説明

エアウェイアダプタ、呼吸気濃度センサ、および呼吸気流量センサ

【課題】通気路23内へ人工呼吸器からの定常的に供給されるエアが流入するのを抑えることができる。
【解決手段】被測定者の呼吸気における特定成分の濃度又は呼吸気の流量を測定する測定部が装着されるエアウェイアダプタ10であって、内部に前記呼吸気を通気させるための通気路23が形成され、一端には前記被測定者へ供給する吸気を前記通気路23内へ導入する第一の開口25が設けられ、他端には前記被測定者の呼気を前記通気路23内へ導入する第二の開口26が設けられる管状部材20と、前記第一の開口25側に設けられ、前記通気路23の一部を遮る部分遮蔽部材27と、を備えることを特徴とするエアウェイアダプタ10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の呼吸気における特定成分の濃度を測定する呼吸気濃度センサ、呼吸気の流量を測定する呼吸気流量センサ、およびこれらのセンサに用いられるエアウェイアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
人の呼吸気中の炭酸ガスなどの濃度を光学的に測定する呼吸気ガスセンサが知られている(例えば特許文献1を参照)。このようなセンサでは、光学センサが取り付けられたエアウェイアダプタ内に被測定者の呼吸気を通過させて、当該呼気中の炭酸ガスなどの濃度の経時的な変化を光学的に検出することができる。また、被測定者からの呼気の一部を導入して濃度を測定する方法もある。このような呼吸気ガスセンサを呼吸管理が必要な患者に用いる場合、上記のエアウェイアダプタは、一般に、患者の体内に挿管されたチューブと人工呼吸器との間に設けられ、また、呼吸気流量センサも同様の位置に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−66243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように人工呼吸器を用いて患者の呼吸管理をする場合において、人工呼吸器からは患者への周期的な送気以外にも定常的にエアが供給される場合がある。乳幼児などのように換気量が小さい患者の場合、エアウェイアダプタ内に人工呼吸器からの定常的なエアが流入することにより、当該患者の呼気を正確に測定することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、被測定者の呼吸気における特定成分の濃度又は呼吸気の流量を測定する測定部が装着されるエアウェイアダプタであって、内部に前記呼吸気を通気させるための通気路が形成され、一端には前記被測定者へ供給する吸気を前記通気路内へ導入する第一の開口が設けられ、他端には前記被測定者の呼気を前記通気路内へ導入する第二の開口が設けられる管状部材と、前記第一の開口側に設けられ、前記通気路の一部を遮る部分遮蔽部材と、を備えることを特徴とするエアウェイアダプタを提供する。また、本発明のエアウェイアダプタは、前記通気路の内壁に沿って対向して設けられ、前記測定部により前記管状部材の外部から照射される検出光を前記通気路内へ透光する一対の透光窓を有することが好ましい。
【0006】
これにより、エアウェイアダプタが定常的にエアを供給する人工呼吸器に接続された場合でも、当該エアがエアウェイアダプタの通気路内へ流入するのを抑えることができる。
【0007】
また、本発明のエアウェイアダプタにおいて、前記一対の透光窓は、前記エアウェイアダプタの使用時において前記通気路の横側に位置する前記内壁に沿って設けられ、前記部分遮蔽部材は、前記通気路の下側を除く前記一部を遮ることが好ましい。
【0008】
これにより、通気路内で発生し、または通気路内に流入した結露水が、部分遮蔽部材に塞き止められて通気路内に滞留するのを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明のエアウェイアダプタにおいて、前記部分遮蔽部材は、前記第一の開口の近傍に設けられることが好ましい。
【0010】
これにより、通気路内への上記エアの流入をより効果的に抑えることができる。
【0011】
また、本発明のエアウェイアダプタにおいて、前記部分遮蔽部材は、前記管状部材と一体に設けられることが好ましい。
【0012】
これにより、部品点数を増加させることなく、管状部材に部分遮蔽部材を設けることができる。
【0013】
また、本発明のエアウェイアダプタにおいて、前記部分遮蔽部材の幅は、前記第二の開口側が前記第一の開口側よりも狭いことが好ましい。
【0014】
これにより、被測定者からの呼気がエアウェイアダプタから排出される際に、上記部分遮蔽部材による流出抵抗の増加を抑えることができる。
【0015】
本発明は、更に他の形態として、上記課題を解決する呼吸気濃度センサであって、上記いずれかの構成を有するエアウェイアダプタと、被測定者の呼吸気における特定成分の濃度を光学的に測定する測定部と、を備える呼吸気濃度センサを提供する。また、更に他の形態として、上記いずれかの構成を有するエアウェイアダプタと、被測定者の呼吸気の流量を測定する測定部と、を備える呼吸気流量センサを提供する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るエアウェイアダプタ10の外観図である。
【図2】エアウェイアダプタ10の上面図である。
【図3】エアウェイアダプタ10の正面図である。
【図4】エアウェイアダプタ10の底面図である。
【図5】エアウェイアダプタ10の左側面図である。
【図6】エアウェイアダプタ10の右側面図である。
【図7】図3のA−A断面における断面図である。
【図8】図4のB−B断面における断面図である。
【図9】図6のC−C断面における第一の開口25近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【図10】部分遮蔽部材37を備えたエアウェイアダプタ10の右側面図である。
【図11】部分遮蔽部材47を備えたエアウェイアダプタ10の右側面図である。
【図12】部分遮蔽部材57を備えたエアウェイアダプタ10の右側面図である。
【図13】部分遮蔽部材67を備えたエアウェイアダプタ10の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本実施形態に係るエアウェイアダプタ10の外観図である。また、図2、図3、および図4は、それぞれ、エアウェイアダプタ10の上面図、正面図、および底面図である。また、図5および図6は、エアウェイアダプタ10の左側面図および右側面図である。また、図7は、図3のA−A断面における断面図であり、図8は、図4のB−B断面における断面図である。
【0020】
エアウェイアダプタ10は、例えば、呼吸管理を要する患者などの被測定者の呼吸気における特定成分の濃度を光学的に測定する際に用いられるものであり、内部に呼吸気を通気させるための通気路23が形成された管状部材20を備える。このエアウェイアダプタ10は、例えば、管状部材20一端が人工呼吸器のエア供給源および呼気排出口にY字管等の接続部材を介して接続されるとともに、当該管状部材20の他端が被測定者の気管に挿管されるチューブに接続されることにより、上記測定に供される。
【0021】
管状部材20の一端側には、上記接続部材に接続固定される呼吸気側アダプタ21が設けられ、他端側には、上記チューブに接続固定される被測定者側アダプタ22が設けられる。また、通気路23における上記一端には、上記測定時に人工呼吸器から供給されるエアが導入される第一の開口25が設けられ、上記他端には、当該測定時に被測定者からの呼気が導入される第二の開口26が設けられる。
【0022】
通気路23には、透明な部材により形成される一対の透光窓24が、当該通気路23の内壁に沿って互いに対向して設けられる。上記測定時には、これら一対の透光窓24には、発光部および受光部により構成される測定部(不図示)が装着される。より具体的には、呼吸気における測定対象成分の吸収スペクトルを含む帯域の光(検出光)を発光する発光部の発光面と、当該発光部からの検出光を受光する受光部の受光面とが、同一の光軸上において対向するように一対の透光窓24に装着される。
【0023】
発光部および受光部を一対の透光窓24に対して上記のように配置することにより、発光部が発光する検出光は、一対の透光窓24を透過して受光部において受光される。これにより、公知の手段によって被測定者の呼吸気に含まれる測定対象成分の濃度を測定することができる。なお、上記測定対象成分としては、例えば二酸化炭素が例示される。
【0024】
ところで、本実施形態のエアウェイアダプタ10は、通気路23上における第一の開口25の近傍に、管状部材20と一体に形成された部分遮蔽部材27を備える。部分遮蔽部材27は、例えば図1、図6、図7、および図8に示すように、通気路23の一部を遮るように設けられる。この部分遮蔽部材27は、例えばエアウェイアダプタ10の呼吸気側アダプタ21が定常的にエアを供給する人工呼吸器に接続された場合に、当該人工呼吸器からのエアが通気路23内へ流入しにくくする役割を果たす。
【0025】
このように、本実施形態のエアウェイアダプタ10は、第一の開口25の近傍に部分遮蔽部材27が設けられているので、第二の開口26から通気路23内へと流入する被測定者の呼気が通気路23の中央部、すなわち上記一対の透光窓24が設けられた部分で上記人工呼吸器からの定常的なエアにより薄められるのを防ぐことができる。したがって、被測定者の呼気に含まれる測定対象成分の濃度をより正確に測定することができる。
【0026】
なお、本実施形態のエアウェイアダプタ10において、部分遮蔽部材27が設けられる位置は、通気路23上における第一の開口25の近傍に限られない。例えば、部分遮蔽部材27は、通気路23の中央部、すなわち上記一対の透光窓24が設けられた部分よりも第一の開口25側に設けられていればよい。そして、この場合においても、被測定者の呼気が通気路23の中央部において上記の定常的なエアにより薄められるのを防ぐことができる。
【0027】
また、本実施形態のエアウェイアダプタ10において、上記一対の透光窓24は、当該エアウェイアダプタ10の使用時において通気路23の横側に位置する内壁、すなわち通気路23の両側壁に沿った位置に設けられる。ここで、通気路23内を通過する呼吸気により通気路23内で生じ、又は外部から通気路23内に流入した結露水は、通気路23の底壁に沿って流れることから、透光窓24を上記のように配置することにより、透光窓24に付着するのを防ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態のエアウェイアダプタ10では、透光窓24が上記のように配置されるだけでなく、図5〜図8に示すように、部分遮蔽部材27が、通気路23の下側を遮らないように設けられる。したがって、上記結露水が部分遮蔽部材27に塞き止められて通気路23内に滞留することによりその一部が透光窓24に付着するのを防ぐことができる。
【0029】
また、本実施形態のエアウェイアダプタ10では、部分遮蔽部材27は、管状部材20と一体に設けられる。したがって、部品点数を増加させることなく管状部材20に部分遮蔽部材27を設けることができる。
【0030】
また、部分遮蔽部材27を管状部材20とは別体で設けてもよい。部分遮蔽部材27を別個の部品として設けることにより、例えば被測定者が乳幼児である場合など、呼気の排出圧が小さく、管状部材20内に上記の定常的なエアがより流入し易い場合に、必要に応じて、管状部材20に部分遮蔽部材27を取り付けることができる。
【0031】
また、本実施形態のエアウェイアダプタ10は、上記構成に限られず、例えばサイドストリーム方式で被測定者の呼吸気をサンプリングしてその成分濃度を測定する呼吸気濃度測定装置に接続するように構成してもよい。具体的には、一対の透過窓を設けず、被測定者側アダプタ22にサンプリングポートを設けることにより、被測定者の呼吸気をサンプリングできるように構成してもよい。
【0032】
また、エアウェイアダプタ10における呼吸気側アダプタ21と被測定者側アダプタ22のそれぞれに呼吸気流量を測定するための圧取出口を設けると共に、各圧取出口間の通気路23内部に固定部材を配置することにより、エアウェイアダプタ10を差圧式の流量測定センサとする構成にしてもよい。
【0033】
図9は、図6のC−C断面における第一の開口25近傍を拡大して示す拡大断面図である。図9に示すように、本実施形態のエアウェイアダプタ10において、部分遮蔽部材27を通気路23の内壁と平行な面で切断した断面の幅、すなわち図9に示す部分遮蔽部材27の断面における上下方向の長さは、第二の開口26側(図9の左側)が第一の開口25側(図9の右側)よりも狭い。
【0034】
部分遮蔽部材27の断面形状をかかる形状とすることにより、被測定者からの呼気がエアウェイアダプタ10から排出される際に生じる気流、すなわち、通気路23内において図9の左側から右側へ向かう気流が部分遮蔽部材27に衝突した際に生じる抵抗を小さくすることができる。
【0035】
なお、本発明の部分遮蔽部材の形状は、本実施形態のエアウェイアダプタ10に設けられる部分遮蔽部材27の形状に限らない。エアウェイアダプタ10は、部分遮蔽部材27に替えて、例えば、図10〜図13に示す形状を有する部分遮蔽部材37、47、57、67を備えてもよい。また、これらの部分遮蔽部材37、47、57、67は、部分遮蔽部材27と同様に、エアウェイアダプタ10における一対の透光窓24が設けられた部分よりも第一の開口25側に設けられることが好ましい。
【0036】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0037】
10…エアウェイアダプタ
20…管状部材
21…呼吸気側アダプタ
22…被測定者側アダプタ
23…通気路
24…透光窓
25…第一の開口
26…第二の開口
27、37、47、57、67…部分遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の呼吸気における特定成分の濃度又は呼吸気の流量を測定する測定部が装着されるエアウェイアダプタであって、
内部に前記呼吸気を通気させるための通気路が形成され、一端には前記被測定者へ供給する吸気を前記通気路内へ導入する第一の開口が設けられ、他端には前記被測定者の呼気を前記通気路内へ導入する第二の開口が設けられる管状部材と、
前記第一の開口側に設けられ、前記通気路の一部を遮る部分遮蔽部材と、
を備えることを特徴とするエアウェイアダプタ。
【請求項2】
前記通気路の内壁に沿って対向して設けられ、前記測定部により前記管状部材の外部から照射される検出光を前記通気路内へ透光する一対の透光窓を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のエアウェイアダプタ。
【請求項3】
前記一対の透光窓は、前記エアウェイアダプタの使用時において前記通気路の横側に位置する前記内壁に沿って設けられ、
前記部分遮蔽部材は、前記通気路の下側を除く前記一部を遮る請求項2に記載のエアウェイアダプタ。
【請求項4】
前記部分遮蔽部材は、前記第一の開口の近傍に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエアウェイアダプタ。
【請求項5】
前記部分遮蔽部材は、前記管状部材と一体に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアウェイアダプタ。
【請求項6】
前記部分遮蔽部材の幅は、前記第二の開口側が前記第一の開口側よりも狭いことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のエアウェイアダプタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のエアウェイアダプタと、
被測定者の呼吸気における特定成分の濃度を光学的に測定する測定部と、
を備えることを特徴とする呼吸気濃度センサ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のエアウェイアダプタと、
被測定者の呼吸気の流量を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする呼吸気流量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−187816(P2010−187816A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33627(P2009−33627)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】