説明

エアゾール内容物噴射装置

【課題】
エアゾール内容物の噴射完了後に押釦の噴出路内に残留したエアゾール内容物を、簡易な構成により外部に排出してアフタードローを防止するとともに、エアゾール内容物の噴射完了後に押釦内にエアゾール内容物が残留するのを抑制して、次回の噴射時に於けるエアゾール製品の品質を良好に保つ。
【解決手段】
エアゾール容器6のステム7と連通し一端部をノズル4とする噴出路5を設けて押釦1を形成する。押釦1に噴出路5と隣接して噴出路5の密閉部材12をこの噴出路5の軸方向の一端部から他端部まで配置する。ステム7の押圧によるエアゾール内容物の噴射後に、密閉部材12を前記噴出路5側に移動させて前記噴出路5を密閉する。前記噴出路5内に残留したエアゾール内容物をノズル4から外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に充填した頭髪用品、化粧品、制汗剤、消臭剤、医薬品、その他のエアゾール内容物を噴出させるためのエアゾール内容物噴射装置に関するもので、特に、アフタードローの抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品、特に、フォーム剤、後発泡剤等を内容物とするエアゾール製品に於いては、エアゾール内容物の噴出完了後に、押釦の噴出路内に残留したエアゾール内容物が徐々に発泡し、液だれを生じる「アフタードロー」が衛生の面、見栄えの面等から問題となっている。このアフタードローを解消するためのものとして、特許文献1の図5に示すようなエアゾール内容物噴射装置が公知になっている。
【0003】
この特許文献1に示す従来技術に於いては、エアゾール容器のステムと連通し先端部をノズルとする噴出路を押釦に形成し、この噴出路の上方には、エアゾール内容物の噴射後に噴出路内に残留したエアゾール内容物を吸引収納するための吸引室を形成している。そして、押釦の噴出路内に残留したエアゾール内容物を、ステムの押圧解除に伴って前記吸引室内に吸引収納し、ノズルからのアフタードローを防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の図5に記載の発明に於いて、エアゾール内容物の噴射完了後に前記吸引室内に吸引収納されたエアゾール内容物は、前記吸引室内に残留して経時的に劣化するものとなる。そして、次回の噴射時には、この劣化したエアゾール内容物が吸引室から噴出路内に流入し、エアゾール容器側から新たに供給されるエアゾール内容物とともに外部に噴射されるものとなり、エアゾール製品の品質に問題を生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール内容物の噴射完了後に押釦の噴出路内に残留したエアゾール内容物を、簡易な構成により外部に排出してアフタードローを防止するとともに、エアゾール内容物の噴射完了後に前記押釦内にエアゾール内容物が残留するのを抑制して、次回の噴射時に於けるエアゾール製品の品質を良好に保つことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、エアゾール容器のステムと連通し一端部をノズルとするエアゾール内容物の噴出路を設けて押釦を形成し、この押釦には、噴出路と隣接して噴出路の密閉部材をこの噴出路の軸方向の一端部から他端部まで配置している。そして、ステムの押圧によるエアゾール内容物の噴射後に、密閉部材を前記噴出路側に移動させて前記噴出路を密閉し、前記噴出路内に残留したエアゾール内容物をノズルから外部に排出可能としている。
【0008】
また、密閉部材は、押釦内に回動可能に配置した回転体に他端側を接続し、ステムの押圧による噴射完了後、回転体を回動し噴出路方向に移動し、前記噴出路を密閉させるものであっても良い。
【0009】
また、上述の如く、密閉部材を接続した回転体を回動し密閉部材を噴出路側に移動させる場合には、噴出路は、ノズル方向の一端を他端側よりも幅広とするテーパー状としたものであっても良い。このような構成を採用することにより、噴射完了後に噴出路に残留したエアゾール内容物を、噴出路の幅狭な他端側から幅広なノズル方向の一端側に徐々に絞り出しながら排出することが可能となるため、上記の排出作業を一層効率的に行うことが可能となる。
【0010】
また、密閉部材は、噴出路の下側に配置するとともに他端側を押釦内に上下動可能に挿入した可動部材に接続し、ステムの押圧解除による噴射完了後、ステムの復元に伴う可動部材の上昇により噴出路側に移動し、前記噴出路を密閉させるものであっても良い。このような構成を採用することにより、ステムの復元に伴って自動的に噴出路が密閉され、噴出路内のエアゾール内容物が外部に排出されるものとなる。そのため、ステムの押圧解除後に、噴出路の密閉作業を使用者が手動で行う場合と比較して、使用者の作業負担を軽減することが可能となるし、残留内容物の排出忘れ等を生じることがないものとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したものであって、噴出路を密閉するための密閉部材を、噴出路と隣接してこの噴出路の軸方向の一端部から他端部まで配置しているため、この密閉部材を噴出路の方向に移動させることで、噴射完了後に噴出路内に残留したエアゾール内容物を、噴出路の一端部側から他端部側まで確実に排出除去することが可能となる。そのため、噴射完了後のノズルからのアフタードローを確実に防止することが可能となる。
【0012】
また、上述の如く、噴射完了後に噴出路内に残留したエアゾール内容物を外部に排出するものであるため、次回の噴射時には、エアゾール容器側から新たに導入されるエアゾール内容物に、押釦内に残留したエアゾール内容物が混入するのを抑制することができる。そのため、押釦内に残留したエアゾール内容物により次回の噴射時に品質上の問題が生じる虞れもなく、エアゾール製品の品質を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に於いて、押釦の非押圧状態を示す断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】実施例1に於いて、ステムの押圧状態を示す断面図。
【図4】実施例1に於いて、噴射完了後に噴出路を密閉した状態を示す断面図。
【図5】実施例1に於いて、噴出路の開放状態(a)と密閉状態(b)を示す正面図。
【図6】実施例2に於いて、ステムの押圧状態を示す断面図。
【図7】実施例2に於いて、噴出路の密閉状態(a)と開放状態(b)を示す正面図。
【図8】実施例2に於いて、ステムの非押圧状態を示す断面図。
【図9】図8のB−B線断面図。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を図1〜図5において説明すると、(1)は押釦で、図1に示す如く、上部部材(2)と下部部材(3)とを接続して構成し、この上部部材(2)と下部部材(3)との間に、一端部をノズル(4)とする噴出路(5)を水平方向に設けている。また、上部部材(2)と下部部材(3)の間隔には、エアゾール容器(6)のステム(7)に接続する回転体(8)を回動可能に配置し、この回転体(8)に設けたステム(7)との連通路(10)を、前記噴出路(5)に接続路(11)を介して接続している。なお、本明細書中に於いて、上端、下端等の用語は、図1に示す如く、エアゾール容器(6)を正立させた状態を基準として用いるものとする。
【0015】
また、図2に示す如く、回転体(8)には上記噴出路(5)と隣接して、この噴出路(5)を密閉するための密閉部材(12)を一側に突出し、この密閉部材(12)を、噴出路(5)の軸方向の一端側であるノズル(4)まで配置している。この密閉部材(12)は、ノズル(4)方向の一端側を他端側よりも幅狭とするテーパー状に形成しており、これに対応して、この密閉部材(12)と隣接する噴出路(5)は、ノズル(4)方向の一端側を他端側よりも幅広とするテーパー状としている。
【0016】
また、図1に示す如く回転体(8)は、押釦(1)の上部部材(2)に設けた係合溝(13)に上部を回動可能に係合するとともに、押釦(1)の下部部材(3)に貫通形成した貫通穴(14)に下部を回動可能に係合することにより、前記押釦(1)に対して回動可能となっている。また、前記下部部材(3)の貫通穴(14)には環状段部(15)を設けており、この環状段部(15)に回転体(8)の下端外周に設けた環状凹部(16)を接続することにより、押釦(1)と回転体(8)との接続位置を規制している。また、図2に示す如く、回転体(8)の前記密閉部材(12)とは反対側には、前記押釦(1)に設けた挿通穴(17)を介して作動レバー(18)を外部に突出させている。
【0017】
上述の如く構成したものに於いて、エアゾール内容物の通常噴射を行うには、図2及び図5(a)に示す如く回転体(8)の接続路(11)と押釦(1)の噴出路(5)とを連通させた状態で、押釦(1)を押圧する。これにより、図3に示す如く、回転体(8)を介してエアゾール容器(6)のステム(7)が押圧されて下降し、エアゾール容器(6)のバルブ機構(20)が開弁する。そして、エアゾール容器(6)内のエアゾール内容物が、ステム(7)、回転体(8)の連通路(10)、接続路(11)を介して噴出路(5)内に流入し、ノズル(4)を介して外部に排出されるものとなる。また、押釦(1)の押圧を解除すれば、図1に示す如くステム(7)が元位置に復帰してバルブ機構(20)が閉止し、エアゾール容器(6)からのエアゾール内容物の供給が停止する。
【0018】
次に、エアゾール内容物の噴射完了後に押釦(1)の噴出路(5)内に残留したエアゾール内容物を外部に排出するには、押釦(1)を片手で保持した状態で回転体(8)の作動レバー(18)を図2に矢印で示す如く回動し、回転体(8)に設けた密閉部材(12)を、噴出路(5)方向に回動し、図4及び図5(b)に示す如く、前記噴出路(5)を密閉させる。これにより、この噴出路(5)内に残留していたエアゾール内容物は、噴出路(5)からノズル(4)を介して外部に押し出されるものとなる。この押し出されたエアゾール内容物は使用者が適宜除去する。
【0019】
本願発明に於いてはこのように、噴出路(5)と隣接して配置した密閉部材(12)を噴出路(5)の方向に移動させるものであるから、噴射完了後に噴出路(5)内に残留したエアゾール内容物を、噴出路(5)のノズル(4)方向の一端部側から他端部側まで確実に排出除去することが可能となる。そのため、噴射完了後のノズル(4)からのアフタードローを確実に防止することが可能となる。また、この排出除去後は作動レバー(18)を上記とは逆方向に回動することにより噴出路(5)を形成し、次回の噴射に備える。
【0020】
また、上述の如く、噴射完了後に噴出路(5)内に残留したエアゾール内容物を外部に排出するものであるため、次回の噴射時には、エアゾール容器(6)側から新たに導入されるエアゾール内容物のみを外部に噴射することが可能となる。そのため、押釦(1)内に残留したエアゾール内容物により次回の噴射時に品質上の問題が生じるおそれもなく、エアゾール製品の品質を良好に保つことが可能となる。
【0021】
また、本実施例に於いては図2に示す如く、噴出路(5)を、ノズル(4)方向の一端を他端よりも幅広とするテーパー状に形成し、このテーパー状の噴出路(5)側に向かって、密閉部材(12)を回動させながら接近させ、噴出路(5)を密閉するものである。そのため、噴射完了後に噴出路(5)に残留したエアゾール内容物を、噴出路(5)のノズル(4)方向の幅狭な他端側から幅広な一端側に徐々に絞り出しながら排出することが可能となるため、上記の排出作業を一層効率的に行うことが可能となる。
【実施例2】
【0022】
上記実施例1に於いては前述の如く、回転体(8)に他端側を接続した密閉部材(12)により噴出路(5)の密閉を行っているが、本実施例2に於いては、押釦(1)内に上下動可能に挿入した可動部材(21)に他端側を接続した密閉部材(12)により、噴出路(5)の密閉を行っている。本実施例2について図6〜図9を用いて説明すると、本実施例2の押釦(1)は図6に示す如く、エアゾール容器(6)のマウンテンカップ(22)の外周に下端部を固定するとともに噴出路(5)を側面に設けたノズル体(23)を突出する円筒状の肩部材(24)と、この肩部材(24)内に上下動可能に装着するとともに、エアゾール容器(6)のステム(7)に連通路(10)を接続した可動部材(21)と、この可動部材(21)の側面に固定突出し前記連通路(10)と連通する接続路(11)を噴出路(5)に連通可能とするとともに噴出路(5)に隣接してノズル体(23)の内周面(25)の軸方向に配置した密閉部材(12)とにより形成している。
【0023】
また、上記ノズル体(23)の内周面(25)は、正面形状を図7(a)に示す如く縦長の長方形状としている。そして、上記の密閉部材(12)は両側面をノズル体(23)の内周面(25)に上下動可能に密接するとともに可動部材(21)の非押圧状態に於いて、図7(a)及び図8に示す如く、ノズル体(23)の内周面(25)との間に密閉部材(12)の可動間隔(26)を形成している。また、この可動間隔(26)の方向に密閉部材(12)を摺動させることにより、図6に示す如く、先端部をノズル(4)とする噴出路(5)をノズル体(23)内に形成可能としている。また、図8、図9に示す如く、前記可動部材(21)のノズル体(23)接続側には、上下方向に設けた係合凹部(30)内にOリング(27)を配置し、可動部材(21)の外周面と肩部材(24)の内周面との気密性を保持している。また、前記肩部材(24)のノズル体(23)突出側とは反対側の上面には、前記可動部材(21)の押圧時に手指を掛けるための指掛け凹部(28)を凹設している。
【0024】
上述の如く構成したものに於いて、エアゾール内容物を噴射するには、可動部材(21)を介してステム(7)を押圧し、エアゾール容器(6)のバルブ機構(20)を開弁する。また、この押圧による可動部材(21)の下降に伴い、可動部材(21)に固定接続した密閉部材(12)がノズル体(23)内に於いて下降し、図6に示す如く、ノズル体(23)内に噴出路(5)が形成される。そのため、ステム(7)から噴出したエアゾール内容物が、可動部材(21)の連通路(10)、接続路(11)を介して噴出路(5)内に流入し、ノズル(4)を介して外部に排出されるものとなる。
【0025】
そして、エアゾール内容物の噴射完了後に押釦(1)への押圧を解除すると、図8に示す如くステム(7)の復元力により可動部材(21)が復元上昇し、これに伴って、前記可動部材(21)に他端を固定した密閉部材(12)が前記ノズル体(23)内に於いて上昇し、前記噴出路(5)を密閉するとともに噴出路(5)内に残留しているエアゾール内容物を外部に押し出し排除することが可能となる。本実施例に於いてはこのように、ステム(7)の復元に伴って自動的に噴出路(5)が密閉され、噴出路(5)内のエアゾール内容物が外部に排出されるものとなる。そのため、押釦(1)の押圧解除後に、噴出路(5)の密閉作業を使用者が手動で行う場合と比較して、使用者の作業負担を軽減することが可能となるし、残留内容物の排出忘れ等を生じることがない。
【符号の説明】
【0026】
1 押釦
4 ノズル
5 噴出路
6 エアゾール容器
7 ステム
8 回転体
12 密閉部材
21 可動部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムと連通し一端部をノズルとするエアゾール内容物の噴出路を設けて押釦を形成し、この押釦に噴出路と隣接して噴出路の密閉部材をこの噴出路の軸方向の一端部から他端部まで配置し、ステムの押圧によるエアゾール内容物の噴射後に、密閉部材を前記噴出路側に移動させて前記噴出路を密閉し、前記噴出路内に残留したエアゾール内容物をノズルから外部に排出可能としたことを特徴とするエアゾール内容物噴射装置。
【請求項2】
密閉部材は、押釦内に回動可能に配置した回転体に他端側を接続し、ステムの押圧による噴射完了後、回転体を回動し噴出路方向に移動し、前記噴出路を密閉させることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項3】
噴出路は、ノズル方向の一端を他端側よりも幅広とするテーパー状としたことを特徴とする請求項2に記載のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項4】
密閉部材は、噴出路の下側に配置するとともに他端側を押釦内に上下動可能に挿入した可動部材に接続し、ステムの押圧解除による噴射完了後、ステムの復元に伴う可動部材の上昇により噴出路側に移動し、前記噴出路を密閉させることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162226(P2011−162226A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26300(P2010−26300)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】