および(3)であるのが、加水分解速度と貯蔵安定性のバランスに優れる理由から好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
本発明においては、このようなオキサゾリジン化合物(D)の含有量は、上記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して、0.3〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜8質量部であるのがより好ましい。
【0029】
<組成物(E)>
上記組成物(E)は、上記化合物(A)と上記ポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られる上記ウレタンプレポリマー(C)に、上記オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した組成物である。
【0030】
<化合物(F)>
上記化合物(F)は、引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基(例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基等)を有しない化合物であり、その具体例としては、グリコールエステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸ポリエステル等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
より具体的には、上記グリコールエステルとして、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサエート)が好適に例示され、上記トリメリット酸エステルとして、トリメリット酸トリアルキルエステルが好適に例示される。
上記トリメリット酸トリアルキルエステルは、そのアルキル基の炭素数が6〜12であるのが好ましく、その具体例としては、後述する実施例でも用いるジェイプラス社製のトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM、数平均分子量547、引火点256℃)、トリメリット酸トリアルキルエステル(711TM、数平均分子量572、引火点276℃)等が好適に挙げられる。
本発明においては、このような化合物(F)を用いることにより、得られる本発明の組成物の引火点を高くするとともに、粘度を下げることができ、塗膜を軟化させる危険性も低くすることができる。
【0031】
本発明においては、上記化合物(F)の分子量が500〜2000であり、20℃における粘度が1000mPa・s以下であるのが好ましい。分子量および粘度がこの範囲であると、得られる本発明の組成物の粘度を低下させる効果が十分となり、また、上記化合物(F)が該ウレタンプレポリマー組成物からブリードアウトしにくくなるため、塗膜を軟化させたり、汚染させる危険性がより低くなる。
【0032】
また、本発明においては、上記化合物(F)の含有量が、上記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して2〜50質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのがより好ましい。含有量がこの範囲であると、得られる本発明の組成物を専用容器(例えば、ブリキ缶、アルミパウチ等)から掻き出すのに適当な粘度となり、また、上記化合物(F)が該ウレタンプレポリマー組成物からブリードアウトする危険性が低くなる。
【0033】
<化合物(F′)>
所望により用いられる化合物(F′)は、引火点250℃未満で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物である。
上記化合物(F′)としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系のプロセスオイル;等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、フタル酸系、アジピン酸系等のエステルであるのが好ましい。
【0034】
具体的には、フタル酸系のエステルとしては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。これらのうち、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルが好ましい。
アジピン酸系のエステルとしては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アジピン酸ジアラルキル等が挙げられる。これらのうち、アジピン酸ジイソノニルが好ましい。
その他の化合物(F′)としては、例えば、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、クエン酸アセチルトリエチル、アゼライン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチル、分子量300〜1000のポリブテン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、このような化合物(F′)を用いることにより、得られる本発明の組成物の引火点が250℃以上の範囲となり、粘度を十分に低くすることができる。
【0036】
本発明の組成物は、上述したように、上記化合物(A)と上記ポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)に、上記オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した上記組成物(E)と、
引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F)と、を含有するウレタンプレポリマー組成物であるが、本発明の組成物の製造方法は特にこのプロセスに限定されず、例えば、上記化合物(A)と上記化合物(F)との混合物に上記ポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られる上記ウレタンプレポリマー(C)を含有する組成物に、上記オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去して得る方法;上記化合物(A)と上記ポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られる上記ウレタンプレポリマー(C)に、上記オキサゾリジン化合物(D)および上記化合物(F)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去して得る方法;等を用いて製造することができる。
【0037】
また、本発明の組成物は、上記化合物(F)や所望により含有してもよい上記化合物(F′)以外にも、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えば、可塑剤、充填剤、硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤等を含有することができる。
このような添加剤を含有する場合は、本発明の組成物は、例えば、上記化合物(F)とともに、所望により含有させる各種添加剤を添加し、水分の混入を避けながら、ロール、ニーダー、押出し機、万能撹拌機、撹拌翼付き密閉容器等の適当なミキサーを用いて室温下または加熱下(40〜60℃、例えば40℃)で十分に混合し、均一に分散(混練)させることにより使用時に製造することができる。
【0038】
上記可塑剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系のプロセスオイル;等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、フタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等のエステル系可塑剤が好ましい。
【0039】
具体的には、フタル酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジラウリル(DLP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルが挙げられる。これらのうち、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルが好ましい。
アジピン酸系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルが挙げられる。これらのうち、アジピン酸ジイソノニルが好ましい。
その他の可塑剤としては、例えば、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、リン酸トリクレジル、トリメリット酸トリブチル(TBTM)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM)、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油;分子量500〜10,000のブチルアクリレート等のアクリルオリゴマーが挙げられる。
【0040】
充填剤としては、各種形状の有機または無機のもの、例えば、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー・タルク類、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、生石灰、炭酸塩類(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、胡粉)、アルミナ水和物(例えば、含水水酸化アルミニウム)、ケイソウ土、硫酸バリウム(例えば、沈降性硫酸バリウム)、マイカ、硫酸アルミナ、リトポン、アスベスト、グラファイト、二硫化モリブデン、軽石粉、ガラス粉、ケイ砂、ゼオライト;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物などによる表面処理物;ガラスバルーン;樹脂バルーン;等が挙げられる。
【0041】
炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、コロイダル炭酸カルシウム)が挙げられる。また、これらを脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理した表面処理炭酸カルシウムも用いることができる。
具体的には、表面処理されていない重質炭酸カルシウムとしては、ホワイトンSSB赤(白石工業社製)、スーパーS(丸尾カルシウム社製)等が挙げられ、表面処理された重質炭酸カルシウムとしては、ライトンA−4(備北粉化工業社製)、スノーライト(丸尾カルシウム社製)等が挙げられる。また、表面処理されていない沈降炭酸カルシウムとしては、白艶華A、Brilliant-1500(ともに白石工業社製)等が挙げられ、表面処理された沈降炭酸カルシウムとしては、ビスコライトMBP(白石工業社製)、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)等が挙げられる。
【0042】
カーボンブラックとしては、例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0043】
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
クレーとしては、具体的には、例えば、ろう石クレー、カオリン質クレー(カオリナイト、ハロイサイト)、パイロフィライト質クレー、セリサイト質クレー、焼成クレー等が挙げられる。
【0044】
チクソトロピー性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
顔料としては、無機顔料および有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、具体的には、例えば、亜鉛華、酸化チタン、弁柄、酸化クロム、鉄黒、複合酸化物(例えば、チタンエロー系、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック)などの酸化物;黄鉛、モリブデートオレンジなどのクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛などの硫化物;硫酸バリウムなどの硫酸塩;塩酸塩;群青などのケイ酸塩;炭酸カルシウムなどの炭酸塩;マンガンバイオレットなどのリン酸塩;黄色酸化鉄などの水酸化物;カーボンブラックなどの炭素;アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉;チタン被覆雲母;等が挙げられる。
【0046】
有機顔料としては、具体的には、例えば、モノアゾレーキ系(例えば、レーキレッドC、パーマネンレッド2B、ブリリアントカーミン6B)、モノアゾ系(例えば、トルイジンレッド、ナフトールレッド、ファストエローG、ベンズイミダロンボルドー、ベンズイミダゾロンブラウン)、ジスアゾ系(例えば、ジスアゾエローAAA、ジスアゾエローHR、ピラゾロンレッド)、縮合アゾ系(例えば、縮合アゾエロー、縮合アゾレッド、縮合アゾブラウン)、金属錯塩アゾ系(例えば、ニッケルアゾエロー)などのアゾ系顔料;銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、臭素化銅フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;塩基性染料レーキ(例えば、ローダミン6レーキ)などの染付顔料;アンスラキノン系(例えば、フラバンスロンエロー、ジアンスラキノリルレッド、インダンスレンブルー)、チオインジゴ系(例えば、チオインジゴボルドー)、ペリノン系(例えば、ペリノンオレンジ)、ペリレン系(例えば、ペリレンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーン)、キナクリドン系(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット)、ジオキサジン系(例えば、ジオキサジンバイオレット)、イソインドリノン系(例えば、イソインドリノンエロー)、キノフタロン系(例えば、キノフタロンエロー)、イソインドリン系(例えば、イソインドリンエロー)、ピロール系(例えば、ピロールレッド)などの縮合多環顔料;銅アゾメチンエローなどの金属錯塩アゾメチン;アニリンブラック;昼光蛍光顔料;等が挙げられる。
【0047】
染料としては、具体的には、例えば、直接染料、建染染料、硫化染料、ナフトール染料、酸性染料、分散染料等が挙げられる。
老化防止剤は、具体的には、例えば、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリン(TMDQ)、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、ヒンダードフェノール系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤は、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などのヒンダードフェノール系化合物;亜リン酸トリフェニル:等が挙げられる。
帯電防止剤は、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩、アミンなどのイオン性化合物;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物;等が挙げられる。
難燃剤は、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ジエチルビスヒドロキシエチルアミノホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0048】
接着性付与剤は、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、各種シランカップリング剤等が挙げられる。
分散剤は、具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、リノール酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩;ステアリン酸エチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、ステアリン酸モノグリセライドなどの脂肪酸エステル;等が挙げられる。
脱水剤は、具体的には、例えば、メチルスアテアロキシポリシロキサン等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、具体的には、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤、フォルムアミジン系紫外線吸収剤、トリアジン環系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等が挙げられる。
溶剤としては、具体的には、例えば、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素系;テトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系;酢酸エチルなどのエステル系;等が挙げられる。
【0049】
本発明の第2の態様に係る2液型ポリウレタンシーリング材(以下、単に「本発明のシーリング材」という。)は、上述した本発明の第1の態様に係るウレタンプレポリマー組成物を主剤として用いるシーリング材であり、必要に応じて上述した各種添加剤を含有することができ、使用時に硬化剤と混練して用いられる。
ここで、上記硬化剤は、活性水素基を2個以上有する化合物を含有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、第1の態様で列挙した上記化合物(A)が挙げられる。
本発明のシーリング材の製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の組成物とともに、所望により含有させる各種添加剤を添加し、ロール、ニーダー、押出し機、万能撹拌機、撹拌翼付き密閉容器等の適当なミキサーを用いて室温下または加熱下(40〜60℃、例えば40℃)で十分に混合し、均一に分散(混練)させることにより使用時に製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
(実施例1)
化合物(A)である数平均分子量4000の3官能型ポリプロピレングリコール(エクセノール4030、旭硝子社製)2500gおよび化合物(F)であるアジピン酸ポリエステル(D−620N、数平均分子量800、引火点284℃、ジェイプラス社製)250gを反応容器に入れ、110℃、20mmHg以下で4時間減圧脱水した。
脱水後、80℃に冷却し、ポリイソシアネート化合物(B)であるトリレンジイソシアネート(コスモネート T−80、三井武田ケミカル社製)319.7gおよびオキサゾリジン化合物(D)である3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン(5BO、ウォーターケム社製)28.7gをかくはんしながら加え、更に可塑剤としてアジピン酸ジイソノニル(DINA、数平均分子量399、引火点232℃、ジェイプラス社製)を75g添加することで、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物A(イソシアネート残基2.21%、粘度9.8Pa・s(20℃))を得た。
【0052】
(実施例2)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)を500g用い、アジピン酸ジイソノニル(DINA)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物B(イソシアネート残基2.09%、粘度10.5Pa・s(20℃))を得た。
【0053】
(実施例3)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM、数平均分子量547、引火点256℃、ジェイプラス社製)を500g用いた以外は、実施例2と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物C(イソシアネート残基2.09%、粘度10.5Pa・s(20℃))を得た。
【0054】
(実施例4)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、トリメリット酸トリアルキルエステル(711TM、数平均分子量572、引火点276℃、ジェイプラス社製)を500g用いた以外は、実施例2と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物D(イソシアネート残基2.09%、粘度10.1Pa・s(20℃))を得た。
【0055】
(実施例5)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサエート)(TEGMER809、数平均分子量652、引火点284℃、CP−HALL社製)を500g用いた以外は、実施例2と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物E(イソシアネート残基2.09%、粘度6.7Pa・s(20℃))を得た。
【0056】
(実施例6)
化合物(A)である数平均分子量4000の3官能型ポリプロピレングリコール(エクセノール4030、旭硝子社製)2500gおよび化合物(F)であるアジピン酸ポリエステル(D−620N、数平均分子量800、引火点284℃、ジェイプラス社製)500gを反応容器に入れ、110℃、20mmHg以下で4時間減圧脱水した。
脱水後、80℃に冷却し、ポリイソシアネート化合物(B)であるトリレンジイソシアネート(コスモネート T−80、三井武田ケミカル社製)337.7gおよびオキサゾリジン化合物(D)である2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(PHO、東洋合成工業社製)30.1gをかくはんしながら加えることで、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー2(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物F(イソシアネート残基2.08%、粘度10.4Pa・s(20℃))を得た。
【0057】
(実施例7)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM、数平均分子量547、引火点256℃、ジェイプラス社製)を500g用いた以外は、実施例6と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー2(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物G(イソシアネート残基2.08%、粘度10.8Pa・s(20℃))を得た。
【0058】
(実施例8)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、トリメリット酸トリアルキルエステル(711TM、数平均分子量572、引火点276℃、ジェイプラス社製)を500g用いた以外は、実施例6と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー2(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物H(イソシアネート残基2.08%、粘度10.2Pa・s(20℃))を得た。
【0059】
(実施例9)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)の代わりに、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサエート)(TEGMER809、数平均分子量800、引火点284℃、CP−HALL社製)を500g用いた以外は、実施例6と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー2(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物I(イソシアネート残基2.08%、粘度10.2Pa・s(20℃))を得た。
【0060】
(比較例1)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン(5BO)およびアジピン酸ジイソノニル(DINA)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物J(イソシアネート残基2.50%、粘度20.9Pa・s(20℃))を得た。
【0061】
(比較例2)
アジピン酸ポリエステル(D−620N)およびアジピン酸ジイソノニル(DINA)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物K(イソシアネート残基2.46%、粘度21.2Pa・s(20℃))を得た。
【0062】
(比較例3)
アジピン酸ジイソノニル(DINA)を250g用いた以外は、比較例2と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物L(イソシアネート残基2.40%、粘度7.9Pa・s(20℃))を得た。
【0063】
(比較例4)
ジペンタエリスリトールヘキサ脂肪酸エステル(D600、数平均分子量943、引火点262℃、ジェイプラス社製)を500g用いた以外は、比較例2と同様の方法により、平均分子量約5300のウレタンプレポリマー1(NCO/OH=1.90)を含有するウレタンプレポリマー組成物M(イソシアネート残基2.09%、粘度9.7Pa・s(20℃))を得た。
【0064】
得られた各ウレタンプレポリマー組成物の粘度および引火点ならびに硬化後の可塑剤のブリードを、以下に示す測定方法により測定した。
【0065】
(粘度)
粘度(Pa・s)は、得られた各ウレタンプレポリマー組成物の調整直後、E型回転粘度計を用いて、20℃下、回転速度2.5rpm下で計測した。その結果を下記表1に示す。
【0066】
(引火点)
引火点(℃)は、得られた各ウレタンプレポリマー組成物の調整直後、クリーブランド開放式引火点測定器を用いて測定した。その結果を下記表1に示す。
【0067】
(可塑剤のブリード)
可塑剤のブリードは、得られた各ウレタンプレポリマー組成物の硬化物表面の汗かき、すなわち、化合物(F)ないし可塑剤のブリード現象の有無を目視により確認し、ブリードのないものを「○」と評価し、ブリードありのものを「×」と評価した。なお、比較例1および2においては、化合物(F)および可塑剤を用いていないため、「−」と表記した。その結果を下記表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
上記表1に示す結果より、実施例1〜9で得られたウレタンプレポリマー組成物A〜Iは、比較例1〜3で得られたウレタンプレポリマー組成物J〜Lに比べて、粘度が同等以下であり、引火点も250℃以上と高くなっていることが分かり、また、可塑剤のブリードもないことから、硬化物表面に塗料を施した後に比較例3および4で生じる塗膜の軟化や剥離、埃の付着による汚染を防ぐことができることが分かった。
【0070】
(実施例10〜18、比較例5〜8)
上記で得られたウレタンプレポリマー組成物A〜Mのいずれか(主剤)に対して、硬化剤、充填剤、硬化触媒および溶剤を、下記表2に示す質量部で添加した2液型ポリウレタンシーリング材1〜13を調整した。
【0071】
得られた各シーリング材について、硬化後の表面タック、可塑剤のブリード、塗膜軟化、塗膜密着性、塗膜汚染を以下に示す測定方法により測定し、
【0072】
(表面タック)
得られた各シーリング材をアルミニウムチャンネル(30mm×15mm×100mm)内に打設し、23℃下で2日間放置し、硬化させた。硬化後の硬化物表面のタックの残存度合いを、表面を指で触り確認した。指を硬化物表面に押付けた後、引き上げた時に硬化物が持ち上がったものを「×」評価し、持ち上がることはないが粘着感を感じたものを「△」と評価し、粘着感を殆ど感じなかったものを「○」と評価した。その結果を下記表2に示す。
【0073】
(可塑剤のブリード、塗膜軟化、塗膜密着性、塗膜汚染)
得られた各シーリング材をスレート上に厚さ5mmとなるよう打設し、20℃下にて1週間、50℃下にて1週間放置し硬化させた。硬化後の硬化物表面を塗装し、生成した塗膜について、60℃下で1週間放置したものを以下の方法により、可塑剤のブリードの有無、軟化の有無、密着性、汚染性を評価した。その結果を下記表2に示す。
(1)可塑剤のブリードの有無は、塗膜の指で触り確認し、指に可塑剤成分の付着が認められるものを「×」と評価し、認められないものを「○」と評価した。
(2)軟化の有無は、塗膜上に脱脂ガーゼを置き、更に60℃、1週間放置したものを用い、脱脂ガーゼが塗膜に付着したものを「×」と評価し、付着しなかったものを「○」と評価した。
(3)密着性は、NTカッターを用い、2mm幅で縦6本、横6本に切り、25ますの碁盤目の上からセロハンテープを貼付し、剥がしたときに8割以上(20ます以上)残ったものを「○」と評価し、残らなかったものを「×」と評価した。
(4)汚染性の評価は、塗膜上に、JIS Z8901-2005に規定されたJIS試験用粉体1,11種(関東ローム)を塗膜が隠れる程度にふりかけ、更に60℃恒温槽で2時間保持し、恒温槽から取り出した直後に0.1MPaの乾燥エアーで吹き飛ばすことにより行った。その結果、塗膜上に粉体の付着による着色の認められなかったものを「○」と評価し、認められたのものを「×」と評価した。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
上記表2に示される各成分は、以下の通りである。
・硬化剤:ポリプロピレングリコール(エクセノール3020、2官能性、数平均分子量3000、旭硝子社製)
・充填剤1:コロイダル炭酸カルシウム(MS−700、丸尾カルシウム社製)
・充填剤2:重質炭酸カルシウム(スノーライトS、丸尾カルシウム社製)
・硬化触媒:オクチル酸ビスマス(ネオスタンU660、ビスマス量3質量%、日東化成社製)
・溶剤:ミネラルスピリット(日本石油社製)
【0077】
上記表2に示す結果より、実施例10〜18で得られた2液型ポリウレタンシーリング材1〜9は、いずれも硬化後の表面タック、可塑剤のブリード、塗膜軟化および塗膜汚染がなく、塗膜密着性も良好であることが分かった。これに対し、比較例7で得られた2液型ポリウレタンシーリング材12は、表面タックが僅かにあり、塗膜汚染もあることが分かり、比較例8で得られた2液型ポリウレタンシーリング材13は、硬化後の表面タック、可塑剤のブリード、塗膜軟化および塗膜汚染があり、塗膜密着性も不良であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に活性水素基を2個以上有する化合物(A)と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)に、オキサゾリジン化合物(D)を添加して遊離のポリイソシアネート化合物の少なくとも一部を除去した組成物(E)と、
引火点250℃以上で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F)と、
を含有するウレタンプレポリマー組成物。
【請求項2】
前記化合物(F)が、グリコールエステル、トリメリット酸エステルおよびアジピン酸ポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項3】
前記グリコールエステルが、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサエート)である請求項2に記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項4】
前記トリメリット酸エステルが、トリメリット酸トリアルキルエステルである請求項2に記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項5】
前記化合物(F)の分子量が500〜2000であり、20℃における粘度が1000mPa・s以下である請求項1〜4のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項6】
前記化合物(F)の含有量が、前記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して2〜50質量部である、請求項1〜5のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項7】
更に、引火点250℃未満で分子内に常態においてイソシアネート基と反応する官能基を有しない化合物(F′)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項8】
前記オキサゾリジン化合物(D)が、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジンである請求項1〜7のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項9】
前記オキサゾリジン化合物(D)が、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンである請求項1〜7のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物を主剤として用いる2液型ポリウレタンシーリング材。

【公開番号】特開2008−13695(P2008−13695A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187539(P2006−187539)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】