説明

ウレタン樹脂組成物、コーティング剤、プラスチック基材用コーティング剤及びそれらを用いて得られる硬化物ならびに硬化物の製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、高硬度で耐溶剤性等の耐久性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れた皮膜等の硬化物を形成でき、かつ、作業性や保存安定性にも優れたウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、エポキシ基に対して反応性を有する官能基[X]と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有するウレタン樹脂(A)、エポキシ基と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有する化合物(B)、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)、ならびに、溶剤(D)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られる硬化物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコーティング剤や成形材料等をはじめとする様々な用途に使用可能なウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物としては、従来から溶剤系、水系、無溶剤系のものが知られており、フィルムやシート等の成形材料や接着剤、コーティング剤等をはじめとする様々な用途で使用されている。とりわけ、近年は、ウレタン樹脂等の有機成分と無機成分とを複合化した、いわゆる有機−無機ハイブリッド樹脂組成物が注目され、従来にない機能を付与すべく、様々な有機成分と無機成分との組み合わせ等が検討されている。
【0003】
前記有機−無機ハイブリッド樹脂組成物としては、例えば、両末端にアルコキシシリル基を有するポリウレタン、及び、加水分解性アルコキシシランを含有する有機無機ハイブリッドポリウレタン用組成物が知られており、かかる組成物であれば、殊に無機系基材の接着やコーティングに好適に使用できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、前記ウレタン樹脂組成物のなかでも、溶剤系のウレタン樹脂組成物は、水系ウレタン樹脂組成物と比較して、一般に耐久性や耐水性に優れた皮膜等を形成できることから、従来の技術分野にとどまらず、より一層幅広い分野への適用が検討されている。
【0005】
例えば、近年の二酸化炭素排出量の削減の観点から、産業界では自動車をはじめとする各種製品の軽量化の検討を進めており、前記自動車でいえば、フロントガラス等の軽量化が検討されている。
【0006】
前記自動車のフロントガラス等としては、従来から無機ガラスが使用されており、かかる無機ガラスの使用は、自動車の重量増加の一因となっていた。
【0007】
そこで、近年、前記無機ガラスの代替として、プラスチックからなるいわゆる有機ガラスを使用することが検討されており、安全性等を含め盛んに検討されている。
【0008】
一方、電子機器分野においても、各種部品及び製品の薄型化、軽量化が検討されており、従来の金属や無機ガラス材のプラスチック基材への代替が検討されている。
【0009】
しかし、前記プラスチック基材は、一般に表面硬度が低く、耐溶剤性や耐候性等の点で十分でないため、とりわけ前記フロントガラス等の用途で使用した場合に、耐久性や安全性の点で大きな問題となる場合があった。
【0010】
そこで、プラスチック基材の表面に皮膜を設けることで、該プラスチック基材に高硬度で優れた耐溶剤性等を付与する方法が検討されている。
【0011】
しかし、従来のコーティング剤は一般に、比較的表面極性の低いプラスチック基材の表面に密着しにくいため、経時的に皮膜の剥がれを引き起こし、その結果、プラスチック基材の劣化や変色等を引き起こす場合があった。
【0012】
また、前記コーティング剤として、特許文献1記載の有機無機ハイブリッドポリウレタン用組成物を使用した場合も、やはり、プラスチック等の有機材料に対する密着性の点で十分でなく、形成される皮膜の耐溶剤性等の耐久性の点においても、前記分野で使用可能なレベルにあと一歩及ぶものではなかった。また、前記皮膜は、比較的良好な硬度を有するものの、プラスチック基材のように、外力や温度変化等の影響によって変形や伸縮を引き起こしやすい基材の表面被覆へ使用した場合に、前記塗膜が基材の変形等に追従できず、その結果、塗膜の剥離やクラックの発生等を引き起こす場合があった。また、前記有機無機ハイブリッドポリウレタン用組成物は、大気中の水や、硬化を進行させるべく意図的に水及び触媒等が添加された場合に、比較的短時間で著しい増粘を引き起こしやすく、いわゆるポットライフが極めて短いため、作業性や保存安定性の点でも十分でない場合があった。
【0013】
このように、プラスチック基材等に対する密着性や基材追従性(皮膜の強靭性)の向上と、形成する皮膜の耐溶剤性等の耐久性や硬度の向上と、ウレタン樹脂組成物の作業性や保存安定性とを両立することは非常に困難で、それらをいずれも満足するウレタン樹脂組成物は未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−63661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、高硬度で耐溶剤性等の耐久性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れた皮膜等の硬化物を形成でき、かつ、作業性や保存安定性にも優れたウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、得られる皮膜等の硬化物の硬度や耐久性を向上するためには、皮膜の架橋密度を高めることによって実現できるのではないかと考え検討した。
【0017】
具体的には、加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂と、硬化剤として、そのウレタン樹脂固形分と同等量以上のポリシロキサンとを組み合わせ使用することを検討した。
【0018】
しかし、前記ウレタン樹脂組成物を用いて形成された皮膜は、プラスチック基材をはじめとする各種基材に対する密着性や基材追従性の点で十分でない場合があった。また、前記皮膜は、耐溶剤性等の耐久性の点で十分でなく、また、ポットライフが極めて短いため、作業性や保存安定性の点で実用上十分でない場合があった。
【0019】
そこで、本発明者等は、前記架橋密度の向上を、従来の加水分解性シリル基間の結合だけによって実現しようとするのではなく、前記加水分解性シリル基間の結合と、エポキシ基の関与した結合とを組み合わせることを検討した。
【0020】
その結果、エポキシ基に対して反応性を有する官能基[X]と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有するウレタン樹脂(A)、エポキシ基と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有する化合物(B)、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)、ならびに、溶剤(D)を組み合わせ含有するウレタン樹脂組成物であれば、溶剤(D)中における保存安定性や、皮膜を形成する際のポットライフを十分に確保できる点で作業性にも優れ、かつ、皮膜等の硬化物を形成する際には、前記(A)と(B)と(C)との間で相互に架橋構造を形成し、その結果、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や、各種基材に対する密着性や基材追従性に優れた皮膜を形成できることを見出した。
【0021】
また、本発明者等は、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)として、比較的高反応性であるテトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)と、比較的低反応性であるモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシシラン(c1−2)及び/またはその加水分解縮合物(c2−2)とを組み合わせ使用することによって、得られるウレタン樹脂組成物の保存安定性や作業性を飛躍的に向上できることを見出した。
【0022】
即ち、本発明は、エポキシ基に対して反応性を有する官能基[X]と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有するウレタン樹脂(A)、エポキシ基と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有する化合物(B)、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)、ならびに、溶剤(D)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られる硬化物に関するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のウレタン樹脂組成物であれば、高硬度で耐溶剤性等の耐久性に優れた皮膜等を形成でき、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れ、かつ、保存安定性にも優れることから、例えばコーティング剤や接着剤に好適に使用することができる。なかでも前記ウレタン樹脂組成物は、一般に表面極性が低いプラスチック基材等の有機材料に対する優れた密着性と、形成する皮膜の優れた耐溶剤性と、高硬度等とを両立できることから、従来の無機ガラスの代替として注目される有機ガラスの表面被覆やプライマー、電子機器の各種プラスチック部材の表面被覆、例えば自動車や鉄道等を構成する部材の表面被覆、太陽光発電装置等の光発電装置等の受光表面の表面被覆、電子部品等の表面被覆、壁材や床材、窓ガラス等、眼鏡等の表面被覆に使用するコーティング剤やそれらの接着剤等に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、エポキシ基に対して反応性を有する官能基[X]と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有するウレタン樹脂(A)と、エポキシ基と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有する化合物(B)と、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)のいずれか一方を単独またはその両方と、溶剤(D)と、必要に応じてその他の添加剤とを含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物である。
【0025】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記溶剤(D)中に前記ウレタン樹脂(A)や化合物(B)や、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)等が溶解または分散したものである。
【0026】
ここで、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)とは、溶剤(D)の存在下で相互に反応しにくく、それらの多くは溶剤(D)中でそれぞれ独立して存在する場合が多い。
【0027】
具体的には、前記ウレタン樹脂(A)の有する加水分解性シリル基は溶剤(D)中で加水分解せずシラノール基を形成しにくい。また、前記化合物(B)やエポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)の有する加水分解性シリル基も同様に加水分解しにくく、シラノール基を形成しにくい。また、前記(A)や(B)や(C1)や(C2)としてシラノール基を有するものを使用した場合であっても、該シラノール基は溶剤(D)中において可逆的にアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基を形成しうる。その結果、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)とは、溶剤(D)中で前記シラノール基に起因した結合を形成しにくく、該溶剤(D)中において、それぞれ独立して存在している場合が多いといえる。
【0028】
また、前記化合物(B)の有するエポキシ基と、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]とは、前記溶剤(D)中においては反応を進行しにくく、前記化合物(B)と前記ウレタン樹脂(A)とがそれぞれ独立して存在する場合が多い。
【0029】
これにより、本発明のウレタン樹脂組成物は、経時的な高粘度化を引き起こさず、良好な保存安定性を長期間維持することが可能である。
【0030】
なお、本発明のウレタン樹脂組成物は、前記良好な保存安定性等を損なわない範囲であれば、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)との間で、部分的に、ケイ素原子と酸素原子とによって形成されるシロキサン結合(−Si−O−Si)を形成した樹脂が、溶剤(D)中に溶解または分散したものであってもよい。また、本発明のウレタン樹脂組成物は、良好な保存安定性等を損なわない範囲であれば、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と前記化合物(B)の有するエポキシ基との間で、部分的に結合を形成したものが、溶剤(D)中に溶解または分散したものであってもよい。
【0031】
一方、本発明のウレタン樹脂組成物を各種基材表面に塗布、乾燥し、該塗布層中に含まれる溶剤(D)を揮発、除去すると、前記ウレタン樹脂(A)の加水分解性シリル基が大気中の湿気(水)や、意図的に添加された水及び酸触媒等によって加水分解されシラノール基を形成する。また、前記化合物(B)及びエポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)の有するアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基もまた、加水分解してシラノール基を形成する。
【0032】
そして、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)とが形成したシラノール基間で縮合反応が進行し結合を形成することによって、皮膜等の硬化物を形成することができる。
【0033】
また、前記化合物(B)の有するエポキシ基も、ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と速やかに反応し結合を形成する。
【0034】
これにより、前記(A)と(B)と(C1)や(C2)との間においてシラノール基等の関与した結合が形成されるとともに、前記(A)と(B)との間においてはエポキシ基の関与した結合が形成されることによって、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や、各種基材に対する密着性や基材追従性に優れた皮膜を形成可能なウレタン樹脂組成物を得ることができる。とりわけ前記基材追従性は、前記エポキシ基の関与した結合を導入することによって、皮膜の強靭性が向上し、各段に向上する。
【0035】
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、前記大気中の湿気(水)や、意図的に添加された水や酸触媒等によって上記架橋反応が進行しても、塗工等するうえで十分なポットライフを維持できるため、作業性の点で優れる。
【0036】
前記ウレタン樹脂組成物としては、高硬度で優れた耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性と、各種基材に対する優れた密着性や基材追従性と、良好な保存安定性や作業性とを両立する観点から、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)とその加水分解縮合物(C2)との合計質量に対して、前記ウレタン樹脂(A)を好ましくは5質量%〜80質量%、より好ましくは15質量%〜70質量%含み、前記化合物(B)を好ましくは0.1質量%〜15質量%、より好ましくは0.1質量%〜10質量%含み、かつ、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及びその加水分解縮合物(C2)を好ましくは、合計15質量%〜90質量%、より好ましくは25質量%〜80質量%含むものを使用することができる。なお、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)とその加水分解縮合物(C2)のいずれか一方を含むウレタン樹脂組成物である場合には、他方の使用量を0として算出した際に、前記範囲内となるよう調製したウレタン樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0037】
また、前記ウレタン樹脂組成物としては、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と前記化合物(B)の有するエポキシ基との当量割合〔官能基[X]/エポキシ基〕が1/9〜9/1の範囲で使用することが好ましく、3/7〜9/1の範囲で使用することがより好ましく、3/7〜7/3の範囲で使用することが、皮膜等の硬化物の耐水性の低下や、副反応の進行を抑制するうえで特に好ましい。
【0038】
はじめに、本発明で使用するウレタン樹脂(A)について説明する。
前記ウレタン樹脂(A)は、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するとともに、後述する化合物(B)のエポキシ基と反応性を有する官能基[X]を有するものである。ここで、前記ウレタン樹脂(A)の代わりに、前記官能基[X]を有さないウレタン樹脂を使用して得られたウレタン樹脂組成物では、前記化合物(B)や前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)を使用した場合であっても、基材追従性や可撓性、強靭性に優れた皮膜を形成することができない場合がある。
【0039】
前記ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基は、前記したとおり、前記シロキサン化合物(B)や前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)と架橋反応し、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性に優れた皮膜等の硬化物を形成するうえで重要である。
【0040】
前記ウレタン樹脂(A)が有する加水分解性シリル基は、加水分解性基がケイ素原子に直接結合した官能基であり、例えば、下記の一般式(1)で表される官能基が挙げられる。
【0041】
【化1】

【0042】
(一般式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基である。またxは0〜2の整数である。)
【0043】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0045】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0046】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0047】
前記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられ、前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられ、前記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
前記Rは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
【0049】
また、前記ウレタン樹脂(A)は、通常、溶剤(D)の存在下では加水分解しにくいため、シラノール基を形成しにくく、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基を有するが、それらのごく一部がシラノール基の状態でウレタン樹脂(A)中に存在していても良い。
【0050】
前記加水分解性シリル基は、前記ウレタン樹脂(A)の分子末端または前記ウレタン樹脂(A)の側鎖のいずれに存在していてもよい。なかでも、前記加水分解性シリル基が前記ウレタン樹脂(A)からなる分子の末端に存在するものを使用することが、皮膜の基材追従性の向上に寄与する強靭性や可撓性を向上でき、また、ウレタン樹脂(A)を製造する際のゲル化等を抑制できるため好ましい。
【0051】
前記加水分解性シリル基及びシラノール基は、前記ウレタン樹脂(A)の全量に対して、0.5〜20質量%の範囲で存在することが、得られる硬化物の硬度を各段に向上させるとともに、優れた耐溶剤性等の耐久性を付与するうえで好ましく、0.5〜10質量%の範囲で存在することがより好ましい。
【0052】
一方、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]は、エポキシ基と反応性を有するものであって、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基等を使用することができる。
【0053】
なかでも、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを反応させる際の副反応を抑制する観点から、カルボキシル基等の酸性官能基を使用することが好ましく、カルボキシル基を使用することがより好ましい。
【0054】
前記ウレタン樹脂(A)中における官能基[X]の含有量は、前記化合物(B)中のエポキシ基の含有量によって異なるが、前記ウレタン樹脂(A)の全量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲で存在することがより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)は、前記官能基[X]と反応しうるエポキシ基を有していてもよいが、前記(A)〜(C)間の反応を進行させ高耐久性の皮膜等を形成する観点から、エポキシ基を有さないものを使用することが好ましい。
【0055】
前記ウレタン樹脂(A)としては、前記化合物(B)や前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)との相溶性を向上し、皮膜等の硬化物の透明性を向上する観点から、5000〜100000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5000〜50000の範囲がより好ましい。
【0056】
前記ウレタン樹脂(A)は、例えばポリイソシアネート(a1)と、官能基[X]含有ポリオール(a2−1)を含むポリオール(a2)とを反応させることによって分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を製造し、次いで、前記ウレタンプレポリマー(a3)と、アミノ基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上のシランカップリング剤(a4)と、必要に応じて鎖伸長剤(a5)とを反応させることによって製造することができる。
【0057】
前記ポリイソシアネート(a1)と、前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)を含むポリオール(a2)との反応は、溶剤の存在下または無溶媒下のいずれで行うこともできる。前記溶剤の存在下で反応を行う場合には、前記溶剤として後述する溶剤(D)と同様のものを使用することができる。
【0058】
前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)との反応は、前記ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基と前記ポリオール(a2)の有する水酸基との当量割合[ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基/ポリオール(a2)の有する水酸基]が0.8〜10.0の範囲で行うことが好ましい。
【0059】
ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)との無溶媒下における反応は、急激な発熱や発泡などに十分に注意し安全性を考慮し、好ましくは50℃〜120℃、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを、一括混合、または、何れか一方を他方へ滴下等の方法で逐次供給し、概ね1〜15時間程度反応させる方法により行うことができる。
【0060】
また、前記ポリオール(a2)として使用する官能基[X]含有ポリオール(a2−1)は、無溶剤下でポリイソシアネート(a1)と混合した場合に、前記官能基[X]とイソシアネート基とが反応しうる場合がある。かかる場合には、無溶剤下で前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)以外のポリオールとポリイソシアネート(a1)とを混合し、反応させ、次いで、溶剤とともに官能基[X]含有ポリオール(a2−1)等を供給し、反応させる方法を適用することが好ましい。また、当初から溶剤存在下で反応を行うことが好ましい。
【0061】
前記方法で得たウレタンプレポリマー(a3)は、引き続きアミノ基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上を含むシランカップリング剤(a4)や、必要に応じて鎖伸長剤(a5)と混合し、反応させる。これにより、分子末端に加水分解性シリル基やシラノール基の導入されたウレタン樹脂(A)を製造することができる。
【0062】
具体的には、前記方法で得たウレタンプレポリマー(a3)及び溶剤の混合物と、前記シランカップリング剤(a4)と、鎖伸長剤(a4)とを一括またはそれぞれ別々に混合し、10℃〜60℃の温度範囲で1時間〜10時間程攪拌しながら反応させることによって、ウレタン樹脂(A)を製造することができる。
【0063】
前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用可能な前記ポリイソシアネート(a1)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族環式構造含有ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート等を使用することができる。
【0064】
なかでも、得られる皮膜の耐候性や耐熱変色性を向上する観点から、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートや脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、イソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0065】
前記ポリイソシアネート(a1)と反応しうるポリオール(a2)としては、ウレタン樹脂(A)中に官能基[X]を導入する観点から、官能基[X]含有ポリオール(a2−1)を使用することが必須である。
【0066】
前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)としては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸、ジアルカノールアミンとしてジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールエタノールアミン、エタノールプロパノールアミン等を使用することができる。
【0067】
なかでも、前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)としては、イソシアネート基との反応性が小さいカルボキシル基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0068】
前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)の含有量は、前記化合物(B)のエポキシ基の含有量によっても異なるが、前記ポリオール(a2)全量に対して、概ね0.5質量%〜10質量%の範囲で使用することが、皮膜の耐溶剤性や耐水性等の耐久性を向上できるため好ましい。
【0069】
また、前記ポリオール(a2)としては、前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)以外の、その他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0070】
前記その他のポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。
【0071】
なかでも、ポリエステルポリオールを使用することが、プラスチック基材への密着性を向上できるため好ましく、脂肪族ポリエステルポリオールを使用することがより好ましい。また、前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、800〜5000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0072】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンやγ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0073】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を単独または2種以上併用して使用することができ、1,6−ヘキサンジオールやネオペンチルグリコールを使用することが好ましい。
【0074】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができ、脂肪族ポリカルボン酸を使用することが好ましい。
【0075】
また、前記その他のポリオールに使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0076】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0077】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0078】
また、前記その他のポリオールに使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0079】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0080】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物等を使用することができる。
【0081】
また、前記その他のポリオールとしては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の低分子量ポリオールを使用することもできる。
【0082】
前記その他のポリオール、好ましくは前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール(a1)の全量に対して、20質量%〜100質量%の範囲で使用することが、プラスチック基材への付着性を向上するうえで好ましい。
【0083】
また、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用可能なシランカップリング剤(a4)としては、例えばアミノ基含有シランカップリング剤やイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用することができる。
【0084】
前記アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えばモノアミンシランカップリング剤、ジアミンシランカップリング剤を使用することができる。前記モノアミンシランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端がイソシアネート基である場合に、かかるイソシアネート基と前記モノアミンシランカップリング剤のアミノ基とが反応する。これにより、分子末端に加水分解性シリル基等を有するウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0085】
一方、前記ジアミンシランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端がイソシアネート基である場合に、かかるイソシアネート基と前記ジアミンシランカップリング剤のアミノ基とが反応する。これにより、分子末端ではなく、分子側鎖に加水分解性シリル基等を有するウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0086】
前記モノアミンシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のモノアミンシランカップリング剤を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0087】
前記ジアミンシランカップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のジアミンシランカップリング剤を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0088】
また、前記前記イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えばモノイソシアネート基含有シランカップリング剤、ジイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用することができる。
【0089】
前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端が水酸基である場合に、かかる水酸基と前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤のイソシアネート基とが反応する。これにより、分子末端に加水分解性シリル基等を有するウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0090】
一方、前記ジイソシアネート基含有シランカップリング剤は、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端が水酸基である場合に、かかる水酸基と前記ジイソシアネート基含有シランカップリング剤のイソシアネート基とが反応する。これにより、分子末端ではなく、分子側鎖に加水分解性シリル基等を有するウレタン樹脂(A)を得ることができる。
【0091】
前記モノイソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0092】
前記シランカップリング剤(a4)としては、汎用性や価格等の点で有利であり、かつ、ウレタン樹脂(A)の製造効率を向上する観点から、アミノ基含有シランカップリング剤を使用することが好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、もしくは3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用することがより好ましい。
【0093】
前記シランカップリング剤(a4)は、前記ウレタンプレポリマー(a3)が有するイソシアネート基の1.00当量に対して、アミノ基が0.01〜1.0(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.01〜0.9(当量比)の割合で使用することがより好ましい。また、前記ウレタンプレポリマー(a3)の分子末端に官能基が水酸基である場合には、該水酸基1.00当量に対して、シランカップリング剤(a4)の有するイソシアネート基が0.01〜1.0(当量比)の割合となる範囲で使用することが好ましく、0.01〜0.9(当量比)の割合で使用することがより好ましい。
【0094】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、必要に応じて鎖伸長剤(a5)を使用することができる。
【0095】
前記シランカップリング剤(a4)としての前記ジアミンシランカップリング剤やジイソシアネート基含有シランカップリング剤は、鎖伸長剤として使用することも可能であるため、それらを使用する場合には、前記鎖伸長剤(a5)は必ずしも使用する必要はない。
【0096】
前記鎖伸長剤(a5)としては、従来知られるアミン化合物やアルカノールアミン等を使用することができる。なかでもジアミンを使用することが好ましい。
【0097】
前記ジアミンとしては、例えばジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、ジアミノエタン、1,2−又は1,3−ジアミノプロパン、1,2−又は1,3−又は1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン等を単独または2種以上併用して使用できる。
【0098】
また、本発明では、前記ジアミンの他に、必要に応じてその他の鎖伸長剤を併用してもよく、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ハイドロキノンジエチロールエーテル等を使用することもできる。
【0099】
次に、本発明で使用する化合物(B)について説明する。
【0100】
本発明で使用する化合物(B)は、加水分解性シリル基とシラノール基の両方またはいずれか一方と、エポキシ基とを有する化合物である。
【0101】
ここで、前記化合物(B)の代わりに、エポキシ基を有さない化合物や、エポキシ基を有するが加水分解性シリル基及びシラノール基のいずれも有さない化合物を使用して得られたウレタン樹脂組成物は、前記特定のウレタン樹脂(A)やエポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)を組み合わせ使用した場合であっても、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れた皮膜等の硬化物を形成することは困難な場合がある。
【0102】
前記化合物(B)としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、もしくはそれらを含有してなるシロキサンやその加水分解縮合物等を使用することが好ましく、なかでも3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を使用することができる。
【0103】
前記化合物(B)としては、前記したものの部分加水分解縮合物を使用することもできるが、加水分解反応していないものを使用することが好ましい。
【0104】
なかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、もしくは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを使用することが、前記化合物(B)のエポキシ基と官能基(X)の反応性や、化合物(B)のアルコキシル基とエポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)との反応性を高めるとともに、得られるウレタン樹脂組成物の良好な作業性や保存安定性を付与するうえで好ましい。
【0105】
前記化合物(B)としては、分子量150〜2000のものが使用できるが、ウレタン樹脂(A)との相溶性を向上し、形成される皮膜等の硬化物の透明性とともに、耐汚染性を向上する観点から、分子量150〜700の比較的低分子量のものを使用することがより好ましい。
【0106】
また、前記化合物(B)の有するエポキシ基の含有量は、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]の含有量によって異なるが、そのエポキシ当量が100〜2000の範囲のものを使用することが、皮膜の強靭性や可撓性等と耐溶剤性とを両立するうえで好ましい。
【0107】
また、前記化合物(B)中の前記加水分解性シリル基及びシラノール基の含有量は、前記化合物(B)の全量に対して、20質量%〜80質量%の範囲で存在することが、皮膜の可撓性と耐溶剤性とを両立するうえで好ましい。
【0108】
次に、本発明で使用するエポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)について説明する。
【0109】
前記アルコキシシラン(C1)は、加水分解性シリル基としてアルコキシシリル基を有する化合物のうち、エポキシ基を有さないものである。また、前記加水分解縮合物(C2)は、前記アルコキシシラン(C1)の2以上が、そのアルコキシシリル基の加水分解縮合反応によって結合した多量体である。
【0110】
本発明においては、前記アルコキシシラン(C1)またはその加水分解縮合物(C2)のいずれか一方を単独で使用しても、前記アルコキシシラン(C1)とその加水分解縮合物(C2)との両方を組み合わせ使用してもよく、前記アルコキシシラン(C1)が部分的に加水分解縮合反応して形成した加水分解縮合物(C2)を使用することが好ましい。
【0111】
前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)の有するアルコキシシリル基は、アルコキシ基がケイ素原子に結合した原子団である。また、シラノール基は、水酸基がケイ素原子に結合した原子団を示し、前記アルコキシシリル基が加水分解することによって形成される。前記アルコキシシリル基を構成するケイ素原子に結合したアルコキシ基としては、メトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0112】
前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類やそれらの加水分解縮合物、「MEK−ST」や「IPA−ST」(日産化学工業(株)製)として市販されているオルガノシリカゾル等に代表される、比較的高反応性であるテトラアルコキシシラン(c1−1)やその加水分解縮合物(c2−1)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類や、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、またはそれらの部分加水分解縮合物に代表される前記モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシシラン(c1−2)やその加水分解縮合物(c2−2)等を組み合わせ使用することができる。
【0113】
前記加水分解縮合物(c2−1)や前記加水分解縮合物(c2−2)としては、前記したアルコキシシラン(c1−1)や(c1−2)の2量体〜20量体が部分的に加水分解縮合反応して得られる、アルコキシシリル基の残存するものを使用することが好ましく、3量体〜10量体が加水分解縮合反応したものを使用することがより好ましい。
【0114】
前記テトラアルコキシシラン(c1−1)とその加水分解縮合物(c2−1)とは、いずれか一方を単独で使用しても、それらを組み合わせ使用してもよい。また、前記アルコキシシラン(c1−2)とその加水分解縮合物(c2−2)も、いずれか一方を単独で使用しても、それらを組み合わせ使用してもよい。
【0115】
前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)としては、前記(A)及び(B)との反応を進行させ高耐久性の皮膜等の硬化物を形成する観点から、エポキシ基を有さないものを使用することが好ましい。
【0116】
前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)としては、テトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)を必須として使用することが、速やかに架橋反応を進行させ、表面硬度や耐溶剤性や耐候性等の耐久性に優れた硬化物を形成できるため好ましく、テトラメトキシシランの加水分解縮合物(c2−1)またはオルガノシリカゾルを使用することがより好ましい。前記加水分解縮合物(c2−1)としては、前記テトラメトキシシランの3〜10量体からなる加水分解縮合物を使用することが好ましい。
【0117】
前記テトラメトキシシラン等のアルコキシシランやその加水分解縮合物と、前記オルガノシリカゾルとは、前記アルコキシシラン及びその加水分解縮合物とオルガノシリカゾルとの混合割合[アルコキシシラン及びその加水分解縮合物の合計質量/オルガノシリカゾルの合計質量]が1/9〜9.9/0.1の範囲で使用することが好ましく、5/5〜9.9/0.1の範囲で使用することがより好ましい。
【0118】
また、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)としては、本発明のウレタン樹脂組成物の保存安定性や作業性を更に飛躍的に向上させることを目的として、前記テトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)とともに、比較的低反応性であるモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシシラン(c1−2)及び/またはその加水分解縮合物(c2−2)を組み合わせ使用することが好ましい。とりわけ、前記アルコキシシラン(c1−2)やその加水分解縮合物(c2−2)としては、ジアルコキシシラン及びその加水分解縮合物からなる群より選ばれる1種以上を使用することが、塗工作業性に優れ、高硬度な皮膜を形成するうえでより好ましい。
【0119】
前記モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシシラン(c1−2)及びその加水分解縮合物(c2−2)は、前記アルコキシシラン(C1)及びその加水分解縮合物(C2)の合計質量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲で使用することによって、得られる皮膜の耐久性や耐汚染性、基材密着性や基材追従性等を損なうことなく、優れた保存安定性や作業性を付与することができる。なお、前記アルコキシシラン(c2−1)やその加水分解縮合物(c2−2)のいずれか一方を単独で使用した場合には、他方の使用量を0として算出した場合に、前記範囲内で使用することが好ましい。
【0120】
また、前記テトラアルコキシシラン(c1−1)及びその加水分解縮合物(c2−1)の合計質量と、前記アルコキシシラン(c1−2)及びその加水分解縮合物(c2−2)との合計質量との割合[(c1−1)と(c2−1)との合計質量/(c1−2)と(c2−2)との合計質量]は、優れた保存安定性や作業性とともに、優れた耐汚染性を付与する観点から、100/1〜1/1であることが好ましく、50/1〜3/1の範囲であることがより好ましい。
【0121】
次に、本発明で使用する溶剤(D)について説明する。
前記溶剤(D)は、前記ウレタン樹脂(A)や前記化合物(B)やアルコキシシラン(C1)及びその加水分解縮合物(C2)を溶解または分散しうるものであって、従来知られるものを使用することができる。
【0122】
前記溶剤(D)としては、例えばメチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、3−ペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤(d1)を使用することができる。
【0123】
また、前記溶剤(D)としては、各種アルコール(d2)を使用することができ、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどの好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜4個の炭素原子数を有するアルコールを使用することができ、特に好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールを使用することができる。
【0124】
前記溶剤(D)としては、作業環境性の観点から、酢酸エチルやメチルエチルケトンや前記アルコール(d2)を使用することが好ましい。
【0125】
また、前記溶剤(D)としては、ウレタン樹脂(A)の良好な溶解性を維持し、前記(A)〜(C1)や(C2)の有する加水分解性シリル基やシラノール基間の縮合反応を抑制し、本発明のウレタン樹脂組成物の良好な保存安定性を維持する観点から、前記有機溶剤(d1)と前記アルコール(d2)とを組み合わせ使用することが好ましい。
【0126】
前記有機溶剤(d1)と前記アルコール(d2)とは、その質量割合[(d1)/(d2)]が1/9〜9/1の範囲で使用することが好ましい。
【0127】
前記溶剤(D)は、本発明のウレタン樹脂組成物の全体に対して、10質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0128】
本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば前記方法で得たウレタン樹脂(A)と、前記化合物(B)と、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)と、溶剤(D)とを混合することによって製造することができる。
【0129】
具体的には、前記方法によって予め製造したウレタン樹脂(A)の溶剤(D)溶液と、前記化合物(B)と前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)とを一括供給、または一方を他方へ逐次供給し混合、攪拌することで製造することができる。前記化合物(B)や前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)は、前記溶剤(D)等と予め混合されていてもよく、また、前記化合物(B)や前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)の一部が加水分解することによって生成されたアルコールを含むものであってもよい。前記加水分解によって生成されたアルコールは、必要に応じて減圧下で放置又は加温等の方法によって、除去されていても良い。
【0130】
また、前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)として前記テトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)と、前記アルコキシシラン(c1−2)及び/またはその加水分解縮合物(c2−2)とを組み合わせ使用する場合には、前記テトラアルコキシシラン(c1−1)や前記アルコキシシラン(c1−2)やそれらの加水分解縮合物(c2−1)や(c2−2)を、前記ウレタン樹脂(A)の溶剤(D)溶液や化合物(B)等とそれぞれ別々に混合しても、予め調製した前記テトラアルコキシシラン(c1−1)やアルコキシシラン(c1−2)やそれらの加水分解縮合物(c2−1)や(c2−2)の混合物や、それらを更に加水分解縮合したものを混合してもよい。
【0131】
前記ウレタン樹脂(A)の溶剤(D)溶液と、前記化合物(B)と前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)との混合は、例えば、10℃〜50℃程度の温度条件下、攪拌翼や攪拌棒等を用いて行うことができる。
【0132】
本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、例えば酸触媒、架橋剤、成膜助剤、充填材、チキソトロピー付与剤、粘着性付与剤、界面活性剤、顔料、ブレンド用の樹脂、その他の添加剤等を本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0133】
前記酸触媒は、本発明のウレタン樹脂組成物の硬化を速やかに進行させることを目的として使用することが好ましい。具体的には、本発明のウレタン樹脂組成物を基材等の表面に塗布等する前に、前記ウレタン樹脂組成物と前記酸触媒と水とを混合して得た、前記ウレタン樹脂組成物と前記酸触媒と前記水とを含む組成物を基材等の表面に塗布等する。
【0134】
これにより、該塗布層中における前記ウレタン樹脂(A)や前記化合物(B)や前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)の加水分解性シリル基は速やかにシラノール基を形成し、前記シラノール基間において架橋反応を速やかに進行させることができる。
【0135】
また、前記反応と並行して、前記ウレタン樹脂(A)の有する前記官能基[X]と、前記化合物(B)の有するエポキシ基との反応も速やかに進行することで、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れた皮膜等の硬化物を形成する。
【0136】
前記酸触媒としては、例えば、塩酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸を、単独または2種以上併用することができる。なかでも、極めて高硬度で優れた耐擦傷性を備えた被膜等の硬化物を速やかに形成できることから、マレイン酸やリン酸を用いることが好ましい。
【0137】
前記酸触媒は、前記化合物(B)及び前記アルコキシシラン(C1)及びその加水分解縮合物(C2)の合計100質量部に対して1〜50質量部の範囲で使用することが好ましく、2〜40質量部の範囲で使用することが、前記架橋反応を速やかに進行させるうえで好ましい。
【0138】
また、前記酸触媒と組み合わせ使用することが好ましい水は、前記架橋反応を速やかに進行させるうえで使用することができる。前記水は、前記化合物(B)及び前記アルコキシシラン(C1)及びその加水分解縮合物(C2)の合計100質量部に対して1〜100質量部の範囲で使用することが好ましく、5〜50質量部の範囲で使用することが、前記架橋反応を速やかに進行させるうえで好ましい
【0139】
また、本発明のウレタン樹脂組成物に使用可能な架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤を使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等を使用することができる。
【0140】
前記成膜助剤としては、特に限定しないが、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0141】
前記充填材としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ等の金属の酸化物やそれらの加水分解縮合物をはじめ、炭酸塩(例えばカルシウム塩、カルシウム・マグネシウム塩、マグネシウム塩等)、珪酸、珪酸塩(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、水酸化物(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、硫酸塩(例えばバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、硼酸塩(例えばアルミニウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、チタン酸塩(例えばカリウム塩等)等が挙げられる。
【0142】
前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィン、樹脂酸、界面活性剤、ポリアクリル酸等で表面処理された前記充填材、ポリ塩化ビニルパウダー、水添ヒマシ油、微粉末シリカ、有機ベントナイト、セピオライト等が挙げられる。
【0143】
前記粘着性付与剤としては、特に限定しないが、例えば、ロジン樹脂系、テルペン樹脂系、フェノール樹脂系等の粘着性付与剤が挙げられる。
【0144】
更に、その他の添加剤としては、例えば、反応促進剤(金属系、金属塩系、アミン系等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤等)、水分除去剤(4−パラトルエンスルフォニルイソシアネート等)、吸着剤(生石灰、消石灰、ゼオライト、モレキュラーシーブ等)、接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤等の種々の添加剤が挙げられる。
【0145】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ゲル化などを引き起こしにくく分散安定性、保存安定性に優れ、かつ、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れた皮膜等の硬化物を形成することができる。
【0146】
したがって、本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば、各種基材の表面保護や意匠性付与、耐溶剤性等の機能性付与に使用するコーティング剤や、各種基材の貼り合わせに使用する接着剤として好適である。
【0147】
前記硬化物は、前記硬化物中に存在するケイ素原子及び酸素原子の合計質量の割合が30質量%〜70質量%の範囲であることが、皮膜等の硬化物の基材追従性の向上に寄与する強靭性や可撓性と、耐溶剤性等の耐久性や高硬度とを両立するとともに、優れた耐汚染性を付与するうえで好ましい。前記ケイ素原子及び酸素原子は、前記ウレタン樹脂(A)や前記化合物(B)や前記シロキサン化合物(C)の有する加水分解性シリル基やシラノール基に由来するものである。
【0148】
前記コーティング剤等を塗布し皮膜を形成したり、貼り合わせが可能な基材としては、例えばガラス基材、金属基材、プラスチック基材、紙や木材基材、繊維質基材等が挙げられる。また、ウレタンフォーム等の多孔体構造の基材に使用することもできる。なかでも、本発明のウレタン樹脂組成物を含むコーティング剤等は、一般に皮膜の密着性に乏しく、温度変化によって伸縮等の変形を引き起こしやすいプラスチック基材に対して、優れた密着性と基材追従性(強靭性)とを備えた皮膜を形成できることから、各種プラスチック基材用のコーティング剤や接着剤に使用することが好ましい。
【0149】
また、プラスチック基材としては、例えばポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル系基材及びポリアミド系基材等を使用することができる。
【0150】
前記金属基材としては、例えば亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、鉄板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
【0151】
前記基材は前記材質からなる平面状のものであっても曲部を有するものであってもよく、また、不織布のような繊維からなる基材であってもよい。
【0152】
前記コーティング剤等を前記基材上に塗布する方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0153】
本発明のウレタン樹脂組成物を硬化させ、皮膜や成形物等の硬化物を形成する方法としては、例えば前記ウレタン樹脂組成物と、必要に応じて前記酸触媒と水とを混合することによって、前記ウレタン樹脂組成物と酸触媒と水とを含む組成物を得、該組成物を、基材表面に塗布し、前記塗布層中に含まれる前記溶剤(D)を除去することによって、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)とが有するアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基間における架橋反応と、前記ウレタン樹脂(A)の官能基[X]と前記化合物(B)のエポキシ基との架橋反応とが進行し結合を形成することを特徴とする硬化物の製造方法が挙げられる。
【0154】
前記溶剤(D)を除去する工程は、例えば常温下に放置または30℃〜80℃程度の条件下に放置することによって行うことが好ましい。
【0155】
また、前記ウレタン樹脂(A)と前記化合物(B)と前記アルコキシシラン(C1)やその加水分解縮合物(C2)とが有するアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基が加水分解して形成されたシラノール基間における架橋反応は、概ね80℃〜150℃に加熱することで、速やかに進行させることができる。
【0156】
また、前記ウレタン樹脂(A)の官能基[X]と前記化合物(B)のエポキシ基との架橋反応は、概ね80℃〜150℃に加熱することで、速やかに進行させることができる。
【0157】
また、加熱のみでは前記加水分解縮合反応がしにくい場合や、前記基材が熱に弱い材質からなるものである場合には、前記したとおり、本発明のウレタン樹脂組成物に、予め前記酸触媒や水を混合して得た組成物を使用することによって、前記反応を速やかに進行させることが可能となる。
【0158】
かかる方法によって得られた皮膜や成形物等の硬化物は、高硬度で耐溶剤性等の耐久性や耐汚染性に優れ、各種基材に対する密着性や基材追従性にも優れたものである。
【0159】
以上のように、本発明のウレタン樹脂組成物を含むコーティング剤や接着剤や成形材料は、例えば従来の無機ガラスの代替として注目される有機ガラスの表面被覆やプライマー、電子機器の各種プラスチック部材の表面被覆、例えば自動車や鉄道等を構成する部材の表面被覆、太陽光発電装置等の光発電装置等の受光表面の表面被覆、電子部品等の表面被覆、壁材や床材、窓ガラス等、眼鏡等の表面被覆に使用するコーティング剤やそれらの接着剤等はじめとする様々な用途に使用することが可能である。
【実施例】
【0160】
以下、本発明を実施例により一層具体的に説明する。
【0161】
[実施例1]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを88質量部、及び、イソホロンジイソシアネート102質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0162】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、メチルエチルケトン99質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0163】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール153質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0164】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)468質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−1)(不揮発分50質量%)を得た。
【0165】
[実施例2]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコールを88質量部、及び、イソホロンジイソシアネート102質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0166】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、メチルエチルケトン99質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0167】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール153質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0168】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)468質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−2)(不揮発分50質量%)を得た。
【0169】
[実施例3]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られる数平均分子量2000のポリカーボネートジオールを88質量部、及び、イソホロンジイソシアネート102質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0170】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、メチルエチルケトン99質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0171】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール153質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0172】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)468質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−3)(不揮発分50質量%)を得た。
【0173】
[実施例4]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを82質量部、及び、イソホロンジイソシアネート96質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0174】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸15質量部、ネオペンチルグリコール23質量部、メチルエチルケトン93質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0175】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 20質量部とイソプロピルアルコール169質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0176】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、X−41−1053(信越化学工業(株)製、ポリマー型シランカップリング剤、組成:メトキシ、エトキシ、エポキシシリケート、エポキシ当量=830、SiO2;39質量%)93質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)410質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−4)(不揮発分50質量%)を得た。
【0177】
[実施例5]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを89質量部、及び、イソホロンジイソシアネート104質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0178】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、メチルエチルケトン100質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0179】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 22質量部とイソプロピルアルコール157質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0180】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、X−41−1056(信越化学工業(株)製、ポリマー型シランカップリング剤、組成:メトキシ、メチル、エポキシシリケート、エポキシ当量=280、SiO2;41質量%)34質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)453質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−5)(不揮発分50質量%)を得た。
【0181】
[実施例6]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを158質量部、及び、イソホロンジイソシアネート184質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0182】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸29質量部、ネオペンチルグリコール44質量部、メチルエチルケトン178質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0183】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 28質量部とイソプロピルアルコール259質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0184】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 51質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)58質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−6)(不揮発分50質量%)を得た。
【0185】
[実施例7]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを123質量部、及び、イソホロンジイソシアネート143質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0186】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸23質量部、ネオペンチルグリコール34質量部、メチルエチルケトン138質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0187】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピル(トリエトキシシラン)30質量部とイソプロピルアルコール206質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0188】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 40質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)263質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−7)(不揮発分50質量%)を得た。
【0189】
[実施例8]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを35質量部、及び、イソホロンジイソシアネート41質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0190】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸6質量部、ネオペンチルグリコール10質量部、メチルエチルケトン40質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0191】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 8質量部とイソプロピルアルコール73質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0192】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 11質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)776質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−8)(不揮発分50質量%)を得た。
【0193】
[実施例9]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを88質量部、及び、イソホロンジイソシアネート102質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0194】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、メチルエチルケトン99質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0195】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール44質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0196】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)312質量部と、IPA−ST(日産化学工業(株)製、オルガノシリカゾルとイソプロピルアルコールの混合物、不揮発分30質量%)265質量部を混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−9)(不揮発分50質量%)を得た。
【0197】
[実施例10]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを59質量部、及び、イソホロンジイソシアネート68質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0198】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸11質量部、ネオペンチルグリコール16質量部、メチルエチルケトン103質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0199】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 14質量部とイソプロピルアルコール138質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0200】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 189質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)402質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−10)(不揮発分50質量%)を得た。
【0201】
[実施例11]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを85質量部、及び、イソホロンジイソシアネート98質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0202】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール24質量部、メチルエチルケトン95質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0203】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 20質量部とイソプロピルアルコール159質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0204】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 27質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)455質量部と、トリメチルメトキシシラン 20質量部を混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−11)(不揮発分50質量%)を得た。
【0205】
[実施例12]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを86質量部、及び、イソホロンジイソシアネート100質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0206】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール24質量部、メチルエチルケトン97質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0207】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール154質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0208】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)454質量部と、ジメチルジメトキシシラン 21質量部を混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−12)(不揮発分50質量%)を得た。
【0209】
[実施例13]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを87質量部、及び、イソホロンジイソシアネート101質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0210】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸16質量部、ネオペンチルグリコール24質量部、メチルエチルケトン98質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0211】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 21質量部とイソプロピルアルコール151質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0212】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 28質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)453質量部と、メチルトリメトキシシラン 21質量部を混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−13)(不揮発分50質量%)を得た。
【0213】
[実施例14]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを64質量部、及び、イソホロンジイソシアネート74質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0214】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸12質量部、ネオペンチルグリコール18質量部、メチルエチルケトン72質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0215】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 15質量部とイソプロピルアルコール174質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0216】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 21質量部と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)276質量部と、ジメチルジメトキシシラン 276質量部を混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによって本発明のウレタン樹脂組成物(A−14)(不揮発分50質量%)を得た。。
【0217】
[比較例1]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを176質量部、及び、イソホロンジイソシアネート195質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0218】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸32質量部、ネオペンチルグリコール49質量部、メチルエチルケトン231質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0219】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 28質量部とイソプロピルアルコール231質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0220】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 57質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによってウレタン樹脂組成物(A’−1)(不揮発分50質量%)を得た。
【0221】
[比較例2]
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を供えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオールを105質量部、及び、イソホロンジイソシアネート105質量部を混合し、100℃で約1時間反応させた。
【0222】
次いで、反応容器内の温度を80℃に調整し、更にジメチロールプロピオン酸17質量部、ネオペンチルグリコール26質量部、メチルエチルケトン128質量部を前記反応容器中へ供給し、5時間反応を行った。
【0223】
次いで、前記温度を50℃に調整した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 15質量部とイソプロピルアルコール128質量部とを前記反応容器中へ供給し、反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する重量平均分子量11000であるウレタン樹脂の溶剤溶液を得た。
【0224】
次いで、前記で得たウレタン樹脂の溶剤溶液の全量と、MS−51(コルコート株式会社製、メチルポリシリケート97質量%とテトラメトキシシラン2質量%とメタノール1質量%)485質量部とを混合し、50℃で1時間攪拌、混合することによってウレタン樹脂組成物(A’−2)(不揮発分50質量%)を得た。
【0225】
[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物10質量部と、水及び酸触媒としてのマレイン酸を含有する20質量%のマレイン酸水溶液0.5質量部とを混合、攪拌することによって、それらの混合物を得た。
【0226】
次いで、前記混合物をエンジニアリングテストサービス(株)社製のポリカーボネート基材表面に、アプリケーターを用いて、その硬化皮膜の膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃の環境下で20分間乾燥させ、ポリカーボネート基材表面に架橋反応の進行し硬化した皮膜の積層された積層体を形成した。
【0227】
(皮膜の基材に対する密着性の評価方法)
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物10質量部と、水及び酸触媒としてのマレイン酸を含有する20質量%のマレイン酸水溶液0.5質量部とを混合、攪拌することによって、それらの混合物を得た。
【0228】
前記で得た混合物を、エンジニアリングテストサービス(株)社製のポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)基材、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材の各基材上に、アプリケーターを用いてその乾燥皮膜の膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃の環境下で5分間乾燥させ、次いで、140℃の環境下で10分間乾燥、硬化させることによって、各プラスチック基材上に皮膜の積層された試験板を作製した。
【0229】
前記で得た試験板を構成する皮膜と各種基材との密着性は、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0230】
A:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
B:皮膜の剥がれた面積が全碁盤目面積の5%未満であり、実用上許容できる範囲であった。
C:皮膜の剥がれた面積が全碁盤目面積の5%以上10%未満であり、実用上許容できる範囲であった。
D:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の10%以上50%未満であった。
E:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の50%以上であった。
【0231】
(基材追従性(強靭性)の評価方法)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体を用い、JIS K5600「8.1耐屈曲性試験方法」に準拠することで、前記積層体の180°折り曲げ試験を行った。
【0232】
A:折り曲げられた皮膜の基材からの剥離や、皮膜のクラック等が一切発生しなかった。
B:折り曲げられた皮膜の基材からの剥離は生じなかったものの、皮膜のごく一部に実用上問題ないレベルの皺が確認された。
C:折り曲げられた皮膜の基材からの剥離は生じなかったものの、皮膜のごく一部に実用上問題ないレベルの僅かなクラックが発生した。
D:折り曲げられた皮膜の基材からの剥離は生じなかったものの、明確な皮膜のクラックが確認できた。
E:基材から皮膜の大部分が剥離した。
【0233】
(皮膜の耐溶剤性の評価方法)
(耐MEK性)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体の皮膜の表面の同一箇所を、メチルエチルケトン(MEK)を浸み込ませたフェルトを用いて、1000gの荷重で、往復50回ラビングした。ラビング前とラビング後の皮膜表面の光沢度を、HG−268(スガ試験機(株)製)を用いて測定し、式[ラビング後の光沢度/ラビング前の光沢度]×100(光沢保持率)に基づいて、耐MEK性を評価した。前記光沢保持率の評価が下記「C」以上であるものは、実用上使用可能であると評価した。
【0234】
A :光沢保持率が90%以上
B :光沢保持率が80%以上90%未満
C :光沢保持率が70%以上80%未満
D :光沢保持率が30%以上70%未満
E :光沢保持率が30%未満
【0235】
(耐エタノール性)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体の皮膜の表面の同一箇所を、エタノールを浸み込ませたフェルトを用いて、1000gの荷重で、往復50回ラビングした。ラビング前とラビング後の皮膜表面の光沢度を、HG−268(スガ試験機(株)製)を用いて測定し、式[ラビング後の光沢度/ラビング前の光沢度]×100(光沢保持率)に基づいて、耐エタノール性を評価した。前記光沢保持率の評価が下記「C」以上であるものは、実用上使用可能であると評価した。
【0236】
A :光沢保持率が90%以上
B :光沢保持率が80%以上90%未満
C :光沢保持率が70%以上80%未満
D :光沢保持率が30%以上70%未満
E :光沢保持率が30%未満
【0237】
(皮膜の硬度の評価方法)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体の皮膜の硬度は、JIS K5600のひっかき硬度(鉛筆法)に基づいて測定し、下記評価基準に基づいて評価した。前記硬度の評価が下記「C」以上であるものは、実用上使用可能であると評価した。
【0238】
A :皮膜の硬度が3H以上
B :皮膜の硬度が2H以上3H未満
C :皮膜の硬度がH以上2H未満
D:皮膜の硬度がB以上H未満
E:皮膜の硬度がB未満
【0239】
(耐汚染性の評価方法)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体の皮膜の表面に、JIS S 6037に規定するマーキングペンの黒、赤、青、それぞれのペン先を軽く押しつけ、ペン先の広い幅の辺に対して直角の方向に、毎秒約150mmの速さで動かし、前記皮膜表面に約20mmの線を互いに接するよう3本引くことによって、皮膜表面の約4cmの面積を塗りつぶした。
【0240】
前記塗りつぶした後、常温の環境下に18時間放置した皮膜の表面を、石油ベンジンとエタノールとを1:1の質量比で含有する混合溶媒を浸した清潔なガーゼを用いて拭き、皮膜表面に付着したマーキングペンのインクをふき取った。次いで、前記皮膜表面を乾燥した清潔なガーゼを用いて軽く拭き、更に1時間室温で放置した。
【0241】
前記放置後の皮膜表面を、拡散昼光の下で目視によって観察し、耐汚染性試験前の皮膜と比較して皮膜の色・つやの変化及び膨れの有無に基づき評価した。
【0242】
◎:色・つやの変化が認められない。
○:色・つやの変化がごく僅かに認められる。
△:色・つやの変化が見られる。
×:色・つやの変化が非常に顕著に認められる。
【0243】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物の粘度を、RB型回転粘度計(R100型)(東機産業(株)製)を用いて測定した。次に、前記ウレタン樹脂組成物を、50℃の環境下に30日間放置した後の粘度を、前記同様の方法で測定した。式[放置後の粘度/調製直後の粘度]によって求められた値に基づき、下記評価基準に従ってその保存安定性を評価した。前記保存安定性の評価が下記評価「C」以上であるものを実用上使用可能であると判断した。
【0244】
A:前記値が1.0以上1.5以下であった。
B:前記値が1.5を超えて2以下であった。
C:前記値が2を超えて3以下であった。
D:前記値が3を超えた。
E:前記放置後のウレタン樹脂組成物が著しくゲル化し、前記値を測定できなかった。
【0245】
(作業性の評価方法)
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物10質量部と、水及び酸触媒としてのマレイン酸を含有する20質量%のマレイン酸水溶液0.5質量部とを混合、攪拌することによって、それらの混合物を得、その混合物の調製直後の粘度を、RB型回転粘度計(R100型)(東機産業(株)製)を用いて測定した。次に、前記混合物を、25℃の室温の環境下に8時間放置した後の粘度を、前記同様の方法で測定した。式[放置後の粘度/調製直後の粘度]によって求められた値に基づき、下記評価基準に従ってその作業性とを評価した。前記保存安定性の評価が下記評価「C」以上であるものを実用上使用可能であると判断した。
【0246】
A:前記値が1.0以上1.5以下であった。
B:前記値が1.5を超えて2以下であった。
C:前記値が2を超えて3以下であった。
D:前記値が3を超えた。
E:前記放置後のウレタン樹脂組成物が著しくゲル化し、前記値を測定できなかった。
【0247】
(耐候性の評価方法)
前記[皮膜(硬化物)を有する積層体の形成方法]で得た積層体を、デューパネル光ウェザーメーター〔スガ試験機(株)製、光照射時:30W/m、60℃、湿潤時:湿度90%以上、40℃、光照射/湿潤サイクル=4時間/4時間〕を用いて1000時間曝露試験した。前記曝露試験前後の積層体の皮膜表面の鏡面光沢反射率を、スガ試験機(株)製のHG−268を用いて測定し、その光沢保持率を下記式に基づいて求めた。
【0248】
〔100×(暴露試験後の皮膜の鏡面反射率)/(曝露試験前の皮膜の鏡面反射率)〕光沢保持率の値が大きいほど、耐候性が良好であることを示し、概ね80%以上であることが好ましい。なお、前記皮膜が前記基材表面に密着せず積層体を作製できなかったものは、耐候性の評価試験を行わなかった。表中「−」で示したものは、前記理由により評価試験を行わなかったことを示す。
【0249】
【表1】

【0250】
【表2】

【0251】
【表3】

【0252】
表中の「無機成分量」は、実施例及び比較例のウレタン樹脂組成物を用いて得られた皮膜(硬化物)の質量に対する、該皮膜(硬化物)中に存在するケイ素原子及び酸素原子の合計質量の割合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基に対して反応性を有する官能基[X]と、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有するウレタン樹脂(A)、エポキシ基と加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とを有する化合物(B)、エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)、ならびに、溶剤(D)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、官能基[X]含有ポリオール(a2−1)を含むポリオール(a2)とを反応させることによって分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を製造し、次いで、該ウレタンプレポリマー(a3)と、アミノ基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上を含むシランカップリング剤(a4)とを反応させることによって得られるものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]がカルボキシル基またはカルボキシレート基である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)が5000〜50000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオール(a2)が、前記官能基[X]含有ポリオール(a2−1)とともに数平均分子量800〜5000のポリエステルポリオールを含むものである、請求項2に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(B)が150〜700の分子量を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)が、テトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)と、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシシラン(c1−2)及び/またはその加水分解縮合物(c2−2)とを含有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
テトラアルコキシシラン(c1−1)及び/またはその加水分解縮合物(c2−1)と、アルコキシシラン(c1−2)及び/またはその加水分解縮合物(c2−2)との質量割合[(c1−1)と(c2−1)との合計質量/(c1−2)と(c2−2)との合計質量]が100/1〜1/1である、請求項8に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記溶剤(D)が有機溶剤(d1)とアルコール(d2)とを含有するものであり、前記有機溶剤(d1)が酢酸エチル及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる1種以上を含み、前記アルコール(d2)が炭素原子数1個〜7個のアルコールを含むものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物からなるコーティング剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物からなるプラスチック基材用コーティング剤。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物を硬化して得られるフィルム。
【請求項14】
前記硬化物中に存在するケイ素原子及び酸素原子の合計質量の割合が30質量%〜70質量%である、請求項12に記載の硬化物。
【請求項15】
前記ウレタン樹脂(A)のシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されたシラノール基と、前記化合物(B)の有するシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されるシラノール基と、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)の有するシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されるシラノール基とが反応することでシロキサン結合を形成し、かつ、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と、前記化合物(B)の有するエポキシ基とが反応することで結合を形成したものである、請求項12に記載の硬化物。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物と、必要に応じて水と酸触媒とを混合して得られた組成物を、基材表面に塗布し、前記塗布層中に含まれる前記溶媒(D)を除去することによって、前記ウレタン樹脂(A)のシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されたシラノール基と、前記化合物(B)の有するシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されるシラノール基と、前記エポキシ基を有さないアルコキシシラン(C1)及び/またはその加水分解縮合物(C2)の有するシラノール基または前記加水分解性シリル基が加水分解して生成されるシラノール基とが反応することでシロキサン結合を形成し、かつ、前記ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と、前記化合物(B)の有するエポキシ基とが反応することを特徴とする硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2012−92281(P2012−92281A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279183(P2010−279183)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】