説明

エアゾールキャップ

【課題】エアゾール容器のステムとエアゾールキャップのステム装着部とを迅速かつ確実に、正確な位置に装着することが可能なエアゾールキャップを提供する。
【解決手段】エアゾール容器50に装着され、エアゾール容器50のステム14が押下されることによってステム14から噴出された内容物を外部へ噴射させるエアゾールキャップ1であって、エアゾール容器50に装着されるキャップ本体部2と、ステム14に装着されるステム装着部19を備えたボタン部4と、を有し、キャップ本体部2には、ステム装着部19をステム14へ案内する案内レール7,7が設けられ、ボタン部4には、ボタン部4が案内レール7,7に沿って可動できるよう切欠き部17a,17aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に装着され、該エアゾール容器のステムが押下されることによって該ステムから噴出された内容物を外部へ噴射させるエアゾールキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に液状や粉状の内容物と液化ガスを詰め、液化ガスの圧力で防虫剤や消毒剤等の内容物を霧状に噴射させるエアゾール製品が知られている。エアゾール製品は、エアゾール容器内の液状や粉状の内容物と液化ガスとをバランスよく噴射しないと、最後に液状や粉状の内容物だけが残留してしまい使い切ることができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、液化ガスのみ使い切ってしまわないよう、ユーザが正しい位置にエアゾールキャップを装着させて噴射操作を行えるよう、エアゾールキャップの装着位置を視認用マークによって案内するものが開示されている。これによりユーザは、エアゾールキャップを視認用マークにしたがってステムに装着させれば、正しく装着させることができ、内容物を無駄に残留させることがなくなる。
【特許文献1】実録3052828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたキャップ付エアゾール容器の場合、視認用マークに基づいてキャップの嵌合孔とステムとを嵌合させるため、すばやく正確な位置に嵌合させるのは難しい。キャップの嵌合孔とステムとがうまく嵌合できないと、誤噴射の原因となり使い勝手がよくない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、エアゾール容器のステムとエアゾールキャップのステム装着部とを迅速かつ確実に、正確な位置に装着することが可能なエアゾールキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明に係るエアゾールキャップは、エアゾール容器に装着され、該エアゾール容器のステムが押下されることによって該ステムから噴出された内容物を外部へ噴射させるエアゾールキャップであって、前記エアゾール容器に装着されるキャップ本体部と、前記ステムに装着される噴射経路接続部及び/又はステム装着部を備えたボタン部と、を有し、前記キャップ本体部には、前記噴射経路接続部及び/又は前記ステム装着部を前記ステムへ案内する案内レールが設けられ、前記ボタン部には、該ボタン部が前記案内レールに沿って可動できるよう切欠き部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記構成のエアゾールキャップによれば、噴射経路接続部及びステム装着部の少なくとも何れか一方をエアゾール容器のステムへ案内する案内レールに沿って、ボタン部の切欠き部を可動させることが可能である。したがって、ユーザは、目分量等に頼ることなく切欠き部を案内レールに沿わせるだけで、ステムと噴射経路接続部及び/又はステム装着部とを迅速かつ確実に、正確な位置に装着することが可能である。
【0008】
また、上記構成のエアゾールキャップにおいて、前記ボタン部と前記キャップ本体部は、弱剛体部を介して一体として形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、一つの金型でエアゾールキャップを製造することができ、エアゾールキャップの製造コストを抑えることが可能である。
【0010】
また、上記構成のエアゾールキャップにおいて、前記キャップ本体部は、前記ボタン部と係合する係合部を備え、前記弱剛体部が変形されながら前記ステム装着部に前記ステムが装着され、前記ボタン部と前記係合部とが係合すると、該ステムが押下されることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ユーザが切欠き部を案内レールに沿わせて、ボタン部と係合部とを係合させると、ステムはステム装着部に装着されて押下されるので、ユーザがボタン部を押下し続けなくても、ステムからの内容物の噴射状態を維持することが可能である。したがって、使用済みのエアゾール容器に残留している残留ガスを最後まで確実に排出することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアゾール容器のステムとエアゾールキャップのステム装着部とを迅速かつ確実に、正確な位置に装着することが可能なエアゾールキャップを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るエアゾールキャップの実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
(エアゾールキャップの構造)
まず、図1〜図5を用いて、本実施形態にかかるエアゾールキャップ1の構造について説明する。図1は本実施形態にかかるエアゾールキャップの正面外観斜視図、図2はエアゾールキャップの背面外観斜視図、図3は、エアゾールキャップの上面図、図4はエアゾールキャップの底面斜視図、図5は通常使用時における非噴射状態を示した図3のA−A´線断面図である。
【0014】
本実施形態のエアゾールキャップ1は、主として、キャップ本体部2と、キャップ本体部2の正面下部3から延伸されたボタン部4とを有している。
キャップ本体部2は、図1に示すように上面視円形状を有し、前方指先案内凹部5aと後方指先案内凹部5bとからなる指先案内凹部5を介して上部左右に天板部6,6が形成されている。キャップ本体2内部の下部周縁にはエアゾール容器50(図5参照)と嵌合する嵌合手段8が形成されている。図5に示すように本実施形態において、キャップ本体部2は嵌合手段8によってエアゾール容器50に嵌合されることによってエアゾール装置60が構成されている。
【0015】
図3に示すように、後方指先案内部凹部5bは前方指先案内凹部5aよりもやや幅広に形成されている。ユーザは、幅広に形成された後方指先案内凹部5bからボタン部4に指を添え、エアゾール装置60の操作を行うことができる。天板部6,6には、天面から高さh(図2参照)に相当する位置であって指先案内凹部5の略中央部に、ボタン部4と係合する係合部9,9が形成されている。係合部9,9は、背面視略三角形状、を有し、その斜面がキャップ本体部2の天面方向を向くように、ボタン部4を介して互いに対向するように配置されている。
【0016】
さらに、図1〜3に示すように、天板部6,6には、係合部9,9よりも若干前方であって、ボタン部4を介して互いに対向するように、案内レール7,7が形成されている。案内レール7,7は、細長の棒形状を有し、その長手方向がキャップ本体部2の高さh方向に相当するように形成されている。
【0017】
次に、ボタン部4の構造について説明する。
ボタン部4は、図1に示すようにキャップ本体部2の正面下部3から延伸されているためキャップ本体部2とは一体構成となっている。図5に示すように、ボタン部4は、キャップ本体部2の正面下部3から谷折状に変形される薄厚の谷折部11と、山折状に変形される同じく薄厚の山折部12とから成る弱剛体部を有する延伸板13を介して、前方指先案内凹部5aから後方指先案内凹部5bへ沿うように形成されている。
【0018】
ボタン部4の前方にはエアゾール容器50のステム14から噴出される内容物を噴射する噴射口10が形成されている。通常使用時において、ステム14から噴出された内容物は噴射経路15を経由して噴射口10から外部へ噴射される。図2に示すように、ボタン部4の後方には上面視円形状の窪みが形成され、ボタン部4の押圧部18として後方指先案内凹部5bから添えられたユーザの指先を誘導する部位となっている。
【0019】
また、図2に示すように、押圧部18の下部は、緩やかな湾曲状に切り欠かれている湾曲部位21が設けられ、押圧部18の後端部分22にユーザが指を引っ掛けることができるようになっている。したがって、ユーザはエアゾール容器50の残留ガスを排出させる際には、指を湾曲部位21に合わせ、後端部分22に引っ掛るようにボタン部4を上方に持ち上げれば、後述する噴射経路接続部16を容易にエアゾール容器50のステム14から取り外すことが可能である。
【0020】
さらに、ボタン部4はキャップ本体部2の係合部9,9と係合する係合板17,17を備えている。図3に示すように、板状の係合板17,17はボタン部4の後方両側部分から、相反する方向に突出している。さらに、係合板17,17の前方には、ボタン部4がキャップ本体部2に形成された案内レール7,7に沿って可動できるよう、相反する方向に切り欠かれた切欠き部17a,17aが設けられている。切欠き部17a,17aは、案内レール7,7を跨いだ状態で案内レール7,7上を摺動可能な大きさに切り欠かれている。なお、案内レール7,7は、後述するステム装着部19をステム14へ案内する役割を果たしており、切欠き部17a,17aを案内レール7,7に摺動させれば、ステム14へ到達するような位置に配置されている。
【0021】
図4に示すように、ボタン部4の裏面側の略中央には円筒形状の噴射経路接続部16が形成され、噴射経路接続部16のさらに後方には残留ガスを排出する際にステム14に装着可能に形成された略円筒形状のステム装着部19が形成されている。そして、ステム装着部19の側壁にはステム14から噴出される残留ガスをキャップ本体部2の内部に放出させる放出孔20,20が形成されている。
【0022】
(エアゾールキャップの作用)
次に、ステム装着部19をステム14へ装着させる手順について図5〜10を用いて説明する。なお、本実施形態では、エアゾール装置60の通常使用時においてステム14は噴射経路接続部16に装着されており、残留ガスを排出する際にはステム14は噴射経路接続部16からステム装着部19に装着されるようになっている。したがって、ここでは通常使用状態から残留ガス排出状態へ移行させる際に、ステム14とステム装着部19とを、迅速かつ確実に、正確な位置に装着する手順について説明する。
【0023】
図5は、通常使用時における非噴射状態を示した図3のA−A´線断面図、図6は通常使用状態から残留ガス排出状態へ移行させる状態を示した第1動作断面図、図7は第2動作断面図、図8は通常使用状態から残留ガス排出状態へ移行後の状態を示した断面図、図9は残留ガス排出状態における排出状態を示した断面図、図10は、残留ガス排出状態における案内レールと切欠き部の状態を示した上面図である。
【0024】
図5に示すように通常使用時における非噴射状態ではエアゾール容器50のステム14は噴射経路接続部16に装着された状態である。この状態からユーザが押圧部18を押圧すると、ボタン部4がエアゾールキャップ1の後方斜め下方向に押し下げられることによって、ステム14が押下され噴射口10から内容物を噴射する。
【0025】
一方、通常使用時における非噴射状態から、図6に示すようにユーザが指を湾曲部位21に合わせ、押圧部18の後端部分22に引っ掛けるようボタン部4を矢印F1方向に持ち上げれば、容易にステム14と噴射経路接続部16との装着状態を解除することができる。なお、ボタン部4を矢印F1方向に持ち上げると同時に弱剛体部の谷折部11が谷折り方向に折り曲げられる。
【0026】
次に、ユーザはボタン部4の係合板17,17に形成された切欠き部17a,17aが案内レール7,7を跨ぐように、矢印F2方向へボタン部4を移動させながら、切欠き部17a,17aと案内レール7,7とを係合させる。このとき、谷折部11はさらに折り曲げられ、延伸板13とキャップ本体部2の正面下部3とによって鋭角部24が形成される。一方、山折部12は山折り方向に折り曲げられる(図7参照)。そして、切欠き部17a,17aが案内レール7,7を跨がった状態(図10参照)で、ボタン部4を矢印F3方向へ押し下げると、切欠き部17a,17aが案内レール上を摺動し、ステム装着部19がステム14へ案内されて装着される。このとき、図8に示すように、山折部12はさらに折り曲げられ、谷折部11、山折部12及び延伸板13とからなる折り曲げ部25は断面視Z形状に変形される。
【0027】
この状態で、さらにボタン部4を矢印F3方向へ押し下げると(図9参照)、係合板17,17が係合部9,9の斜面をつたって、係合部9,9の下へ入り込み係合状態とすることができる(図10参照)。すなわち、ステム装着部19によってステム14の押下状態が維持される。そして、ステム14から残留ガスが噴出されるとステム装着部19の側壁に形成された放出孔20からキャップ本体部2内部に放出される。図9,10に示すように、放出孔20から放出された残留ガスは、矢印X、Yのように、キャップ本体部2内部にじわじわと広がり最終的に矢印Zのように排出口23からキャップ本体部2外部へ排出される。
【0028】
このように、本実施形態によるエアゾールキャップ1によれば、ユーザが、切欠き部17a,17aを案内レール7,7に嵌め込めば、あとは案内レール上を摺動させるだけで、ステム装着部19がステム14へ案内される。したがって、ユーザは、目分量等に頼ることなく切欠き部17a,17aを案内レール7,7に沿わせるだけで、ステム14とステム装着部19とを迅速かつ確実に、正確な位置に装着することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態のエアゾールキャップ1によれば、係合板17,17が係合部9,9の斜面をつたって、係合部9,9の下へ入り込むように構成されているので、係合板17,17と係合部9,9とを係合させることができ、ステム装着部19によってステム14の押下状態を維持することができる。したがって、使用済みのエアゾール容器に残留している残留ガスを最後まで確実に排出することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態では、ステム14に装着される部位として噴射経路接続部16及びステム装着部19とを挙げ、案内レール7は、残留ガス排出状態へ移行する際に、ステム装着部19をステム14へ案内する役割を果たす場合について説明したが、案内レール7の他に別の案内レールを設けることも可能である。例えば、ステム装着部19をステム14へ案内する案内レール7の他に、通常使用時においてエアゾールキャップ1をエアゾール容器50に装着させる際に噴射経路接続部16をステム14へ案内する別の案内レールが設けられていてもよい。勿論、噴射経路接続部のみを備えたエアゾールキャップにも適用することが可能であり、この場合には、案内レールは、エアゾールキャップをエアゾール容器に装着させる際に噴射経路接続部をステムへ案内するよう配置される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態にかかるエアゾールキャップの正面外観斜視図である。
【図2】本実施形態にかかるエアゾールキャップの背面外観斜視図である。
【図3】本実施形態にかかるエアゾールキャップの上面図である。
【図4】本実施形態にかかるエアゾールキャップの底面斜視図である。
【図5】通常使用時における非噴射状態を示した断面図である。
【図6】通常使用時から残留ガス排出状態へ移行させる状態を示した第1動作断面図である。
【図7】通常使用時から残留ガス排出状態へ移行させる状態を示した第2動作断面図である。
【図8】通常使用時から残留ガス排出状態へ移行後の状態を示した断面図である。
【図9】残留ガス排出状態における噴出状態を示した断面図である。
【図10】残留ガス排出状態における案内レールと切欠き部の状態を示した上面図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・エアゾールキャップ、2・・・キャップ本体部、4・・・ボタン部、5・・・指先案内凹部、7・・・案内レール、9・・・係合部、10・・・噴射口、11・・・谷折部、12・・・山折部、13・・・延伸板、14・・・ステム、16・・・噴射経路接続部、17・・・係合板、17a・・・切欠き部、18・・・押圧部、19・・・ステム装着部、20・・・放出孔、23・・・排出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に装着され、該エアゾール容器のステムが押下されることによって該ステムから噴出された内容物を外部へ噴射させるエアゾールキャップであって、
前記エアゾール容器に装着されるキャップ本体部と、
前記ステムに装着される噴射経路接続部及び/又はステム装着部を備えたボタン部と、を有し、
前記キャップ本体部には、前記噴射経路接続部及び/又は前記ステム装着部を前記ステムへ案内する案内レールが設けられ、
前記ボタン部には、該ボタン部が前記案内レールに沿って可動できるよう切欠き部が設けられていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項2】
前記ボタン部と前記キャップ本体部は、弱剛体部を介して一体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾールキャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体部は、前記ボタン部と係合する係合部を備え、
前記弱剛体部が変形されながら前記ステム装着部に前記ステムが装着され、前記ボタン部と前記係合部とが係合すると、該ステムが押下されることを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾールキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−326583(P2007−326583A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157003(P2006−157003)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】