説明

ウレタン樹脂組成物、コーティング剤、ハードコート剤ならびにそれらを用いて得られる硬化物及び硬化物の製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、極めて高硬度で、かつ優れた耐擦傷性を備えた成形物を形成可能なウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、金属アルコキシド(B−1)やその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と、アルコール(C)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコーティング剤や成形材料等をはじめとする様々な用途に使用可能なウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物としては、従来から溶剤系、水系、無溶剤系のものが知られており、フィルムやシート等の成形材料や接着剤、コーティング剤等をはじめとする様々な用途で使用されている。
【0003】
なかでも溶剤系ウレタン樹脂組成物は、水系ウレタン樹脂組成物と比較して、一般に耐久性や耐水性に優れた皮膜等を形成できることから、現在でも幅広く使用されている。
【0004】
しかし、近年の環境負荷低減の観点から、溶剤系ウレタン樹脂組成物の使用が敬遠される傾向にあり、なかでも、ジメチルホルムアミド等の強溶剤を含むウレタン樹脂組成物は、環境や人体へ与える悪影響が大きいため、産業界からは、前記溶剤系ウレタン樹脂組成物に代わる耐久性や耐水性に優れたウレタン樹脂組成物の開発が求められている。
【0005】
一方、前記ウレタン樹脂組成物の使用用途が前記のとおり拡大傾向にあるなかで、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル装置等の表面保護材料、人工骨や人工歯等の医療材料、自動車部品等の分野では、経時的な変形や傷の発生を防止する観点から、高硬度で優れた耐擦傷性を備えた成形物を形成可能なウレタン樹脂組成物の開発が求められている。
【0006】
比較的高硬度な成形物を形成可能なウレタン樹脂組成物としては、例えば両末端にアルコキシシリル基を有するポリウレタン及び加水分解性アルコキシシランを含有してなる有機無機ハイブリッドポリウレタン用組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
前記有機無機ハイブリッドポリウレタン用組成物であれば、比較的良好な硬度の成形物を形成できるものの、例えばタッチパネル装置等の表面保護材料や人工骨等の医療材料に使用可能なレベルの、極めて高い硬度の成形物を形成できない場合があった。
【0008】
また、自動車部材や各種窓ガラス等には、例えば石や金属片等の非常に硬いものが接触した場合であっても傷のつきにくい優れた耐擦傷性が求められる場合がある。
【0009】
しかし、前記文献1記載の組成物を用いて得られた成形物の表面に、金属片等が接触した場合に、その表面には著しいすり傷が発生し、前記成形物の外観不良等を引き起こす場合があった。
【0010】
また、前記したようにジメチルホルムアミド等の強溶剤を溶媒としたウレタン樹脂組成物が、環境負荷低減の観点から敬遠されつつあるなかで、前記文献1記載の両末端にアルコキシシリル基を有するポリウレタンは、アルコール溶媒に十分溶解せず、保存安定性等の低下を引き起こす場合があった。そして、良好な保存安定性を付与するためには、前記アルコール溶媒とともに前記メチルエチルケトンやトルエン等の強溶剤を併用しなければならない場合があった。
【0011】
以上のように、従来技術と比較して極めて高い硬度を有し、金属等で擦過した場合であっても傷のつかない成形物を形成可能なアルコール可溶型の樹脂組成物が産業界から求められているものの、依然として見出されていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−63661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、極めて高硬度で、かつ優れた耐擦傷性を備えた硬化物を形成可能なウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、得られる硬化物の硬度をより一層高めるためには、前記硬化物中に含まれる無機成分の含有量を増加することが有効ではないかと考え検討を進めた。具体的には、前記特許文献1記載の組成物をベースに、加水分解性アルコキシシランの使用量を増加させることを検討した。
【0015】
しかし、前記加水分解性アルコキシシランの使用量を増加することのみでは、得られる樹脂組成物の保存安定性が著しく低下したり、塗工の際の造膜性の著しい低下を引き起こし、その結果、耐擦傷性の向上を実現することはできなかった。
【0016】
そこで、本発明者等は、前記加水分解性アルコキシシラン等の無機成分の含有量を高めるためには、それと組み合わせ使用するウレタン樹脂の選択が重要ではないかと考え検討をすすめた。
【0017】
その結果、オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂を使用した場合に、前記加水分解性アルコキシシラン等の無機成分の含有量を増加させることが可能となり、従来よりも各段に高硬度で、かつ、トルエン等の強溶剤を組み合わせ使用せずともアルコール溶媒に溶解可能なウレタン樹脂組成物を見出すに至った。
【0018】
即ち、本発明は、オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と、アルコール(C)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られる硬化物に関するものである。
【0019】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物、または、前記ウレタン樹脂組成物に対して必要に応じて更に水と酸触媒とを混合して得た組成物を、基材表面に塗布し、前記塗布層中に含まれる前記アルコール(C)を除去することによって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して生成される水酸基とを、反応させ結合を形成することを特徴とする硬化物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のウレタン樹脂組成物であれば、従来と比較して極めて高硬度で耐擦傷性に優れた皮膜や各種成形物等の硬化物を形成できることから、例えばコーティング剤や成形材料等に使用することができる。また、本発明のウレタン樹脂組成物であれば、前記高硬度で優れた耐擦傷性を損なうことなく、更にメチルエチルケトンや各種アルコールに対する耐溶剤性に優れ、かつ、ガラスをはじめとする各種基材に対して優れた密着性を備えた皮膜や成形物等の硬化物を形成できる。
【0021】
したがって、本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば自動車や鉄道等を構成する部品の表面被覆、太陽光発電装置等の光発電装置等の受光表面の表面被覆、電子部品等の表面被覆、壁材や床材、窓ガラス等の表面被覆に使用するコーティング剤やそれらの接着剤、人工骨や人工歯のような医療材料、自動車部品、家電部品及び電子材料等の成形材料に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と、アルコール(C)と、必要に応じてその他の成分とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタン樹脂組成物である。
【0023】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記アルコール(C)を溶媒とし、前記アルコール(C)中に前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)や前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)等が溶解または分散したものである。
【0024】
ここで、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)とは、溶媒としてのアルコール(C)中で反応しにくいため、それらの多くは前記アルコール(C)中でそれぞれ独立して存在する場合が多い。
【0025】
具体的には、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の有する加水分解性シリル基はアルコール(C)中で加水分解せずシラノール基を形成しにくい。また、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)も、その金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解せず、水酸基を形成しにくい。その結果、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)とは、アルコール(C)中で反応しにくい。
【0026】
これにより、本発明のウレタン樹脂組成物は、経時的な高粘度化を引き起こさず、良好な保存安定性と塗工作業性とを長期間維持することが可能である。
【0027】
なお、本発明のウレタン樹脂組成物は、前記良好な保存安定性等を損なわない範囲であれば、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)とが部分的に結合を形成した状態でアルコール(C)中に溶解または分散したものであってもよい。
【0028】
本発明のウレタン樹脂組成物は、良好な塗工作業性等の観点から、500〜10000mPa・sの範囲の粘度であることが好ましい。
【0029】
一方、本発明のウレタン樹脂組成物を各種基材表面に塗布、乾燥し、該塗布層中に含まれるアルコール(C)を揮発、除去すると、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が大気中の湿気(水)や、意図的に添加された水によって加水分解されシラノール基を形成する。また、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)は、その金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して水酸基を形成する。
【0030】
そして、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)中に形成された前記水酸基間、または該水酸基と、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)中のシラノール基とが縮合し、極めて高硬度で耐擦傷性にも優れた皮膜や成形物等の硬化物を形成することができる。
【0031】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上95質量%以下となる範囲で、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記加水分解性基含有化合物(B)とを組み合わせ使用することが重要である。
【0032】
前記質量割合が50質量%未満であるウレタン樹脂組成物を使用した場合であっても、ある程度良好な硬度を備えた硬化物を形成することはできる。しかし、例えばJISK5600で定められた方法に従って行う「ひっかき硬度(鉛筆法)」において、9H〜7Hといった非常に高硬度な硬化物を形成できない場合がある。また、前記質量割合が50質量%未満であるウレタン樹脂組成物を使用して得られた硬化物は、その表面を金属等で擦過した際に、著しい傷が発生する場合がある。
【0033】
一方、前記質量割合が95質量%を超える配合からなるウレタン樹脂組成物を使用した場合には、得られる樹脂組成物の保存安定性が著しく低下したり、造膜性や成形加工性の著しい低下を引き起こし、皮膜や成形物等の硬化物を得ることができない場合がある。
【0034】
したがって、本発明のウレタン樹脂組成物としては、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して55質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上92質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上92質量%以下であることがよりより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが、極めて高硬度でかつ耐擦傷性に優れた硬化物を形成するうえでより好ましい。
【0035】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)との質量割合は、前記ケイ素原子と酸素原子の合計質量の割合が50質量%以上95質量%以下となる範囲で適宜調整することができる。具体的には、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記加水分解性基含有化合物(B)との合計質量に対する、前記加水分解性基含有化合物(B)の質量割合が、50質量%以上95質量%以下の範囲で使用することが好ましく、60質量%以上95質量%以下の範囲で使用することがより好ましく、65質量%以上95質量%以下の範囲で使用することが特に好ましい。
【0036】
はじめに、本発明で使用するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)について説明する。
本発明で使用するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するものである。
【0037】
前記オキシエチレン構造は、例えば前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の分子中や分子末端、分子側鎖等に導入可能な、下記一般式(1)で示される構造である。

【0038】
(前記一般式(1)中のnは1以上の整数を示す。)
前記オキシエチレン構造は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)とアルコール(C)とともに、多量の前記加水分解性基含有化合物(B)を混合した場合であっても、本発明のウレタン樹脂組成物の保存安定性や、造膜性及び成形加工性等の低下を引き起こすことなく、極めて高硬度で耐擦傷性に優れた皮膜や成形物等の硬化物を得る上で重要である。具体的には、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量を、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上とするうえで重要である。
【0039】
ここで、前記ウレタン樹脂(A)の代わりに、前記オキシエチレン構造を有さないウレタン樹脂を使用した場合、ウレタン樹脂組成物の保存安定性や、造膜性及び成形加工性等が低下し、極めて高硬度で耐擦傷性に優れた皮膜や成形物等の硬化物を得ることができない場合がある。
【0040】
なお、前記アルコール(C)とともに、メチルエチルケトン等の強溶剤を多量に併用することによって、前記オキシエチレン構造を有さないウレタン樹脂等の溶媒に対する溶解性は、若干、向上する傾向にある。しかし、前記多量の加水分解性基含有化合物(B)は、依然として安定して存在できず、凝集物の発生等を引き起こす場合がある。また、前記強溶剤を使用することは、環境負荷低減を図るうえでも、好ましくない。
【0041】
前記オキシエチレン構造は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の全量に対して5〜70質量%の範囲で存在することが、ウレタン樹脂組成物の良好な保存安定性や造膜性、成形加工性を維持し、かつ、極めて高硬度で耐擦傷性に優れた皮膜や成形物等の硬化物を得るうえで好ましい。また、前記一般式(1)中のnは、1〜50の整数であることが好ましく、10〜50の整数であることがより好ましい。
【0042】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基は、前記したとおり、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と架橋反応し、極めて高硬度でかつ耐擦傷性に優れた皮膜や成形物等の硬化物を形成するうえで重要である。
【0043】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基は、加水分解性基がケイ素原子に直接結合した官能基であり、例えば、下記の一般式(2)で表される官能基が挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
(一般式(2)中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基である。またxは0〜2の整数である。)
【0046】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0048】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0049】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0050】
前記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられ、前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられ、前記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
前記Rは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
【0052】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、通常、アルコール(C)の存在下では加水分解しにくいため、シラノール基を形成しにくく、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基を有するが、それらのごく一部がシラノール基の状態でウレタン樹脂(A)中に存在していても良い。
【0053】
前記加水分解性シリル基は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の分子末端または前記ウレタン樹脂(A)の側鎖のいずれに存在していてもよい。なかでも、前記加水分解性シリル基が前記ウレタン樹脂(A)からなる分子の側鎖に存在するものを使用することが、より一層高硬度でかつ耐擦傷性に優れた皮膜や成形物等の硬化物を形成するうえで好ましい。
【0054】
前記加水分解性シリル基は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の質量に対して、0.5〜20質量%の範囲で存在することが、得られる硬化物の硬度を各段に向上させるとともに、優れた耐擦傷性を付与するうえで好ましく、0.5〜10質量%の範囲で存在することがより好ましい。
【0055】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)としては、後述するアルコール(C)への溶解しやすさを向上する観点から、5000〜300000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、8000〜200000の範囲がより好ましく、100000〜200000の範囲が特に好ましい。
【0056】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の製造に使用する後述するポリイソシアネート(a1)として芳香族環式構造を有するものを使用する場合等には、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂として、概ね5000〜30000、好ましくは5000〜10000の範囲の比較的低分子量のものであることが、アルコール(C)への良好な溶解性を維持するうえで好ましい。
【0057】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、例えばポリイソシアネート(a1)及びポリオール(a2)を反応させることによって得られた分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)と、アミノ基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上のシランカップリング剤(a4)と、必要に応じて鎖伸長剤(a5)とを反応させることによって製造することができる。
【0058】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、具体的には、分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を製造する工程(第一工程)、及び、前記ウレタンプレポリマー(a3)と、前記シランカップリング剤(a4)と必要に応じて鎖伸長剤(a5)とを反応させることで前記アルコール(C)に溶解しうるアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造する工程(第二工程)とによって製造することができる。
【0059】
はじめに、前記第一工程について説明する。
前記第一工程は、前記ポリイソシアネート(a1)とポリオール(a2)とを、無溶媒下で反応させることによって、分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を製造する工程である。
【0060】
ここで、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)との反応は、無溶媒下で行うことが重要である。例えばジメチルホルムアミド等の強溶剤の存在下で上記反応を行うと、前記強溶剤がウレタン樹脂組成物中に残留する場合が多く、残留した強溶剤が各種基材表面の溶解や変色等を引き起こし、その表面に形成された皮膜の硬度や耐擦傷性の低下を引き起こす場合がある。また、溶媒として後述するアルコール(C)を使用した際に、前記ポリイソシアネート(a1)とアルコール(C)との反応を誘引し、所望のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を得ることができない場合がある。
【0061】
したがって、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)との反応は、前記のとおり無溶媒下で行うか、または溶媒存在下で行う場合には、弱溶媒を使用したり、残留溶媒を十分に除去することが好ましい。
【0062】
前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)との反応は、前記ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基と前記ポリオール(a2)の有する水酸基との当量割合[ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基/ポリオール(a2)の有する水酸基]が0.8〜10.0の範囲で行うことが好ましく、1.0〜5.0の範囲で行うことがより好ましく、1.1〜2.0の範囲で行うことが特に好ましい。
【0063】
ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを無溶媒下で反応させる際の反応は、急激な発熱や発泡などに十分に注意し安全性を考慮し、好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは80℃〜100℃の反応温度で、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを、一括混合、または、何れか一方を他方へ滴下等の方法で逐次供給し、概ね1〜15時間程度反応させる方法により行うことができる。
【0064】
次に、前記第二工程について説明する。
前記第二工程は、前記ウレタンプレポリマー(a3)を製造する第一工程に続いて行う、以下の(方法1)〜(方法3)のいずれかの方法からなる工程である。かかる工程は、前記ウレタンプレポリマー(a3)と前記カップリング剤(a4)と、必要に応じて鎖伸長剤(a5)とを反応させることによって、加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液を製造する工程である。
【0065】
はじめに、前記(方法1)について説明する。
前記(方法1)は、前記カップリング剤(a4)とアルコール(C)と、必要に応じて前記鎖伸長剤(a5)とを含む混合物、及び、前記ウレタンプレポリマー(a3)を混合し反応させることにより、加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液を製造する方法である。
【0066】
具体的には、予め調製した前記カップリング剤(a4)とアルコール(C)と、必要に応じて前記鎖伸長剤(a5)とを含む混合物と、前記第一工程で得られた前記ウレタンプレポリマー(a3)とを混合し、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基または水酸基と、前記カップリング剤(a4)や鎖伸長剤(a5)が有するアミノ基やイソシアネート基等の官能基とを反応させることによって、分子中に加水分解性シリル基が導入されたウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液を製造することができる。
【0067】
ここで、前記カップリング剤(a4)として、後述するようなモノアミンシランカップリング剤やモノイソシアネート基含有シランカップリング剤等を使用した場合、前記加水分解性シリル基は、得られるアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の分子末端に導入される。また、前記カップリング剤(a4)として、後述するジアミンシランカップリング剤やジイソシアネート基含有シランカップリング剤等を使用した場合、前記加水分解性シリル基は、得られるアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の分子側鎖に導入される。
【0068】
前記カップリング剤(a4)とアルコール(C)と、必要に応じて前記鎖伸長剤(a5)とを含む混合物は、カップリング剤(a4)とアルコール(C)と、必要に応じて前記鎖伸長剤(a5)とを、常温下、具体的には10〜50℃程度の条件下で一括供給またはいずれかを逐次供給し、混合、攪拌することにより得ることができる。ここで、前記カップリング剤(a4)は、アルコール(C)の存在下にあるので、該カップリング剤(a4)が有する加水分解性シリル基間での加水分解縮合反応を実質的に引き起こさない。
【0069】
次に、前記(方法2)について説明する。
前記(方法2)は、前記カップリング剤(a4)と、必要に応じて前記鎖伸長剤(a5)とを含む混合物、及び、前記ウレタンプレポリマー(a3)を混合し反応させることで分子中に加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造し、次いで、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)とアルコール(C)とを混合することで加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液を製造する方法である。
【0070】
具体的には、予め調製した前記カップリング剤(a4)単独、または、前記カップリング剤(a4)と前記鎖伸長剤(a5)とを含む混合物と、前記第一工程で得られた前記ウレタンプレポリマー(a3)とを混合し、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基または水酸基と、前記カップリング剤(a4)や鎖伸長剤(a5)が有するアミノ基やイソシアネート基等の官能基とを反応させることによって、分子中に加水分解性シリル基及び/またはシラノール基が導入された前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造する。
【0071】
次いで、得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)とアルコール(C)とを混合し、攪拌することによって、アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の前記アルコール(C)溶液を得ることができる。その際、前記ウレタン樹脂(A)中に存在していたシラノール基の大部分は、アルコール(C)の存在下でアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基を形成する。
【0072】
前記カップリング剤(a4)とともに鎖伸長剤(a5)を使用する場合には、カップリング剤(a4)と鎖伸長剤(a5)とを、常温下、具体的には10〜50℃程度の条件下で混合することが好適である。
【0073】
また、前記カップリング剤(a4)単独、または、前記カップリング剤(a4)と草地伸長剤(a5)とを含む混合物と、前記ウレタンプレポリマー(a3)との混合は、好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃の温度条件下で行うことができる。
【0074】
また、前記カップリング剤(a4)及び鎖伸長剤(a5)の混合物と、前記ウレタンプレポリマー(a3)との混合は、それらを一括して混合する方法や、いずれか一方を他方へ滴下等で逐次供給し混合する方法により行ってもよい。
【0075】
また、前記方法で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)とアルコール(C)との混合は、好ましくは10〜50℃の温度条件下で行うことが好ましい。前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記アルコール(C)との混合も、それらを一括して混合する方法や、いずれか一方を他方へ滴下等により逐次供給し混合する方法で行うことができる。
【0076】
次に、前記(方法3)について説明する。
前記(方法3)は、前記第一工程で得られたウレタンプレポリマー(a3)及びアルコール(C)の混合物と、前記カップリング剤(a4)と、必要に応じ鎖伸長剤(a5)とを混合し反応させることによって、加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液を製造する方法である。
【0077】
具体的には、前記第一工程で得られた前記ウレタンプレポリマー(a3)をアルコール(C)に溶解した混合物を予め調製し、該混合物と、前記カップリング剤(a4)と、必要に応じて鎖伸長剤(a5)とを混合し、前記カップリング剤(a4)や鎖伸長剤(a5)が有するアミノ基やイソシアネート基等の官能基と、前記ウレタンプレポリマー(a3)の有するイソシアネート基や水酸基とを反応させることによって、アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の前記アルコール(C)溶液を得ることができる。
【0078】
ここで、前記ウレタンプレポリマー(a3)とアルコール(C)との混合は、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基と、前記アルコール(C)が有する水酸基との反応を防止する観点から、好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃の常温または比較的低温条件下で行うことが重要である。
【0079】
前記ウレタンプレポリマー(a3)とアルコール(C)との混合は、それらを一括して混合する方法や、いずれか一方を他方へ滴下等で逐次供給し混合する方法により行ってもよい。
【0080】
また、前記ウレタンプレポリマー(a3)とアルコール(C)との混合物と、前記カップリング剤(a4)と必要に応じて鎖伸長剤(a5)との混合は、それらを一括して混合、攪拌する方法であっても、何れかの成分を他の成分へ滴下等の方法により逐次供給することによって行っても良い。但し、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基と、前記アルコール(C)が有する水酸基との反応を防止する観点から、前記ウレタンプレポリマー(a3)とアルコール(C)との混合物を製造した後、できるだけ速やかに、具体的には、好ましくは10〜50℃の条件下、前記混合物の製造後、約2時間以内に前記カップリング剤(a4)や前記鎖伸長剤(a5)と混合し、その後、約10〜50℃で反応させることが好ましい。
【0081】
前記第一工程及び第二工程によって得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、後述するアルコール(C)に対して優れた溶解性を有する。前記ウレタン樹脂(A)の溶解性は、前記ウレタン樹脂(A)の好ましくは95質量%以上がアルコール(C)に溶解できることを指し、より好ましくは99質量%以上が溶解できることを指し、特に好ましくは実質的に100質量%が溶解することを指す。また、前記ウレタン樹脂(A)の溶解性は、本発明のウレタン樹脂組成物を目視した際に白濁を引き起こさず、透明な状態を維持できる状態を指す。
【0082】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の製造に使用可能なポリイソシアネート(a1)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族環式構造含有ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート等を使用することができる。
【0083】
なかでも、後述するアルコール(C)に対して良好な溶解性を有し、かつ前記アルコール(C)とも副反応しにくいアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造する観点から、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートや脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、イソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。なお、前記ポリイソシアネート(a1)として芳香族環式構造含有ポリイソシアネートを単独で使用する場合には、ウレタン樹脂(A)を製造する際の第二工程として前記方法2を行うことが好ましい。
【0084】
前記ポリイソシアネート(a1)と反応しうるポリオール(a2)としては、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)中にオキシエチレン構造を導入する観点から、オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)を使用することが好ましい。
【0085】
前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)としては、例えば分子中または側鎖にオキシエチレン構造を有するものを使用することができ、例えばポリオキシエチレングリコールや、オキシエチレン構造とともに、オキシプロピレン構造やテトラメチレンオキサイド構造等のその他のオキシアルキレン構造との両方の構造を有するランダム共重合体やブロック共重合体を使用することができる。
【0086】
前記オキシエチレン構造とその他のオキシアルキレン構造との質量割合[オキシエチレン構造/その他のオキシアルキレン構造]としては、前記加水分解性基含有化合物(B)や、硬化物を形成する際に必要に応じて使用可能な水及び酸触媒等に対する相溶性を向上させ、得られる硬化物の耐水性を向上する観点から、30/70〜60/40の質量割合であることが好ましい。
【0087】
また、前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)としては、オキシエチレン構造を有するポリオキシアルキレン鎖の片末端に水酸基を1個または2個以上有するものを使用することもできる。オキシエチレン構造を有するポリオキシアルキレン鎖の片末端に水酸基を1個有するものとしては、例えばポリエチレングリコールモノメチルエーテル等を使用することができる。また、オキシエチレン構造を有するポリオキシアルキレン鎖の片末端に水酸基を2個以上有するものとしては、具体的にはYmer N120(パーストープ社製)等を使用することができる。
【0088】
前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)としては、前記したなかでもオキシエチレン構造含有ポリエーテルポリオールを使用することが、好ましく、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体からなるポリエーテルポリオール、及び、ポリオキシエチレンポリオールとからなる群より選ばれる1種以上を使用することがより好ましい。
【0089】
前記オキシエチレン構造含有ポリエーテルポリオールは、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物からなる開始剤と、エチレンオキサイドを必須とし、必要に応じてその他のアルキレンオキサイドとを付加重合することによって製造することができる。具体的には、例えば三フッ化ホウ素等の触媒と前記開始剤の存在下に、前記エチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイド等を一括供給、またはそれぞれ別々に供給、混合し、反応させることによって製造することができる。
【0090】
前記オキシエチレン構造含有ポリエーテルポリオールの製造に使用する開始剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等を使用することができる。
【0091】
また、前記開始剤と反応しうるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドを必須とし、必要に応じてプロピレンオキサイドやブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、γ-クロロプロピレンオキシド(エピクロルヒドリン)、テトラメチレンオキサイド(テトラヒドロフラン)等のその他のアルキレンオキサイドを組み合わせ使用することができる。
【0092】
前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)としては、前記加水分解性基含有化合物(B)や水、マレイン酸等の酸触媒等との相溶性を向上させるうえで、800〜5000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0093】
前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)は、前記ポリオール(a2)の全量に対して10〜100質量%の範囲で使用することが好ましく、20〜100質量%が好ましく、80〜100質量%の範囲で使用することが、ウレタン樹脂組成物の良好な保存安定性や造膜性、成形加工性を維持し、かつ、極めて高硬度で耐擦傷性に優れた硬化物等を得るうえで好ましい。
【0094】
前記ポリオール(a2)としては、前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)とともに、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0095】
前記その他のポリオールとしては、オキシエチレン構造を有さないポリオールであって、例えばオキシエチレン構造を有さないポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。得られる硬化物の耐溶剤性等を向上する場合には、前記その他のポリオールとしてポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。
【0096】
前記その他のポリエーテルポリオールとしては、例えば前記した開始剤及びアルキレンオキサイドとして、オキシエチレン構造を有さないものを使用しそれらを付加重合することによって得られたものを使用することができる。
【0097】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシプロピレングリコール等を使用することができる。
【0098】
また、前記その他のポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンやγ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0099】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0100】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。なお、前記芳香族環式構造含有ポリエステルポリオールを使用する場合には、前記ポリカルボン酸としてテレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸を使用することが好ましい。
【0101】
また、前記その他のポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0102】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0103】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物等を使用することができる。
【0104】
前記ポリオール(a2)としては、前記したものの他に、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンや、ジメチロールプロピオン酸等の比較的低分子量のポリオールを使用することもできる。
【0105】
前記その他のポリオールとしては、800〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、800〜3000の範囲のものを使用することがより好ましい。
【0106】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の製造に使用するカップリング剤(a4)は、前記ウレタン樹脂(A)の分子末端または分子側鎖に加水分解性シリル基を導入するために使用する。
【0107】
前記カップリング剤(a4)としては、例えばアミノ基含有シランカップリング剤やイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用することができる。
【0108】
前記アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えばモノアミンシランカップリング剤、ジアミンシランカップリング剤を使用することができる。前記モノアミンシランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端がイソシアネート基である場合に、かかるイソシアネート基と前記モノアミンシランカップリング剤のアミノ基とが反応する。これにより、分子末端に加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0109】
一方、前記ジアミンシランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端がイソシアネート基である場合に、かかるイソシアネート基と前記ジアミンシランカップリング剤のアミノ基とが反応する。これにより、分子末端ではなく、分子側鎖に加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0110】
前記モノアミンシランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のモノアミンシランカップリング剤を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0111】
前記ジアミンシランカップリング剤としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のジアミンシランカップリング剤を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0112】
また、前記前記イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えばモノイソシアネート基含有シランカップリング剤、ジイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用することができる。
【0113】
前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端が水酸基である場合に、かかる水酸基と前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤のイソシアネート基とが反応する。これにより、分子末端に加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0114】
一方、前記ジイソシアネート基含有シランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端が水酸基である場合に、かかる水酸基と前記ジイソシアネート基含有シランカップリング剤のイソシアネート基とが反応する。これにより、分子末端ではなく、分子側鎖に加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0115】
前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0116】
前記カップリング剤(a4)としては、加水分解性シリル基を、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)からなる分子の側鎖に導入し、より一層優れた耐擦傷性を備えた硬化物を得るうえで、ジアミンシランカップリング剤やジイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用することが好ましく、特にジアミンシランカップリング剤を使用することがより好ましい。
【0117】
前記カップリング剤(a4)は、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基の1.00当量に対して、アミノ基が0.01〜1.0(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.01〜0.9(当量比)の割合で使用することがより好ましい。また、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端に官能基が水酸基である場合には、該水酸基1.00当量に対して、カップリング剤(a4)の有するイソシアネート基が0.01〜1.0(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.01〜0.9(当量比)の割合で使用することがより好ましい。
【0118】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造する際には、該ウレタン樹脂(A)を高分子量化し、得られる硬化物に極めて高硬度で特に優れた耐擦傷性を付与するうえで、必要に応じて鎖伸長剤(a5)を使用することができる。
【0119】
前記カップリング剤(a4)としての前記ジアミンシランカップリング剤やジイソシアネート基含有シランカップリング剤は、鎖伸長剤として使用することも可能であるため、それらを使用する場合には、前記鎖伸長剤(a5)は必ずしも使用する必要はない。
【0120】
しかし、前記カップリング剤(a4)として、例えば前記モノアミンシランカップリング剤やモノイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用する場合には、アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を高分子量化し、極めて高硬度で特に優れた耐擦傷性を備えた硬化物を得るうえで、前記鎖伸長剤(a5)を使用することが好ましい。
【0121】
前記鎖伸長剤(a5)としては、従来知られるアミン化合物やアルカノールアミン等を使用することができる。なかでもジアミンを使用することが好ましい。
【0122】
前記ジアミンとしては、例えばジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、ジアミノエタン、1,2−又は1,3−ジアミノプロパン、1,2−又は1,3−又は1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン等を単独または2種以上併用して使用できる。なかでも、前記アルコール(C)への溶解性に優れたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)を製造する観点から、脂肪族環式構造含有ジアミンや脂肪族ジアミンを使用することが好ましく、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミンを使用することがより好ましい。
【0123】
また、本発明では、前記ジアミンの他に、必要に応じてその他の鎖伸長剤を併用してもよく、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ハイドロキノンジエチロールエーテル等を使用することもできる。
【0124】
前記ジアミンは、ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基の1.00当量に対して、アミノ基が0.50〜1.00(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.60〜0.90の割合で使用することが、得られる硬化物に優れた耐熱性を付与するうえでより好ましい。
【0125】
また、前記カップリング剤(a4)としてモノアミンシランカップリング剤やジアミンシランカップリング剤を使用し、かつ、前記鎖伸長剤(a5)としてのジアミンを組み合わせ使用する場合には、ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基の1.00当量に対して、前記カップリング剤(a4)及び鎖伸長剤(a5)が有するアミノ基が0.50〜1.00(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.60〜0.90の割合で使用することが、得られる硬化物に優れた耐熱性を付与するうえでより好ましい。
【0126】
前記方法で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記加水分解性基含有化合物(B)と前記アルコール(C)との合計質量に対して、3質量%〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、3質量%〜10質量%の範囲で使用することが、極めて高硬度で耐擦傷性等に優れた硬化物を形成するうえで好ましい。
【0127】
次に、本発明で使用する金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)について説明する。
【0128】
前記金属アルコキシド(B−1)は、金属原子にアルコキシ基が結合した化合物である。具体的には、前記金属アルコキシド(B−1)としては、下記一般式(3)で示される構造を有するものを使用することができる。
【0129】
M(OR)n (3)
(上記一般式(3)中のMは金属原子を表し、Rはアルキル基を表し、nは1〜金属原子Mの価数の範囲の整数を表す。)
前記Mは、例えばケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子をはじめ、マグネシウム原子、ゲルマニウム原子、リチウム原子、ナトリウム原子等が挙げられる。また、前記Rとしては、炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0130】
また、前記金属アルコキシドの縮合物(B−2)は、前記金属アルコキシドが有するアルコキシ基の一部が加水分解することで水酸基を形成し、他のアルコキシ基や水酸基と縮合反応したものを指す。
【0131】
前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)を構成する金属(前記一般式(I)中のM)としては、例えばケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子等が挙げられる。なかでも前記金属がケイ素原子からなる金属アルコキシドまたはその縮合物を使用することが、工業的に入手が容易で、かつ、前記ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基またはシラノール基と架橋反応し極めて高硬度で耐擦傷性に優れた皮膜等を形成するうえで好ましい。
【0132】
前記金属がケイ素原子からなる金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)としては、一般的にゾル−ゲル反応で用いられる加水分解性シリル基含有化合物を使用することができる。
【0133】
前記加水分解性シリル基含有化合物としては、アルコキシシリル基含有化合物が挙げられ、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン、またはこれらの部分縮合物等を使用することができる。
【0134】
なかでも、テトラメトキシシランや、その部分加水分解縮合物を使用することが、速やかに架橋反応を進行させ極めて高硬度で耐擦傷性に優れた硬化物を形成できるため好ましい。
【0135】
また、前記金属がチタン原子である金属アルコキシドまたはその縮合物としては、例えば、チタンイソプロポキシド、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等のチタンアルコキシドを使用することができる。
【0136】
また、前記金属がアルミニウム原子である金属アルコキシドまたはその縮合物としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドを使用することができる。
【0137】
次に、本発明で使用するアルコール(C)について説明する。
前記アルコール(C)は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)や前記加水分解性基含有化合物(B)の溶媒に使用する。
【0138】
前記アルコール(C)は、直鎖構造、分岐構造、環状構造などの何れの構造のものでもよいが、前記ウレタン樹脂(A)の溶解のしやすさを高める観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどの好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜4個の炭素原子数を有するアルコールを使用することが好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールを単独または2種以上併用して使用することがより好ましい。
【0139】
前記アルコール(C)は、DMFなどの強溶剤とは異なり、弱溶剤に分類されるものであるため、例えば、本発明のウレタン樹脂組成物を被着体の表面に塗布等した場合であっても、被着体表面の溶解や劣化を引き起こすことがない。とりわけ、被着体が多孔体である場合には、多孔体を構成する孔を壊すことがないから、多孔体由来の柔軟性を損なうことがない。
【0140】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)を構成する金属原子に結合したアルコキシ基とは、過剰量のアルコール(C)存在下で実質的に加水分解縮合反応を進行しない。したがって、本発明のウレタン樹脂組成物では、優れた保存安定性を維持するうえで溶媒として前記アルコール(C)を使用することが重要である。
【0141】
前記アルコール(C)は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記加水分解性基含有化合物(B)と前記アルコール(C)との合計質量に対して20〜70質量%の範囲で使用することが、より一層優れた保存安定性を維持するうえでより好ましい。
【0142】
なお、本発明のウレタン樹脂組成物は、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)等の溶媒として、前記アルコール(C)以外のその他の溶媒を含むものであってもよい。例えば、前記ジメチルホルムアミドやトルエン等の強溶媒を含むことを排除しないが、環境負荷低減等の観点からその使用量はできるだけ少ないことが好ましい。具体的には、本発明のウレタン樹脂組成物は、該組成物中に含まれる溶媒の合計質量に対する前記アルコール(C)の質量割合が、95〜100質量%であることが好ましく、98〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0143】
本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば前記方法で得たアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と、アルコール(C)とを混合することによって製造することができる。
【0144】
具体的には、前記方法によって予め製造したアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)とを一括供給、または一方を他方へ逐次供給し混合、攪拌することで製造することができる。前記加水分解性基含有化合物(B)は、アルコール(C)等と予め混合されていてもよく、また、前記加水分解性基含有化合物(B)の一部が加水分解することによって生成されたアルコールを含むものであってもよい。前記加水分解によって生成されたアルコールは、必要に応じて減圧下で放置又は加温等の方法によって、除去されていても良い。
【0145】
前記ウレタン樹脂(A)のアルコール(C)溶液と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)との混合は、例えば、10〜50℃程度の温度条件下、攪拌棒等を用いて行うこともできるし、ホモミキサー等の攪拌装置を用いて行うこともできる。前記混合方法としては、前記無機粒子(B)を均一に分散させる観点から、ホモミキサー等の攪拌装置を使用することが好ましい。
【0146】
本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、例えば酸触媒、架橋剤、成膜助剤、充填材、チキソトロピー付与剤、粘着性付与剤、界面活性剤、顔料、ブレンド用の樹脂、その他の添加剤等を本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0147】
前記酸触媒は、本発明のウレタン樹脂組成物の硬化を速やかに進行させることを目的として使用することが好ましい。具体的には、本発明のウレタン樹脂組成物を基材等の表面に塗布等する前に、前記ウレタン樹脂組成物と前記酸触媒と水とを混合して得た、前記ウレタン樹脂組成物と前記酸触媒と前記水とを含む組成物を基材等の表面に塗布等する。これにより、該塗布層中における前記ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基は速やかにシラノール基を形成し、また、前記加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基も速やかに水酸基を形成し、前記シラノール基や前記水酸基の間の架橋反応を速やかに進行させることができる。
【0148】
前記酸触媒としては、例えば、塩酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸を、単独または2種以上併用することができる。なかでも、極めて高硬度で優れた耐擦傷性を備えた被膜等の硬化物を速やかに形成できることから、マレイン酸やリン酸を用いることが好ましい。
【0149】
前記酸触媒は、前記加水分解性基含有化合物(B)の100質量部に対して1〜50質量部の範囲で使用することが好ましく、2〜40質量部の範囲で使用することが、前記架橋反応を速やかに進行させるうえで好ましい。
【0150】
前記架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤を使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等を使用することができる。
【0151】
前記成膜助剤としては、特に限定しないが、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0152】
前記充填材としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ等の金属の酸化物やそれらの加水分解縮合物をはじめ、炭酸塩(例えばカルシウム塩、カルシウム・マグネシウム塩、マグネシウム塩等)、珪酸、珪酸塩(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、水酸化物(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、硫酸塩(例えばバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、硼酸塩(例えばアルミニウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、チタン酸塩(例えばカリウム塩等)等が挙げられる。
【0153】
前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィン、樹脂酸、界面活性剤、ポリアクリル酸等で表面処理された前記充填材、ポリ塩化ビニルパウダー、水添ヒマシ油、微粉末シリカ、有機ベントナイト、セピオライト等が挙げられる。
【0154】
前記粘着性付与剤としては、特に限定しないが、例えば、ロジン樹脂系、テルペン樹脂系、フェノール樹脂系等の粘着性付与剤が挙げられる。
【0155】
更に、その他の添加剤としては、例えば、反応促進剤(金属系、金属塩系、アミン系等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤等)、水分除去剤(4−パラトルエンスルフォニルイソシアネート等)、吸着剤(生石灰、消石灰、ゼオライト、モレキュラーシーブ等)、接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤等の種々の添加剤が挙げられる。
【0156】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ゲル化などを引き起こしにくく分散安定性、保存安定性に優れ、かつ、硬化した際には極めて高硬度で耐擦傷性にも優れた硬化物を形成することができる。また、溶媒としてアルコールを使用したものであるから、基材表面の溶解や劣化等を引き起こさない。
【0157】
したがって、本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば、極めた高硬度で耐擦傷性の求められる部材の表面被覆に使用するコーティング剤、好ましくはハードコート剤に使用することができる。
【0158】
前記コーティング剤等を塗布し皮膜を形成したり、貼り合わせが可能な基材としては、例えばガラス基材、金属基材、プラスチック基材、紙や木材基材、繊維質基材等が挙げられる。また、ウレタンフォーム等の多孔体構造の基材に使用することもできる。
【0159】
前記金属基材としては、例えば亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、鉄板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
【0160】
また、プラスチック基材としては、例えばポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル系基材及びポリアミド系基材等を使用することができる。
【0161】
前記基材は前記材質からなる平面状のものであっても曲部を有するものであってもよく、また、不織布のような繊維からなる基材であってもよい。
【0162】
前記コーティング剤等を前記基材上に塗布する方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0163】
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば自動車部材や家電部品、電子材料等の極めて高硬度で耐擦傷性に優れた硬化物の製造に使用することができる。
【0164】
本発明のウレタン樹脂組成物を硬化させ、皮膜や成形物等の硬化物を形成する方法としては、例えば前記ウレタン樹脂組成物と、必要に応じて前記酸触媒と水とを混合することによって、前記ウレタン樹脂組成物と酸触媒と水とを含む組成物を得、該組成物を、基材表面に塗布し、前記塗布層中に含まれる前記アルコール(C)を除去することによって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して生成される水酸基とを、反応させ結合を形成することを特徴とする硬化物の製造方法が挙げられる。
【0165】
前記アルコール(C)を除去する工程は、例えば常温下に放置または30〜80℃程度の条件下に放置することによって行うことが好ましい。
【0166】
また、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して生成される水酸基とを反応させ結合を形成する工程は、例えば、概ね80〜150℃に加熱することで、速やかに進行させることができる。
【0167】
また、加熱のみでは前記加水分解縮合反応がしにくい場合や、前記基材が熱に弱い材質からなるものである場合には、本発明のウレタン樹脂組成物に、予め前記酸触媒や水を混合して得た組成物を使用することによって、前記反応を速やかに進行させることが可能となる。
【0168】
前記水は、本発明のウレタン樹脂組成物の溶媒として使用するものではなく、その架橋反応を進行させる際に使用することが好ましい。前記水は、前記加水分解性基含有化合物(B)の100質量部に対して1〜100質量部の範囲で使用することが好ましく、5〜50質量部の範囲で使用することが、前記架橋反応を速やかに進行させるうえで好ましい。
【0169】
かかる方法によって得られた皮膜や成形物等の硬化物は、極めて高硬度で、かつ、金属等で擦過しても傷の発生を防止可能なものである。
【0170】
以上のように、本発明のウレタン樹脂組成物を含むコーティング剤や成形材料は、例えば例えば携帯電話、家電製品、OA機器をはじめ、自動車内外装材等の自動車部品や各種家電製品の部品、電子材料、建材製品、人工骨や人工歯等の医療材料等の製造や、それらの表面被覆及び接着をはじめとする様々な用途に使用することが可能である。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例により一層具体的に説明する。
【0172】
[合成例1]アルコール可溶型ウレタン樹脂(A−1)のアルコール溶液の調製
攪拌装置を備えた窒素置換された反応容器中に、無溶媒下、イソホロンジイソシアネート47質量部と、ポリエチレンオキサイドとポリテトラメチレンオキサイド構造とのブロック共重合体からなるポリエーテルポリオール(数平均分子量1800、[ポリオキシエチレン構造/ポリテトラメチレンオキサイド構造]=45/55)153質量部とを混合し、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(x−1)を製造した。
【0173】
次いで、前記ウレタンプレポリマー(x−1)の温度が40℃となるまで反応容器を冷却した後、前記ウレタンプレポリマー(x−1)とイソプロピルアルコール527質量部とを混合し、直ちに、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン4.25質量部を混合し、15分間攪拌した。
【0174】
次いで、ジシクロヘキシルメタンジアミン21.8質量部を混合した後、前記混合物の粘度が150dPa・s〜450dPa・sの範囲となるまで、更にジシクロヘキシルメタンジアミンを加え40℃で3時間反応させることによって、オキシエチレン構造と分子側鎖に加水分解性シリル基とを有する数平均分子量180000のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−1)のイソプロピルアルコール溶液(不揮発分30質量%)を得た。なお、前記数平均分子量は、前記ウレタン樹脂(A−1)のジメチルホルムアミド溶液(不揮発分0.4質量%)を作成し、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC、条件;カラム(KD−806M;昭和電工株式会社製)、溶離液(DMF))を用いて測定した。以下の合成例2及び3ならびに比較合成例4及び5も同様の方法で測定した。
【0175】
[合成例2]アルコール可溶型ウレタン樹脂(A−2)のアルコール溶液の調製
攪拌装置を備えた窒素置換された反応容器中に、無溶媒下、イソホロンジイソシアネート47質量部と、ポリエチレンオキサイドとポリテトラメチレンオキサイド構造とのブロック共重合体からなるポリエーテルポリオール(数平均分子量1800、[ポリオキシエチレン構造/ポリテトラメチレンオキサイド構造]=45/55)153質量部とを混合し、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(x−1)を製造した。
【0176】
次いで、前記ウレタンプレポリマー(x−1)の温度が40℃となるまで反応容器を冷却した後、前記ウレタンプレポリマー(x−1)とイソプロピルアルコール527質量部とを混合し、直ちに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.7質量部を混合し、15分間攪拌した。
【0177】
次いで、ジシクロヘキシルメタンジアミン21.8質量部を混合した後、前記混合物の粘度が150dPa・s〜450dPa・sの範囲となるまで、更にジシクロヘキシルメタンジアミンを加え40℃で3時間反応させることによって、オキシエチレン構造と分子側鎖に加水分解性シリル基とを有する数平均分子量180000のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−2)のイソプロピルアルコール溶液(不揮発分30質量%)を得た。
【0178】
[合成例3]アルコール可溶型ウレタン樹脂(A−3)のアルコール溶液の調製
攪拌装置を備えた窒素置換された反応容器中に、無溶媒下、イソホロンジイソシアネート47質量部と、ポリエチレンオキサイドとポリテトラメチレンオキサイド構造とのブロック共重合体からなるポリエーテルポリオール(数平均分子量1800、[ポリオキシエチレン構造/ポリテトラメチレンオキサイド構造]=45/55)153質量部とを混合し、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(x−1)を製造した。
【0179】
次いで、前記ウレタンプレポリマー(x−1)の温度が40℃となるまで反応容器を冷却し、前記ウレタンプレポリマー(x−1)とイソプロピルアルコール527質量部とを混合した後、直ちに、ジシクロヘキシルメタンジアミン24質量部を混合し、得られた混合物の粘度が150dPa・s〜450dPa・sの範囲となるまで、更にジシクロヘキシルメタンジアミンを加え反応させることで、それらの反応混合物を得た。
【0180】
次いで、前記反応混合物とγ−アミノプロピルトリエトキシシラン1.7質量部とを混合し、40℃で3時間反応させることによって、オキシエチレン構造と分子末端に加水分解性シリル基とを有する数平均分子量180000のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−3)のイソプロピルアルコール溶液(不揮発分30質量%)を得た。
【0181】
[比較合成例4]アルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−4)のアルコール溶液の調製
攪拌装置を備えた窒素置換された反応容器中に、無溶媒下、イソホロンジイソシアネート47質量部と、ポリエチレンオキサイドとポリテトラメチレンオキサイド構造とのブロック共重合体からなるポリエーテルポリオール(数平均分子量1800、[ポリオキシエチレン構造/ポリテトラメチレンオキサイド構造]=45/55)153質量部とを混合し、80℃で攪拌下3時間反応させることによって、ウレタンプレポリマー(x−1)を製造した。
【0182】
次いで、前記ウレタンプレポリマー(x−1)の温度が40℃となるまで反応容器を冷却し、前記ウレタンプレポリマー(x−1)とイソプロピルアルコール527質量部とを混合した後、直ちに、ジシクロヘキシルメタンジアミン24質量部を混合し、得られた混合物の粘度が150dPa・s〜450dPa・sの範囲となるまで、更にジシクロヘキシルメタンジアミンを加え反応させることによって、オキシエチレン構造を有する数平均分子量180000のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−4)のイソプロピルアルコール溶液(不揮発分30質量%)を得た。
【0183】
[比較合成例5]アルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−5)のアルコール溶液の調製
攪拌装置を備えた窒素置換された反応容器中に、無溶媒下、イソホロンジイソシアネート47質量部と、2−エチル−2−ブチルプロパンアジペート(数平均分子量1800)153質量部とを混合し、80℃で攪拌下3時間反応させることによって、ウレタンプレポリマー(x−2)を製造した。
【0184】
次いで、前記ウレタンプレポリマー(x−2)の温度が40℃となるまで反応容器を冷却し、前記ウレタンプレポリマー(x−2)とイソプロピルアルコール527質量部とを混合した後、直ちに、ジシクロヘキシルメタンジアミン24質量部を混合し、得られた混合物の粘度が150dPa・s〜450dPa・sの範囲となるまで、更にジシクロヘキシルメタンジアミンを加え反応させることで、それらの反応混合物を得た。
【0185】
次いで、前記反応混合物とγ−アミノプロピルトリエトキシシラン1.7質量部とを混合し、40℃で3時間反応させることによって、オキシエチレン構造と分子末端に加水分解性シリル基とを有する数平均分子量180000のアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−5)のイソプロピルアルコール溶液(不揮発分30質量%)を得た。
【0186】
[実施例1] <ウレタン樹脂組成物>
合成例1で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−1)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)35.0質量部及びイソプロピルアルコール 35.0質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)30.0質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(1)を得た。
【0187】
<硬化物(皮膜)>
前記で得たウレタン樹脂組成物(1)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)21.0質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(1)を得た。前記コーティング剤(1)を、ガラス板(株式会社 エンジニアリングテストサービス社製、JIS3202ガラス、サイズ2.0×70×150mm)上に塗布した後、110℃で5分乾燥することによって、膜厚約10μmの皮膜(1)を作製した。
【0188】
[実施例2] <ウレタン樹脂組成物>
合成例2で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−2)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)34.8質量部及びイソプロピルアルコール 34.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)30.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(2)を得た。
【0189】
前記で得たウレタン樹脂組成物(2)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)21.3質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(2)を得た。
【0190】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(2)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(2)を作製した。
【0191】
[実施例3] <ウレタン樹脂組成物>
合成例3で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−3)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)34.8質量部及びイソプロピルアルコール 34.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)30.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(3)を得た。
【0192】
前記で得たウレタン樹脂組成物(3)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)21.3質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(3)を得た。
【0193】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(3)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(3)を作製した。
【0194】
[比較例1] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例4で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−4)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)34.7質量部及びイソプロピルアルコール 34.7質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)30.6質量部を徐々に混合することによってウレタン樹脂組成物(1’)を得た。
【0195】
前記で得たウレタン樹脂組成物(1’)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)21.4質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(1’)を得た。
【0196】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(1’)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(1’)を作製した。
【0197】
[実施例4] <ウレタン樹脂組成物>
合成例1で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−1)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)30.0質量部及びイソプロピルアルコール 30.0質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)40.0質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(4)を得た。
【0198】
前記で得たウレタン樹脂組成物(4)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)28.0質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(4)を得た。
【0199】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(4)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(4)を作製した。
【0200】
[実施例5] <ウレタン樹脂組成物>
合成例2で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−2)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)29.8質量部及びイソプロピルアルコール 29.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)40.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(5)を得た。
【0201】
前記で得たウレタン樹脂組成物(5)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)28.3質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(5)を得た。
【0202】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(5)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(5)を作製した。
【0203】
[実施例6] <ウレタン樹脂組成物>
合成例3で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−3)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)29.8質量部及びイソプロピルアルコール 29.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)40.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(6)を得た。
【0204】
前記で得たウレタン樹脂組成物(6)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)28.3質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(6)を得た。
【0205】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(6)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(6)を作製した。
【0206】
[比較例2] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例4で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−4)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)29.7質量部及びイソプロピルアルコール 29.7質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)40.6質量部を徐々に混合することによって、ウレタン樹脂組成物(2’)を得た。
【0207】
前記で得たウレタン樹脂組成物(2’)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)28.4質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(2’)を得た。
【0208】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(2’)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(2’)を作製した。
【0209】
[実施例7] <ウレタン樹脂組成物>
合成例1で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−1)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)13.9質量部及びイソプロピルアルコール 13.9質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)72.2質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(7)を得た。
【0210】
前記で得たウレタン樹脂組成物(7)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)50.5質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(7)を得た。
【0211】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(7)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(7)を作製した。
【0212】
[実施例8] <ウレタン樹脂組成物>
合成例2で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−2)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)13.8質量部及びイソプロピルアルコール 13.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)72.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(8)を得た。
【0213】
前記で得たウレタン樹脂組成物(8)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)50.7質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(8)を得た。
【0214】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(8)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(8)を作製した。
【0215】
[実施例9] <ウレタン樹脂組成物>
合成例3で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A−3)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)13.8質量部及びイソプロピルアルコール 13.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)72.4質量部を徐々に混合することによって、本発明のウレタン樹脂組成物(9)を得た。
【0216】
前記で得たウレタン樹脂組成物(9)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)50.7質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(9)を得た。
【0217】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(9)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(9)を作製した。
【0218】
[比較例3] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例4で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−4)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)13.7質量部及びイソプロピルアルコール 13.7質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)72.6質量部を徐々に混合することによってウレタン樹脂組成物(3’)を得た。
【0219】
前記で得たウレタン樹脂組成物(3’)に、攪拌下、マレイン酸水溶液(不揮発分28.6質量%)50.8質量部を徐々に添加し、前記添加後、更に30分間攪拌を継続した後、得られた混合物を200メッシュナイロンシャーを用い濾過することによってコーティング剤(3’)を得た。
【0220】
前記コーティング剤(1)の代わりにコーティング剤(3’)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、膜厚約10μmの皮膜(3’)を作製した。
【0221】
[比較例4] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例5で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−5)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)38.0質量部及びイソプロピルアルコール 38.0質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)24.0質量部を徐々に混合することによってウレタン樹脂組成物(4’)を得た。
【0222】
しかし、得られたウレタン樹脂組成物(4’)は保存安定性に乏しく、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の凝集が生じたため、皮膜を作成することはできなかった。
【0223】
[比較例5] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例5で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−5)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)29.8質量部及びイソプロピルアルコール 29.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)40.4質量部を徐々に混合することによってウレタン樹脂組成物(5’)を得た。
【0224】
しかし、得られたウレタン樹脂組成物(5’)は保存安定性に乏しく、ウレタン樹脂や、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の凝集が生じたため、皮膜を作成することはできなかった。
【0225】
[比較例6] <ウレタン樹脂組成物>
比較合成例5で得られたアルコール可溶型ウレタン樹脂(A’−5)のアルコール溶液(不揮発分30質量%)13.8質量部及びイソプロピルアルコール 13.8質量部を撹拌混合した後、該混合物中に、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の99質量%とメタノール1質量%の混合物(SiO構造の占める割合51質量%)72.4質量部を徐々に混合することによってウレタン樹脂組成物(6’)を得た。
【0226】
しかし、得られたウレタン樹脂組成物(6’)は保存安定性に乏しく、ウレタン樹脂や、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物の凝集が生じたため、皮膜を作成することはできなかった。
【0227】
(皮膜の硬度の評価方法)
前記実施例及び比較例で得た皮膜の硬度は、JIS K5600のひっかき硬度(鉛筆法)に基づいて測定した。7Hを超える硬度を有するものを高硬度な皮膜と評価した。
【0228】
(皮膜の基材に対する密着性の評価方法)
前記実施例及び比較例で得た皮膜の、基材に対する密着性は、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0229】
◎:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
○:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の30%未満であった。
△:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の30〜95%未満であった。
×:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の95%以上であった。
【0230】
(皮膜の耐溶剤性の評価方法)
前記実施例及び比較例で得た皮膜の表面の同一箇所を、メチルエチルケトン(MEK)またはエタノール(EtOH)を浸み込ませた綿棒を用いて往復50回ラビングした。ラビング前とラビング後の皮膜の状態を目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0231】
◎ :ラビング前後で、皮膜表面の状態に全く変化が認められなかった。
○ :ラビング前後で、皮膜表面に、ごく僅かな白濁が認められた。
△ :ラビング前後で、皮膜表面の約半分の面積において皮膜の白濁が認められた。 × :ラビング前後で、皮膜のほぼ全体が白濁した。
××:ラビングを50回終了するまでに、皮膜の溶解を引き起こした。
【0232】
(皮膜の耐擦傷性の評価方法)
RUBBING TESTER(太平理化工業株式会社製)を用いて評価を行った。具体的には、磨耗体としてスチールウール(日本スチールウール株式会社製、商品名BONSTAR、品番No.0000)を用い、該磨耗体を荷重500gの条件で、前記皮膜表面を往復20回ラビングした。ラビング後の皮膜表面の状態を目視により下記評価基準にしたがって評価した。
【0233】
◎ :往復20回のラビング前後で、皮膜に全く傷が発生していなかった。
○ :往復20回のラビング前後で、皮膜表面に1〜4本程度の微かなスジ傷が認められた。
△ :往復20回のラビング前後で、皮膜表面に5本以上の微かなスジ傷が認められた。
× :往復20回のラビング前後で、皮膜表面に明確な傷が認められ、かつ、前記傷により皮膜の透明性の低下を引き起こした。
××:往復20回のラビング後に、皮膜の破れや基材からの剥離を引き起こした。
【0234】
また、実施例7〜9及び比較例3で得た皮膜に対しては、前記20回のラビング後、更に往復40回のラビングを行うことで、合計、往復60回のラビングを行った。
【0235】
前記60回のラビング後の皮膜表面の状態を目視により下記評価基準にしたがって評価した。
【0236】
◎ :往復60回のラビング前後で、皮膜に全く傷が発生していなかった。
○ :往復60回のラビング前後で、皮膜表面に1〜4本程度の微かなスジ傷が認められた。
△ :往復60回のラビング前後で、皮膜表面に5本以上の微かなスジ傷が認められた。
× :往復60回のラビング前後で、皮膜表面に明確な傷が認められ、かつ、前記傷により皮膜の透明性の低下を引き起こした。
××:往復60回のラビング後に、皮膜の破れや基材からの剥離を引き起こした。
【0237】
【表1】

【0238】
【表2】

【0239】
【表3】

【0240】
表1〜3の脚注
[有機成分量/無機成分量]の[無機成分量]は、テトラメトキシシラン及びその部分加水分解縮合物中に含まれるケイ素原子の質量と酸素原子の質量と、アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子の質量との合計質量である。また、前記[有機成分量]は、アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の質量から、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子の合計質量を差し引いた値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシエチレン構造及び加水分解性シリル基を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と、金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)と、アルコール(C)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基を構成するケイ素原子及び酸素原子と、前記加水分解性基含有化合物(B)が有する金属原子及び酸素原子との合計質量が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)及び前記加水分解性基含有化合物(B)の合計質量に対して50質量%以上95質量%以下であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の全質量に対して0.5〜20質量%の加水分解性シリル基を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が、前記加水分解性シリル基を、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の側鎖に有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)を含むポリオール(a2)とを反応させることによって分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を製造し、次いで、前記ウレタンプレポリマー(a3)と、アミノ基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上と、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって得られるものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)が、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体からなるポリエーテルポリオール、及び、ポリオキシエチレンポリオールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(a2)の全質量に対する、前記オキシエチレン構造含有ポリオール(a2−1)の質量割合が20〜70質量%である、請求項4に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)が5000〜300000の範囲の数平均分子量を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記金属アルコキシド(B−1)が、下記一般式(3)で示される構造を有する金属アルコキシド、またはその縮合物である、請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
M(OR)n (3)
(上記一般式(3)中のMは金属原子を表し、Rはアルキル基を表し、nは1〜金属原子Mの価数の範囲の整数を表す。)
【請求項9】
前記金属アルコキシド(B−1)及び/またはその縮合物(B−2)が、アルコキシシリル基含有化合物及び/またはその縮合物である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)と前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)との合計質量に対する、前記加水分解性基含有化合物(B)の質量割合が、50〜95質量%である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
前記アルコール(C)が、炭素原子数1〜7個のアルキル基を有するアルコールである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物からなるコーティング剤。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物からなるハードコート剤。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項15】
前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が加水分解して生成されるシラノール基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して生成される水酸基とが、反応し結合を形成したものである、請求項14に記載の硬化物。
【請求項16】
前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の有する金属原子に結合したアルコキシ基がアルコキシシリル基であり、かつ、前記アルコキシ基が加水分解して生成される金属原子に結合した水酸基がシラノール基である、請求項14に記載の硬化物。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物と、必要に応じて水と酸触媒とを混合して得られた組成物を、基材表面に塗布し、前記塗布層中に含まれる前記アルコール(C)を除去することによって、前記アルコール可溶型ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基と、前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の金属原子に結合したアルコキシ基が加水分解して生成される水酸基とを、反応させ結合を形成することを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項18】
前記金属アルコキシド(B−1)及びその縮合物(B−2)からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性基含有化合物(B)の有する金属原子に結合したアルコキシ基がアルコキシシリル基であり、かつ、前記アルコキシ基が加水分解して生成される金属原子に結合した水酸基が、シラノール基である、請求項17に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2012−17433(P2012−17433A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156690(P2010−156690)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】