説明

ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、架橋ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びに光硬化型水性エマルション

【課題】水への乳化性に優れたウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びにそれを用いた硬化性に優れる低粘度の光硬化型水性エマルションを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される、重量平均分子量が1,000〜10,000であるウレタン(メタ)アクリレートである。
A1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1 …(1)
(式(1)中、nは1〜30の自然数を表し、A1はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの残基を表し、B1はジイソシアネートの残基を表し、C1は非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの残基を表し、D1はポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、架橋ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びに光硬化型水性エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、VOC(揮発性有機化合物、Volatile Organic Compounds)規制とその対策から、塗料、接着剤、コーティング剤等は有機溶剤を含まない水性化の取り組みが以前にも増して積極的に行われている。従前より、熱硬化型や紫外線硬化型の塗料、接着剤、コーティング剤等には油性の(メタ)アクリロイル基が2個以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートが使用されることが多かったが、最近は水系の塗料、接着剤、コーティング剤等の材料として親水性のウレタン(メタ)アクリレートが注目されている。
【0003】
このような親水性のウレタン(メタ)アクリレートとしては、主鎖内に親水性基としてポリエチレンオキサイド基を有し、かつ、主鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を2個以上持った多官能ウレタン(メタ)アクリレートや、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを主骨格にして少なくとも1個の親水性基を有する分子鎖と少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する分子鎖が分岐した構造の多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が開示されている。
【0004】
これらの中でも、主鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートの例として、特許文献1には、ポリエステルポリオール、イソホロンジイソシアネート、及び2−ヒドロキシジプロピルアクリレートを原料として用いた親水性ウレタンアクリレートが開示されている。また、分岐した構造を有するウレタン(メタ)アクリレートの例として、特許文献2には、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルを原料として用いた親水性ウレタンアクリレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−199102号公報
【特許文献2】特開2007−191529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の親水性のウレタン(メタ)アクリレートは、水への乳化性や乳化安定性の点で決して十分なものとは言えなかった。このようなウレタン(メタ)アクリレートの水性エマルションを水系の塗料や接着剤、コーティング剤等に使用した場合には、高粘度になりやすく、また、製造ロットによる粘度の変動も起こりやすく、さらに、粒度分布及び塗膜性能等の点で長期の安定性に劣ることがあった。
【0007】
また、上記の従来のウレタン(メタ)アクリレートの水性エマルションは、一般には水溶性の光重合開始剤を溶解し、水を乾燥させた後に紫外線を照射することで硬化する。その際、水が残存していると、紫外線を照射しても硬化しなかったり硬化が不十分だったりする。また、市販の水溶性光重合開始剤が水に溶解する量には制限があることから、硬化性を良好なものとすることに限界がある。他方、疎水性光重合開始剤を、従来のウレタン(メタ)アクリレートの水性エマルションの水媒体中に分散させて使用することも行われてきたが、光重合開始剤が水媒体中で分散する量に制限があったり、経時的に光重合開始剤が析出したりする等の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、これらの課題を解決すべく、水への乳化性に優れたウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、架橋ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びにそれを用いた硬化性に優れる低粘度の光硬化型水性エマルションを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、ジイソシアネートに由来する構造とジオールに由来する構造が直線上に配列する直鎖構造のウレタン(メタ)アクリレートにおいて、疎水性部と親水性部とが直鎖上の主鎖の相反する末端に存在する分子構造を有することによって、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される、重量平均分子量が1,000〜10,000であるウレタン(メタ)アクリレート。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1 …(1)
(式(1)中、nは1〜30の自然数を表し、A1はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの残基を表し、B1はジイソシアネートの残基を表し、C1は非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの残基を表し、D1はポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの残基を表す。)
[2]
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、前記ジイソシアネートと、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させて得られる、[1]に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
[3]
前記ジイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
[4]
前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの炭素数が6〜20である、[1]〜[3]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート。
[5]
前記炭素数が6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールは、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカプロラクトンジオール、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上である、[4]に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
[6]
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかである、[1]〜[5]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート。
[7]
前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルが、下記一般式(2)で表される、[1]〜[6]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート。
HO−(CH2CH2O)m−R …(2)
(式(2)中、Rはアルキル基であり、mは9〜90の自然数を表す。)
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレートを含む構成単位を有する、架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
[9]
2官能以上の架橋剤で架橋してなる、[8]に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
[10]
前記架橋剤が、メルカプト基含有化合物である、[9]に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
[11]
[1]〜[7]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート又は8〜10のいずれか1項に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートと、前記ウレタン(メタ)アクリレート又は前記架橋ウレタン(メタ)アクリレートにより水中に乳化分散されたラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤と、
を含有する、光硬化型水性エマルション。
[12]
前記ラジカル重合性基を有する化合物が分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、[11]に記載の光硬化型水性エマルション。
[13]
前記光ラジカル重合開始剤が、疎水性光重合開始剤である、[11]又は[12]に記載の光硬化型水性エマルション。
[14]
前記光ラジカル重合開始剤が、少なくともチオキサントン系光ラジカル重合開始剤を含む2種以上である、[11]〜[13]のいずれかに記載の光硬化型水性エマルション。
[15]
前記ラジカル重合性基を有する化合物は、定着用ウレタン(メタ)アクリレートを含む、[11]〜[14]のいずれかに記載の光硬化型水性エマルション。
[16]
蛍光増白剤をさらに含有する、[11]〜[15]のいずれかに記載の光硬化型水性エマルション。
[17]
[1]〜[7]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法であって、前記ジイソシアネートと、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、を反応させ下記一般式(1a):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NCO …(1a)
で表される第1の反応物を得る第1の工程と、前記第1の反応物と、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させ下記一般式(1b):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1…(1b)
で表される第2の反応物を得る第2の工程と、前記第2の反応物と、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、を反応させる第3の工程と、を含む、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
[18]
前記第1の工程において、前記ジイソシアネートと前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールとのモル比が5:1〜5:4であり、前記第2の工程において、前記第1の反応物と前記ポリオキシアルキレングリコールとのモル比が1:0.5〜1:1であり、且つ、前記第3の工程において、前記第2の反応物と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとのモル比が1:1.5〜1:1である、[17]に記載のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
[19]
[8]〜[10]のいずれかに記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法であって、[17]又は[18]に記載の製造方法により得られた前記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、前記2官能以上の架橋剤と、を反応させる第4の工程を含む、架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
[20]
前記第4の工程において、さらに、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を前記2官能以上の架橋剤と反応させる、[19]に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
[21]
前記第4の工程において、定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加する、[19]又は[20]に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
[22]
前記第4の工程において、前記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び前記分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量と、前記2官能以上の架橋剤の含有量とが、質量換算で100:1〜100:10である、[20]又は[21]に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光硬化型水性エマルションを巨視的に示す模式図である。
【図2】本発明の光硬化型水性エマルションを微視的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
なお、本明細書において、「乳化性」とは、光硬化型水性エマルションを40℃で静置し放置したときに、相分離が生じるか、又は沈殿物が発生する性質をいう。「硬化性」とは、光の照射により、光重合開始剤の存在下又は不存在下で重合硬化する性質をいう。「加水分解性」とは、加水分解が起こる性質をいう。また、「疎水性光重合開始剤」とは、水に対する溶解度が0.1質量%以下である光重合開始剤を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0014】
[ウレタン(メタ)アクリレート]
本発明の一実施形態は、ウレタン(メタ)アクリレートに係る。
【0015】
〔構成〕
本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1,000〜10,000であって、下記一般式(1)で表される。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1 …(1)
(式(1)中、nは1〜30の自然数を表し、A1はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの残基を表し、B1のジイソシアネートの残基を表し、C1は非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの残基を表し、D1はポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの残基を表す。)
【0016】
ここで、残基とは上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの原料の構造において、ウレタン結合を形成する官能基を除いた部分のことであり、具体的には、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートではヒドロキシル基を除いた部分(A1で表される。)、ジイソシアネートではイソシアネート基を除いた部分(B1)、非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールではヒドロキシル基を除いた部分(C1)、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルではヒドロキシル基を除いた部分(D1)である。
【0017】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布を測定することによって算出することができる。本明細書における重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量のことであり、GPC(HLC−8220〔商品名〕、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製)に、カラム:TSK−gel SuperHZM−M(排除限界分子量:4×106、分子量分画範囲:266〜4×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン系共重合体、充填剤粒径:3μm)を3本直列として用いることにより測定される。
【0018】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1,000〜10,000であり、好ましくは2,000〜8,000である。重量平均分子量が上記範囲内である場合、ミセルを形成しやすく自己乳化性に優れたものとなり、さらに、疎水性物質をミセル内に内包しやすくなるという有利な効果が得られる。これは、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートとしたことで、親水性と疎水性との良好なバランスが得られたためであると考えられる。
【0019】
上記一般式(1)中、nは1〜30の自然数を表す。なお、nの具体的な数値は、上記の重量平均分子量を調整することにより決まる。
【0020】
(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート)
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、上記一般式(1)におけるA1の構造を与える化合物である。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、上記一般式(1)への重合性基の導入のために用いられる。具体的には、本実施形態において使用するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、かつ、ヒドロキシル基を1個有する化合物であって、このヒドロキシル基がジイソシアネートのうちの一個のイソシアネート基とウレタン化反応することによって(メタ)アクリロイル基が本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の片末端に導入される。少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基の導入によって光重合(光硬化)が可能となり、さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基の導入によって光重合速度が高まるとともに、硬化物の硬度が高まるという有利な効果が得られる。
【0021】
単官能であるモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
2官能であるモノヒドロキシジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
3官能以上であるモノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、特に低粘度を有する乳化物を得られるため、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコールモノアクリレートがより好ましい。一方、特に硬化性に優れた乳化物を得られるため、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかが好ましい。
【0025】
上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(ジイソシアネート)
ジイソシアネートは、上記一般式(1)におけるB1の構造を与える化合物である。当該ジイソシアネートは、一分子内に反応性のイソシアネート基を2個有する有機ジイソシアネートを指す。
【0027】
分子中にイソシアネート基を3個以上有する有機ポリイソシアネートを用いて合成されたウレタン(メタ)アクリレートは、高分子量となりやすく、粘度が高くなる傾向にある。これらのウレタン(メタ)アクリレートで3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを主骨格にして少なくとも1個の親水性基を有する分子鎖と少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する分子鎖が分岐した構造の分子中に親水性部を持ったものを水に乳化させた乳化物(水性エマルション)もまた乳化物(水性エマルション)の粘度が高くなる傾向がある。
【0028】
これに対して、一分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネートを用いて合成されたウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートに由来する構造とジオールに由来する構造が直線上に配列する直鎖構造となり、上記一般式(1)に表したように片末端にポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル由来の親水性部があり、もう一方の末端に1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート由来の構造に分子内に2個のヒドロキシル基を有する非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール由来の構造がジイソシアネートを介してウレタン結合で結合された疎水部が配置した構造であることから、水への乳化性が特に優れたものとなり、乳化物(水性エマルション)の粘度を上記の従来のウレタン(メタ)アクリレートの乳化物に比べ大幅に下げることができる。
【0029】
ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式炭化水素骨格を有するジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの水素添加芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるという有利な効果が得られるため、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される一種以上が好ましい。
【0031】
上記のジイソシアネートは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール)
非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールは、上記一般式(1)におけるC1の構造を与える化合物である。当該ジオールは、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの疎水部の疎水性の度合いを調整するために導入される。上記ジオールは良好な疎水性を得られるものが選択される。具体例としては、一分子内に2個のヒドロキシル基を有する脂肪族、脂環族、及び芳香族のジオールからなる群より選ばれる1種以上のジオールが好ましく用いられ、中でも良好な疎水性を示すジオールがより好ましい。具体的に言えば、この疎水性に特に優れるため、当該非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの炭素数は、6〜20であることが好ましい。
【0033】
また、上記ジオールは、使用目的や使用用途に応じて、当該ウレタン(メタ)アクリレートの剛直性又は柔軟性を制御するのに適するもので、かつ、良好な疎水性を示すものを選択することもできる。
【0034】
上記の脂肪族ジオールとしては、分子中に芳香族構造及び脂環族構造を有しないジオールであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール(例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール)、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられる。
上記の芳香族ジオールとしては、分子中に芳香族構造を有するものであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、ビフェニル−4,4’−ジオール、1,4−ベンゼンジオール、ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、芳香族ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記の脂環族ジオールとしては、分子中に脂環族構造を有するものであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、脂環族ポリカーボネートポリオール、脂環族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、水への乳化が良好になり、かつ、ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるため、脂肪族ジオール及び脂環族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールの中では、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、及び脂肪族ポリカプロラクトンジオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。また、脂環族ジオールの中では、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0036】
上記のジオールは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル)
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、上記一般式(1)におけるD1の構造を与える化合物である。ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、ポリオキシアルキレングリコールの1つのヒドロキシル基がアルキル基で封鎖された化合物であって、下記一般式(2)で表される。
HO−(CH2CH2O)m−R …(2)
(式(2)中、Rはアルキル基であり、mは9〜90の自然数を表す。)
【0038】
このヒドロキシル基がジイソシアネートのうちの一個のイソシアネート基とウレタン化反応によって本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の片末端に導入される。これによって、本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートは直鎖状の主鎖の片末端に親水性部を持ち、もう一方の末端に1個以上の重合性基である(メタ)アクリロイル基と疎水性基とから構成される疎水部が配置する両親媒性物質の構造となるため、水への乳化性が特に優れたものとなる。
【0039】
また、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、親水性を自由に調整できるという有利な効果が得られるため、分子内にポリオキシエチレン構造を含むことが好ましい。
【0040】
ポリオキシエチレン構造はオキシエチレン基の繰り返し構造である。オキシエチレン基の平均の繰り返し数、すなわち上記一般式(2)におけるmは、本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの水への乳化が良好となるように親疎水のバランスを調整して決定され、9〜90の自然数が好ましく、9〜60の自然数がより好ましく、9〜30の自然数がさらに好ましい。
【0041】
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメトキシエーテル、ポリエチレングリコールモノエトキシエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0042】
また、ポリオキシエチレン構造に加えて他のポリオキシアルキレン構造も分子内に含むポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルも使用可能である。その際、末端アルキル基側にポリオキシエチレン構造が位置していることが、乳化にとって好ましい。この場合にポリオキシエチレン構造とともに使用できるポリオキシアルキレン構造には、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造が挙げられる。ポリオキシエチレン構造とともに使用するポリオキシアルキレン構造のオキシアルキレン基の繰り返し数は当該ウレタン(メタ)アクリレートの親疎水バランスを考慮して適宜決定される。
【0043】
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの末端アルキル基、すなわち上記一般式(2)のRとしては、炭素数の少ないアルキル基ほど疎水性が一層低下し乳化性に一層優れるため、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0044】
上記のポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、後述の光硬化型水性エマルションにおいて、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、水系の塗料や接着剤、コーティング剤等に本実施形態の光硬化型水性エマルションを使用する場合に、塗膜を形成でき、かつ、良好な膜強度や密着性等の塗膜性能の得られる光硬化型水性エマルションの総量(100質量%)に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0047】
このように、本実施形態によれば、自己乳化能及び乳化性に優れたウレタン(メタ)アクリレートを提供することができる。
【0048】
[架橋ウレタン(メタ)アクリレート]
本発明の一実施形態に係る架橋ウレタン(メタ)アクリレートは、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートを含む構成単位を有するものである。一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートを構成単位として有する架橋ウレタン(メタ)アクリレートにより、硬化性に優れ、かつ、エマルションの保存安定性に一層優れたものとなる。
【0049】
(架橋剤)
上記の架橋ウレタン(メタ)アクリレートは、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートと2官能以上の架橋剤とを反応させることにより、得ることができる。
【0050】
架橋剤を用いることにより、ウレタン(メタ)アクリレートを高分子量化することができる。これにより、硬化性に一層優れ、かつ、エマルションの保存安定性に一層優れた架橋ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0051】
また、溶剤系や無溶剤系(無溶媒系)でなく、O/Wエマルション中のオイル系(油相)で反応を実施することにより、ゲル化を防止することができる。
【0052】
上記の2官能以上の架橋剤は、(メタ)アクリロイル基と付加反応するものであるため、疎水性であることが好ましい。換言すれば、上記の2官能以上の架橋剤は、エマルション内の油相において、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基にマイケル付加することで、当該ウレタン(メタ)アクリレートを架橋化する。
このような(メタ)アクリロイル基と反応する架橋剤として、分子内にチオール基やアミノ基などを有するものが挙げられる。中でも、反応を速やかに進行させることができるため、多官能チオール化合物及び多官能アミン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、多官能チオール化合物がより好ましい。
上記2官能以上の架橋剤の具体例として、特に限定されないが、メルカプト基含有化合物及びアミノ基含有化合物が挙げられる。中でも、水への溶解度が低く、かつ、水分散時に油相内に取り込みやすいため、メルカプト基含有化合物が好ましい。
上記メルカプト基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(以下、「PEMP」ともいう。)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、及びトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)が挙げられる。
【0053】
上記2官能以上の架橋剤の含有量は、(メタ)アクリロイル基含有樹脂の総質量(100質量%)に対して、3〜10質量%であることが好ましく、5〜8質量%であることがより好ましい。
なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基含有樹脂」とは、上記架橋剤により架橋される(メタ)アクリロイル基を含有する樹脂全てを意味する。したがって、当該(メタ)アクリロイル基含有樹脂には、上記の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート、及び後述の分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が共に含まれる。
【0054】
[ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法]
本発明の一実施形態は、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法に係る。本実施形態は、上記実施形態に係るウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法と言い換えることができる。
【0055】
本実施形態に係るウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、第1の工程と第2の工程と第3の工程とを含む。
【0056】
第1の工程では、前記ジイソシアネートと、好ましくは炭素数6〜20である、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、を反応させ下記一般式(1a):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NCO …(1a)
で表される、ウレタン結合を有する第1の反応物を得る。この第1の工程において、上記ジイソシアネートと、上記炭素数6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、のモル比は、好ましくは5:1〜5:4であり、より好ましくは5:2〜5:3である。
【0057】
第2の工程では、前記第1の反応物と、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させ下記一般式(1b):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1…(1b)
で表される第2の反応物を得る。この第2の工程において、上記第1の反応物と、上記ポリオキシアルキレングリコールと、のモル比は、水への乳化が良好となるため、好ましくは1:0.5〜1:1である。
【0058】
第3の工程では、前記第2の反応物と、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、を反応させる。この第3の工程において、上記第2の反応物と、上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、のモル比は、好ましくは1:1.5〜1:1であり、より好ましくは1:1.4〜1:1.2である。
【0059】
このように、本実施形態によれば、自己乳化能及び乳化性に優れたウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することができる。
【0060】
[架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法]
本発明の一実施形態に係る架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、上述の実施形態の架橋ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法である。当該製造方法は、上記の第1工程〜第3工程を経て得られた一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、上述の2官能以上の架橋剤と、を反応させることにより、当該ウレタン(メタ)アクリレートを架橋するという、第4の工程を含むものである。
【0061】
また、第4の工程では、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートに加えて、上述の分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物も上記2官能以上の架橋剤と反応させてもよい。
【0062】
第4の工程では、定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加してもよい。特に基材がポリ塩化ビニル(以下、単に「PVC」とも言う。)からなる場合、定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加することが好ましい。具体的には、PVC基材を用いた場合、塗膜(後述)にPVC基材への密着性が要求される。そこで、定着用ウレタン(メタ)アクリレートを添加することにより、基材への密着性がより良好なものとなることから、当該定着用ウレタン(メタ)アクリレートの使用は好ましいといえる。
なお、PVC以外、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材を用いる場合は、粒子が細分化されるという理由で、硬化性が一層良好になるとともにエマルションの保存安定性に一層優れるため、定着用ウレタン(メタ)アクリレートの含有量(添加量)は低い方がよく、その分だけ分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量が多い方がよい。
【0063】
第4の工程では、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び(存在する場合は)上記分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量と、上記2官能以上の架橋剤の含有量とが、質量換算で、好ましくは100:1〜100:10、より好ましくは100:5〜100:8である。含有量の比が上記範囲の下限以上であると、硬化性及び保存安定性が一層優れたものとなる。また、含有量の比が上記範囲の上限以下であると、不溶物の発生を防止でき、かつ、系内の(メタ)アクリロイル基の消失を防止して硬化性を一層良好に維持することができる。
【0064】
このように、上記第4の工程は、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート、多官能チオールモノマー等の2官能以上の架橋剤と、任意成分としての、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、定着用ウレタン(メタ)アクリレート、好ましくはチオキサントン系を含む光ラジカル重合開始剤、及び蛍光増白剤からなる群より選択される一種以上と、を混合して水を滴下し乳化させる(水分散させる)。得られた乳化液を、例えば80℃で6時間加温することにより、マイケル付加反応が促進されて、架橋ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
このとき、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と架橋剤とが反応して、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は架橋化する。換言すれば、架橋剤は、ウレタン(メタ)アクリレートとだけ反応するのではなく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応するものである。したがって、架橋ウレタン(メタ)アクリレートの構造は、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート同士が架橋してなる化合物、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと内包物である(メタ)アクリロイル基含有化合物とが架橋してなる化合物、及び内包物である(メタ)アクリロイル基含有化合物同士が架橋してなる化合物といった、種々の架橋物が共存し得る。ここで、当該内包物とは、エマルションを形成してミセル構造を得た場合の、ミセル内部に存在する物を意味する。
【0065】
なお、上述のように(メタ)アクリロイル基を有する化合物と架橋剤とが反応する際、(メタ)アクリロイル基を有する化合物のうち、全てが架橋化する場合と一部が架橋化し残部は架橋せず残留する場合とがある。また、上記マイケル付加反応をさらに促進するため、触媒を用いてもよい。
【0066】
[光硬化型水性エマルション]
本発明の一実施形態は、光硬化型水性エマルションに係る。当該光硬化型水性エマルションは、上記実施形態の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び上記実施形態の架橋ウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかと、当該ウレタン(メタ)アクリレート及び架橋ウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかにより水中に乳化分散されたラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)及びラジカル系の光重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)と、を含有することを特徴とする。上記実施形態の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートや上記実施形態の架橋ウレタン(メタ)アクリレートは両親媒性物質であることから、安定で分散性に優れ、かつ、低粘度となるという有利な効果を奏する光硬化型水性エマルションを得ることが可能となる。
なお、以下では、「上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレート」とは、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び上記架橋ウレタン(メタ)アクリレートの双方を意味するものとする。
【0067】
本実施形態の光硬化型水性エマルションに起因した上述の効果は、以下の理由によってもたらされたものと考えられる。
【0068】
図1は、本実施形態の光硬化型水性エマルション実施例の紫外線硬化型水性エマルションを巨視的に説明する示す模式図であり、図2は、本実施形態の光硬化型水性エマルション実施例の紫外線硬化型水性エマルションを微視的に示す説明する模式図である。上記実施形態に係るウレタン(メタ)アクリレートは図1及び図2に示すように水中で疎水性部をコアに向け親水性部を水相に向けてシェル層を成してミセルを形成し、水中でラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)と光ラジカル重合開始剤とを内包したミセルを形成することができると考えられる。
【0069】
これは、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの分子構造に起因するものと考えられる。つまり、ミセル形成時において、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの分子構造は、主鎖が分岐している場合、又は主鎖の両末端に疎水部をもつ場合と比較して、立体障害が小さく、屈曲したコンフォメーションをとることもないと考えられる。そのため、親水性部を水相に向けて規則正しく密に配向することが可能となると考えられる。したがって、密に配向したミセルであれば、ウレタン結合間の水素結合が有効に働いてミセルの形成強度(パッキング性)が増大するため、ミセルの安定性及び分散性に寄与すると考えられる。
【0070】
よって、当該光硬化型水性エマルションは、ラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)と光ラジカル重合開始剤とをミセル中に含む場合にも、安定性に優れ、良好な光重合性が得られると考えられる。
【0071】
〔ラジカル重合性基を有する化合物〕
本実施形態において用いられるラジカル重合性基を有する化合物は、特定の波長(域)の光照射により発生した後述の開始剤ラジカルの攻撃を受けて連鎖的に反応する。同時に、これらと同じ均一場に存在する上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートのアクリロイル基も同様に連鎖的に反応する。こうして、本実施形態の光硬化型水性エマルションは基材上で硬化塗膜が形成される。
【0072】
上記のラジカル重合性基を有する化合物におけるラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0073】
本実施形態において用いられるラジカル重合性基を有する化合物においては、特に(メタ)アクリロイル基をその構造中に1個以上有するものが好ましく、アクリロイル基をその構造中に有するものがさらに好ましい。ラジカル重合性基を有する化合物は、分子量が数百程度の単量体から、二量体から数量体で分子量が数千程度までのオリゴマー、分子量が数万以下のポリマーを含む。
【0074】
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個有するラジカル重合性基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0075】
(メタ)アクリロイル基を分子内に2個有するラジカル重合性基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
これらの中でも、ラジカル重合性基を有する化合物としては、光重合性に優れるため、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
【0077】
(メタ)アクリロイル基を分子内に3個以上有するラジカル重合性基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0078】
また、上記した分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート(ただし、上述のウレタン(メタ)アクリレートを除く。)、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オリゴ(メタ)アクリレート、アルキド(メタ)アクリレート、及びポリオール(メタ)アクリレート等の分子量が数千程度までのオリゴマーで(メタ)アクリロイル基を3個以上有するもの、分子中に3個以上のアクリロイル基を有する分子量が数千程度までのオリゴマー又は分子量が数万程度までのポリマー、デンドリマータイプの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
上記のラジカル重合性基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
また、ラジカル重合性基を有する化合物は、当該光硬化型水性エマルションに高い光重合性(硬化性)を付与するという点から、光硬化型水性エマルションの総量(100質量%)に対し、1〜60質量%含まれることが好ましく、5〜50質量%含まれることがより好ましい。
【0081】
〔定着用ウレタン(メタ)アクリレート〕
また、上記ラジカル重合性基を有する化合物は、定着用ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。これにより、PVC基材上にエマルションを含む塗膜を形成する場合に、当該塗膜の定着性(密着性)がより優れたものとなる。上述のとおり、ラジカル重合性基を有する化合物は、光重合性(硬化性)の優れた化合物を含むのが好ましいため、当該化合物と併せて密着性をより良好にする定着用ウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
なお、当該定着用ウレタン(メタ)アクリレートは、上述の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと異なるものである。
【0082】
上記の定着用ウレタン(メタ)アクリレートは、後述するように、ジイソシアネート、芳香族骨格を有したジオール成分、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートから構成される。
【0083】
また、上記の定着用ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、3,000〜8,000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である場合、PVC基材に対する塗膜の密着性に優れるとともに、エマルションの安定性も良好なものとなる。
【0084】
(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート)
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、重合性基の導入のために用いられる。具体的には、本実施形態において使用するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、かつ、ヒドロキシル基を1個有する化合物であって、イソシアネート基とウレタン化反応することによって(メタ)アクリロイル基が定着用ウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の両末端に導入される。少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基の導入によって硬化(光重合)が可能となり、さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基の導入によって硬化速度を増大させることができ、かつ、硬化物の硬度を高めることができる。
モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
(ジイソシアネート)
ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート等の脂環式炭化水素骨格を有するジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、並びに水素添加キシリレンジイソシアネート及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の水素添加芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネートが挙げられる。
これらの中でも、定着用ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるため、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される一種以上が好ましい。
上記のジイソシアネートは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(芳香族骨格を有したジオール成分)
芳香族骨格を有したジオールとしては、分子中に芳香族構造を有していれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、ビフェニル−4,4’−ジオール、1,4−ベンゼンジオール、ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、芳香族ポリカーボネートポリオール、及び芳香族ポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、PVC基材への密着性が一層良好となるため、芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールの中では、イソフタレートがより好ましい。
上記のジオールは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、PVC基材への密着性及び水分散後の安定性に一層優れるため、光硬化型水性エマルションの総質量(100質量%)に対して、0.5〜4質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0087】
〔光ラジカル重合開始剤〕
本実施形態において用いられる光ラジカル重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線が照射されることで、光開裂や水素引抜き等によってラジカル(光ラジカル重合開始剤ラジカル)が生成し、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートや上記実施形態の架橋ウレタン(メタ)アクリレート及びラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)を攻撃することで光ラジカル重合を引き起こす。
【0088】
光ラジカル重合開始剤は、本実施形態のウレタン(メタ)アクリレートにより水中に乳化分散される際、良好な乳化分散性を示すため、疎水性光重合開始剤であることが好ましい。
【0089】
疎水性の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特に限定されないが、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、及びジ−tert−ブチルペルオキシドが挙げられる。
【0090】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、Speedcure TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0091】
本実施形態の光硬化型水性エマルションを塗料や接着剤、コーティング剤等に使用する場合、深部まで十分に硬化することが求められることが多く、上記の光ラジカル重合開始剤の中でも、360〜410nmの長波長域に吸収のあるフェニルホスフィン系光ラジカル重合開始剤が厚膜硬化に好ましく用いられる。具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドが好ましく挙げられる。市販品としては、DAROCUR TPO(BASF社製)、Speedcure TPO(Lambson Group Ltd製)、IRGACURE 819(BASF社製)等が挙げられる。
【0092】
光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤は、光硬化型水性エマルションの総量(100質量%)に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%であり、さらに好ましくは5〜10質量%である。特に、5〜10質量%の範囲内である場合、硬化性が良好なものとなる。
【0093】
上記の中でも、2種以上の光ラジカル重合開始剤を用いる場合、少なくともチオキサントン系光ラジカル重合開始剤が含まれることが好ましく、フェニルホスフィン系光ラジカル重合開始剤及びチオキサントン系光ラジカル重合開始剤が共に含まれることがより好ましい。この場合、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤が増感効果に優れることから、硬化性が一層優れたものとなる。
【0094】
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、及び2,4−ジエチルチオキサントンが挙げられる。
【0095】
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製商品名)、Speedcure DETX(2,4−ジエチルチオキサントン、LAMBSON社製商品名)、及びKAYACURE ITX(2−/4−イソプロピルチオキサントン、日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製商品名)が挙げられる。
【0096】
〔蛍光増白剤〕
また、本実施形態の光硬化型水性エマルションは、上記光ラジカル重合開始剤に加えて、蛍光増白剤をさらに含むことが好ましい。これにより、硬化性が一層優れたものとなる。
【0097】
本実施形態において用いられる蛍光増白剤は、増感剤に分類される。蛍光増白剤は、紫外〜短波(可視)である300〜450nm付近にピーク波長を有する光を吸収可能であり、且つ400〜500nm付近にピーク波長を有する蛍光を発光可能な、無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤は、蛍光性白化剤(Fluorescent Whitening Agent)としても知られている。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Edition,Electronic Release,Wiley−VCH 1998に示されている。
【0098】
上記蛍光増白剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、他の物質、例えばラジカル発生剤や酸発生剤などと、例えばエネルギー移動や電子移動といった相互作用をすることにより、ラジカルや酸等の有用基の発生を促すことができる。このような相互作用が生じ得る場合として、例えば、蛍光増白剤分子の三重項励起状態のエネルギー準位とラジカル発生剤や酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー準位とが非常に近接しており、かつ、ラジカル発生剤や酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー準位の方が僅かに低い場合が挙げられる。実際には、蛍光増白剤が350nm〜450nmの波長帯の照射光を捕集でき、かつ、蛍光増白剤分子の三重項励起状態のエネルギー準位がラジカル発生剤や酸発生剤の三重項状態のエネルギー準位と上記所定の関係を持つ必要がある。そのため、一重項励起状態及び三重項励起状態のエネルギー準位が互いに近接している必要がある。したがって、ラジカル発生剤や酸発生剤との相互作用の観点から蛍光増白剤を用いるとともに、照射波長に対するインク液としてのラジカルや酸の発生効率という観点から蛍光増白剤の吸収波長帯に対して光重合開始剤の吸収波長帯が重なることが挙げられる。この場合、本実施形態における蛍光増白剤は光重合開始剤の開裂可能な吸収波長帯と少なくとも一部重複する波長帯に吸収領域を有する。
【0099】
蛍光増白剤として、特に限定されないが、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、及びピリドトリアゾールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
本実施形態において用いられる蛍光増白剤の市販品としては、例えば、BASF社製のTINOPAL OB及びクラリアントジャパン社製のHOSTALUX KCB(1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)等が挙げられる。
【0101】
本実施形態において用いられる蛍光増白剤は、波長帯360nm〜420nmにおける蛍光増白剤の所定濃度当たりの最大吸光度が前記波長帯における光重合開始剤の前記所定濃度と同じ濃度当たりの最大吸光度よりも大きいことを特徴とする。この特徴を満たすことにより、硬化性の極めて優れたインク組成物が得られることを本願発明者らは見出した。
光重合開始剤及び蛍光増白剤が上記の特徴を満たすための設計方法としては、用いようとする光重合開始剤及び蛍光増白剤それぞれの吸収スペクトル、及びその最大吸光度、即ちピーク波長を解析する。その後、光重合開始剤及び蛍光増白剤それぞれの最大吸光度の関係が上記の特徴を満たすかどうかを確認すればよい。
【0102】
なお、蛍光増白剤及び光重合開始剤の吸収スペクトルを測定する際に用いられる光源として、紫外発光ダイオード(LED)を使用する場合、360nm〜420nmの波長帯に発光ピークを有するLEDが使用可能である。LEDの波長は1個のものを使用する場合に限らず、複数の発光ピークを有するように複数のLEDを組み合わせて使用してもよい。例えば、365nm、385nm、395nm、及び405nmのピーク波長を有するLEDのうちの複数を組み合わせても使用してもよい。
【0103】
上記蛍光増白剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、蛍光増白剤は、光硬化型水性エマルションの総質量(100質量%)に対して、0.01質量%〜0.5質量%含まれることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、光硬化性が良好なものとなり、蛍光増白剤自身が及ぼし得る、硬化膜の色相への影響を軽減できる。
【0104】
〔光硬化型水性エマルションの調製方法〕
本実施形態の光硬化型水性エマルションは、本技術分野に属する当業者であれば、後記の実施例欄で行った方法を適宜改良・変更することにより、適当な方法を選択することができ、乳化重合法、高圧乳化法、転相乳化法等、公知の方法を採用すればよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種公知の乳化剤、分散剤を用いてもよい。
なお、乳化重合法とは、界面活性剤のような両親媒性物質を水相中に添加しておき、そこに油相を加える方法である。高圧乳化法とは、水相、油相及び界面活性剤のような両親媒性物質を予備混合し、ホモジナイザー等の高圧乳化機にて乳化し水性エマルションを得る方法である。転相乳化法とは、界面活性剤のような両親媒性物質を油相中に溶解・分散させ、そこに水相を添加してO/W型エマルションを得るという方法である。乳化の途中で連続相が水から油へと変化(転相)するので、転相乳化と呼ばれる。ここで、上記の界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0105】
また、上記の架橋ウレタン(メタ)アクリレートを用いて光硬化型水性エマルションを調製する場合、エマルションの形成及び架橋反応の間の前後関係はいずれであってもよい。中でも、エマルション状態にした後に架橋反応を行うとゲル化を効果的に防止できるため、乳化後のエマルション状態で架橋反応を行うことが好ましい。
なお、架橋剤による架橋反応の相手は、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートに限らず、上述の分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物など、その他の内包物もあり得る。
【0106】
このように、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートを用いた、本実施形態に係る光硬化型水性エマルションによれば、粘度が低く、硬化性に優れ、水の存在下でも光硬化可能で、かつ、耐加水分解性に優れた光硬化型水性エマルションを提供することができる。特に、上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートが形成するミセル中にラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む形態において、優れた硬化性と、所定濃度の水の存在下においても光硬化するという従来の光硬化型水性エマルションにはない性能と、を得ることができる。また、本実施形態の光硬化型水性エマルションのミセルを形成するウレタン(メタ)アクリレートは、その構造から密に配向でき、さらに、その構造の疎水性部分にウレタン結合(ウレタン基)を有することから、配列したウレタン(メタ)アクリレート間に水素結合による強い結合力が働くと考えられる。そのため、ミセルの内包物が漏出し難く、加水分解し難い安定な乳化物が得られたと考えられる。
【0107】
また、本実施形態の光硬化型水性エマルションが、光重合性(硬化性)に優れる上、所定の濃度の水の存在下においても光で重合(硬化)する理由は明らかとはなっていないが、以下のように推察している。本実施形態の光硬化型水性エマルションは上述したように水中で上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートがコアにラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤とを内包して球状ミセルを形成した状態であり、この状態では光を照射しても重合(硬化)はしない。当該光硬化型水性エマルションを基材に塗布して乾燥して所定の濃度にすると、水が残存した状態でも光照射によって重合(硬化)することができ、基材に対しても良好な密着性が得られる。これは、水の濃度が低下することで、上記の球状ミセルがラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤を内部に保持した状態でラメラ状の層構造体を形成する。そして、この層構造体に光が照射されることで層構造体内部の光ラジカル重合開始剤が開始剤ラジカルとなり、この開始剤ラジカルが均一場内にあるラジカル重合性基を有する化合物と上記実施形態のウレタン(メタ)アクリレートのアクリロイル基とを攻撃して連鎖反応を引き起こしたことによるものと推察する。この推察は、本実施形態の光硬化型水性エマルションの硬化性を説明するために行ったものであって、本実施形態の光硬化型水性エマルションを限定するものではない。
【0108】
[塗膜の製造方法]
本発明の一実施形態は、塗膜の製造方法に係る。当該製造方法は、塗布工程及び硬化工程を含む。まず、塗布工程についていうと、上記実施形態の光硬化型水性エマルションを塗工液として用い、この塗工液を、バーコーター等の塗工具又は塗工機を用いて基材上に塗布する。その際、塗布厚は、その用途に応じて適宜決定される。
【0109】
次に、硬化工程は、上記塗布工程で形成された塗布膜を、特定波長の光を照射することにより硬化させて、塗膜を形成する工程である。印刷媒体上の塗布膜に特定の波長域の光を照射することにより光硬化反応(光ラジカル重合)が引き起こされて硬化塗膜が生成される。特定の波長域の光は、紫外(UV)線が好ましい。特定の波長域(紫外域)は、360〜410nmの範囲が好ましく、380〜400nmの範囲がより好ましい。波長域が上記範囲内であると、一層優れた硬化性を得ることができる。
【0110】
上記の波長域の発光光源としては、例えば、水銀ランプやメタルハライドランプが広く知られている。その一方で、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれていることから、GaN系半導体の紫外発光デバイスへの置き換えが進んでいる。発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)は小型で高効率であるとともに高寿命でもあることから硬化塗膜形成用光源として利用されつつある。上述した理由から360〜400nmの範囲にピーク波長を有する発光ダイオード(LED)が好ましい。
【0111】
なお、上記の基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック基材(板、フィルム、成形体)、並びに鉄、銀、銅、及びアルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、及びステンレスや真鍮等の合金のプレート、並びにセラミックが挙げられる。また、上質紙や印刷本紙など、種々の紙媒体も好適に用いることが可能である。
【0112】
ここで、上記塗工液は、基材に応じてレベリング剤などを含んでもよい。例えば、シリコーン系のレベリング剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、中でもポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンやポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。これらを用いると、PVC基材のような撥液性を有する基材上で塗工液が弾かれることを防止できる。上記シリコーン系のレベリング剤の具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製商品名)を挙げることができる。
【0113】
本実施形態における塗工液は、塗料、コーティング剤、及び接着剤などに用いることができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0115】
[使用材料]
〔ウレタンアクリレートの合成材料〕
(A:ヒドロキシル基含有アクリレート)
・重量平均分子量が400のポリプロピレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAP400〔商品名〕、日油社製)(以下、「PPGアクリレート」という。)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM−305〔商品名〕、東亞合成社製)
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(アロニックスM−403〔商品名〕、東亞合成社製)
(B:ジイソシアネート)
・イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という。)
(C:炭素数6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール)
・1,12−ドデカンジオール
・重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(ユニオールD−400[商品名]、日油社製)
(D:ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル)
・重量平均分子量が400のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシPEG400〔商品名〕、東邦化学工業社(TOHO Chemical Industry Co.,Ltd.)製)(以下、「メトキシPEG400」という。)
・重量平均分子量が1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシPEG1000〔商品名〕、東邦化学工業社製)(以下、「メトキシPEG1000」という。)
・重量平均分子量が2000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−2000〔商品名〕、日油社製)(以下、「メトキシPEG2000」ともいう。)
〔架橋ウレタンアクリレートの合成材料〕
上記に加えて、さらに架橋剤として、ペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネート(架橋チオール、以下「PEMP」ともいう。)を用いた。
〔ラジカル重合性基を有する化合物〕
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM−403〔商品名〕、東亞合成社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとして50〜60質量%)
・ポリペンタエリスリトールポリアクリレート(ビスコート802〔商品名〕、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL IND.,LTD.)製)
・デンドリマーアクリレート(ビスコート1000〔商品名〕、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL IND.,LTD.)製)
・10官能ウレタンアクリレート(KU−DPU〔商品名〕、荒川化学工業社製)
・定着用ウレタンアクリレート(製造方法は後述の製造例1を参照)
〔光ラジカル重合開始剤〕
・アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(DAROCUR TPO〔商品名〕、BASF社製)(以下、単に「TPO」という。)
・チオキサントン系光ラジカル重合開始剤(Speedcure DETX〔商品名〕、LAMBSON社製)(以下、単に「DETX」という。)
〔蛍光増白剤〕
・1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)(HOSTALUX KCB〔商品名〕、クラリアントジャパン社(Clariant (Japan) K.K.)製)(以下、単に「KCB」という。)
〔レベリング剤〕
・ポリエーテル変性オルガノシロキサン(BYK−348〔商品名〕、BYK社製)
【0116】
[ウレタンアクリレートの構造及び合成]
〔ウレタンアクリレートの構造〕
下記の実施例及び比較例において使用したウレタンアクリレートは、その構造が上記一般式(1)並びに下記一般式(3)、(4)、及び(5)で各々表されるウレタンアクリレートを使用した。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C2−O)n−CONH−B1−NH−COO−A1 …(3)

…(4)
1−O−CONH−B1−NH−COO−D3 …(5)
ここで、A1は1個以上のアクリロイル基を有するヒドロキシル基含有アクリレート由来の構造を表し、B1はジイソシアネート由来の構造を表し、C2はジオール由来の構造を表し、D2及びD3は上記一般式(2)で表されるもののうち片末端メチル基封鎖ポリ(オキシエチレン)グリコール(以下、「ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル」ともいう。)由来の構造を表す。
【0117】
〔両親媒性ウレタンアクリレートの合成〕
(実施例1:両親媒性ウレタンアクリレート(a)の合成)
撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び空気導入管を備えた反応容器に、444.6質量部のIPDIと202.3質量部の1,12−ドデカンジオールを仕込み、攪拌を行いながら、0.26質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、200.0質量部のメトキシPEG400、200.0質量部のメトキシPEG1000、及び0.42質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、634.3質量部のPPGアクリレート、0.84質量部のメトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、及び0.67質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(a)を得た。このウレタンアクリレート(a)の重量平均分子量は3,200であった。
【0118】
(実施例2:両親媒性ウレタンアクリレート(b)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI及び202.3質量部の1,12−ドデカンジオールを仕込み、攪拌を行いながら、0.26質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、200.0質量部のメトキシPEG400、200.0質量部のメトキシPEG1000、及び0.42質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、594.4質量部のペンタエリスリトールトリアクリレート、0.82質量部のメトキノン、及び0.66質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(b)を得た。このウレタンアクリレート(b)の重量平均分子量は3,800であった。
【0119】
(実施例3:両親媒性ウレタンアクリレート(c)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI及び202.3質量部の1,12−ドデカンジオールを仕込み、攪拌を行いながら、0.26質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、200.0質量部のメトキシPEG400、200.0質量部のメトキシPEG1000、及び0.42質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1300.0質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.17質量部のメトキノン、及び0.94質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(c)を得た。このウレタンアクリレート(c)の重量平均分子量は5,300であった。
【0120】
(実施例4:両親媒性ウレタンアクリレート(d)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI及び202.3質量部の1,12−ドデカンジオールを仕込み、攪拌を行いながら、0.26質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、700.0質量部のメトキシPEG1000及び0.54質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1300.0質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.32質量部のメトキノン、及び1.06質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(d)を得た。このウレタンアクリレート(d)の重量平均分子量は5,600であった。
【0121】
(実施例X:両親媒性ウレタンアクリレート(e)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI(2モル)と400.0質量部の重量平均分子量が400のポリプロピレングリコールを仕込み、攪拌を行いながら、0.34質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた後、1400.0質量部のメトキシPEG2000及び0.90質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1300質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.77質量部のメトキノン及び2.13質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(e)を得た。このウレタンアクリレート(e)の重量平均分子量は9,000であった。
【0122】
(比較例1:ウレタンアクリレート(p)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI及び1000.0質量部のポリエチレングリコール(PEG1000、日油社製)を仕込み、攪拌を行いながら、0.58質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、2400.0質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.92質量部のメトキノン、及び1.54質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却して、ウレタンアクリレート(p)を得た。なお、このウレタンアクリレート(p)は、両末端がアクリロイル基であるウレタンアクリレートであり、上記一般式(3)で表される。このウレタンアクリレート(p)の重量平均分子量は10,500であった。
【0123】
(比較例2:ウレタンアクリレート(q)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、578.0質量部のHMDIの3量体(コロネートHXR、日本ポリウレタン社製)、200.0質量部のメトキシPEG400、及び200.0質量部のメトキシPEG1000を仕込み、攪拌を行いながら、0.39質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を75℃まで昇温し、1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1051.6質量部のペンタエリスリトールトリアクリレート、1.01質量部のメトキノン、及び0.81質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を80℃まで昇温し、2時間反応させた後、冷却して、ウレタンアクリレート(q)を得た。なお、このウレタンアクリレート(q)は、片末端がアクリロイル基で、かつ、3官能のイソシアネートを用いたウレタンアクリレートであり、上記一般式(4)で表される。このウレタンアクリレート(q)の重量平均分子量は7,400であった。
【0124】
(比較例3:ウレタンアクリレート(s)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI及び62.1質量部のエチレングリコールを仕込み、攪拌を行いながら、0.20質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、700.0質量部のメトキシPEG1000及び0.48質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、634.3質量部のPPGアクリレート、0.92質量部のメトキノン、及び0.68質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、冷却して、上記一般式(1)で表される構造に類似したウレタンアクリレート(s)を得た。具体的にいえば、このウレタンアクリレート(s)は、上記一般式(1)における「C1」の炭素数が2であるウレタンアクリレートである点で、上記一般式(1)で表される構造に類似しているが一般式(1)で表される構造そのものを有していない。このウレタンアクリレート(s)の重量平均分子量は3,000であった。
【0125】
(比較例4:ウレタンアクリレート(t)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、222.3質量部のIPDI及び700.0質量部のメトキシPEG1000を仕込み、攪拌を行いながら、0.48質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、634.3質量部のPPGアクリレート、0.78質量部のメトキノン、及び0.62質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、冷却して、上記一般式(5)で表されるウレタンアクリレート(t)を得た。なお、このウレタンアクリレート(t)は、ジオール残基のないウレタンアクリレートである。このウレタンアクリレート(t)の重量平均分子量は2,300であった。
【0126】
(製造例1:定着用ウレタンアクリレートの合成)
実施例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI(2モル)と900.0質量部の芳香族ポリエステルジオール(重量平均分子量900、1モル、YG−108[商品名]、ADEKA社製)を仕込み、攪拌を行いながら、0.27質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を85℃まで昇温し、2時間反応させた後、当該反応容器に、232.3質量部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(2モル)、0.79質量部のメトキノン及び0.63質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、2時間反応させた後、冷却して、ウレタンアクリレートを得た。このウレタンアクリレートの重量平均分子量は5,000であった。
【0127】
[光硬化型水性エマルションの調製]
光硬化型水性エマルションの調製方法を以下に示す。
【0128】
(実施例5:光硬化型水性エマルション(b−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(b)36.7質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(b)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(b−1)を得た(表1参照)。
【0129】
(実施例6:光硬化型水性エマルション(c−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(c)36.7質量部及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(c)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(c−1)を得た(表1参照)。
【0130】
(実施例7:光硬化型水性エマルション(a−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(a)28.5質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート9.5質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)2.0質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(a)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(a−1)を得た(表2参照)。
【0131】
(実施例8:光硬化型水性エマルション(d−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)27.5質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、ジペンタエリスリトールジアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(d−1)を得た(表2参照)。
【0132】
(実施例9:光硬化型水性エマルション(d−2)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)27.5質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(d−2)を得た(表2参照)。
【0133】
(実施例10:光硬化型水性エマルション(d−3)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)27.5質量部、デンドリマーアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、デンドリマーアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(d−3)を得た(表2参照)。
【0134】
(実施例11:光硬化型水性エマルション(d−4)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)27.5質量部、10官能ウレタンアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、10官能ウレタンアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(d−4)を得た(表2参照)。
【0135】
(実施例12:光硬化型水性エマルション(d−2−1)の調製)
上記の実施例9で得られた不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(d−2)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(d−2−1)を得た(表6参照)。
【0136】
(実施例13:光硬化型水性エマルション(d−5−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)27.4質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.1質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部、蛍光増白剤(KCB)0.13質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO)、及び蛍光増白剤(KCB))が40%の光硬化型水性エマルション(d−5)を得た(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(d−5)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(d−5−1)を得た(以上、表6参照)。
【0137】
(実施例14:光硬化型水性エマルション(d−6−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)26.2質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート8.7質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら1.7質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(d−6)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量8,500の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(d−6)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(d−6−1)を得た(以上、表6参照)。
【0138】
(実施例15:光硬化型水性エマルション(d−7−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(d)26.1質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート8.7質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部、蛍光増白剤(KCB)0.07質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら1.7質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(d)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO)、蛍光増白剤(KCB)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(d−7)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量16,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(d−7)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(d−7−1)を得た(以上、表6参照)。
【0139】
(実施例16:光硬化型水性エマルション(e−1−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)23.3質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート8.3質量部、定着用ウレタンアクリレート1.7質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部、蛍光増白剤(KCB)0.07質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、定着用ウレタンアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、蛍光増白剤(KCB))が40%の光硬化型水性エマルション(e−1)を得た(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−1)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−1−1)を得た(以上、表6参照)。
【0140】
(実施例17:光硬化型水性エマルション(e−2−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)23.9質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート10.3質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部、蛍光増白剤(KCB)0.07質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.4質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO)、蛍光増白剤(KCB)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(e−2)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量20,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−2)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−2−1)を得た(以上、表6参照)。
【0141】
(実施例18:光硬化型水性エマルション(e−3−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)21.6質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)6.7質量部、蛍光増白剤(KCB)0.06質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.5質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO)、蛍光増白剤(KCB)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(e−3)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量22,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−3)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−3−1)を得た(以上、表6参照)。
【0142】
(実施例19:光硬化型水性エマルション(e−4−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)21.6質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部、蛍光増白剤(KCB)0.06質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.5質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、蛍光増白剤(KCB)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(e−4)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量22,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−4)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−4−1)を得た(以上、表6参照)。
【0143】
(実施例20:光硬化型水性エマルション(e−5−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)21.6質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート7.7質量部、定着用ウレタンアクリレート1.5質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.5質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、定着用ウレタンアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(e−5)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量18,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−5)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−5−1)を得た(以上、表6参照)。
【0144】
(実施例21:光硬化型水性エマルション(e−6−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(e)21.6質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート7.7質量部、定着用ウレタンアクリレート1.5質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部、蛍光増白剤(KCB)0.06質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.5質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(e)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、定着用ウレタンアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、蛍光増白剤(KCB)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(e−6)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量18,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された(以上、表5参照)。
この不揮発分40%の光硬化型水性エマルション(e−6)30質量部に、0.1質量部のBYK348及び69.9質量部の脱イオン水を加えることで、評価試験用の光硬化型水性エマルション(e−6−1)を得た(以上、表6参照)。
【0145】
(比較例5:光硬化型水性エマルション(p−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(p)38.0質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)2.0質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(p)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(p−1)を得た(表3参照)。
【0146】
(比較例6:光硬化型水性エマルション(q−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(q)38.0質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)2.0質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(q)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(q−1)を得た(表3参照)。
【0147】
(比較例7:光硬化型水性エマルション(q−2)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(q)27.5質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(q)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(q−2)を得た(表3参照)。
【0148】
(比較例8:光硬化型水性エマルション(s−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(s)38.0質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)2.0質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(s)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(s−1)を得た(表3参照)。
【0149】
(比較例9:光硬化型水性エマルション(t−1)の調製)
実施例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(t)38.0質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)2.0質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(t)及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(t−1)を得た(表3参照)。
【0150】
[評価項目]
〔乳化性〕
上記の[光硬化型水性エマルションの調製]で調製された光硬化型水性エマルションを40℃で静置して、状態を観察した。観察した結果を以下のように分類した。評価結果を表2、表3、及び表6に示す。
A:1週間以上の放置でも、相分離、沈殿物の発生がなく、初期の状態と変わらない。
B:1週間の放置で相分離又は沈殿物の発生が認められた。
C:調製直後で相分離又は沈殿物の発生があった。
【0151】
なお、光硬化型水性エマルションを対象とする本評価は、光硬化型水性エマルションに用いられたウレタンアクリレートの乳化性を評価していることに等しい。
【0152】
〔粘度〕
上記の[光硬化型水性エマルションの調製]で調製された光硬化型水性エマルションをE型粘度計(TVE−20H〔商品名〕、東機産業社製)で、光硬化型水性エマルションの液温を25℃にして、粘度を測定した。
【0153】
〔実施例5〜11及び比較例5〜9の硬化性〕
表面処理を施したPETフィルム上に、上記の光硬化型水性エマルションを、バーコーターを用いて塗布厚が10μmになるように塗工液を塗布し、25℃、湿度40%の条件の下で120秒経過後にLEDランプ(395nm、1000mW/m2)を用いて紫外線を照射して、硬化状態を確認した。硬化状態の確認は、綿棒の先端を塗工面に接し、塗工面に対して綿棒を45度傾けたまま押し付け圧200gf/cm2で動かしたときに塗膜に傷がつかない状態を「硬化」しているとした。
・塗工条件:バーコーターNo.6(乾燥状態の膜厚:4μm〜6μm)
評価結果を表1〜表3に示す。
【0154】
〔実施例12〜21の硬化性〕
表5に示した光硬化型水性エマルション(うち実施例13〜21は架橋タイプ)については、硬化性の評価結果を明確にするため、以下のように評価した。
まず、上記実施例9の光硬化型水性エマルション(表5参照)を、表6に示すように水で希釈して、硬化させるのに必要な照射エネルギー量が30mJ/cm2から1,900mJ/cm2となるようにした。
続いて、表6に示した、この実施例9の光硬化型水性エマルション、及び実施例13〜21の架橋ウレタンアクリレートを用いた光硬化型水性エマルションについて、基材をPVCフィルムとし、塗工条件をバーコーターNo.9とし、90秒経過後に紫外線を照射し、かつ、以下の評価基準を設けた点以外は、上記と同様にして硬化性の評価を行った。
AA:500mJ/cm2未満
A:500mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満
B:1000mJ/cm2以上1500mJ/cm2未満
C:1500mJ/cm2以上2000mJ/cm2未満
D:2000mJ/cm2以上
評価結果を表6に示す。
【0155】
〔加水分解性〕
実施例9及び実施例11の光硬化型水性エマルションを70mLのガラス製のサンプル瓶に50mL入れ、密栓をして、40℃で2週間放置した後に、GPC(HLC−8220〔商品名〕、東ソー社製)による分子量測定を実施した。
【0156】
各々の光硬化型水性エマルションを構成する両親媒性ウレタンアクリレートが加水分解した場合にはアクリル酸の発生が想定されることから、アクリル酸の発生がない場合には加水分解は起こらなかった(表4及び表6中には「無」と記載)と判断した。
【0157】
〔実施例12〜21の密着性〕
PVCフィルム上に、実施例12〜21の光硬化型水性エマルションを、バーコーターを用いて塗布厚が10μmになるように塗工液を塗布し、25℃、湿度40%の条件の下で90秒経過後にLEDランプ(Phoseon社製照射機、ピーク波長395nm、照度1000mW/m2(Gap6mm)、2000mJ/cm2)を用いて紫外線を照射した。
・塗工条件:バーコーターNo.9(乾燥状態の膜厚:4μm〜6μm)
得られた塗膜にテープを貼り、剥離させたときに塗膜が剥がれるか否かで評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:剥がれなし、
×:剥がれあり。
評価結果を表6に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【0164】
表1〜表3より、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、かつ、上記の一般式(1)で表される特定構造を有するウレタンアクリレートを用いた光硬化型水性エマルション(各実施例)は、従来のウレタンアクリレートを用いた光硬化型水性エマルション(各比較例)に比して、ウレタンアクリレートが水への乳化性に優れ、かつ、エマルションが低粘度であって硬化性に優れることが明らかとされた。
【0165】
また、表4より、実施例9及び実施例11のいずれも、アクリル酸の検出ピークは認められず、初期状態と相違ない測定結果が得られたことから、加水分解は起こらなかったと考えられる。
【0166】
このことから、本発明の光硬化型水性エマルションを構成する両親媒性ウレタンアクリレートが耐加水分解性に優れたものであることが分かる。
【0167】
また、表6より、所定の架橋ウレタンアクリレートを用いたエマルションは、架橋していないウレタンアクリレートを用いたエマルションと比較して、硬化性に極めて優れることが分かった。
なお、表6より、実施例9のエマルションを希釈したものに相当する実施例12のエマルションは、硬化性が劣っているように見える。しかし、実施例9に示したとおり、当該エマルションは僅か30mJ/cm2の照射エネルギーで硬化するため、硬化性に優れている(表2参照)。したがって、実施例13〜21のエマルション、具体的には所定のウレタン(メタ)アクリレートを架橋させることにより、硬化性に極めて優れることを本願発明者らは見出した。
【0168】
ここで、上記で得られた結果に基づき、本発明の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが優れた効果を奏するメカニズムについて考察する。低分子量のウレタン(メタ)アクリレートから、硬化性に優れた膜を得るためには、多量の紫外線照射によって高分子量化することが必要となる。そこで、上記ウレタン(メタ)アクリレートの分子量を架橋により大きくしておくことで、少量の紫外線照射でも分子量増大効果が大きくなり(少量のアクリロイル基が反応するだけでも不溶化される)、硬化性がより優れたものとなると推察される。
なお、本発明が上記考察に限定されることはない。また、本発明における特定構造の両親媒性ウレタン(メタ)アクリレート以外のウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合、架橋させることができたとしても、安定した水性エマルションを得ることができないことを、本願発明者らは確認している。
【0169】
また、上記で得られた結果に基づき、比較例で用いたウレタンアクリレートでは架橋ウレタンアクリレートが得られなかった理由についても考察する。比較例5、7、及び8では、乳化性に劣ることから架橋剤を油相内に内包できず、反応中にゲル化してしまうという理由が考えられる。また、比較例6では、架橋ウレタン(メタ)アクリレート(架橋エマルション)を得ることができ、硬化性も良好であると推測されるが、低粘度でないという理由が考えられる。なお、本発明が上記考察に限定されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、重量平均分子量が1,000〜10,000であるウレタン(メタ)アクリレート。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1 …(1)
(式(1)中、nは1〜30の自然数を表し、A1はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの残基を表し、B1はジイソシアネートの残基を表し、C1は非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの残基を表し、D1はポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの残基を表す。)
【請求項2】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、前記ジイソシアネートと、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させて得られる、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項3】
前記ジイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項4】
前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの炭素数が6〜20である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項5】
前記炭素数が6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールは、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカプロラクトンジオール、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項6】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルが、下記一般式(2)で表される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
HO−(CH2CH2O)m−R …(2)
(式(2)中、Rはアルキル基であり、mは9〜90の自然数を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレートを含む構成単位を有する、架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項9】
2官能以上の架橋剤で架橋してなる、請求項8に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項10】
前記架橋剤が、メルカプト基含有化合物である、請求項9に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート又は請求項8〜10のいずれか1項に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートと、
前記ウレタン(メタ)アクリレート又は前記架橋ウレタン(メタ)アクリレートにより水中に乳化分散されたラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤と、
を含有する、光硬化型水性エマルション。
【請求項12】
前記ラジカル重合性基を有する化合物が分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、請求項11に記載の光硬化型水性エマルション。
【請求項13】
前記光ラジカル重合開始剤が、疎水性光重合開始剤である、請求項11又は12に記載の光硬化型水性エマルション。
【請求項14】
前記光ラジカル重合開始剤が、少なくともチオキサントン系光ラジカル重合開始剤を含む2種以上である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の光硬化型水性エマルション。
【請求項15】
前記ラジカル重合性基を有する化合物は、定着用ウレタン(メタ)アクリレートを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の光硬化型水性エマルション。
【請求項16】
蛍光増白剤をさらに含有する、請求項11〜15のいずれか1項に記載の光硬化型水性エマルション。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法であって、
前記ジイソシアネートと、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、を反応させ下記一般式(1a):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NCO …(1a)
で表される第1の反応物を得る第1の工程と、
前記第1の反応物と、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させ下記一般式(1b):
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1…(1b)
で表される第2の反応物を得る第2の工程と、
前記第2の反応物と、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、を反応させる第3の工程と、
を含む、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項18】
前記第1の工程において、前記ジイソシアネートと前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールとのモル比が5:1〜5:4であり、
前記第2の工程において、前記第1の反応物と前記ポリオキシアルキレングリコールとのモル比が1:0.5〜1:1であり、且つ、
前記第3の工程において、前記第2の反応物と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとのモル比が1:1.5〜1:1である、請求項17に記載のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項19】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法であって、
請求項17又は18に記載の製造方法により得られた前記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、前記2官能以上の架橋剤と、を反応させる第4の工程を含む、
架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項20】
前記第4の工程において、さらに、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を前記2官能以上の架橋剤と反応させる、請求項19に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項21】
前記第4の工程において、定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加する、請求項19又は20に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項22】
前記第4の工程において、前記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び前記分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量と、前記2官能以上の架橋剤の含有量とが、質量換算で100:1〜100:10である、請求項20又は21に記載の架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−149224(P2012−149224A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241449(P2011−241449)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】