説明

ウレタン樹脂組成物

【課題】 本発明は、耐水性に優れ、かつ良好な耐摩擦性(摺動性)と引張強度などの機械的強度を持ち、さらに耐用期間の長いポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】 アイソタクティシティーが50%以上、好ましくは95%以上で、数平均分子量が2,000から50,000である結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)と芳香族ポリイソシアネート(B)を反応させて得られることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は、イソシアネート成分とポリオール成分とを反応させることによって製造されている。ポリオール成分は、ウレタン樹脂の性質に大きな影響を与えるため種々のポリオールが用いられている。
例えば、ポリオール成分として、ポリエステルポリオールを原料として用いたウレタン樹脂やポリエーテルポリオールを原料として用いたウレタン樹脂がある(例えば非特許文献1)。
【非特許文献1】ポリウレタン樹脂ハンドブック(岩田敬治編、日刊工業新聞社、1987年発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば、前者のポリエステルポリオールを原料として用いたウレタン樹脂は、耐摩擦性(摺動性)、引張強度、引裂強度等が良好であるが、耐水性が低く、水と接触したり、大気中の水分によっても加水分解されるため、耐用期間の点で問題がある。一方、後者のポリエーテルポリオールが原料として用いられたウレタン樹脂は、耐水性が良好であるので耐用期間が長いが、機械的強度が劣るという欠点があり、それぞれ、一長一短ある。
そこで、本発明は、良好な耐摩擦性(摺動性)、引張強度等の機械的強度をウレタン樹脂に与え、ウレタン樹脂の耐用性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、アイソタクティシティーが50%以上である結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)をポリオール成分としてポリイソシアネート(B)を反応させて得られることを特徴とするウレタン樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリエーテルポリオールを原料としたウレタン樹脂の欠点である耐摩擦性(摺動性)と機械的強度の低さとポリエステルポリオールを原料としたウレタン樹脂の欠点である耐加水分解性の低さが改良された、良好な耐摩擦性(摺動性)、引張強度等の機械強度と耐水性を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明におけるウレタン樹脂組成物は、結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を反応させて得られ、ポリオール成分としてアイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオール(A)を用いることを特徴とする。
【0007】
本発明で使用するアイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオール(A)としては、(1)特殊なキラル体のアルキレンオキサイド(a−1)を通常アルキレンオキサイドの重合で使用される触媒で開環重合させる方法、(2)通常のラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)を後述の特殊な錯体で開環重合させる方法で得られるポリオールが使用できる。
【0008】
キラル体のアルキレンオキサイド(a−1)としては、炭素数3〜9のキラル体が挙げられ、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(1)炭素数3のアルキレンオキサイド[(R)−プロピレンオキサイド、(S)−プロピレンオキサイド、(R)−1−クロロオキセタン、(S)−1−クロロオキセタン、(R)−2−クロロオキセタン、(S)−2−クロロオキセタン、(1R、2R)−1,2−ジクロロオキセタン、(1R、2S)−1,2−ジクロロオキセタン、(1S、2R)−1,2−ジクロロオキセタン、(1S、2S)−1,2−ジクロロオキセタン、(R)−エピクロルヒドリン、(S)−エピクロルヒドリン、(S)−エピブロモヒドリン、(R)−エピブロモヒドリン];
(2)炭素数4のアルキレンオキサイド[(R)−1,2−ブチレンオキサイド、(S)−1,2−ブチレンオキサイド、(2R、3R)−2,3−ブチレンオキサイド、(2R、3S)−2,3−ブチレンオキサイド、(2S、3R)−2,3−ブチレンオキサイド、(2S、3S)−2,3−ブチレンオキサイド、(R)−メチルグリシジルエーテル、(S)−メチルグリシジルエーテル];
(3)炭素数5のアルキレンオキサイド[(R)−1,2−ペンチレンオキサイド、(S)−1,2−ペンチレンオキサイド、(2R、3R)−2,3−ペンチレンオキサイド、(2R、3S)−2,3−ペンチレンオキサイド、(2S、3R)−2,3−ペンチレンオキサイド、(2S、3S)−2,3−ペンチレンオキサイド、(R)−3−メチル−1,2−ブチレンオキサイド、(S)−3−メチル−1,2−ブチレンオキサイド];
(4)炭素数6のアルキレンオキサイド[(R)−1,2−へキシレンオキサイド、(S)−1,2−へキシレンオキサイド、(2R、3R)−3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(2R、3S)−3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(2S、3R)−3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(2S、3S)−3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(R)−4−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(S)−4−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、(2R、3R)−2,3−ヘキシレンオキサイド、(2R、3S)−2,3−ヘキシレンオキサイド、(2S、3R)−2,3−ヘキシレンオキサイド、(2S、3S)−2,3−ヘキシレンオキサイド、(2R、3R)−4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、(2R、3S)−4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、(2S、3R)−4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、(2S、3S)−4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル];
(5)炭素数7のアルキレンオキサイド[(R)−1,2−へプチレンオキサイド、(S)−1,2−へプチレンオキサイド];
(6)炭素数8のアルキレンオキサイド[(R)−スチレンオキサイド、(S)−スチレンオキサイド];
(7)炭素数9のアルキレンオキサイド[(R)−フェニルグリシジルエーテル、(S)−フェニルグリシジルエーテル]
等である。
【0009】
これらのキラル体のアルキレンオキサイドのうち、(R)−プロピレンオキサイド、(S)−プロピレンオキサイド、(R)−1,2−ブチレンオキサイド、(S)−1,2−ブチレンオキサイド、(2R、3R)−2,3−ブチレンオキサイド、(2R、3S)−2,3−ブチレンオキサイド、(2S、3R)−2,3−ブチレンオキサイド、(2S、3S)−2,3−ブチレンオキサイド、(R)−スチレンオキサイドおよび(S)−スチレンオキサイドが好ましい。
さらに好ましくは(R)−プロピレンオキサイド、(S)−プロピレンオキサイド、(R)−1,2−ブチレンオキサイド、(S)−1,2−ブチレンオキサイド、(R)−スチレンオキサイドおよび(S)−スチレンオキサイドである。最も好ましくは(R)−プロピレンオキサイドおよび(S)−プロピレンオキサイドである。
【0010】
本発明のアイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオール(A)は、下記の活性水素含有化合物(b)にこれらのキラル体のアルキレンオキサイド(a−1)を重合させて得られる。
【0011】
活性水素含有化合物(b)としては、水、炭素数2〜15の2〜8価のアルコール、アンモニア、炭素数2〜15の2〜4価のアミン、アルカノールアミン、多価フェノールが挙げられ、具体的には以下の化合物が挙げられる。
水、2〜8価アルコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等];アンモニア、2〜4価のアミン[モノアミン(ブチルアミン等)、脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)、脂環式ポリアミン(ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン等)、芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等)];アルカノールアミン[モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)];多価フェノール[多価フェノール(ピロガロール、ヒドロキノン等)、ビスフェノール(ビスフェノールA等)等];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましくは、水、2〜3価のアルコールであり、さらに好ましくは水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンである。
【0012】
キラル体のアルキレンオキサイド(a−1)の重合方法は、常法でよく、重合させる触媒としては、通常用いられるKOH、CsOH、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が使用できる。
反応は、通常−50℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは0℃〜110℃である。
【0013】
ラセミ体のアルキレンオキサイドであっても、特殊な触媒を使用することにより、アイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオール(A)を得ることができる。
ラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)としては、上記キラル体のアルキレンオキサイド(a−1)のラセミ体が挙げられる。
好ましくはプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドであり、さらに好ましくはプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、最も好ましくはプロピレンオキサイドである。
【0014】
ラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)を重合させて、アイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオール(A)を得る方法としては、触媒としてサレン錯体(C)、ランタノイド系錯体(D)、バイメタルμ−オキソアルコキサイド(E)等を用いて活性水素含有化合物(b)と重合する方法等が挙げられる。
【0015】
サレン錯体(C)としては、下記一般式(1)または(2)で示される錯体を使用することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
式中、R〜Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、そのうちの任意の2つが結合して環を形成していてもよく、その炭素原子に結合する水素原子が、反応に関与しない置換基(ハロゲン原子、有機シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エステル基、アミド基等)で置換されていてもよい。
【0019】
肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナチル基、ドデシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、sec−オクチル基等が挙げられる。
これらのうち好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であり、特に好ましくはエチル基、iso−プロピル基である。最も好ましくはエチル基である。
【0020】
脂環族炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0021】
芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基としては、単環式芳香族炭化水素基、多環式芳香族炭化水素基等が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、キシリル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジエトキシトリル基等が挙げられる。
【0022】
多環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ペンタリル基、ナフチル基、アントラシル基、ヘプタリル基、フェナリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)中のR〜Rは、そのうちの任意の2つが結合して環を形成していてもよく、(i)R〜Rのうち、隣接した炭素原子に結合した任意の2つが結合して、2価の炭化水素基として3員環〜7員環骨格を形成する場合や、(ii)R〜Rのうち、同一の炭素原子に結合した任意の2つが結合して、2価の炭化水素基としてスピロ環骨格を形成する場合が挙げられる。さらに、この2価の炭化水素基自身が脂環で一部置換されている場合が挙げられる。(i)と(ii)のうち、環の安定性の観点から、(i)が好ましい。
〜Rのうちの任意の2つが結合した2価の炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
【0024】
また、炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子は、イソシアネート基などとの反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。ここでいう反応に関与しない置換基としては、ハロゲン原子、有機シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エステル基、アミド基などが挙げられる。
従って、直鎖アルキル基の一部がこれらの官能基で置換された場合の具体例としては、例えば、トリクロロメチル基、パーフルオロエチル基、2,3−ジクロロプロピル基、1,2−ジフルオロヘキシル基、パーフルオロペンチル基、パークロロオクチル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルブチル基、トリエチルシリルブチル基、トリメチルメトキシエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシデシル基、ナフトキシエチル基、ベンゾキシペンチル基、アセチル基、アセチルアミド基等が挙げられる。
【0025】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0026】
得られるウレタン樹脂の強度の観点から、これらR〜Rのうち、好ましい組み合わせは、R〜Rのうち、隣接した炭素原子に結合したRとRの2つが結合してアルキレン基として2つの炭素原子とともに脂環を形成し、残り2つのRとRが水素原子の組み合わせである。
さらに好ましい組み合わせは、RとRが結合してブチレン基として全体としてシクロヘキサン環を形成したものである[製造例2の(C−2)参照)]。
【0027】
一般式(1)中および一般式(2)中のR〜R12は、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、そのうちの隣接した2つが結合して環を形成していてもよい。
【0028】
脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R〜R例示と同じものが挙げられる。
【0029】
一般式(1)中および一般式(2)中のR〜R12は、そのうちの任意の2つが結合して環を形成していてもよく、R〜R12のうち、隣接した炭素原子に結合した任意の2つが結合して、2価の炭化水素基として3員環〜7員環骨格を形成する場合や、さらに、この2価の炭化水素基自身が芳香族環や脂環で一部置換されている場合が挙げられる。
〜R12のうちの任意の2つが結合した2価の炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0030】
得られるウレタン樹脂の強度の観点から、これらR〜R12のうち好ましい組み合わせは、R、R、R10およびR12のすべてが、tert−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基またはネオペンチル基で、残りがすべて水素原子の組み合わせである。特に好ましい組み合わせは、R、R、R10およびR12のすべてが、tert−ブチル基またはネオペンチル基で、残りがすべて水素原子の組み合わせである。最も好ましい組み合わせは、R、R、R10およびR12のすべてが、tert−ブチル基で、残りがすべて水素原子の組み合わせである。
【0031】
一般式(2)中のR13〜R16は、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を表し、そのうちの隣接した2つが結合して環を形成していてもよい。
これらはR〜Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
これらのうち好ましい組み合わせは、R13〜R16のいずれもが水素原子、またはR13〜R16のひとつだけがメチル基で残りが水素原子の組み合わせである。最も好ましくはR13〜R16のいずれもが水素原子の組み合わせである。
【0033】
式中のMは、周期律表第3〜11族元素
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を表し、Sc、Ti、V、Cr、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Y、Zr,Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf,Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Auが挙げられる。反応性の観点からCo、Cr、VおよびMnが好ましい。
【0034】
式中のLは配位子を表し、nは1または2の整数を表す。nが2の場合は、2つの配位子Lは同一の配位子でも異なった種類の配位子でもよい。
【0035】
本発明のサレン錯体(C)の触媒の配位子としては、アニオン性または中性の配位子が挙げられる。
本発明のサレン錯体(C)の触媒の配位子として好ましいものとしては、酢酸イオン、ヘキサン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオンなどの有機カルボン酸アニオン;硝酸イオン、リン酸イオン、PF6、BF4などの無機アニオン;水、プロピレングリコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
これらの中で好ましいのは、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピレングリコラート、PF6、BF4である。
【0036】
本発明のサレン錯体(C)は公知の合成法により得ることができ、例えば、Journal of the American Chemical Society Vol 127 No33、11567頁(2005年発行)や、Science Vol277、936頁(1997年発行)の方法で合成することができる。
【0037】
サレン錯体(C)を用いてアルキレンオキサイド(a)の開環付加反応をする方法としては、通常の開環付加反応と同様の方法で行うことができ、例えば、次の方法が挙げられる。
(1)ラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)を、活性水素含有化合物(b)、サレン錯体(C)、及び必要により使用する溶媒の混合物(あらかじめ反応温度に調製する)に少しずつ加えて開環付加反応させる方法、
(2)ラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)、サレン錯体(C)及び必要により使用する溶媒を一度に混合して、反応温度を調整する方法、
(3)ラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)をサレン錯体(C)で開環付加反応させて得た生成物をそのまま反応容器内に残し、さらにラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)の種類を替えて開環付加反応させる方法
等が挙げられる。
【0038】
また、開環付加反応の後、鉱酸、塩酸、有機酸で処理し分液することで触媒を除去することができる。
【0039】
また、触媒除去処理をした後の開環付加反応物をアミン又は水酸化アルカリ金属等で加水分解することで結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)を得ることができる。
【0040】
反応は、通常−50℃〜200℃で行うことができ、得られたウレタン樹脂の強度の観点から好ましくは−50℃〜150℃、さらに好ましくは−50℃〜120℃である。
サレン錯体(C)の使用量はアルキレンオキサイド(a)の重量に基づいて、0.001〜30重量%である。
【0041】
触媒使用量が少ない場合は、得られるポリオキシアルキレンポリオール(A)の分子量が高くなりすぎ、またポリオキシアルキレンポリオール(A)の生産速度が遅くなる点で好ましくない。一方、触媒自体の価格が高いため、触媒の使用量を多くすると、ポリオキシアルキレンポリオール(A)を製造する際のコストアップにつながる点で好ましくない。
従って、目的とするポリオキシアルキレンポリオール(A)の分子量に合わせて、ふさわしい触媒使用量を適宜選択する。
【0042】
サレン錯体(C)を用いてラセミ体のアルキレンオキサイド(a−2)を開環重合する場合に、助触媒として、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリエチルアルミニウム及びトリメチルアルミニウム等)及びトリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン等)等の助触媒を使用することもできる。
【0043】
助触媒を使用する場合、助触媒の使用量は、本発明の金属触媒の重量に基づいて、0.001〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5重量%、特に好ましくは0.005〜0.1重量%である。
【0044】
ランタノイド系錯体(D)としては、例えば特開平11−12353記載のサマリウムトリフルオロアセチルアセトナート、ネオジウムトリフルオロアセチルアセトナート等が挙げられる。
ランタノイド系錯体(D)の使用量はアルキレンオキサイド(a)の重量に基づいて、通常0.001〜30重量%である。
【0045】
バイメタルμ−オキソアルコキサイド(E)としては、例えば特表2001−521957記載のジ−オキソ−[ビス(1−メチルエチルオキシ)−アルミニウム]−亜鉛等が挙げられる。
バイメタルμ−オキソアルコキサイド(E)の使用量はアルキレンオキサイド(a)の重量に基づいて、通常0.05〜60モル%である。
【0046】
これら触媒のうち、得られる結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)のアイソタクティシティーの観点から、好ましくはサレン錯体(C)である。
【0047】
これら結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)の開環重合方法のうち、得られる結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)のアイソタクティシティーの観点から、好ましくは(R)−プロピレンオキサイドまたは(S)−プロピレンオキサイドを、通常のアルキレンオキサイドの重合で使用される触媒で開環重合させる方法、およびラセミ体のプロピレンオキサイドをサレン錯体(C)で開環重合させる方法である。
(R)−プロピレンオキサイドまたは(S)−プロピレンオキサイドを、通常用いられるKOHで重合した場合には、全体の約5%の立体配置が反転する[例えば、「開環重合(I)」(三枝武夫著、1971年出版)の146頁の記載を参照。]。この点で、さらに好ましいのは、ラセミ体のプロピレンオキサイドをサレン錯体(C)で開環重合させる方法である。
【0048】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)のアイソタクティシティーは、得られるウレタン樹脂の機械強度の観点から、50%以上であり、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0049】
アイソタクティシティーはMacromolecules、vol.35、p2389、2002年に記載の方法で算出することができ、以下のようにして求める。
測定試料約30mgを直径5mmの13C−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加えて溶解させ、分析用試料とした。ここで重水素化溶媒は、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
【0050】
13C−NMRの3種類のメチン基由来の信号は、それぞれシンジオクチック値(S)75.1ppm付近とヘテロタクチック値(H)75.3ppm付近とアイソタクチック値(I)75.5ppm付近に観測される。アイソタクティシティーを次の計算式(1)により算出する。
アイソタクティシティー=[I/(I+S+H)]×100 (1)
但し、式中、Iはアイソタクチック信号の積分値;Sはシンジオクチック信号の積分値;Hはヘテロタクチック信号の積分値である。
【0051】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)の数平均分子量(以下、Mnと記載する。)は、通常Mn1000〜50,000である。得られるウレタン樹脂の機械強度の観点から好ましくはMn1500〜50000、さらに好ましくはMn2000〜50000、最も好ましくは2000〜10000である。
【0052】
このMnは、水酸基価によって算出される。
水酸基価(mgKOH/g)は、JISK−1557(1970年版)に準拠する方法によって行う。Mnは以下の計算式(2)で算出できる。
Mn=(F×56,100)/水酸基価 (2)
ただし、Fは結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)1分子中に含有される水酸基の数を表す。
【0053】
ポリイソシアネート(B)は、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基またはオキサゾリドン基含有変性物など);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0054】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノジフェニルメタン{ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20%)の3官能以上のポリアミンとの混合物}のホスゲン化物;ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)など]、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数4〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0057】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDIおよびひまし油変性MDIなどが挙げられる。
【0059】
これらのうちで好ましいものは6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネートおよび炭素数4〜16の脂環式ジイソシアネートであり、とくに好ましくは2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。
【0060】
本発明のウレタン樹脂組成物は、従来と同様の方法で重合でき、ウレタン化用触媒の存在下または存在なしに重合することができる。
【0061】
本発明において必要により使用されるウレタン化用アミン触媒は、ポリウレタン反応に通常使用されるアミン系触媒であり、例えば、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(カルボン酸塩)などが挙げられる。
【0062】
さらに必要により金属触媒を使用することができる。金属触媒としては、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛などが挙げられる。触媒の使用量は結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)の重量に基づいて、好ましくは0.001〜6%であり、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0063】
また、ウレタン樹脂組成物は、従来と同様の方法で発泡剤を用いてポリウレタンフォームとすることもできる。
【0064】
発泡剤としては、水等を使用することができる。
【0065】
ウレタン樹脂の製造においては、必要により、さらに以下に述べるようなその他の添加剤を用いてもよい。
例えば、着色剤(染料、顔料)、難燃剤(リン酸エステル類、ハロゲン化リン酸エステル類など)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、抗酸化剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系など)などの通常用いられる添加剤の存在下で反応させることができる。
【0066】
このウレタン樹脂をコーティング剤として使用する際には、ポリオレフィン系ゴムやポリオレフィン等との接着性に優れる等の特徴を有し、ウレタンフォーム、ウレタンエラストマー、ウレタンコーティング材等さまざまな応用が可能である。ウレタンフォームとしては、自動車用クッション材、自動車用バック材等、ウレタンエラストマーとしては注型ポッティング材、コーティング材等としては接着剤・塗料等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
<製造例1>
1,2−ジアミノベンゼン10.8g(100mmol)、3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド50g(214mol)とエタノール40mLを、還流管を供えた1Lナスフラスコに入れた。攪拌しながら還流を4時間行なった。還流後室温にて44時間放置し、その後ろ過を行ない、エタノール1Lで洗浄した。
得られた固体を24時間真空乾燥し、黄褐色結晶の中間体(X1−1)を41g得た(75mmol、収率75%)。なお、同定は、H-NMR、C-NMRにより行った。
【0069】
窒素雰囲気下、中間体(X1−1)40g(73mmol)、酢酸コバルト4水和物13.1g(52mmol)とエタノール2Lを、還流管を供えた4Lナスラスコに入れた。攪拌しながら還流を2時間行なった。室温まで冷却し、析出している固体を減圧濾過し、メタノール2000mLで洗浄した。ジクロロメタン400mLに固体を溶解させ、ヘキサン10Lに入れた。0℃に冷却し、24時間放置した。析出した固体を減圧濾過し、ヘキサン1Lで洗浄し、エンジ色結晶の中間体(X1−2)を29g(48.4mmol、収率93%)得た。同定は、質量分析法(以下、MSと略記する。)で行った。
【0070】
中間体(X1−1)27.2g(45.1mmol)、酢酸100mL(1750mmol)とジクロロメタン200mLを1Lナスフラスコに入れ、1時間攪拌した。ロータリーエバポレーターで60℃で溶媒を除去後、ペンタン200mLを使って減圧濾過し、赤褐色の本発明のサレン錯体(C−1)を29g(45.7mmol、収率97%)得た。同定は、MSで行なった。MSでの分子量から2個の配位子Lは、それぞれ酢酸イオンと水であった。
サレン錯体(C−1)の推定化学構造式を化学式(3)として示す。
【0071】
【化3】

【0072】
<製造例2>
1,2−ジアミノベンゼンの代わりに、1,2−ジアミノシクロヘキサン11.4g(100mmol)を用いた以外は、同様に反応を行い、黄褐色結晶の中間体(X2−1)を39g(72mmol、収率72%)得た。同定は、MSで行なった。
【0073】
中間体(X1−1)の代わりに中間体(X2−1)を39.8g(73mmol)を用いた以外は、同様に反応を行い、エンジ色結晶の中間体(x2−2)を28g(4.6mmol、収率63%)得た。同定は、MSで行なった。
さらに酢酸を反応させ、中間体(X1−2)の代わりに、中間体(x2−2)27.2g(45.1mmol)を用いた以外は、同様に反応を行い、赤褐色の本発明のサレン錯体(C−2)を27g(41mmol、収率91%)得た。同定は、MSで行なった。MSでの分子量から2個の配位子Lは、それぞれ酢酸イオンと水であった。
サレン錯体(C−2)の推定化学構造式を化学式(4)として示す。
【0074】
【化4】

【0075】
<製造例3>
窒素雰囲気下、製造例1で得られたサレン錯体(C−1)を18g(27mmol)、ラセミ体プロピレンオキサイドを114g(1.97mol)、トルエン1Lを2Lナスフラスコに入れ、0℃で2時間攪拌した。0.1mol/Lの塩酸を1L加えると沈殿が生成し、ジクロロメタンを5L加え溶解させた。分液を行った後、有機層から溶媒をエバポレーターで留去した。析出した固体を40℃のアセトン4Lに溶解し、0℃で24時間冷却した。固体を濾過し、得られた固体に0.1mol/LのKOH−メタノール溶液を1L入れ、80℃で2時間攪拌した。その後0.1mol/Lの塩酸で中和し、トルエンを1L入れた。水1Lを加え、分液を3回行なった。トルエン層から溶媒をエバポレータで除去することで結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−1)を100g得た。
アイソクティシティーは99%、Mnは4200、水酸基価は26.7mgKOH/g、融点は56℃であった。
【0076】
<製造例4>
窒素雰囲気下、製造例2で得られたサレン錯体(C−2)を36g(54mmol)、ラセミ体プロピレンオキサイドを228g(3.94mol)、トルエン2Lを5Lナスフラスコに入れ、0℃で2時間攪拌した。0.1mol/Lの塩酸を2L加えると沈殿が生成し、ジクロロメタンを7L加え、溶解させた。分液を行い、有機層から溶媒をエバポレーターで留去した。析出した固体を40℃のアセトン6Lに溶解し、0℃で24時間冷却した。固体を濾過し、得られた固体に0.1mol/LのKOH−メタノール溶液を1L入れ、80℃で2時間攪拌した。その後0.1mol/Lの塩酸で中和し、トルエンを1L入れた。水1Lを加え、分液を3回行なった。トルエン層から溶媒をエバポレータで除去することで結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−2)を100g得た。
アイソクティシティーは99%、Mnは8000、水酸基価は14.0mgKOH/g、融点は55℃であった。
【0077】
<製造例5>
(S)−プロピレンオキサイド120g(ALDRICH製)とKOH28gを1Lのオートクレーブに入れ、48時間室温で攪拌させた。その後50℃に昇温し、トルエンを100g、水100gを加え分液を3回した。その後、0.1mol/Lの塩酸で中和、水100gを加え分液を3回行なった。ろ液から溶媒をエバポレーターで留去することで白色の結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)を100g得た。
アイソクタクティシティーは93%、Mnは3900、水酸基価は28.8mgKOH/g、融点は53℃であった。
【0078】
<実施例1>
窒素雰囲気下、結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)91.92g(0.024mol)とエチレングリコール8.08g(0.130mol)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート39.23g(0.157mol)、ジラウリル酸ジブチル第二スズ0.0069g、DMF325gを1lナスフラスコに入れた。60℃で16時間攪拌した。重量平均分子量97,000(ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーション法による、以下同様)のウレタン樹脂溶液を得た。
【0079】
<実施例2>
結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)の代わりに結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−1)91.82g(0.022mol)、エチレングリコールの仕込み量を8.18g(0.132mol)にした以外は実施例1と同様の方法で重合し、重量平均分子量10,000のウレタン樹脂溶液を得た。
【0080】
<実施例3>
結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)の代わりに結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−2)91.17g(0.011mol)、エチレングリコールの仕込み量を8.83g(0.142mol)にした以外は実施例1と同様の方法で重合し、重量平均分子量12,000のウレタン樹脂溶液を得た。
【0081】
<比較例1>
結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)の代わりに、通常のポリプロピレングリコール(ニューポールPP4000、Mn:4000、水酸基価:28.1、三洋化成工業製、アイソタクティシティー25%)91.89g(0.023mol)、エチレングリコールの仕込み量を8.11g(0.131mol)にした以外は実施例1と同様の方法で重合し、重量平均分子量10,000のウレタン樹脂溶液を得た。
【0082】
<比較例2>
結晶性ポリアルキレンオキサイドポリオール(A−3)の代わりにポリブタンジオールアジペートエステルポリオール(サンエスター4640、Mn:4000、水酸基価:28.1、三洋化成工業(株)製)91.89g(0.023mol)、エチレングリコールの仕込み量を8.11g(0.131mol)にした以外は実施例1と同様の方法で重合し、重量平均分子量10,000のウレタン樹脂溶液を得た。
【0083】
実施例1〜3、比較例1、2のウレタン樹脂溶液にさらにDMFを加えて、20重量%ウレタン樹脂溶液に希釈した後、200mm×200mmの型に深さ1mm注ぎ入れ、60℃の循風乾燥器に6時間入れ、DMFを揮散させた。その後、60℃の減圧度10mmHgの減圧乾燥器に3時間入れて完全にDMFを揮散させ、200mm×200mm×0.2mmのウレタン樹脂シートを得た。
【0084】
<動摩擦係数の測定>
得られたシートの耐摩擦性として、動摩擦係数を以下の方法で測定した。
表面試験機KES−FB−4S(カトーテック(株)社製)を用い、KES(Kawabata−Evaluation−System)法に従い、20mm×20mm×0.2mmのシートを使って、1mm/s、荷重50gfで測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
<100%モジュラス、引張強度、破断伸びの測定>
得られたシートの物性として、100%モジュラス、引張強度、破断伸びを、いずれもJIS K−7127(1999年版)に記載の方法に従い、試験片タイプ5の試験片を使って、200mm/分で測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の実施例1〜3と比較例1、2を比較すると、明らかに結晶性ポリオキシアルキレンポリオールを原料としたウレタン樹脂の方が、ポリエステルポリオールやアイソタクティシティーの低い通常のポリプロピレングリコールよりも動摩擦係数が小さく、100%モジュラス、引張強度が高い。従って、本発明のウレタン樹脂組成物は、良好な耐摩擦性(摺動性)、引張強度等の機械強度を奏するといえる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のウレタン樹脂組成物は、良好な耐摩擦性(摺動性)、引張強度等の機械強度を有し、化学構造上加水分解性のエステル基などを分子内に有しないため、耐水性が良好であり、接着剤、塗料、自動車用クッション材、自動車用バック材、注型ポッティング材、電子式複写機のクリーニングブレード等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタクティシティーが50%以上である結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を反応させて得られることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
該結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)の数平均分子量が2,000〜50,000である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
アイソタクティシティーが95%以上である請求項1または2記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
該結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)が、下記一般式(1)または(2)で示されるサレン錯体(C)の触媒の存在下で、アルキレンオキサイド(a)を開環重合させて得られるポリオールである請求項1〜3いずれか記載のウレタン樹脂組成物。
【化1】

(式中、R〜Rは、水素原子、脂肪族、脂環族、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、そのうちの任意の2つが結合して環を形成していてもよく、その炭素原子に結合する水素原子が反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。R〜R12は、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族、脂環族、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、そのうちの隣接した2つが結合して環を形成していてもよい。Mは第3〜11族元素から構成される
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を表し、Lは配位子を表し、nは1または2の整数を表す。nが2のとき、2つの配位子Lは同一の配位子でも異なった配位子でもよい。)
【化2】

(式中、R13〜R16は、水素原子、脂肪族、脂環族、芳香族もしくは芳香脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、そのうちの任意の2つが結合して環を形成していてもよく、その炭素原子に結合する水素原子が反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。R〜R12、M、L、nは、それぞれ式(1)の記号と同じものを表す。)
【請求項5】
該結晶性ポリオキシアルキレンポリオール(A)が結晶性ポリオキシプロピレンポリオールである請求項1〜4いずれか記載のウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−208348(P2008−208348A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17155(P2008−17155)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】