説明

ウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物

【課題】結晶化しにくく低粘度であり、活性エネルギー線で硬化した硬化塗膜の硬度が高く、耐衝撃性および耐カール性に優れる特徴を有するウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)とから得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート(A)に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)を反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線で硬化可能なウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の分野で、その優れた強靭性により幅広く使用されている。通常、(メタ)アクリレート樹脂にウレタン基を導入するには、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの反応が用いられるが、必要とされる特性を付与するために、様々な構造を有するポリイソシアネートが使用されている。それらの中で、アロファネート基を有するポリイソシアネートを用いたものも知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、ウレタン基含有(メタ)アクリレートの結晶化を妨げ、なおかつ、低粘度とするために、アロファネート基を有するポリイソシアネートが有効であることが記載されている。また、特許文献2には、アロファネート基を有するポリイソシアネートを用いると、基材であるプラスチックとの密着性に優れるウレタン基含有ポリイソシアネートが得られることが記載されている。しかしながら、いずれの特許文献においても、アロファネート基を構成するアルキル基の構造に関する詳細な記載はなく、アロファネート基を有するポリイソシアネートを用いたウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物であっても結晶化する場合や粘度が満足いく程度まで低下しない場合があった。更に、ウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を活性エネルギー線で硬化した塗膜の耐衝撃性が充分ではなく、硬化収縮が大きいという欠点がある場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130835号公報
【特許文献2】特開2006−83273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、活性エネルギー線で硬化した塗膜が高い硬度を有しつつ、優れた耐衝撃性及び耐カール性を有するウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を提供することを目的とする。併せて、本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、取り扱い上問題となる結晶化しやすさと高粘度が抑制された、改善された性質を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため検討を進め、ジイソシアネートと特定の構造を有する脂肪族モノアルコールとから得られるアロファネート基を有するポリイソシアネートに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂が結晶化しにくい上に低粘度であり、さらに驚くべきことに、これから得られる活性エネルギー線硬化塗膜の硬度が高く、耐衝撃性及び耐カール性に優れることを見出し、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1](A)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族第一級モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネートに、
(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を、
反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
[2](A)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種類のポリオールと、
をウレタン化反応させて得られるNCO末端ウレタンオリゴマー(A’)に、
(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を、
反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
[3]上記[1]または[2]に記載のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、及び光重合開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4]上記[3]記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング剤、インキ、粘着剤、又は接着剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、結晶化しにくく低粘度であり、これから得られるUV硬化塗膜等の活性エネルギー線硬化塗膜の硬度が高く、耐衝撃性および耐カール性に優れる特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、
[1]脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート(A)に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)を、反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、又は、[2]脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート(A)と、少なくとも1種類のポリオール(C)と、をウレタン化反応させて得られるNCO末端ウレタンオリゴマー(A’)に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)を、反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物である。
【0009】
ジイソシアネート(a)
本発明の出発原料の1つであるジイソシアネート(a)は、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートである。脂肪族又は脂環族ジイソシアネートであるため、芳香族ジイソシアネートを用いた場合と比較して、耐候性、硬化物の耐黄変性に著しく優れている。脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に飽和脂肪族基を有する化合物である。一方、脂環族ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるポリイソシアネート組成物が低粘度となるのでより好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート以下、HDIともいう)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられるが、これらには限定されない。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート 以下、IPDIともいう)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられるが、これらには限定されない。この中でもHDI、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIを用いると耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。
【0010】
脂肪族モノアルコール(b)
本発明の出発原料の1つである脂肪族モノアルコール(b)は、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコールである。脂肪族モノアルコールの炭素数が6以上であれば、ウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物の粘度が低く、それから得られる活性エネルギー線硬化塗膜の耐衝撃性および耐カール性が良好となり、脂肪族モノアルコールの炭素数が9以下であれば、得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物が結晶化しにくく、更にそれから得られる活性エネルギー線硬化塗膜の硬度も高くなる。また、脂肪族モノアルコールが分岐を有していれば、得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物の粘度が低い上に結晶化しにくい。このような脂肪族モノアルコールとしては、例えば、4−メチル−1−ペンタノール(4−メチル−n−アミルアルコール)、2−エチルブタノール、2−エチルペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール等が挙げられるが、これらには限定されない。2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールは粘度が低くなるので、特に好ましい。
【0011】
ポリイソシアネート(A)
本発明の中間原料の1つであるポリイソシアネート(A)は、上記ジイソシアネート(a)と脂肪族モノアルコール(b)をウレタン化反応させることにより出来るウレタン基含有化合物を、アロファネート化反応することによって得ることができるアロファネート基含有ポリイソシアネートである。アロファネート基含有ポリイソシアネート(A)の製造方法について、以下に示す(なお、特許第3891934号の記載も、併せて参照されたい。)。
【0012】
ジイソシアネート(a)と、脂肪族モノアルコール(b)とを反応させる際の、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)が有するイソシアネート基と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)が有する水酸基のモル比には、特に制限はないが、2.1:1〜100:1、好ましくは3:1〜60:1、より好ましくは5:1〜40:1が適当である。このようなイソシアネート基と水酸基のモル比の場合に、生産効率が良好であり、かつ原料のジイソシアネート(a)や脂肪族モノアルコール(b)、ジイソシアネート(a)と脂肪族モノアルコール(b)とのウレタン化反応物が残存することなく、さらにゲル化などを起こすことなく反応させることができる。
【0013】
アロファネート化反応を行なう場合は、触媒を用いた方が好ましく、特に生成するポリイソシアネート(A)のアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が95/5〜100/0となる触媒を選択するのが好ましい。このようなアロファネート化触媒としては、例えば、亜鉛、錫、ジルコニウム、ジルコニル等のカルボン酸塩等、あるいは、これらの混合物が挙げられる。アロファネート化触媒量は、反応液総重量を基準として、通常0.001〜2.0wt%、好ましくは0.01〜0.5wt%にて用いられる。0.001wt%以上で触媒の効果が十分に発揮できる。2wt%以下でアロファネート化反応の制御が容易である。
【0014】
アロファネート化触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基含有化合物の製造前、すなわち、ジイソシアネート(a)と脂肪族モノアルコール(b)のウレタン化反応に先立って添加してもよいし、ジイソシアネート(a)と脂肪族モノアルコール(b)のウレタン化反応中に添加してもよく、ウレタン基含有化合物の製造後に添加してもよい。また、添加方法として、所定量のアロファネート化触媒を一括して添加してもよいし、何回かに分割してもよい。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
【0015】
本発明の中間原料であるアロファネート体(アロファネート基を有するポリイソシアネート(A))の製造における反応温度は、必ずしも限定されないが、ウレタン化反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜100℃で、アロファネート化反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは40〜160℃、より好ましくは50〜140℃である。
【0016】
本発明のウレタン化反応、アロファネート化反応等は、無溶剤中で行なうことができるが、必要に応じて、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエンやキシレンやジエチルベンゼン等の芳香族系溶剤、ジアルキルポリアルキレングリコールエーテル等のNCO基との反応性を有していない有機溶剤、およびそれらの混合物を溶剤として使用することもできるが、これらには限定されない。反応終了後、溶剤は薄膜蒸発缶、抽出などにより除去できる。
本発明におけるウレタン化反応、アロファネート化反応の過程は、反応液のNCO含有量を測定するか、屈折率を測定することにより追跡できる。
【0017】
アロファネート化反応は、室温に冷却するか、反応停止剤を添加することにより停止できる。触媒を用いる場合、反応停止剤を添加するほうが、副反応を抑制することができるために好ましい。反応停止剤を添加する量は、触媒に対して、通常0.25〜20倍のモル量、好ましくは0.5〜16倍のモル量、より好ましくは1〜14倍のモル量である。0.25倍以上のモル量で完全に失活することが可能となる。20倍以下のモル量で保存安定性が良好となる。反応停止剤としては、触媒を失活させるものであれば、何を使ってもよい。例えば、リン酸やピロリン酸等のリン酸酸性を示す化合物、リン酸やピロリン酸等のモノアルキルあるいはジアルキルエステル、モノクロロ酢酸物などのハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0018】
アロファネート化反応終了後、未反応のHDI等のモノマーは薄膜蒸発缶、抽出などにより除去できる。HDIに代表される残留モノマー濃度は3wt%以下、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下である。残留モノマー濃度が3wt%以下であれば、ウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物が結晶化しにくい。
【0019】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)
本発明の出発原料の1つである(B)は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物である。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)成分の水酸基とアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)成分のイソシアネート基とを反応させることで本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造できる。このような水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(2−HPMA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(2−HBA)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタアクリレートなどの分子内に1個の(メタ)アクリレート基を有する化合物や、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、グリセリンジメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの分子内に2個以上の(メタ)アクリレートを有する化合物や、上記の水酸基および(メタ)アクリレートを有する化合物とε−カプロラクトンとの付加物等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらには限定されない。
【0020】
ポリオール(C)
本発明の任意的な出発原料の1つである(C)は少なくとも1種類のポリオールである。(C)成分は本発明において必ずしも必要ではないが、(C)成分を加えることにより、本発明から得られる硬化物の可とう性を改良できる。そのようなポリオール(C)としては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられるがこれらには限定されない。
【0021】
ポリエーテルポリオールの製造方法としては、例えば、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミンなど、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、エチレンジアミンなどのジアミンの単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポルフィリン、複合金属シアン化合物錯体、金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属錯体を触媒として使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加する方法を挙げることができるがこれらには限定されない。
【0022】
ポリエステルポリオールの製造方法としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独または混合物との間で公知の縮合反応を行う方法を挙げることができるがこれらには限定されない。この縮合反応は、例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって行うことができる。更に、例えばε−カプロラクトンなどのラクトン類を多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0023】
ポリカーボネートジオールの製造方法としては、例えば、有機カーボネート化合物と、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールおよび所望により他のジオールとの混合物を一般的なエステル交換触媒の存在下又は無触媒下に従来公知の方法でエステル交換反応に付すことより行なう方法を挙げることができるがこれらには限定されない。
【0024】
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物の製造における各出発原料の使用量は、特に限定はされないが、ポリイソシアネート(A)と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)との配合比(NCO/OH当量比)は好ましくは1以下であり、(ポリオール(C)を使用する場合の)ポリイソシアネート(A)とポリオール(C)とのNCO/OH当量比は、通常1〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜3で、その反応させたNCO末端ウレタンオリゴマー(A’)と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)とのNCO/OH当量比は好ましくは1以下である。
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組生物は、NCO/OH比が1以外であれば、未反応のポリイソシアネート(A)又は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(B)や、末端の状態が異なる複数種のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂を含む混合物となっているため、「組成物」と呼ぶ。但し、NCO/OHを1にして製造した物も、本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組生物の範囲内である。
【0025】
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造する際には、ウレタン化反応促進触媒を用いてよく、例えば、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のスズ化合物や、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、メチルモルホリン、ジモルホリンエチルエーテル、ジメチルピペラジン、トリメチルアミノメチルエタノールアミン等の3級アミンが挙げられるがこれらには限定されない。その添加量は、樹脂部の総重量100重量部に対して、通常0.005〜0.1重量部、好ましくは0.01〜0.05重量部である。
【0026】
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造する際には、重合禁止剤を用いてよく、例えば、メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHT)等が挙げられる。その添加量は、樹脂部の総重量100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0027】
活性エネルギー線重合開始剤
本発明の一形態である活性エネルギー線硬化型組成物において用いられる活性エネルギー線重合開始剤としては、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられるがこれらには限定されない。これらから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。より好ましくは、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが用いられる。その添加量は、樹脂部の総重量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0028】
本発明で活性エネルギー線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられるがこれらには限定されない。高圧水銀ランプの場合は、例えば5〜3000mJ/cm、好ましくは、10〜1500mJ/cmの条件で行なわれるがこれらには限定されない。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。
【0029】
本発明の一形態である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、レべリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、表面活性剤、カップリング剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合することも出来る。光安定剤および紫外線吸収剤の添加により、耐候性を向上させることができる。光安定剤の例として、サノールLS765(チバ・ジャパン製)等のHALS、紫外線吸収剤の例として、TINUVIN571(チバ・ジャパン製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の一形態である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、実質的に揮発溶剤を含まなくても取り扱いやすいが、場合によっては揮発溶剤で希釈しても良い。有機溶剤は、OH基およびNCO基と反応する官能基を有していない方が好ましい。また、有機溶剤は本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物と相溶する方が好ましい。このような有機溶剤として、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0031】
本発明の一形態である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、コーティング剤、インキ、粘着剤、又は接着剤等に使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明はいかなる意味においてもこれらの実施例によっては限定されない。以下の実施例/比較例及び合成例において、各種の特性・物性の評価は、以下の方法によって行った。
〔NCO含有量〕
NCO基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって測定した。
〔粘度〕
E型粘度計(東機産業株式会社製 RE−85R)で、標準ローター(1°34’×R24)を用いて、25℃で測定した。なお、ウレタンアクリレート粘度の評価結果については、10000mPa・s以下:◎、10000mPa・s超〜12000mPa・s以下:○、12000mPa・s超:△、結晶化:×でランク付けして示した。
【0033】
ローターの回転数は、以下の通り。
100r.p.m.(128mPa・s未満の場合)
50 r.p.m.(128mPa・s〜256mPa・sの場合)
20 r.p.m.(256mPa・s〜640mPa・sの場合)
10 r.p.m.(640mPa・s〜1280mPa・sの場合)
5 r.p.m.(1280mPa・s〜2560mPa・sの場合)
2.5r.p.m.(2592mPa・s〜5184mPa・sの場合)
1.0r.p.m.(5184mPa・s〜12960mPa・sの場合)
0.5r.p.m.(12960mPa・s〜25920mPa・sの場合)
【0034】
〔アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比〕
1H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積比から求めた。
【0035】
〔UV照射〕
小型UV照射装置(オーク製造社のハンディUV−300)を用いた。なお、積算光量は、紫外線光量計付照度計(オーク製造社のUV−M03A)で測定した。
【0036】
〔ケーニッヒ硬度〕
ケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester(商品名))を用いて、測定温度23℃で測定した。なお、評価結果は、100以上:◎、70以上:○、70未満:×でランク付けして示した。
【0037】
〔耐衝撃性〕
JIS−K−5600−5−3(デュポン式)に準じて測定した。評価結果は、1/2インチ*300g*50cm以上:◎、1/2インチ*300g*40cm以上:○、1/2インチ*300g*35cm以下:×でランク付けして示した。
【0038】
〔耐カール性〕
塗工されたPETフィルム(厚さ:25μm)を5cm四方に切り出し、その四隅の浮き高さの平均値を計測した。評価結果は、浮き高さの平均値が3mm以下:○、3mm以上:×でランク付けして示した。
【0039】
[ポリイソシアネート(A)の製造]
[合成例1]
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けた4口フラスコに、HDI600g、2−エチル−1−ブタノール36.49gを仕込み、90℃で1時間ウレタン化反応を行なった。130℃に昇温した後、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニウムの固形分20wt%2−エチル−1−ヘキサノール溶液を0.15g加えた。反応液の屈折率上昇が0.0052となった時点で、リン酸の固形分10wt%2−エチル−1−ヘキサノール溶液を1.38g(触媒に対して、14倍モル)を加えて、反応を停止した。さらに、反応液を130℃で1時間加熱を続けた後、常温に冷却した。
【0040】
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目0.3Tor.(150℃)、2回目0.2Tor.(150℃)で、未反応のHDIを除去した。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:17.8wt%、粘度:120mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であり、本発明の中間原料であるポリイソシアネート(A)に該当する。以下、P1と呼ぶ。(表1)。
【0041】
[合成例2]
2−エチル−1−ブタノール36.49gに代えて2−エチル−1−ヘキサノール46.51gを使用した以外は、合成例1と同様に合成を行なった。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:17.1wt%、粘度:130mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であり、本発明の中間原料であるポリイソシアネート(A)に該当する。以下、P2と呼ぶ(表1)。
【0042】
[合成例3]
2−エチル−1−ブタノール36.49gに代えて3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール51.52gを使用した以外は、合成例1と同様に合成を行なった。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:16.9wt%、粘度:150mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であり、本発明の中間原料であるポリイソシアネート(A)に該当する。以下、P3と呼ぶ(表1)。
【0043】
[合成例4]
2−エチル−1−ブタノール36.49gに代えてi−ブタノール26.47gを使用した以外は、合成例1と同様に合成を行なった。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:19.4wt%、粘度:110mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、P4と呼ぶ(表1)。
【0044】
[合成例5]
2−エチル−1−ブタノール36.49gに代えて1−オクタノール46.51gを使用した以外は、合成例1と同様に合成を行なった。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:17.1wt%、粘度:90mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、P5と呼ぶ(表1)。
【0045】
[合成例6]
2−エチル−1−ブタノール36.49gに代えて1−デカノール56.53gを使用した以外は、合成例1と同様に合成を行なった。得られたポリイソシアネートは透明な液体であり、NCO含有量:16.3wt%、粘度:90mPa・sであった。また、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、P6と呼ぶ(表1)。
【0046】
[実施例1]
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けた4口フラスコに、NCO/OH当量比=1となるように、P1を10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA、東亞合成製)を4.92重量部、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)を0.030重量部で仕込み、40℃へ昇温する。反応熱に注意しながら、オクチルスズ系触媒(商品名:U−810、日東化成製)を添加していき、発熱がなくなった時点で60℃へ昇温した。IR測定によりNCOピーク(2270cm−1)が消失したところで、反応を終了し、ウレタン基含有アクリレート樹脂組成物1を合成した。以下、U1とする。U1の粘度を測定した(表2)。
【0047】
U1に対して、固形分が50wt%となるように酢酸n−ブチルで希釈、光重合開始剤(IRGACURE 127;BASF社製)を4wt%/固形分となるように配合し、ガラス板・軟鋼板・PETフィルムにそれぞれに塗工した(乾燥膜厚:約40μm)。100℃のオーブンで5分間、酢酸n−ブチルを揮発した後、5分間UV照射して(積算光量:900mJ/cm)、UV硬化塗膜を得た。
【0048】
UV硬化塗膜のケーニッヒ硬度(ガラス板)・耐衝撃性(軟鋼板)・耐カール性(PETフィルム)を評価した(表3)。
[実施例2、3および比較例1〜3]
P1に代えてP2〜P6を使用した以外は、実施例1と同様に行ない、ウレタン基含有アクリレート樹脂組成物2〜6を得た。以下、U2〜U6とする。U2〜U6の粘度を測定した(表2)。U2〜U6のUV硬化塗膜の物性を評価した(表3)。
【表1】


【表2】


【表3】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、結晶化しにくく低粘度であり、活性エネルギー線で硬化した硬化塗膜の硬度が高く、耐衝撃性および耐カール性に優れる特徴を有する。従って、本発明のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、コーティング剤、インキ、粘着剤、又は接着剤等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネートに、
(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を、
反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
【請求項2】
(A)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート(a)と、炭素数が6〜9かつ分岐を有する脂肪族モノアルコール(b)と、から得られるアロファネート基を有するポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種類のポリオールと、
をウレタン化反応させて得られるNCO末端ウレタンオリゴマー(A’)に、
(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を、
反応させて得られるウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウレタン基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、及び活性エネルギー線重合開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング剤、インキ、粘着剤、又は接着剤。

【公開番号】特開2012−52019(P2012−52019A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195681(P2010−195681)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】