説明

ウレタンベースの水性二層被覆システム、それらの使用、および該システムで被覆した基材

本発明は、ポリアクリレートのガラス転移温度Tgが≧20℃である少なくとも1つのポリアクリレート二次分散液、二次分散液のポリアクリレート含分とハイブリッド分散液のポリアクリレート−ポリウレタン含分との質量比が、1:1〜4:1、好ましくは2:1〜3:1、特に好ましくは2.25:1〜2.75:1である少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、および硬化剤として少なくとも1つのアミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートを含む、ポリウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートに関し、そして少なくとも1つのポリウレタン分散液、少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、および少なくとも1つのメラミン樹脂を含む水性二層被覆システムを製造するための水性ベースコートに関する。本発明はさらに、水性クリアコートと水性ベースコートとを含む水性二層被覆システム、該システムの製造方法、基材を被覆するための該システムの使用、ならびに該システムで被覆された基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンベースの水性二層被覆システム、この二層被覆システムを製造するための水性ベースコートと水性クリアコート、その使用、およびそれらにより被覆された基材に関する。
【0002】
自動車工業における一連の塗装においては、ベースコートとクリアコートから成る二層被覆システム(トップコートとも呼ばれる)は従来技術に属する。この被覆システムは、その下にある層を保護すること、および総コート構成に所望の光学特性と、要求される耐候性とをもたらすことに役立つ。ベースコートは、着色をもたらす、および/またはエフェクトをもたらす顔料を含む。クリアコートはベースコートを保護し、そしてその光学的作用を深める。トップコートは、溶媒含有性でも、水性であってもよい。
【0003】
ウレタンベースの水性二層被覆システムは、従来技術で公知である(BASF Handbuch Lackiertechnik,Vincentz Verlag,2002,p98〜99)。これらのシステムは、水性ポリウレタン分散液、およびポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド樹脂をベースとするものであり得る(Winnacker,Kuechler,Chemische Technik − Prozesse und Produkte,Band 7−Industrieprodukte,Wiley VCH,2004,P.662〜669)。
【0004】
この際、水性ポリウレタン分散液は、水中で外部乳化剤を用いて疎水性ポリウレタンを乳化することにより製造することができる。しかしながらまた、親水性基の組み込みによってポリウレタンの自己分散性を可能にすることもあり得る。この際に水分散性は例えば、アミンと共にアニオン基に移ったカルボキシレート基(アニオン性ポリウレタン分散液)により達成することができる。また、第三級アミノアルコールと、依然遊離イソシアネート官能基を含むプレポリマーとの反応により、および以後の酸による中和により、水分散性を達成することが可能である(カチオン性ポリウレタン)。さらなる選択肢は、水溶性の長鎖ポリエーテルによる、遊離イソシアネート官能基を有するプレポリマーの変性である(イオノゲンではないポリウレタン)。ポリウレタンの水性分散液は、Winnacker,Kuechler,Chemische Technik−Prozesse und Produkte,Band 7−Industrieprodukte,Wiley VCH,2004に記載されている様々な方法で製造することができる。これはとりわけ、アセトン法、プレポリマー混合法、および溶融分散法である。
【0005】
ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド樹脂の使用目的は、使用される両方の種類のポリマーの肯定的な特性を結びつけることであり、否定的な特性を最小限にすることである。これらは、異なる分散液の純粋な混合により生成する(ブレンド)ハイブリッドシステムについては種類によって、少なくとも一定の含分については異なる種類のポリマー間の化学的な結合が存在するシステムと、異なるポリマークラスが相互貫入網目構造(IPN)を形成するシステムとが区別される。
【0006】
前述のポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散液をベースとする水性被覆システムは、塗料工業ではすでに公知であり、かつ広く普及している。通常ポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散液は、水性ポリウレタン分散液中でビニルポリマー(ポリアクリレート)のエマルション重合により製造する。しかしながらまた、ポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散液を二次分散液として製造することも可能である。
【0007】
「二次分散液」という言葉は、まず均質な有機媒体中で重合させ、そしてこの後一般的には外部乳化剤を添加せずに中和しながら水性媒体中で再分散させる水性分散液と理解される。
【0008】
WO−A95/16004は例えば、オリゴウレタン−アクリレート共重合体をベースとする、水で希釈可能な塗料結合剤を記載している。この際、ビニル不飽和モノマーから成るモノマー混合物を、水で希釈可能な有機溶媒中で、および分子量が750〜1000の水溶性オリゴウレタンの存在下でラジカル重合させる。この二次分散液はこの後、焼付け塗料の調製のために使用される。
【0009】
DE−A4010176には、酸素で乾燥する塗料が開示されており、この際結合剤として、有機溶媒中でエチレン不飽和モノマーを、重合可能な二重結合を含むポリウレタン樹脂の存在下で重合させることによって得られるポリマーが使用される。
【0010】
EP−A657483には、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分として水性ポリウレタン分散液とから成る水性の二成分コーティング材料が記載されている。この際ポリオール成分は、酸基により親水化された、横方向の、および/または末端のビニル基を含む不飽和ポリウレタンマクロマーの中和と分散により製造する。引き続き、このPURマクロマーを、場合によりさらなるビニルモノマーの添加後、水相でラジカル重合させる。
【0011】
最後にEP−A742239は、ポリイソシアネート架橋剤と、水性ヒドロキシ末端化されたポリウレタンプレポリマー/アクリルハイブリッドとをベースとする二成分被覆システムを開示している。このハイブリッドポリマーは、水に分散可能なNCO官能性のウレタンプレポリマーを、少なくとも1つのヒドロキシ官能性のアクリレートモノマーおよびアルカノールアミンと反応させてヒドロキシ官能性のウレタンプレポリマー/モノマー混合物にし、水に分散させることによって得られる。この後この分散液にラジカル開始剤とヒドロキシ基を含む連鎖延長剤を添加し、そして引き続き水性反応混合物の加熱により、アクリレートモノマーのラジカル重合とポリウレタンの連鎖延長工程とを行い、完成させる。こうして得られたヒドロキシ官能性ポリウレタンプレポリマー/アクリルハイブリッド分散液はこの後、親水化されたポリイソシアネートの添加混合によって、使用可能な状態の二成分被覆材に調製することができる。この際の欠点は、抵抗特性や塗膜硬度のような塗料特性に否定的に作用することがある分子量調整剤を、アクリレートモノマー(例えばチオール)に対して最大6%使用することである。
【0012】
二成分(2K)被覆材の製造に適したポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド二次分散液は、DE−A 10308103に開示されている。そこに記載されているポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド二次分散液は、分子量Mnが1100〜10000のポリウレタンと、1つまたはそれ以上の不飽和ビニルモノマーとを、均質な非水性相でラジカル重合させ、少なくとも部分的に中和し、そして水相で分散させて製造される。該分散液は、様々な使用領域に適している。
【0013】
これらの二成分被覆材は、二層被覆システムとしても、しかしながらとりわけプラスチック基材上では充分な接着性がない:接着促進剤なしで水性ベースコートとしての被覆システムにより直接被覆されるプラスチック基材上では、充分な直接接着性がない。接着促進剤で被覆されたプラスチック基材上での、水性ベースコートとしての被覆システムの接着性もまた、要求を満たさない。さらに、このシステムをベースとする水性ベースコートは水性クリアコートと組み合わせた後、例えばとりわけ40℃で100時間の浸漬試験後、膨潤する。その上、該ベースコートもしくはその水性クリアコートはプラスチック基材上で、高い柔軟性と同時に良好なブラシ洗浄耐性および良好な薬品耐性とが組み合わされた所望の特性プロフィールを示さない。
【0014】
従って本発明の課題は、被覆システムで通常求められる要求、とりわけ光沢について(85以上の光沢値により)、および曇り形成について要求を満たす、ウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートを提供することである。その上、プラスチック上で高い柔軟性と同時に良好なブラシ洗浄耐性および良好な薬品耐性とを組み合わせた特性プロフィールを有する、ウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートを提供するのが望ましい。
【0015】
本発明のさらなる課題は、すべての基材、とりわけプラスチック基材上で接着促進剤有りでも無しでも良好な接着性を有する、ウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための、水性ベースコートを提供することである。さらに好ましい本発明の課題は水性クリアコートと組み合わせた後ほとんど膨潤しない、相応する水性ベースコートを提供することである。
【0016】
さらに、水性クリアコートに対しても水性ベースコートに対しても必要とされる要求を満たす、ウレタンベースの水性二層被覆システムを提供するのが望ましい。提供されるこの二層被覆システムは、良好に加工可能であるのが望ましい、すなわちとりわけ高い循環安定性(Ringlaufstabilitaet)を有するのが望ましい。
【0017】
本発明が提供するのは、示差走査熱量測定(DSC)により測定したポリアクリレートのガラス転移温度Tgが≧20℃である少なくとも1つのポリアクリレート二次分散液、および二次分散液のポリアクリレート含分と、ハイブリッド分散液のポリアクリレート−ポリウレタン含分との質量比が、1:1〜4:1、好ましくは2:1〜3:1、特に好ましくは2.25:1〜2.75:1である少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、ならびに硬化剤として少なくとも1つのアミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートを含む、ウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートである。
【0018】
本発明による水性クリアコートは、高い柔軟性と同時に、良好なブラシ洗浄耐性と良好な薬品耐性とを示す。本発明による水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートはさらに、光沢に対する、および雲り形成が少ないことに対する要求を満たす。
【0019】
ポリアクリレート二次分散液は好ましくは、固体含分に対して2.5質量%〜4.5質量%のOH含分を有する。該分散液はさらに好ましくは、DSCにより測定したポリアクリレートのガラス転移温度が、20〜70℃である。さらになお好ましくは、このポリアクリレート二次分散液は、DIN EN ISO 3219/A.3により測定される粘度が23℃で約200〜約2500mPasである。好ましい市販品は、Bayer Material ScienceのBayhydrol XP 2469、 Bayhydrol A 145、およびBayhydrol XP 2470である。特に好ましいのは、OH含分が3.9質量%、DIN EN ISO 3219/A.3で測定される粘度が23℃で約2000mPas、そしてガラス転移温度Tgが50℃(DSCにより測定)である、Bayhydrol XP 2470である。
【0020】
ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液は、少なくとも1つのジイソシアネートと、少なくとも1つの線状ポリエステルとの反応、および以降のジエタノールアミンによるプレポリマーのブロッキングにより製造可能なポリウレタン前駆体を介して製造することができる。好ましくは、ジイソシアネートTMXDIを使用する。線状ポリエステルは好ましくは、酸成分として二量体の脂肪酸、および/またはイソフタル酸を、ならびにアルコール成分としてネオペンチルグリコール、および/またはヘキサンジオールをベースとする。この後この前駆体を、ハイブリッド分散液を製造するために有機相に装入することができる。このポリウレタン前駆体の存在下、その後1工程、またはそれ以上の連続する後続工程で(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリレートと、不飽和ビニル化合物とを重合させる。この際複数工程で重合する場合は、それぞれの化合物もしくは化合物クラスの添加を工程ごとに行うことによって、および/または少なくとも2つの化合物クラスの混合物の添加を工程ごとに行うことによって反応させることができる。好ましい複数工程の反応実施においては、スチレン、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートを重合させ、そしてこの際少なくとも1つの工程でアクリル酸と反応させる。重合を行った後に中和し、そして工程溶媒を除去する。固体含分は、35質量%である。
【0021】
アミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートは、HMDIまたはIPDIベースのポリイソシアネートであってよい。アミノスルホン酸のポリイソシアネートは好ましくは、HMDIベースのポリイソシアネートである。アミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートは好ましくは、DIN EN ISO 3219/A.3により測定される粘度が23℃で2000〜8000mPasである。
【0022】
さらに好ましくは、このポリイソシアネートは、NCO含分が17.0〜25.0質量%である。さらになお好ましくは、そのNCO官能性Fが2.5〜3.8である。相応する市販品は例えば、Bayer Material ScienceのBayhydur XP 2487/1、および Bayhydur XP 2570である。特に好ましくは、Bayhydur XP 2570として市販で得られる、DIN EN ISO 3219/A.3で測定される粘度が23℃で3500mPas、NCO含分が20.5質量%、そしてNCO官能性Fが3.0であるアミノスルホン酸のHMDI三量体を使用する。
【0023】
二層被覆システムのクリアコートはさらに、疎水性の低粘度ポリイソシアネートを、より速い硬化と、硬化剤の粘度低下とをもたらす硬化剤として有することができる。これに加えて、硬化された被覆の水敏感性が低下する。好ましくはこの低粘度ポリイソシアネートは、DIN EN ISO 3219/A.3で測定される粘度が23℃で1500mPas未満である。好ましくはこの目的のために、HDI三量体を使用する。このような疎水性ポリイソシアネートに対する例は、NCO含分が23.0もしくは24.0質量%、DIN EN ISO 3219/A.3で測定される粘度が23℃で1200もしくは700mPas、NCO官能性Fが3.2もしくは3.1であり、かつ等量が180もしくは175である、Bayer Material ScienceのDesmodur N 3600、およびDesmodur XP 2410である。特に好ましくは、疎水性の低粘度ポリイソシアネートであるDesmodur XP 2410を使用する。
【0024】
本発明による二層被覆システムのクリアコートは、前述の成分の他に少なくとも1の添加剤、例えば架橋剤、分散剤、接着促進剤、腐蝕防止剤、均展剤、消泡剤、殺生剤、光安定剤、ワックス、粒径が25nm未満の硫酸バリウム、つや消し剤、および/または増粘剤を含むことができる。
【0025】
クリアコートと水性ベースコートとの良好な接着性、ならびに下地に対して(プラスチック基材に対して直接、またはカソード浸漬塗装により被覆された基材に対して直接)良好な接着性を示すのは、少なくとも1つのポリウレタン分散液、先に記載した種類の少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、および少なくとも1つのメラミン樹脂を含む、前述の種類の水性二層被覆システムを製造するための水性ベースコートである。この水性ベースコートはまた、本発明により使用するクリアコートのもとではほんの僅かにしか、またはまったく膨潤せず、かつ加工性が良好である。とりわけ該ベースコートは、所望の循環安定性を有する。
【0026】
少なくとも1つのポリウレタン分散液のポリウレタン結合剤含分と、水性ベースコートの少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液のポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド結合剤含分との質量比は、好ましくは3:1〜5.5:1、さらに好ましくは4:1〜4.5:1である。
【0027】
水性ベースコート中で使用するポリウレタン分散液は、UV安定性のジイソシアネートもしくはポリイソシアネート、モル質量Mnが600〜2000のポリエーテルおよび/またはポリエステル、低分子量のジオールおよび/またはエタノールアミンから製造可能である。この文脈において低分子量のジオールおよび/またはエタノールアミンとは、モル質量範囲が62〜600の化合物と理解される。ジイソシアネートとして好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3−イソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、およびビス−(パラ−イソシアナトシクロヘキシル)メタンを使用する。また、上記化合物の混合物、または相応するオリゴマー、例えばイソシアヌレート、アロファネート、およびウレトジオンを使用することもできる。特に好ましいのは、Desmodur Wという市販品として手に入るモノマーである、DIN EN ISO 3219/A.3による粘度が25℃で約30mPasの、そしてNCO含分が31.8質量%のビス−(パラ−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ならびにイソホロンジイソシアネートである。ポリエステルとして好ましくは、二量体の脂肪酸、および/またはイソフタル酸を酸成分として、およびヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、および/またはジメチロールプロピオン酸を、ヒドロキシ官能性成分として使用する。後続のプレポリマーの連鎖延長は、好ましくはトリメチロールプロパンにより行う。ポリウレタン分散液は、中和、分散、および工程溶媒の除去により得られる。ポリエーテルとして好ましくは、低分子量のポリエチレングリコール、または分子量が約200〜1000のポリブチレングリコールを使用する。
【0028】
水性ベースコート中で使用する、先に記載した種類の少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液は、好適には水性クリアコート中で使用するものと同一である。
【0029】
水性ベースコート中で使用する少なくとも1つのメラミン樹脂の結合剤含分と、少なくとも1つのポリウレタン分散液の質量含分と、少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液の質量含分との合計との質量比は、好適には1:2〜1:8、特に好ましくは1:3〜1:4である。
【0030】
良好な耐水性、柔軟性、および貯蔵安定性を達成するために、メラミン樹脂として好ましくは、アルコキシアルキル化されたメラミン樹脂、例えばメトキシメチル化され、かつブトキシメチル化された、市販で得られるCymel 1133を使用する。
【0031】
先に記載した種類の水性クリアコートと先に記載した種類の水性ベースコートとの組み合わせにより製造可能な二層被覆システムは、水性クリアコートに、および水性ベースコートに対して求められる要求を満たし、かつ良好に加工可能である。とりわけ該システムは、良好な循環安定性を有する。
【0032】
本発明の構成要素はまた、基材を被覆するための、本発明による二層被覆システムの使用、ならびにこの被覆された基材そのものである。被覆のため、前処理された、または前処理されていない基材の少なくとも片面を水性ベースコートで被覆し、乾燥し、水性クリアコートで被覆し、そして再度乾燥させる。第一の層を塗布後の乾燥は好ましくは、何分もの中間乾燥後、3〜15分の時間にわたって、40〜100℃で行う。水性クリアコート適用後の第二の乾燥工程は好ましくは、30分から1時間の時間にわたるフラッシュオフ後、120℃未満の温度で、好ましくは60〜100℃の温度で、10〜30分の時間にわたって行う。乾燥させる二層被覆の各層の好ましい層厚は、水性ベースコート層については約10〜25μm、水性クリアコート層については30〜60μmである。
【0033】
被覆される基材は、SMC、PA/PPO、PU/RIM、PC−PBT、GFK、PPO、PP/EPDMであってよい。好ましくは、自動車工業領域と輸送用車両領域で慣用の基材を、本発明による二層被覆システムで被覆する。特に好ましくは、権利請求する被覆された基材が、自動車工業領域と輸送用車両領域から得られるプラスチック基材である。
【0034】
実施例
水性ベースコートのための、本発明によるポリウレタン分散液I
本発明によるポリウレタン分散液Iのための、ポリエステルポリオールAの製造
重縮合反応に適した鋼製反応器内に、Pripol 1012(Unichema社の二量体脂肪酸)4634g、1,6−ヘキサンジオール2577g、イソフタル酸1372g、および共留剤としてキシレン110gを秤量し、150℃に加熱した。混合物の温度は、塔頂温度が125℃を上回らないように上昇させた(最大220℃)。酸価5から、留去が起こって酸価が3.5になった。引き続き、ポリエステルをメチルエチルケトンに少し溶解させて、FKを73%にする。
【0035】
本発明によるポリウレタン分散液Iの製造
ポリエステル樹脂溶液A 1434gを、メチルエチルケトン384g、ジメチロールプロパン酸85g、ネオペンチルグリコール14g、およびイソホロンジイソシアネート392gとともに、一定のイソシアネート含分になるまで加熱した。引き続きトリメチロールプロパン38gを添加して、NCO含分を1.1%にした。10〜14dPasの粘度範囲(N−メチルピロリドン中で測定して1:1)で、n−ブタノール40gの添加によりさらなる反応を止めた。82℃で60分の撹拌後、ジメチルエタノールアミン43gを添加した。82℃で30分の撹拌後、ブチルグリコール170gを添加し、そしてさらに82℃で30分間撹拌した。この後、水3550gを撹拌しながら加えた。真空下、約70℃での蒸留により、メチルエチルケトンを残分が0.5%未満になるまで除去した。引き続き、脱イオン水により固体含分(1時間、130℃)を27%に調整した。pH値は、7.7だった。この材料は均質であり、かつ斑点も、まだらも無い。
【0036】
クリアコート、および水性ベースコートのための、本発明によるポリアクリレートポリウレタンハイブリッドポリマーI
ポリウレタン樹脂溶液を製造するための、ポリエステルポリオールの製造
重縮合反応に適した鋼製反応器内に、Pripol 1012(Unichema社の二量体脂肪酸)728.3g、1,6−ヘキサンジオール239.2g、イソフタル酸294.4g、およびネオペンチルグリコール204.8g、ならびに共留剤としてキシレン180gを秤量し、そして150℃に加熱した。混合物の温度は、塔頂温度が125℃を上回らないように上昇させた(最大220℃)。酸価5から、留去が起こって酸価が3.5になった。引き続き、ポリエステルをメチルエチルケトンに少し溶解させて、FKを73%にする。
【0037】
ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッドポリマーを製造するための、ポリウレタン樹脂溶液の製造
還流冷却器を備えるポリウレタン樹脂の製造に適した鋼製反応器内に、先に記載したポリエステル樹脂溶液2351.2g、ネオペンチルグリコール107.3g、TMXDI 692.5g、およびジラウリン酸ジブチルスズ01.75gを装入し、そして80〜90℃に加熱した。一定のNCO含分に到達した後、N,N−ジエタノールアミン47.7gを添加した。反応終了後、ブチルグリコールを用いて少し溶解させ、固体含分を60%にした。
【0038】
ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッドポリマーIの製造
還流冷却器を備える重合に適した鋼製反応器内に、先に記載した有機ポリウレタン樹脂溶液1355.6g、およびブチルグリコール759.8gを装入し、そして約110℃に加熱した。この装入物に、温度は維持したままで5時間以内にスチレン679.2g、ブチルアクリレート1824.8g、シクロヘキシルアクリレート775g、およびヒドロキシエチルアクリレート1225.4gから成る混合物を、そしてブチルグリコール580gと、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートとから成る混合物を5.5時間以内に均一に計量添加した。さらに一時間後、同時に開始してブチルアクリレート363.6g、スチレン135.6g、シクロヘキシルアクリレート154.4g、およびアクリル酸299.8gから成る混合物を1時間以内に、そしてブチルグリコール552gと、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート107.8gとから成る混合物を1.5時間以内に均一に計量添加した。目立った固体含分の上昇がこれ以上起こらなくなった後、120℃に加熱し、そして残留モノマー含分が0.3%未満に、かつ粘度(ブチルグリコール中で10対6)が約5〜5.8dPasになるまで、真空下でストリッピングした。約90℃に冷却後、N,N−ジエチルエタノールアミン224.8gを添加し、そして脱イオン水で希釈し、そして固体含分を35%に調整した。分散液のpH値は、7.4だった。
【0039】
実施例:
組成:
2K水性クリアコート:
第一成分:
45質量%のポリアクリレート二次分散液(Bayhydrol XP 2470)
52.80質量部
35質量%のポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッドポリマーI
26.80質量部
水 10.00質量部
ブチルグリコール 1.66質量部
ポリエステル(K−Flex 188) 5.70質量部
様々な添加剤 5.24質量部
102.20質量部

第二成分:
親水化されたHDIポリイソシアネート(Bayhydur XP 2570)
38.00質量部
脂肪族HDIポリイソシアネート(Desmodur XP 2410)
33.00質量部
ブチルグリコールアセテート 29.00質量部
100.00質量部

混合比 主成分:使用するコート中の硬化剤
質量比で100:43

水性ベースコート:
水 38.59質量%
27質量%のポリウレタン分散液I 30.30質量%
35質量%のポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッドポリマーI
5.50質量%
Cymel 1133(メラミン樹脂) 2.80質量%
顔料ペースト含分 8.80質量%
さらなる成分 14.01質量%
100.00質量%
被覆された基材の製造:
カソード浸漬塗料(Cathoguard 500、BASF Coatings AG)と、充填材(2840−20、Glasurit GmbH)とで前処理した金属基材を、気圧式で水性ベースコートにより被覆する。5分間のフラッシュオフ後、80℃で10分間乾燥する。こうして得られた層厚は、12〜20μmである。
【0040】
引き続き、水性クリアコートを気圧式で塗布する。40分間のフラッシュオフ後、80℃で20分間乾燥させる。得られる層厚は、40〜50μmである。
【0041】
こうして得られる被覆は、以下の特徴的な性質を有する。
【0042】
視覚的印象(optischer Eindruck)
ワキ無し、光沢度20° 92E
lw 1.9
sw 16
像の鮮明度(Distinction of Image) 82
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンベースの水性二層被覆システムを製造するための水性クリアコートにおいて、
ポリアクリレートのガラス転移温度Tgが≧20℃である、少なくとも1つのポリアクリレート二次分散液、および
少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、
(二次分散液のポリアクリレート含分と、ハイブリッド分散液のポリアクリレート−ポリウレタン含分との質量比は、1:1〜4:1、好ましくは2:1〜3:1、特に好ましくは2.25:1〜2.75:1である)、および
硬化剤としてアミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートを少なくとも1つ含むことを特徴とする、水性クリアコート。
【請求項2】
ポリアクリレート二次分散液が、固体含分に対して2.5〜4.5質量%のOH含分を有することを特徴とする、請求項1に記載の水性クリアコート。
【請求項3】
ポリアクリレート二次分散液が、ガラス転移温度Tgが20〜70℃のポリアクリレートを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水性クリアコート。
【請求項4】
ポリアクリレート二次分散液が、23℃で200〜2500mPasの粘度を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性クリアコート。
【請求項5】
ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液が、
少なくとも1つのジイソシアネートと、少なくとも1つの線状ポリエステルとの反応により、および引き続いた、ジエタノールアミンによるプレポリマーのブロッキングにより製造可能なポリウレタン前駆体を、有機相に装入すること、
ポリウレタン前駆体の存在下での、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリレートと、不飽和ビニル化合物との、1工程または複数工程での重合、および
中和と工程溶媒の除去
により製造可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性クリアコート。
【請求項6】
アミノスルホン酸の低粘度ポリイソシアネートが、HMDIもしくはIPDIベースのポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性クリアコート。
【請求項7】
硬化剤としてさらに疎水性の低粘度ポリイソシアネートを含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性クリアコート。
【請求項8】
さらに少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性クリアコート。
【請求項9】
水性二層被覆システムを製造するための水性ベースコートにおいて、少なくとも1つのポリウレタン分散液、少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液、および少なくとも1つのメラミン樹脂を含むことを特徴とする、水性ベースコート。
【請求項10】
少なくとも1つのポリウレタン分散液のポリウレタン結合剤含分と、水性ベースコートの少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液のポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド結合剤含分との質量比が、3:1〜5.5:1、好ましくは4:1〜4.5:1であることを特徴とする、請求項9に記載の水性ベースコート。
【請求項11】
少なくとも1つのポリウレタン分散液が、
UV安定性のジイソシアネートもしくはポリイソシアネート、
モル質量Mnが600〜2000のポリエーテルおよび/またはポリエステル、
および低分子量のジオール、および/またはエタノールアミン
から製造可能であることを特徴とする、請求項9または10に記載の水性ベースコート。
【請求項12】
少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液が、
少なくとも1つのジイソシアネートと少なくとも1つの線状ポリエステルとの反応により、および引き続いたジエタノールアミンによるプレポリマーのブロッキングにより製造可能なポリウレタン前駆体を有機相に装入すること、
ポリウレタン前駆体の存在下での、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリレートと、不飽和ビニル化合物との、1工程または複数工程での重合、および
中和と工程溶媒の除去
により製造可能であることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項13】
少なくとも1つのメラミン樹脂の結合剤の質量比が、少なくとも1つのポリウレタン分散液の結合剤の質量含分と、少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液の質量含分との合計に対して、1:2〜1:8、好ましくは1:3〜1:4であることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項14】
水性ベースコート中で使用するメラミン樹脂が、アルコキシアルキル化されていることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性クリアコート、および請求項9から14までのいずれか1項に記載の水性ベースコートを含む、ウレタンベースの水性二層被覆システム。
【請求項16】
水性ベースコートの少なくとも1つのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液が、水性クリアコートのポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド分散液と同一であることを特徴とする、請求項15に記載の水性二層被覆システム。
【請求項17】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性クリアコートを、請求項9から14までのいずれか1項に記載の水性ベースコートと組み合わせることを特徴とする、請求項15または16に記載の水性二層被覆システムの製造方法。
【請求項18】
前処理した、または前処理していない基材を少なくとも片面で水性ベースコートにより被覆し、乾燥し、水性クリアコートで被覆し、そして再度乾燥させることを特徴とする、基材を被覆するための、請求項15または16に記載の水性二層被覆システムの使用。
【請求項19】
請求項15または16に記載の水性二層被覆システムで被覆された基材。

【公表番号】特表2010−526194(P2010−526194A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506838(P2010−506838)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003488
【国際公開番号】WO2008/135210
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】