説明

ウレタン(メタ)アクリレート及びそれを含有するコーティング剤

【課題】コーティング剤に含有させる硬化成分であるウレタン(メタ)アクリレート、及びそれを含有しており基材へ付して硬化させた際に高い硬度を示しつつ収縮性を示さず基材を反り返らせるというカール性を殆ど示さない被膜を形成するためのコーティング剤を提供する。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とでウレタン結合し、それの他方のイソシアネート基と水酸基含有ポリマーの水酸基とでウレタン結合していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ、塗料、ハードコート剤などのコーティング剤に含有させる硬化成分として用いられるウレタン(メタ)アクリレート、及びそれを含有するコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建材、家電製品の外装、プラスチック製品、フィルムなど比較的柔軟で傷付き易い高分子基材の表面を、装飾したり綺麗にしたり擦傷から保護したり硬度強化したりするのに、インキ、塗料、ハードコート剤などのコーティング剤や、保護材を接着する接着剤が、その基材表面へ塗布される。コーティング剤には、硬化成分が含有されている。
【0003】
そのような硬化成分として、従来から、紫外線や熱線のような活性エネルギー線で硬化するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーなどのオリゴマーが、用いられている。とりわけウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、硬化させると、その化学構造に由来して、強靭で強い機械的強度と耐薬品性とに優れたポリマーを形成する。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの原料の種類が豊富であることから、原料の組み合わせを適宜選択することにより用途に合わせた所望の物性を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを形成することができる。
【0004】
このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの中でも、多官能(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化によって、高い表面硬度や、優れた透明性、耐擦傷性、光沢性を発現することから、多くの製品の基材表面を保護するために、コーティング剤の硬化成分として、特に汎用されている。
【0005】
しかしその一方で、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化の際の収縮の所為で、基材を反らせるカール性を惹き起こしてしまうため、その用途が制限されたり、十分に基材表面を保護できなかったりする。このカール性は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートに二官能以下の官能基数が少ないウレタン(メタ)アクリレートを配合して収縮性を小さくすることにより改善される。例えば、特許文献1に、官能基を5〜7有する紫外線硬化性ウレタンアクリレートオリゴマーや紫外線硬化性アクリレートのような紫外線硬化性物質、官能基を2〜3有するウレタンアクリレートオリゴマー、及びオリゴマー型紫外線重合開始剤を含有するハードコート剤が、開示されている。
【0006】
一般的に、ウレタン(メタ)アクリレートによれば、収縮性を小さくしてカール性を抑制できる反面、表面硬度の低下を招き本来の目的である表面保護性が不十分となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−292828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、コーティング剤に含有させる硬化成分であるウレタン(メタ)アクリレート、及びそれを含有しており基材へ付して硬化させた際に高い硬度を示しつつ、収縮性を極僅かにしか示さず、基材を反り返らせるというカール性を殆ど示さない被膜を形成するためのコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載されたウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とでウレタン結合し、それの他方のイソシアネート基と水酸基含有ポリマーの水酸基とでウレタン結合していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のウレタン(メタ)アクリレートは、請求項1に記載されたものであって、該水酸基含有ポリマーが、平均分子量を5000〜200000とすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のウレタン(メタ)アクリレートは、請求項1に記載されたものであって、該水酸基含有ポリマーが、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの重合体、及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと水酸基非含有(メタ)アクリルモノマーとの共重合体であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のウレタン(メタ)アクリレートは、請求項3に記載されたものであって、該水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートは、請求項1に記載されたものであって、該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び/又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のウレタン(メタ)アクリレートは、請求項1に記載されたものであって、該ジイソシアネート化合物が、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、及び/又はノルボルナンジイソシアネートであることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法は、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとを混合して、該ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とがウレタン結合しつつそれの他方のイソシアネート基が残存した化合物を含有する中間体とし、その中間体に水酸基含有ポリマーを混合して、それの残存イソシアネート基と該水酸基含有ポリマーの水酸基とがウレタン結合したウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法。
【0016】
請求項8に記載のコーティング剤は、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレートを含む硬化成分が、含有されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の硬化被膜は、請求項8に記載のコーティング剤が塗布されて硬化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、硬化させると、高い硬度を示しつつ、低収縮性であって殆んどカールを示さないポリマーを形成することができる。
【0019】
これを硬化成分として含有するコーティング剤は、基材に塗布され、活性エネルギー線により硬化されることで、硬化被膜を形成することができる。この硬化被膜は、高い硬度を示すため優れた表面保護性を有し、多官能ウレタン(メタ)アクリレートを硬化成分とした場合よりも収縮率を50%程度減少することができ、カール性を殆ど示さない。
【0020】
また、このコーティング剤は、ウレタン(メタ)アクリレートを硬化成分として含有することで、形成される硬化被膜が高硬度及び低収縮となるため、複数の硬化成分を含有させて硬度及び収縮の機能性バランスを整える必要がなく、経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、以下のようにして製造される。
【0023】
まず、第一反応工程として、ジイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとに、触媒不存在下又は有機金属触媒若しくは塩基性触媒の存在下で加熱攪拌し、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基と、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とを、付加反応させ、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とをウレタン結合させる。
【0024】
尚、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの配合量は、反応系中、ジイソシアネート化合物の総イソシアネート基数の方が、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル総水酸基数よりも多くなるようにする。
【0025】
その反応系内のイソシアネート基の濃度を測定し、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの配合比率から、水酸基が全て反応した際に残存するイソシアネート基の濃度の計算値以下になった時点で反応を終了し、イソシアネート基が残存した中間体を合成する。
【0026】
続いて、第二反応工程として、その中間体と水酸基含有ポリマーとを、触媒不存在下又は有機金属触媒若しくは塩基性触媒の存在下で加熱攪拌し、中間体の残存イソシアネート基を水酸基含有ポリマーの水酸基に付加させる。
【0027】
この残存イソシアネート基と水酸基含有ポリマーの水酸基とが、ウレタン結合してウレタン(メタ)アクリレートが製造される。
【0028】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、これらの反応工程のように、第一反応工程と第二反応工程とで分けて行う場合に限られず、中間体のイソシアネート基と水酸基含有ポリマーの水酸基とがウレタン結合している反応であればよい。
【0029】
中間体にイソシアネート基を残存させる手段は、ジイソシアネート化合物を水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルよりも過剰量とすることだけでなく、反応を途中で停止させることでもよい。
【0030】
中間体となる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは、具体的に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであるウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、また複数の混合物であってもよい。また、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと水酸基非含有の(メタ)アクリル酸エステルの混合物であってもよい。
【0031】
さらに、中間体となるジイソシアネート化合物は、具体的に、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びノルボルナンジイソシアネートを挙げることができる。ジイソシアネートは、単独で用いてもよく、また複数の混合物であってもよい。
【0032】
中間体は、形成される際、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とがウレタン結合しつつそれの他方のイソシアネート基が残存した化合物の他に、未反応ジイソシアネート化合物、未反応水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステル、及びジイソシアネート化合物の両イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とが夫々ウレタン結合をしている化合物を、共存モノマーとして含んでいてもよい。
【0033】
水酸基含有ポリマーは、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの重合体、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと水酸基非含有(メタ)アクリルモノマーとの共重合体である。具体的には、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、単官能の(メタ)アクリルモノマーであって、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ポリマーは、単独で用いてもよく、また複数の混合物であってもよい。
【0034】
水酸基含有ポリマーの平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン換算の数平均分子量で5000〜200000である。この平均分子量は、5000より少ないと、硬化に伴う硬化収縮率を高め、200000より多いと、樹脂の粘度を高める影響を与える。実用性の観点から、上記の範囲であることが好ましい。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートは、第一反応工程由来の水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステル、ジイソシアネート化合物の両イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とが夫々ウレタン結合をしている化合物、及び中間体に未反応で存在していたジイソシアネート化合物と水酸基含有ポリマーとの化合物を含んでいてもよい。
【0036】
このようにして得られたウレタン(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線により硬化するものである。この硬化状態は、高い硬度を示し、硬化前に比べて収縮性が極めて小さいものである。
【0037】
活性エネルギー線とは、熱線、紫外線、赤外線、可視光線、X線、放射線、電子線が挙げられる。
【0038】
このウレタン(メタ)アクリレートを硬化成分として含有するコーティング剤は、基材に塗布され、活性エネルギー線により硬化し、硬化被膜を形成する。このウレタン(メタ)アクリレートの他、前記のような未反応ジイソシアネート化合物、未反応水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステル、及びジイソシアネート化合物の両イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とが夫々ウレタン結合をしている化合物のような共存モノマーを含んでいてもよい。
【0039】
得られた硬化被膜は、基材の表面保護や硬度強化として用いられる。
【0040】
コーティング剤は、光重合開始剤、光重合助剤、添加剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、無機微粒子、有機微粒子を含んでいてもよい。
【0041】
塗布される基材は、具体的に、テトラアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートのようなフィルムが挙げられる。
【0042】
形成される硬化被膜の膜厚は、0.5〜20μmであると好ましい。
【実施例】
【0043】
本発明を適用するウレタン(メタ)アクリレートによる硬化被膜の試作例を、実施例に示す。また、本発明を適用外の硬化被膜の試作例を、比較例1〜5に示す。
【0044】
(実施例1)
・水酸基含有ポリマーの合成
四つ口フラスコにメチルイソブチルケトン(MIBK):600.00gを仕込み、窒素を吹き込みながら加温し、80℃に達した時点で、アゾジイソブチロニトリル(V−59):8.00gを添加した。そこに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートHO-250):120.00g、フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートPO-A):280.00gの混合物を、75〜82℃の間で約1時間かけて滴下した。滴下終了から4時間後90℃に昇温し、更に1時間後100℃に昇温して2時間熟成を行い、水酸基含有ポリマーを得た。
【0045】
・中間体1の合成
四つ口フラスコにペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートPE−3A):746.85g、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:デスモジュールI):253.15g、ジブチル錫ジラウレート:0.10gを仕込み、45〜50℃で撹拌し、過剰のアミンを添加し塩酸により逆滴定して測定されるイソシアネート濃度が0.86meq/g以下になるまで反応を行い、中間体1を得た。
・ウレタン(メタ)アクリレート1の合成
四つ口フラスコに合成された水酸基含有ポリマー:220.00g、中間体1:156.08g、メトキノン:0.1226g、ジブチルヒドロキシトルエン:0.1226g、MIBK:114.38g、ジブチル錫ジラウレート:0.08gを仕込み、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失するまで55〜62℃で反応を行い、ウレタン(メタ)アクリレート1を得た。
【0046】
・硬化被膜の形成
MIBKで希釈したウレタン(メタ)アクリレート:100g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5gの混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に♯16バーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間送風乾燥を行うことでMIBKを留去した。更に、紫外線照射量を100mJ/cmで5通過(パス)、紫外線照射し、硬化させ、硬化被膜を得た。
【0047】
・鉛筆硬度の測定
鉛筆引っかき試験法(JIS−K5400)に準じ、鉛筆硬度計を用いて、1Kg荷重で測定を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
・硬化収縮率の測定
比重瓶を用い硬化被膜を形成するための組成物の硬化前後の比重を測定した。下記式より、硬化前(組成物)の比重をX、硬化後(ポリマー)の比重をXとし、その収縮を硬化収縮率として算出した。
硬化収縮率(%)=[(X−X)/X]×100
その結果を表1に示す。
【0049】
・カール性の評価
硬化被膜を10cm四方に切り取り、その四隅の浮き高さの平均値を測定した。浮き高さの平均値が、20mm未満のものを○、20mm以上30mm未満のものを△、30mm以上のものを×とする3段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
・中間体2の合成
四つ口フラスコにペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートPE−3A):823.90g、ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:デュラネート50M):176.10g、ジブチル錫ジラウレート:0.05gを仕込み、イソシアネート濃度が0.52meq/g以下になるまで、45〜50℃で反応を行い、中間体2を得た。
【0051】
・ウレタン(メタ)アクリレート2の合成
実施例1で四つ口フラスコに合成された水酸基含有ポリマー:220.00g、中間体2:258.08g、メトキノン:0.1736g、ジブチルヒドロキシトルエン:0.1736g、MIBK:216.38g、ジブチル錫ジラウレート:0.07gを仕込み、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失するまで55〜62℃で反応を行い、ウレタン(メタ)アクリレート2を得た。
【0052】
実施例1と同様の方法により硬化被膜を形成した。
【0053】
また、実施例と同様に硬化被膜の鉛筆硬度の測定、硬化収縮率の測定及びカール性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
実施例のウレタン(メタ)アクリレートと同じ原料配合で、水酸基含有ポリマーにデスモジュールIの付加反応を行い、そこへライトアクリレートPE-3Aの付加反応を行う合成過程を試みた。しかし、水酸基含有ポリマーにデスモジュールIを付加するとゲル化したため、反応を行うことができなかった。
【0055】
(比較例2)
実施例のウレタン(メタ)アクリレートの代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製、商品名:UA-306H)を用い、ウレタンアクリレート:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:MIBK=100:5:105(重量部)の混合物で、実施例と同様の方法により硬化被膜を形成した。
【0056】
また、実施例と同様に硬化被膜の鉛筆硬度の測定、硬化収縮率の測定及びカール性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例3)
実施例のウレタン(メタ)アクリレートの代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製、商品名:UA-306I)を用い、ウレタンアクリレート:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:MIBK=100:5:105(重量部)の混合物で実施例と同様の方法により硬化被膜を形成した。
【0058】
また、実施例と同様に硬化被膜の鉛筆硬度の測定、硬化収縮率の測定及びカール性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
(比較例4)
実施例のウレタン(メタ)アクリレートの代わりに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製、商品名:UA-510H)を用い、ウレタンアクリレート:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:MIBK=100:5:105(重量部)の混合物で実施例と同様の方法により硬化被膜を形成した。
【0060】
また、実施例と同様に硬化被膜の鉛筆硬度の測定、硬化収縮率の測定及びカール性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
(比較例5)
実施例のウレタン(メタ)アクリレートの代わりに、ライトアクリレートPE-3Aを用い、アクリレートモノマー:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:MIBK=100:5:105(重量部)の混合物で実施例と同様の方法により硬化被膜を形成した。
【0062】
また、実施例と同様に硬化被膜の鉛筆硬度の測定、硬化収縮率の測定及びカール性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
実施例及び比較例1〜5の鉛筆硬度、硬化収縮率、カール性の各結果は、以下の通りである。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例は、多官能ウレタンアクリレートである比較例よりも、高い硬度であり、優れた表面保護を有することを示した。さらに、その硬化収縮率は、半分程であり、基材の反り返りであるカール性も低い数値であることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線により硬化させるタイプのインキ、塗料、ハードコート剤などのコーティング剤に、硬化成分として含有されて用いられる。
【0067】
このコーティング剤は、基材表面へ塗布され、硬化されることで硬化被膜を形成し、高分子基材の表面保護や表面硬度の強化のために、用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とでウレタン結合し、それの他方のイソシアネート基と水酸基含有ポリマーの水酸基とでウレタン結合していることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項2】
該水酸基含有ポリマーが、平均分子量を5000〜200000とすることを特徴とする請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項3】
該水酸基含有ポリマーが、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの重合体、及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと水酸基非含有(メタ)アクリルモノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項4】
該水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項3に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項5】
該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び/又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項6】
該ジイソシアネート化合物が、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、及び/又はノルボルナンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項7】
ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとを混合して、該ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基と該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基とがウレタン結合しつつそれの他方のイソシアネート基が残存した化合物を含有する中間体とし、その中間体に水酸基含有ポリマーを混合して、それの残存イソシアネート基と該水酸基含有ポリマーの水酸基とがウレタン結合したウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法。
【請求項8】
請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレートを含む硬化成分が、含有されていることを特徴とするコーティング剤。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング剤が塗布されて硬化していることを特徴とする硬化被膜。

【公開番号】特開2010−180319(P2010−180319A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24813(P2009−24813)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】