説明

ウレタン変性アクリル樹脂及びそれを用いたコーティング剤及び接着剤

【課題】紫外線硬化型または電子線硬化型塗膜とプラスチックシートとの接着性を保持しつつ、優れた耐候性及び耐水性を有する接着剤及びコーティング剤に使用できる樹脂及びそれを用いた接着剤及びコーティング剤を提供する。
【解決手段】脂環式骨格を有し、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000のアクリルポリオール(A)と、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオール(B)と、有機ジイソシアネート(C)とを、ウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂であって、前記アクリルポリオール(A)とのポリオール(B)の質量比(A)/(B)が30/70〜70/30であるウレタン変性アクリル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内外装、車両内外装、コンピューターおよび携帯端末などに用いられる意匠性シートにおいて、基材であるプラスチックシート(ポリプロピレン、PET等)とトップコートである紫外線硬化型塗膜または電子線硬化型塗膜の接着に使用するポリウレタン変性アクリル樹脂とそれを用いた接着剤及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内外装、車両内外装、コンピューターおよび携帯端末などに用いられる意匠性シートは、基材であるプラスチックシートにトップコートとして紫外線硬化型または電子線硬化型塗膜を塗布したものであるが、この紫外線硬化型または電子線硬化型塗膜とプラスチックシートは接着性が良くないため、間に一層の接着剤層を設けている。現在、この接着剤層に使用される接着剤には、耐候性の観点から主に紫外線吸収剤、光安定剤が含有されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−053908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、依然として耐候性に問題がある場合が多く、密着性との両立が求められている。そこで本発明は、紫外線硬化型または電子線硬化型塗膜とプラスチックシートとの接着性を保持しつつ、優れた耐候性及び耐水性を有する接着剤及びコーティング剤に使用できる樹脂及びそれを用いた接着剤及びコーティング剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、脂環式骨格を有し、かつ特定の物性を有するアクリルポリオールと、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオールと、有機ジイソシアネートとをウレタン化反応することで得られるウレタン変性アクリル樹脂が上記課題を解決する手段となることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、(1)脂環式骨格を有し、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000のアクリルポリオール(A)と、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオール(B)と、有機ジイソシアネート(C)とを、ウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂であって、前記アクリルポリオール(A)とのポリオール(B)の質量比(A)/(B)が30/70〜70/30であるウレタン変性アクリル樹脂に関する。
【0007】
また、本発明は、(2)前記のポリオール(B)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートジオールである前記(1)記載のウレタン変性アクリル樹脂に関する。
【0008】
また、本発明は、(3)前記(1)または(2)に記載のウレタン変性アクリル樹脂を含むコーティング剤に関する。
【0009】
また、本発明は、(4)前記(1)または(2)に記載のウレタン変性アクリル樹脂を含む接着剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線硬化型または電子線硬化型塗膜とプラスチックシートとの接着性を保持しつつ、優れた耐候性及び耐水性を有する接着剤及びコーティング剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のウレタン変性アクリル樹脂は、脂環式骨格を有し、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000のアクリルポリオール(A)と、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオール(B)と、有機ジイソシアネート(C)とを、ウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂であって、前記アクリルポリオール(A)とのポリオール(B)の質量比(A)/(B)が30/70〜70/30であるウレタン変性アクリル樹脂である。
【0012】
以下、本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する原料について説明する。
【0013】
アクリルポリオール(A)
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用するアクリルポリオール(A)は、脂環式骨格を有し、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000である。
【0014】
前記水酸基価は、6〜30mgKOH/gであることが好ましく、8〜25mgKOH/gであることがより好ましい。前記水酸基価が5mgKOH/g未満であると、得られるウレタン変性アクリル樹脂が濁り、耐候性、耐水性及び密着性に劣ってしまう。一方、35mgKOH/gを超えると、ゲル化が起ってしまう。水酸基価を上記の範囲とするための方法として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有モノマーを共重合させることが挙げられ、モノマーの種類、組成、目的とする水酸基価などによって適宜選択されるが、アクリル樹脂を構成する全モノマーの総質量100質量部に対し、水酸基含有モノマーを1〜10質量部程度共重合させたものを使用することができる。例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの場合には、アクリル樹脂を構成する全モノマーの総質量100質量部に対し、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2〜7質量部を共重合させることが挙げられる。なお、前記水酸基価は、滴定法により求めることができる。
【0015】
前記重量平均分子量は、8000〜20000が好ましく、10000〜15000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、塗膜の強度が劣り、30000を超えると、ゲル化が起る。重量平均分子量を上記の範囲とする方法として、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジt−ブチル、クメンハイドロパーオキサイドなどの重合開始剤の添加量を調整することが挙げられ、全モノマーの総質量100質量部に対し、重合開始剤を0.001〜10質量部程度添加することができる。
【0016】
例えば、アゾビスイソブチロニトリルの場合には、アクリル樹脂を構成する全モノマーの総質量100質量部に対し、アゾビスイソブチロニトリルを1.5〜3.0部使用することが挙げられる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0017】
本発明ではアクリルポリオールが脂環式骨格を有することにより、耐水性が向上するため優れた耐候性を有する。
【0018】
アクリルポリオールは、脂環式骨格含有不飽和モノマーと水酸基含有不飽和モノマーとを含むモノマー成分を共重合することによって得ることができる。前記脂環式骨格含有不飽和モノマーとしては、例えば、下記一般式(I)で表される不飽和モノマーを用いることが好ましい。なお、脂環式骨格含有不飽和モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化1】

【0019】
前記一般式(I)中、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Rは、置換基を有してもよい炭素数3〜36のシクロアルキル構造を有するエステル基を表す。前記一般式(I)において、Rで示されるエステル基の置換基を有してもよいシクロアルキル構造における置換基としては、特に限定はないが、例えば、炭素数1〜18の炭化水素基等が挙げられる。また、Rで示されるエステル基の置換基を有してもよいシクロアルキル構造におけるシクロアルキル構造としては、特に限定はないが、例えば、シクロブチル構造、シクロペンチル構造、シクロヘキシル構造、シクロブチル構造、シクロオクチル構造、シクロノニル構造、シクロデシル構造、シクロウンデシル構造、シクロドデシル構造、シクロトリデシル構造、シクロテトラデシル構造、シクロペンタデシル構造、シクロヘキサデシル構造、シクロヘプタデシル構造、シクロオクタデシル構造、イソボルニル構造、ジシクロペンタニエル構造等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(I)で表される脂環式骨格含有不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニエル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸4−メチロールシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら脂環式骨格含有不飽和モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニエルが好適に用いられる。なお、ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタアクリル酸のいずれかを意味する。
【0021】
前記モノマー成分中に占める脂環式骨格含有不飽和モノマーの割合は、モノマー合計100質量部中、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10〜30質量部、特に好ましくは15〜25質量部である。脂環式骨格含有不飽和モノマーの割合が5質量部未満であると、剛性に問題が生じる傾向がある。
【0022】
前記水酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら水酸基含有不飽和モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記モノマー成分中に占める水酸基含有不飽和モノマーの割合は、モノマー合計100質量部中、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部である。水酸基含有不飽和モノマーが1質量部未満であると、相溶性に問題が生じる傾向にあり、一方、10質量部を越えると、剛性に問題が生じる傾向にある。なお、本発明においては、脂環式骨格構造と水酸基の両方を有するモノマーを、前記脂環式骨格含有不飽和モノマーかつ水酸基含有不飽和モノマーとして用いてもよく、この場合、該脂環式骨格構造と水酸基との両方を有するモノマーの使用量は、前記脂環式骨格含有不飽和モノマーおよび水酸基含有不飽和モノマーそれぞれの使用量として考えるものとする。すなわち、脂環式骨格構造と水酸基との両方を有するモノマーの質量は、モノマー成分中に占める脂環式骨格含有不飽和モノマーの質量としてカウントされると同時に、モノマー成分中に占める前記水酸基含有不飽和モノマーの質量としてもカウントされることとなる。
【0024】
アクリルポリオールを得る際のモノマーとしては、前記脂環式骨格含有不飽和モノマーおよび水酸基含有不飽和モノマーの他に、これらと共重合可能な他の重合性モノマーを含有していてもよい。共重合可能な他の重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、カルボキシル基末端カプロラクトン変性アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性メタクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのなどの酸性官能基を有する不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチルメタクリレートなどの珪素原子を有する重合性不飽和モノマー;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、トリブロモフェノール3EO付加メタクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩、モルホリンEO付加メタクリレート、N−ビニルメチルカルベメート、N,N’−メチルビニルアセトアミド、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、ジアセトンアクリルアミドなどの窒素原子を有する重合性不飽和モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能重合性不飽和モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタールなどのビニルエーテル類;2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート、メタクロイルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する重合性不飽和モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸エステル類が好適に用いられる。なお、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記モノマー成分中に占める前記他の重合性モノマーの割合は、モノマー合計100質量部中、80質量部以下であれば特に制限はなく、必要に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
前記モノマー成分を重合してアクリルポリオールを得る際の重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、エマルション重合等の従来公知の重合方法を採用すればよい。前記重合の際に用いることのできる溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤;n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン、N,N―ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、クロロホルムなどが挙げられ、これらは単独あるいは併用して使用することができる。溶剤の使用量は、特に制限されるものではなく、重合反応に応じて適宜設定すればよい。
【0027】
前記重合の際には、必要に応じて重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイドなどのパーオキサイド系開始剤などの通常のラジカル開始剤を単独あるいは併用して使用することができる。なお、重合開始剤の使用量は、特に制限されるものではないが、前記モノマー成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0028】
前記重合の際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、チオグルコール酸、チオグリセロール、エチレンチオグリコール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプトグリセリン、メルカプトコハク酸、メルカプトプロピオン酸などのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロブロモエタン、ブロモホルムなどのハロゲン化合物;ジスルフィド類;第2級アルコール類;イソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルベンゾール、α―メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;などを単独あるいは併用して使用することができる。なお、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されるものではないが、前記モノマー成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0029】
前記重合の際の重合条件については、特に限定されるものでなく、適宜選択すればよい。具体的には、重合温度は、好ましくは10〜160℃、より好ましくは30〜140℃である。重合時間は、反応の進行状況に応じ、それぞれ、適宜選択すればよい。
【0030】
ポリオール(B)
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用するポリオール(B)は、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオールである。ポリオール(B)は、脂環式骨格を有することにより、耐水性が向上し、優れた耐候性を有する。
【0031】
前記ポリオール(B)の水酸基価は、好ましくは30〜400mgKOH/g、より好ましくは80〜280mgKOH/g、特に好ましくは100〜250mgKOH/gである。前記水酸基価が30mgKOH/g未満であると、ゲル化が起こりやすい傾向にあり、400mgKOH/gを超えると、塗膜の強度が劣る傾向にある。
【0032】
前記ポリオール(B)の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜2000、特に好ましくは500〜1000である。前記重量平均分子量が200未満であったり5000を超えると、剛性に問題を生じる傾向にある。
【0033】
ポリオール(B)としては、脂環式骨格を有する、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、シリコンポリオール等が挙げられる。
【0034】
脂環式骨格を有するポリエーテルポリオールとしては、環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
脂環式骨格を有するポリエステルポリオールとしては、ニ塩基酸と多価アルコールとを公知の重縮合反応を行うことによって得られるものを用いることができるが、この際、モノマー成分としてニ塩基酸又は多価アルコールの少なくとも一方が脂環式骨格を含有するものを用いる。脂環式骨格を有する二塩基酸としては、例えば、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸及びこれらの混合物などが挙げられる。また、脂環式骨格を有する多価アルコールとしては、例えば、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びこれらの混合物などが挙げられる。脂環式骨格を有するポリエステルポリオールを得る際のモノマーとしては、前記脂環式骨格を有する二塩基酸及び脂環式骨格を有する多価アルコールの他に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の低分子量ジオールを用いることができる。
【0036】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルポリオールと脂環式骨格を有するジカルボン酸とを重縮合したものが挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートポリオールとしては、脂環式骨格を有するジオールと炭酸ジアルキルをエステル交換反応したものが挙げられる。脂環式骨格を有するジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールが例示される。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもかまわない。炭酸ジアルキルとしては炭酸ジメチル、炭酸ジフェニルなどが挙げられ、これらの中でも、反応性の点から炭酸ジメチルが好ましい。前記脂環式骨格を有するジオールの他に、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを用いることができる。
【0038】
ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0039】
シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0040】
本発明では、密着性と耐水性の両立化という理由から、前記ポリオール(B)は、脂環式骨格を有するポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールであることが好ましく、シクロヘキサンジメタノールを用いて合成されたポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールが、より好ましい。
【0041】
本発明において前記アクリルポリオール(A)とポリオール(B)の質量比(A)/(B)は、30/70〜70/30であり、好ましくは40/60〜60/40であり、より好ましくは45/55〜55/45である。前記(A)/(B)が30/70未満であると耐候性に劣る傾向にあり、70/30を超えると密着性及び接着性に劣る傾向にある。
【0042】
有機ジイソシアネート(C)
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する有機ジイソシアネート(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。これらの中でもウレタン変性アクリル樹脂の耐候性を考慮すると、脂環式ジイソシアネートを最も好適に用いることができる。
【0043】
アクリルポリオール(A)及び有機ポリオール(B)の水酸基の合計に対して、有機ジイソシアネートのイソシアネート基が当量比(NCO/OH)にして90/100〜99/100になるように配合される。当量比が90/100未満では樹脂が濁る傾向にあり、99/100を超えるとゲル化する傾向にある。
【0044】
本発明のウレタン変性アクリル樹脂は、前記(A)〜(C)成分をウレタン化反応することにより得ることが出来る。ウレタン化反応は、ワンショット法、プレポリマー化法等の公知の方法によって行われる。ウレタン化反応させる際の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、ジクロルエタン等の塩化物類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒類;等及びこれらの2種類以上の混合物が用いられる。
【0045】
ウレタン変性アクリル樹脂を製造する際の触媒としては通常のウレタン化反応触媒を用いることができる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系化合物;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系化合物;等が挙げられる。
【0046】
ウレタン化反応は、70〜90℃、好ましくは75〜85℃にて2〜4時間行なわれる。
【0047】
本発明のウレタン変性アクリル樹脂はコーティング剤又は接着剤の成分として好適である。
本発明のコーティング剤又は接着剤は、前記ウレタン変性アクリル樹脂を主成分として含むものであり、ウレタン変性アクリル樹脂の濃度は目的に応じて適宜調製される。
【0048】
本発明のコーティング剤又は接着剤は、その他の成分として硬化剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、内部離型剤、補強材、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤などを配合して用いられる。
【0049】
本発明の接着剤又はコーティング剤は、通常、有機溶剤に希釈して用いられる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の一塩基酸エステル系溶剤;アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等の二塩基酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0050】
本発明では、硬化剤として有機ジシソシアネートを用いると塗膜強度や耐久性が向上するので好ましい。有機ジイソシアネートとしては、前述したものと同様のものが用いられる。有機ジイソシアネートの配合量は、ウレタン変性アクリル樹脂100質量部に対して、固形分換算で0.5〜10質量部である。
【0051】
本発明のコーティング剤又は接着剤は、各種基材に適用することができる。基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン、表面に亜鉛や錫やクロム等をメッキした金属、表面をクロム酸やリン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチック基材;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;紙等の有機基材;等が挙げられる。
【0052】
以下、本発明の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ツ口フラスコ中に溶媒としてメチルイソブチルケトンを100質量部仕込み、110℃に昇温させた。この溶媒中に、メタクリル酸メチル74.5質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5.5質量部、メタクリル酸シクロヘキシル20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.0質量部を混合させた溶液を2時間かけて滴下した。その後、110℃で2時間保温し、メチルイソブチルケトン50質量部で希釈し、アクリルポリオール(A1)を合成した。得られたアクリルポリオール(A1)の水酸基価を滴定法により測定したところ、23.7mgKOH/gであり、GPCを用いて重量平均分子量を測定した結果、ポリスチレン換算で、12000であった。GPCの条件を以下に示す。
【0054】
<GPC条件>
使用機器:東ソー株式会社製、HCL−8320
カラム:東ソー株式会社製、TSK gel SuperMultipore HZ−H
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
このアクリルポリオール(A1)100質量部に、FLEXOREZ188(アジピン酸と多価アルコールを主成分とするポリエステルポリオール、キングインダストリーズ社製、水酸基価230mgKOH/g)100質量部及びウレタン化触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.2質量部を添加し、80℃に昇温した。次いで、イソホロンジイソシアネート46質量部を30分かけて滴下し、80℃で2時間保温した。メチルイソブチルケトン200質量部で希釈し、ウレタン変性アクリル樹脂(I)を得た。
【0055】
<実施例2>
メタクリル酸メチルを78.0質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル20質量部、アゾビスイソブチロニトリル2.0質量部とした以外は実施例1と同様に操作して、水酸基価8.6mgKOH/g、重量平均分子量12000のアクリルポリオール(A2)を得た。得られたアクリルポリオール(A2)を使用し、実施例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(II)を合成した。
【0056】
<実施例3>
メタクリル酸メチルを73.0質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを7.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル20質量部、アゾビスイソブチロニトリル2.0質量部とした以外は実施例1と同様に操作して、水酸基価30.2mgKOH/g、重量平均分子量12000のアクリルポリオール(A3)を得た。得られたアクリルポリオール(A3)を使用し、実施例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(III)を合成した。
【0057】
<実施例4>
アゾビスイソブチロニトリルを3部とした以外は実施例1と同様に操作して、水酸基価23.7mgKOH/g、重量平均分子量7000のアクリルポリオール(A4)を得た。得られたアクリルポリオール(A4)を使用し、実施例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(IV)を合成した。
【0058】
<実施例5>
アゾビスイソブチロニトリルを0.5部とした以外は実施例1と同様に操作して、水酸基価23.7mgKOH/g、重量平均分子量28000のアクリルポリオール(A5)を得た。得られたアクリルポリオール(A5)を使用し、実施例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(V)を合成した。
【0059】
<実施例6>
実施例1と同様にして、水酸基価23.7mgKOH/g、重量平均分子量12000のアクリルポリオール(A1)を得た。得られたアクリルポリオール(A1)100重量部に、UM90(1/3)(1,6−ヘキサンジオール/1,4−ジメタノールシクロヘキサン(=1/3(モル比))と炭酸ジメチルから合成した分子量約900のポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社製、水酸基価115mgKOH/g)100質量部及びウレタン化触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.2質量部を添加し、80℃に昇温した。イソホロンジイソシアネート24質量部を30分かけて滴下し、80℃で2時間保温した。メチルイソブチルケトン200質量部で希釈し、ウレタン変性アクリル樹脂(VI)を合成した。
【0060】
<実施例7>
ポリカーボネートジオールであるUM90(1/3)を150質量部とし、イソホロンジイソシアネートを34質量部とした以外は実施例6と同様にしてウレタン変性アクリル樹脂(VII)を合成した。
【0061】
<実施例8>
ポリカーボネートジオールであるUM90(1/3)を66質量部とし、イソホロンジイソシアネートを18質量部とした以外は実施例6と同様にしてウレタン変性アクリル樹脂(VIII)を合成した。
【0062】
<比較例1>
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ツ口フラスコ中に溶媒としてメチルイソブチルケトンを100質量部仕込み、110℃に昇温させた。この溶媒中に、メタクリル酸メチル79.0質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.0質量部を混合させた溶液を2時間かけて滴下した。その後、110℃で2時間保温し、メチルイソブチルケトン50質量部で希釈し、アクリルポリオール(a1)を合成した。得られたアクリルポリオール(a1)の水酸基価は4.3mgKOH/gであり、重量平均分子量は12000であった。
【0063】
このアクリルポリオール(a1)100質量部にFLEXOREZ188(アジピン酸と多価アルコールを主成分とするポリエステルポリオール、キングインダストリーズ社製、水酸基価230mgKOH/g)100質量部及びウレタン化触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.2質量部を添加し、80℃に昇温した。イソホロンジイソシアネート46質量部を30分かけて滴下し、80℃で2時間保温した。メチルイソブチルケトン200質量部で希釈し、ウレタン変性アクリル樹脂(IX)を合成した。得られたウレタン変性アクリル樹脂(IX)は白濁していた。
【0064】
<比較例2>
メタクリル酸メチルを71.0質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを9.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル20質量部、アゾビスイソブチロニトリル2.0質量部とした以外は比較例1と同様に操作して、水酸基価38.8mgKOH/g、重量平均分子量12000のアクリルポリオール(a2)を得た。得られたアクリルポリオール(a2)を使用し、比較例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(X)を合成した。得られたウレタン変性アクリル樹脂(X)はゲル化していた。
【0065】
<比較例3>
アゾビスイソブチロニトリルを0.3部とした以外は実施例1と同様に操作して、水酸基価23.7mgKOH/g、重量平均分子量33000のアクリルポリオール(a3)を得た。得られたアクリルポリオール(a3)を使用し、実施例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(XI)を合成した。得られたウレタン変性アクリル樹脂(XI)はゲル化していた。
【0066】
<比較例4>
メタクリル酸メチルを98.0質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル2.0質量部とした以外は比較例1と同様に操作して、水酸基価8.6mgKOH/g、重量平均分子量12000の脂環式骨格を有さないアクリルポリオール(a4)を得た。得られたアクリルポリオール(a4)を使用し、比較例1と同様にウレタン化反応させてウレタン変性アクリル樹脂(XII)を合成した。
【0067】
<比較例5>
FLEXOREZ188に代えて、脂環式骨格を有さないポリオールとしてクラポールP510(3−メチル−1,5−ペンタンジオールのアジペート、ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製、水酸基価230mgKOH/g)を使用した以外は実施例1と同様にしてウレタン変性アクリル樹脂(XIII)を合成した。
【0068】
<比較例6>
ポリカーボネートジオールであるUM90(1/3)を25質量部とし、イソホロンジイソシアネートを10.5質量部としたこと以外は実施例6と同様にしてウレタン変性アクリル樹脂(XIV)を合成した。
【0069】
上記実施例及び比較例で用いたポリオールは以下の式(II)〜(IV)で表される。
【0070】
FLEXOREZ188(アジピン酸と多価アルコールを主成分とするポリエステルポリオール、キングインダストリーズ社製、水酸基価230mgKOH/g)
【化2】

【0071】
式(II)中、nは1以上の整数を示す。
【0072】

クラポールP510(3−メチル−1,5−ペンタンジオールのアジペート、ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製、水酸基価230mgKOH/g)
【化3】

【0073】
式(III)中、nは1以上の整数を示す。
【0074】

UM90(1/3)(1,6−ヘキサンジオール/1,4−ジメタノールシクロヘキサン(=1/3(モル比))と炭酸ジメチルから合成した分子量約900のポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社製、水酸基価115mgKOH/g)
【化4】

【0075】
式(IV)中、Rは、
【化5】

【0076】
またはヘキシレン基示す。nは3〜6を示す。
【0077】
実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂(I)〜(XIV)について以下の評価を行なった。但し、ウレタン変性アクリル樹脂(IX)及び(X)はゲル化していた為、評価することは出来なかった。
【0078】
(1)加熱残分
金属製のシャーレに得られたウレタン変性アクリル樹脂を1.5g採取し、108℃で3時間乾燥させ、乾燥前後の重量を比較した。結果を表1〜3に示す。
(2)粘度
E型粘度計で25℃、1010rpmの条件下で測定した。結果を表1〜3に示す。
(3)重量平均分子量
以下の条件で重量平均分子量を測定した。結果を表1〜3に示す。
<GPC条件>
使用機器:東ソー株式会社製、HCL−8320
カラム:東ソー株式会社製、TSK gel SuperMultipore HZ−H
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
(4)耐候性試験
片面を易接着処理を施したPETフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製、以下「処理PETフィルム」と記す。)に実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を膜厚10μmで塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。その試験片をサンシャインウェザーメータ(スガ試験機株式会社製、サンシャインウェザーメーター S80)で1000時間照射した。照射後、試験片を2mm幅のマス目にクロスカットし、マス目100個を作り、このマス目にセロテープ(登録商標)を貼付け、角度90度で急速に剥した時の塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。結果を表1〜3に示す。
(5)密着性試験
処理PETフィルムに実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を膜厚10μmで塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。試験片を2mm幅のマス目にクロスカットし、マス目100個を作り、このマス目にセロテープ(登録商標)を貼付け、角度90度で急速に剥した時の塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。結果を表1〜3に示す。
上記処理PETフィルムに代えて、コロナ処理を施したポリプロピレンシートを用いること以外は同様に操作して、塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。結果を表1〜3に示す。
(6)耐水性試験
処理PETフィルムに実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を膜厚10μmで塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。この試験片を60℃の温水中に4時間浸漬した後、引き上げ、表面の水滴をふき取った後、塗面の状態(白化、ふくれ)を目視で観察した。結果を表1〜3に示す。
(7)接着性試験
処理PETフィルムに実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を膜厚10μmで塗布後、50℃で30分乾燥した。更にUV硬化型樹脂を膜厚10μmで塗布し、50℃で30分乾燥後、光硬化させ試験片を作製した。なお、UV硬化型樹脂としてウレタンアクリレート(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド 7903-3)とアクリルアクリレート(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド 7975)の2種類を使用した。試験片を2mm幅のマス目にクロスカットし、マス目100個を作り、このマス目にセロテープ(登録商標)を貼付け、角度90度で急速に剥した時の塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。
【表1】

【表2】

【表3】

【0079】
試験の結果、実施例1〜8のウレタン変性アクリル樹脂(I)〜(IIIV)は耐候性、密着性、耐水性のいずれも良好な結果であった。アクリルポリオールの水酸基価が5mgHOH/g未満である比較例1では、耐候性試験及び密着性試験において剥離が発生し、耐水性試験において白化が確認された。アクリルポリオールの水酸基価が35mgHOH/gを超える比較例2及び重量平均分子量が30000を超える比較例3では、ウレタン変性アクリル樹脂がゲル化してしまった。アクリルポリオールが脂環式骨格を有さない比較例4では、密着性に異常はなかったが、耐候性試験で剥離が発生し、耐水性試験において白化が確認された。(B)成分のポリオールが脂環式骨格を有さない比較例5では、密着性試験では異常はなかったが、耐候性試験で剥離が発生し、耐水性試験において白化が確認された。アクリル/ポリオール比率が30/70〜70/30の範囲でない比較例6では、基材PETフィルムに密着しないため評価することは出来なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式骨格を有し、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000のアクリルポリオール(A)と、脂環式骨格を有し、アクリルポリオール以外のポリオール(B)と、有機ジイソシアネート(C)とを、ウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂であって、前記アクリルポリオール(A)とのポリオール(B)の質量比(A)/(B)が30/70〜70/30であるウレタン変性アクリル樹脂。
【請求項2】
前記のポリオール(B)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートジオールである請求項1記載のウレタン変性アクリル樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウレタン変性アクリル樹脂を含むコーティング剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のウレタン変性アクリル樹脂を含む接着剤。

【公開番号】特開2011−153204(P2011−153204A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15161(P2010−15161)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】