説明

エアゾール化医薬の肺への送達

【課題】肺に送達するための、巨大分子を含む医薬の乾燥粉末物の製造方法および該配合物の組成物の提供。
【解決手段】肺送達用の分散性医薬ベース乾燥粉末組成物であって、医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有し、粒子を含み、その質量の95%が10μm未満の粒径を有する粒子を含む組成物であり、水分が約10重量%未満であり、粒径が約1.0〜5.0μm質量中位径(MMD)であり、送達投与量が約>30%であり、ならびにエアゾールの粒径分布が約1.0〜5.0μm質量中位空力直径(MMAD)である組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
1.発明の技術分野
本発明は、一般に、肺へ送達するための、巨大分子を含む医薬の乾燥粉末配合物の製造方法および該配合物の組成物に関する。
【0002】
ヒトの各種症状を治療するため、特定の医薬が、経口吸入(肺への送達)用の医薬分散物を生成するのに適した組成物で、長年にわたって販売されている。このような肺送達医薬組成物は、医薬分散物中の有効医薬が肺に到達できるように、患者が該分散物を吸入することによって送達されるよう設計されている。肺に送達される特定の医薬は、肺胞領域を通じて直接、血液循環系に、容易に吸収されることが分かっている。肺送達法は、他の投与方法では送達することが困難な巨大分子(タンパク質、ポリペプチドおよび核酸)を送達するのに特に有望である。このような肺送達法は、肺の疾患を治療するため全身送達と局所送達の両方を行うのに有効である。
【0003】
医薬の肺への送達自体は、液剤ネブライザー、エアゾールベースの計量投与吸入器(MDI)および乾燥粉末分散器を含めて各種の方法で達成することができる。エアゾールベースの MDIは、オゾン層に対して悪影響を与えるので使用が禁止されているクロロフルオロカーボン(CFC)を使用することに依存しているから支持を失っている。乾燥粉末分散器は、 CFCによるエアゾール法に依存していないので、乾燥粉末として容易に配合できる医薬を送達するのに有望である。事情が違っていたら不安定な多数の巨大分子が、それ自体でまたは適切な粉末担体と混合して、凍結乾燥または噴霧乾燥を行った粉末として安定して貯蔵できる。しかし、乾燥粉末として医薬組成物を送達する性能はいくつかの点で問題がある。多くの医薬組成物の投与量は重要であることが多いので、乾燥粉末薬送達システムはいずれも、目的とする量の医薬を、正確かつ厳密にそして高い信頼性で送達できることが必要である。さらに多くの医薬組成物は極めて高価である。したがって、乾燥粉末薬を医薬の損失を最少にして有効に送達する性能は非常に重要である。また、その粉末薬は、適切な分配と全身吸収を確実に行うため、患者が吸入する前に容易に分散可能であることが絶対必要である。
【0004】
乾燥粉末医薬を肺に送達するのに特に有望な方法は、加圧ガス源を提供する手押ポンプ付きの手持ち式器具を利用している。加圧ガスは、ベンチュリノズルなどの粉末薬分散器具を通じて急激に放出され、その結果、分散された粉末薬は患者が吸入して利用できるようになる。このような手持ち式器具は、多くの点で有利であるとはいえ、他の多くの点で問題がある。送達される粒子は粒径が10μm未満で通常1μm〜5μmの範囲内にあり、大きい粒子の場合より、粉末薬の取扱いと分散が困難になる。この問題点は、手動式ポンプを用いて利用できる比較的小容量の加圧ガスによって悪化する。特にベンチュリ(venturi) 分散器具は、ごく小容量の加圧ガスを利用する場合、分散しにくい粉末薬に対して不適である。手持ち式および他の粉末薬送達器具に対する他の必要条件は効率である。ガスのボーラス(bolus) 内の医薬の濃度は、全投与量を達成するのに必要な呼吸の数を減らすため比較的高いことが重要である。十分な分散と小さい分散容積の両者を達成する性能は、一つには、粉末化組成物の各単位投与量を、容易にかつ高い信頼性で分散できることを要求する重要な技術的な課題である。
発明の要約
本発明は、分散性乾燥粉末の医薬ベースの組成物、その製造方法および乾燥粉末薬の分散器具を提供するものである。分散性乾燥粉末医薬ベース組成物とは、水分が約10重量%未満であり、通常は約5重量%未満で好ましくは約3重量%未満であり;粒径が約 1.0〜5.0 μmの質量中位径 (mass median diameter) (MMD) であり、通常は 1.0〜4.0 μm MMDで好ましくは 1.0〜3.0 μm MMDであり;送達投与量 (delivered dose) が約>30%であり、通常は>40%で好ましくは>50%であり最も好ましくは>60%であり;そしてエアゾールの粒径分布が約 1.0〜5.0 μmの質量中位空力径 (mass median aerodynamic diameter)(MMAD) であり、通常は 1.5〜4.5 μm MMAD で好ましくは 1.5〜4.0 μm MMAD である組成物である。
具体的な実施態様の説明
本発明は少なくとも部分的に、本発明によって製造される医薬ベースの乾燥粉末組成物の分散特性に基づいている。本発明の医薬ベース組成物の分散特性とは、この組成物が他の方法で製造した組成物より、肺送達器具に使うのに適していることを意味する。本発明の組成物は、乾燥粉末薬吸入器で送達されると、容易にエアゾール化されそして宿主の肺を通じて迅速に吸収される。
【0005】
定 義
本発明の特許請求の範囲から各種態様まで説明する場合、注意しなければならないいくつもの重要な定義がある。
【0006】
用語“分散性”または“分散性の”は、水分が約10重量%未満であり、通常は約5重量%未満で好ましくは約3重量%未満であり;粒径が約 1.0〜5.0 μmの質量中位径(MMD)であり、通常は 1.0〜4.0 μm MMDで好ましくは 1.0〜3.0 μm MMDであり;送達投与量が約>30%であり、通常は>40%で好ましくは>50%であり最も好ましくは>60%であり;そしてエアゾールの粒径分布が約 1.0〜5.0 μmの質量中位空力径 (MMAD) であり、通常は 1.5〜4.5 μm MMAD で好ましくは 1.5〜4.0 μm MMAD である乾燥粉末を意味する。
【0007】
用語“粉末”は、自由に流動し、そして吸入器で容易に分散され次に患者が吸入して肺に到達して肺胞中に浸透させることができる微細に分散された固体粒子からなる組成物を意味する。したがって、その粉末は“吸入可能の”ともいわれる。その平均直径は約10ミクロン(μm)未満が好ましく、比較的均一な球形で分布している。直径は、さらに好ましくは約 7.5μm未満であり、最も好ましくは約 5.0μm未満である。粒径分布は通常約 0.1μm〜約5μm(直径)であり、特に約 0.3μm〜約5μmである。
【0008】
用語“乾燥”は、粒子が吸入器で容易に分散されてエアゾールを形成するような水分を、組成物がもっていることを意味する。この水分は一般に、約10重量%未満であり、通常は約5重量%未満で好ましくは約3重量%未満である。
【0009】
用語“治療上有効な量”は、治療して予想される生理的反応を与えるため、患者に所望のレベルの医薬を投与するのに必要な、組成物中に存在している量である。この量は、各医薬について、事例毎に決定される。指針は以下に示す。
【0010】
用語“生理的に有効な量”は、所望の緩和効果または治療効果を与えるため患者に送達される量である。この量は、各医薬にとって特定の量であり、医薬の最終的に推奨される投与レベルである。指針は以下に示す。
【0011】
“医薬として許容される担体”という用語は、その担体が、肺に重大な毒性副作用を与えることなく肺に吸収されてもよいことを意味する。
【0012】
発明の組成物
本発明の一態様は、肺送達用の分散性医薬ベースの乾燥粉末組成物であり、その組成物は、医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有している。
【0013】
一般に、本発明の組成物は、分散特性を有しているので肺送達用に適している。このような組成物は、当該技術分野では従来知られていない。医薬は、乾燥状態では結晶形かまたは無定形である。配合して分散性乾燥粉末にするのに適した医薬組成物のいくつかの例を表1に列挙してある。これら組成物には巨大分子ベースおよび非巨大分子ベースの医薬が含まれ、通常、巨大分子の、インスリン、インターロイキン−1受容体、上皮小体ホルモン(PTH−34)、α−1抗トリプシン、カルシトニン、低分子量のヘパリン、ヘパリン、インターフェロンおよび核酸が好ましい。
【0014】
組成物中の活性医薬の治療上有効な量は、使用される医薬の生物活性および単位投与量剤形 (unit dosage form) 中に必要な量によって変化する。主体の化合物は分散性であるから、配合者および消費者が即座に操作できるように、単位投与量剤形で製造することが非常に好ましい。このことは、一般に、単位投与量(一回服用量)は、乾燥粉末組成物の全物質の中の約 0.5mg〜15mgであり、好ましくは約2mg〜10mgであることを意味する。一般に組成物中の医薬の量は、約0.05重量%から約99.0重量%まで変化する。最も好ましくは、組成物は約 0.2〜約97.0重量%の医薬を含有している。
【0015】
医薬として許容される担体の量は、組成物を必要としている患者の肺への組成物の均一な送達を確実に行うために必要な安定性、分散性、コンシステンシィーおよび嵩の特性を提供するのに必要な量である。その量は、数値で示すと、使用される医薬の活性によって約0.05〜約 99.95重量%の範囲内にある。約5〜約95重量%で使用することが好ましい。
【0016】
担体は、1種でもよくまたは2種以上の賦形剤の混合物でもよいが、一般に、“浸透促進剤”は実質的に含有していない。浸透促進剤は、粘膜または内張り被膜を通って医薬が浸透するのを促進し、鼻腔内、直腸内および膣内医薬の配合物に使用することが提案されている界面活性化合物である。代表的な浸透促進剤としては、胆汁酸塩類、例えばタウロコール酸塩、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩;フシジン酸塩類、例えばタウロデヒドロフシジン酸塩;ならびに生体適合性界面活性剤、例えば Tween類、 Laureth−9などがある。しかし、肺に用いる配合物にこれら浸透剤を使用することは、肺の上皮血液関門が上記のような界面活性化合物によって悪影響を受けることがあるので、一般に望ましくない。本発明の乾燥粉末組成物は、浸透促進剤を使用する必要なしに肺へ容易に吸収される。
【0017】
本発明において担体として有用な種類の医薬賦形剤としては、安定剤、例えばヒト血清アルブミン(HSA);充填(bulking) 剤、例えば炭水化物、アミノ酸およびポリペプチド;pH調節剤すなわち緩衝剤;塩類、例えば塩化ナトリウムなどがある。これらの担体は結晶形もしくは無定形でもよく、または両者の混合物でもよい。
【0018】
HSAが分散性を改善するという点で担体として特に有益であることが見出された。
【0019】
特に有益な充填剤としては、相容性の炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはこれらの混合物がある。適切な炭水化物としては、単糖類、例えばガラクトース、D−マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えばラクトース、トレハロースなど;シクロデキストリン類、例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;多糖類、例えばラフィノース、マルトデキストリン類、デキストラン類など;アルジトール類、例えばマンニトール、キシリトールなどが挙げられる。炭水化物の好ましい群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン類およびマンニトールが含まれている。適切なポリペプチドとしてはアスパルテームがある。アミノ酸としてはアラニンとグリシンがあるが、グリシンの方が好ましい。
【0020】
添加剤は、本発明の組成物の少量成分であるが、粉末の、噴霧乾燥中の構造の安定性を得るためおよび粉末の分散性を改善するために含有させる。これらの添加剤としては、疎水性アミノ酸、例えばトリプトファン、チロシン、ロイシン、フェニルアラニンなどがある。
【0021】
適切なpH調節剤すなわち緩衝剤としては、有機酸と塩基で製造される有機塩類、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどがあるがクエン酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
本発明の単位投与量剤形、治療法および製造方法を以下に説明する。
単位投与量剤形
本発明の他の態様は、分散性乾燥粉末医薬ベースの組成物を肺へ送達するための単位投与量剤形であり、その剤形は、治療上有効な量の医薬を医薬として許容される担体と組み合わせて含有する医薬ベースの乾燥粉末組成物が入っている単位投与量容器で構成されている。
【0023】
本発明のこの態様において、本発明の組成物は(先に考察したように)、適切な投与容器中に、単位投与量治療を行うために患者に医薬を投与するのに十分な量が入っている。その投与容器は適切な吸入器内にはめこめられており、この吸入器は、インターフェロンベースの乾燥粉末組成物をガス流中に分散させてエアゾール化させ、このように生成させたエアゾールを、治療を要する患者が吸入するためにマウスピースが取り付けられたチャンバーに捕捉する。このような投与容器としては、当該技術分野で公知の、組成物を封入する容器が含まれ、例えば容器中にガス(例えば空気)流を導入して乾燥粉末組成物を分散させることができるように取外し可能な部分を有するゼラチンまたはプラスチック製のカプセルがある。このような容器は、1980年10月14日付けで発行された米国特許第 4,227,522号;1980年3月11日付けで発行された同第 4,192,309号;および1978年8月8日付けで発行された同第 4,105,027号に例示されている。また適切な容器としては、 Glaxo社のVentolin Rotohaler brandの粉末薬吸入器または Fison社の Spinhaler brandの粉末薬吸入器で用いられる容器も含まれる。優れた水分バリヤーを提供する他の適切な単位投与量容器は、アルミニウムホイルプラスチックラミネートで製造される。医薬ベースの粉末を、成形可能なホイルのくぼみ部分に重量または容量で充填し次いでカバー用ホイル−プラスチックラミネートで気密に密閉する。粉末薬吸入器で使用するこのような容器は、米国特許第 4,778,054号に記載され、 Glaxo社のDiskhaler(登録商標)(米国特許第 4,627,432号;同第 4,811,731号および同第 5,035,237号) で使用されている。なおこれらの引用文献はすべて本明細書に援用するものである。
疾患状態の治療方法
本発明の他の実施態様は、医薬として許容される担体を組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有する分散性の医薬ベースの乾燥粉末組成物の生理的有効量を、治療を要する患者の肺に投与することからなる、対象の医薬によって治療に対し反応する症状を治療する方法である。
【0024】
本発明の組成物で治療できる症状は表1に記載してある。
【0025】
特定の症状または疾患状態を治療するのに必要な生理的に有効な量は、個体、症状、治療期間、治療の規則性、医薬の種類、およびその他の要因によって決まるが、医薬の技術分野の当業者であれば決定することができる。
【0026】
本発明の乾燥粉末組成物をホストが有効に吸収するのは、肺の肺胞内張り被膜の極めて薄い(<0.1(m))流体層に迅速に溶解することに起因していると現在は考えられる。本発明の粒子の平均粒径は、上記のように、肺の流体層の厚みの10〜50倍もあるので、該粒子が溶解されて、インターフェロンが迅速に全身に吸収され、局所の肺も全身も治療されるということは予想外のことである。しかし、本明細書に記載されているように本発明を実施するのに、正確な機構を理解する必要はない。
【0027】
本発明のエアゾール化された医薬ベースの乾燥粉末は、非経口送達の代わりに用いると特に有用である。したがって、本発明の方法と組成物は、患者が自己投与できる長期間の治療プロトコルの場合、特に有益である。患者は、先に述べたように、適当な量の医薬を吸入することによって所望の投与量を達成できる。上記の方法による全身送達の効率は一般に約15〜50%の範囲内にある。
粉末をエアゾール化する方法
本発明のさらに他の態様は、医薬として許容される担体を組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有する医薬ベースの乾燥粉末組成物をエアゾール化する器具と方法であり、その方法は、所定量の乾燥粉末組成物をガス流中に分散させてエアゾールを生成させ、そのエアゾールを、後に患者が吸入するのに使うマウスピースを具備するチャンバー内に捕捉することからなる方法である。
【0028】
この方法のさらに詳細な説明は、同時係属出願中の米国特許願第07/910,048 号および同第08/207,472 号に記載されている。なおこの両出願は本明細書に援用するものである。
組成物の製造
本発明のさらに別の態様は、医薬および医薬として許容できる担体の水性混合物を、吸入可能な乾燥粉末組成物を提供する条件下で噴霧乾燥することからなる、本発明の分散性の医薬ベース乾燥粉末組成物の製造方法である。
【0029】
噴霧乾燥は、医薬と担体の均一な水性混合物を、ノズル(例えば2本の流体ノズル)、スピニングディスク(spinning disc) または均等な器具によって熱ガス流中に導入して前記溶液を霧状にして微細な液滴を製造する方法である。上記水性混合物は、溶液、懸濁液、スラリーなどでもよいが、混合物中の成分が均一に分布しかつ最終的に粉末化組成物になることを保証するため均一であることが必要である。その水性混合物は溶液が好ましい。溶媒は、一般に水であるが、前記液滴から迅速に蒸発して、直径が1〜5μmの微細な乾燥粉末が生成する。驚くべきことには、医薬は、熱乾燥ガスに暴露されても分解されずに、医薬用に十分な純度のインターフェロンの粉末を製造することができる。許容される純度は、分解生成物と汚染物が5%未満、好ましくは3%未満そして最も好ましくは1%未満と定義する。
【0030】
噴霧乾燥は、吸入可能な粒径、低水分、およびすぐにエアゾール化できる流動特性を有する均一な組成の実質的に無定形の粉末が得られる条件下で行われる。得られる粉末の粒径は、質量の約98%以上の粒子の直径が約10μm以下でありかつ質量の約90%の粒子の直径が5μmより小さいような粒径が好ましい。あるいは、質量の約95%の粒子が、10μm未満の直径を有する粒子でありかつ質量の約80%の粒子が5μm未満の直径を有する粒子である。
【0031】
次に上記溶液は、生産メーカー、例えば、Buchi, Niro, YamatoChemical Co., Okawara Kakoki Co.などから入手できる通常の噴霧乾燥装置で噴霧乾燥されて、実質的に無定形の粒子製品が得られる。
【0032】
噴霧法としては、回転噴霧法、圧力噴霧法および2流体噴霧法などの噴霧法を利用できる。これらの方法で使用される装置の例としては、 Yamato Chemical Co.社製の "Parubisu (音声レンダリング) Mini-Spray GA-32" と "Parubisu Spray Dryer DL-41" 、またはOkawara Kakoki Co.社製の "Spray Drier CL-8" 、Spray Drier L-8"、"Spray Drier FL-12" 、Spray Drier FL-16"もしくは "SprayDrier FL-20"があり、これらは回転ディスク噴霧器を用いる噴霧法に用いることができる。
【0033】
噴霧法に用いる噴霧器のノズルについては特別な制限はないが、鼻腔、咽頭または肺へ投与するのに適した粒径を有する噴霧乾燥組成物を生成できるノズルを使用することが推奨される。例えば、 Yamato Chemical Co.社製ノズルのタイプ“1A”、“1”、“2A”、“2”、“3”などは、このメーカーが製造した上記噴霧乾燥器に使用できる。さらに、Okawara Kakoki Co.社製ディスクのタイプ“MC−50”、“MC−65”または“MC−85”は、このメーカーが製造した噴霧乾燥噴霧器の回転ディスクとして使用できる。
【0034】
噴霧される物質を乾燥するのに用いるガスについて特に制限はないが、空気、窒素ガスまたは不活性ガスを使用することが推奨される。噴霧される物質を乾燥するのに用いるガスの入口での温度は、噴霧される物質が熱で失活を起こさない温度である。その温度は、約50℃〜約 200℃、好ましくは約50℃〜 100℃の範囲内で変えることができる。噴霧される物質を乾燥するのに用いるガスの出口での温度は、約0℃〜約 150℃、好ましくは0℃〜90℃そしてさらに好ましくは0℃〜60℃の範囲内で変えることができる。約55℃を超える入口および出口の温度を使用できるということは、大部分の巨大分子ベースの医薬がその温度で失活し、約70℃でほゞ完全に失活するということからみて驚くべきことである。
【0035】
本発明の分散性医薬ベース乾燥粉末は、呼吸投与および肺投与用に適切な医薬用の担体または賦形剤と任意に混合することができる。このような担体は、単に、患者に送達される粉末中のインターフェロンの濃度を減らしたいときの充填剤として役立つが、インターフェロンのより効率的で再現性のある送達を行いかつインターフェロンの取扱い特性、例えば流動性およびコンシステンシィーを改善して製造と粉末の充填を容易に行えるようにするために、インターフェロン組成物の安定性を向上させかつ粉末分散器具内での粉末の分散性を改善するのにも役立つ。
【0036】
かような担体物質は、噴霧乾燥を行う前に、すなわち、担体物質を精製されたバルク溶液に添加することによって、医薬と混合する。このようにすると、担体粒子が医薬粒子と同時に生成して均一な粉末が生成する。あるいは、担体は、乾燥粉末の形態で別個に製造し次いで乾燥粉末の医薬とブレンドすることによって混合してもよい。粉末の担体は通常、結晶であるが(水の吸収を避けるため)、場合によっては、無定形または結晶と無定形の混合物でもよい。担体粒子の粒径は医薬粉末の流動性を改善するため選択できるが、一般に25μm〜 100μmの範囲内にある。好ましい担体物質は粒径が上記範囲内の結晶性ラクトースである。
【0037】
あるいは、乾燥粉末組成物は、他の方法、例えば凍結乾燥法および国際特許願公開第 WO 91/16038 号に開示されているジェットミリング法で製造することができる。
【表1】

【表2】

【表3】

【0038】
以下の実施例は例示として提供するものであり本発明を限定するものではない。
【0039】
実 験
本発明にしたがって、以下の分散性乾燥粉末配合物を記載どおりにして製造した。本発明によって製造される組成物はすべて、医薬製品に要求される含有量と純度に関する厳重な規格を満たしている。
【実施例】
【0040】
実施例I
肺送達用20.0%インスリン配合物
A.配 合
結晶性ヒト亜鉛インスリンの原薬を、米国インディアナ州インディアナポリス所在の Eli Lilly and Company社から入手した。 1.5mgインスリン11.0mL脱イオン水を、4.96mg/mLの USPマンニトールおよび1.04mg/mLのクエン酸緩衝剤(クエン酸ナトリウム二水和物 USPおよびクエン酸一水和物USP)と混合して20%インスリン配合物(全固形分濃度 7.5mg/mL、pH 6.7±0.3)を得た。
B.噴霧乾燥
下記の条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記20%インスリン配合物の乾燥粉末を製造した。
【0041】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 120〜122 ℃
供給速度 5.3mL/min
出口の温度 80〜81℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって、出口の温度を約10分間<80℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記20%インスリン乾燥粉末組成物は、66.1%のマンニトールと13.9%のクエン酸塩を含有していた。この組成物は、 MitsubishiCA-06 Moisture Meterを用いてニオブ・カール・フィッシャー法 (Columbic Karl Fischer method) で測定したところ 1.1〜2.0 %の水分を含有していることが分かった。
【0042】
この組成物の粒径分布は、その粉末をSedisperse A-11(米国ジョージア州ノークロス所在のMicrometrics社) 上に分散させ次いでHoriba CAPA-700 Particle Size Analyzerで液体遠心沈降法によって測定した結果、 1.3μm〜 1.5μm MMDであった。
【0043】
上記インスリン粉末組成物の送達投与量は、同時係属出願中の米国特許願第07/910,048 号、同第08/313,707 号、同第08/309,691 号および国際特許願第 PCT/US92/05621 号に記載されている装置と類似の乾燥粉末分散装置で生成したエアゾール粉末を、その装置のマウスピース上に置いたフィルター上に収集することによって測定した。なお上記引用文献の開示事項は本明細書に援用するものである。インスリン粉末組成物の送達投与量は、測定した結果、 563±16μgでありつまり該装置に入れた全粉末(5.0mg) の60〜64%であった。
【0044】
カスケードインパクター(California Measurements IMPAQ-6) を用いてエアゾールの粒径分布を測定したところ、 2.0μm MMAD であったが、粒子の86%〜90%は直径が<5.0 μmであった。
【0045】
上記粉末のインスリン含有量は、逆相HPLC (rpHPLC) で測定した結果、 197μg/mg粉末であったが、これはインスリンの期待値の99%に相当する。クロマトグラム中に分解のピークは全く検出されなかった。
【0046】
実施例II
肺送達用 5.0%上皮小体ホルモン配合物
A.配 合
上皮小体ホルモンの34個のアミノ酸からなる活性フラグメント:PTH(1〜34)の原薬を米国カリフォルニア州トランス所在の BACHEM CALIFORNIA社から入手した。0.375mg PTH(1〜34)/1.0mL 脱イオン水を、6.06mg/mLのマンニトール USPおよび1.04mg/mLのクエン酸緩衝剤(クエン酸ナトリウム二水和物 USPおよびクエン酸一水和物USP)と混合して、 5.0% PTH (1〜34)配合物(全固形分濃度7.48mg/mL、pH 6.3) を得た。
B.噴霧乾燥
下記の条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記の 5.0% PTH (1〜34)配合物の乾燥粉末を製造した。
【0047】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 122〜124 ℃
供給速度 5.2mL/min
出口の温度 73〜74℃
水性混合物を消費したとき、入口温度を徐々に下げることによって、出口の温度を約5分間<80℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記の乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を使って実施した。
【0048】
上記の 5.0% PTH (1−34)乾燥粉末組成物は、81.0%のマンニトールと13.9%のクエン酸塩を含有していた。またこの配合物の水分は 0.5%であった。
【0049】
この組成物の粒径分布は、別個に測定したところ、 2.4μm MMDと 2.7μm MMDであった。
【0050】
PTH(1−34)粉末の送達投与量を別個に測定したところ、 161μgつまり64.5%および 175μgつまり69.2%であった。
【0051】
上記粉末のPTH(1−34)含有量は、rpHPLCで測定した結果48.5μg/mg粉末であったがこの値は期待値の97%に相当する。クロマトグラム中に分解のピークは全く検出されなかった。
【0052】
実施例III
肺送達用の 0.7%インターロイキン−I受容体の配合物
A.配 合
インターロイキン−1受容体すなわちIL−1受容体の原薬を、米国ワシントン州シアトル所在の Immunex Corporation社から入手した。0.053mg IL−1受容体/1.0mL 脱イオン水を、7.07mg/mLのラフィノース(米国イリノイ州ウォーキーガン所在のPfanstiehl社)および 0.373mg/mLのトリス緩衝剤(pH7.18) と混合して、 0.7%IL−1受容体配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記の 0.7%IL−1受容体配合物の乾燥粉末を製造した。
【0053】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 135〜137 ℃
供給速度 4.9mL/min
出口の温度 92〜93℃
水性混合物を消費したとき、入口温度を徐々に下げることによって出口温度を約15分間90℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0054】
上記の 0.7%IL−1受容体乾燥粉末組成物は、94.3%のラフィノースと 5.0%のトリスを含有していた。この配合物の水分は1.84±0.25%であった。
【0055】
上記組成物の粒径分布を測定したとろ1.95μm MMDであったが 100%の粒子の直径が<5.0 μmであった。
【0056】
IL−1受容体の粉末の送達投与量の測定結果は、22.3±2.0 μgつまり53.4±4.7 %であった。
【0057】
エアゾールの粒径分布を測定したところ 3.2μm MMAD であったがその粒子の77%は直径が<5.0 μmであった。
【0058】
上記粉末のIL−1受容体含有量は、rpHPLCで測定した結果、 8.4μg/mgであったがこれはIL−1受容体の期待値の 120%に相当する。クロマトグラム中に分解のピークは全く検出できなかった。
【0059】
実施例IV
肺送達用の 5.0%インターロイキン−1受容体の配合物
A.配 合
インターロイキン−1受容体すなわちIL−1受容体の原薬を、米国ワシントン州シアトル所在の Immunex Corporation社から入手した。0.375mg IL−1受容体/1.0mL 脱イオン水を、6.77mg/mLのラフィノースおよび 0.351mg/mLのトリス緩衝剤(pH7.35) と混合することによって、 5.0%IL−1受容体配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記 5.0%IL−1受容体配合物の乾燥粉末を製造した。
【0060】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 138℃
供給速度 4.9mL/min
出口の温度 91℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって出口の温度を約15分間90℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0061】
上記の 5.0%IL−1受容体乾燥粉末組成物は、90.3%のラフィノースと 4.7%のトリスを含有していた。この配合物の水分は1.75±0.26%であった。
【0062】
上記組成物の粒径分布を測定したところ2.74μm MMAD であったが、粒子の97%は直径が<5.0 μmであった。
【0063】
IL−1受容体粉末の送達投与量の測定結果は 123.4±24.5μgつまり49.3±9.8 %であった。
【0064】
エアゾールの粒径分布は測定の結果、 4.1μm MMAD であったが、粒子の64%は直径が<5.0 μmであった。
【0065】
上記粉末のIL−1受容体含有量は、rpHPLCで測定した結果、52.7±1.8 μg/mgであったが、これはIL−1受容体の期待値の 105%に相当する。クロマトグラム中、分解のピークは全く検出されなかった。
【0066】
実施例V
肺送達用の26.7%のヒトカルシトニン配合物
A.配 合
ヒトカルシトニンの原薬を、Ciba-Geigy社から入手した。1.9mgヒトカルシトニン/1.0mL 脱イオン水を、 4.3mg/mLのマンニトールおよび 0.9mg/mLのクエン酸緩衝液(pH3.85) と混合することによって、26.7%ヒトカルシトニン配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記26.7%ヒトカルシトニン配合物の乾燥粉末を製造した。
【0067】
水性混合物の温度 4℃
入口の温度 119℃
供給速度 5.5mL/min
出口の温度 78℃
噴霧器冷却剤の温度 0〜5℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 25〜30℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって、出口の温度を約10分間80℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0068】
上記の26.7%ヒトカルシトニン乾燥粉末組成物は、60%のマンニトールと13.3%のクエン酸塩を含有していた。この配合物の水分は0.71%であった。
【0069】
上記組成物の粒径分布を測定した結果、1.33±0.63μm MMDであった。
【0070】
上記ヒトカルシトニン粉末の送達投与量は測定の結果、
上記粉末のヒトカルシトニン含有量は、rpHPLCで測定したところ 272.0μg/mgであったがこれはヒトカルシトニンの期待値の 102±1.7 %に相当する。クロマトグラム中に、分解のピークは全く検出できなかった。
【0071】
実施例VI
肺送達用の90%α−1抗トリプシン配合物
A.配 合
α−1抗トリプシン: A1Aの原薬を、米国イリノイ州カンカキー所在の Armour Pharmaceutical Company社から入手した。4.89mg A1A/1.0mL 脱イオン水を、0.54mg/mLのクエン酸緩衝剤(pH 6.0)と混合することによって90% A1A配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性配合物を噴霧乾燥することによって、上記90% A1A配合物の乾燥粉末を得た。
【0072】
水性混合物の温度 4℃
入口の温度 98〜101 ℃
供給速度 5.0mL/min
出口の温度 65℃
噴霧器冷却剤の温度 2〜8℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 30℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって、出口の温度を約10分間69℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0073】
上記90% A1A乾燥粉末組成物は10.0%のクエン酸塩を含有していた。上記配合物の水分は4.79%であった。
【0074】
上記組成物の粒径分布は、測定した結果、1.71±0.87μm MMDであった。
【0075】
上記90% A1A粉末の送達投与量は、測定の結果、67.0±5.0 %であった。
【0076】
エアゾールの粒径分布は、測定の結果、 1.0μm MMAD であったが、粒子の90%は直径が<5.0 μmであった。
【0077】
上記粉末の A1A含有量はrpHPLCで測定したところ期待値の80%であった。クロマトグラム中に分解のピークは全く検出されなかった。噴霧乾燥後の活性を測定したところ74±1%であった。
【0078】
実施例VII
ヒト血清アルブミンを含有する肺送達用 0.3%
βインターフェロン配合物
A.配 合
βインターフェロン: IFN−βの原薬を日本国東京所在の(株)東レから入手した。 0.025mg IFN−β/1.0mL 脱イオン水を、5.54mg/mLのヒト血清アルブミン(HSA) 、 2.3mg/mLのクエン酸緩衝剤および 0.345mg/mLのNaCl (pH 4.5) と混合することによって 0.3% IFN−β配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記 0.3% IFN−β配合物の乾燥粉末を製造した。
【0079】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 93℃
供給速度 2.7mL/min
出口の温度 62℃
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の下記特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を利用して行った。
【0080】
上記 0.3% IFN−β乾燥粉末組成物は、66.0%の HSA、27.4%のクエン酸塩、 4.1%のNaClを含有していた。上記配合物の水分は4.22%であった。
【0081】
上記組成物の粒径分布は、測定したところ1.62μm MMDであったが、粒子の94.8%は<5μmであった。
【0082】
0.3% IFN−β粉末の送達投与量は、測定の結果、 9.9μg/mgつまり66.0±4.0 %であった。
【0083】
エアゾールの粒径分布は測定の結果 2.0μm MMAD であったが、粒子の85%は直径が<5.0 μmであった。
【0084】
上記粉末の IFN−β活性を IFN−β酵素免疫検定法 (Toray-Fuji Bionics) で測定したところ、期待活性の 109±8%であった。
【0085】
実施例VIII
ラフィノースを含有する肺送達用の 0.3%
βインターフェロン配合物
A.配 合
βインターフェロン(IFN−β) の原薬を日本国東京所在の(株)東レから入手した。 0.025mg IFN−β/1.0mL 脱イオン水を、 4.7mg/mLのラフィノース、 1.0mg/mLのヒト血清アルブミン(HSA) 、 2.3mg/mLのクエン酸緩衝剤および 0.3mg/mLのNaCl (pH 4.5) と混合することによって 0.3% IFN−β配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記 0.3% IFN−β配合物の乾燥粉末を製造した。
【0086】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 145℃
供給速度 5.0mL/min
出口の温度 87℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって、出口の温度を約5分間97℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の以下の特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0087】
上記 0.3% IFN−β乾燥粉末組成物は56.4%のラフィノース、11.9%の HSA、27.4%のクエン酸塩、 3.5%のNaClを含有していた。上記配合物の水分は0.69%であった。
【0088】
上記組成物の粒径分布は測定の結果2.06μm MMDであったが粒子の88.9%は直径が<5μmであった。
【0089】
上記 0.3% IFN−β粉末の送達投与量は測定した結果10.2μg/mgつまり68.0±2.0 %であった。
【0090】
エアゾールの粒径分布は測定した結果 2.5μm MMAD であったが粒子の84%は直径が<5.0 μmであった。
【0091】
上記粉末の IFN−β活性を IFN−β酵素免疫検定法 (Toray-Fuji Bionics) で測定したところ、期待活性の 109±8%であった。
【0092】
実施例IX
肺送達用93%低分子量ヘパリン配合物
A.配 合
ブタの腸粘膜由来の低分子量ヘパリンナトリウム塩(平均分子量:約6000) :ヘパリン(LMW) の原薬を米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma Chemical社から入手した。 6.9mgヘパリン(LMW) /1.0mL 脱イオン水を、 0.5mg/mLのHSA (pH 6.9)と混合することによって93%ヘパリン(LMW) 配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記93%ヘパリン(LMW) 配合物の乾燥粉末を製造した。
【0093】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 140℃
供給速度 3.8mL/min
出口の温度 85℃
噴霧器冷却剤の温度 2〜8℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 20℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって出口の温度を約10分間80℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の下記特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて実施した。
【0094】
上記93%ヘパリン(LMW) 乾燥粉末組成物は 7.0%の HSAを含有していた。
【0095】
上記93%ヘパリン(LMW) 粉末の送達投与量は測定の結果60.0±1.0 %であった。
【0096】
エアゾールの粒径分布は測定したところ 3.5μm MMAD であったが、粒子の70%は直径が<5.0 μmであった。
【0097】
実施例X
肺送達用97%未分画ヘパリン配合物
A.配 合
ブタの腸粘膜由来の未分画ヘパリンナトリウム塩(ヘパリン)の原薬を米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma Chemical社から入手した。 7.0mgヘパリン/1.0mL 脱イオン水を、0.25mg/mLのHSA(pH 6.55) と混合することによって97%ヘパリン配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記97%ヘパリン配合物の乾燥粉末を製造した。
【0098】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 150℃
供給速度 4.0mL/min
出口の温度 85℃
噴霧器冷却剤の温度 2〜8℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 20℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって出口の温度を約10分間80℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の下記特性解析は、特にことわらない限り、実施例Iに記載の方法を用いて実施した。
【0099】
上記97%ヘパリン乾燥粉末組成物は 3.0%の HSAを含有していた。上記配合物の水分は5.11%であった。
【0100】
上記組成物の粒径分布は測定の結果 2.0〜2.5 μm MMDであった。
【0101】
上記97%ヘパリン粉末の送達投与量は測定の結果79.0±6.0 %であった。
【0102】
エアゾールの粒径分布は、測定したところ、 3.2μm MMAD であったが、粒子の70%は直径が<5.0 μmであった。
【0103】
実施例XI
肺送達用脂質ベクター遺伝子配合物
A.配 合
pCMVβDNA :脂質ベクターの原薬を、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ所在の Genzyme Corporation社から入手した。 0.005:0.03mg DNA:脂質ベクター/1.0mL 脱イオン水を、 5.3mg/mLのグリシン(J. T. Baker) および 0.3mg/mLのHSA (pH 6.4)と混合することによって0.71% DNA:脂質ベクター配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記 DNA:脂質ベクター配合物の乾燥粉末を製造した。
【0104】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 120℃
供給速度 3.8mL/min
出口の温度 71℃
噴霧器冷却剤の温度 2〜8℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 2〜8℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって出口の温度を約5分間65℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の下記特性解析は、特にことわらない限り、実施例Iに記載の方法を用いて実施した。
【0105】
上記0.71% DNA:脂質ベクター乾燥粉末組成物は、 93.97%のグリシンおよび5.32%の HSAを含有していた。
【0106】
上記組成物の粒径分布は測定した結果 2.0μm MMDであった。
【0107】
上記97%ヘパリン(HMW) 粉末の送達投与量は64.0±1.0 %であった。
【0108】
エアゾールの粒径分布は測定した結果 2.4μm MMAD であったが、粒子の75%は直径が<5.0 μmであった。
【0109】
噴霧乾燥を行った後の活性を測定したところ期待値の 160%であった。
【0110】
実施例XII
肺送達用アデノウイルスベクター遺伝子配合物
A.配 合
pCMVβDNA :アデノウイルスベクターの原薬を、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ所在の Genzyme Corporation社から入手した。 108 PFU/mL DNA:脂質ベクター/1.0mL 脱イオン水を、 6.1mg/mLのグリシン(J. T. Baker) 、 2.5mg/mLの HSAおよび 1.9mg/mLのリン酸緩衝剤 (pH 7.4) と混合することによって、 DNA:アデノウイルスベクター配合物を得た。
B.噴霧乾燥
下記条件下でBuchi Laboratory Spray Dryerを用いて上記水性混合物を噴霧乾燥することによって、上記 DNA:脂質ベクター配合物の乾燥粉末を得た。
【0111】
水性混合物の温度 2〜8℃
入口の温度 105℃
供給速度 2.9mL/min
出口の温度 72℃
噴霧器冷却剤の温度 2〜8℃
サイクロ(登録商標)ン冷却剤の温度 20℃
水性混合物を消費したとき、入口の温度を徐々に下げることによって出口の温度を約10分間70℃に維持して二次乾燥を行った。
C.特性解析
上記乾燥粉末配合物の下記特性解析は、特にことわらない限り実施例Iに記載の方法を用いて行った。
【0112】
上記 DNA:アデノウイルスベクター乾燥粉末組成物は、58%のグリシン、24%の HSAおよび18%のリン酸緩衝剤を含有していた。
【0113】
上記組成物の粒径分布は測定した結果 2.3μm MMDであった。
【0114】
97%ヘパリン(HMW) 粉末の送達投与量は測定した結果51.0±1.0%であった。
【0115】
エアゾールの粒径分布は測定した結果 1.8μm MMAD であったが、粒子の80%は直径が<5.0 μmであった。
【0116】
噴霧乾燥を行った後の活性は、測定した結果、期待値の76%であった。
【0117】
本明細書に挙げた刊行物および特許願はすべて、個々の各刊行物または特許願が具体的にかつ個々に援用して示されたのと同程度に、本明細書に援用するものである。
【0118】
本発明は十分に説明されたので、本願の特許請求の範囲の思想または範囲から逸脱することなく、多くの変形を行うことができることは当該技術分野の当業者にとって明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺送達用の分散性医薬ベース乾燥粉末組成物であって;医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有し、粒子を含み、そしてその質量の95%が10μm未満の粒径を有する粒子を含む組成物。
【請求項2】
インターロイキン−1受容体、ヘパリン、低分子量ヘパリンおよびカルシトニンからなる群から選択される巨大分子の治療上有効な量を、医薬として許容される担体と組み合わせて含有している、肺送達用の分散性医薬ベース乾燥粉末組成物。
【請求項3】
実質的に浸透促進剤を含有していない請求の範囲1または2に記載の組成物。
【請求項4】
担体が HSAを含む請求の範囲2または3に記載の組成物。
【請求項5】
担体がさらに炭水化物充填剤を含有している請求の範囲3または4に記載の組成物。
【請求項6】
質量の約95%が10μm未満の粒径を有する請求の範囲1または2に記載の組成物。
【請求項7】
質量の約80%が5μm未満の粒径を有する請求の範囲1または6に記載の組成物。
【請求項8】
医薬が、インスリン、インターロイキン−1受容体、上皮小体ホルモン、α−1抗トリプシン、カルシトニン、低分子量ヘパリンおよび核酸類からなる群から選択される巨大分子を含む請求の範囲1記載の組成物。
【請求項9】
医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有する請求の範囲1〜8のいずれか一つに記載の分散性医薬ベース乾燥粉末組成物を含む単位投与量容器からなる、医薬を肺へ送達するための単位投与量剤形。
【請求項10】
請求の範囲1〜8のいずれか一つに記載の分散性医薬ベース乾燥粉末組成物の生理的に有効な量を、治療を要する患者の肺に投与することを含む治療に対して反応する疾患状態を医薬によって治療する方法。
【請求項11】
医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の医薬を含有する医薬ベース乾燥粉末組成物をエアゾール化する方法であって、
請求の範囲1〜8のいずれか一つに記載の乾燥粉末組成物の所定量をガス流中に分散させてエアゾールを生成させ、次いで
そのエアゾールを、そののち患者が吸入するのに適したチャンバー内に捕捉する、
ことを含む方法。
【請求項12】
治療上有効な量の医薬および医薬として許容される担体を含む噴霧乾燥された医薬ベース乾燥粉末の製造方法であって;上記医薬と担体の水性混合物を、組成物の質量の95%が10μm未満の粒径を有する粒子を含んでなる粒子を含む吸入可能な乾燥粉末を提供する条件下で噴霧乾燥することを含む方法。
【請求項13】
治療上有効な量の医薬および医薬として許容される担体からなる噴霧乾燥された医薬ベース乾燥粉末の製造方法であって;上皮小体ホルモン、インターロイキン−1受容体、ヘパリン、低分子量ヘパリンおよびカルシトニンからなる群から選択される医薬の水性混合物を噴霧乾燥することを含む方法。
【請求項14】
担体が HSAを含む請求の範囲12または13に記載の方法。
【請求項15】
担体がさらに炭水化物充填剤を含有している請求の範囲14記載の方法。
【請求項16】
前記充填剤がマンニトールである請求の範囲15記載の方法。
【請求項17】
噴霧乾燥された組成物の質量の80%が5μm未満の粒径を有している請求の範囲12記載の方法。
【請求項18】
医薬として許容される担体と組み合わせて治療上有効な量の巨大分子を含有する、請求の範囲12〜17のいずれか一つに記載の方法で製造された肺送達用の噴霧乾燥された巨大分子ベース乾燥粉末組成物。
【請求項19】
水分が10%未満である請求の範囲1〜8のいずれか一つに記載の組成物。

【公開番号】特開2008−163033(P2008−163033A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16775(P2008−16775)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【分割の表示】特願平8−531213の分割
【原出願日】平成8年4月12日(1996.4.12)
【出願人】(597148884)ネクター セラピューティクス (30)
【Fターム(参考)】