説明

ウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法

【課題】作業性および施工性に優れ、耐水性、強度および弾性に優れ、温度による影響を受け難く、塗膜層の仕上りが良好なウレタン樹脂複合材の硬化物の発泡倍率の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明は、酸化マグネシウム、および、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むウレタン樹脂組成物と、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含有し、水の含有量は、ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であるウレタン樹脂複合材を硬化してなるウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法であって、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、発泡倍率を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築を含む各種構造物の外壁用の塗材やコンクリート・モルタルの混和材、さらに、防水材や止水材およびシール材や接着材などの用途に用いられるウレタン樹脂複合材を硬化してなる硬化物の発泡倍率の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルション樹脂やラテックス樹脂およびアスファルト乳剤やウレタン樹脂は、土木建築を含む各種構造物の外壁用の塗材やコンクリート・モルタルの混和材、さらに、防水材や止水材およびシール材や接着材などの用途に用いられている。
【0003】
界面活性剤によって乳化されたエマルション樹脂を配合した高分子ラテックスに、加熱溶融したアスファルトを添加し、混合してなる全固形分が60〜90質量%のゴムアスファルト乳剤は、JIS A6021「建築用塗膜防水材」に制定されている。また、社団法人日本建築学会、2008年2月5日発行の「建築工事標準仕様書・同解説 JASS8 防水工事」には、ゴムアスファルト乳剤の室内防水仕様および地下外壁防水仕様として、L−GIとL−GUの2つの仕様が制定されている。また、社団法人公共建設協会、平成19年3月6日発行の「公共建設工事標準仕様書(建築工事編)平成19年度版」には、ゴムアスファルト系塗膜防水の種別および工程として、Y−1とY−2の2つの仕様が制定されている。
【0004】
アスファルトと高分子ラテックスを主成分とするゴムアスファルト乳剤は、特に乾燥硬化速度が遅いため、施工作業性が悪いばかりでなく、下地への密着性も低い。
【0005】
そこで、ゴムアスファルト乳剤の乾燥硬化速度を上げるため、ゲル化剤を添加したゴムアスファルト乳剤を施工面に吹付けて、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法や、ゴムアスファルト乳剤と凝固剤を別々のノズルから噴出し、空中でこれらを接触混合させながら施工面に吹き付けて、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法が開示されている。これらの防水工法は、ゴムアスファルト塗膜層を形成するにあたり、専用の施工機械が必要となるため、現場の規模による制約や吹付けミストの飛散などの問題があった。
【0006】
また、ゴムアスファルト乳剤に、セメントなどの水硬化性無機材料を添加して、常温で自硬する自硬型のゴムアスファルト乳剤とし、このゴムアスファルト乳剤を用いてゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法も開示されている。これは、アスファルト乳剤中の水分を、水硬化性無機材料の水和凝固反応に利用し、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法である。
【0007】
さらに、ゴムアスファルト乳剤に、0.5〜15.0質量%のポリイソシアネート化合物を含有する成分を添加し、ポリイソシアネート化合物と水を反応させて、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法や、全固形分が60〜90質量%のゴムアスファルト乳剤100質量部(固形分)に対して、ポリイソシアネート化合物0.05〜40質量部を添加し、そのゴムアスファルト乳剤により、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法などが挙げられる。
これらの防水工法では、ゴムアスファルト乳剤にポリイソシアネート化合物を添加することによって、ゴムアスファルト乳剤の硬化性が改善され、作業性および施工性に優れ、耐水性、強度および弾性が向上した、温度による影響を受け難いゴムアスファルト塗膜層が形成される。
【0008】
しかしながら、これらの防水工法では、ポリイソシアネート化合物によるゴムアスファルト乳剤の改質効果は高いものの、ポリイソシアネート化合物は、水と反応すると炭酸ガスを発生することから、ポリイソシアネート化合物の混合量が一定量を超えると、ゴムアスファルト塗膜層に、炭酸ガスに起因する気泡やピンホールが発生することが知られている。
【0009】
そこで、炭酸ガスに起因する気泡やピンホールの発生を抑制するために、ゴムアスファルト乳剤に対して、セメントなどの水硬化性無機材料とポリイソシアネート化合物を添加し、そのゴムアスファルト乳剤により、ゴムアスファルト塗膜層を形成する防水工法が検討されている。ところが、このようなゴムアスファルト乳剤は、揺変性が増加してセルフレベリング性が低下し、塗膜層の仕上りが悪くなるという問題があった。そこで、作業性および施工性に優れ、耐水性、強度および弾性が向上し、温度による影響を受け難く、かつ、塗膜層の仕上りが良好なゴムアスファルト塗膜材の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭50−76125号公報
【特許文献2】特開昭58−80318号公報
【特許文献3】特許第2992623号公報
【特許文献4】特許第3175069号公報
【特許文献5】特許第3516751号公報
【特許文献6】特許第3920500号公報
【特許文献7】特許第4042852号公報
【特許文献8】特許第4440416号公報
【特許文献9】特許第4440417号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】JIS A 6021 建築用塗膜防水材 2006
【非特許文献2】建築工事標準仕様書・同解説 JASS8 防水工事 第6版
【非特許文献3】公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成19年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、作業性および施工性に優れ、耐水性、強度および弾性に優れ、温度による影響を受け難く、塗膜層の仕上りが良好なウレタン樹脂複合材の硬化物の発泡倍率の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法は、酸化マグネシウム、および、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むウレタン樹脂組成物と、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含有してなり、前記水の含有量は、前記ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であるウレタン樹脂複合材を硬化してなるウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法であって、前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する前記酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、前記発泡倍率を制御することを特徴とする。
【0014】
前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する前記酸化マグネシウムのモル当量比を1.0以下とすることが好ましい。
【0015】
前記ウレタン樹脂組成物は、水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマー;水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のモノマーとを含む混合物;水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のプレポリマーとを含む混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0016】
前記酸化マグネシウムは、BET法による比表面積が30m/g以上、ヨウ素吸着量が30ヨードmg/g以上であることが好ましい。
【0017】
前記エマルション、前記ラテックスおよび前記アスファルト乳剤は、充填材を含有することが好ましい。
【0018】
前記エマルション、前記ラテックスおよび前記アスファルト乳剤の含有量は、前記ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、10〜600質量部であることが好ましい。
【0019】
前記アスファルト乳剤は、ストレートアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものであることが好ましい。
【0020】
前記アスファルト乳剤は、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレンおよびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーもしくはポリオレフィンで改質したアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものであることが好ましい。
【0021】
前記エマルションは、酢酸ビニル・ホモエマルション、酢酸ビニル・コポリエマルション、エチレン・酢酸ビニルエマルション、アクリルエマルション、アクリル・スチレンエマルション、塩化ビニリデンエマルション、水性ビニルウレタンエマルション、ウレタン系エマルションおよびエポキシ系エマルションからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
前記ラテックスは、スチレン・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ポリブタジエン・ラバー・ラテックス、ニトリル・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ブタジエン・スチレン・ビニル・ピリジン・ラテックス、メタクリレート・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ポリクロロプレン・ラバー・ラテックスおよびイソプレン・ラテックスバー・ラテックスからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法は、酸化マグネシウム、および、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むウレタン樹脂組成物と、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含有してなり、前記水の含有量は、前記ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であるウレタン樹脂複合材を硬化してなるウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法であって、前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する前記酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、前記発泡倍率を制御するので、得られる硬化物の発泡倍率および硬度を制御することができる。したがって、土木建築を含む各種構造物の防水材や止水材およびシール材などを含む幅広い用途に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法の実施の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0025】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法は、酸化マグネシウム、および、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むウレタン樹脂組成物と、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含有してなり、水の含有量は、ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であるウレタン樹脂複合材を硬化してなるウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法であって、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、発泡倍率を制御する方法である。
【0026】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法では、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比が1.0以下となるように、ウレタン樹脂組成物における酸化マグネシウムの含有量を調整することが好ましい。
ウレタン樹脂組成物における酸化マグネシウムの含有量が、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)が1.0となる割合では、ウレタン樹脂複合材硬化物は発泡しなくなる。ウレタン樹脂組成物における酸化マグネシウムの含有量が、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)が1.0未満となる割合では、ウレタン樹脂複合材硬化物は発泡する。このような現象を利用して、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、ウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率を制御する。
【0027】
ウレタン樹脂組成物は、(1)水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマー、(2)水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のモノマーとを含む混合物、(3)水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のプレポリマーとを含む混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
すなわち、本発明のウレタン樹脂複合材では、上記のウレタン樹脂組成物に含まれる、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のポリマー、ポリイソシアネート化合物のプレポリマー、または、ポリイソシアネート化合物のモノマーである。
【0028】
イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などなどの脂環式ポリイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類;上記各ポリイソシアネートをカルボジイミド変性またはイソシアヌレート変性したものなどが挙げられ、これらは単独または二種以上を混合して用いられる。これらの中でも、取り扱い易さの点からトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族ポリイソシアネート類が好適に用いられる。
【0029】
水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール、ポリエチレンアジペートグリコールなどのポリエステルグリコールなどが挙げられる。
【0030】
本発明によるウレタン樹脂複合材硬化物におけるウレタンプレポリマーは、上記の水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、上記のポリイソシアネート化合物(イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物)とを反応させることで得られ、分子末端に少なくとも2個のイソシアネート基を有するものである。
【0031】
酸化マグネシウムとしては、BET法による比表面積が30m/g以上、かつ、ヨウ素吸着量が30ヨードmg/g以上であるものが好ましい。また、酸化マグネシウムとしては、BET法による比表面積が60m/g以上であるものがより好ましく、取り扱い易さ、反応性、作業性、貯蔵安定性などの点から、BET法による比表面積が60〜150m/g以上であるものが特に好ましい。
BET法による比表面積が30m/g以上の酸化マグネシウムは、水と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応による発泡などを防止するという活性を有している。
【0032】
本発明によるウレタン樹脂複合材硬化物における水の含有量は、ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であり、5〜100質量部であることが好ましい。
水の含有量が300質量部を超えると、ウレタン樹脂複合材硬化物の強度が低下するとともに、硬化後の収縮が大きくなる。
【0033】
本発明によるウレタン樹脂複合材硬化物では、ウレタン樹脂組成物以外の成分として、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種が含まれている。
【0034】
エマルションとしては、全固形分が5〜90質量%であり、固形分以外の成分が水であるものが用いられる。
このようなエマルションとしては、酢酸ビニル・ホモエマルション、酢酸ビニル・コポリエマルション、エチレン・酢酸ビニルエマルション、アクリルエマルション、アクリル・スチレンエマルション、塩化ビニリデンエマルション、水性ビニルウレタンエマルション、ウレタン系エマルションおよびエポキシ系エマルションからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
アクリルエマルションとしては、具体的には、昭和高分子社製のポリゾールAP−1785(商品名、全固形分50.0%)が用いられる。
アクリル・スチレンエマルションとしては、具体的には、昭和高分子社製のポリゾールAE−850(商品名、全固形分55.0%)が用いられる。
エチレン・酢酸ビニルエマルションとしては、具体的には、電気化学工業社製のEVAテックス♯55N(商品名、全固形分55.0%)が用いられる。
エポキシ系エマルションとしては、具体的には、アデカ社製のEM1−60L(商品名、全固形分65.0%)が用いられる。
【0035】
ラテックスとしては、全固形分が5〜90質量%であり、固形分以外の成分が水であるものが用いられる。
このようなラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ラバー・ラテックス(SBRラテックス)、ポリブタジエン・ラバー・ラテックス(BRラテックス)、ニトリル・ブタジエン・ラバー・ラテックス(NBRラテックス)、ブタジエン・スチレン・ビニル・ピリジン・ラテックス(VPラテックス)、メタクリレート・ブタジエン・ラバー・ラテックス(MBRラテックス)、ポリクロロプレン・ラバー・ラテックス(CRラテックス)およびイソプレン・ラテックスバー・ラテックス(IRラテックス)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
具体的には、日本ゼオン社製のNipol LX438C(商品名、全固形分45.0%)が用いられる。
【0036】
アスファルト乳剤としては、全固形分が5〜90質量%であり、固形分以外の成分が水であるものが用いられる。
このようなアスファルト乳剤としては、ストレートアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものが挙げられる。
また、アスファルト乳剤としては、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレンおよびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーもしくはポリオレフィンで改質したアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものが挙げられる。
【0037】
このようなアスファルト乳剤としては、具体的には、ニチレキ社製のストレートアスファルトのクレー乳剤品(商品名、全固形分55.0%)、ニチレキ社製のストレートアスファルトのアニオン乳剤品(商品名、全固形分57.0%)、ニチレキ社製のストレートアスファルトのノニオン乳剤品(商品名、全固形分57.0%)、ニチレキ社製のストレートアスファルトのカチオン乳剤品(商品名、全固形分50.0%)などが用いられる。
【0038】
これらのエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤の含有量は、ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、10〜600質量部であることが好ましく、20〜300質量部であることがより好ましい。
【0039】
さらに、エマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤は、炭酸カルシウム、タルクなどの充填材を含有していてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
「ウレタンプレポリマー液の調製」
数平均分子量が1000のポリプロピレングリコール(商品名:サンニックスPP−1000、OH価112、三洋化成社製)と数平均分子量が1500のポリプロピレングリコール(商品名:サンニックスGP−1500、OH価110.7、三洋化成社製)を7:3(質量比)の割合で混合したものと、トリレンジイソシアネート(TDI−80)とを、モル当量比(NCO/OH)が2.05となるよう混合して混合液とし、この混合液を攪拌しながら加熱し、90℃で4時間反応させて、常温で流動性のあるウレタンプレポリマーを調製した。
このウレタンプレポリマーは、ポリプロピレングリコールにトリレンジイソシアネートが付加したものであって、イソシアネート基を6.47%含んでいた。
【0042】
「高活性酸化マグネシウムペーストの調製」
可塑剤(商品名:DINA、田岡化学社製)67質量部と、微粉末の高活性酸化マグネシウム33質量部とを混合して混合物とし、この混合物を回転数1000rpmで3分間高速攪拌し、高活性酸化マグネシウムペーストを調製した。
なお、高活性酸化マグネシウムとは、BET法による比表面積が75m/gである酸化マグネシウムのことである。
【0043】
「ウレタン樹脂組成物(I)の調製」
上記のウレタンプレポリマー100質量部に、上記の高活性酸化マグネシウムペーストを添加して攪拌し、ウレタン樹脂組成物(I)を調製した。
ただし、高活性酸化マグネシウムペーストを、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する高活性酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)が1.0となるように添加した。
このウレタン樹脂組成物は、その総量中、ウレタンプレポリマーを約85質量%含み、ウレタン樹脂組成物100質量部に対するイソシアネート基の含有量が5.50質量部であり、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、4.95質量部の高活性酸化マグネシウムを含むものであった。
このウレタン樹脂組成物を容器に入れて、23℃で1月間放置したが、容器内の底に高活性酸化マグネシウムの沈殿は殆ど認められず、保存安定性に優れていた。
【0044】
「ウレタン樹脂組成物(II)の調製」
上記のウレタンプレポリマー100質量部に、可塑剤(商品名:DINA、田岡化学社製)を添加して攪拌し、高活性酸化マグネシウムを含まないウレタン樹脂組成物(II)を調製した。
このウレタン樹脂組成物は、その総量中、ウレタンプレポリマーを約85質量%含み、ウレタン樹脂組成物100質量部に対するイソシアネート基の含有量が5.50質量部であり、15質量%の可塑剤を含むものであった。
【0045】
以下に示す試験方法により、ウレタン樹脂組成物(I)またはウレタン樹脂組成物(II)と、アクリル樹脂エマルジョンとの硬化性を評価した。
【0046】
「実施例」
表1に示す混合比で、ウレタン樹脂組成物(I)とウレタン樹脂組成物(II)を混合して、これらの混合物を調製し、この混合物100質量部に対して、アクリル樹脂エマルジョン(商品名:ポリゾールAP−1785、全固形分50.0%、昭和高分子製)を50質量部の割合で添加し、攪拌機および金ヘラにて数分間、均一になるよう混合した。
その後、ウレタン樹脂組成物(I)、ウレタン樹脂組成物(II)およびアクリル樹脂エマルジョンの混合物を、厚さ約10mmとなるようにカップに流し込み、気温50℃の環境下にて24時間養生した後、硬化物を縦(厚さ)方向に切断して、その内部と表面の硬化具合および発泡の状態を、下記の評価基準に従って確認した。
【0047】
(硬化性)
◎:内部、表層とも硬化し、表面にタックが全くない。
○:内部、表層とも硬化している。
△:表層は硬化しているが、内部は未硬化。
×:未硬化。
(発泡性)
硬化物の側面と上下面を切断して立方体に加工した後、その体積および質量を測定して密度を計算した。
(硬度)
硬化物の底面部を、タイプCの硬度計で測定した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果から、ウレタン樹脂組成物(I)とウレタン樹脂組成物(II)の混合比、すなわち、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する高活性酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)を1.0よりも小さくし、0に近付けていくに従って、密度が小さくなるとともに、硬度が低下することが確認された。
すなわち、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する高活性酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)を調整することにより、得られる硬化物の発泡倍率および硬度を制御することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法は、ウレタン樹脂組成物を構成するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する高活性酸化マグネシウムのモル当量比(MgO/NCO)を調整することにより、得られる硬化物の発泡倍率および硬度を制御することができるので、土木建築を含む各種構造物の防水材や止水材およびシール材などを含む幅広い用途に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウム、および、イソシアネート基を分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むウレタン樹脂組成物と、水と乳化剤で乳化されたエマルション、ラテックスおよびアスファルト乳剤より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含有してなり、前記水の含有量は、前記ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5〜300質量部であるウレタン樹脂複合材を硬化してなるウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法であって、
前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する前記酸化マグネシウムのモル当量比を調整することにより、前記発泡倍率を制御することを特徴とするウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する前記酸化マグネシウムのモル当量比を1.0以下とすることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂組成物は、水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマー;水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のモノマーとを含む混合物;水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物のプレポリマーとを含む混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項4】
前記酸化マグネシウムは、BET法による比表面積が30m/g以上、ヨウ素吸着量が30ヨードmg/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項5】
前記エマルション、前記ラテックスおよび前記アスファルト乳剤は、充填材を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項6】
前記エマルション、前記ラテックスおよび前記アスファルト乳剤の含有量は、前記ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、10〜600質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項7】
前記アスファルト乳剤は、ストレートアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項8】
前記アスファルト乳剤は、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレンおよびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーもしくはポリオレフィンで改質したアスファルトを、アニオン系、ノニオン系、カチオン系およびクレー系からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤で乳化したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項9】
前記エマルションは、酢酸ビニル・ホモエマルション、酢酸ビニル・コポリエマルション、エチレン・酢酸ビニルエマルション、アクリルエマルション、アクリル・スチレンエマルション、塩化ビニリデンエマルション、水性ビニルウレタンエマルション、ウレタン系エマルションおよびエポキシ系エマルションからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。
【請求項10】
前記ラテックスは、スチレン・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ポリブタジエン・ラバー・ラテックス、ニトリル・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ブタジエン・スチレン・ビニル・ピリジン・ラテックス、メタクリレート・ブタジエン・ラバー・ラテックス、ポリクロロプレン・ラバー・ラテックスおよびイソプレン・ラテックスバー・ラテックスからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタン樹脂複合材硬化物の発泡倍率の制御方法。

【公開番号】特開2012−12491(P2012−12491A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150206(P2010−150206)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(506293579)ユープレックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】