説明

エアゾールボタンおよびエアゾールキャップ

【課題】十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができるエアゾールボタンおよびエアゾールキャップを提供する。
【解決手段】エアゾールボタンは、噴口チップ30の内部に第2流出路25と連通するチップ流出路45と、このチップ流出路45と連通して横方向に傾斜角θを有する第3流出路37とを有している。また、噴口チップ30は、チップ流出路45の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、第1噴口41の両側部に一対形成され、第3流出路37の先端面で開口する第2噴口43とを有している。第1噴口41によって縦方向に拡散し、横方向にも所定量の縦拡散角を有する主噴射Eが形成されるとともに、左右一対の第2噴口43によって横拡散角αを有し、縦方向に一定の厚みを有する拡散噴射Fが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器に装着されるエアゾールキャップに関し、特に十字状の広角な噴霧パターンを得るエアゾールボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から消臭剤等の内容物と液化ガスとが充填されたエアゾール容器に装着されるエアゾール用ノズルが知られている(例えば、特許文献1)。このエアゾール用ノズルは、使用時に押釦を押下することによりノズル体から内容物を噴射させることができる。
【0003】
図7に示したエアゾール用ノズル100は、押釦101にノズル体103を設け、ステム105の押圧時にエアゾール容器107の内部とノズル体103とを連通させる。ノズル体103には、内容物を流出させる流出路109が軸方向に形成されている。
【0004】
図8に示したノズル体103は、流出路109の流出先端部111が円形に形成されている。流出先端部111には、流出路109と直交する拡散割溝113が形成されている。この拡散割溝113の底部115が流出先端部111に切り込んで形成されている。これにより、拡散割溝113と流出路109の流出先端部111とが連通して、噴口117が形成されている。
【0005】
使用時は、押釦101を押圧してエアゾール容器107のバルブ機構(図示せず)が開弁すると、内容物がノズル体103の流出路109に流入する。流出先端部111に到達した内容物は、流出先端部111の内面で拡散して、流出先端部111から外部に噴出する。その噴出方向は、拡散割溝113によって両側が規制され、上下方向のみに拡散し、左右方向に一定の厚みを有する側面視で扇形状に噴射される。これにより、正面視で長方形状に近似した噴霧パターンを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−320775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のワイド噴射ノズルであるエアゾール用ノズル100は、拡散割溝113によって噴射を上下方向に拡散させ、左右方向には一定の厚みに制限していたので、左右方向にも拡散させたい場合には適していなかった。
そのため、上下方向のみに形成していた拡散割溝113を左右方向にも形成して、所謂、十字噴口による噴霧パターンを検討した。その結果、十字噴口では均一な拡散による十字形状の噴霧パターンを得ることはできなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができるエアゾールボタンおよびエアゾールキャップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することで前記エアゾール容器内の内容物を噴射するエアゾールボタンであって、一端がステム挿入孔として開口する第1流出路の形成されたボタン本体と、前記第1流出路と連通した第2流出路の先端面で開口させて噴口とするノズル体と、該ノズル体の開口部先端に挿着される噴口チップと、を備え、該噴口チップは、その内部に前記第2流出路と連通するチップ流出路と、該チップ流出路と連通し、該チップ流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路と、を有するとともに、前記チップ流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、該第1噴口の両側部に一対形成され、前記第3流出路の先端面で開口する第2噴口と、を有していることを特徴とするエアゾールボタン。
【0010】
前記構成のエアゾールボタンによれば、噴口チップは、その内部に第2流出路と連通するチップ流出路と、このチップ流出路と連通して横方向に傾斜角を有する第3流出路とを有するとともに、チップ流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、第1噴口の両側部に一対形成され、第3流出路の先端面で開口する第2噴口とを有している。
これにより、ボタン本体の押下に伴ってエアゾール容器内の内容物が第1噴口と第2噴口から噴射されることで、十字形状で均一拡散する噴霧パターンを得ることができる。
また、噴口チップのみを交換することで、様々な十字形状の噴霧パターンを形成することができ、ノズル体側を共通化することで汎用性に優れたエアゾールボタンを得ることができる。
【0011】
(2)(1)のエアゾールボタンであって、前記第1噴口は、上下方向に開放された一対の第1突出部により形成されるとともに、前記第2噴口は、前記第1突出部の両側部に形成され、前端にカット面を有する一対の第2突出部により形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【0012】
前記構成のエアゾールボタンによれば、第1噴口が上下方向に開放された一対の第1突出部に形成され、第2噴口が第1突出部の両側部に形成され、前端にカット面を有する一対の第2突出部により形成されている。これにより、さらに広範囲に均一拡散可能な十字形状の噴霧パターンを得ることができる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載のエアゾールボタンと、前記エアゾール容器に嵌合装着されるキャップ本体とが一体形成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【0014】
前記構成のエアゾールキャップによれば、ノズル体とボタン本体を一体にしたエアゾールボタンに、さらにキャップ本体が一体形成されることで、従来別部品であったノズル体、ボタン本体およびキャップ本体が1部品となる。これにより、十字形状に均一拡散する噴霧パターンを得ることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエアゾールボタンおよびエアゾールキャップによれば、噴口チップは、その内部に第2流出路と連通するチップ流出路と、該チップ流出路と連通し、該チップ流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路と、を有している。さらに、噴口チップは、チップ流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、該第1噴口の両側部に一対形成され、前記第3流出路の先端面で開口する第2噴口と、を有している。
したがって、ボタン本体の押下に伴ってエアゾール容器内の内容物が第1噴口と第2噴口から噴射されることで、十字形状で均一拡散する噴霧パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るエアゾールボタンの一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2に示した要部の拡大図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図4の要部の拡大図である。
【図6】図3のB−B線断面図である。
【図7】従来のワイド噴射ノズルを備えたエアゾール容器の要部断面図である。
【図8】図7に示したノズル体の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態によるエアゾールキャップ10は、エアゾール容器11の上部に嵌合装着されるキャップ本体13とエアゾールボタン20が、一体的に形成されている。エアゾールボタン20は、ボタン本体21の一側面から突出した円筒状のノズル体22を備えている。エアゾールキャップ10は、エアゾール容器11のステムに挿着され、使用時にエアゾールボタン20を押下することでエアゾール容器内の消臭剤等の原液と噴射剤である液化ガスとの混合内容物を噴霧状に噴射する。
【0018】
図3〜図5に示すように、エアゾールボタン20のボタン本体21は、下端側にステム挿入孔23として開口する第1流出路24を備えている。ノズル体22は、ボタン本体21の側面に突設され、第1流出路24の中心軸Cと直交する軸線Dに沿って穿設された第2流出路25を備えている。また、ノズル体22は、第2流出路25の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、該第1噴口41の両側に一対の第2噴口43とを有している。
【0019】
第2流出路25を形成するノズル体22の先端には、噴口チップ30が挿着されている。噴口チップ30は、円筒状の装着部31と、該装着部31先端の噴射部33とを備えている。装着部31は、内部にチップ流出路45を有しており、外部の前方側に大径部32と後方側に小径部34を有しており、小径部34の外周には固定用の爪部35を有している。噴口チップ30の組付け時には、小径部34側からノズル体22先端の挿着部27内に挿入されることで、大径部32で位置決めされると共に爪部35により固定される。
【0020】
噴射部33は、装着部前端面36から突出しており、チップ流出路45の先端面で開口して主噴射する円形の第1噴口41と、該第1噴口の両側部に一対形成され、後述する第3流出路37の先端面で開口する矩形の第2噴口43と、を有している。
【0021】
第1噴口41は、上下方向に開放された一対の第1突出部47により形成されている。この一対の第1突出部47によりチップ流出路45と直交する拡散割溝39が形成されている。この拡散割溝39の溝深さHは、後述する第2突出部51からの突出量に相当する。第1突出部47は、第1噴口41側に傾斜した上下一対の第1傾斜面49を有しており、第1噴口41の上側の一対の第1傾斜面49により上方への縦拡散角βが形成され、下側の一対の第1傾斜面49により下方への縦拡散角βが形成されている。例えば、縦拡散角βは60°である。なお、本実施形態では上下の縦拡散角βを同じ角度としたが上下で異なる角度にすることも可能である。
【0022】
図3及び図6に示すように、第2噴口43は、第1突出部47の両側部に形成され、前端にカット面55を有する一対の第2突出部51に形成されている。第2突出部51の内部には、チップ流出路45と連通し該チップ流出路45の軸線Dに対して横方向に鈍角である傾斜角θの第2傾斜面53を有する左右一対の第3流出路37が形成されている。例えば、カット面55は後方側に角度30°傾斜したカット面であり、第2傾斜面53の傾斜角θは150°である。
【0023】
第2噴口43は、第3流出路37の前端部で傾斜角θの第2傾斜面53によって左右方向(拡散方向)に屈曲している。これにより、第2噴口43は、第1噴口41に対して横方向への横拡散角α(=π−θ)を形成している。したがって、第1噴口41によって縦方向に拡散し、横方向にも所定量の縦拡散角βを有する主噴射Eが形成されるとともに、左右一対の第2噴口43によって横方向への横拡散角αを有し、縦方向に一定の厚みを有する拡散噴射Fが形成される。この主噴射Eと拡散噴射Fが同時に噴射されることにより全体的に広範囲に均一拡散可能な十字形状の噴霧パターンが形成される。
【0024】
上述したように本実施形態のエアゾールボタン20によれば、噴口チップ30は、その内部に第2流出路25と連通するチップ流出路45と、このチップ流出路45と連通して横方向に傾斜角θを有する第3流出路37とを有している。また、噴口チップ30は、チップ流出路45の先端面で開口して主噴射する第1噴口41と、第1噴口41の両側部に一対形成され、第3流出路37の先端面で開口する第2噴口43とを有している。
これにより、ボタン本体21の押下に伴ってエアゾール容器11内の内容物が第1噴口41と第2噴口43から噴射されることで、全体的に十字形状で且つ均一拡散する噴霧パターンを実現することができる。また、噴口チップ30のみを交換することで、様々な十字形状の噴霧パターンを形成することができ、ノズル体22側を共通化することで汎用性に優れたエアゾールボタンを得ることができる。
【0025】
また、第1噴口41が上下方向に開放された一対の第1突出部47に形成され、第2噴口43が第1突出部47の両側部に形成され、前端にカット面55を有する一対の第2突出部51により形成されている。これにより、さらに広範囲に均一拡散可能な十字形状の噴霧パターンを実現することができる。
【0026】
また、本実施形態のエアゾールキャップ10によれば、ノズル体22とボタン本体21を一体にしたエアゾールボタン20に、さらにキャップ本体13が一体形成されることで、従来別部品であったノズル体22、ボタン本体21及びキャップ本体13が1部品となる。これにより、全体的に十字形状で且つ均一拡散する噴霧パターンを実現することができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、エアゾールボタンの側方から噴射する実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、エアゾールボタンの上方から噴射する実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…エアゾールボタンキャップ
11…エアゾール容器
13…キャップ本体
20…エアゾールボタン
21…ボタン本体
22…ノズル体
24…第1流出路
25…第2流出路
27…挿着部
30…噴口チップ
31…装着部
33…噴射部
37…第3流出路
39…拡散割溝
41…第1噴口
43…第2噴口
45…チップ流出路
47…第1突出部
49…第1傾斜面
51…第2突出部
53…第2傾斜面
55…カット面
α…横拡散角
β…縦拡散角
θ…傾斜角
E…主噴射
F…拡散噴射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することで前記エアゾール容器内の内容物を噴射するエアゾールボタンであって、
一端がステム挿入孔として開口する第1流出路の形成されたボタン本体と、
前記第1流出路と連通した第2流出路の先端面で開口させて噴口とするノズル体と、
該ノズル体の開口部先端に挿着される噴口チップと、を備え、
該噴口チップは、その内部に前記第2流出路と連通するチップ流出路と、該チップ流出路と連通し、該チップ流出路に対して横方向に傾斜角を有する第3流出路と、を有するとともに、
前記チップ流出路の先端面で開口して主噴射する第1噴口と、
該第1噴口の両側部に一対形成され、前記第3流出路の先端面で開口する第2噴口と、
を有していることを特徴とするエアゾールボタン。
【請求項2】
請求項1記載のエアゾールボタンであって、
前記第1噴口は、上下方向に開放された一対の第1突出部により形成されるとともに、
前記第2噴口は、前記第1突出部の両側部に形成され、前端にカット面を有する一対の第2突出部により形成されていることを特徴とするエアゾールボタン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアゾールボタンと、前記エアゾール容器に嵌合装着されるキャップ本体とが一体形成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−177677(P2011−177677A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46107(P2010−46107)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】