説明

ウレタン樹脂、定着用部材および画像形成装置

【課題】耐熱性および高温での傷の修復性に優れたウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下であるウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂、定着用部材および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着用部材の長寿命化を進める観点から、該定着用部材の表面を硬くして耐傷性を上げる方法がある。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を備えた樹脂層をもつ定着ロールを採用した態様が開示されている(例えば特許文献1および2参照)。さらに、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の樹脂層を備えた定着ベルトが実用に供され、PFAにガラス粒子を分散させた定着用ローラなども提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
一方、短側鎖ヒドロキシル基と長側鎖ヒドロキシル基の含有比率と、イソシアネートの比率などを規定した塗料組成物が提供されている(例えば特許文献4参照)。
【0004】
また、画像形成装置に使用される導電性部材において、少なくとも2層以上の異なる材料により構成され、最外層が水酸基を有するアクリルシリコン樹脂と架橋剤からなり、前記水酸基が架橋剤により架橋することによる架橋生成物から形成された例が開示されている(例えば特許文献5参照)。
また、弾性層と少なくとも1層の樹脂層からなり、該樹脂層がポリシロキサン含有(メタ)アクリルモノマーを20質量%以下含む樹脂で形成される帯電部材が開示されている(例えば特許文献6参照)。
また、弾性層と少なくとも1層の樹脂層とを具備し、最外樹脂層が50質量%以上のウレタン樹脂と50質量%以下のポリシロキサン成分とを含有する樹脂材料により形成されている帯電部材が開示されている(例えば特許文献7参照)。
また、弾性層と少なくとも1層の樹脂層とを具備し、最外樹脂層が50質量%以上のアクリル樹脂と50質量%以下のポリシロキサン成分とを含有する樹脂材料により形成されている帯電部材が開示されている(例えば特許文献8参照)。
また、弾性層と少なくとも1層の樹脂層とを具備し、最外樹脂層が0.05質量%以上35質量%以下のポリシロキサン含有アクリルモノマーを含む樹脂を基材樹脂として含有し、且つ上記ポリシロキサン含有アクリルモノマーのポリシロシキサン分子量が3000以上である電子写真装置に使用される導電部材が開示されている(例えば特許文献9参照)。
更に、シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された表面被覆層と、を備え、前記表面被覆層にラクトン変性ポリオールをポリイソシアネートで架橋したウレタン樹脂および/またはアクリルウレタン樹脂であって、その樹脂骨格内にシロキサン結合を有するシリコーンが導入されたウレタン樹脂および/またはアクリルウレタン樹脂を適用した現像ローラが開示されている(例えば特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−231684号公報
【特許文献2】特開平10−142990号公報
【特許文献3】特開2001−183935号公報
【特許文献4】特開2007−31690号公報
【特許文献5】特開2006−39188号公報
【特許文献6】特開2003−84546号公報
【特許文献7】特開2003−91141号公報
【特許文献8】特開2003−98804号公報
【特許文献9】特開2003−140418号公報
【特許文献10】特開2007−133223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下の範囲を外れる場合、および/または150℃での戻り率が80%以上100%以下の範囲を外れる場合に比べ、耐熱性および高温での傷の修復性に優れたウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下であるウレタン樹脂である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である(a)アクリル樹脂と、下記一般式(1)で示される化合物から選択される少なくとも1種の(b)シリコーンと、(c)イソシアネートと、を重合し形成された請求項1に記載のウレタン樹脂である。
【0009】
【化1】



【0010】
(一般式(1)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。)
【0011】
請求項3に係る発明は、
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である下記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種の(a')アクリル樹脂と、(c)イソシアネートと、を重合し形成された請求項1に記載のウレタン樹脂である。
【0012】
【化2】



【0013】
(一般式(2)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。)
【0014】
請求項4に係る発明は、
前記重合の際に用いられる全モノマーに対するシリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの質量比が1質量%以上50質量%以下である請求項2または請求項3に記載のウレタン樹脂である。
【0015】
請求項5に係る発明は、
フッ素原子を含有する請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のウレタン樹脂である。
【0016】
請求項6に係る発明は、
前記(a)アクリル樹脂または前記(a')アクリル樹脂が、モノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を用いて重合された請求項2〜請求項5の何れか1項に記載のウレタン樹脂である。
【0017】
請求項7に係る発明は、
ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下である画像形成装置用の定着用部材である。
【0018】
請求項8に係る発明は、
請求項7に記載の定着用部材を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下の範囲を外れる場合、および/または150℃での戻り率が80%以上100%以下の範囲を外れる場合に比べ、耐熱性および高温での傷の修復性に優れたウレタン樹脂が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、前記(a),(b),(c)の成分を重合したものでない場合に比べ、耐熱性および高温での傷の修復性を長期間維持し得るウレタン樹脂が提供される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、前記(a')および(c)の成分を重合したものでない場合に比べ、耐熱性および高温での傷の修復性を長期間維持し得るウレタン樹脂が提供される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、重合の際に用いられる全モノマーに対するシリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの質量比が1質量%以上50質量%以下の範囲を外れる場合に比べ、耐熱性および高温での耐傷性に優れたウレタン樹脂が提供される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、フッ素原子を有しない場合に比べ、撥水性に優れたウレタン樹脂が提供される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、前記(a)アクリル樹脂または前記(a')アクリル樹脂が前述のモノマーを用いて重合されていない場合に比べ、耐熱性に優れたウレタン樹脂が提供される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下の範囲を外れる場合、および/または150℃での戻り率が80%以上100%以下の範囲を外れる場合に比べ、耐熱性および高温での傷の修復性に優れた定着用部材が提供される。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下の範囲を外れる場合、および/または150℃での戻り率が80%以上100%以下の範囲を外れる場合に比べ、定着画像における画質欠陥が抑制された画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態における無端ベルトの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態における無端ベルトの断面図である。
【図3】本実施形態における無端ベルトを用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態における無端ベルトを用いた画像定着装置を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態における無端ベルトを用いた他の画像定着装置を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態における無端ベルトを用紙搬送ベルトとして用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪ウレタン樹脂≫
本実施形態に係るウレタン樹脂は、ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下であることを特徴とする。
【0029】
150℃との高温におけるマルテンス硬度および戻り率が上記範囲である本実施形態に係るウレタン樹脂は、高温の環境下でも衝撃に対して直に反発するのではなくいったん柔軟に凹んで衝撃を弱めたのちに優れた弾性力で凹みを復元して元の状態に戻るものと推察される。即ち、優れた耐熱性を備えると共に、高温環境における高い耐傷性(傷のつき難さ)と傷の修復(一旦ついた傷を復元する)の速さとが実現されるものと推察される。
従って、例えば画像形成装置の定着用部材として本実施形態に係るウレタン樹脂を適用した場合であれば、定着装置における加熱にも耐え得る優れた耐熱性を備え、また紙等の記録媒体との接触により該定着用部材に衝撃が加えられた際にも、高温環境における高い耐傷性(傷のつき難さ)と傷の修復(一旦ついた傷を復元する)の速さにより、傷の発生が抑制されるものと考えられる。
【0030】
(マルテンス硬度)
本実施形態に係るウレタン樹脂の150℃でのマルテンス硬度は、1N/mm以上200N/mm以下であり、更には10N/mm以上100N/mm以下であることがより好ましい。
150℃でのマルテンス硬度が上記下限値未満または上記上限値を超える場合には、高温での環境下において傷に対する耐性に劣り、例えば画像形成装置の定着用部材等として用いた場合に形成される画像に乱れを生じる虞がある。
【0031】
(戻り率)
本実施形態に係るウレタン樹脂の150℃での戻り率は、80%以上100%以下であり、更には90%以上100%以下であることがより好ましい。尚、上記戻り率とは、上記ウレタン樹脂の傷の修復性(外力によってできた傷の修復の度合い)を示す指標である。
150℃での戻り率が上記下限値未満であると、高温での環境下において傷の修復性が発揮されない。
【0032】
[測定方法(戻り率およびマルテンス硬度)]
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し製膜したウレタン樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置のホットステージ上にセットする。ウレタン樹脂層を150℃に保ったまま、0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持し、その際の最大変位を(h1)とする。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算する。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度が求められる。
【0033】
ついで、本実施形態に係るウレタン樹脂の組成について説明する。
【0034】
前述の通り本実施形態に係るウレタン樹脂は、ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂とイソシアネートとを重合して形成される。尚、特に限定されるものではないが、150℃でのマルテンス硬度および戻り率を前述の範囲に制御する観点から、少なくとも以下の(a),(b),(c)に示す組成物を重合し形成されたウレタン樹脂、または少なくとも以下の(a')および(c)に示す組成物を重合し形成されたウレタン樹脂が好ましい。
(a)炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であるアクリル樹脂
(b)下記一般式(1)で示される化合物から選択される少なくとも1種のシリコーン
(c)イソシアネート
(a')炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である下記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種のアクリル樹脂
【0035】
【化3】



【0036】
一般式(1)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。尚、上記一般式(1)における−[Si(R−O]−におけるカッコ内の基の数(n)は、特に限定されるものではないが、3以上1000以下が好ましい。
【0037】
【化4】



【0038】
一般式(2)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。尚、上記一般式(2)における−[Si(R−O]−におけるカッコ内の基の数(n)は、特に限定されるものではないが、3以上1000以下が好ましい。
【0039】
ここで、炭素数10未満の側鎖を「短側鎖」と、炭素数10以上の側鎖を「長側鎖」と定義する。短側鎖の炭素数は6以下がより好ましい。
【0040】
上記(a),(b),(c)に示す組成物を重合し形成されたウレタン樹脂、または上記(a')および(c)に示す組成物を重合し形成されたウレタン樹脂は、上記(a),(b),(c)に示す組成物または上記(a')および(c)に示す組成物を重合しており且つその(a)アクリル樹脂または(a')アクリル樹脂における水酸基価が上記範囲であることから架橋密度が高く、そのために耐熱性に優れるものと推察される。また、高温の環境下でも衝撃(例えば画像形成装置の定着用部材として用いた場合における紙等の記録媒体が接触することによる衝撃)に対して直に反発するのではなくいったん柔軟に凹んで衝撃を弱めたのちに優れた弾性力で凹みを復元して元の状態に戻るものと推察される。即ち、優れた耐熱性を備えると共に、高温環境における高い耐傷性(傷のつき難さ)と傷の修復(一旦ついた傷を復元する)の速さとが実現されるものと推察される。
また、上記(b)シリコーン、またはシリコーン鎖を側鎖に備えた(a')アクリル樹脂を重合しているため、高温環境における高い耐傷性および傷の修復の速さの性能が、長期間維持されるものと推察される。
【0041】
尚、本実施形態に係るウレタン樹脂は、該ウレタン樹脂を重合する際に用いられる全モノマーに対するシリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの質量比が1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
尚ここでいう質量比とは、例えば、上記(a),(b),(c)に示す組成物を重合してウレタン樹脂を形成する場合であれば、全モノマーに対する(b)シリコーンのモノマーの質量比を表し、また上記(a')および(c)に示す組成物を重合しウレタン樹脂を形成する場合であれば、前記(a')アクリル樹脂の合成に用いられるモノマーの内シリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの全モノマーに対する質量比を表す。更に、上記(a'),(b),(c)に示す組成物を重合しウレタン樹脂を形成する場合であれば、(b)シリコーンのモノマーと、前記(a')アクリル樹脂の合成に用いられるモノマーの内シリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーと、の全モノマーに対する質量比を表す。
【0042】
(マルテンス硬度の制御)
上記(a),(b),(c)に示す組成物または上記(a')および(c)に示す組成物によりウレタン樹脂を重合する際には、上記150℃におけるマルテンス硬度は、長側鎖ヒドロキシル基の量および種類、短側鎖ヒドロキシル基の量および種類、未反応側鎖の量および種類、(b)シリコーンの量および種類、(a')アクリル樹脂におけるシリコーン鎖の量および種類、架橋剤の種類を制御することにより調整される。例えば、長側鎖ヒドロキシル基の添加量を減らすことによってマルテンス硬度は大きくなる傾向にあり、一方、長側鎖ヒドロキシル基の量を多くすることによってマルテンス硬度は小さくなる傾向にある。
【0043】
(戻り率の制御)
上記(a),(b),(c)に示す組成物または上記(a')および(c)に示す組成物によりウレタン樹脂を重合する際には、上記150℃における戻り率は、長側鎖ヒドロキシル基の量、短側鎖ヒドロキシル基の量、(b)シリコーンの量、(a')アクリル樹脂におけるシリコーン鎖の量、架橋剤の種類および量等を制御することにより調整される。例えば、架橋密度を大きくすることによって戻り率は大きくなる傾向にある。
【0044】
・アクリル樹脂
本実施形態においては、前述の通りアクリル樹脂として、(a)炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基(短側鎖ヒドロキシル基)の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基(長側鎖ヒドロキシル基)の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であるアクリル樹脂を用いることが好ましい。
また、(a')炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である前記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種のアクリル樹脂を用いることも好ましい。
【0045】
尚、上記比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上であることにより、耐熱性に優れたウレタン樹脂が得られる。上記比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))は、さらに90%以上であることがより好ましい。
【0046】
また、水酸基価が上記下限値以上であることにより、架橋密度が高いウレタン樹脂が重合され、その結果耐熱性に優れたウレタン樹脂が得られるものと推察される。一方、上記上限値以下であることにより、適度な柔軟性をもつウレタン樹脂が得られるものと推察される。
上記水酸基価は、さらに100mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0047】
尚、上記水酸基価とは、試料1g中の水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数を表す。本実施形態における上記水酸基価の測定は、JIS K0070−1992に定められた方法(電位差滴定法)に準じて測定される。但しサンプルが溶解しない場合は溶媒にジオキサン、THF等の溶媒が用いられる。
【0048】
前記アクリル樹脂を形成するためのモノマーとしては、まずヒドロキシル基を有するモノマーとして、例えば、(1)(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ) アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー等が挙げられる。また、(2)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するエチレン性モノマーを用いてもよい。更に、ヒドロキシル基を有しないモノマーとして、(3)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の前記モノマー(1)および(2)と共重合し得るエチレン性モノマーを併用してもよい。尚、長側鎖ヒドロキシル基を含有させる場合には、ε−カプロラクトンを3−5モル(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルに付加してなるものが好ましい。アクリル樹脂は1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0049】
尚、上記アクリル樹脂はバルキーな基を有していることが好ましく、具体的には以下のバルキーな基を有するモノマーが重合されたアクリル樹脂が好ましい。バルキーな基を有する上記モノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、またはシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの中でも、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0050】
前記アクリル樹脂は、長側鎖ヒドロキシル基を有しないか、或いは前記比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上であることが好ましい。
【0051】
また、上記アクリル樹脂はフッ素原子を含有してもよい。フッ素原子を含有するアクリル樹脂としては、モノマーとして、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン等を更に重合させて得られた共重合体が挙げられる。
上記フッ素原子の含有量は、全ウレタン樹脂の5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態における上記アクリル樹脂の合成方法は、前述のモノマーを混合し、通常のラジカル重合やイオン重合等を行った後、精製することによって合成される。
【0053】
・シリコーン
本実施形態においては、シリコーンとして、(b)前記一般式(1)で示される化合物から選択される少なくとも1種のシリコーンおよび/またはシリコーン鎖を側鎖に備えた前記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種の(a')アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
前述の通り、前記一般式(1)および一般式(2)においてRはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、この中でも、ヒドロキシル基、メトキシ基がより好ましい。
はメチル基、フェニル基またはエチル基を表し、この中でもメチル基、フェニル基がより好ましい。
【0055】
前記一般式(1)で示される(b)シリコーンの分子量、または前記一般式(2)で示される(a')アクリル樹脂に側鎖として結合するシリコーン(シリコーンモノマー)の分子量(重量平均分子量)としては、250以上50000以下が好ましく、500以上20000以下がより好ましい。
【0056】
前記一般式(1)で示される(b)シリコーン、または前記一般式(2)で示される(a')アクリル樹脂に側鎖として結合するシリコーン(シリコーンモノマー)の具体例としては、例えばKF9701、KF8008、KF6001(以上信越シリコーン社製)、TSR160、TSR145、TSR165、YF3804(以上モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0057】
・イソシアネート
前記イソシアネートは、前記アクリル樹脂と前記シリコーン、またはアクリル樹脂同士、シリコーン同士を架橋する架橋剤として機能する。特に制限されるものではないが、イソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましく用いられる。またヘキサメチレンジイソシアネートの多量体である、イソシヌアレート型、ビュレット型、アダクト型等を用いてもよい。イソシアネートは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。さらにある特定温度までは反応しないよう官能基をブロック化したイソシアネートを用いてもよい。
尚、上記イソシアネートの含有量(i)としては、前記アクリル樹脂のヒドロキシル基量(ii)に対する比(i)/(ii)が0.1以上3以下であることが好ましく、更には0.5以上1以下であることがより好ましい。
【0058】
・重合方法
ついで、本実施形態に係るウレタン樹脂の形成方法(樹脂の重合方法)について説明する。
例えば評価用の樹脂層サンプルの形成方法について説明すると、上記(a),(b),(c)の成分を重合する場合であれば、(a)アクリル樹脂と(b)シリコーンと(c)イソシアネートとを混合し、減圧下で脱泡したのち90μmのポリイミドのフィルム上にキャストして評価用の樹脂層サンプルを形成し、85℃で60分、160℃で0.5時間加温して硬化させる。尚、実用には保護したい表面に塗布したのち、同様に加熱して硬化する。
【0059】
但し、前述の150℃におけるマルテンス硬度および戻り率を満たす本実施形態に係るウレタン樹脂の形成方法は、特に前記(a),(b),(c)の成分を重合する方法には限られない。
例えば、ブロック化されたイソシアネートを用いる場合はブロックが外れる温度以上に加熱して硬化する。また減圧脱泡のかわりに超音波を用いたり、混合液を放置して脱泡する等の方法によっても重合される。
また、(a')アクリル樹脂と(c)イソシアネートとを重合することによっても本実施形態に係るウレタン樹脂が形成される。
【0060】
上記のようにして得られる、本実施形態に係るウレタン樹脂は、画像形成装置において無端ベルトやロールにおける表面保護層として用いられる。中でも、定着装置における定着ベルト、定着ロール、中間転写装置における中間転写ベルト、中間転写ロール、その他記録媒体搬送ベルトや記録媒体搬送ロール、または躯体表面等に好適に用いられ、特に定着装置における定着ベルトおよび定着ロールとして好適に用いられる。
ついで、本実施形態に係るウレタン樹脂を備える画像形成装置用部材について説明する。
【0061】
[無端ベルト]
図1は、無端ベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、図2は、図1において矢印Aの方向から見た、無端ベルトの端面図である。
図1および図2に示すように、無端ベルト1は、基材2と、基材2の表面に積層された表面層3と、を有する無端状のベルトである。
尚、上記表面層3としては、前述の本実施形態に係るウレタン樹脂が適用される。
【0062】
無端ベルト1の用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ベルト(即ち表面層3(定着用部材)として本実施形態に係るウレタン樹脂が適用され定着ベルト)、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト等が挙げられる。
【0063】
以下、無端ベルト1を定着ベルトとして用いる場合について説明する。
基材2に用いられる材質としては、耐熱性の材料が好ましく、具体的には、公知の各種プラスチック材料および金属材料のものの中から選択して使用される。
【0064】
プラスチック材料のなかでは一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えばフッソ樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。また、この中でも機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
【0065】
また、基材2に用いられる金属材料としては、特に制限は無く、各種金属や合金材料が使用され、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミ、鉄などが好適に使用される。また、前記耐熱性樹脂や前記金属材料を複数積層してもよい。
【0066】
以下、無端ベルト1を中間転写ベルトまたは記録媒体搬送ベルトとして用いる場合について説明する。
【0067】
基材2に用いる素材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらの中でもポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂を用いることがより好ましい。なお、基材は環状(無端状)であればつなぎ目があってもなくてもよく、また基材2の厚さは、通常0.02から0.2mmが好ましい。
【0068】
無端ベルト1を画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体搬送ベルトとして用いる場合、1×10Ω/□から1×1014Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×10から1×1013Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御することが好ましい。そのため前記のように必要に応じて、基材2や表面層3に、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどを添加することが好ましい(ここで、前記ポリマーにおける「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する)。これら導電剤は、単独または2種以上が併用して使用される。
【0069】
ここで、上記表面抵抗率および体積抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で、JIS−K6911に従い測定される。
【0070】
定着用途の場合において、無端ベルト1は、基材2と表面層3との間に弾性層を含んでもよい。弾性層の材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0071】
電磁誘導方式の定着装置における定着ベルトとして無端ベルト1を用いる場合は、基材2と表面層3との間に、発熱層を設けてもよい。
発熱層に用いられる材料としては、例えば非磁性金属が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、およびこれらの合金(これらを含む合金)等の金属材料が挙げられる。
発熱層の膜厚としては、5から20μmの範囲とすることが好ましく、7から15μmの範囲とすることがより好ましく、8から12μmの範囲とすることが特に好ましい。
【0072】
[ロール]
ついで、ロールについて説明する。上記ロールは、基材と、基材の表面に積層された表面層と、を有する円筒状のロールである。
尚、上記表面層としては、前述の本実施形態に係るウレタン樹脂が適用される。
【0073】
上記円筒状のロールの用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ロール(即ち表面層(定着用部材)として本実施形態に係るウレタン樹脂が適用され定着ロール)、中間転写ロール、記録媒体搬送ロール等が挙げられる。
【0074】
以下、円筒状ロールを定着ロールとして用いる場合について説明する。
図4に示す定着用部材としての定着ロール610としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、円筒状のコア611上に表面層613を備えてなる。また、図4に示す通り、コア611と表面層613との間に弾性層612を有していてもよい。
【0075】
円筒状のコア611の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。定着装置72では外径φ25mm、肉厚0.5mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
【0076】
弾性層612の材質としては、公知の材質の中から選択されるが、耐熱性の高い弾性体であればどの材料を用いてもよい。特に、ゴム硬度が15から45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0077】
本実施形態においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0078】
なお、弾性層612の厚みとしては、3mm以下であることが好ましく、0.5から1.5mmの範囲であることがより好ましい。定着装置72では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを72μmの厚さでコアに被覆している。
【0079】
表面層613の厚みとしては、好ましくは5から50μm、より好ましくは10から30μmである。
【0080】
定着ロール610を加熱する加熱源としては、上述のように、例えばハロゲンランプ660が用いられ、上記コア611の内部に収容する形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。ハロゲンランプ660により加熱された定着ロール610の表面温度は、定着ロール610に設けられた感温素子690により計測され、制御手段によりその温度が一定に制御される。感温素子690としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
【0081】
[画像形成装置、画像定着装置]
<第1実施形態>
次に、前記無端ベルトおよび前記ロールを用いた第1実施形態の画像形成装置について説明する。図3は、前記無端ベルトを定着装置の加圧ベルトとして備え、前記無端ベルトを中間転写ベルトとして備え、且つ前記ロールを定着装置の定着ロールとして備えたタンデム式の、画像形成装置の要部を説明する模試図である。
【0082】
具体的には、画像形成装置101は、感光体79(静電潜像保持体)と、感光体79の表面を帯電する帯電ロール83と、感光体79の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(静電潜像形成手段)と、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像手段)と、現像器85により形成されたトナー像が感光体79から転写される中間転写ベルト86(中間転写体)と、トナー像を中間転写ベルト86に転写する1次転写ロール80(一次転写手段)と、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材84と、中間転写ベルト86上のトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロール75(二次転写手段)と、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置72(定着手段)と、を含んで構成されている。感光体79と1次転写ロール80は、図3に示すとおり感光体79直上に配置していてもよく、感光体79直上からずれた位置に配置していてもよい。
【0083】
さらに、図3に示す画像形成装置101の構成について詳細に説明する。
画像形成装置101においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0084】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により張架され、ベルト張架装置90を形成している。なお、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0085】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0086】
また、画像形成装置101の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置72の接触部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置101の外へと排出される。
【0087】
次に、図3に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0088】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置72の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0089】
―定着装置(画像定着装置)―
図4は、本実施形態に係る画像形成装置101内に設けられた定着装置72の概略構成図である。図4に示す定着装置72は、回転駆動する回転体としての定着ロール610と、無端ベルト620(加圧ベルト)と、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧する圧力部材である圧力パッド640とを備えて構成されている。なお、圧力パッド640は、無端ベルト620と定着ロール610とが相対的に加圧されていればよい。従って、無端ベルト620側が定着ロール610に加圧されても良く、定着ロール610側が無端ベルト620に加圧されても良い。
【0090】
定着ロール610の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ660が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0091】
一方、定着ロール610の表面には感温素子690が接触して配置されている。この感温素子690による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ660の点灯が制御され、定着ロール610の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0092】
無端ベルト620は、内部に配置された圧力パッド640とベルト走行ガイド630と、図示しないエッジガイドによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて定着ロール610に対して加圧された状態で接触して配置されている。
【0093】
圧力パッド640は、無端ベルト620の内側において、無端ベルト620を介して定着ロール610に加圧される状態で配置され、定着ロール610との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド640は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材641を挟込領域Nの入口側に配置し、定着ロール610に歪みを与えるための剥離挟込部材642を挟込領域Nの出口側に配置している。
【0094】
さらに、無端ベルト620の内周面と圧力パッド640との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材641および剥離挟込部材642の無端ベルト620と接する面に低摩擦シート680が設けられている。そして、圧力パッド640と低摩擦シート680とは、金属製のホルダ650に保持されている。
【0095】
さらに、ホルダ650にはベルト走行ガイド630が取り付けられ、無端ベルト620がスムーズに回転するように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0096】
そして定着ロール610は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して無端ベルト620は、定着ロール610の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、定着ロール610が図4における時計方向へ回転するのに対して、無端ベルト620は反時計方向へ回転する。
【0097】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、定着ロール610から供給される熱とによって定着される。
【0098】
上記定着装置72では、定着ロール610の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材641により挟込領域Nが確保される。
【0099】
また、定着装置72では、定着ロール610の外周面に対し突出させて剥離挟込部材642を配置することにより、挟込領域Nの出口領域において定着ロール610の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。この構成により、定着後の用紙Kが定着ロール610から剥離する。
【0100】
また、剥離の補助手段として、定着ロール610の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700が配設されている。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ロール610の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール610と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0101】
以下、定着装置72に使用される無端ベルト620および定着ロール610以外の部材について詳細に説明する。
【0102】
無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、上述したように、プレ挟込部材641と剥離挟込部材642とで構成され、バネや弾性体によって定着ロール610を、例えば32kgfの荷重で押圧するようにホルダ650に支持されている。定着ロール610側の面は、定着ロール610の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。また、それぞれの材質は耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0103】
なお、無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧し、無端ベルト620と定着ロール610との間に、未定着トナー像を保持する用紙Kが通過する挟込領域Nが形成する機能を有していれば形状や材質に特に制限はなく、さらには圧力パッド640に加え、定着ロール610に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0104】
プレ挟込部材641には、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーや板バネ等の弾性体が用いられ、これらの材質の中でも、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。硬度の点からJIS−A硬度10から40°のシリコーンゴムが好適に用いられる。弾性体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて選択される。定着装置72では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。
【0105】
剥離挟込部材642は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離挟込部材の形状としては、挟込領域Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、本実施の形態の定着装置72では、無端ベルト620は、圧力パッドにより定着ロール610に40°の巻き付き角度でラップされ、8mm幅の挟込領域Nを形成している。
【0106】
低摩擦シート680は、無端ベルト620内周面と圧力パッド640との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。
【0107】
この低摩擦シート680の材質としては、金属、セラミックス、樹脂等各種材料が採用されるが、具体的には、耐熱性樹脂であるフッ素樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の他、6−ナイロンあるいは6,6−ナイロンのナチュラル材や、これらにカーボンやガラス繊維等を添加した材料が用いられる。
【0108】
この中でも無端ベルト620との接触面側が、無端ベルト620内面との摺動抵抗が小さくかつ潤滑剤が保持される表面に微細な凹凸形状を有するフッ素樹脂シートが好ましい。
【0109】
具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、またガラス繊維にフッ素樹脂からなるスカイブフィルムシートを加熱融着サンドした積層シートやあるいはフッ素樹脂シートに筋状の凹凸を設けたもの等が用いられる。
【0110】
なお、低摩擦シート680は、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と別体に構成しても、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0111】
さらに、ホルダ650には、定着装置72の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材670が配設されている。潤滑剤塗布部材670は、無端ベルト620内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、無端ベルト620と低摩擦シート680との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート680を介した無端ベルト620と圧力パッドとの摺動抵抗をさらに低減して、無端ベルト620の円滑な回転を図っている。また、無端ベルト620の内周面や低摩擦シート680表面の摩耗を抑制する効果も有している。
【0112】
潤滑剤としてはシリコーンオイルが好ましく、シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が用いられるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。
なお、定着装置72では、潤滑剤塗布部材670により無端ベルト620内周面に潤滑剤を供給しているが、潤滑剤塗布部材および潤滑剤を用いない形態としてもよい。
【0113】
また、メチルフェニルシリコーンオイルあるいはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、シリコーンオイル中に酸化防止剤を添加してもよい。その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、例えばシリコーングリス、フッ素グリス等、さらにはこれらを組み合わせたものも用いられる。定着装置72では、粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(KF96:信越化学(株)製)を用いている。
【0114】
また、ベルト走行ガイド630は、上述したように、無端ベルト620の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
【0115】
なお、本実施形態の画像形成装置101では、定着装置72の無端ベルト620として前述の無端ベルトを用いているが、中間転写ベルト86として前述の無端ベルトが用いられてもよい。
【0116】
<第2実施形態>
第2実施形態の画像形成装置は、上記第1実施形態の画像形成装置101内に備えられた定着装置72の代わりに、加熱源を備えた定着ベルト(前述の無端ベルト)と加圧ロール(前述のロール)と備えた定着装置を用いた形態である。なお、定着装置が異なること以外の事項については、上記と同様であるため説明を省略する。
【0117】
―定着装置(画像定着装置)―
図5は、定着装置の概略構成図である。具体的には、図5は、前述の無端ベルトを定着ベルトとして備え、且つ前述のロールを加圧ロールとして備えた定着装置である。なお、第1実施形態に係る画像形成装置と同様な構成については、同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0118】
図5に示すように、第2実施形態における定着装置900は、無端ベルトとしての定着ベルト920と、回転駆動する回転体の一例としての加圧ロール910とを備えて構成されている。定着ベルト920は、上述した無端ベルト620と同様に構成されている。
【0119】
そして、定着ベルト920が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、定着ベルト920の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ820が配設され、セラミックヒータ820から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0120】
セラミックヒータ820は、加圧ロール910側の面がフラットに形成されている。そして、定着ベルト920を介して加圧ロール910に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ820は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において定着ベルト920の曲率の変化によって定着ベルト920から剥離される。
【0121】
さらに、定着ベルト920内周面とセラミックヒータ820との間には、定着ベルト920の内周面とセラミックヒータ820との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート680が配設されている。この低摩擦シート680は、セラミックヒータ820と別体に構成しても、セラミックヒータ820と一体的に構成してもよい。
【0122】
一方、加圧ロール910は定着ベルト920に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転に従動して定着ベルト920が回転するように構成されている。加圧ロール910は、コア(円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成され、必要に応じて各層はトナーのオフセット対策としてカーボンブラックなどの添加により半導電性化されている。
【0123】
また、剥離の補助手段として、定着ベルト920の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700を配設してもよい。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ベルト920の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト920と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0124】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、定着装置900の挟込領域Nに搬送される。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、定着ベルト920側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0125】
ここで、本実施形態における定着装置900においては、加圧ロール910は、両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状(フレア形状)に形成されるとともに、定着ベルト920も、内面に凹凸形状を有し、この凹凸形状は挟込領域においては前記加圧ロール910の表面形状に沿った形状に広がり変形するように構成されている。このように構成することによって、用紙が挟込領域を通過するに際して、加圧ロール910による用紙への中央部から両端部に向かって幅方向に引張力が作用することによって用紙が伸びるのとともに定着ベルト920の表面幅方向の長さも伸びる。
【0126】
このため、本実施形態における定着装置900でも、中央部から両端部に亘る全領域において、定着ベルト920は用紙Kに対してスリップを抑制される。
【0127】
なお、加熱源としてはセラミックヒータ820以外に、定着ベルト920内部に設けたハロゲンランプであったり、あるいは定着ベルト920内部あるいは外部に設けた電磁誘導コイルによる電磁誘導発熱を利用したものであったりしてもかまわない。
【0128】
また、定着ベルト920内部にフラットな圧力部材に加え加圧ロール910に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0129】
<第3実施形態>
次に、前述の無端ベルトを、用紙搬送ベルトとして用いた第3実施形態の画像形成装置について説明する。
図6は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。図6に示す画像形成装置において、ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に回転するように、それぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電器202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラム清掃部材205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0130】
ユニットY、M、C、BKは、用紙搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序が設定される。
【0131】
用紙搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって内面側から張架され、画像形成装置用のベルト張架装置220を形成している。該用紙搬送ベルト206は、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転するようになっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。用紙搬送ベルト206は、ベルト用清掃部材214が備えられている。
【0132】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、用紙搬送ベルト206の内側であって、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、用紙搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(被転写体)216に転写する転写領域を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図6に示すとおり、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0133】
定着装置209は、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送されるように配置されている。
【0134】
用紙搬送ロール208により、用紙216は用紙搬送ベルト206に搬送される。
【0135】
図6に示す第3の実施形態に係る画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電器202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を目的の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0136】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときの現像剤は一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0137】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと用紙搬送ベルト206との転写領域を通過し、用紙216が静電的に用紙搬送ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、用紙216の表面に順次転写される。
【0138】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラム清掃部材205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の画像転写に供される。
【0139】
以上の画像転写は、ユニットC、MおよびYでも上記の方法によって行われる。
【0140】
転写ロール207BK、207C、207Mおよび207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上により用紙上に所望の画像が形成される。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0142】
[サンプル調製方法]
・実施例1
<アクリル樹脂プレポリマーの合成>
短側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:3)と、ブチルメタクリレート(BMA)とを1:1のモル比で混合し、対モノマー比(即ち前記HEMAおよびBMAに対する量)5%の重合開始剤(過酸化ベンゾイル、BPO)および対モノマー比10%の酢酸ブチルを添加してなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で110℃に昇温した対モノマー比100%の酢酸ブチル中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらに対モノマー比30%の酢酸ブチルと対モノマー比0.5%のBPOとからなる液を1時間かけて滴下し、反応を完結させた。尚、反応中は常に110℃に保持して攪拌し続けた。こうして長側鎖ヒドロキシル基を含まないアクリル樹脂プレポリマーA1を合成した。
【0143】
<樹脂層サンプルの形成>
下記A液と下記B液とを、下記の割合で混合したのち、下記C液をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、85℃で1時間、さらに130℃で30分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA1を得た。
・A液(上記アクリル樹脂プレポリマーA1液、44.2%、水酸基価206)
:11.31部
・B液(前述の一般式(1)におけるRがフェニルまたはメチルであり、
がヒドロキシル基であるシリコーン、
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、
商品名:TSR160、水酸基価148)
:2.08部
・C液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTKA100
化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体)
:2.49部
尚、重合の際に用いられる全モノマーに対するシリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの質量比は14.3%であった。
【0144】
・実施例2〜7および比較例1〜3
前記実施例1の<アクリル樹脂プレポリマーの合成>に用いたモノマー(HEMAおよびBMA)を下記表1に示した組成に変更し、<樹脂層サンプルの形成>に用いたシリコーンおよび硬化剤(イソシアネート)を下記表2に示した組成に変更したこと以外、実施例1に記載の方法により樹脂層サンプルを形成した。
【0145】
・比較例4
テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)からなる樹脂層サンプルを形成した。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
尚、上記表1および表2における各組成物は、以下の通りである。
・HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート(短側鎖を有する)
・プラクセルFM3:ダイセル化学社製(長側鎖を有する)
・BMA:ブチルメタクリレート(無官能基を有する)
・イソボロニルメタクリレート:(バルキーな側鎖を有する)
・CHEMINOX FAMAC−6:ユニマテック株式会社製(フッ素原子を有する)
・サイラプレーンFM0711:チッソ株式会社製(シリコーン鎖を側鎖に備える)
・シリコーン/TSR160:モメンティブパファーマンスマテリアルズジャパン社製
・シリコーン/YR3204:モメンティブパファーマンスマテリアルズジャパン社製
・硬化剤(イソシアネート)/TKA100:旭化成ケミカルズ社製
・硬化剤(イソシアネート)/TPAB80E:旭化成ケミカルズ社製
【0149】
[評価]
・150℃におけるマルテンス硬度および戻り率の測定
上記実施例および比較例について、下記の方法により150℃におけるマルテンス硬度および150℃における戻り率を測定した。結果を以下の表3に示す。
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し製膜したサンプルウレタン樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置のホットステージ上にセットした。サンプルウレタン樹脂層を150℃に保ったまま、0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持し、その際の最大変位を(h1)とした。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算した。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度を求めた。
【0150】
・150℃での耐熱性の試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの耐熱性を評価した。
ホットプレート(150℃)上にポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプルウレタン樹脂層をおき、先のとがったピンセットで傷をつけ、傷が1分以内に修復されるかを確認した(耐熱性傷試験)。
また、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプルウレタン樹脂層を170℃の炉の中に24時間放置し、その後150℃での戻り率を測定した(長期耐熱性傷試験)。結果を表3に示す。
尚、評価基準は以下のとおりである。
◎:傷が1秒以内に消える。
長期耐熱性傷試験においては放置前後で150℃での戻り率の低下がない。
○:傷が1分以内に消える。
長期耐熱性傷試験においては放置前後で150℃での戻り率の低下が10%未満。
△:傷がより高温になると消える。
長期耐熱性傷試験においては放置前後で150℃での戻り率の低下が
10%以上20%未満。
×:傷が消えない。
長期耐熱性傷試験においては放置前後で150℃での戻り率の低下が20%以上。
【0151】
・実機での耐傷性の試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの実機における耐傷性を評価した。
上記で得た樹脂層サンプルを形成したポリイミドフィルムを定着ロールの表面にはりつけ、定着温度(定着ロールの表面温度)を150℃に設定した定着機に10000枚通紙した。通紙後、樹脂層サンプル上における紙端傷の有無を目視で確認した。尚、上記定着機として富士ゼロックス社製の商品名:DocuCentre C2101を用いた。結果を表3に示す。
尚、評価基準は以下のとおりである。
○:傷がない
△:0.5μm以下の浅い傷がある
×:0.5μmを超える深さの傷あり
【0152】
・離型性の試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの離型性を評価した。
上記で得た樹脂層サンプルを形成したポリイミドフィルムを定着ロールの表面にはりつけ、定着機(上記と同じ定着機であって剥離つめを取り外したもの)に1000枚通紙を行った。剥離つめなしで、1000枚通紙できたものを○、できないものを×とした。
【0153】
【表3】

【符号の説明】
【0154】
1 無端ベルト
2 基材
3 表面層
72 定着装置
75 2次転写ロール
78 レーザー発生装置
79 感光体
80 1次転写ロール
83 帯電ロール
85 現像器
86 中間転写ベルト
101 画像形成装置
201Y、201M、201C、201BK 感光体ドラム
202Y、202M、202C、202BK 帯電器
203Y、203M、203C、203BK 露光器
204Y イエロー現像装置
204M マゼンタ現像装置
204C シアン現像装置
204BK ブラック現像装置
206 用紙搬送ベルト
207Y、207M、207C、207BK 転写ロール
209 定着装置
216 用紙
610 定着ロール
620 無端ベルト
900 定着装置
910 加圧ロール
920 定着ベルト
K 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下であるウレタン樹脂。
【請求項2】
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である(a)アクリル樹脂と、下記一般式(1)で示される化合物から選択される少なくとも1種の(b)シリコーンと、(c)イソシアネートと、を重合し形成された請求項1に記載のウレタン樹脂。
【化1】



(一般式(1)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。)
【請求項3】
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔A〕および炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有モル量〔B〕の比(〔A〕/(〔A〕+〔B〕))が80%以上(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を含有しない場合を含む)であり且つ水酸基価が70mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である下記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種の(a')アクリル樹脂と、(c)イソシアネートと、を重合し形成された請求項1に記載のウレタン樹脂。
【化2】



(一般式(2)中、Rはアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基またはエトキシ基を、Rはメチル基、フェニル基またはエチル基を表す。)
【請求項4】
前記重合の際に用いられる全モノマーに対するシリコーン鎖(Si−O)を有するモノマーの質量比が1質量%以上50質量%以下である請求項2または請求項3に記載のウレタン樹脂。
【請求項5】
フッ素原子を含有する請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のウレタン樹脂。
【請求項6】
前記(a)アクリル樹脂または前記(a')アクリル樹脂が、モノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を用いて重合された請求項2〜請求項5の何れか1項に記載のウレタン樹脂。
【請求項7】
ヒドロキシル基を含有するアクリル樹脂と、イソシアネートと、を重合して形成され、150℃でのマルテンス硬度が1N/mm以上200N/mm以下、150℃での戻り率が80%以上100%以下である画像形成装置用の定着用部材。
【請求項8】
請求項7に記載の定着用部材を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25821(P2012−25821A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164426(P2010−164426)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】