説明

ウレタン樹脂の製造方法および粘着剤

【課題】再剥離性を有し、しかも時間が経過しても再剥離性が変化しにくい粘着剤を得るためのウレタン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のウレタン樹脂の製造方法は、鎖延長剤が鎖延長剤(A)および鎖延長剤(B)を含み、鎖延長剤(A)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、残りの官能基より反応性が高い化合物であり、鎖延長剤(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を2つ有し、分子量62〜500である化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤の原料になるウレタン樹脂を製造するウレタン樹脂の製造方法に関する。さらには、ウレタン樹脂系の粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品、日用品等に再剥離性を有する粘着剤(以下、再剥離性粘着剤という。)が使用されている。再剥離性粘着剤としては、アクリル系粘着剤が広く使用されているが、主剤であるウレタン樹脂と架橋剤であるポリイソシアネート化合物とを反応させて得たウレタン樹脂系粘着剤も使用されている。ウレタン樹脂系粘着剤の主剤であるウレタン樹脂としては、たとえば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに、イソシアネート基と反応する3つ以上の官能基を有する鎖延長剤を反応させて得たものが提案されている(特許文献1参照)。このウレタン樹脂は、鎖延長反応にてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと反応しなかった鎖延長剤由来の官能基を有しており、この官能基を利用してウレタン樹脂を架橋剤により架橋することにより、凝集力を上げて再剥離性を発現すると考えられる。
【特許文献1】特開2003−12751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のウレタン樹脂系粘着剤は、時間が経過するにつれて粘着力が上昇し、その結果、再剥離性が低下したり、剥離強度が上昇したりすることがあった。
本発明は、再剥離性を有し、しかも時間が経過しても再剥離性が変化しにくい粘着剤を得るためのウレタン樹脂を製造できるウレタン樹脂の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、再剥離性を有し、時間が経過しても再剥離性が変化しにくい粘着剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の構成を含む。
[1] ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに必要に応じて末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法であって、
鎖延長剤が鎖延長剤(A)および鎖延長剤(B)を含み、
鎖延長剤(A)は、下記(a1)の化合物および(a2)の化合物からなる群から選ばれる1種または2種の化合物であり、鎖延長剤(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を2つ有し、分子量が62〜500である化合物であることを特徴とするウレタン樹脂の製造方法。
(a1)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である化合物。
(a2)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうち2つが、1級アミノ基および2級アミノ基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
[2] 鎖延長剤(B)のイソシアネート基と反応可能な官能基が、アミノ基または水酸基である[1]に記載のウレタン樹脂の製造方法。
[3] 鎖延長剤(B)が、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、芳香族ジアミンおよびビスフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]または[2]に記載のウレタン樹脂の製造方法。
[4] 鎖延長剤(A)と鎖延長剤(B)とのモル比(A/B)が50/50〜95/5である[1]〜[3]のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂を含有する粘着剤。
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂と第2のポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる架橋ウレタン樹脂を含有する粘着剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明のウレタン樹脂の製造方法によれば、再剥離性を有し、しかも時間が経過しても再剥離性が変化しにくい粘着剤を得るためのウレタン樹脂を製造できる。
本発明の粘着剤は、再剥離性を有し、時間が経過しても再剥離性が変化しにくいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(ウレタン樹脂の製造方法)
本発明のウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネート化合物(以下、第1のポリイソシアネート化合物という。)とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを製造し(プレポリマー生成反応)、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ(鎖延長反応)、必要に応じて、さらに末端停止剤を反応させ、末端を失活させて(停止反応)、ウレタン樹脂を製造する方法である。該方法により得られるウレタン樹脂は、主にウレタン樹脂系粘着剤の主剤の原料になるものである。
【0007】
[ポリオール]
ポリオールとしては、たとえば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。ポリオールの中でも、柔軟性を得るためには、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0008】
ポリオキシアルキレンポリオールは、開環重合触媒および多価開始剤の存在下、アルキレンオキシドを開環付加させて製造できる。
アルキレンオキシドとしては、炭素数が2〜6のアルキレンオキシドが好ましく、具体例としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド等が挙げられる。これらのうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせが特に好ましい。
【0009】
開環重合触媒としては、たとえば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム等の汎用アルカリ金属化合物触媒;水酸化セシウム等のセシウム金属化合物触媒;亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体等の複合金属シアン化物錯体触媒;フォスファゼン触媒等が挙げられる。
多価開始剤としては、アルキレンオキシドが反応しうる活性水素原子を2個以上有する化合物が挙げられ、たとえば、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。その価数(活性水素原子の数)としては、反応性の点から、2〜6価が好ましく、2〜3価がより好ましく、2価が最も好ましい。2価の開始剤としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAまたはこれらに少量のアルキレンオキシドが付加された比較的低分子量のポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。開環重合触媒として複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合には、反応性の点から、多価開始剤として水酸基当たりの分子量が200〜500のポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましい。多価開始剤は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0010】
ポリオキシアルキレンポリオールは、平均水酸基数が2以上であり、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましく、2が最も好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの平均水酸基数が2未満では、ウレタン樹脂を形成することが困難である。
なお、ポリオキシアルキレンポリオールの1分子あたりの水酸基数は製造するのに用いた多価開始剤の価数と一致する。
【0011】
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価が5.6〜600mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が5.6mgKOH/g未満では分子量が大きいため、ポリイソシアネート化合物と反応しにくくなり、また得られるプレポリマーが鎖延長剤と反応しにくくなる傾向にある。一方、水酸基価が600mgKOH/gを超えると得られるプレポリマー中のイソシアネート化合物の比率が相対的に高くなり、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖延長剤と反応させる際にゲル化しやすくなる。
【0012】
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は最終的に得ようとする粘着剤の粘着力の大きさによって、前記範囲の中から適宜選択できる。粘着力が1N/25mmを超える低粘着領域以上の粘着力であって、50N/25mm以下の強粘着領域以下の粘着力を有する粘着剤を得ようとする場合には、水酸基価が5.6〜450mgKOH/gが好ましく、11〜280mgKOH/gがより好ましく、18〜160mgKOH/gが最も好ましい。
粘着力が1N/25mm以下の微粘着領域の粘着力を有する粘着剤を得ようとする場合においては、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価が18mgKOH/gを超えることが好ましく、37〜600mgKOH/gがより好ましく、56〜300mgKOH/gが最も好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においては平均の水酸基価が前記の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
ポリオキシアルキレンポリオールは、不飽和度が0.3meq/g以下が好ましく、0.05meq/g以下であることがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの不飽和度が0.3meq/g以下であれば、得られる粘着剤からの移行成分が少なくなる。
このような不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを製造するためには、開環重合触媒として、セシウム金属化合物触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、フォスファゼン触媒を用いることが好ましく、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが最も好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においても平均の不飽和度、水酸基価は前記の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、公知のポリエステルポリオールを用いることができ、たとえば、低分子量ジオール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。低分子量ジオールとして、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を低分子量ジオールと併用してもよい。また、ビスフェノールAなどのフェノール類を使用してもよい。また、二塩基酸成分としては、たとえば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸等の脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸が挙げられる。
また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物を開環重合したポリエステルポリオール等も使用できる。
【0015】
ポリエステルポリオールは、水酸基価が20〜600mgKOH/gであることが好ましく、30〜300mgKOH/gであることがより好ましい。
ポリエステルポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においては平均の水酸基価が前記の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
ポリオールとして、ポリオキシアルキレンポリオールとポリエステルポリオールとを併用する場合、それらは反応性が異なり、ゲル化や反応溶液の濁りが生じやすいため、一方を両者の合計100質量%に対して10質量%以下にすることが好ましく、5質量%以下にすることがより好ましい。さらには、ポリオキシアルキレンルポリオールとポリエステルポリオールとは併用しないことが好ましい。なお、反応溶液に濁りが生ずると無色透明な樹脂が得られなくなる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、ホスゲン、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物と、ジオール化合物とを反応させることにより製造されるものが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造に用いるジオール化合物としては、エチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル‐1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、デカンジオール、およびドデカンジオール等が挙げられる。これらジオール成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリカーボネートポリオールの水酸基価は20〜600mgKOH/gであることが好ましい。
【0018】
ポリオキシテトラメチレンポリオールとしては、市販のポリオキシテトラメチレングリコールが使用できる。ポリオキシテトラメチレンポリオールの水酸基価は20〜600mgKOH/gであることが好ましい。
【0019】
[第1のポリイソシアネート化合物]
第1のポリイソシアネート化合物としては、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等を用いることができる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香環を有し、該芳香環に直接結合するイソシアネート基を有するポリイソシアネートが挙げられる。たとえば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと記載する。)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと記載する。)、2,6−トリレンジイソシアネート(以下2,6−TDIと記載する。)、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
また、芳香環を有し、該芳香環に直接結合しないイソシアネート基を有するポリイソシアネートが挙げられる。たとえば、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下p−TMXDIと記載する。)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下m−TMXDIと記載する。)等が挙げられる。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと記載する。)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
脂環族ポリイソシアネートとしては、たとえば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下IPDIと記載する。)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
また、上述したポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0024】
上述したポリイソシアネートのうち、HDI、IPDI、MDI、2,4−TDI、2,6−TDI、p−TMXDI、m−TMXDIおよびそれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましい。さらに、得られるウレタン樹脂を光学用途や耐候性や耐光性が重視される用途に用いる場合には、ポリイソシアネートとしては、無黄変タイプである脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、芳香環を有し、該芳香環に直接結合しないイソシアネート基を有するポリイソシアネートからなる群から選ばれる1種以上のポリイソシアネートがより好ましく、HDI、IPDI、p−TMXDIおよびm−TMXDIからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0025】
[プレポリマー生成反応]
プレポリマー生成反応は特に制限されず、たとえば、ポリオールと第1のポリイソシアネート化合物と必要に応じてウレタン化触媒と溶剤とを反応器に仕込んで行う方法等が挙げられる。
ポリオールと第1のポリイソシアネート化合物の配合比は、末端にイソシアネート基が残るようにするために、インデックス(NCOのモル数/OHのモル数×100)が110〜300となるように反応させることが好ましく、130〜250となるように反応させることがより好ましい。インデックスが110未満ではゲル化して増粘しやすくなる傾向にあり、300を超えるとプレポリマー中の未反応イソシアネート化合物濃度が高くなり過ぎて次の鎖延長反応が困難になる傾向にある。
また、使用する化合物の反応性や、鎖延長剤の配合量によって異なるが、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)は0.5〜12質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。NCO%が0.5質量%未満では充分な量の鎖延長剤を反応させることができず、12質量%を超えると鎖延長反応の制御が難しくなる傾向にある。
【0026】
プレポリマー生成反応において使用されるウレタン化触媒としては、たとえば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等の公知のものが挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(以下DBUと記載する。)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物が挙げられる。錫系化合物としては、たとえば、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロミド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(以下DBTDLと記載する。)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫スルフィド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロリド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、たとえば、ジブチルチタニウムジクロリド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロリド等のチタン系化合物、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系化合物、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
上述したウレタン化触媒のうち、DBTDL、2−エチルヘキサン酸錫が好ましい。また、上述したウレタン化触媒は単独で用いてもよいし併用してもよい。
【0027】
また、溶剤としては、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
反応温度は120℃以下が好ましく、70〜100℃がより好ましい。反応温度が120℃以下であれば、アロハネート反応の進行を抑制して所定の分子量と構造を有するイソシアネート基末端プレポリマーを容易に合成できる上に、反応速度の制御が容易になる。
【0029】
[鎖延長剤]
本発明において、鎖延長剤は、鎖延長剤(A)および鎖延長剤(B)を含むものである。
鎖延長剤(A)は、下記(a1)の化合物および(a2)の化合物からなる群から選ばれる1種または2種の化合物である。
(a1)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である化合物。
(a2)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうち2つが、1級アミノ基および2級アミノ基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
【0030】
鎖延長剤(A)は、反応性の異なる官能基を有することを特徴とし、3つ以上の官能基のうち、2つが残りの1つ以上の官能基に比べて反応性が高い。そのため、鎖延長反応の際には、反応性の高い2つの官能基が鎖延長反応に使用され、鎖延長反応後には、反応性が低く、鎖延長反応に使われなかった官能基が残存する。官能基の反応性は相対的に決まるものであり、一般に、1級アミノ基、2級アミノ基、1級水酸基は反応性が高い官能基であり、2級水酸基、3級水酸基、カルボキシル基は反応性の低い官能基である。また、1級アミノ基および2級アミノ基に比べて1級水酸基は反応性が低いため、(a2)のように、2つのアミノ基と少なくとも1個の1級水酸基との組み合わせであってもよい。
【0031】
鎖延長剤(A)としては、たとえば、(A−1)2つのアミノ基と少なくとも1つの水酸基とを有する化合物、(A−2)2つの1級水酸基を有し、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物、(A−3)2つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物、(A−4)1つの1級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物、(A−5)1つの2級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物、(A−6)2つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基または少なくとも1つの3級水酸基とを有する化合物等が挙げられる。
【0032】
(A−1)2つのアミノ基と少なくとも1つの水酸基とを有する化合物のアミノ基は1級アミノ基または2級アミノ基のいずれであってもよく、水酸基は1級、2級または3級水酸基のいずれであってもよい。水酸基として1級水酸基である化合物は(a2)の化合物である。
(A−1)の化合物の具体例としては、メタキシリレンジアミンのプロピレンオキシド1モル付加物(下記式(1)で表される化合物、青木油脂社製、商品名MXDA−PO1)、メタキシリレンジアミンのプロピレンオキシド2モル付加物(下記式(2)で表される化合物、青木油脂社製、商品名MXDA−PO2)、メタキシリレンジアミンのエチレンオキシド1モル付加物(青木油脂社製、商品名MXDA−EO1)、メタキシリレンジアミンのエチレンオキシド2モル付加物(青木油脂社製、商品名MXDA−EO2)、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン(広栄化学工業株式会社製)、アミノエチルエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
(A−2)2つの1級水酸基を有し、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物としては、ジメチロールカルボン酸類が挙げられ、たとえば、ジメチロールプロピオン酸(DMPAと表記されるものである。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(DMBAと表記されるものである。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ジメチロールペンタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸)、ジメチロールへプタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン酸)、ジメチロールオクタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸)、ジメチロールノナン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ノナン酸)等が挙げられる。
【0036】
(A−3)2つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物としては、たとえば、リジン、アルギニン等が挙げられる。
【0037】
(A−4)1つの1級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物としては、たとえば、1−アミノ−2,3−プロパンジオール(APDと表記されるものである。)等が挙げられる。
【0038】
(A−5)1つの2級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物としては、たとえば、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール(MAPDと表記されるものである。)、N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン等が挙げられる。
【0039】
(A−6)2つの1級水酸基を有し、少なくとも2級水酸基または少なくとも3級水酸基を有する化合物としては、たとえば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールからなる群より選ばれる1種の化合物に、炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加することにより得られる化合物(炭素数3〜4のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、3,4−ブチレンオキシドが挙げられる)やグリセリン、ジグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール等のグリセリン系化合物、マンニトール、マルトース、ソルビトール等が挙げられる。
【0040】
また、鎖延長剤(A)として、(A−1)〜(A−6)の化合物以外に、1つの2級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、少なくとも1つの3級水酸基を有する化合物等も使用できる。
【0041】
鎖延長剤(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を2つ有し、分子量が62〜500である化合物である。分子量が62未満であると、凝集性が高くなりすぎて、粘着力が低くなり、分子量が500を超えると、凝集性が向上せず、再剥離性が低くなる。
鎖延長剤(B)におけるイソシアネート基と反応可能な官能基としては、たとえば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられ、中でも、イソシアネート基との反応性が比較的高いことから、アミノ基または水酸基が好ましい。
【0042】
鎖延長剤(B)としては、たとえば、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、ビスフェノール、芳香族ジアミン、フェノールアミン等が挙げられる。鎖延長剤(B)の中でも、再剥離性の低下をより防止できることから、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、芳香族ジアミンならびにビスフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0043】
脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。脂肪族ジオールの中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましい。
脂肪族ジアミンとしては、たとえば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミンの中でも、エチレンジアミンが好ましい。
アルカノールアミンとしては、たとえば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。
ビスフェノールとしては、たとえば、ビスフェノールA等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、たとえば、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。
フェノールアミンとしては、たとえば、アミノフェノール等が挙げられる。
上述した化合物の中でも、時間が経過しても再剥離性が変化しにくくなることから、結晶性が高い1,4−ブタンジオール、エチレンジアミンが好ましい。
【0044】
また、鎖延長剤(A)をウレタン樹脂の分子内にできるだけ均一に配置させるためには、鎖延長剤(A)と鎖延長剤(B)とを、イソシアネート基に対する反応性が近いもの同士で組み合わせることが好ましい。たとえば、鎖延長剤(A)がアミノ基を2つ有する場合には、鎖延長剤(B)がエチレンジアミンやトリレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンであることが好ましい。鎖延長剤(A)が1級水酸基を2つ有する場合には、鎖延長剤(B)として1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオールを組み合わせることが好ましい。鎖延長剤(A)が上記例示したもの以外である場合には、鎖延長剤(B)として、脂肪族ジオール、ビスフェノール、アルカノールアミン類およびフェノールアミン類が好適に使用される。
【0045】
鎖延長剤(A)と鎖延長剤(B)のモル比(A/B)は、50/50〜95/5であることが好ましい。A/Bが50/50以上であると、再剥離性に優れ、95/5以下であると、経時的な再剥離性の低下を防止することができる。
【0046】
[鎖延長反応]
鎖延長反応としては特に制限されず、たとえば、1)イソシアネート基末端プレポリマー溶液を反応容器に仕込み、その反応容器に鎖延長剤を滴下して反応させる方法、2)鎖延長剤を反応容器に仕込み、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を滴下して反応させる方法、3)イソシアネート基末端プレポリマー溶液を溶剤で希釈した後、その反応容器に鎖延長剤を所定量一括投入して反応させる方法が挙げられる。1)〜3)のうち、イソシアネート基が徐々に減少するため均一な樹脂を得やすいことから、1)または3)の方法が好ましい。
【0047】
全鎖延長剤の添加量は、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%により異なるが、鎖延長後のイソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.01〜1.0%となる量であることが好ましく、0.05〜0.2%となる量であることがより好ましい。鎖延長剤の添加量が、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が、0.01%以上になる量であれば、鎖延長反応時に急激に増粘してゲル化することをより防止できる。イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が1.0%以下になる量であれば、鎖延長反応が充分に進み、所望の分子量を得やすくなる。
【0048】
鎖延長反応における反応温度は80℃以下が好ましい。反応温度が80℃を超えると反応速度が速くなりすぎて反応の制御が困難になるため、所望の分子量と構造を有するウレタン樹脂を得るのが困難になる傾向にある。溶剤存在下で鎖延長反応を行う場合には、溶媒の沸点以下が好ましく、特にMEKまたは酢酸エチルの存在下では40〜60℃が好ましい。
【0049】
[停止反応]
鎖延長反応後、必要に応じて、末端停止剤を添加して停止反応を行ってもよい。
上記末端停止剤としては、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって当該官能基を1つのみ有する化合物、または、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって、1つの反応性の高い官能基と、当該官能基よりも反応性の低い官能基を1〜2つ有する化合物が使用できる。
官能基を1つのみ有する化合物としては、すなわち、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、1級水酸基または2級水酸基を1つのみ有する化合物が使用できる。たとえば、ジエチルアミン、モルホリン等のモノアミン化合物およびメタノール等のモノオール化合物が挙げられる。
イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって、1つの反応性の高い官能基と、当該官能基よりも反応性の低い官能基を1〜2つ有する化合物としては、例えば1つの1級アミノ基または2級アミノ基とともに、1〜2つの水酸基を有する化合物が挙げられる。このような化合物は、官能基を2つ以上有しているが、当該官能基の反応性が異なるので、反応性の高い1つの官能基が反応した後は、残りの官能基は反応せず、実質的に1官能と同等となる。水酸基としては、2級水酸基であることがより好ましい。具体的には、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(以下、「AMP」と記載する)、モノイソプロパノールアミン、アミノプロパノール等の水酸基を有するモノアミン化合物等が使用できる。
【0050】
末端停止剤の添加量は、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、末端停止剤が1〜2モルとなる割合であることが好ましい。末端停止剤の添加量が、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、1モル未満では、停止反応後にイソシアネート基が残るので、得られるウレタン樹脂が不安定になる傾向にある。一方、末端停止剤の添加量が、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、2モルを超えると低分子量化合物が増加する傾向にある。
ウレタン樹脂の末端が水酸基である場合には、末端停止剤を使用する必要はない。
【0051】
このようにして得られたウレタン樹脂の数平均分子量はGPCによる標準ポリスチレン換算分子量で1万以上が好ましい。粘着力が15N/25mmを超える強粘着領域の粘着剤としたときでも再剥離性を発揮させる場合には、数平均分子量が3万以上であることがより好ましい。ウレタン樹脂の数平均分子量が1万未満であると、粘着特性、特に保持力の低下が著しくなる傾向にある。上限は特に制限されないが、数平均分子量が30万を超えるとゲル化の可能性があるので好ましくないので、30万以下が好ましい。
【0052】
[溶剤]
末端停止反応は、必要に応じて前記した溶剤中で行ってもよい。
【0053】
以上説明したウレタン樹脂の製造方法の鎖延長反応では、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖延長剤(A)の反応性の高い1級アミノ基、2級アミノ基などの官能基および鎖延長剤(B)のイソシアネート基と反応可能な官能基とが反応する。そのため、得られたウレタン樹脂の鎖延長剤(A)の部分には、反応性が低く、イソシアネート基末端プレポリマーと反応しなかった官能基(2級水酸基、3級水酸基、カルボキシル基など。)が残存する。この残存した官能基を利用して、その後ウレタン樹脂を架橋することにより、ウレタン樹脂の凝集力を高めることができる。その結果、再剥離性を向上させることができ、粘着性と再剥離性とを両立させることができる。
【0054】
3つ以上の官能基を有する鎖延長剤(A)を用いてウレタン樹脂を製造し、このウレタン樹脂を架橋しても、鎖延長剤(A)由来の官能基が数多く残っている場合には、経時的に粘着力が上昇したり、再剥離性が低下したりすることがある。しかし、本発明では、鎖延長剤(A)と2官能の鎖延長剤(B)とを併用するため、ウレタン樹脂の分子量を低下させずに残存官能基数を調整できる。したがって、ウレタン樹脂の残存官能基数が少なくなるように調整することにより、経時的な凝集力の上昇および再剥離性の低下を防止できる。
【0055】
(粘着剤)
次に、本発明の粘着剤について説明する。
本発明の粘着剤は、上述したウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂を主成分として含有するものである。前記製造方法で得られたウレタン樹脂はそれ自体で粘着性能を有しているため、そのまま粘着剤として使用できる。
【0056】
また、上述したウレタン樹脂を主成分とする主剤に、ポリイソシアネート化合物(以下、第2のポリイソシアネート化合物という。)を主成分とする架橋剤とを混合することにより粘着剤を得ることもできる。
この粘着剤は、ウレタン樹脂中に残存する1級水酸基、2級水酸基、3級水酸基、カルボキシル基のいずれかの官能基と第2のポリイソシアネート化合物とが反応してウレタン樹脂が架橋した架橋ウレタン樹脂を含む粘着剤である。
【0057】
[架橋剤]
架橋剤の主成分である第2のポリイソシアネート化合物としては、前記の第1のポリイソシアネート化合物およびそれらのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等の多官能ポリイソシアネートが用いられる。前記第2のポリイソシアネート化合物の中でも、平均官能基数が2を超える変性体が好ましい。例えばデュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)、コロネート2031(日本ポリウレタン社製、イソシアヌレート型TDI、イソシアネート基含有量:7.5質量%、固形分:50質量%)等が使用できる。
第2のポリイソシアネート化合物においても、第1のポリイソシアネート化合物と同様に、光学用途には、耐候性および耐光性に優れる脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、芳香環を有し、該芳香環に直接結合しないイソシアネート基を有するポリイソシアネートからなる群から選ばれる1種以上のポリイソシアネートが好ましい。
【0058】
第2のポリイソシアネート化合物は、NCO%(溶液の場合には溶剤を除く)10〜30質量%のものをウレタン樹脂100質量部に対して20質量部以下の範囲で反応させることが好ましい。より良好な再剥離性が発揮することから、第2のポリイソシアネート化合物の反応量は0.01〜10質量部であることがより好ましい。これに対し、第2のポリイソシアネート化合物を使用しない場合には凝集力が低下して凝集破壊しやすくなり、20質量部を超えると凝集が強すぎて粘着力が低下する傾向にある。
【0059】
第2のポリイソシアネート化合物の使用量によって本発明の粘着剤の粘着力が調整される。たとえば、粘着力が15N/25mmを超え50N/25mm以下である強粘着領域、粘着力が8N/25mmを超え15N/25mm以下である中粘着領域、粘着力が1N/25mmを超え8N/25mm以下の低粘着領域、ならびに粘着力が0より大きく1N/25mm以下である微粘着領域に適宜調整される。粘着力は、第2のポリイソシアネート化合物の量を増やすことにより下げることができる。
前記粘着力は以下の方法により測定する。すなわち、まず、50μmのPETフィルムに25μmの厚さで粘着剤層を設けた粘着シートを得る。この粘着シートを幅25mmに切断したものを、23℃相対湿度65%雰囲気にて、厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に貼着する。ついで、JIS Z 0237(1991年)に準じて2kgのゴムロールを用いて圧着する。そして、30分後にJIS B 7721に規定する引張試験機にて粘着力(180度ピール、引張速度300mm/分)を測定する。
【0060】
第2のポリイソシアネート化合物とウレタン樹脂に残存する官能基とを反応させる際には、ウレタン化触媒を用いることができる。ウレタン化触媒としては、プレポリマー生成反応の際に用いるウレタン化触媒を用いることができる。
第2のポリイソシアネート化合物は、被着体に該粘着剤を塗工する直前にウレタン樹脂に添加し、反応させることが好ましい。
【0061】
上述したようにウレタン樹脂と第2のポリイソシアネート化合物とを反応させて得た粘着剤は、第2のポリイソシアネートによってウレタン樹脂が架橋しており、凝集性が高くなっているため、粘着性と再剥離性とを有したものである。また、本発明の粘着剤は、時間が経過しても粘着力が増加しにくく、再剥離性の低下が防止されたものである。これは、前記ウレタン樹脂は、残存官能基を有さない鎖延長剤(B)が結合されており、結晶性が高いためと考えられる。
【0062】
上記粘着剤は、さらに、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂を併用できる。また、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、粘着付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、難燃剤、ワックス、熱安定剤等の添加剤が配合されてもよい。
このような樹脂類や添加剤は、ウレタン樹脂からなる主剤に添加することが好ましい。また、上記粘着剤は、市販のアクリル系粘着剤およびゴム系の粘着剤等と併用してもよい。
【0063】
[用途]
本発明の粘着剤は、微粘着領域の粘着剤(微粘着型粘着剤)とした場合には、たとえば、液晶ディスプレイにて偏光板、位相差板または拡散板等の光学フィルムの表面保護のためのプロテクトテープとして利用可能である。光学フィルム表面保護用のプロテクトテープとしては、貼り合わせおよび剥離が容易であること、ならびに、表面が汚染されにくいことが求められることから、微粘着の粘着性と再剥離性とを両立できる本発明の粘着剤は特に好適である
また、低粘着領域〜中粘着領域の粘着剤とした場合には、液晶ディスプレイ等で使用される様々なフィルムを貼り合わせるための粘着剤として使用できる。シリコンウエハ切断時の固定用ダイシングテープに用いられる粘着剤としても使用できる。これらの用途では、容易に剥離せずかつフィルムのゆがみに追従する性能が求められるから、低〜中程度の粘着力と再剥離性とを両立できる本発明の粘着剤は特に好適である。
また、強粘着領域の粘着剤とした場合には、広告用看板または自動車の内外装や家電の化粧鋼板等、環境変化の大きな場所で使用される粘着剤、および、風圧、接触等への耐性が求められる分野で用いられる粘着剤として使用できる。前記分野はこれまで接着剤が使用されてきた分野であり、外力に対する追従性、貼りなおしが求められ、特に強固に接着した後に、リサイクルの観点から糊残りせずに剥離することが求められる。したがって、本発明の強粘着型であっても再剥離性に優れる粘着剤は有効である。
【0064】
また、本発明の粘着剤は、プラスチックフィルム、プラスチックシート、ポリウレタン、紙、ポリウレタン発泡体等である被着体に塗工され、テープ、ラベル、シール、化粧用シート、滑り止めシート、両面粘着テープ等にも好適に使用できる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0066】
(ポリオール)
以下の実施例においてポリオールとして以下のものを用いた。
ポリオール(P1):プロピレングリコールを開始剤とし、KOH触媒を用いてプロピレンオキシドを反応させて製造した、水酸基価56.1mgKOH/gのポリオキシプロピレンジオール。
【0067】
(鎖延長剤)
以下の実施例において鎖延長剤として以下のものを用いた。
化合物(C1):N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン(鎖延長剤(A))。
化合物(C2):1,4−ブタンジオール(鎖延長剤(B))。
【0068】
(製造例1:ウレタン樹脂系粘着剤U1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリオール(P1)187.0g、2,4−TDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートT−100)24.2g、ウレタン化触媒としてDBTDLをポリオール(P1)、2,4−TDIの合計量に対して20ppmに相当する量を仕込んだ。ついで、80℃まで徐々に昇温し、プレポリマー生成反応を2時間行ってイソシアネート基末端プレポリマーを得た(NCO%は1.80質量%)。その後、60℃まで冷却し、酢酸エチルの142.0g、MEKの142.0gを添加した後、鎖延長剤(A)として、N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン(化合物(C1))の2.54g、鎖延長剤(B)として1,4−ブタンジオール(化合物(C2))の1.90gを添加して反応させた。60℃で反応を続け、NCO%が0.10質量%以下になった時点で、末端停止剤であるモノイソプロパノールアミン(MIPA)の0.49gを添加して反応を終了した。得られたポリウレタン樹脂溶液は無色透明で固形分が43質量%であった。
また、該ポリウレタン樹脂溶液の粘度を25℃でB型粘度計により測定したところ、5800mPa・s/25℃であり、ポリウレタン溶液中の樹脂の数平均分子量(Mn)をゲルパーミエーショングラフィー法によりポリスチレン換算で測定したところ、76000であった。
【0069】
(製造例2:ウレタン樹脂系粘着剤U2の製造)
表1に示す配合に変更した以外は製造例1と同様にしてウレタン樹脂系粘着剤溶液U2を得た。得られたウレタン樹脂系粘着剤溶液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、数平均分子量(Mn)を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施例1)
得られたウレタン樹脂系粘着剤溶液U1の100gに対し、架橋剤(第2のポリイソシアネート化合物)として、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量;13.5質量%、固形分;75質量%)を1.4g添加し、毎分40回転で1分間、撹拌混合して、ウレタン樹脂系粘着剤を得た。
【0072】
(実施例2〜4)
表2に示すように、ウレタン樹脂系粘着剤溶液に架橋剤(第2のポリイソシアネート化合物)として、コロネートL、または、コロネート2031(日本ポリウレタン社製、イソシアヌレート型TDI、イソシアネート基含有量:7.5質量%、固形分:50質量%)をそれぞれ添加し、毎分40回転で1分間、撹拌混合して、ウレタン樹脂系粘着剤を得た。
【0073】
【表2】

【0074】
(物性評価)
実施例1〜4のウレタン樹脂系粘着剤について、初期粘着力、経時粘着力、ボールタック、保持力、再剥離性について評価した。評価結果を表2に示す。
評価においては、実施例1〜4のウレタン樹脂系粘着剤をPETフィルム上に塗工した粘着シートを用いた。粘着シートの作製方法では、まず、各実施例のウレタン樹脂系粘着剤をそれぞれ厚み25μmのPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように塗工し、循環式オーブンにおいて100℃で1分乾燥した。ついで、23℃で一週間養生した後、23℃かつ相対湿度65%の環境下に2時間放置して、評価用の粘着シートを得た。
【0075】
[初期粘着力]:粘着シートを厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に室温にて貼着し、2kgのゴムロールで圧着し30分後、JIS B 7721に規定する引張試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張速度300mm/分)を測定した。この剥離強度を初期粘着力とした。
【0076】
[経時粘着力]:粘着シートを厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に室温にて貼着し、2kgのゴムロールで圧着し60℃の恒温槽の中に2週間放置後、23℃かつ相対湿度65%で2時間冷却し、JIS B 7721に規定する引張試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張速度300mm/分)を測定した。この剥離強度を経時剥離力とした。
また、初期剥離力に対する経時剥離力である粘着力上昇率(倍)を求めた。
【0077】
[ボールタック]:JIS Z 0237に規定するボールタック法にて23℃かつ相対湿度65%の条件下で測定した。
【0078】
[保持力]:厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))の一端に、粘着シートの25mm×25mmの面積が接触するように貼合わせ、ロールで圧着した。ついで、ステンレス板の他端を吊り下げて、粘着シートがステンレス板にぶら下がるように配置し、80℃の恒温槽の中に20分間放置した。その後、粘着シートに1kgの荷重をかけて、落下するまでの秒数または1000分後のずれを測定した。1000分後にずれがないものを〇、ズレを生じたものを△、落下したものを×として評価した。
【0079】
[再剥離性]:粘着シートをステンレス鋼板(SUS304(JIS))に貼着した後、60℃の恒温槽の中に2週間放置し、23℃かつ相対湿度65%に冷却した後、剥離し、糊残り性を目視評価した。目視評価では、ステンレス鋼板への糊移行が全くないものを○、部分的にあるものを△、完全に移行しているものを×として評価した。
【0080】
鎖延長反応の際に鎖延長剤として鎖延長剤(A)と鎖延長剤(B)とを併用して得た実施例1〜4のウレタン樹脂系粘着剤は、再剥離性を有している上に、粘着力上昇率が小さく、時間が経過しても再剥離性を維持していた。また、実施例1〜4のウレタン樹脂系粘着剤は、保持力試験において、ズレを生じることなく、充分な保持力を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のウレタン樹脂系粘着剤は、電子分野、医療分野やスポーツ分野、建築分野等の各分野で用いられる保護フィルム、粘着テープ、粘着ラベル、粘着シール、滑り止めシート、両面粘着テープ等に適用できる。
また、本発明では、ポリイソシアネート化合物として無黄変イソシアネートを用いることにより、無色透明で中粘着領域のウレタン樹脂系粘着剤を製造できる。無色透明で中粘着領域のウレタン樹脂系粘着剤は、ディスプレイ用の偏光フィルム・保護フィルム貼りつけ用途等に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに必要に応じて末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法であって、
鎖延長剤が鎖延長剤(A)および鎖延長剤(B)を含み、
鎖延長剤(A)は、下記(a1)の化合物および(a2)の化合物からなる群から選ばれる1種または2種の化合物であり、鎖延長剤(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を2つ有し、分子量が62〜500である化合物であることを特徴とするウレタン樹脂の製造方法。
(a1)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である化合物。
(a2)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうち2つが、1級アミノ基および2級アミノ基からなる群より選ばれる1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
【請求項2】
鎖延長剤(B)のイソシアネート基と反応可能な官能基が、アミノ基または水酸基である、請求項1に記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項3】
鎖延長剤(B)が、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、芳香族ジアミンおよびビスフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項4】
鎖延長剤(A)と鎖延長剤(B)とのモル比(A/B)が50/50〜95/5である請求項1〜3のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂を含有する粘着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のウレタン樹脂の製造方法で得られたウレタン樹脂と第2のポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる架橋ウレタン樹脂を含有する粘着剤。

【公開番号】特開2007−262176(P2007−262176A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87106(P2006−87106)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】