説明

ウレタン樹脂組成物

【課題】 可使時間が長く、硬化時間が短く、且つ耐熱性、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることのできるウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、(C)可塑剤、(D)錫触媒を含有するウレタン樹脂組成物。前記(D)錫触媒の含有量が、(A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート及び(C)可塑剤の総量100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可使時間が長く、且つ硬化時間が短く耐熱性のあるウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2液タイプのウレタン樹脂組成物は、優れた絶縁特性及び可撓性を有しているため、各種絶縁材料として電気電子部品等に広く用いられている。これら電気電子部品は、年々小型軽量化及び、動作温度の上昇傾向にあるとともに、動力に電力を用いた自動車等が実用化されつつある中で、高出力化の傾向にある。こうした電気電子部品の高性能化に伴って、電気電子部品に使用されるウレタン樹脂組成物に対しては、耐熱性の向上が要求されている。また、2液タイプのウレタン樹脂組成物では、主剤、硬化剤を混ぜ合わせた時から増粘するため、短時間で取り扱いが困難になる。一方、粘度の増粘を起こりにくくする事で取り扱い可能な可使時間が長くなるが、硬化時間が長くなる傾向にある。そこで、電気電子部品に絶縁処理を施す際の作業性の観点から、長い可使時間と硬化時間の短時間化が要求されている。
【0003】
従来、2液タイプのウレタン樹脂組成物の場合、主剤であるポリヒドロキシル化合物(ポリオール)成分と、硬化剤であるポリイソシアネート成分を混合して硬化させる際に、硬化性、乾燥性の促進の為、硬化触媒を使用している。従来使用されている硬化触媒としては有機金属化合物、例えばジブチル錫ジラウレートや第三級アミン塩、例えばトリエチレンジアミンがある。しかし、これらの触媒では硬化性を高める為に多量に使用した場合、ウレタン組成物を配合後に短時間でゲル化を生じたり、外観が低下するなどの欠点が有り、実用に耐えないものであった。
【0004】
硬化性と可使時間の改良の為には、特開昭54−153900号公報の芳香族カルボン酸を使用して可使時間の延長を測る方法や、特開昭56−26962号公報の芳香族カルボン酸化合物と有機錫化合物を使用して硬化性と可使時間の延長を計る方法が知られているが、80℃以下で20分程度の硬化条件では十分な硬化性を得る事はできなかった。また、例えば特開平2−151651号公報などには、有機錫モノカルボン酸塩と含硫黄有機カルボン酸化合物を使用する方法が開示されているが、この方法ではウレタン樹脂が着色を起こす欠点があった。特開平9−279092号公報においては、オクチル酸亜鉛化合物単独、または有機錫化合物との併用をウレタンの硬化触媒として用いる方法があるが、十分な硬化性が発現するには比較的多量のオクチル酸亜鉛化合物を使用しなければならない欠点があり、安全上好ましくはないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−153900号公報
【特許文献2】特開昭56−26962号公報
【特許文献3】特開平2−151651号公報
【特許文献4】特開平9−279092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、可使時間が長く、硬化時間が短く、且つ耐熱性、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることのできる2液タイプ型ウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、(C)可塑剤、(D)錫触媒を含有する、ウレタン樹脂組成物を提供する。
【0008】
本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート及び(C)可塑剤を含有することで、耐熱性、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることができる。
【0009】
さらに、本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(D)錫触媒の含有量は、上記(A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、(C)可塑剤の総量100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部であることが好ましい。(D)錫触媒の含有量が上記範囲内であることにより、ウレタン樹脂組成物における長い可使時間と、硬化時間の短時間化が可能であると共に、耐熱性、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、長い可使時間と、硬化時間の短時間化が可能であるため作業性に優れ、また、耐熱性、可撓性に優れるため電気電子部品等の絶縁処理に適し、更に絶縁性にも優れるウレタン樹脂硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明のウレタン樹脂組成物は、(A)水添ポリオレフィンポリオール(以下、場合により「(A)成分」という)、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートト(以下、場合により「(B)成分」という)、(C)可塑剤(以下、場合により「(C)成分」という)、及び(D)錫触媒(以下、場合により「(D)成分」という)、を含有することを特徴とする。以下、これらの構成要素について、順次に説明する。
【0013】
<(A)水添ポリオレフィンポリオール>
本発明のウレタン樹脂組成物の樹脂成分を構成する(A)水添ポリオレフィンポリオールは、1分子中に1個又はそれ以上の水酸基を含有するものである。かかる水添ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水添ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0014】
上記水添ポリオレフィンポリオールの中でも、耐クラック性、寿命の、観点から、水添ポリイソプレンジオール又は水添ポリブタジエンジオールが好ましい。さらに、商業的に入手可能な観点から、水添ポリイソプレンポリオールであるエポール(出光石油化学株式会社製、商品名)がより好ましい。
【0015】
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、低粘度化や硬化物の可撓性をより向上できる観点から、水添ポリオレフィンポリオールと共に、低分子ポリオールを含有しても良い。低分子ポリオールの例としては、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、N,N−ビス−2−ヒドロキシプロピルアニリン、N,N′−ビスヒドロキシイソプロピル−2−メチルピペラジン、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン−アルキレンオキサイド共重合ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、また、これらの化合物の水素添加化合物等が挙げられる。
【0016】
(A)水添ポリオレフィンポリオールと共に低分子ポリオールを含有する場合の低分子ポリオールの含有割合は、硬化性、耐熱性の観点から、(A)成分全量を基準として、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましく、3〜5質量%であることが特に好ましい。
【0017】
上述したポリオール化合物は、1種を単独で使用できる他、適当な2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】
<(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート>
本発明のウレタン樹脂組成物の樹脂成分を構成する(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有するものである。
本発明で用いるイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートは、公知の反応で得られる。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートは、HDI又はHDIの部分ウレタンプレポリマーを、イソシアヌレート化反応を経て、未反応のHDIを除去することで得られるものである。例えば、イソシアネート化合物にイソシアヌレ−ト化触媒である第3級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、第3級アルキルフォスフィン類、アセチルアセトン金属塩類、各種有機酸の金属塩類等を単独使用あるいは併用し、必要に応じて助触媒、例えばフェノ−ル性ヒドロキシル基含有化合物、アルコール性ヒドロキシル基含有化合物等を用い、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の反応温度で溶剤不存在下又は常用の溶剤、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等の存在下において行われる。反応後、停止剤である例えばリン酸、パラトルエンスルホン酸メチル、硫黄等を使用することにより、触媒を不活性化し反応停止させてもよい。上記のHDIの部分ウレタンプレポリマーは、水酸基に対して過剰量のHDIと、低分子グリコールをウレタン化反応させて得られるものであり、その仕込みモル比は、HDI:低分子グリコール=5:1〜100:1が好ましい。また、低分子グリコールは、得られるポリイソシアネートの相溶性や求めるポリイソシアネートのイソシアネート含量を考慮すると、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0019】
本発明で使用されるイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略)から誘導される末端にイソシアネート基を有するイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが使用される。これらの具体例としては旭化成工業株式会社製のデュラネートTPA−100、同TKA−100、同TSA−100、同TSS−100、同TSE−100、同TLA−100;住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールN3390;日本ポリウレタン株式会社製のコロネートEH;武田薬品工業株式会社製のタケネートD170N;大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製のバーノックDN980、などがある。
【0020】
また、上記ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(B)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、上記(A)ポリオール化合物の水酸基1当量に対し、0.6〜1.8当量の範囲となる含有量で好適に用いられる。(B)ポリイソシアネート化合物の具体的な含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることが特に好ましい。この含有量が5質量%未満であると、硬化不良になりやすくなる傾向があり、70質量%を超える場合でも硬化不良になりやすくなる傾向がある。
【0022】
<(C)可塑剤>
本発明のウレタン樹脂組成物に用いられる(C)可塑剤は、ウレタン樹脂硬化物の可撓性をより向上できる観点から、水酸基を有しない可塑剤が好適である。この水酸基を有しない可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタレート化合物;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル;ポリ−α−オレフィン等のオレフィン系可撓化材、フェノールまたはクレゾールのアルキルスルホン酸エステル、二塩基酸(例えばフタレートエステル)のジアリールエーテル、ポリアルキレングリコールのベンゾエートなどが挙げられる。トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステルは、それぞれTPP、TCP、CDPとして大八化学工業株式会社から商業的に入手可能である。
【0023】
これらの中でも、(C)可塑剤としては、フタレート化合物がタック性の観点から好ましい。また、水素添加したものが耐候性等の安定性に好ましく、水素添加型ポリ−α−オレフィン及びポリ−α−オレフィンが、(A)成分と(B)成分との相溶性向上、安定性、硬化性、安全性等の観点から特に好ましい。かかる可塑剤の市販品としては、例えば、出光石油化学株式会社製の水素添加型ポリ−α−オレフィン(商品名「PAO−5010」)、INEOS社製のポリ−α−オレフィン(商品名「DURASYN」)等を挙げることができる。これらの水酸基を有しない可塑剤は、1種を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記(C)可塑剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準として、5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。この含有量が5質量%未満であると、可撓性が低下する傾向になり、90質量%を超えるとベタツキが大きくなり、実用上使用し難くなる傾向にある。
【0025】
<(D)錫触媒>
本発明のウレタン樹脂組成物に用いる(D)錫触媒は、モノアルキルトリス錫脂肪酸塩、ジアルキル錫ジ脂肪酸塩等が挙げられる。モノアルキルトリス錫脂肪酸塩、ジアルキル錫ジ脂肪酸塩として、具体的な例としては以下のものがあるが、これらに限定されるものではない。
モノアルキル錫トリス脂肪酸塩としては、モノメチル錫トリ酢酸塩、モノメチル錫トリス(ブタン酸)塩、モノメチル錫トリス(オクタン酸)塩、モノメチル錫トリス(デシル酸)塩、モノメチル錫トリス(オクタデカン酸)塩、モノブチル錫トリス(ブタン酸)塩、モノブチル錫トリス(オクタン酸)塩、モノブチル錫トリス(デシル酸)塩、モノブチル錫トリス(オクタデカン酸)塩、モノオクチル錫トリス(ブタン酸)塩、モノオクチル錫トリス(オクタン酸)塩、モノオクチル錫トリス(デシル酸)塩、モノオクチル錫トリス(オクタデカン酸)塩などが挙げられる。
【0026】
ジアルキル錫ジ脂肪酸塩としては、ジメチル錫ジ(ブタン酸)塩、ジメチル錫ジ(オクタン酸)塩、ジメチル錫ジ(ドデカン酸)塩、ジメチル錫ジ(デシル酸)塩、ジブチル錫ジ(ブタン酸)塩、ジブチル錫ジ(オクタン酸)塩、ジブチル錫ジ(デシル酸)塩、ジブチル錫ジ(ドデカン酸)塩などがある。
【0027】
上記(D)錫触媒の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部を基準として、0.0001〜0.1質量部であることが好ましく、0.0002〜0.05質量%であることがより好ましく、0.0005〜0.05質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.0001質量部未満であると、硬化時間が長くなり、0.1質量部を超えると可使時間が短くなり、実用上使用し難くなる傾向にある。
【0028】
<その他の成分>
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じてシラン系、アルミ系あるいはチタン系等のカップリング剤を添加することができる。ウレタン樹脂組成物にカップリング剤を添加することにより、樹脂成分と接着させる機材との界面の濡れ性を向上させ、耐湿特性を向上させることができる。
【0029】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリンシラン、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアジンシラン等のアミノシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロルシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類等が挙げられる。
【0030】
また、チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等が挙げられる。
【0031】
また、アルミネートカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0032】
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じてカップリング剤成分以外のアニオン系、カチオン系、両性又はノニオン系の界面活性剤を添加することができる。
【0033】
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて赤リン、ヘキサブロモベンゼン、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、三酸化アンチモン等の難燃剤、ベンガラ、酸化第2鉄、カーボン、チタンホワイト等の着色剤、シリコーン系消泡剤、酸化防止剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0034】
本発明のウレタン樹脂組成物の粘度(25℃)は、作業性の観点から、主剤、硬化剤を組み合わせた時の粘度が1〜50Pa・sであることが好ましく、1〜30Pa・sであることがより好ましく、1〜15Pa・sであることが特に好ましい。
【0035】
ウレタン樹脂組成物の粘度(25℃)は、有機溶剤を加えることで低くすることは可能であるが、有機溶剤を用いると、熱硬化する際に気泡が発生し、その気泡が硬化物中に残った場合、絶縁性が低下する要因となる。そのため、本発明のウレタン樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、その含有量は、有機溶媒を含めたウレタン樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることが特に好ましい。なお、本発明のウレタン樹脂組成物は、有機溶媒を添加することなく十分に低粘度化することが可能である。したがって、本発明のウレタン樹脂組成物は、作業性に優れるとともに、硬化物中への気泡の発生を十分に抑制することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0037】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
表1に示す配合組成及び配合量で各成分を配合し、実施例1〜4及び比較例1〜3のウレタン樹脂組成物を調製した。
【0038】
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
<(A)水添ポリオレフィンポリオール>
(a)水添ポリイソプレンポリオール:エポール(商品名、出光石油化学株式会社製)
<(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート>
(b)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート:TSE−100(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、イソシアネート価:12.0%)
(c)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート:TSS−100(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、イソシアネート価:17.6%)
(d)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート:TSA−100(商品名、旭化成ケミカルズ社製、イソシアネート価:20.6%)
(e)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート:D−170N(商品名、三井化学株式会社製、イソシアネート価:20.8%)
(f)2官能型ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート:D−201(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、イソシアネート価:15.8%)
(g)ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート:デスモジュールW(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製、イソシアネート価:31.8%)
(h)4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート:ミリオネートMTL(商品名、日本ポリウレタン株式会社製、イソシアネート価:21.6%)
<(C)可塑剤>
(i)炭化水素系可塑剤:DURASYN(商品名、INEOS社製、ポリ−α−オレフィン)
<(D)錫触媒>
(j)ジブチル錫ジラウレート:L−101(商品名、東京ファインケミカル株式会社製)
【0039】
(硬化性の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、直径60mmの金属シャーレ中に30g注入し、110℃で1時間硬化させて硬化物を得た。25℃の測定温度まで放置した後、表面タック性の有無を測定した。その結果を表1に示した。この際、表面タックが無いものは硬化性が良好と言える(「○」〜「△」)。表面タックが無いものを「○」、表面タックがややあるものを「△」、表面タックがあるものを「×」、未硬化状態に近いものを「未硬化」として評価した。
【0040】
(可使時間の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、25℃の測定温度に放置した。攪拌及び真空脱泡後のウレタン樹脂組成物について、25℃における初期粘度を、BL型粘度計を用いて測定した。その後、粘度を測定し続け、初期粘度の2倍になった時の時間を可使時間として測定した。その結果を表1に示した。
この値が60分以上であれば作業性が良好と言える。
【0041】
(硬度の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、直径60mmの金属シャーレ中に30g注入し、110℃で1時間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、金属シャーレから取り出し、23℃、48時間静置したものを試料とした。この試料の23℃における硬度を、高分子計器株式会社製のゴム硬度計A型を用いて測定した。その結果を表1に示した。この硬度の値が低いほど、硬化物の可撓性が高いことを意味し、硬度が40以下であれば、絶縁処理用の硬化膜として十分な可撓性を有していると言える。
【0042】
(透湿度の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗工し、約400μmの樹脂膜を形成した。これを110℃で1時間加熱し、23℃で24時間養生させて硬化物を得た。得られた硬化物をJIS C0208に準拠して透湿度を測定した。その結果を表1に示した。
【0043】
(絶縁性の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、110℃で1時間加熱し、23℃で24時間養生させて硬化物を得た。得られた硬化物を、JIS C2110に準拠して絶縁破壊試験を行い、これを絶縁性として評価した。その結果を表1に示した。
【0044】
(耐熱性の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、1Torrで5分間真空脱泡した後、直径60mmの金属シャーレ中に30g注入し、110℃で1時間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、金属シャーレから取り出し、23℃、48時間静置したものを試料とした。この試料を120℃、168時間静置させたものの形状変化の有無を確認した。これを耐熱性として評価した。その結果を表1に示した。評価前後で硬化物の形状変化が無いものは耐熱性が良好と言える。形状変化のないものを「○」、形状変化のあるものを「×」として評価した。
【0045】
【表1】

評価点:(優)○-△-×(劣)
【0046】
(f)2官能型ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネートを用いた比較例1、(g)ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネートを用いた比較例2の110℃で1時間の硬化条件では、硬化が遅く、表面のべたつきがあり十分に硬化しなかった。また、比較例3の(h)4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いた場合、硬化は十分であるが、可使時間が短い。これに対し、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートと(A)、(C)、(D)成分を含有する本発明では、硬化性と可使時間のバランスが取れ、硬度、透湿度、絶縁性において、MDIを使用した比較例3と同等の性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ポリオレフィンポリオール、(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、(C)可塑剤、(D)錫触媒を含有するウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)錫触媒の含有量が、前記(A)水添ポリオレフィンポリオール及び前記(B)イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、(C)可塑剤の総量100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−172071(P2012−172071A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35779(P2011−35779)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】