説明

エアコンディショナの制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動変速機を備えた自動車等に適用されるエアコンディショナの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種自動車用のエンジンに関する先行技術として、例えば、特開昭58−28569号公報に示されるようなものが知られている。このものは吸気系にスロットルバルブを迂回するバイパス空気通路を設けるとともに、このバイパス空気通路の途中に流量制御弁を介設しておき、この流量制御弁の開度を制御することによって、アイドリング時のエンジン回転数を制御するようにしている。そして、自動変速機のシフトレバーが非走行位置から走行位置に切替えられたり、エアコンディショナが作動を開始することによって、エンジンに対する負荷が増大した場合には、その流量制御弁の制御位置を空気流量増大側に補正してエンジン回転の落ち込みを防止するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このようなアイドル回転数制御を行っているものにおいても、エアコンディショナが作動している状態で、アクセルペダルを強く踏み込んでレーシングを行ない、その直後に自動変速機のシフトレバーをP(パーキング)レンジやN(ニュートラル)レンジ等の非走行位置から、R(リアドライブ)レンジやD(ドライブ)レンジ等の走行位置にシフトしたような場合には、エンジンに作用する負荷が急増するためにエンジン回転の降下にはずみがつき、大幅な回転の落ち込みを招いてエンジンストールに至ることがある。
【0004】本発明は、エアコンディショナの作動タイミングに工夫をこらすことによって、このような不具合を確実に解消することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係るエアコンディショナの制御方法は、自動変速機付きエンジンの駆動力の一部を利用してエアコンディショナを駆動するようにしたシステムを前提にしている。かかるシステムにおいて、前記自動変速機が非走行位置にセットされており、かつ、エンジン回転数が所定値以上に上昇したというエアコンカット条件が成立した場合に、エアコンディショナの作動を停止させるとともに、そのエアコンカット条件が解除されても一定時間が経過するまではエアコンディショナの停止状態を維持することを特徴とする。
【0006】
【作用】本発明によれば、エアコンディショナが作動しており、かつ、自動変速機のシフトレバーが非走行位置にセットされている状態においてレーシングを行うと、エンジン回転数が設定値を上まわった段階でエアコンカット条件が成立し、エアコンディショナの作動が強制的に停止させられる。アクセルペダルを解放してエンジン回転数を急降下させレーシングを終了に向かわせる際には、その途上でエンジン回転数が前記設定値を下回ったり、自動変速機のシフトレバーが非走行位置から走行位置にシフト操作された段階で前記エアコンカット条件は解除される。しかしながら、本発明ではその解除時点ではエアコンディショナの作動を再開することはせず、その時点から所定の設定時間が経過するまで停止状態を維持しておく。そのため、エンジン回転数が急降下している状態において、エアコンディショナの作動に伴う負荷と、自動変速機のシフト操作に伴う衝撃的な負荷とがエンジンに作用するのを防止することができる。したがって、エンジン回転数の過度な落込みを招いてエンジンストールに至るというような不具合の発生を効果的に防ぐことができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図1、図2を参照して説明する。
【0008】図1はいわゆるオートマチック車に搭載されるエンジンシステムを概略的に示している。このシステムは、エンジン1の駆動力を自動変速機2により変速して図示しない駆動車輪に伝達するようにしている。自動変速機2は、トルクコンバータ2aを備えた公知な構成のもので、シフトレバー3の操作により変速レンジを切り替えることができるようになっている。シフトレバー3は、非走行位置としてP(パーキング)レンジとN(ニュートラル)レンジとを備えており、走行位置としてR(リアドライブ)レンジやD(ドライブ)レンジなどを具備している。
【0009】また、エンジン1の駆動力の一部を利用してエアコンディショナ4を駆動するようにしている。具体的には、エンジン1の出力を電磁クラッチ5を介してエアコンディショナ4のコンプレッサ6に伝達し得るようにしておき、この電磁クラッチ5をエアコンアンプ7からの指令信号aにより断続させるようにしている。エアコンアンプ7には、電子制御装置8からエアコン作動指令信号bまたはエアコン停止指令信号cが伝達されるようになっており、これらの信号b,cに基いて前記電磁クラッチ5を断続させるための指令信号aをエアコンアンプ7から出力するようにしている。
【0010】電子制御装置8は、CPU9と、メモリー10と、入力インターフェース11と、出力インターフェース12とを具備してなるマイクロコンピュータユニット13を主体に構成されており、その入力インターフェース11には、少なくともエンジン回転数を検出するための回転数センサ14からの信号d、エアコンディショナ4を作動、停止させるためのエアコンスイッチ15からの信号e、および、前記シフトレバー3のシフト位置を検出するためのシフト位置センサ16からの信号(図面では「A/T入力信号」と称する)fが入力されるようになっている。このシフト位置センサ16は、シフトレバー3を非走行位置にセットした場合にOFF信号を出力し、走行位置にセットした場合にON信号を出力する。この電子制御装置8には、前記エアコンスイッチ15の切替操作に応じてエアコンディショナ4を作動、停止させるための通常のプログラム以外に、本発明を実施するためのプログラムが内蔵されている。
【0011】本発明を実施するためのプログラムは、図2R>2に概略的に示すようなものである。まず、ステップ51では、エアコンディショナ4がON状態か否か(エアコンディショナ4が作動状態か否か)を判断し、ON状態ではステップ52へ移行するが、ON状態でない場合には、このルーチンは終了する。ステップ52では、エンジン回転数が設定値(例えば、3500r.p.m )よりも高いか否かを判断し、高い場合にはステップ53へ移行するが、高くない場合には、このルーチンは終了する。ステップ53では、自動変速機2のシフトレバー3が非走行位置(シフト位置センサ16がOFF信号を出力する位置)にセットされているか否かを判断し、非走行位置にセットされている場合にはステップ54へ移行するが、非走行位置にセットされていない場合には、このルーチンは終了する。ステップ54では、エアコンディショナ4をOFF状態(エアコンディショナ4を停止状態)に切替える。その後ステップ55へ移行する。ステップ55では、エンジン回転数が前記設定値よりも高いか否かを判断し、高い場合にはステップ56へ移行するが、高くない場合には、ステップ57へ移行する。ステップ56では、自動変速機2のシフトレバー3が非走行位置にセットされているか否かを判断し、非走行位置にセットされている場合にはステップ54へ戻り、再度ステップ55からのルーチンを行うものであり、非走行位置にセットされていない場合には、ステップ57へ移行する。ステップ57では、所定の設定時間を経過したか否かを判断し、所定の設定時間を経過した場合には、ステップ58へ移行するが、所定の設定時間を経過していない場合には、所定の設定時間が経過するまでエアコンディショナ4のOFF状態を維持する。ステップ58では、前記電子制御装置8からエアコン作動指令信号bをエアコンアンプ7に向けて出力することにより、前記エアコンアンプ7からの指令信号aを電磁クラッチ5に向けて出力させ、電磁クラッチ5を接続状態に切替える。この切替えによって、エンジン1の駆動力の一部をコンプレッサ6に伝達し、エアコンディショナ4の駆動を開始させて今回のルーチンを終了することになっている。
【0012】このような構成のものであれば、エアコンディショナ4がON状態で、かつ、自動変速機2のシフトレバー3が非走行位置にセットされている状態において、アクセルペダルを踏み込んでレーシングを行なっている場合に、エンジン回転数が設定値を上回った段階でエアコンカット条件が成立し、エアコンディショナ4を強制的にOFF状態にするものであり、また、アクセルペダルを解放してエンジンの回転数を急降下させレーシングを終了に向かわせる際には、その途上でエンジン回転数が前記設定値を下回った場合、又は、エンジン回転数が前記設定値を上回っている状態で、自動変速機2のシフトレバー3が走行位置(シフト位置センサ16がON信号を出力する位置)に切替えられた段階で、前述したエアコンカット条件が解除される。しかしながら、本発明に係る制御では、エアコンカット条件が解除された後も所定の設定時間を経過するまではエアコンディショナ4をOFF状態に維持しておき、所定の設定時間を経過した後に、前記エアコンディショナ4をON状態に切替える。この制御により、レーシング運転の後半域で自動変速機2のシフトレバー3が非走行位置から走行位置にシフト操作されるようなことがあっても、そのショックでエンジン回転数が急激に低下するのを抑制することができ、大幅な回転の落ち込みによるエンジンストールを防ぐものである。なお、エンジン回転数と比較する設定値は、必ずしも従来の設定値と合致させる必要はなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【0013】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明は、オートマチック車において、自動変速機が非走行位置にセットされている状態で、エンジン回転数が所定値を上回ることによりエアコンカット条件がした場合には、エアコンディショナの作動を強制的に停止させ、そのエアコンカット条件が解除された後も、所定の設定時間が経過するまではエアコンディショナの停止状態を維持するようにしているので、レーシング運転の後半域で自動変速機のシフトレバーが非走行位置から走行位置にシフト操作されて前述したエアコンカット条件が解除されたような場合でも、エンジン回転数の過度な落ち込みを招いてエンジンストールに至るというような不具合の発生を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成説明図。
【図2】同実施例の制御手順を示すフローチャート図。
【符号の説明】
1…エンジン
2…自動変速機
4…エアコンディショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】自動変速機付きエンジンの駆動力の一部を利用してエアコンディショナを駆動するようにしたものにおいて、前記自動変速機が非走行位置にセットされており、かつ、エンジン回転数が所定値以上に上昇したというエアコンカット条件が成立した場合に、エアコンディショナの作動を停止させるとともに、そのエアコンカット条件が解除されても一定時間が経過するまではエアコンディショナの停止状態を維持することを特徴とするエアコンディショナの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2826208号
【登録日】平成10年(1998)9月11日
【発行日】平成10年(1998)11月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−158008
【出願日】平成3年(1991)6月28日
【公開番号】特開平5−8636
【公開日】平成5年(1993)1月19日
【審査請求日】平成9年(1997)5月30日
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【参考文献】
【文献】特開 平2−41922(JP,A)
【文献】実開 平3−60109(JP,U)