説明

エアゾールボタンおよびエアゾールキャップ

【課題】十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができるエアゾールボタンおよびエアゾールキャップを提供する。
【解決手段】エアゾールボタン20は、ノズル体22が第2流出路25の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、該第1噴口41の両側に一対形成され、第2流出路25に対して横方向に傾斜角θを有する第3流出路26の先端面で開口する第2噴口43とを有している。第1噴口41によって縦方向のみに拡散し、横方向に一定の厚みを有する主噴射Eが形成されるとともに、左右一対の第2噴口43によって横方向のみに拡散角αを有し、縦方向に一定の厚みを有する拡散噴射Fが形成される。この主噴射Eと拡散噴射Fが同時に噴射されることにより全体的に十字形状の噴霧パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器に装着されるエアゾールキャップに関し、特に十字状の広角な噴霧パターンを得るエアゾールボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から消臭剤等の内容物と液化ガスとが充填されたエアゾール容器に装着されるエアゾール用ノズルが知られている(例えば、特許文献1)。このエアゾール用ノズルは、使用時に押釦を押下することによりノズル体から内容物を噴射させることができる。
【0003】
図7に示したエアゾール用ノズル100は、押釦101にノズル体103を設け、ステム105の押圧時にエアゾール容器107の内部とノズル体103とを連通させる。ノズル体103には、内容物を流出させる流出路109が軸方向に形成されている。
【0004】
図8に示したノズル体103は、流出路109の流出先端部111が円形に形成されている。流出先端部111には、流出路109と直交する拡散割溝113が形成されている。この拡散割溝113の底部115が流出先端部111に切り込んで形成されている。これにより、拡散割溝113と流出路109の流出先端部111とが連通して、噴口117が形成されている。
【0005】
使用時は、押釦101を押圧してエアゾール容器107のバルブ機構(図示せず)が開弁すると、内容物がノズル体103の流出路109に流入する。流出先端部111に到達した内容物は、流出先端部111の内面で拡散して、流出先端部111から外部に噴出する。その噴出方向は、拡散割溝113によって両側が規制され、上下方向のみに拡散し、左右方向に一定の厚みを有する側面視で扇形状に噴射される。これにより、正面視で長方形状に近似した噴霧パターンを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−320775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のワイド噴射ノズルであるエアゾール用ノズル100は、拡散割溝113によって噴射を上下方向に拡散させ、左右方向には一定の厚みに制限していたので、左右方向にも拡散させたい場合には適していなかった。
そのため、上下方向のみに形成していた拡散割溝113を左右方向にも形成して、所謂、十字噴口による噴霧パターンを検討した。その結果、十字噴口では均一な拡散による十字形状の噴霧パターンを得ることはできなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができるエアゾールボタンおよびエアゾールキャップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することで前記エアゾール容器内の内容物を噴射するエアゾールボタンであって、一端がステム挿入孔として開口する第1流出路の形成されたボタン本体と、前記第1流出路と連通した第2流出路の先端面で開口させて噴口とするノズル体と、を備え、該ノズル体は、前記第2流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、該第1噴口の両側に一対形成され、前記第2流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路の先端面で開口する第2噴口と、を有していることを特徴とするエアゾールボタン。
【0010】
前記構成のエアゾールボタンによれば、ノズル体は、第2流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、第1噴口の両側に一対形成され、第2流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路の先端面で開口する第2噴口とを有している。これにより、ボタン本体の押下に伴ってエアゾール容器内の内容物が第1噴口と第2噴口から噴射されることで、十字形状で均一拡散する噴霧パターンを得ることができる。
【0011】
(2)(1)のエアゾールボタンであって、前記第1噴口は、前記ノズル体先端に挿着された噴口チップによって形成され、前記第3流出路は、主に前記ノズル体側の前記第2流出路を形成する内周面上に形成された内周溝によって形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【0012】
前記構成のエアゾールボタンによれば、第3流出路は、主にノズル体側の内周面上の内周溝によって形成されているので、ノズル体の成形と同時に内周溝を成形することができる。これにより、ノズル体先端に噴口チップを挿着することで、第3流出路を確実に形成できるので、均一拡散する噴霧パターンを確実に得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0013】
(3)(1)のエアゾールボタンであって、前記第1噴口は、前記ノズル体先端に挿着された噴口チップによって形成され、前記第3流出路は、主に前記噴口チップ側の外周面上に形成された外周溝によって形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【0014】
前記構成のエアゾールボタンによれば、第3流出路は、主に噴口チップ側の外周面上の外周溝によって形成されているので、噴口チップの成形と同時に外周溝を成形することができる。これにより、ノズル体先端に噴口チップを挿着することで、第3流出路を確実に形成できるので、均一拡散する噴霧パターンを確実に得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0015】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のエアゾールボタンと、前記エアゾール容器に嵌合装着されるキャップ本体とが一体形成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【0016】
前記構成のエアゾールキャップによれば、ノズル体とボタン本体を一体にしたエアゾールボタンに、さらにキャップ本体が一体形成されることで、従来別部品であったノズル体、ボタン本体およびキャップ本体が1部品となる。これにより、十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエアゾールボタンおよびエアゾールキャップによれば、ノズル体は、第2流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、第1噴口の両側に一対形成され、第2流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路の先端面で開口する第2噴口とを有している。したがって、ボタン本体の押下に伴ってエアゾール容器内の内容物が第1噴口と第2噴口から噴射されることで、十字形状で均一拡散する噴霧パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るエアゾールボタンの第1実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2に示した要部の拡大図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】本発明に係るエアゾールボタンの第2実施形態を示す水平断面図(図3のB−B線断面図に相当)である。
【図7】従来のワイド噴射ノズルを備えたエアゾール容器の要部断面図である。
【図8】図7に示したノズル体の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態によるエアゾールキャップ10は、エアゾール容器11の上部に嵌合装着されるキャップ本体13とエアゾールボタン20が、一体的に形成されている。エアゾールボタン20は、ボタン本体21の一側面から突出した円筒状のノズル体22を備えている。エアゾールキャップ10は、エアゾール容器11のステムに挿着され、使用時にエアゾールボタン20を押下することでエアゾール容器内の消臭剤等の原液と噴射剤である液化ガスとの混合内容物を噴霧状に噴射する。
【0020】
図3及び図4に示すように、エアゾールボタン20のボタン本体21は、下端側にステム挿入孔23として開口する第1流出路24を備えている。ノズル体22は、ボタン本体21の側面に突設され、第1流出路24の中心軸Cと直交する軸線Dに沿って穿設された第2流出路25を備えている。また、ノズル体22は、第2流出路25の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、該第1噴口41の両側に一対の第2噴口43とを有している。
【0021】
第2流出路25を形成するノズル体22の先端には、噴口チップ30が挿着されている。噴口チップ30は、筒状の装着部31と、該装着部31先端の噴射部33とを備えている。噴射部33は、先端の流出先端部49にチップ流出路45と直交する拡散割溝39が形成されている。即ち、拡散割溝39の底部51が流出先端部49に切り込んで形成されており、拡散割溝39とチップ流出路45の流出先端部49とが連通して第1噴口41を形成している。この拡散割溝39の溝幅Gは均一に形成されているが、溝深さHは軸線Dから上下の側端にかけてほぼ半円形に形成されている。
【0022】
図5に示すように、噴口チップ30の外周には、装着部31と噴射部33との間に環状の鍔部37を有するとともに、装着部31に固定用の爪部35を有している。この鍔部37の爪部35側は、鈍角である傾斜角θの傾斜面53を有している。また、ノズル体22は、軸線Dに沿って第2流出路25を形成する内周面上の対向した位置に左右一対の内周溝27が形成されている。このノズル体22の内周溝27と噴口チップ30の装着部31の外周面とによって第3流出路26が形成されている。
【0023】
第3流出路26の前端部は、第2流出路25に対して鍔部37の傾斜角θを有する傾斜面53によって左右方向(拡散方向)に屈曲している。この屈曲した第3流出路26の先端には、第1噴口41に対して横方向への拡散角α(=π−θ)を有する第2噴口43が開口している。したがって、第1噴口41によって縦方向のみに拡散し、横方向に一定の厚みを有する主噴射Eが形成されるとともに、左右一対の第2噴口43によって横方向のみに拡散角αを有し、縦方向に一定の厚みを有する拡散噴射Fが形成される。この主噴射Eと拡散噴射Fが同時に噴射されることにより全体的に十字形状の噴霧パターンが形成される。
【0024】
上述したように本実施形態のエアゾールボタン20によれば、ノズル体22は、第2流出路25の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、第1噴口41の両側に一対形成され、第2流出路25に対して横方向に傾斜角θを有する第3流出路26の先端面で開口する第2噴口43とを有している。これにより、ボタン本体21の押下に伴ってエアゾール容器11内の内容物が第1噴口41と第2噴口43とから同時に噴射される。これにより、全体的に十字形状で且つ均一拡散する噴霧パターンを実現することができる。
【0025】
また、第3流出路26は、主にノズル体22側の内周面上の内周溝27によって形成されているので、ノズル体22の成形と同時に内周溝27を成形することができる。これにより、ノズル体22先端に噴口チップ30を挿着することで、第3流出路26を確実に形成できるので、均一拡散する噴霧パターンを確実に得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0026】
また、本実施形態のエアゾールキャップ10によれば、ノズル体22とボタン本体21を一体にしたエアゾールボタン20に、さらにキャップ本体13が一体形成されることで、従来別部品であったノズル体22、ボタン本体21及びキャップ本体13が1部品となる。これにより、全体的に十字形状で且つ均一拡散する噴霧パターンを実現することができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づいて説明する。なお、上記第1実施形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付すことで説明を簡略化又は省略する。
【0028】
図6に示すように、本実施形態のエアゾールボタン40は、第2流出路25の先端面で開口する第1噴口41及び第1噴口41の両側に形成される一対の第2噴口43の構成及び配置位置は同じであるが、第2噴口43に向う第3流出路67の構成が第1実施形態と異なっている。即ち、ノズル体22の先端に挿着される噴口チップ60は、筒状の装着部61の外周面の対向した位置に一対の外周溝65を有している。この外周溝65とノズル体22側の第2流出路25を形成する内周面29とによって第3流出路67が形成されている。
【0029】
第3流出路67の前端部は、第2流出路25に対して横方向に傾斜角θを有する鍔部37の傾斜面53によって拡散方向に屈曲しており、第1噴口41に対して横方向に拡散角αを有する第2噴口43が開口している構成は第1実施形態と同じである。したがって、第1噴口41によって縦方向のみに拡散し、横方向に一定の厚みを有する主噴射Eと、左右一対の第2噴口43によって横方向のみに拡散角αを有し、縦方向に一定の厚みを有する拡散噴射Fとが同時に噴射される。これにより、全体的に十字形状の噴霧パターンが形成される。
【0030】
上述したように本実施形態のエアゾールボタン40によれば、第3流出路67は、主に噴口チップ60側の外周面上の外周溝65によって形成されているので、噴口チップ60の成形と同時に外周溝65を成形することができる。これにより、ノズル体22先端に噴口チップ60を挿着することで、第3流出路67を確実に形成できるので、均一拡散する噴霧パターンを確実に得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、エアゾールボタンの側方から噴射する実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、エアゾールボタンの上方から噴射する実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…エアゾールボタンキャップ
11…エアゾール容器
13…キャップ本体
20、40…エアゾールボタン
21…ボタン本体
22…ノズル体
24…第1流出路
25…第2流出路
26、67…第3流出路
27…内周溝
30、60…噴口チップ
41…第1噴口
43…第2噴口
45…チップ流出路
65…外周溝
α…拡散角
θ…傾斜角
E…主噴射
F…拡散噴射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することで前記エアゾール容器内の内容物を噴射するエアゾールボタンであって、
一端がステム挿入孔として開口する第1流出路の形成されたボタン本体と、
前記第1流出路と連通した第2流出路の先端面で開口させて噴口とするノズル体と、を備え、
該ノズル体は、前記第2流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、
該第1噴口の両側に一対形成され、前記第2流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路の先端面で開口する第2噴口と、
を有していることを特徴とするエアゾールボタン。
【請求項2】
請求項1記載のエアゾールボタンであって、
前記第1噴口は、前記ノズル体先端に挿着された噴口チップによって形成され、
前記第3流出路は、主に前記ノズル体側の前記第2流出路を形成する内周面上に形成された内周溝によって形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【請求項3】
請求項1記載のエアゾールボタンであって、
前記第1噴口は、前記ノズル体先端に挿着された噴口チップによって形成され、
前記第3流出路は、主に前記噴口チップ側の外周面上に形成された外周溝によって形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエアゾールボタンと、前記エアゾール容器に嵌合装着されるキャップ本体とが一体形成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−139994(P2011−139994A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2196(P2010−2196)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】