説明

エアコン搭載車両

【課題】コストを掛けることなく、エアコンの温度制御と燃費低減とを実現する。
【解決手段】エアコンは、電磁クラッチ19を介してエンジン2で駆動されるコンプレッサ13と、車内に冷気を吹き出すためのエバポレータ16との呼び送風ファン17とを有する。エバポレータ16の前面近傍には温度センサ18を配置している。夜になってヘッドライト7を点灯すると、コンプレッサ13の運転を停止するための設定温度を高温設定値に高くする。夜には外気が低くなることでエアコンの効きがよくなるため、適切な冷房を自動的に実現できると共に、エンジンの動力がエアコン駆動に無駄に消費されることを防止して燃費向上に貢献できる。エアコンの制御手段として既存の電装品を利用するものであるため、コストアップは生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンを搭載した車両(自動車)に関するものであり、より詳しくは、ON・OFFか強弱程度の調節機能しか備えていない簡易なエアコン(クーラー)が搭載された車両を好適な対象にするものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両に搭載されたエアコンを制御態様で見ると、様々なグレードがある。高いグレードでは、室内の温度を検知する室温センサを設けて、この室温センサで検知した温度と予め設定した室内温度とを比較し、室内の温度が設定値になるように冷気の吹き出し温度と吹き出し量とを制御している(例えば特許文献1)。
【0003】
また、エアコンのコンプレッサは車両の走行動力源(エンジン車の場合はエンジン、ハイブリッド車の場合はバッテリー)で駆動されるが、動力源に過大な負荷が掛かることを防止するため、走行負荷が設定値を超えるとエアコンの駆動を強制的に停止することも行われている(例えば特許文献2)。更に、基本的な制御方式として、エバポレータの下流にサーモスイッチを設けて、吹き出し温度が設定値以下になるとコンプレッサを停止させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−264637号公報
【特許文献2】特開平10−175427号公報
【特許文献3】特開平06−255352号公報(段落0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1のように室内温度が一定に保たれるように制御するオートエアコンは理想的であるが、多数のセンサを要すると共にエアコンも調節機能を持った仕様でなければならないためコストが嵩む問題がある。また、必ずしも全てのユーザーがオートエアコン機能を求めているとは言えず、オートエアコン機能より燃費アップを希望しているユーザーも多くいると言える。
【0006】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、エアコンの自動温度調節と燃費向上とを、コストをアップさせることなく実現せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
エアコン(カークーラー)は車内(室内)を冷房するものなので、室温センサで検知してこれをエアコンにフィードバックさせるのは普通の発想であるが、車内の温度制御を可能ならしめる他の要素があれば、必ずしも車内に室温センサを設ける必要はない。本願発明者はこのように着想し、車両に必需品として備わっている電装品やセンサ等を利用してエアコンを制御できないかと考え、本願発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本願発明、走行動力源で駆動されるコンプレッサと、前記コンプレッサで圧縮された冷媒が送られるエバポレータと、前記エバポレータで吸熱されて車内に送られる冷気の温度を検知する温度センサとを備えており、前記温度センサで検知した温度が予め設定したエアコンカット設定温度より低くなると前記コンプレッサの駆動が停止する車両であって、ヘッドライト又はその他の外部環境対応電装品のON・OFFか、若しくは座席の体圧検知センサその他の人検知センサのON又はOFFにより、前記エアコンカット設定温度の調節が行われるようになっている。
【0009】
ここで、外部環境対応電装品とは車両の外部環境の変化によって運転手等が操作する電装品であり、暗くなると点灯するヘッドライトの他に、降雨によって使用するワイパーや、外の冷たい空気を取り入れるために空けるパワーウインドーのモータ等が挙げられる。他方、人検知センサとしては、各座席に設けている体圧検知センサの他に、体圧検知センサがONの状態のときにシートベルトの装着の有無を検知するシートベルトセンサなどが挙げられる。これら外部環境対応電装品と人検知センサとは、単一のものを使用することも可能であるし、複数種類を併用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
さて、エアコンのエバポレータを通過することで生成された冷気は車内に送られて昇温度するが、昇温の程度は外気温度や乗車人数と密接に関連している。すなわち、エアコンの吹き出し口での冷気の温度が一定であっても、外気温度が低いと昇温の程度は弱くなるため車内の温度が低くなって「冷え過ぎ」の現象が発生しやすく、また、乗車人数が少ないときも人の熱気は弱くなって熱交換が抑制されるため、これまた車内の温度が低くなって「冷え過ぎ」の現象が発生しやすい。
【0011】
また、標高が高くなったり日陰の走行になったりして外気が低くなると、エアコンは消さずに窓を空けて外の冷たい空気を取り込むことがよくあるが、この場合はエアコンを使用する必要性が低いと言える(例えば、エアコンのON・OFFは前部座席からしか操作できないので、後部座席に乗車している人は、一々エアコンのONを頼まずに窓を空けることがよくある。)。
【0012】
そして、夜になるとヘッドライトを点灯させるが、本願発明において、例えばヘッドライトに関連してエアコンカット設定温度が高くなるように設定しておくことにより、夜になって外気温度が低くなることで冷え過ぎ現象が発生することを防止できると共に、コンプレッサの駆動のために走行動力が無駄に消費されることを防止して燃費向上に貢献できる。
【0013】
すなわち、コストをかけずに、既存の設備を利用してエアコンの温度制御を行えると共に、燃費向上にも貢献できるのである。なお、昼間でもトンネル走行時にはヘッドライトを点灯させるが、ヘッドライトの点灯と外気温度の低下との関連性を高めるための手段として、ヘッドライトの点灯時間がある程度経過することを条件にしてエアコンカット設定温度の変更を行うのが好ましい。
【0014】
なお、エアコンカット設定温度の具体的な数値は地域性や季節、或いはユーザーの好み等を考慮して任意に設定できるが、低温設定値と高温設定値との2段階に切り替える場合は、おおよそ、低温設定値は2℃として高温設定値は4℃程度でよいと言える。
【0015】
雨天時も外気の温度は低くなると共に、車体が濡れることで車体の温度が低下するため車内での冷気の放熱性は悪くなり、晴天時に比べて昇温の程度は低くなる。従って、ワイパーのON・OFFに関連させて、ワイパーがONになったらエアコンカット設定温度を高くすることにより、コストアップを招来することなく、適切な温度調節と燃費向上とを実現可能になる。パワーウインドーについても、ONになったらエアコンの必要性が低下していると判断して、エアコンカット設定温度を高く設定することで、適切な温度調節と燃費向上とが実現可能になる。
【0016】
また、既述のように乗車人数が少ないと冷気の放熱性が低下して昇温の程度は弱くなるため、例えば、体圧センサやシートベルトセンサがONになることを利用して乗車人数を算定して、例えば2人以下の場合はエアコンカット設定温度を高く設定するというように制御することにより、適切な温度調節と燃費向上とが実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1).構成
次に、本願発明の実施形態に基づいて説明する。図1に示すように、車両はその前部にエンジンルーム1を設けており、このエンジンルーム1には、エンジン2がクランク軸を横長にした姿勢で配置されている。エンジンルーム1と車内3とは隔壁(図示せず)で仕切られており、車内3には座席4を配置している。各座席4にはシートベルト5が装備されており、各シートベルト5には、装着したことを検知するシートベルトセンサ6を設けている。図示していないが、各座席4には体圧検知センサを設けている。
【0019】
車両は、必須の装備品としてヘッドライト7とワイパー8とを備えており、ハンドル9を挟んだ両側に、ライト操作レバー10とワイパー操作レバー11とを配置している。なお、ヘッドライト7にはスモールランプを含ませてもよいし、含ませなくてもよい。ワイパー8はモータ12で駆動される。図では表示してないが、窓ガラスの昇降もモータで行われる。
【0020】
車両にはエアコンが搭載されている。このエアコンは、エンジン2で駆動されるコンプレッサ13と、コンプレッサ13で圧縮した冷媒が送られるコンデンサ(凝縮器)14と、コンデンサ14から送られた液化冷媒をバッファするレシーバ15と、レシーバ15から送られた冷媒を蒸発させるエバポレータ(蒸発器)16と、車内の空気を吸引してエバポレータ(蒸発器)16を通過させる送風ファン17とを有している(エバポレータ16と送風ファン17とは一体化して送風ユニットになっている。)。エバポレータ16の前面近傍には、冷気の温度を検知する温度センサ18を設けている。コンプレッサ13に電磁クラッチ19を介してエンジン2の動力が継断される。
【0021】
車両は、電気・電子系統を総括的に制御する制御装置20を備えている。図1では制御装置20をエンジンルーム1に配置しているが、これは便宜的な表示であり、例えばダッシュボードに設けることも可能である。また、制御装置20は互いに分離した複数のパートで構成されていてもよい。また、制御装置20は、燃料噴射制御等を司るエンジン制御ユニット(ECU)と一体化していてもよい。
【0022】
制御装置20はCPU(中央演算装置)やメモリー類を備えており、ヘッドライト7のON・OFFの信号、ワイパー8のON・OFFの信号、シートベルト5のON・OFFの信号、温度センサ18の電気信号は制御装置20に入力される。
【0023】
また、電磁クラッチ19のON・OFFは制御装置20の指示に基づいて行われる。電磁クラッチ19のON・OFFは温度センサ18から送られた電気信号に基づいて行われる。具体的には、RAMにエアコンカット設定温度が設定されており、適当な時間間隔で温度センサ18から送信された電気信号を比較回路に通して、温度センサ18の温度とエアコンカット設定温度との差を検知し、差がプラスの場合はコンプレッサの運転を継続し、差がゼロかマイナスになったら電磁クラッチ19をOFFにすると共にファン17の運転を停止する。そして、予め設定した時間が経過したら運転を再開する。
【0024】
(2).制御の具体例
次に、ヘッドライト7の点灯に連動してエアコンを制御する具体例を、図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップは「S」と略す。まず、エアコンのスイッチがONされることで制御系がスタートし、ヘッドライト7のON・OFFがサーチされる(S1)。
【0025】
ヘッドライト7がOFFの場合は、適宜時間を経過してからS1にリターンし、ヘッドライト7のスイッチがONである場合は、ヘッドライト7の点灯時間が予め設定されている時間を経過しているか否かが判断される(S2)。点灯時間が設定時間を経過していない場合は、適宜の時間を経過して再び設定時間の経過の有無が判断され、点灯時間が設定時間を経過した場合は、エアコンカット設定温度T0が低温設定値T1であるか否かが判断される(S3)。本実施形態では、エアコンカット設定温度T0は低温設定値T1と高温設定値T2との2段階の切り替え方式としており、T0はT1かT2かいずれか一方のみが選択される。また、低温設定値は2℃、高温設定値を4℃に設定している。
【0026】
エアコンカット設定温度T0がT1である場合は、エアコンカット設定温度T0を高温設定値T2に変更する(S4)。S4でエアコンカット設定温度T0を高温設定値T2に変更した場合、及び、S3でエアコンカット設定温度T0が高温設定値T2であった場合は、温度センサ18による検出温度T3と高温設定値T2との比較が行われ、T3がT2より低いか否かが判断される(S5)。T3がT2よりも低い場合は、冷え過ぎと判断してエアコンが一時的にカットされる(S6)。T3がT2より高い場合は、適宜の時間を経過してから再びT3<T2か否かが判断される。
【0027】
エアコンカットは、電磁クラッチ19をOFFにしてコンプレッサ13の運転を停止すると共に、送風ファン17の駆動を停止することで行われるが、コンプレッサ13のみを停止させて送風ファン17の駆動は継続することも可能である。
【0028】
エアコンが停止したら、予め設定しているエアコンカット時間が経過したか否かが判断され(S7)、エアコンカット時間を経過していると判断されたら、電磁クラッチ19をONにしてコンプレッサ13に動力伝達し、エアコンの運転を再開する(S8)。なお、S7からS8への移行は、タイマーを使用して行ってもよい。
【0029】
上記の具体例ではヘッドライト7のON・OFFによってエアコンカットを行っているが、ワイパー8等の他の要素のON・OFFに連動させることも可能である。乗車人数の増加は外気の低下による冷房能率アップを打ち消す方向に作用するので、例えば、ヘッドライト7の点灯やワイパー8の駆動によって所定時間が経過してからエアコンカット設定温度T0を高温設定値T1に切り替えるにおいて、各座席4に設けたシートベルトセンサ6や体圧センサの電気信号から乗車人数を演算して、人数が増えるとエアコンカットされるまでの時間が長くなるように補正することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願発明、乗用車等の車両に実際に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 エンジンルーム
2 走行動力源の例としてのエンジン
3 車内(室内)
4 座席
6 シートベルトセンサ
7 ヘッドライト
8 ワイパー
10 ライト操作レバー
11 ワイパー操作レバー
13 エアコンのコンプレッサ
16 エアコンのエバポレータ
17 エバポレータの送風ファン
18 温度センサ
19 電磁クラッチ
20 制御装置(制御ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動力源で駆動されるコンプレッサと、前記コンプレッサで圧縮された冷媒が送られるエバポレータと、前記エバポレータで吸熱されて車内に送られる冷気の温度を検知する温度センサとを備えており、前記温度センサで検知した温度が予め定めたエアコンカット設定温度より低くなると前記コンプレッサの駆動が停止する構成であって、
ヘッドライト又はその他の外部環境対応電装品のON・OFFか、若しくは座席の体圧検知センサその他の人検知センサのON又はOFFにより、前記エアコンカット設定温度の調節が行われる、
エアコン搭載車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate