説明

エアゾール内容物噴射装置

【課題】
容積可変空間をノズルとステムの間のエアゾール内容物の噴射流路中に配置することにより、噴射完了後に噴射流路に残留したエアゾール内容物を、ノズル側からステム側へ確実に吸引可能とする。
【解決手段】
エアゾール容器13のステム9と、このステム9と接続するノズル3と、このノズル3とステム9との間の押釦1内でエアゾール内容物の噴射流路14中に形成した容積可変空間10と、この容積可変空間10を、エアゾール内容物の非噴射時に最大容積とし、エアゾール内容物の噴射時に最小容積とするよう弾性変形可能に被覆するとともに最大容積方向に付勢力を保持し、外周縁を押釦1の内周面に固定したダイヤフラム8と、ダイヤフラム8を付勢力に抗して押圧し容積可変空間10の容積を最小容積方向に弾性変形可能とするとともに、ダイヤフラム8の最小容積方向への弾性変形にともなってステム9を押圧可能とした押釦1とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に充填した頭髪用品、化粧品、制汗剤、消臭剤、医薬品、その他のエアゾール内容物を噴射するためのエアゾール内容物噴射装置に関するもので、特に、アフタードローの抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品、特に、フォーム剤、後発泡剤等を内容物とするエアゾール製品に於いては、エアゾール内容物の噴射完了後に、噴射流路内に残留したエアゾール内容物が徐々に発泡し、噴射流路のノズルから液だれを生じる「アフタードロー」が、見栄えや衛生上の観点から問題となっている。このアフタードローを解消するためのものとして、特許文献1の図5に示すようなエアゾール内容物噴射装置が知られている。
【0003】
この特許文献1の図5に示す従来技術に於いては、エアゾール容器のステムと接続し先端をノズルとする噴射流路を押釦に形成している。また、この噴射流路の上部の押釦内にドーム型のダイヤフラムを固定することにより前記噴射流路とは別個に容積可変空間を形成し、この容積可変空間と噴射流路を、噴射流路に対して直角に形成した吸引通路で接続している。そして、エアゾール内容物の噴射時に於いては、ダイヤフラムの上方に配置した押釦の可動部材によりダイヤフラムを扁平状に押圧変形させることにより、容積可変空間の容積を最小とし、エアゾール内容物の噴射完了後には、ダイヤフラムをその弾性復元力によりドーム型に復元して、容積可変空間の容積を最大とする。そして、この容積の増大に伴って容積可変空間内を負圧化させることにより、噴射流路内に残留したエアゾール内容物を、吸引通路を介して容積可変空間内に吸引収納し、噴射流路のノズルからのアフタードローを防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図5に示す従来技術に於いては、噴射流路内に残留したエアゾール内容物を、噴射流路に対して直角に形成した吸引通路を介して、噴射流路とは別個に配置した容積可変空間内に吸引しなければならないため、吸引効率が悪いものとなっていた。そのため、噴射流路のノズル側にエアゾール内容物が残留しやすいものとなり、このようにエアゾール内容物の噴射流路のノズル側にエアゾール内容物が残留した場合には、この残留したエアゾール内容物がノズル周縁部から外部に漏れ出し、アフタードローの原因となるおそれがあった。
【0006】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、容積可変空間をノズルとステムの間のエアゾール内容物の噴射流路中に配置することにより、噴射完了後に噴射流路に残留したエアゾール内容物を、ノズル側からステム側へ確実に吸引可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上述の如き課題を解決するため、エアゾール容器のステムと、このステムと接続しエアゾール内容物の噴射を可能とするノズルと、このノズルとステムとの間の押釦内でエアゾール内容物の噴射流路中に形成した容積可変空間と、を備えている。また、この容積可変空間を、エアゾール内容物の非噴射時に最大容積とし、ステムの押圧によるエアゾール内容物の噴射時に最小容積とするよう弾性変形可能に被覆するとともに最大容積方向に付勢力を保持し、外周縁を押釦の内周面に固定したダイヤフラムと、このダイヤフラムを付勢力に抗して押圧し容積可変空間の容積を最小容積方向に弾性変形可能とするとともに、このダイヤフラムの最小容積方向への弾性変形にともなってステムを押圧しエアゾール内容物の噴射を可能とした押釦とを備えている。
【0008】
また、ダイヤフラムは、押釦の内周面に固定する外周固定筒に外周縁を固定するとともに、エアゾール容器のステムに固定する内周固定筒に内周縁を固定したものであっても良い。このようにダイヤフラムを形成することにより、外周固定筒を介して押釦の内周面とダイヤフラムの外周縁を安定的に固定接続することが可能となるとともに、内周固定筒を介してエアゾール容器のステムとダイヤフラムの内周縁を安定的に固定接続することが可能となるため、押釦、ダイヤフラム及びステムの接続の安定性を高めることが可能となる。
【0009】
また、ダイヤフラムは、押釦の押圧時にのみステムと当接してステムを押圧可能な押圧駒に内周縁を固定するとともに、外周縁を押釦の内周面に固定したものであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く構成したものであり、ノズルとステムとの間のエアゾール内容物の噴射流路中に容積可変空間を形成したものであるから、エアゾール内容物の噴射完了後に噴射流路中に残留したエアゾール内容物を、噴射流路の軸方向に沿ってノズル側からステム側に確実に吸引することが可能となり、噴射流路のノズルからのアフタードローを確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に於いて、押釦の非押圧状態を示す断面図。
【図2】実施例1に於いて、押釦の押圧状態を示す断面図。
【図3】実施例2に於いて、押釦の非押圧状態を示す断面図。
【図4】実施例2に於いて、押釦の押圧状態を示す断面図。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1を図面において説明する。尚、本明細書中に於いて、左、右、上、下とは図1を基準としている。(1)は押釦で、一側に突出したノズル体(2)の軸方向に噴出路(4)を形成し、この噴出路(4)の一端部をノズル(3)とするとともに噴出路(4)の他端部を、押釦(1)の中央上下方向に設けた連通路(5)を介して、押釦(1)の内周面(6)と接続している。
【0013】
また、上記押釦(1)の内周面(6)の上端には、外周固定筒(7)を介して蛇腹状のダイヤフラム(8)を固定しており、このダイヤフラム(8)と押釦(1)の連通路(5)側との間に容積可変空間(10)を形成している。また、ダイヤフラム(8)は、図1に示すエアゾール内容物の非噴射時に容積可変空間(10)を最大容積とし、図2に示すステム(9)の押圧によるエアゾール内容物の噴射時に容積可変空間(10)を最小容積とするよう、容積可変空間(10)を弾性変形可能に被覆しており、最大容積方向、即ち、下方に付勢力を保持している。
【0014】
また、上記ダイヤフラム(8)の内周縁には、貫通穴(11)を上端中央に貫通形成した断面コ字型の内周固定筒(12)を一体に固定形成し、この内周固定筒(12)にエアゾール容器(13)のステムスプリング(19)により付勢されるステム(9)を嵌合固定することにより、図1に示す如く、内周固定筒(12)、ダイヤフラム(8)及び外周固定筒(7)を介して押釦(1)をステム(9)の上方に支持するとともに、ステム(9)を、内周固定筒(12)の貫通穴(11)、容積可変空間(10)、連通路(5)及び噴出路(4)により構成されるエアゾール内容物の噴射流路(14)を介して、ノズル(3)と接続している。
【0015】
本実施例に於いては上述の如く、押釦(1)の内周面(6)に固定する外周固定筒(7)にダイヤフラム(8)の外周縁を固定するとともに、エアゾール容器(13)のステム(9)に固定する内周固定筒(12)にダイヤフラム(8)の内周縁を固定している。そのため、外周固定筒(7)を介して押釦(1)の内周面(6)とダイヤフラム(8)の外周縁を安定的に固定接続することが可能となるとともに、内周固定筒(12)を介してステム(9)とダイヤフラム(8)の内周縁を安定的に固定接続することが可能となる。そのため、押釦(1)、ダイヤフラム(8)及びステム(9)の接続の安定性を高めることが可能となる。
【0016】
また、本実施例のダイヤフラム(8)は、プラスチックを用いて外周固定筒(7)及び内周固定筒(12)と一体に形成している。尚、本実施例では上記の如く、プラスチックにてダイヤフラム(8)を形成しているが、他の異なる実施例では金属など、プラスチック以外の材料にて形成することも可能である。このように、ダイヤフラム(8)、外周固定筒(7)及び内周固定筒(12)を同一の部材にて一体形成することにより、これらを別個に形成する場合と比較して部品点数を少なくすることが可能となるため、装置の製造を簡易なものとすることが可能となる。
【0017】
上述の如く構成したものに於いて、エアゾール内容物を噴射するには、図1に示す押釦(1)の非押圧状態から押釦(1)を押圧すれば、押釦(1)が下降し、ダイヤフラム(8)を下方に弾性変形しながら押釦(1)の内周の天面(15)が内周固定筒(12)を介してステム(9)を押圧し、図2に示す如くステム(9)がステムスプリング(19)の付勢力に抗して下降し、エアゾール容器(13)のバルブ機構(16)が開弁する。これにより、エアゾール容器(13)内のエアゾール内容物が、ステム(9)、内周固定筒(12)の貫通穴(11)、押釦(1)の連通路(5)及び噴出路(4)を介してノズル(3)から外部に噴射されるものとなる。なお、この押釦(1)の押圧状態に於いては、図2に示す如く、ダイヤフラム(8)が下方に弾性変形しており、容積可変空間(10)の容積は最小となっている。
【0018】
次に、エアゾール内容物の噴射完了後、上記押釦(1)への押圧を解除すると、ステム(9)がステムスプリング(19)の復元力により復元上昇して元位置に復帰し、エアゾール容器(13)のバルブ機構(16)が閉止して、エアゾール容器(13)から押釦(1)へのエアゾール内容物の供給が停止される。また、同時にダイヤフラム(8)も押釦(1)とともに元位置に復帰し、押釦(1)の押圧時に最小となっていた容積可変空間(10)の容積が、図1に示す如く最大まで復元される。これにより、容積可変空間(10)内が負圧化し、この負圧化に伴う吸引力で、噴射流路(14)の噴出路(4)内に残留しているエアゾール内容物が、容積可変空間(10)方向に吸引される。そのため、噴射流路(14)の噴出路(4)内にはエアゾール内容物が残留しないものとなり、アフタードローを良好に抑制することが可能となる。
【0019】
また、図1、2に示す如く、ノズル(3)とステム(9)との間のエアゾール内容物の噴射流路(14)中に容積可変空間(10)を形成しているため、エアゾール内容物の噴射完了後に噴射流路(14)中に残留したエアゾール内容物を、エアゾール内容物の噴射流路(14)の軸方向に沿ってノズル(3)側からステム(9)側に容易且つ確実に吸引することが可能となり、エアゾール内容物の噴射流路(14)のノズル(3)からのアフタードローを確実に防止することが可能となる。
【実施例2】
【0020】
上記実施例1に於いては、エアゾール容器(13)のステム(9)に固定する内周固定筒(12)にダイヤフラム(8)の内周縁を固定するものとしているが、実施例2に於いては図3、図4に示す如く、押釦(1)の押圧時にのみステム(9)と当接してステム(9)を押圧可能な押圧駒(18)にダイヤフラム(8)の内周縁を固定している。
【0021】
本実施例2について図3、図4を用いて説明すると、本実施例2の押釦(1)は、図3に示す如く、下端部に設けた環状溝(20)をマウンテンカップ(21)の外周に固定接続しており、一端部をノズル(3)とする噴出路(4)の他端側を、押釦(1)の内部の容積可変空間(10)を介してステム(9)と接続するとともに、この容積可変空間(10)の上部に、底面に流通溝(17)を設けた押圧駒(18)を上下動可能に配置し、この押圧駒(18)の下端にダイヤフラム(8)の内周を固定するとともにダイヤフラム(8)の外周縁を押釦(1)の内周面(6)に固定することにより、ダイヤフラム(8)により容積可変空間(10)の上方を被覆し、この容積可変空間(10)をノズル(3)及びステム(9)とのみ接続している。また、押釦(1)内には容積可変空間(10)の下端を閉止する閉止部材(22)を配置し、この閉止部材(22)の上端外周に環状段部(23)を形成するとともに、閉止部材(22)内にエアゾール容器(13)のステム(9)を挿通している。
【0022】
上述の如く構成したものに於いて、上記押圧駒(18)を押圧すると、図4に示す如く押圧駒(18)が下降し、ダイヤフラム(8)を下方に弾性変形しながら押圧駒(18)の下端が押釦(1)のステム(9)を押圧してエアゾール容器(13)のバルブ機構(16)を開放し、エアゾール容器(13)内のエアゾール内容物が、ステム(9)、押圧駒(18)の流通溝(17)、容積可変空間(10)、噴出路(4)を介してノズル(3)から外部に噴射される。
【0023】
また、エアゾール内容物の噴射完了後、上記押釦(1)への押圧を解除すると、ステム(9)がステムスプリング(19)の復元力で復元上昇して元位置に復帰し、エアゾール容器(13)のバルブ機構(16)が閉止するとともに、押圧駒(18)もダイヤフラム(8)の復元力で元位置に復帰し、押釦(1)の押圧時に最小となっていた容積可変空間(10)の容積が、図3に示す如く最大まで復元される。これにより、容積可変空間(10)内が負圧化し、この負圧化に伴う吸引力で、噴射流路(14)の噴出路(4)内に残留しているエアゾール内容物が、容積可変空間(10)方向に吸引される。
【0024】
本実施例のエアゾール内容物噴射装置は上記の如き構成であるため、押釦(1)をエアゾール容器(13)に接続する際に、エアゾール容器(13)のステムを押圧することなく接続することができるものである。そのため、エアゾール容器(13)に押釦(1)を接続する際に、エアゾール容器(13)内に収納したエアゾール内容物が不用意に吐出することなく、エアゾール内容物が無駄に消耗したり、押釦(1)の接続時にエアゾール内容物が周囲に飛散したりするなどの事態を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 押釦
3 ノズル
6 内周面
7 外周固定筒
8 ダイヤフラム
9 ステム
10 容積可変空間
12 内周固定筒
13 エアゾール容器
14 噴射流路
18 押圧駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムと、このステムと接続しエアゾール内容物の噴射を可能とするノズルと、このノズルとステムとの間の押釦内でエアゾール内容物の噴射流路中に形成した容積可変空間と、この容積可変空間を、エアゾール内容物の非噴射時に最大容積とし、ステムの押圧によるエアゾール内容物の噴射時に最小容積とするよう弾性変形可能に被覆するとともに最大容積方向に付勢力を保持し、外周縁を押釦の内周面に固定したダイヤフラムと、このダイヤフラムを付勢力に抗して押圧し容積可変空間の容積を最小容積方向に弾性変形可能とするとともに、このダイヤフラムの最小容積方向への弾性変形にともなってステムを押圧しエアゾール内容物の噴射を可能とした押釦とからなることを特徴とするエアゾール内容物噴射装置。
【請求項2】
ダイヤフラムは、押釦の内周面に固定する外周固定筒に外周縁を固定するとともに、エアゾール容器のステムに固定する内周固定筒に内周縁を固定したことを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項3】
ダイヤフラムは、押釦の押圧時にのみステムと当接してステムを押圧可能な押圧駒に内周縁を固定するとともに、外周縁を押釦の内周面に固定したことを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178440(P2011−178440A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45166(P2010−45166)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】